説明

印刷適性向上剤

【課題】印刷適性向上効果の高い印刷適性向上剤を提供することである。
【解決手段】
アクリルアミド(A1)及び共重合ビニル単量体(A2)を必須構成単量体としてなる水溶性ビニル共重合体からなることを特徴とする印刷適性向上剤を用いる。(A2)は(メタ)アクリル酸(塩)が好ましい。(A1)と(A2)とのモル比(A1:A2)は50:50〜95:5が好ましい。また、顔料、接着剤及び上記の印刷適性向上剤を含有してなる塗被紙用塗被塗料、またこの塗被塗料を塗被原紙に塗被してなる塗被紙とすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷適性向上剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷適性向上剤としては、ポリアルキレンポリ尿素−アルデヒド樹脂(特許文献1)の他、ポリアミド−尿素−アルデヒド樹脂、アミン−エピハロヒドリン樹脂及びケトン樹脂が知られている(非特許文献1)。
また、これらの樹脂を、さらに環状炭化水素基やアルキル基で変性した樹脂が知られている(特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−116351号公報
【特許文献2】特開平2−216297号公報
【非特許文献1】紙パルプ製造技術シリーズ▲8▼コーティング107〜109頁、紙パルプ技術協会編、1993年発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の塗被紙用印刷適性向上剤では、印刷適性向上効果{たとえば、印刷光沢、インク着肉、ドライピック、ウエットピック、インクセット}が不十分であり、更に印刷適性向上効果の高い印刷適性向上剤の開発が求められていた。
本発明の目的は、印刷適性向上効果の高い印刷適性向上剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者はこのような課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の印刷適性向上剤の特徴は、アクリルアミド(A1)を必須構成単量体としてなる水溶性ビニル(共)重合体からなる点を要旨とする。
また、本発明の印刷適性向上剤の特徴は、アクリルアミド(A1)及び共重合ビニル単量体(A2)を必須構成単量体としてなる水溶性ビニル共重合体からなることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の印刷適性向上剤は、印刷適性向上効果{たとえば、印刷光沢、インク着肉、ドライピック、ウエットピック及びインクセット}が優れている。したがって、本発明の印刷適性向上剤を塗被塗料に適用すると、印刷適性を格段に向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
水溶性とは、20℃の水100gに対して、少なくとも0.05g(好ましくは少なくとも0.1g)溶解する性質を意味する。
【0008】
共重合ビニル単量体(A2)としては、アクリルアミドと共重合が可能なビニル単量体であればよく、ビニル基含有アミド、ビニル基含有アミン(塩)及びビニル基含有カルボン酸(塩)等が含まれる。
ビニル基含有アミドとしては、メタアクリルアミド、2−ビニルカルボニルアミノ−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)及びビニルピロリドン等が挙げられる。
【0009】
ビニル基含有アミン(塩)としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、4−アミノスチレン、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルエチルアンモニウム塩及び(メタ)アクリロイルオキシトリメチルプロピルアンモニウム塩、(メタ)アクリロイルアミノトリメチルアンモ二ウム塩等が挙げられる。
アンモニウム塩としては、ハライド(クロライド及びブロミド等)、スルフェート、メトスルフェート及びナイトレート等が挙げられる。
ビニル基含有カルボン酸(塩)としては、(メタ)アクリル酸(塩)及びマレイン酸(塩)等が挙げられる。
【0010】
カルボン酸塩としては、アルカリ金属(ナトリウム及びカリウム等)塩、アミン(炭素数1〜6のアミン:メチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルプロピルアミン及びトリエタノールアミン)塩及びアンモニウム塩(炭素数4〜8のアンモニウム塩;テトラメチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム塩及びテトラエチルアンモニウム塩等)が挙げられる。これらのうち、アルカリ金属塩が好ましく、さらに好ましくはナトリウム塩及びカリウム塩である。
【0011】
