説明

印刷配線板用樹脂組成物並びにこれを用いたワニス、プリプレグ及び金属張積層板

【課題】動作周波数が1GHzを超えるような電子機器に使用される印刷配線板用樹脂組成物、並びにこれを用いたワニス、プリプレグ及び金属張積層板を提供する。
【解決手段】分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマと、分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂とを含む印刷配線板用樹脂組成物、並びにこれを用いたワニス、プリプレグ及び金属張積層板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷配線板用樹脂組成物、並びにこれを用いたワニス、プリプレグ及び金属張積層板に関する。より詳しくは、動作周波数が1GHzを超えるような電子機器に使用される印刷配線板用樹脂組成物、並びにこれを用いたワニス、プリプレグ及び金属張積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話に代表される移動体通信機器やサーバー、ルーター等のネットワーク関連電子機器には、大容量の情報を、低損失かつ高速で伝送・処理することが要求されているため、印刷配線板上で扱われる電気信号の高周波数化が進んでいる。しかし、高周波になるほど、電気信号は減衰しやすいため、これらの分野で使用される印刷配線板には、低伝送損失を有する材料を用いる必要がある。すなわち、1GHz以上の高周波数帯において、比誘電率及び誘電正接の低さに代表される、優れた誘電特性を有する材料を用いる必要がある。
【0003】
これらを背景に、印刷配線板用樹脂組成物に、硬化物の誘電特性が優れるシアネートエステル樹脂を使用することが注目されている。従来から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂といった一般的なエポキシ樹脂を、シアネートエステル樹脂に配合した樹脂組成物が提案されており、シアネートエステル樹脂単独系よりも耐湿性や吸湿時の耐熱性が向上することが知られている(例えば特公昭46−41112号公報、特開昭50−132099号公報及び特開昭57−143320号公報)。しかし、これらの樹脂組成物は、エポキシ樹脂の影響により、エポキシ樹脂を配合しないものよりも誘電特性が劣っていた。
【0004】
さらに、本発明者らにより、エポキシ樹脂として、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、アラルキレン骨格含有エポキシ樹脂、低級アルキル基置換フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、及びジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂といった特定のエポキシ樹脂を選択して、シアネートエステル樹脂に配合することにより、上記の一般的なエポキシ樹脂を利用した場合に比べて、高周波数帯での誘電特性が向上した樹脂組成物が提案されている(例えば特開平8−176273号公報、特開平8−176274号公報及び特開平11−60692号公報)。
【0005】
また、本発明者らにより、シアネートエステル樹脂を特定の一価フェノール化合物で変性し、フェノール変性シアネートエステル樹脂組成物とすることにより、シアネートエステル樹脂が有する誘電特性の一層の改善を図り、エポキシ樹脂を配合した場合にも、十分な誘電特性を有する樹脂組成物が提案されている(例えば特開2001−240723号公報)。
【0006】
しかしながら、上記のいずれの樹脂組成物においても、シアネートエステル樹脂又は変性シアネートエステル樹脂を単独で用いた場合よりも、硬化物の耐湿性や耐熱性は改善されるものの、エポキシ樹脂の影響から、高周波数帯での比誘電率及び誘電正接が増加したり、誘電特性の温度に対する安定性の低下(例えば、誘電特性の温度変化に伴うドリフトの増大)が見られ、誘電特性の点では改善の余地があった。
【0007】
特に、無線基地局装置用途や高速サーバー、ルーター等に使用される多層印刷配線板では、装置起動中の印刷配線板の温度が85〜90℃と高温になることがあるため、温度が変化することによって比誘電率が変化したり、誘電正接が高くなると、インピーダンスのミスマッチングや伝送損失の増加に伴う伝送エラーを引き起こすという重大な問題が生じかねない。したがって、温度依存性を含めた誘電特性に優れた印刷配線板用樹脂組成物に対する必要性が高まっている。
【0008】
また、これらを背景に、印刷配線板用樹脂組成物として、誘電特性が優れるシアネートエステルとポリフェニレンエーテルとを混練した樹脂組成物が提案されている(例えば特公昭61−18937号公報)。しかし、これらの樹脂組成物では、シアネートエステルの配合量が多いと、誘電正接が比誘電率の値の割に高くなる傾向がある。一方、誘電正接を低下させるために、ポリフェニレンエーテルの配合量を増加させると、樹脂組成物の溶融粘度が高くなって流動性が不足するため、成形性が悪化するという問題点があった。
【0009】
また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂といったエポキシ樹脂を、シアネートエステル樹脂とポリフェニレンエーテルに配合した樹脂組成物が提案されている(例えば特公平4−57696号公報)。しかし、これらの樹脂組成物においては、シアネートエステル樹脂及びポリフェニレンエーテル以外の成分の影響によって高周波数帯での誘電特性は依然として要求のレベルを満たしていないという問題点があった。特に、無線基地局装置用途や高速サーバー、ルーター等に使用される多層印刷配線板では、装置起動中の印刷配線板の温度が85〜90℃と高温になることがあるため、温度が変化することによって比誘電率が変化したり、誘電正接が高くなると、インピーダンスのミスマッチングや伝送損失の増加に伴う伝送エラーを引き起こすという重大な問題が生じかねない。したがって、温度依存性を含めた誘電特性に優れた印刷配線板用樹脂組成物に対する必要性が高まっている。
【0010】
また、本発明者により、シアネートエステル樹脂を特定の一価フェノール化合物で変性し、フェノール変性シアネートエステル樹脂組成物とすることにより、シアネートエステル樹脂が有する誘電特性の一層の改善を図るとともに、これにポリフェニレンエーテル樹脂を配合した、耐熱性、成形性及び加工性に優れ、かつ高周波数帯での誘電特性が良好な樹脂組成物が提案されている(例えば特開平11−21452号公報及び特開平11−21453号公報)。しかしこれらの樹脂組成物においては、温度依存性を含めた良好な誘電特性を有しつつ、長時間のプレッシャークッカー試験等の厳しい条件下での耐湿性をさらに向上させることが求められていた。
【0011】
本発明は、かかる状況に鑑みなされたもので、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂材料と同様な成形性と加工性を具備し、かつ優れた耐湿性と耐熱性を有し、併せて特に高周波数帯での優れた誘電特性及び誘電特性の温度変化に対する優れた安定性を発現する印刷配線板用樹脂組成物、並びにこれを用いたワニス、プリプレグ及び金属張積層板を提供することを目的とする。
【0012】
本発明の第一の発明では、本発明者らは、鋭意研究を行った結果、シアネートエステル樹脂(成分(A))に、エポキシ樹脂を配合するに際し、エポキシ樹脂の少なくとも1種を分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂(以下、ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂(成分(B))という)とした場合に、耐湿性を改善し、併せて高周波数帯での優れた誘電特性及び誘電特性の温度変化に対するドリフト性が小さく、優れた安定性を発現する印刷配線板用樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明の第一の発明では、従来のエポキシ樹脂を配合したシアネートエステル樹脂組成物では、トリアジン環以外にも、トリアジン環よりも極性の高いイソシアヌル環、オキサゾリジノン環等が生成するために、誘電特性(特に誘電正接)が悪化すると考えられる。一方、本発明のビフェニル骨格含有エポキシ樹脂を含む樹脂組成物は、ビフェニル基が疎水性及び低極性を示すため、従来よりもエポキシ樹脂が併用されることによる誘電特性への悪影響が軽減されるものと考えられる。また、硬化物中に剛直な構造のビフェニル骨格が導入されるため、特に高温領域における分子鎖の運動性が低くなることによって、誘電特性の温度依存性も小さくなると考えられる。
【0014】
さらに、本発明の第一の発明である印刷配線板用樹脂組成物は、シアネートエステル樹脂等を単独で用いた場合や、シアネートエステル樹脂等に従来のエポキシ樹脂を併用した場合と比較して、吸湿時の耐熱性に優れ、またガラス状領域における強度と伸びや、高温領域における伸びが高いため、ドリル加工時やリフロー時等での耐クラック性や厳しい耐熱性が要求される10層以上の多層印刷配線板に使用される積層板及びプリプレグ用途に好ましいものである。
【0015】
本発明の第二の発明では、本発明者らは、鋭意研究を行った結果、シアネートエステル樹脂(成分(a))、一価フェノール化合物(成分(b))及びポリフェニレンエーテル樹脂(成分(c))を含む樹脂組成物に、エポキシ樹脂を配合するにあたり、エポキシ樹脂の少なくとも1種を分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂(以下、ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂(成分(d))という)とした場合に、優れた耐湿性を確保でき、併せて高周波数帯での優れた誘電特性及び誘電特性の温度変化に対するドリフト性が小さく、優れた安定性を発現する印刷配線板用樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明の第二の発明によれば、従来のエポキシ樹脂を配合したシアネートエステル樹脂組成物では、トリアジン環以外にも、トリアジン環よりも極性の高いイソシアヌル環、オキサゾリジノン環等が生成するために、誘電特性(特に誘電正接)が悪化すると考えられる。一方、本発明のビフェニル骨格含有エポキシ樹脂を含む樹脂組成物は、ビフェニル基が疎水性及び低極性を示すため、従来よりもエポキシ樹脂が併用されることによる誘電特性への悪影響が軽減されるものと考えられる。また、硬化物中に剛直な構造のビフェニル骨格が導入されるため、特に高温領域における分子鎖の運動性が低くなることによって、誘電特性の温度依存性も小さくなると考えられる。加えて、ビフェニル骨格導入系は従来のエポキシ樹脂を併用下系と比べて、ガラス状領域での高い強度と伸び、高温領域での高い伸びを発現するため、耐クラック性に優れかつ非常に耐熱性の高い樹脂硬化物が得られるようになった。
【0017】
また、本発明の第一の発明及び第二の発明による印刷配線板用樹脂組成物は、シアネートエステル樹脂等を単独で用いた場合や、シアネートエステル樹脂等に従来のエポキシ樹脂を併用した場合と比較して、吸湿時の耐熱性に優れ、またガラス状領域における強度と伸びや、高温領域における伸びが高いため、ドリル加工時やリフロー時等での耐クラック性や厳しい耐熱性が要求される10層以上の多層印刷配線板に使用される積層板及びプリプレグ用途に好ましいものである。
【発明の概要】
【0018】
本発明の印刷配線板用樹脂組成物は、分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマと、
分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂と
を含む組成物に関する。
【0019】
本発明の印刷配線板用樹脂組成物は、分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマと、
分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂と、
一価フェノール化合物と
を含む組成物に関する。
【0020】
本発明の印刷配線板用樹脂組成物は、分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマと一価フェノール化合物とを反応させて得られるフェノール変性シアネートエステルオリゴマー、並びに
分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂
を含む組成物に関する。
【0021】
本発明の印刷配線板用樹脂組成物は、分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマと一価フェノール化合物とを反応させて得られるフェノール変性シアネートエステルオリゴマー、並びに
分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂を含み、かつ
一価フェノール化合物
を含む組成物に関する。
【0022】
本発明の印刷配線板用樹脂組成物は、分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマ、分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂、及び一価フェノール化合物を反応させて得られるエポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマー
を含む組成物に関する。
【0023】
本発明の印刷配線板用樹脂組成物は、分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマ、分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂、及び一価フェノール化合物を反応させて得られるエポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーと、
一価フェノール化合物と
を含む組成物に関する。
【0024】
本発明の印刷配線板用樹脂組成物は、フェノール変性シアネートエステルオリゴマーを、ポリフェニレンエーテル樹脂の存在下で、分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマと一価フェノール化合物とを反応させて得る組成物に関する。
【0025】
本発明の印刷配線板用樹脂組成物は、エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーを、ポリフェニレンエーテル樹脂の存在下で、分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマと、一価フェノール化合物及び分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂とを反応させて得る組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0027】
本発明の第一の発明について、以下に説明する。本発明の第一の発明では、分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマは、(A)成分であり、分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂は、(B)成分であり、一価フェノール化合物は、(C)成分である。
本発明の第一の発明である印刷配線板用樹脂組成物は、(A)分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマと、(B)分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂とを含む組成物に関し、またさらに(C)一価フェノール化合物を含む、上記の印刷配線板用樹脂組成物に関する。本発明の第一の発明は、これらの印刷配線板用樹脂組成物を用いたワニス、プリプレグ及び金属張積層板に関する。
【0028】
さらに、本発明の第一の発明は、(A)分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマと、(C)一価フェノール化合物のとを反応させて得られるフェノール変性シアネートエステルオリゴマー、並びに(B)分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂を含む印刷配線板用樹脂組成物、並びにこれを用いたワニス、プリプレグ及び金属張積層板に関する。
【0029】
また、本発明の第一の発明は、(A)分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマ、(B)分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂、及び(C)一価フェノール化合物を反応させて得られるエポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーを含む印刷配線板用樹脂組成物、並びにこれを用いたワニス、プリプレグ及び金属張積層板に関する。
【0030】
本発明の印刷配線板用樹脂組成物の第一の態様は、(A)分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマと、(B)ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂とを含む組成物である。
【0031】
本発明の(A)分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物は、特に限定されない。分子中にシアナト基が2つ以上存在すれば、架橋して硬化することが可能だからである。例えば、式(I):
【化1】