共重合ビニル単量体(A2)として、ビニル基含有アミド、ビニル基含有アミン(塩)及びビニル基含有カルボン酸(塩)以外に、水溶性ビニル(共)重合体の水溶性を損なわない範囲で、ビニル基含有ニトリル、ビニル基含有エステル及びビニル基含有炭化水素等が使用できる。
【0012】
ビニル基含有ニトリルとしては、(メタ)アクリロニトリル及び4−シアノスチレン等が挙げられる。
ビニル基含有エステルとしては、アルキル(メタ)アクリレート(アルキルの炭素数1〜8)等が含まれ、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0013】
ビニル基含有炭化水素としては、エチレン、プロピレン及びスチレン等が挙げられる。
共重合ビニル単量体(A2)のうち、ビニル基含有アミド、ビニル基含有アミン(塩)及びビニル基含有カルボン酸(塩)が好ましく、さらに好ましくはビニル基含有アミド、ビニル基含有カルボン酸(塩)、特に好ましくはビニル基含有カルボン酸(塩)、次に好ましくは(メタ)アクリル酸(塩)、最も好ましくはアクリル酸(塩)である。
【0014】
ビニル基含有ニトリル、ビニル基含有エステル及びビニル基含有炭化水素を使用する場合、これらの使用量(モル%)は、共重合ビニル単量体のモル数に基づいて、1〜10が好ましく、さらに好ましくは2〜7、特に好ましくは3〜5である。
【0015】
アクリルアミド(A1)と共重合単量体(A2)とのモル比(A1:A2)は、印刷適性向上効果の観点等から、50:50〜95:5が好ましく、さらに好ましくは70:30〜90:10、特に好ましくは75:25〜80:20である。
【0016】
水溶性ビニル(共)重合体は、アクリルアミド(A1)を重合すること、又はアクリルアミド(A1)及び共重合ビニル単量体(A2)を共重合することにより容易に得られる。
重合は、公知の方法{たとえば、特開2005−350516号公報、特開2004−156034号公報等}と同様である。
なお、重合に際して、必要に応じて連鎖移動剤、pH緩衝剤、キレート剤等を用いてもよい。
また、重合後水を加えたり、留去したりして、濃度調整してもよい。
また、重合後に揮発分を留去して、粒状体としてもよい。
【0017】
本発明の印刷適性向上剤には、水溶性ビニル(共)重合体以外に、必要により、公知のpH緩衝剤、重合体の劣化防止剤(酸化防止剤等)、消臭剤、防腐剤、防錆剤、脱色剤等を含んでいてもよい。これらを含む場合、これらの含有量は、水溶性ビニル(共)重合体の重量に基づいて、0.001〜5重量%が好ましい。
本発明の印刷適性向上剤の形態には制限がなく、溶液又は粉体等の何れでもよいが、製造しやすさ、取り扱いやすさの観点等から、溶液が好ましい。
溶液とするには、水や、水と水に無限大に溶解する有機溶媒(メタノール、イソプロピルアルコール、アセトン及びジメチルスルホキシド等)との混合溶媒に溶解するればよい{水溶性ビニル(共)重合体の重合に用いた重合溶媒を活用してもよい。}。
【0018】
本発明の印刷適性向上剤の25℃の粘度(mPa・s)は、5000〜10,000が好ましく、さらに好ましくは6000〜9000、特に好ましくは7000〜8000である。この範囲であると、取扱い性がさらに良好となる。
なお、粘度の測定は、JIS K7117−1:1999(B型粘度計、25℃、No.4ローター、60rpm、1分後の粘度を測定)により測定できる。
【0019】
本発明の印刷適性向上剤は、水系の塗被塗料(塗被紙用塗被塗料、外装建材用塗被塗料、自動車用塗被塗料等)等に添加して用いられる。
水系の塗被塗料のうち、塗被紙用塗被塗料に対して好適である。
なお、塗被紙としては、アート紙、上質コート紙、中質コート紙、上質軽量コート紙、中質軽量コート紙、キャストコート紙、エンボス紙、アートポスト紙、ファンシーコーテッド紙、純白ロールコート、ダルコート紙、マットコート紙、微塗工上質紙、微塗工印刷紙、インクジェット紙、感熱紙及び感圧紙等が挙げられる。これらのうち、アート紙、上質コート紙、ダルコート紙及びマットコート紙の塗被塗料用として最適である。
【0020】
塗被紙用塗被塗料としては、公知の顔料及び接着剤等{たとえば、紙塗工、高分子ラテックスの応用、室井宗一著、1992年発行}を含有してなり、これに本発明の印刷適性向上剤を混合すると、印刷適性向上効果が著しく向上する。
塗被紙用塗被塗料に適用する場合、印刷適性向上剤の含有量(重量%)は、顔料の重量に基づいて、0.05〜10が好ましく、さらに好ましくは0.1〜7、特に好ましくは0.3〜5である{他の塗被塗料の場合もこの範囲と同等である。}。この範囲にあると、印刷適性向上効果等がさらに良好となる。
【0021】
塗被塗料には、顔料として、炭酸カルシウム{重質及び/又は軽質炭酸カルシウム}を必須成分として含むことが好ましい。炭酸カルシウムを含む場合、この含有量(重量%)は、顔料の重量に基づいて、50〜100が好ましく、さらに好ましくは60〜100である。この範囲であると、印刷物の印刷適性等がさらに良好となる。
【実施例】