【0032】
式中、R1は、
【化2】


を示し、R2及びR3は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、それぞれ同じであっても、異なってもよい、
で示されるシアネートエステル化合物、及び式(II):
【化3】


式中、R4は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、mは、1〜7の整数を示す、
で示されるシアネートエステル化合物が挙げられる。
【0033】
本発明の(A)成分の分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物のプレポリマは、特に限定されない。ここで、プレポリマとは、シアネートエステル化合物同士が、環化反応によりトリアジン環を形成したシアネートエステルオリゴマーをいい、主にシアネートエステル化合物の3、5、7、9及び11量体が挙げられる。プレポリマにおいて、シアナト基の転化率は特に限定されないが、通常は20〜70%の範囲内で転化されたプレポリマを用いることが好ましく、より好ましくは30〜65%である。例えば、式(I)又は式(II)で示されるシアネートエステル化合物のプレポリマが挙げられる。
【0034】
本発明の(A)成分の好ましい例としては、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、α,α′−ビス(4−シアナトフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、フェノール付加ジシクロペンタジエン重合体のシアネートエステル化合物、フェノールノボラック型シアネートエステル化合物及びクレゾールノボラック型シアネートエステル化合物、及びこれらのプレポリマ等が挙げられ、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、α,α′―ビス(4−シアナトフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、及びこれらのプレポリマが好ましい。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
本発明の(B)ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂を少なくとも1種含むエポキシ樹脂は、ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂が必須成分として含有されるものであれば、特に限定されない。例えば、ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂1種のみからなるエポキシ樹脂、ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂2種以上の組み合わせからなるエポキシ樹脂、ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂1種以上と他のエポキシ樹脂1種以上の組み合わせからなるエポキシ樹脂のいずれでもよい。なお、ビフェニル骨格と、他の骨格とを有するエポキシ樹脂は、本発明においては、ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂に分類する。
【0036】
ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂は、特に限定されないが、例えば、式(III):
【化4】


式中、R5は、水素原子又はメチル基を示し、nは、0〜6の整数を示す、
で示されるエポキシ樹脂、及び式(IV):
【化5】


式中、pは、1〜5の整数を示す、
で示されるエポキシ樹脂が挙げられる。
【0037】
式(III)で示されるエポキシ樹脂において、nは好ましくは0〜5であり、より好ましくは0〜3であり、さらに好ましくは0又は1であり、特に好ましくは0である。また、nの値が異なる式(III)のエポキシ樹脂の混合物を用いてもよい。具体的には、ビフェノールジグリシジルエーテル、及び3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル等が挙げられ、式(IV)で示されるエポキシ樹脂としては、ビフェニルアラルキレンノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。また、pの値が異なる式(IV)のエポキシ樹脂の混合物を用いてもよい。これらのビフェニル骨格含有エポキシ樹脂は単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。加えて、これらのビフェニル骨格含有エポキシ樹脂としては、コスト的に有利であり、かつ硬化物の強度及び誘電特性が若干優れているため、式(IV)よりも式(III)のエポキシ樹脂の方がより好ましい。
【0038】
本発明の(B)成分が、ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂1種以上と、ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂以外の他のエポキシ樹脂の1種以上とを組み合わせたものである場合、他のエポキシ樹脂は特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、アラルキレン骨格含有エポキシ樹脂、フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、低級アルキル基置換フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂及びジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂等が挙げられる。中でもフェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が高いガラス転移温度(Tg)とコストの面から好適に併用でき、耐燃性の付加を目的とすれば臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が好適に併用できる。
【0039】
本発明の(B)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して、10〜250重量部であることが、厳しい条件下での耐湿性や、吸湿時の耐熱性や強度及び伸び等の向上、並びに高周波数帯域での誘電特性の点から好ましい。(B)成分の配合量は、より好ましくは10〜150重量部であり、特に好ましくは10〜100重量部である。誘電特性の点からは、(B)成分中のビフェニル骨格含有エポキシ樹脂の割合が、50重量%以上であることが好ましく、より好ましくは70重量%以上であり、特に好ましくは100重量%、すなわち(B)成分がすべてビフェニル骨格含有エポキシ樹脂である。
【0040】
第一の態様の樹脂組成物には、(C)一価フェノール化合物を配合してもよい。(C)成分を配合することにより、硬化物中の未反応のシアナト基を減少させることができるため、耐湿性及び誘電特性の点から好ましい。
【0041】
本発明の(C)成分は、特に限定されないが、例えば、式(V):
【化6】


式中、R6、R7は、水素原子又はメチル基を示し、それぞれ同じであっても、異なってもよく、qは、1〜3の整数を示す、
で示される一価フェノール化合物、及び式(VI):
【化7】


式中、R8は水素原子又はメチル基を示し、R9
【化8】


を示し、rは、1〜2の整数を示す、
で示される一価フェノール化合物が挙げられる。
【0042】
式(V)で示される一価フェノール化合物としては、p−(α−クミル)フェノール、モノ−、ジ−又はトリ−(α−メチルベンジル)フェノールが挙げられる。式(VI)で示される一価フェノール化合物としては、p−tert−ブチルフェノール、2,4−又は2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、p−tert−アミルフェノール及びp−tert−オクチルフェノールが挙げられる。これらの一価フェノール化合物は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
本発明の(C)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して、2〜60重量部の範囲とするのが好ましく、より好ましくは3〜45重量部であり、特に好ましくは4〜30重量部である。(C)成分をこの範囲で配合すると、誘電特性の点から好ましく、特に高周波数帯域での誘電正接が十分低いものが得られる傾向にあることに加えて、耐湿性の点から十分な効果が得られ、吸湿時の耐熱性等に悪影響を及ぼすこともないという傾向がある。
【0044】
第一の態様の樹脂組成物には、金属系触媒を配合することが好ましい。金属系触媒は、(A)成分の自己重合反応、及び(C)成分を配合した場合には(A)成分と(C)成分との反応における促進剤、並びに積層板を製造する際の硬化促進剤として機能するものであり、例えば、遷移金属若しくは12属金属の金属塩及びキレート錯体が挙げられる。金属としては、例えば銅、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、亜鉛等が挙げられ、これらの塩としては、例えばカルボン酸塩(好ましくは2−エチルヘキサン酸塩、ナフテン酸塩)等の金属塩が挙げられ、キレート錯体としては、例えばアセチルアセトン錯体が挙げられる。これらの金属系触媒は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、(A)成分の自己重合反応、及び(A)成分と(C)成分との反応における促進剤と、積層板を製造する際の硬化促進剤とは、同一であっても、それぞれ異なる別の金属系触媒であってもよい。
【0045】
金属系触媒の量は、(A)成分に対して、重量で1〜300ppmとすることが好ましく、より好ましくは1〜200ppmであり、特に好ましくは2〜150ppmである。この範囲で、金属系触媒を配合すると、反応性・硬化性が十分であり、また硬化速度も適切である。金属系触媒の添加は、一度にまとめてでも、複数回にわけて行ってもよい。
【0046】
第一の態様の樹脂組成物には、(B)成分のグリシジル基の反応を促進させるような触媒機能を有する化合物を配合することができる。具体的には、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、イミダゾール化合物、有機リン化合物、第二級アミン、第三級アミン、第四級アンモニウム塩等が挙げられる。これらの化合物は単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
第一の態様の樹脂組成物には、必要に応じて難燃剤、充填剤等の添加剤を、硬化物の誘電特性や耐熱性等の特性を悪化させない範囲で配合することができる。
【0048】
必要に応じて配合される難燃剤は、特に限定されないが、シアナト基と反応性を有しない難燃剤が好ましい。ここで、シアナト基と反応性を有しないとは、印刷配線板樹脂組成物中に難燃剤を添加した場合に、300℃以下の範囲で混合しても、難燃剤がシアネートエステル化合物のシアナト基と反応せずに、分散あるいは溶解といった形態でそのまま印刷配線板樹脂組成物中に含まれていることをいう。この反応には、樹脂組成物を加熱燃焼した場合における難燃剤の反応は含まない。一般に、印刷配線板用樹脂組成物、並びにこれを用いたワニス、プリプレグ、金属張積層板、印刷配線板等の製造、使用は、300℃以下の範囲内で行われるものである。
【0049】
このような難燃剤としては、上記の条件下で、シアナト基と反応する基として知られる、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、アミノ基、マレイミド基を実質的にもたない難燃剤が挙げられる。ここで、「実質的にもたない」には、難燃剤にこれらの基が全く含まれない場合及び難燃剤がこれらの基を含んでいてもシアネートエステル化合物との相互作用がない場合(例えば、難燃剤が分子量の大きいポリマーであり、かつこれらの基がその最末端にあるため、官能基としての効果がない場合)が含まれる。
【0050】
なお、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の臭素化エポキシ樹脂のようなエポキシ樹脂に分類される難燃剤については、本発明においては(B)成分とする。ただし、グリシジル基を1つのみ有するエポキシ化合物に分類される難燃剤は、シアネートエステル化合物と反応し、トリアジン環又はイソシアヌル環に挿入され得るが、適切な配合量であれば、誘電特性への影響も小さいと考えられるため、難燃剤として使用してもよい。
【0051】
具体的な難燃剤は、例えば、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン、及び式(VII):
【化9】


式中、s、t、uは1〜5の整数を表し、それぞれ同じ値であっても異なってもよい、
で示される臭化トリフェニルシアヌレート難燃剤等が挙げられ、誘電特性の点から、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン及び2,4,6−トリス(トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジンが好ましい。
【0052】
難燃剤の配合量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分(配合されている場合)の合計100重量部に対して、5〜100重量部とすることが好ましく、より好ましくは5〜80重量部であり、特に好ましくは5〜60重量部である。この範囲で配合すると、樹脂組成物において耐燃性が十分であり、かつ硬化物の耐熱性も好ましい。
【0053】
必要に応じて配合される充填剤は、特に限定されないが、通常は、無機充填剤であり、例えば、アルミナ、酸化チタン、マイカ、シリカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー(焼成クレー等)、タルク、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素等である。これらの無機充填剤は、単独でも、2種類以上組み合わせて用いてもよい。また、無機充填剤の形状、粒径等も特に限定されないが、通常、粒径0.01〜50μm、好ましくは0.1〜15μmのものである。さらに、これらの無機充填剤の配合量も特に限定されないが、(A)成分、(B)成分及び(C)成分(配合されている場合)の合計100重量部に対して、1〜1000重量部が好ましく、より好ましくは1〜800重量部である。
【0054】
第一の態様の樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分及び場合により(C)成分やその他の添加剤を、公知の方法で配合し、混合することにより製造することができる。
【0055】
本発明の印刷配線板用樹脂組成物の第二の態様は、(A)分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はプレポリマと(C)一価フェノール化合物とを反応させて得られるフェノール変性シアネートエステルオリゴマーと、(B)ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂とを含む組成物である。予め(A)成分をフェノール変性し、これにビフェニル骨格含有エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂を配合することにより、硬化物に残存するシアナト基を減少させ、耐湿性及び誘電特性をより向上させることができる。
【0056】
フェノール変性シアネートオリゴマーは、例えば(A)成分が単独で環化反応によりトリアジン環を形成するシアネートエステルオリゴマー、(A)成分のシアナト基に(C)成分のフェノール性水酸基が付加したイミドカーボネート化変性オリゴマー、及び/又は(C)成分の1つ又は2つが(A)成分が単独で環化反応により形成するトリアジン環の構造内へと導入された変性オリゴマー(この場合、トリアジン環から伸びる3つの鎖のうち、1つ又は2つが(C)成分に由来する分子に置き換わる)を含む混合オリゴマーとなる。
【0057】
フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成に用いられる(A)成分及び(C)成分の例、並びに(B)成分の例については、第一の態様についての(A)成分、(C)成分、(B)成分の記載が適用される。
【0058】
フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成に用いられる(C)成分は、(A)成分100重量部に対して、2〜60重量部の範囲とするのが好ましく、より好ましくは3〜45重量部であり、特に好ましくは4〜30重量部である。
【0059】
本発明の(B)成分の配合量は、フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成に用いられる(A)成分100重量部に対して、10〜250重量部であることが好ましく、より好ましくは10〜150重量部であり、特に好ましくは10〜100重量部である。誘電特性の点からは、(B)成分中のビフェニル骨格含有エポキシ樹脂の割合が、50重量%以上であることが好ましく、より好ましくは70重量%以上であり、特に好ましくは100重量%、すなわち(B)成分がすべてビフェニル骨格含有エポキシ樹脂である。
【0060】
第二の態様の樹脂組成物は、さらに(C)成分を含んでいてもよく、その場合、該(C)成分と、フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成に用いられる(C)成分との合計が、(A)成分100重量部に対して、2〜60重量部の範囲であることが好ましい。例えば、(A)成分100重量部に対して、(C)成分を0.4重量部以上、かつ60重量部未満の範囲で予め反応させて、フェノール変性シアネートエステルオリゴマーとした後、追加で(C)成分を、フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成に用いた(C)成分との合計が2〜60重量部となる範囲の量で配合することができる。(A)成分100重量部に対して、(C)成分を2〜60重量部の範囲で予め反応させて、フェノール変性シアネートエステルオリゴマーを得た場合は、追加の(C)成分は配合しなくてもよいし、フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成に用いた(C)成分との合計が2〜60重量部となる範囲で配合してもよい。なお、上記の場合において、フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成に用いられる(C)成分と、追加の(C)成分は、同じでも、異なっていてもよく、またそれぞれ2種以上を混合して用いることもできる。
【0061】
フェノール変性シアネートエステルオリゴマーは、例えば、(A)成分と(C)成分を、トルエン、キシレン、メシチレン等の溶媒に溶解した後、70〜120℃で、0.5〜10時間加熱することにより行うことができる。この際に、第一の態様で記載した金属系触媒を添加してもよい。これらの金属系触媒はフェノール変性を促進するものでもある。なお、フェノール変性シアネートエステルオリゴマーは、例えば当初のシアナト基の転換率が20〜70%、好ましくは30〜65%の範囲のものとすることができる。
【0062】
第二の態様の樹脂組成物は、上記のようにして得られたフェノール変性シアネートエステルオリゴマーに(B)成分、及び場合により(C)成分をさらに配合して得られる。これらには、第一の態様の樹脂組成物と同様に、金属系触媒、エポキシ樹脂のグリシジル基の反応を促進させるような触媒機能を有する化合物、難燃剤、充填剤、その他の添加剤等を配合することができ、具体的な例、好適な例、配合量、及び樹脂組成物の製造方法については、第一の態様についての記載が適用される。
【0063】
本発明の印刷配線板用樹脂組成物の第三の態様は、(A)分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマ、(B)ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂、及び(C)一価フェノール化合物を反応させて得られるエポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーを含む組成物である。フェノール変性とエポキシ変性を行うことにより、所望の溶融粘度を有し、かつ硬化物に残存するシアナト基を減少させ、耐湿性及び誘電特性の向上を図ることができる。
【0064】
エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成に用いられる(A)成分、(B)成分、(C)成分の例については、第一の態様について(A)成分、(B)成分、(C)成分の記載が適用される。エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成において、(B)成分は、(A)成分100重量部に対して、10〜250重量部であることが好ましく、より好ましくは10〜150重量部であり、特に好ましくは10〜100重量部である。誘電特性の点からは、(B)成分中のビフェニル骨格含有エポキシ樹脂の割合が、50重量%以上であることが好ましく、より好ましくは70重量%以上であり、特に好ましくは100重量%、すなわち(B)成分がすべてビフェニル骨格含有エポキシ樹脂である。エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成において、(C)成分は、(A)成分100重量部に対して、2〜60重量部の範囲とするのが好ましく、より好ましくは3〜45重量部であり、特に好ましくは4〜30重量部である。
【0065】
第三の態様の樹脂組成物は、さらに(C)成分を含んでいてもよく、その場合、該(C)成分と、エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成に用いられる(C)成分との合計が、(A)成分100重量部に対して、2〜60重量部の範囲であることが好ましい。例えば、(A)成分100重量部に対して、(B)成分10〜250重量部、(C)成分0.4重量部以上、かつ60重量部未満を予め反応させて、エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーとした後、追加で(C)成分を、エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成に用いた(C)成分との合計が2〜60重量部となる範囲の量で配合することができる。エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成に用いられる(C)成分と、追加の(C)成分は、同じでも、異なっていてもよく、またそれぞれ2種以上を混合して用いることもできる。
【0066】
エポキシ/フェノール変性シアネートエステル樹脂組成物は、例えば、(A)成分と、(B)成分及び(C)成分を、トルエン、キシレン、メシチレン等の溶媒に溶解した後、70〜120℃で、0.5〜10時間加熱することにより行うことができる。この際に、第一の態様で記載した金属系触媒を添加してもよい。これらの金属系触媒はフェノール変性を促進するものでもある。なお、エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーは、例えば当初のシアナト基の転換率が20〜70%、好ましくは30〜65%の範囲のものとすることができる。
【0067】
第三の態様の樹脂組成物には、第一の態様の樹脂組成物と同様に、金属系触媒、エポキシ樹脂のグリシジル基の反応を促進させるような触媒機能を有する化合物、難燃剤、充填剤、その他の添加剤等を配合することができ、具体的な例、好適な例、配合量、及び樹脂組成物の製造方法については、第一の態様についての記載が適用される。
【0068】
本発明の第一から第三の態様の印刷配線板用樹脂組成物を用いて、公知の方法により、印刷配線板用プリプレグや金属張積層板を製造することができる。例えば、本発明の印刷配線板用樹脂組成物をそのままで、又は溶媒に溶解若しくは分散させたワニスの形態で、ガラス布等の基材に含浸させた後、乾燥炉中等で通常、80〜200℃(ただし、溶媒を使用した場合は溶媒の揮発可能な温度以上とする)、好ましくは100〜180℃の温度で、3〜30分間、好ましくは3〜15分間乾燥させることによってプリプレグが得られる。次いで、このプリプレグを複数枚重ね、その片面又は両面に金属箔を配置し、加熱成形することによって両面又は片面の金属張積層板と製造することができる。
【0069】
なお、上記のワニス化に用いられる溶媒は、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等のエステル類、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類等の溶媒が挙げられる。特にトルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類がより好ましい。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
本発明の印刷配線板用樹脂組成物、並びにこれを用いたワニス、プリプレグ、金属張積層版は、信号の高周波数化・高速化が要求されている情報通信関連機器(移動体通信機器に内蔵されるフィルタ、VCO等の部品や無線基地局装置を構成するシグナルプロセッサ、パワーアンプ及びアンテナ、あるいはサーバー、ルーター及びマイクロプロセッサの動作周波数が1GHzを超えるような高速コンピュータ等)に使用される印刷配線板に用いることができる。
【0071】
本発明の第二の発明について、以下に説明する。本発明の第二の発明では、分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマは、(a)成分であり、分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂は、(b)成分であり、ポリフェニレンエーテル樹脂は、(c)成分であり、一価フェノール化合物は、(d)成分であり、難燃剤は、(e)成分であり、酸化防止剤は、(f)成分である。
【0072】
本発明の第二の発明は、(a)分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマ、(b)一価フェノール化合物、(c)ポリフェニレンエーテル樹脂、並びに(d)分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂を用いて得られる印刷配線板用樹脂組成物、並びにこれを用いたワニス、プリプレグ及び金属張積層板に関する。
【0073】
また、本発明の第二の発明は、(a)〜(d)成分を含む、印刷配線板用樹脂組成物、並びにこれを用いたワニス、プリプレグ及び金属張積層板に関する。
【0074】
さらに、本発明の第二の発明は、(a)成分と(b)成分とを反応させて得られるフェノール変性シアネートエステルオリゴマー、(c)成分、及び(d)成分を含む、印刷配線板用樹脂組成物、並びにこれを用いたワニス、プリプレグ及び金属張積層板に関する。
【0075】
また、本発明は、(a)成分と、(b)成分及び(d)成分とを反応させて得られるエポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマー、並びに(c)成分を含む、印刷配線板用樹脂組成物、並びにこれを用いたワニス、プリプレグ及び金属張積層板に関する。
【0076】
本発明の第二の発明である印刷配線板用樹脂組成物は、(a)分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマ、(b)一価フェノール化合物、(c)ポリフェニレンエーテル樹脂、並びに(d)分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂を用いて得られる組成物である。本発明の印刷配線板用樹脂組成物の第一の態様は、(a)〜(d)成分を含む印刷配線板用樹脂組成物である。
【0077】
本発明の第二の発明の(a)成分の例については、本発明の第一の発明の(A)成分についての記載が適用される。
【0078】
本発明の(a)成分は、誘電特性の点からは、式(I)で示される化合物及びそのプレポリマが好ましく、耐熱性の点からは、Tgが高い式(II)で示される化合物が好ましい。これらは所望の特性に併せて選択することができ、また、併用する場合には、配合割合を任意に調整することができる。
【0079】
本発明の式(I)で示されるシアネートエステル化合物及びそれらのプレポリマとしては、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、α,α′−ビス(4−シアナトフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、フェノール付加ジシクロペンタジエン重合体のシアネートエステル化合物及びこれらのプレポリマが挙げられ、式(II)で示されるシアネートエステル化合物及びそれらのプレポリマとしては、フェノールノボラック型シアネートエステル化合物及びクレゾールノボラック型シアネートエステル化合物及びこれらのプレポリマ等が挙げられる。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
本発明の(b)一価フェノール化合物は、特に限定されない。(b)成分を配合することにより、硬化の際に効率的にトリアジン環を形成させ、かつ硬化物内に未反応として残存するシアナト基をイミドカーボネート化してその極性を減じることで、硬化物の比誘電率や誘電正接を低下させるものである。通常のシアネートエステル単独系の硬化反応では、トリアジン環が常に3個のシアナト基を有しているため、反応が進行するに従い、トリアジン環は必ず架橋点となるが、本発明の樹脂組成物の硬化においては、(b)成分の1又は2分子がトリアジン環の構成成分として取り込まれるため、トリアジン環から延びているシアナト基が1個又は2個となり、トリアジン環は必ずしも架橋点にはならない。すなわち、シアネートエステル単独系の硬化物と比べて、架橋点間分子量が大きく、架橋密度が小さいという特徴がある硬化物となる。この硬化反応によれば、架橋点間分子量が大きいことにより分子鎖の運動性が向上し、シアナト基の反応性が高くなるとともに、反応が進行しても粘度の上昇が少なくなる。よって、反応系が流動性を失うまでの時間が長くなるため効率的にトリアジン環を形成できる。その結果、硬化物内に残存するシアナト基が減少し、誘電特性が良好となる。(b)成分は、この目的に適したものであれば、特に限定されず、単官能で比較的低分子量でありかつシアネートエステル樹脂との相溶性がよい一価のフェノール化合物が適していると考えられる。
【0081】
本発明の第二の発明の(b)成分の例については、本発明の第一の発明の(C)成分についての記載が適用される。
【0082】
本発明の(c)ポリフェニレンエーテル樹脂は、特に限定されない。(c)成分を配合することにより、更なる誘電特性の向上を可能とするものである。なお、シアネートエステル化合物とポリフェニレンエーテル樹脂とは本来、非相溶系であり、均一な樹脂を得ることが困難であるが、本発明においては、硬化時、及び(b)成分による(a)成分の変性時に、ポリフェニレンエーテルを存在させることにより、いわゆる“セミIPN化”によって均一な樹脂を得ることが可能となる。この際の相溶化(均一化)は、それぞれの成分が化学的結合を形成するのではなく、硬化成分がポリフェニレンエーテル樹脂のポリマーの分子鎖に絡み合いながらオリゴマー化し、最終的に相容した樹脂として存在すると考えられる。上記で述べたように、本発明においては(a)成分に(b)成分が配合されているため、硬化物の架橋点間分子量が大きくなり、硬化成分とポリフェニレンエーテルが絡み合い易く、相容性の向上が見られる。
【0083】
本発明の(c)成分は、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルとポリスチレンのアロイ化ポリマー、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルとスチレン−ブタジエンコポリマーのアロイ化ポリマー等が挙げられる。ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルとポリスチレンのアロイ化ポリマー及びポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルとスチレン−ブタジエンコポリマー等のアロイ化ポリマーを用いる場合は、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル成分を50%以上含有するポリマーであることがより好ましい。
【0084】
本発明の第二の発明の(d)成分の例については、本発明の第一の発明の(B)成分についての記載が適用される。
【0085】
第一の態様の樹脂組成物において、(a)〜(d)成分の配合量の好ましい範囲は以下である。
【0086】
本発明の(b)成分の配合量は、(a)成分100重量部に対して、2〜60重量部であることが好ましく、より好ましくは3〜45重量部であり、特に好ましくは4〜30重量部である。この範囲で、(b)成分を配合すると、特に高周波数帯域での誘電正接が十分に低い、良好な誘電特性が得られ、かつ、良好な吸湿時の耐熱性が得られる。
【0087】
本発明の(c)成分の配合量は、(a)成分100重量部に対して、5〜300重量部とすることが好ましく、より好ましくは10〜200重量部であり、特に好ましくは15〜100重量部である。(c)成分の配合量がこの範囲であると、十分な誘電特性が得られ、また樹脂の溶融粘度が適切なため、流動性が十分で、かつ成形性良好で、(a)成分の反応性もまた、良好であるという傾向にある。
【0088】
本発明の(d)成分の配合量は、(a)成分100重量部に対して、10〜250重量部であることが、厳しい条件下での耐湿性や、吸湿時の耐熱性や強度及び伸び等の向上、並びに高周波数帯域での誘電特性の点から好ましい。(d)成分の配合量は、より好ましくは10〜150重量部であり、特に好ましくは10〜100重量部である。誘電特性の点からは、(d)成分中のビフェニル骨格含有エポキシ樹脂の割合が、50重量%以上であることが好ましく、より好ましくは70重量%以上であり、特に好ましくは100重量%、すなわち(d)成分がすべてビフェニル骨格含有エポキシ樹脂である。
【0089】
第一の態様の樹脂組成物には、(e)難燃剤を添加することができる。(e)成分は、特に限定されないが、シアナト基と反応性を有しない難燃剤が好ましい。ここで、シアナト基と反応性を有しないとは、印刷配線板樹脂組成物中に難燃剤を添加した場合に、300℃以下の範囲で混合しても、難燃剤がシアネートエステル化合物のシアナト基と反応せずに、分散あるいは溶解といった形態でそのまま印刷配線板樹脂組成物中に含まれていることをいう。この反応には、樹脂組成物を加熱燃焼した場合における難燃剤の反応は含まない。一般に、印刷配線板用樹脂組成物、並びにこれを用いたワニス、プリプレグ、金属張積層板、印刷配線板等の製造、使用は、300℃以下の範囲内で行われるものである。
【0090】
このような難燃剤としては、上記の条件下で、シアナト基と反応する基として知られる、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、アミノ基、マレイミド基を実質的にもたない難燃剤が挙げられる。ここで、「実質的にもたない」には、難燃剤にこれらの基が全く含まれない場合及び難燃剤がこれらの基を含んでいてもシアネートエステル化合物との相互作用がない場合(例えば、難燃剤が分子量の大きいポリマーであり、かつこれらの基がその最末端にあるため、官能基としての効果がない場合)が含まれる。
【0091】
なお、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の臭素化エポキシ樹脂のようなエポキシ樹脂に分類される難燃剤については、本発明においては(d)成分とする。ただし、グリシジル基を有するエポキシ化合物に分類される難燃剤は、シアネートエステル化合物と反応し、トリアジン環又はイソシアヌル環に挿入され得るが、適切な配合量であれば、誘電特性への影響も小さいと考えられるため、難燃剤として使用してもよい。
【0092】
本発明の第二の発明の具体的な難燃剤の例については、本発明の第一の発明の難燃剤についての記載が適用される。
【0093】
難燃剤の配合量は、(a)〜(d)成分の合計100重量部に対して、5〜100重量部とすることが好ましく、より好ましくは5〜80重量部であり、特に好ましくは5〜60重量部である。この範囲で配合すると、樹脂組成物において耐燃性が十分であり、かつ硬化物の耐熱性も好ましい。
【0094】
第一の態様の樹脂組成物には、(f)酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤を配合することにより、印刷配線板用樹脂組成物を硬化させ、積層板等に加工した場合に、金属マイグレーションの発生を抑制し、絶縁信頼性の更なる向上を図ることができる。
【0095】
本発明の(f)成分は、特に限定されないが、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤が好ましい。なお、酸化防止剤をその骨格から分類することは当業者によく知られており、例えば、「酸化防止剤ハンドブック」第12〜第17頁(昭和51年)にも「フェノール系酸化防止剤」「硫黄系酸化防止剤」という分類で、具体的な酸化防止剤が例示されている。
【0096】
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、ピロガロール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールなどのモノフェノール系や、2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)等のビスフェノール系及び、1,3,5−トリメチル−2,4,6トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−〔メチレン−3−(3′−5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等の高分子型フェノール系がある。硫黄系酸化防止剤の具体例としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等がある。これらの酸化防止剤は単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
【0097】
本発明の(f)成分の配合量は、(a)〜(d)成分の合計100重量部に対して、0.1〜20重量部とすることが好ましく、より好ましくは0.1〜10重量部であり、特に好ましくは0.1〜5重量部である。この範囲で配合すると、硬化物や積層板の絶縁信頼性の向上効果の点から好ましい印刷配線板用樹脂組成物が得られる。
【0098】
第一の態様の樹脂組成物には、金属系触媒を配合することが好ましい。金属系触媒は、(a)成分の自己重合反応、(a)成分と(b)成分、(a)成分と(d)成分との反応における促進剤、並びに積層板を製造する際の硬化促進剤として機能するものであり、例えば、遷移金属若しくは12属金属の金属塩及びキレート錯体が挙げられる。本発明の第二の発明の金属系触媒の金属の例、金属系触媒の例、配合量については、本発明の第一の発明の金属系触媒についての記載が適用される。
【0099】
第一の態様の樹脂組成物には、(d)成分のグリシジル基の反応を促進させるような触媒機能を有する化合物を配合することができる。具体的には、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、イミダゾール化合物、有機リン化合物、第二級アミン、第三級アミン、第四級アンモニウム塩等が挙げられる。これらの化合物は単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
第一の態様の樹脂組成物には、充填剤等の添加剤を、硬化物の誘電特性や耐熱性等の特性を悪化させない範囲で配合することができる。
【0101】
必要に応じて配合される充填剤は、特に限定されないが、通常は、無機充填剤が好適に用いられる。本発明の第二の発明の充填剤の例については、本発明の第一の発明の充填剤についての記載が適用される。さらに、無機充填剤の配合量も特に限定されないが、(a)〜(d)成分の合計100重量部に対して、1〜1000重量部が好ましく、より好ましくは1〜800重量部である。
【0102】
第一の態様の樹脂組成物は、(a)〜(d)成分及びその他の添加剤を、公知の方法で配合し、混合することにより製造することができる。
【0103】
本発明の第二の態様は、(a)分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はプレポリマと(b)一価フェノール化合物とを反応させて得られるフェノール変性シアネートエステルオリゴマー、(c)ポリフェニレンエーテル樹脂、並びに(d)ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂を含む組成物である。
【0104】
フェノール変性シアネートオリゴマーは、例えば(a)成分が単独で環化反応によりトリアジン環を形成するシアネートエステルオリゴマー、(a)成分のシアナト基に(b)成分のフェノール性水酸基が付加したイミドカーボネート化変性オリゴマー、(b)成分の1つ又は2つが(a)成分が単独で環化反応により形成するトリアジン環の構造内へと導入された変性オリゴマー(この場合、トリアジン環から伸びる3つの鎖のうち、1つ又は2つが(b)成分に由来する分子に置き換わる)を含む混合オリゴマーとなる。
【0105】
フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成に用いられる(a)成分及び(b)成分の例、並びに(c)成分、(d)成分の例については、第一の態様についての(a)〜(d)成分の記載が適用される。
【0106】
フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成に用いられる(b)成分は、(a)成分100重量部に対して、2〜60重量部であることが好ましく、より好ましくは3〜45重量部であり、特に好ましくは4〜30重量部である。
【0107】
本発明の(c)成分の配合量は、フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成に用いられる(a)成分100重量部に対して、5〜300重量部とすることが好ましく、より好ましくは10〜200重量部であり、特に好ましくは15〜100重量部であり、(d)成分の配合量は、10〜250重量部であることが好ましく、より好ましくは10〜150重量部であり、特に好ましくは10〜100重量部である。誘電特性の点からは、(d)成分中のビフェニル骨格含有エポキシ樹脂の割合が、50重量%以上であることが好ましく、より好ましくは70重量%以上であり、特に好ましくは100重量%、すなわち(d)成分がすべてビフェニル骨格含有エポキシ樹脂である。
【0108】
第二の態様の樹脂組成物は、さらに(b)成分を含んでいてもよく、その場合、該(b)成分と、フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成に用いられる(b)成分との合計が、(a)成分100重量部に対して、2〜60重量部の範囲であることが好ましい。例えば、(a)成分100重量部に対して、(b)成分を0.4重量部以上、かつ60重量部未満の範囲で予め反応させて、フェノール変性シアネートエステルオリゴマーとした後、追加で(b)成分を、フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成に用いた(b)成分との合計が2〜60重量部となる範囲の量で配合することができる。(a)成分100重量部に対して、(b)成分を2〜60重量部の範囲で予め反応させて、フェノール変性シアネートエステルオリゴマーを得た場合は、追加の(b)成分は配合しなくてもよいし、フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成に用いた(b)成分との合計が2〜60重量部となる範囲で配合してもよい。なお、上記の場合において、フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成に用いられる(b)成分と、追加の(b)成分は、同じでも、異なっていてもよく、またそれぞれ2種以上を混合して用いることもできる。
【0109】
フェノール変性シアネートエステルオリゴマーは、例えば、(a)成分と(b)成分を、トルエン、キシレン、メシチレン等の溶媒に溶解した後、70〜120℃で、0.5〜10時間加熱することにより行うことができる。この際に、第一の態様で記載した金属系触媒を添加してもよい。これらの金属系触媒はフェノール変性を促進するものでもある。なお、フェノール変性シアネートエステルオリゴマーは、例えば当初のシアナト基の転換率が20〜70%、好ましくは30〜65%の範囲のものとすることができる。
【0110】
なお、フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成は、(c)成分存在下で行うことが好ましい。(c)成分は、加熱溶融物又は溶媒に溶解した溶液とすることができる。これにより、フェノール変性シアネートエステルオリゴマーと、(c)成分とが均一に相容化した、いわゆる“セミIPN化”が可能となる。溶液とする場合、溶媒としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等のエステル類、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類等の溶媒が挙げられる。特にトルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類がより好ましい。
【0111】
第二の態様の樹脂組成物は、第一の態様の樹脂組成物と同様に、(e)難燃剤を配合することができる。(e)成分についての例、配合量は、第一の態様の樹脂組成物についての記載が適用される。また、第二の態様の樹脂組成物は、(f)酸化防止剤を配合することができる。(f)成分についての例、配合量は、第一の態様の樹脂組成物についての記載が適用される。難燃剤、酸化防止剤の配合量において、(a)〜(d)成分の合計には、フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの原料の(a)成分及び(b)成分を含むものとする。
【0112】
第二の態様の樹脂組成物は、金属系触媒、エポキシ樹脂のグリシジル基の反応を促進させるような触媒機能を有する化合物、充填剤、その他の添加剤等を配合することができ、それらの例、配合量、及び樹脂組成物の製造方法については、第一の態様についての記載が適用される。なお、充填剤の配合量において、(a)〜(d)成分の合計には、フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの原料の(a)成分及び(b)成分を含むものとする。
【0113】
第三の態様の樹脂組成物は、(a)分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はプレポリマと、(b)一価フェノール化合物及び(d)ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂を反応させて得られるエポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマー、並びに(c)成分を含む組成物である。
【0114】
エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成に用いられる(a)成分、(b)成分及び(d)成分の例については、第一の態様について(a)成分、(b)成分及び(d)成分の記載が適用される。エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成において、(b)成分は、(a)成分100重量部に対して、2〜60重量部であることが好ましく、より好ましくは3〜45重量部であり、特に好ましくは4〜30重量部である。(d)成分は、(a)成分100重量部に対して、10〜250重量部であることが好ましく、より好ましくは10〜150重量部であり、特に好ましくは10〜100重量部である。誘電特性の点からは、(d)成分中のビフェニル骨格含有エポキシ樹脂の割合が、50重量%以上であることが好ましく、より好ましくは70重量%以上であり、特に好ましくは100重量%、すなわち(d)成分がすべてビフェニル骨格含有エポキシ樹脂である。(c)成分についても、第一の態様についての(c)成分の記載が適用される。(c)成分の配合量は、エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成に用いられる(a)成分100重量部に対して、5〜300重量部とすることが好ましく、より好ましくは10〜200重量部であり、特に好ましくは15〜100重量部である。
【0115】
エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーは、さらに(b)成分を含んでいてもよく、その場合、該(b)成分と、エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成に用いられる(b)成分との合計が、(a)成分100重量部に対して、2〜60重量部の範囲であることが好ましい。例えば、(a)成分100重量部に対して、(b)成分0.4重量部以上、かつ60重量部未満、及び(d)成分10〜250重量部を予め反応させて、エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーとした後、追加で(b)成分を、エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成に用いた(b)成分との合計が2〜60重量部となる範囲の量で配合することができる。(a)成分100重量部に対して、(b)成分2〜60重量部、及び(d)成分10〜250重量部で予め反応させて、エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーを得た場合は、追加の(b)成分は配合しなくてもよいし、エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成に用いた(b)成分との合計が2〜60重量部となる範囲で配合してもよい。なお、上記の場合において、エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成に用いられる(b)成分と、追加の(b)成分は、同じでも、異なっていてもよく、またそれぞれ2種以上を混合して用いることもできる。
【0116】
エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーは、例えば、(a)成分と、(b)成分及び(d)成分を、トルエン、キシレン、メシチレン等の溶媒に溶解した後、70〜120℃で、0.5〜10時間加熱することにより行うことができる。この際に、第一の態様で記載した金属系触媒を添加してもよい。なお、エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーは、例えば当初のシアナト基の転換率が20〜70%、好ましくは30〜65%の範囲のものとすることができる。
【0117】
なお、エポキシフェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成は、(c)成分存在下で行うことが好ましい。エポキシ/フェノール変性は、(c)成分の加熱溶融物中で、又は溶媒に溶解した溶液中で行うことができる。溶媒は、第二の態様で挙げられたものが適用される。これにより、エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーと、(c)成分とが均一に相容化した、いわゆる“セミIPN化”が得られる。
【0118】
第三の態様の樹脂組成物は、第一の態様の樹脂組成物と同様に、(e)難燃剤を配合することができる。(e)成分についての例、配合量は、第一の態様の樹脂組成物についての記載が適用される。また、第三の態様の樹脂組成物は、(f)酸化防止剤を配合することができる。(f)成分についての例、配合量は、第一の態様の樹脂組成物についての記載が適用される。難燃剤、酸化防止剤の配合量において、(a)〜(d)成分の合計には、エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの原料の(a)成分、(b)成分及び(d)成分を含むものとする。
【0119】
第三の態様の樹脂組成物は、金属系触媒、エポキシ樹脂のグリシジル基の反応を促進させるような触媒機能を有する化合物、充填剤、その他の添加剤等を配合することができ、それらの例、配合量、及び樹脂組成物の製造方法については、第一の態様についての記載が適用される。なお、充填剤の配合量において、(a)〜(d)成分の合計には、エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの原料の(a)成分、(b)成分及び(d)成分を含むものとする。
【0120】
本発明の第一から第三の態様の印刷配線板用樹脂組成物を用いて、公知の方法により、印刷配線板用プリプレグや金属張積層板を製造することができる。例えば、本発明の印刷配線板用樹脂組成物をそのままで、又は溶媒に溶解若しくは分散させたワニスの形態で、ガラス布等の基材に含浸させた後、乾燥炉中等で通常、80〜200℃(ただし、溶媒を使用した場合は溶媒の揮発可能な温度以上とする)、好ましくは100〜180℃の温度で、3〜30分間、好ましくは3〜15分間乾燥させることによってプリプレグが得られる。次いで、このプリプレグを複数枚重ね、その片面又は両面に金属箔を配置し、加熱成形することによって両面又は片面の金属張積層板と製造することができる。
【0121】
なお、上記のワニス化に用いられる溶媒は、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等のエステル類、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類等の溶媒が挙げられる。特にトルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類がより好ましい。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。混合溶媒として用いる場合は、上記芳香族炭化水素類とアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類を併用すると、ワニスの粘度を低めることができるため、高濃度のワニスを得られるという点から好ましい。ケトン系溶媒の配合量としては、芳香族炭化水素系溶媒100重量部に対して30〜300重量部用いるのが好ましく、30〜250重量部がより好ましく、30〜220重量部がさらに好ましい。
【0122】
本発明の印刷配線板用樹脂組成物、並びにこれを用いたワニス、プリプレグ、金属張積層版は、信号の高周波数化・高速化が要求されている情報通信関連機器(移動体通信機器に内蔵されるフィルタ、VCO等の部品や無線基地局装置を構成するシグナルプロセッサ、パワーアンプ及びアンテナ、あるいはサーバー、ルーター及びマイクロプロセッサの動作周波数が1GHzを超えるような高速コンピュータ等)に使用される印刷配線板に用いることができる。
【実施例】
【0123】
以下、具体例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0124】
本発明の第一の発明について、以下の例を用いて説明する。
【0125】
実施例1
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた3リットルの4つ口セパラブルフラスコに、トルエン833g、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンのプレポリマ(Arocy B−10、チバガイギー製)1000g及び3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル(テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、YX−4000、ジャパンエポキシレジン製)547gを投入し、80℃に加熱して攪拌溶解した。次いで、溶解確認後室温まで冷却し、硬化促進剤としてナフテン酸亜鉛(和光純薬工業製)1.25gを配合して不揮発分濃度約65重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0126】
実施例2
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた3リットルの4つ口セパラブルフラスコに、トルエン780g、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンのビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタンのプレポリマ(Arocy M−30、チバガイギー製)1000g及びビフェノールジグリシジルエーテルと3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルとの混合ビフェニル型エポキシ樹脂(YL−6121H、ジャパンエポキシレジン製)447gを投入し、80℃に加熱して攪拌溶解した。次いで、溶解確認後室温まで冷却し、硬化促進剤としてナフテン酸亜鉛(和光純薬工業製)1.25gを配合して不揮発分濃度約65重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0127】
実施例3
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた3リットルの4つ口セパラブルフラスコに、トルエン885g、α,α′−ビス(4−シアナトフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン(RTX−366、チバガイギー製)1000g、ビフェニルアラルキレンノボラック型エポキシ樹脂(NC−3000S−H、日本化薬製)586gを投入し、80℃に加熱して攪拌溶解した。次いで、溶解確認した後に室温まで冷却し、p−tert−オクチルフェノール(和光純薬工業製)62gと硬化促進剤としてナフテン酸亜鉛(和光純薬工業製)0.4gを配合して不揮発分濃度約65重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0128】
実施例4
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた3リットルの4つ口セパラブルフラスコに、トルエン438gと2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(Arocy B−10、チバガイギー製)1000gとp−(α−クミル)フェノール(東京化成工業製)30gを投入し、溶解確認後に液温を110℃に保った後で反応促進剤としてナフテン酸マンガン(和光純薬工業製)0.3gを配合し、約1時間加熱反応させてフェノール変性シアネートオリゴマー溶液を合成した。次いで反応液を冷却し、内温が80℃になったらメチルエチルケトン457gと3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル(YX−4000、ジャパンエポキシレジン製)547gを攪拌しながら配合して溶解を確認した後、室温まで冷却した後にp−(α−クミル)フェノール92gと硬化促進剤としてナフテン酸亜鉛(和光純薬工業製)0.15gを配合して不揮発分濃度約65重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0129】
実施例5
実施例4において、3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル(YX−4000,ジャパンエポキシレジン製)をビフェニルアラルキレンノボラック型エポキシ樹脂(NC−3000S−H,日本化薬製)に代えて、表1に示す配合量で配合したこと以外は実施例4と同様にして樹脂ワニスを調製した。
【0130】
比較例1
実施例1において、3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルの代わりに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DER−331L、ダウケミカル製)を表1に示す配合量で配合したこと以外は、実施例1と同様にして不揮発分濃度約65%の樹脂ワニスを調製した。
【0131】
比較例2
実施例1において、3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルの代わりに、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(N−770、大日本インキ化学工業製)を表1に示す配合量で配合したこと以外は、実施例1と同様にして不揮発分濃度約65%の樹脂ワニスを調製した。
【0132】
比較例3
実施例1において、3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルの代わりに、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(N−865、大日本インキ化学工業製)を表1に示す配合量で配合したこと以外は、実施例1と同様にして不揮発分濃度約65%の樹脂ワニスを調製した。
【0133】
比較例4
実施例1において、3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルの代わりに、メチル基、tert−ブチル基置換型フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂(TMH−574、住友化学製)を表1に示す配合量で配合したこと以外は、実施例1と同様にして不揮発分濃度約65%の樹脂ワニスを調製した。
【0134】
比較例5
実施例1において、3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルの代わりに、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂(HP−7200、大日本インキ化学工業製)を表1に示す配合量で配合したこと以外は、実施例1と同様にして不揮発分濃度約65%の樹脂ワニスを調製した。
【0135】
比較例6
実施例1において、3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルの代わりに、β−ナフトールアラルキレン型エポキシ樹脂(ESN−175、新日鐵化学製)を表1に示す配合量で配合したこと以外は、実施例1と同様にして不揮発分濃度約65%の樹脂ワニスを調製した。
【0136】
【表1】