【0022】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下、特記しない限り、部は重量部を、%は重量%を意味する。
【0023】
<実施例1>
イオン交換水380部に窒素ガスをバブリングしながら90℃に昇温した後、単量体水溶液<アクリルアミド(A1)318.8部及びイオン交換水52.8部からなる水溶液>と、触媒溶液<2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.39部及びアセトン5部からなる溶液>とをそれぞれそれぞれ別々の滴下漏斗から同時に滴下を開始した。滴下は180分かけて連続的に行い(90℃)、滴下終了後90℃で1時間熟成して、本発明の印刷適性向上剤(1){25℃の粘度:5000mPa・s(トキメック社製BM型粘度計:TV−20型、25℃、No.4ローター、60rpm、1分値;以下同様)}を得た。
【0024】
<実施例2>
触媒溶液<2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.39部及びアセトン5部からなる溶液>を、触媒溶液<2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.28部及びアセトン5部からなる溶液>に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の印刷適性向上剤(2){25℃の粘度:10000mPa・s}を得た。
【0025】
<実施例3>
触媒溶液<2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.39部及びアセトン5部からなる溶液>を、触媒溶液<2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.36部及びアセトン5部からなる溶液>に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の印刷適性向上剤(3){25℃の粘度:6000mPa・s}を得た。
【0026】
<実施例4>
触媒溶液<2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.39部及びアセトン5部からなる溶液>を、触媒溶液<2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.30部及びアセトン5部からなる溶液>に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の印刷適性向上剤(4){25℃の粘度:9000mPa・s}を得た。
【0027】
<実施例5>
触媒溶液<2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.39部及びアセトン5部からなる溶液>を、触媒溶液<2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.33部及びアセトン5部からなる溶液>に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の印刷適性向上剤(5){25℃の粘度:7000mPa・s}を得た。
【0028】
<実施例6>
触媒溶液<2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.39部及びアセトン5部からなる溶液>を、触媒溶液<2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.31部及びアセトン5部からなる溶液>に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の印刷適性向上剤(6){25℃の粘度:8000mPa・s}を得た。
【0029】
<実施例7>
イオン交換水380部に窒素ガスをバブリングしながら90℃に昇温した後、単量体水溶液<アクリルアミド(A1)159.4部、共重合体ビニル単量体(A21){アクリル酸ナトリウム}211.3部及びイオン交換水52.8部からなる水溶液>と、触媒溶液<2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.39部及びアセトン5部からなる溶液>とをそれぞれそれぞれ別々の滴下漏斗から同時に滴下を開始した。滴下は180分かけて連続的に行い(90℃)、滴下終了後90℃で1時間熟成して、本発明の印刷適性向上剤(7){25℃の粘度:5000mPa・s}を得た。
【0030】
<実施例8>
「アクリルアミド(A1)159.4部」を「アクリルアミド(A1)302.9部」に変更したこと、「共重合ビニル単量体(A21){アクリル酸ナトリウム}211.3部」を「共重合ビニル単量体(A21){アクリル酸ナトリウム}21.1部」に変更したこと、触媒溶液<2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.39部及びアセトン5部からなる溶液>を、触媒溶液<2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.28部及びアセトン5部からなる溶液>に変更したこと以外、実施例7と同様にして、本発明の印刷適性向上剤(8){25℃の粘度:10000mPa・s}を得た。