【0137】
実施例1〜5及び比較例1〜6で得られた樹脂ワニスを厚さ0.15mmのガラス布(Eガラス)に含浸した後、160℃で5〜15分間加熱乾燥して樹脂固形分52重量%のプリプレグを得た。次いで、このプリプレグ4枚を重ね、その最外層に厚み18μmの銅箔を配置し、230℃、70分、2.5MPaのプレス条件で加熱加圧成形し両面銅張積層板を作製した。得られた銅張積層板について、誘電特性、銅箔引きはがし強さ、はんだ耐熱性、吸水率、曲げ特性、熱膨張係数(α)及びTg(ガラス転移温度)を評価した。その評価結果を表2に示す。
【0138】
銅張積層板の特性評価方法は以下の通りである。
【0139】
銅張積層板の比誘電率(εr)及び誘電正接(tanδ)は、ベクトル型ネットワークアナライザを用いたトリプレート構造直線線路共振器法により測定した。なお、測定条件は周波数:1GHz、測定温度:室温(25℃)及び90℃とした。
【0140】
銅張積層板(銅箔全面エッチング品)の熱膨張係数(α)とTgは、TMAにより測定した。
【0141】
銅張積層板の銅箔引きはがし強さは、銅張積層板試験規格JIS−C−6481に準拠して測定した。
【0142】
銅張積層板(銅箔全面エッチング品)のはんだ耐熱性は、プレッシャークッカーテスター(条件:121℃、2.2気圧)中に1〜5時間保持した後、260℃及び288℃の溶融はんだに20秒浸漬して、外観を目視で調べた。表中の異常無しとは、ミーズリングや膨れ(ふくれ)の発生が無いことを意味する。
【0143】
銅張積層板(銅箔全面エッチング品)の吸水率は、常態とプレッシャークッカーテスター(条件:121℃、2.2気圧)中に5時間保持した後の重量差から算出した(単位:重量%)。
【0144】
銅張積層板(銅箔全面エッチング品)の曲げ特性は、銅張積層板試験規格JIS−C−6481に準拠して室温における及び200℃における曲げ弾性率、並びに室温における破断強度と破断伸び、200℃における降伏点強度と降伏点伸びを測定した。
【0145】
【表2】

【0146】
表2から明らかなように、実施例1〜5のワニスを用いて作製した積層板は、比較例1〜6の積層板よりも室温(25℃)における1GHzでの誘電特性(特に誘電正接)に優れ、特に一価フェノール化合物を併用した実施例3及び4の積層板の誘電特性はさらに良好な結果であった。さらに、各実施例の90℃における誘電特性(特に誘電正接)も良好であり、温度変化に対する依存性が小さい。また、実施例の積層板は、比較例の積層板と比較して吸湿時のはんだ耐熱性(特に288℃)が良好である。さらに、実施例の積層板は、比較例の積層板よりも室温(25℃)での破断強度と破断伸び率、及び高温(200℃)での降伏点伸び率が高い。
【0147】
本発明の第二の発明について、以下の例を用いて説明する。
【0148】
〔実施例6〜10、比較例7〜12〕
表3に示す配合量に従って金属張積層板用樹脂ワニスを製造した。
【0149】
実施例6
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた3リットルの4つ口セパラブルフラスコに、トルエン300gとポリフェニレンエーテル樹脂(PKN4752、日本GE製)175gを投入し、90℃に加熱し攪拌溶解した。次に、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(Arocy B−10、チバガイギー製)500gとp−tert−ブチルフェノール(関東化学製)32gを投入し、溶解確認後に液温を110℃に保った後で反応促進剤としてナフテン酸亜鉛(和光純薬工業製)0.13gを配合し、約3時間加熱反応させてポリフェニレンエーテル樹脂と相容化したフェノール変性シアネートエステルオリゴマー溶液を合成した。次いで反応液を冷却し、内温が80℃になったらメチルエチルケトン530gと3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル(テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、YX−4000、ジャパンエポキシレジン製)308gを攪拌しながら配合して溶解を確認した後、室温まで冷却し、硬化促進剤としてナフテン酸亜鉛0.1gを配合して不揮発分濃度約55重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0150】
実施例7
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた3リットルの4つ口セパラブルフラスコに、トルエン275gとポリフェニレンエーテル樹脂(PKN4752、日本GE製)100gを投入し、90℃に加熱し攪拌溶解した。次に、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン(Arocy M−10、チバガイギー製)500gとp−tert−オクチルフェノール(和光純薬工業製)47gを投入し、溶解確認後に液温を110℃に保った後で反応促進剤としてナフテン酸コバルト(和光純薬工業製)0.25gを配合し、約3時間加熱反応させてポリフェニレンエーテル樹脂と相容化したフェノール変性シアネートエステルオリゴマー溶液を合成した。次いで反応液を冷却し、内温が80℃になったらメチルエチルケトン480g及びビフェノールジグリシジルエーテルと3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルとの混合ビフェニル型エポキシ樹脂(YL−6121H、ジャパンエポキシレジン製)280gを攪拌しながら配合して溶解を確認した後、室温まで冷却し、硬化促進剤としてナフテン酸亜鉛(和光純薬工業製)0.1gを配合して不揮発分濃度約55重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0151】
実施例8
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた3リットルの4つ口セパラブルフラスコに、トルエン285gとポリフェニレンエーテル樹脂(PKN4752、日本GE製)150gを投入し、90℃に加熱し攪拌溶解した。次に、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(Arocy B−10、チバガイギー製)500gとp−(α−クミル)フェノール(東京化成工業製)15gを投入し、溶解確認後に液温を110℃に保った後で反応促進剤としてナフテン酸マンガン(和光純薬工業製)0.16gを配合し、約3時間加熱反応させてポリフェニレンエーテル樹脂と相容化したフェノール変性シアネートエステルオリゴマー溶液を合成した。次いで反応液を冷却し、内温が80℃になったらメチルエチルケトン520gと3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル(YX−4000、ジャパンエポキシレジン製)273gを攪拌しながら配合して溶解を確認した後、室温まで冷却した後にp−(α−クミル)フェノール46gと硬化促進剤としてナフテン酸亜鉛(和光純薬工業製)0.1gを配合して不揮発分濃度約55重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0152】
実施例9
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた3リットルの4つ口セパラブルフラスコに、トルエン270gとポリフェニレンエーテル樹脂(PKN4752、日本GE製)180gを投入し、90℃に加熱し攪拌溶解した。次に、α,α′−ビス(4−シアナトフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン(RTX−366、チバガイギー製)450gとp−tert−アミルフェノール(東京化成工業製)4gを投入し、溶解確認後に液温を110℃に保った後で反応促進剤としてナフテン酸鉄(関東化学製)0.14gを配合し、約3時間加熱反応させてポリフェニレンエーテル樹脂と相容化したフェノール変性シアネートエステルオリゴマー溶液を合成した。次いで反応液を冷却し、内温が80℃になったらメチルエチルケトン535gとビフェニルアラルキレンノボラック型エポキシ樹脂(NC−3000S−H、日本化薬製)330gを攪拌しながら配合して溶解を確認した後、室温まで冷却した後にp−tert−オクチルフェノール(和光純薬工業製)23gと硬化促進剤としてナフテン酸亜鉛(和光純薬工業製)0.1gを配合して不揮発分濃度約55重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0153】
実施例10
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた3リットルの4つ口セパラブルフラスコに、トルエン290gとポリフェニレンエーテル樹脂(PKN4752、日本GE製)225gを投入し、90℃に加熱し攪拌溶解した。次に、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(REX−371、チバガイギー製)450gとp−(α−クミル)フェノール(東京化成工業製)13gを投入し、溶解確認後に液温を110℃に保った後で反応促進剤としてナフテン酸マンガン(和光純薬工業製)0.15gを配合し、約2時間加熱反応させてポリフェニレンエーテル樹脂と相容化したフェノール変性シアネートエステルオリゴマー溶液を合成した。次いで反応液を冷却し、内温が80℃になったらメチルエチルケトン500gと3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル(YX−4000、ジャパンエポキシレジン製)148gとクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(ESCN−190−3、住友化学製)90gを攪拌しながら配合して溶解を確認した後、室温まで冷却した後にp−tert−オクチルフェノール(和光純薬工業製)45gと硬化促進剤としてナフテン酸亜鉛(和光純薬工業製)0.1gを配合して不揮発分濃度約55重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0154】
比較例7
実施例6において、3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル(YX−4000)を除き、かつ不揮発分濃度約55%となるような配合量のメチルエチルケトンを配合したこと以外は実施例6と同様にして不揮発分濃度約55%の樹脂ワニスを調製した。
【0155】
比較例8
実施例6において、3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルの代わりに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DER−331L、ダウケミカル製)を表3に示す配合量で配合し、かつ不揮発分濃度約55%となるような配合量のメチルエチルケトンを配合したこと以外は実施例6と同様にして不揮発分濃度約55%の樹脂ワニスを調製した。
【0156】
比較例9
実施例6において、p−tert−ブチルフェノールの代わりにp−tert−アミルフェノール(東京化成工業製)を、3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルの代わりにフェノールノボラック型エポキシ樹脂(N−770、大日本インキ化学工業製)をそれぞれ表3に示す配合量で配合し、かつ不揮発分濃度約55%となるような配合量のメチルエチルケトンを配合したこと以外は実施例6と同様にして不揮発分濃度約55%の樹脂ワニスを調製した。
【0157】
比較例10
実施例7において、ビフェノールジグリシジルエーテルと3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルとの混合ビフェニル型エポキシ樹脂(YL−6121H)の代わりにビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(N−865、大日本インキ化学工業製)を、ナフテン酸コバルト(和光純薬工業製)の代わりにナフテン酸亜鉛(和光純薬工業製)をそれぞれ表3に示す配合量で配合し、不揮発分濃度約55%となるような配合量のメチルエチルケトンを配合したこと以外は実施例7と同様にして不揮発分濃度約55%の樹脂ワニスを調製した。
【0158】
比較例11
実施例6において、p−tert−ブチルフェノールの代わりにp−tert−オクチルフェノール(和光純薬工業製)を、3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルの代わりにフェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂(EPPN−502H、日本化薬製)をそれぞれ表3に示す配合量で配合し、かつ不揮発分濃度約55%となるような配合量のメチルエチルケトンを配合したこと以外は実施例6と同様にして不揮発分濃度約55%の樹脂ワニスを調製した。
【0159】
比較例12
比較例10において、p−tert−オクチルフェノールの代わりにp−(α−クミル)フェノール(東京化成工業製)を、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(N−685)の代わりにジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂(HP−7200、大日本インキ化学工業製)をそれぞれ表3に示す配合量で配合し、不揮発分濃度約55%となるような配合量のメチルエチルケトンを配合したこと以外は比較例10と同様にして不揮発分濃度約55%の樹脂ワニスを調製した。
【0160】
【表3】