【0031】
<実施例9>
「アクリルアミド(A1)159.4部」を「アクリルアミド(A1)223.2部」に変更したこと、「共重合ビニル単量体(A21){アクリル酸ナトリウム}211.3部」を「共重合ビニル単量体(A21){アクリル酸ナトリウム}126.8部に変更したこと、触媒溶液<2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.39部及びアセトン5部からなる溶液>を、触媒溶液<2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.36部及びアセトン5部からなる溶液>に変更したこと以外、実施例7と同様にして、本発明の印刷適性向上剤(9){25℃の粘度:6000mPa・s}を得た。
【0032】
<実施例10>
イオン交換水380部に窒素ガスをバブリングしながら90℃に昇温した後、単量体水溶液<アクリルアミド(A1)223.2部、共重合体ビニル単量体(A22){ジメチルアミノエチルアクリレート}159.0部及びイオン交換水39.8部からなる水溶液>と、触媒溶液<過硫酸ナトリウム0.30部及びイオン交換水5部からなる溶液>とをそれぞれそれぞれ別々の滴下漏斗から同時に滴下を開始した。滴下は120分かけて連続的に行い(90℃)、滴下終了後、90℃で1時間熟成して、本発明の印刷適性向上剤(10){25℃の粘度:6800mPa・s}を得た。
【0033】
<実施例11>
イオン交換水380部に窒素ガスをバブリングしながら90℃に昇温した後、単量体水溶液<アクリルアミド(A1)223.2部、共重合体ビニル単量体(A23){2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム}192.9部及びイオン交換水48.2部からなる水溶液>と、触媒溶液<過硫酸ナトリウム0.26部及びイオン交換水5部からなる溶液>とをそれぞれそれぞれ別々の滴下漏斗から同時に滴下を開始した。滴下は240分かけて連続的に行い(90℃)、滴下終了後、90℃で1時間熟成して、本発明の印刷適性向上剤(11){25℃の粘度:9000mPa・s}を得た。
【0034】
<実施例12>
「アクリルアミド(A1)159.4部」を「アクリルアミド(A1)305.0部」に変更したこと、「共重合ビニル単量体(A21){アクリル酸ナトリウム}211.3部」を「共重合ビニル単量体(A21){アクリル酸ナトリウム}45.0部」に変更したこと、触媒溶液<2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.39部及びアセトン5部からなる溶液>を、触媒溶液<2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.33部及びアセトン5部からなる溶液>に変更したこと以外、実施例7と同様にして、本発明の印刷適性向上剤(12){25℃の粘度:7200mPa・s}を得た。
【0035】
<実施例13>
「アクリルアミド(A1)159.4部」を「アクリルアミド(A1)242.7部」に変更したこと、「共重合ビニル単量体(A21){アクリル酸ナトリウム}211.3部」を「共重合ビニル単量体(A21){アクリル酸ナトリウム}107.3部」に変更したこと、触媒溶液<2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.39部及びアセトン5部からなる溶液>を、触媒溶液<2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.33部及びアセトン5部からなる溶液>に変更したこと以外、実施例7と同様にして、本発明の印刷適性向上剤(13){25℃の粘度:7000mPa・s}を得た。
【0036】
<実施例14>
「アクリルアミド(A1)159.4部」を「アクリルアミド(A1)262.9部」に変更したこと、「共重合ビニル単量体(A21){アクリル酸ナトリウム}211.3部」を「共重合ビニル単量体(A21){アクリル酸ナトリウム}87.1部」に変更したこと、触媒溶液<2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.39部及びアセトン5部からなる溶液>を、触媒溶液<2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.31部及びアセトン5部からなる溶液>に変更したこと以外、実施例7と同様にして、本発明の印刷適性向上剤(14){25℃の粘度:8000mPa・s}を得た。
【0037】
【表1】