【0161】
実施例6〜10及び比較例7〜12で得られた樹脂ワニスを厚さ0.15mmのガラス布(Eガラス)に含浸した後、160℃で4〜7分間加熱乾燥して樹脂固形分52重量%のプリプレグを得た。次いで、このプリプレグ4枚を重ね、その最外層に厚み18μmの銅箔を配置し、230℃、70分、2.5MPaのプレス条件で加熱加圧成形し両面銅張積層板を作製した。得られた銅張積層板について、誘電特性、銅箔引きはがし強さ、はんだ耐熱性、吸水率、曲げ特性、熱膨張係数(α)及びTg(ガラス転移温度)を評価した。その評価結果を表4に示す。
【0162】
銅張積層板の特性評価方法は以下の通りである。
【0163】
【表4】

【0164】
表4から明らかなように、実施例6〜10のワニスを用いて作製した積層板は、比較例8〜11の積層板よりも室温(25℃)における1GHzでの誘電特性(特に誘電正接)に優れ、さらに比較例8〜12と比べて90℃における誘電特性(特に誘電正接)も良好であり、温度変化に対する依存性が小さい。また、実施例の積層板は、比較例8〜12の積層板と比較して吸水率が低く、かつ比較例7〜12の積層板よりも吸湿時のはんだ耐熱性(特に288℃)が良好である。さらに加えて、実施例6〜10の積層板は、比較例7〜12の積層板よりも室温(25℃)での破断強度と破断伸び及び高温(200℃)での降伏点伸びが高い。
【0165】
〔実施例11〜16、比較例13〜18〕
表5に示す配合量に従って金属張積層板用樹脂ワニスを製造した。
【0166】
実施例11
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた3リットルの4つ口セパラブルフラスコに、トルエン390gとポリフェニレンエーテル樹脂(PKN4752、日本GE製)175gを投入し、90℃に加熱し攪拌溶解した。次に、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(Arocy B−10、チバガイギー製)500gとp−tert−ブチルフェノール(関東化学製)32gを投入し、溶解確認後に液温を110℃に保った後で反応促進剤としてナフテン酸亜鉛(和光純薬工業製)0.13gを配合し、約4時間加熱反応させてポリフェニレンエーテル樹脂と相容化したフェノール変性シアネートエステルオリゴマー溶液を合成した。次いで反応液を冷却し、内温が80℃になったらメチルエチルケトン608gと3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル(テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、YX−4000、ジャパンエポキシレジン製)308gと臭素化ポリスチレン(PDBS−80、グレートレイクス製)207gを攪拌しながら配合して溶解を確認した後、室温まで冷却し、硬化促進剤としてナフテン酸亜鉛0.1gを配合して不揮発分濃度約55重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0167】
実施例12
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた3リットルの4つ口セパラブルフラスコに、トルエン350gとポリフェニレンエーテル樹脂(PKN4752、日本GE製)100gを投入し、90℃に加熱し攪拌溶解した。次に、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン(Arocy M−10、チバガイギー製)500gとp−tert−オクチルフェノール(和光純薬工業製)47gを投入し、溶解確認後に液温を110℃に保った後で反応促進剤としてナフテン酸コバルト(和光純薬工業製)0.25gを配合し、約4時間加熱反応させてポリフェニレンエーテル樹脂と相容化したフェノール変性シアネートエステルオリゴマー溶液を合成した。次いで反応液を冷却し、内温が80℃になったらメチルエチルケトン550g及びビフェノールジグリシジルエーテルと3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルとの混合ビフェニル型エポキシ樹脂(YL−6121H、ジャパンエポキシレジン製)280gと臭素化ポリフェニレンエーテル(PO−64P、グレートレイクス製)178gを攪拌しながら配合して溶解を確認した後、室温まで冷却し、硬化促進剤としてナフテン酸亜鉛(和光純薬工業製)0.1gを配合して不揮発分濃度約55重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0168】
実施例13
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた3リットルの4つ口セパラブルフラスコに、トルエン357gとポリフェニレンエーテル樹脂(PKN4752、日本GE製)150gを投入し、90℃に加熱し攪拌溶解した。次に、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(Arocy B−10、チバガイギー製)500gとp−(α−クミル)フェノール(東京化成工業製)15gを投入し、溶解確認後に液温を110℃に保った後で反応促進剤としてナフテン酸マンガン(和光純薬工業製)0.16gを配合し、約4時間加熱反応させてポリフェニレンエーテル樹脂と相容化したフェノール変性シアネートエステルオリゴマー溶液を合成した。次いで反応液を冷却し、内温が80℃になったらメチルエチルケトン587gと3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル(YX−4000、ジャパンエポキシレジン製)273gと臭素化トリフェニルシアヌレート(ピロガードSR−245、第一工業製薬製)172gを攪拌しながら配合して溶解を確認した後、室温まで冷却した後にp−(α−クミル)フェノール46gと硬化促進剤としてナフテン酸亜鉛(和光純薬工業製)0.1gを配合して不揮発分濃度約55重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0169】
実施例14
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた3リットルの4つ口セパラブルフラスコに、トルエン340gとポリフェニレンエーテル樹脂(PKN4752、日本GE製)180gを投入し、90℃に加熱し攪拌溶解した。次に、α,α′−ビス(4−シアナトフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン(RTX−366、チバガイギー製)450gとp−tert−アミルフェノール(東京化成工業製)4gを投入し、溶解確認後に液温を110℃に保った後で反応促進剤としてナフテン酸鉄(関東化学製)0.14gを配合し、約4時間加熱反応させてポリフェニレンエーテル樹脂と相容化したフェノール変性シアネートエステルオリゴマー溶液を合成した。次いで反応液を冷却し、内温が80℃になったらメチルエチルケトン600gとビフェニルアラルキレンノボラック型エポキシ樹脂(NC−3000S−H、日本化薬製)330gとビス(トリブロモフェノキシ)エタン(FF−680、グレートレイクス製)164gを攪拌しながら配合して溶解を確認した後、室温まで冷却した後にp−tert−オクチルフェノール(和光純薬工業製)23gと硬化促進剤としてナフテン酸亜鉛(和光純薬工業製)0.1gを配合して不揮発分濃度約55重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0170】
実施例15
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた3リットルの4つ口セパラブルフラスコに、トルエン360gとポリフェニレンエーテル樹脂(PKN4752、日本GE製)225gを投入し、90℃に加熱し攪拌溶解した。次に、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(REX−371、チバガイギー製)450gとp−(α−クミル)フェノール(東京化成工業製)13gを投入し、溶解確認後に液温を110℃に保った後で反応促進剤としてナフテン酸マンガン(和光純薬工業製)0.15gを配合し、約3時間加熱反応させてポリフェニレンエーテル樹脂と相容化したフェノール変性シアネートエステルオリゴマー溶液を合成した。次いで反応液を冷却し、内温が80℃になったらメチルエチルケトン560gと3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル(YX−4000、ジャパンエポキシレジン製)148g、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(ESCN−190−3、住友化学製)90g及びヘキサブロモシクロドデカン(CD−75P、グレートレイクス製)157gを攪拌しながら配合して溶解を確認した後、室温まで冷却した後にp−tert−オクチルフェノール(和光純薬工業製)45gと硬化促進剤としてナフテン酸亜鉛(和光純薬工業製)0.1gを配合して不揮発分濃度約55重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0171】
実施例16
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた3リットルの4つ口セパラブルフラスコに、トルエン290gとポリフェニレンエーテル樹脂(PKN4752、日本GE製)225gを投入し、90℃に加熱し攪拌溶解した。次に、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(REX−371、チバガイギー製)450gとp−(α−クミル)フェノール(東京化成工業製)13gを投入し、溶解確認後に液温を110℃に保った後で反応促進剤としてナフテン酸マンガン(和光純薬工業製)0.15gを配合し、約4時間加熱反応させてポリフェニレンエーテル樹脂と相容化したフェノール変性シアネートエステルオリゴマー溶液を合成した。次いで反応液を冷却し、内温が80℃になったらメチルエチルケトン623gと3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル(YX−4000、ジャパンエポキシレジン製)160gと臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ESB400T、住友化学工業製)230gを攪拌しながら配合して溶解を確認した後、室温まで冷却した後にp−tert−オクチルフェノール(和光純薬工業製)45gと硬化促進剤としてナフテン酸亜鉛(和光純薬工業製)0.1gを配合して不揮発分濃度約55重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0172】
比較例13
実施例11において、3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル(YX−4000)を除き、臭素化ポリスチレン(PDBS−80、グレートレイクス製)を表5に示すような配合量に変更し、かつ不揮発分濃度約55%となるような配合量のメチルエチルケトンを配合したこと以外は実施例11と同様にして不揮発分濃度約55%の樹脂ワニスを調製した。
【0173】
比較例14
実施例11において、3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルの代わりに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DER−331L、ダウケミカル製)を表5に示す配合量で配合し、臭素化ポリスチレン(PDBS−80、グレートレイクス製)を表5に示すような配合量に変更し、かつ不揮発分濃度約55%となるような配合量のメチルエチルケトンを配合したこと以外は実施例11と同様にして不揮発分濃度約55%の樹脂ワニスを調製した。
【0174】
比較例15
実施例11において、p−tert−ブチルフェノールの代わりにp−tert−アミルフェノール(東京化成工業製)を、3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルの代わりにフェノールノボラック型エポキシ樹脂(N−770、大日本インキ化学工業製)をそれぞれ表5に示す配合量で配合し、臭素化ポリスチレン(PDBS−80、グレートレイクス製)を表5に示すような配合量に変更し、かつ不揮発分濃度約55%となるような配合量のメチルエチルケトンを配合したこと以外は実施例11と同様にして不揮発分濃度約55%の樹脂ワニスを調製した。
【0175】
比較例16
実施例12において、p−tert−オクチルフェノールの代わりに臭素化ビスフェノールA(TBA、帝人化成製)、ビフェノールジグリシジルエーテルと3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルとの混合ビフェニル型エポキシ樹脂(YL−6121H)の代わりにビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(N−865、大日本インキ化学工業製)を、ナフテン酸コバルト(和光純薬工業製)の代わりにナフテン酸亜鉛(和光純薬工業製)をそれぞれ表5に示す配合量で配合し、臭素化ポリフェニレンエーテル(PO−64P)を除いて、かつ不揮発分濃度約55%となるような配合量のメチルエチルケトンを配合したこと以外は実施例12と同様にして不揮発分濃度約55%の樹脂ワニスを調製した。
【0176】
比較例17
実施例11において、p−tert−ブチルフェノールの代わりに臭素化ビスフェノールA(TBA、帝人化成製)を、3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルの代わりにフェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂(EPPN−502H、日本化薬製)をそれぞれ表5に示す配合量で配合し、臭素化ポリスチレン(PDBS−80、グレートレイクス製)を除いて、かつ不揮発分濃度約55%となるような配合量のメチルエチルケトンを配合したこと以外は実施例11と同様にして不揮発分濃度約55%の樹脂ワニスを調製した。
【0177】
比較例18
比較例16において、臭素化ビスフェノールA(TBA)の代わりにp−(α−クミル)フェノール(東京化成工業製)を、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(N−685)の代わりにジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂(HP−7200、大日本インキ化学工業製)と高分子量型臭素化エポキシ樹脂(5203、ジャパンエポキシレジン製)をそれぞれ表5に示す配合量で配合し、かつ不揮発分濃度約55%となるような配合量のメチルエチルケトンを配合したこと以外は比較例16と同様にして不揮発分濃度約55%の樹脂ワニスを調製した。
【0178】
【表5】



【0179】
実施例11〜16及び比較例13〜18で得られた樹脂ワニスを厚さ0.15mmのガラス布(Eガラス)に含浸した後、160℃で4〜7分間加熱乾燥して樹脂固形分52重量%のプリプレグを得た。次いで、このプリプレグ4枚を重ね、その最外層に厚み18μmの銅箔を配置し、230℃、70分、2.5MPaのプレス条件で加熱加圧成形し両面銅張積層板を作製した。得られた銅張積層板について、銅箔引きはがし強さ、誘電特性、はんだ耐熱性、吸水率、耐燃性、曲げ特性、熱膨張係数(α)及びTg(ガラス転移温度)を評価した。その評価結果を表6に示す。
【0180】
銅張積層板の特性評価方法は、上記の通りである。なお、銅張積層板の耐燃性は、UL−94垂直試験法に準拠して測定した。
【0181】
【表6】

【0182】
表6から明らかなように、実施例11〜16のワニスを用いて作製した積層板は、比較例8〜12の積層板よりも室温(25℃)における1GHzでの誘電特性(特に誘電正接)に優れ、さらに比較例14〜18と比べて90℃における誘電特性(特に誘電正接)も良好であり、温度変化に対する依存性が小さい。また、実施例の積層板は、比較例14〜18の積層板と比較して吸水率が低く、かつ比較例13〜18の積層板よりも吸湿時のはんだ耐熱性(特に288℃)が良好である。さらに加えて、実施例11〜16の積層板は、比較例13〜18の積層板よりも室温(25℃)での破断強度と破断伸び及び高温(200℃)での降伏点伸びが高い。また、これら実施例11〜16の積層板における優れた特性は、良好な耐燃性(V−0)を確保した上で達成されている。
【0183】
〔実施例17〜21、比較例19〜24〕
表7に示す配合量に従って金属張積層板用樹脂ワニスを製造した。
【0184】
実施例17
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた3リットルの4つ口セパラブルフラスコに、トルエン300gとポリフェニレンエーテル樹脂(PKN4752、日本GE製)175gを投入し、90℃に加熱し攪拌溶解した。次に、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(Arocy B−10、チバガイギー製)500gとp−tert−ブチルフェノール(関東化学製)32gを投入し、溶解確認後に液温を110℃に保った後で反応促進剤としてナフテン酸亜鉛(和光純薬工業製)0.13gを配合し、約3時間加熱反応させてポリフェニレンエーテル樹脂と相容化したフェノール変性シアネートエステル樹脂含有溶液を合成した。次いで反応液を冷却し、内温が80℃になったらメチルエチルケトン530gと3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル(テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、YX−4000、ジャパンエポキシレジン製)308gを攪拌しながら配合して溶解を確認した後、室温まで冷却した後に酸化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(TBMP)3.0g、硬化促進剤としてナフテン酸亜鉛0.1gを配合して不揮発分濃度約55重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0185】
実施例18
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた3リットルの4つ口セパラブルフラスコに、トルエン275gとポリフェニレンエーテル樹脂(PKN4752、日本GE製)100gを投入し、90℃に加熱し攪拌溶解した。次に、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン(Arocy M−10、チバガイギー製)500gとp−tert−オクチルフェノール(和光純薬工業製)47gを投入し、溶解確認後に液温を110℃に保った後で反応促進剤としてナフテン酸コバルト(和光純薬工業製)0.25gを配合し、約3時間加熱反応させてポリフェニレンエーテル樹脂と相容化したフェノール変性シアネートエステル樹脂含有溶液を合成した。次いで反応液を冷却し、内温が80℃になったらメチルエチルケトン482g及びビフェノールジグリシジルエーテルと3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルとの混合ビフェニル型エポキシ樹脂(YL−6121H、ジャパンエポキシレジン製)280gを攪拌しながら配合して溶解を確認した後、室温まで冷却した後に酸化防止剤として2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(MBMTBP)2.8g、硬化促進剤としてナフテン酸亜鉛(和光純薬工業製)0.1gを配合して不揮発分濃度約55重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0186】
実施例19
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた3リットルの4つ口セパラブルフラスコに、トルエン285gとポリフェニレンエーテル樹脂(PKN4752、日本GE製)150gを投入し、90℃に加熱し攪拌溶解した。次に、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(Arocy B−10、チバガイギー製)500gとp−(α−クミル)フェノール(東京化成工業製)15gを投入し、溶解確認後に液温を110℃に保った後で反応促進剤としてナフテン酸マンガン(和光純薬工業製)0.16gを配合し、約3時間加熱反応させてポリフェニレンエーテル樹脂と相容化したフェノール変性シアネートエステル樹脂含有溶液を合成した。次いで反応液を冷却し、内温が80℃になったらメチルエチルケトン522gと3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル(YX−4000、ジャパンエポキシレジン製)273gを攪拌しながら配合して溶解を確認した後、室温まで冷却した後にp−(α−クミル)フェノール46g、酸化防止剤として4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(BBMTBP)3.0g、硬化促進剤としてナフテン酸亜鉛(和光純薬工業製)0.1gを配合して不揮発分濃度約55重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0187】
実施例20
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた3リットルの4つ口セパラブルフラスコに、トルエン270gとポリフェニレンエーテル樹脂(PKN4752、日本GE製)180gを投入し、90℃に加熱し攪拌溶解した。次に、α,α′−ビス(4−シアナトフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン(RTX−366、チバガイギー製)450gとp−tert−アミルフェノール(東京化成工業製)4gを投入し、溶解確認後に液温を110℃に保った後で反応促進剤としてナフテン酸鉄(関東化学製)0.14gを配合し、約3時間加熱反応させてポリフェニレンエーテル樹脂と相容化したフェノール変性シアネートエステル樹脂含有溶液を合成した。次いで反応液を冷却し、内温が80℃になったらメチルエチルケトン540gとビフェニルアラルキレンノボラック型エポキシ樹脂(NC−3000S−H、日本化薬製)330gを攪拌しながら配合して溶解を確認した後、室温まで冷却した後にp−tert−オクチルフェノール(和光純薬工業製)23g、酸化防止剤として4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(BBMTBP)3.0g、硬化促進剤としてナフテン酸亜鉛(和光純薬工業製)0.1gを配合して不揮発分濃度約55重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0188】
実施例21
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた3リットルの4つ口セパラブルフラスコに、トルエン290gとポリフェニレンエーテル樹脂(PKN4752、日本GE製)225gを投入し、90℃に加熱し攪拌溶解した。次に、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(REX−371、チバガイギー製)450gとp−(α−クミル)フェノール(東京化成工業製)13gを投入し、溶解確認後に液温を110℃に保った後で反応促進剤としてナフテン酸マンガン(和光純薬工業製)0.15gを配合し、約2時間加熱反応させてポリフェニレンエーテル樹脂と相容化したフェノール変性シアネートエステル樹脂含有溶液を合成した。次いで反応液を冷却し、内温が80℃になったらメチルエチルケトン500gと3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル(YX−4000、ジャパンエポキシレジン製)148gとクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(ESCN−190−3、住友化学製)90gを攪拌しながら配合して溶解を確認した後、室温まで冷却した後にp−tert−オクチルフェノール(和光純薬工業製)45g、酸化防止剤としてジラウリルチオジプロピオネート2.7g、硬化促進剤としてナフテン酸亜鉛(和光純薬工業製)0.1gを配合して不揮発分濃度約55重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0189】
比較例19
実施例17において、3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル(YX−4000)及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(TBMP)を除き、かつ不揮発分濃度約55%となるような配合量のメチルエチルケトンを配合したこと以外は実施例17と同様にして不揮発分濃度約55%の樹脂ワニスを調製した。
【0190】
比較例20
実施例17において、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(TBMP)を除き、また、3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルの代わりにビスフェノールA型エポキシ樹脂(DER−331L、ダウケミカル製)を表3に示す配合量で配合し、かつ不揮発分濃度約55%となるような配合量のメチルエチルケトンを配合したこと以外は実施例17と同様にして不揮発分濃度約55%の樹脂ワニスを調製した。
【0191】
比較例21
実施例17において、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(TBMP)を除き、また、p−tert−ブチルフェノールの代わりにp−tert−アミルフェノール(東京化成工業製)を、3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルの代わりにフェノールノボラック型エポキシ樹脂(N−770、大日本インキ化学工業製)をそれぞれ表7に示す配合量で配合し、かつ不揮発分濃度約55%となるような配合量のメチルエチルケトンを配合したこと以外は実施例17と同様にして不揮発分濃度約55%の樹脂ワニスを調製した。
【0192】
比較例22
実施例18において、2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(MBMTBP)を除き、ビフェノールジグリシジルエーテルと3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルとの混合ビフェニル型エポキシ樹脂(YL−6121H)の代わりにビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(N−865、大日本インキ化学工業製)を、ナフテン酸コバルト(和光純薬工業製)の代わりにナフテン酸亜鉛(和光純薬工業製)をそれぞれ表7に示す配合量で配合し、不揮発分濃度約55%となるような配合量のメチルエチルケトンを配合したこと以外は実施例18と同様にして不揮発分濃度約55%の樹脂ワニスを調製した。
【0193】
比較例23
実施例17において、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(TBMP)を除き、p−tert−ブチルフェノールの代わりにp−tert−オクチルフェノール(和光純薬工業製)を、3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテルの代わりにフェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂(EPPN−502H、日本化薬製)をそれぞれ表7に示す配合量で配合し、かつ不揮発分濃度約55%となるような配合量のメチルエチルケトンを配合したこと以外は実施例17と同様にして不揮発分濃度約55%の樹脂ワニスを調製した。
【0194】
比較例24
比較例21において、p−tert−オクチルフェノールの代わりにp−(α−クミル)フェノール(東京化成工業製)を、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(N−685)の代わりにジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂(HP−7200、大日本インキ化学工業製)をそれぞれ表7に示す配合量で配合し、不揮発分濃度約55%となるような配合量のメチルエチルケトンを配合したこと以外は比較例21と同様にして不揮発分濃度約55%の樹脂ワニスを調製した。
【0195】
【表7】