注)A1:A2は、アクリルアミド(A1):共重合ビニル単量体(A2)のモル比
【0038】
<比較例1>
特許文献1に記載された実施例の例1(a)と同様にして、比較用の印刷適性向上剤(H1){ポリアルキレンポリ尿素−アルデヒド樹脂}を得た。
【0039】
<比較例2>
特許文献2に記載された実施例1と同様にして、比較用の印刷適性向上剤(H2){ポリアミド−尿素−アルデヒド樹脂を環状炭化水素基で変性した樹脂}を得た。
【0040】
<比較例3>
ジエチレントリアミン103部及び尿素60部を140〜150℃で5時間加熱撹拌し、その間発生するアンモニアを除去した。次いで120℃まで冷却してから、290部の水を加え、均一混合した後、37重量%ホルマリン水溶液51部を加えて水溶液を得た。この水溶液に、10N−水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを10.5に調整した。さらに、この水溶液を63〜65℃で2時間攪拌した後、1N−塩酸でpHを7.5に調整して、比較用の印刷適性向上剤(H3){ポリアミド−尿素−アルデヒド樹脂、アミン−エピハロヒドリン樹脂}を得た。
【0041】
<実施例15〜28及び比較例4〜6>
No.1プレディスパーズトクレー{ENGELHARD MINERAL&CHEMICALS社製、UW−90}50部、重質炭酸カルシウム{(株)ファイマテック製、FMT−90(75%水分散液)}66.7部、分散剤{サンノプコ(株)製、SNディスパーサント5040(40%水溶液)}0.35部、水酸化ナトリウム0.18部及び水14.2部を、ホモディスパー{(株)島崎製作所製、ROTARY AJITER SH2Z}(3000rpm)で30分間、混合・分散して、分散体を得た。
引き続き、この分散体に、スチレン−ブタジエンラテックス[ジェイエスアール(株)製、JSR2635G(濃度48%、残りは水)]24.8部及び水に溶解したリン酸エステル化澱粉(濃度35%)[日本食品加工(株)製、MS−4600]8.6部を加えた後、実施例1〜14及び比較例1〜3の印刷適性向上剤のうちいずれか1種を0.25部を加えて、ホモディスパー(3000rpm)で15分間、撹拌・混合して、本発明の塗被塗料(1)〜(14)及び比較用の塗被塗料(H1)〜(H3){いずれも濃度64%}を得た。
また、印刷適性向上剤を加えなかったこと以外、上記と同様にして、塗被塗料(ブランク)を得た。
【0042】
<実施例29〜42及び比較例7〜9>
重質炭酸カルシウム{(株)ファイマテック製、FMT−90(75%水分散液)}133.3部、分散剤{サンノプコ(株)製、SNディスパーサント5040(40%水溶液)}0.35部、水酸化ナトリウム0.05部及び水5.8部を、ホモディスパー{(株)島崎製作所製、ROTARY AJITER SH2Z}(3000rpm)で30分間、混合・分散して、分散体を得た。
引き続き、この分散体に、スチレン−ブタジエンラテックス[ジェイエスアール(株)製、JSR2635G(濃度48%、残りは水)]20.8部及び水に溶解した酸化澱粉(濃度35%)[日本食品加工(株)製、MS−3600]8.6部を加えた後、実施例1〜14及び比較例1〜3の印刷適性向上剤のうちいずれか1種を0.25部を加えて、ホモディスパー(3000rpm)で15分間、撹拌・混合して、本発明の塗被塗料(15)〜(28)及び比較用のと被塗料(H4)〜(H6){いずれも濃度67%}を得た。
また、印刷適性向上剤を加えなかったこと以外、上記と同様にして、塗被塗料(ブランク)を得た。
【0043】
<実施例43〜70、比較例10〜15>
実施例15〜42及び比較例4〜9で得た塗被塗料のうちいずれか1種の塗被塗料を、坪量68g/m2 の上質紙原紙{コクヨ(株)製、KB−34}に塗工量(坪量)が10g/m2 になるように枚葉式ブレードコーター{(株)オースギ製 MLC−100L}(塗被速度20m/秒)で塗被した後、135℃で20秒間乾燥し、さらに、温度70℃、線圧100kg/cmでスーパーカレンダーに2回通紙し、本発明の塗被紙(1)〜(28)及び比較用の塗被紙(H1)〜(H6)(いずれも30cm×20cm)を得た。
【0044】
<印刷光沢>
印刷適性試験機{石川島産業機械(株)製、RI‐1型}及びインク(東洋インキ製造(株)製、TKハイエコー紅、M8.0)を用いて、塗被紙にインクを印刷した後、ディジタル光沢計{村上色彩技術研究所(株)製、GM−26D型}で、印刷光沢を測定した。数値が大きいほど光沢が良好であることを示す。
【0045】
<インク着肉>
印刷適性試験機{石川島産業機械(株)製、RI‐1型}及びインク(東洋インキ製造(株)製、TKハイエコー墨、M9.0)を用いて、塗被紙にインクを印刷した後、濃度計{GRETAGMACBETH製、RD−19}で、インク着肉を測定した。数値が大きいほどインク着肉が良好であることを示す。
【0046】
<ウエットインク着肉>
印刷適性試験機{石川島産業機械(株)製、RI‐1型}及びピッキングインク(大日本インキ化学工業(株)製、TV=6)を用いて、塗被紙にピッキングインクを印刷した後、目視で印刷面を観察し、以下の基準でウエットインク着肉を評価した。数値が大きいほどウエットインク着肉が良好であることを示す。
5:紙面にインクが載っていない部分がない
4:紙面の約1〜20面積%にインクが載っていない部分がある
3:紙面の約21〜40面積%にインクが載っていない部分がある
2:紙面の約41〜70面積%にインクが載っていない部分がある
1:紙面の約71〜100面積%にインクが載っていない部分がある
【0047】
<インクセット>
印刷適性試験機{石川島産業機械(株)製、RI‐1型}及びインク(大日本インキ化学工業(株)製、ジオスGスミ)を用いて、塗被紙にインクを印刷した後、濃度計{GRETAGMACBETH製、RD−19}で、インクセットを測定した。数値が小さいほどインクセットが良好であることを示す。
【0048】
<ドライピック>
印刷適性試験機{石川島産業機械(株)製、RI‐1型}及びピッキングインク(大日本インキ化学工業(株)製、TV=30)を用いて、塗被紙にピッキングインクを印刷した後、目視で印刷面を観察し、以下の基準でドライピック強度を評価した。数値が大きいほどドライピック強度が強いことを示す。
5:紙面にムケがない
4:紙面の約1〜20面積%にムケがある
3:紙面の約21〜40面積%にムケがある
2:紙面の約41〜70面積%にムケがある
1:紙面の約71〜100面積%にムケがある
【0049】
<ウエットピック>
印刷適性試験機{石川島産業機械(株)製、RI‐1型}及びピッキングインク(大日本インキ化学工業(株)製、TV=26)を用いて、塗被紙にピッキングインクを印刷した後、目視で印刷面を観察し、以下の基準でウエットピック強度を評価した。数値が大きいほどウエットピック強度が強いことを示す。
5:紙面にムケがない
4:紙面の約1〜20面積%にムケがある
3:紙面の約21〜40面積%にムケがある
2:紙面の約41〜70面積%にムケがある
1:紙面の約71〜100面積%にムケがある
【0050】
<塗被塗料物性>
(1)ローシア粘度
BM型粘度計{(株)東京計器製}を用いて、塗被塗料の25℃での低剪断粘度(60rpm)を測定した。
(2)ハイシア粘度
ハイシア粘度計{SMT(株)製、PM−9000V}を用いて、塗被塗料の25℃での高剪断粘度(8800rpm)を測定した。
(3)保水性
保水性試験機{CALTEKSCIENTIFIC(株)製、}を用いて、塗被塗料の25℃での保水性を測定した。数値が小さい方が保水性が良好である。
【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
本発明の印刷適性向上剤は、印刷適性向上剤を添加しなかったとき{ブランク(無添加)}と比較して、印刷適性が著しく向上した。さらに、塗被塗料の増粘性、保水性も良好であった。一方、比較例の印刷性向上剤は、ブランクに比較して、印刷適性はわずかに向上した程度であった。さらに、塗被塗料の増粘性、保水性も本発明の印刷適性向上剤ほど良好ではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の印刷適性向上剤は、印刷適性を要求される用途に制限なく使用できる。特に、塗被紙の印刷適性を向上させる目的で、塗被塗料に使用される塗被紙用印刷適性向上剤として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルアミド(A1)を必須構成単量体としてなる水溶性ビニル(共)重合体からなることを特徴とする印刷適性向上剤。
【請求項2】
アクリルアミド(A1)及び共重合ビニル単量体(A2)を必須構成単量体としてなる水溶性ビニル共重合体からなることを特徴とする印刷適性向上剤。
【請求項3】
共重合ビニル単量体(A2)が(メタ)アクリル酸(塩)である請求項2に記載の印刷適性向上剤。
【請求項4】
アクリルアミド(A1)と共重合ビニル単量体(A2)とのモル比(A1:A2)が50:50〜95:5である請求項2又は3に記載の印刷適性向上剤。
【請求項5】
顔料、接着剤及び請求項1〜4のいずれかに記載の印刷適性向上剤を含有してなる塗被紙用塗被塗料。
【請求項6】
顔料として炭酸カルシウムを含み、炭酸カルシウムの含有量が顔料の重量に基づいて50〜100重量%である請求項5に記載の塗被塗料。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の塗被塗料を塗被原紙に塗被してなる塗被紙。

【公開番号】特開2007−297736(P2007−297736A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126469(P2006−126469)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000106438)サンノプコ株式会社 (124)
【Fターム(参考)】