【0196】
実施例17〜21及び比較例19〜24で得られた樹脂ワニスを厚さ0.15mmのガラス布(Eガラス)に含浸した後、160℃で4〜7分間加熱乾燥して樹脂固形分52重量%のプリプレグを得た。次いで、このプリプレグ4枚を重ね、その最外層に厚み18μmの銅箔を配置し、230℃、70分、2.5MPaのプレス条件で加熱加圧成形し両面銅張積層板を作製した。得られた銅張積層板について、銅箔引きはがし強さ、誘電特性、はんだ耐熱性、吸水率、耐電食性、曲げ特性、熱膨張係数(α)及びTg(ガラス転移温度)を評価した。その評価結果を表8に示す。
【0197】
銅張積層板の特性評価方法は上記の通りである。
【0198】
銅張積層板の耐電食性は、銅張積層板に直径0.4mmのドリルを用いて穴壁間隔が350μmのスルーホールをあけ(ドリル条件;回転数80,000rpm、送り速度2,400mm/min)、その後常法に従いスルーホールめっきを施したテストパターン配線板を作製した。その各試験片について、85℃/85%RH雰囲気中100V印加での導通破壊が発生するまでの時間を測定した。
【0199】
【表8】

【0200】
表8から明らかなように、実施例17〜21のワニスを用いて作製した積層板は、比較例20〜23の積層板よりも室温(25℃)における1GHzでの誘電特性(特に誘電正接)に優れ、さらに比較例20〜24と比べて90℃における誘電特性(特に誘電正接)も良好であり、温度変化に対する依存性が小さい。また、実施例の積層板は、比較例20〜24の積層板と比較して吸水率が低く、かつ比較例19〜24の積層板よりも吸湿時のはんだ耐熱性(特に288℃)が良好である。さらに加えて、実施例17〜21の積層板は、比較例19〜24の積層板よりも室温(25℃)での破断強度と破断伸び及び高温(200℃)での降伏点伸びが高い。また、実施例17〜21の積層板は、比較例の積層板に比べて耐電食性が良好である。
【0201】
発明の効果
本発明の第一の発明によれば、本発明の印刷配線板用樹脂組成物を用いた硬化物は、高周波数帯域での誘電特性に優れ、しかも誘電特性の温度変化によるドリフト性も小さいことも分かった。また、ガラス状領域での曲げ強度と伸び及び高温領域における伸びが高い。さらに、本印刷配線板用樹脂組成物を用いて作製した金属張積層板は、プレッシャークッカーテスターを用いた厳しい条件下での耐湿耐熱性に優れている。したがって、1GHz以上の高周波信号を扱う各種電気・電子機器に用いる印刷配線板用の部材・部品用途として期待される。特に、本発明の樹脂組成物の特徴である優れた高周波特性と曲げ特性及び高い耐湿耐熱性は、厳しい条件下での耐熱性や耐クラック性が要求される高速サーバー、ルーター及び基地局装置等の高多層印刷配線板に使用される積層板及びプリプレグ用途として有効である。
【0202】
本発明の第二の発明によれば、本発明の印刷配線板用樹脂組成物を用いた硬化物は、高周波数帯域での誘電特性に優れ、しかも誘電特性の温度変化によるドリフト性も小さいことも分かった。また、ガラス状領域での曲げ強度と伸び及び高温領域における伸びが高い。さらに、本印刷配線板用樹脂組成物を用いて作製した金属張積層板は低吸湿性であり、プレッシャークッカーテスターを用いた厳しい条件下での耐湿耐熱性に優れ、かつTgが高い。さらに、難燃剤を含有する本発明の印刷配線板用樹脂組成物は、これらの優れた特性と併せて、良好な難燃性が得られる。また、酸化防止剤を含む本発明の印刷配線板用樹脂組成物は、これらの優れた特性と併せて、良好な耐電食性が得られる。したがって、1GHz以上の高周波信号を扱う各種電気・電子機器に用いる印刷配線板用の部材・部品用途として期待される。特に、本発明の樹脂組成物の特徴である優れた高周波特性と曲げ特性及び高い耐湿耐熱性は、厳しい条件下での耐熱性や耐クラック性が要求される高速サーバー、ルーター及び基地局装置等の高多層印刷配線板に使用される積層板及びプリプレグ用途として有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマと、
分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂と
を含むことを特徴とする印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項2】
前記の分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマ100重量部に対して、前記の分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂が10〜250重量部である、請求の範囲第1項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、ポリフェニレンエーテル樹脂を含む、請求の範囲第1項又は第2項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項4】
前記の分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマが、式(I):
【化10】


式中、R1は、
【化11】


を示し、R2及びR3は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、それぞれ同じであっても、異なってもよい、
で示されるシアネートエステル化合物、及び式(II):
【化12】


式中、R4は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、mは、1〜7の整数を示す、
で示されるシアネートエステル化合物、並びにこれらのプレポリマからなる群より選択される1種以上である、請求の範囲第1項〜第3項のいずれか1項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項5】
前記の分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂における、分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂が、式(III):
【化13】


式中、R5は、水素原子又はメチル基を示し、nは、0〜6の整数を示す、
で示されるエポキシ樹脂、及び式(IV):
【化14】


式中、pは、1〜5の整数を示す、
で示されるエポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上である、請求の範囲第1項〜第4項のいずれか1項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項6】
難燃剤として、さらに、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、式(VII):
【化15】


式中、s、t、uは1〜5の整数を表し、それぞれ同じ値であっても異なってもよい、
で示される臭素化トリフェニルシアヌレート、臭素化ポリフェニレンエーテル及び臭素化ポリスチレンからなる群より選択される1種以上を含む、請求の範囲第1項〜第5項のいずれか1項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、酸化防止剤を含む、請求の範囲第1項〜第6項のいずれか1項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項8】
分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマと、
分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂と、
一価フェノール化合物と
を含むことを特徴とする印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項9】
前記の分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマ100重量部に対して、前記の分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂が10〜250重量部であり、そして前記一価フェノール化合物が2〜60重量部である、請求の範囲第8項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項10】
さらに、ポリフェニレンエーテル樹脂を含む、請求の範囲第8項又は第9項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項11】
前記の分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマが、式(I):
【化16】


式中、R1は、
【化17】


を示し、R2及びR3は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、それぞれ同じであっても、異なってもよい、
で示されるシアネートエステル化合物、及び式(II):
【化18】


式中、R4は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、mは、1〜7の整数を示す、
で示されるシアネートエステル化合物、並びにこれらのプレポリマからなる群より選択される1種以上である、請求の範囲第8項〜第10項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項12】
前記の分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂における、分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂が、式(III):
【化19】


式中、R5は、水素原子又はメチル基を示し、nは、0〜6の整数を示す、
で示されるエポキシ樹脂、及び式(IV):
【化20】


式中、pは、1〜5の整数を示す、
で示されるエポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上である、請求の範囲第8項〜第11項のいずれか1項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項13】
難燃剤として、さらに、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、式(VII):
【化21】


式中、s、t、uは1〜5の整数を表し、それぞれ同じ値であっても異なってもよい、
で示される臭素化トリフェニルシアヌレート、臭素化ポリフェニレンエーテル及び臭素化ポリスチレンからなる群より選択される1種以上を含む、請求の範囲第8項〜第12項のいずれか1項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項14】
さらに、酸化防止剤を含む、請求の範囲第8項〜第13項のいずれか1項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項15】
分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマと一価フェノール化合物とを反応させて得られるフェノール変性シアネートエステルオリゴマー、並びに
分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂
を含むことを特徴とする印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項16】
フェノール変性シアネートエステルオリゴマーが、(A)成分100重量部と、(C)成分2〜60重量部を反応させて得られるフェノール変性シアネートエステルオリゴマーであり、(B)成分が10〜250重量部である、請求の範囲第15項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項17】
さらに、ポリフェニレンエーテル樹脂を含む、請求の範囲第15項又は第16項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項18】
前記の分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマが、式(I):
【化22】


式中、R1は、
【化23】


を示し、R2及びR3は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、それぞれ同じであっても、異なってもよい、
で示されるシアネートエステル化合物、及び式(II):
【化24】


式中、R4は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、mは、1〜7の整数を示す、
で示されるシアネートエステル化合物、並びにこれらのプレポリマからなる群より選択される1種以上である、請求の範囲第15項〜第17項のいずれか1項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項19】
前記の分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂における、分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂が、式(III):
【化25】


式中、R5は、水素原子又はメチル基を示し、nは、0〜6の整数を示す、
で示されるエポキシ樹脂、及び式(IV):
【化26】


式中、pは、1〜5の整数を示す、
で示されるエポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上である、請求の範囲第15項〜第18項のいずれか1項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項20】
難燃剤として、さらに、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、式(VII):
【化27】


式中、s、t、uは1〜5の整数を表し、それぞれ同じ値であっても異なってもよい、
で示される臭素化トリフェニルシアヌレート、臭素化ポリフェニレンエーテル及び臭素化ポリスチレンからなる群より選択される1種以上を含む、請求の範囲第15項〜第19項のいずれか1項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項21】
さらに、酸化防止剤を含む、請求の範囲第15項〜第20項のいずれか1項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項22】
分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマと一価フェノール化合物とを反応させて得られるフェノール変性シアネートエステルオリゴマー、並びに
分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂を含み、かつ
一価フェノール化合物
を含むことを特徴とする印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項23】
フェノール変性シアネートエステルオリゴマーが、前記の分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマ100重量部と、前記一価フェノール化合物0.4重量部以上、かつ60重量部未満とを反応させて得られるフェノール変性シアネートエステルオリゴマーであり、前記の分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂が10〜250重量部であり、追加で前記一価フェノール化合物を、該フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成に用いられる前記一価フェノール化合物との合計が2〜60重量部となる量で含む、請求の範囲第22項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項24】
さらに、ポリフェニレンエーテル樹脂を含む、請求の範囲第22項又は第23項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項25】
前記の分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマが、式(I):
【化28】


式中、R1は、
【化29】


を示し、R2及びR3は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、それぞれ同じであっても、異なってもよい、
で示されるシアネートエステル化合物、及び式(II):
【化30】


式中、R4は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、mは、1〜7の整数を示す、
で示されるシアネートエステル化合物、並びにこれらのプレポリマからなる群より選択される1種以上である、請求の範囲第22〜第24項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項26】
前記の分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂における、分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂が、式(III):
【化31】


式中、R5は、水素原子又はメチル基を示し、nは、0〜6の整数を示す、
で示されるエポキシ樹脂、及び式(IV):
【化32】


式中、pは、1〜5の整数を示す、
で示されるエポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上である、請求の範囲第22〜第25項のいずれか1項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項27】
難燃剤として、さらに、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、式(VII):
【化33】


式中、s、t、uは1〜5の整数を表し、それぞれ同じ値であっても異なってもよい、
で示される臭素化トリフェニルシアヌレート、臭素化ポリフェニレンエーテル及び臭素化ポリスチレンからなる群より選択される1種以上を含む、請求の範囲第22項〜第26項のいずれか1項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項28】
さらに、酸化防止剤を含む、請求の範囲第22項〜第27項のいずれか1項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項29】
分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマ、分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂、及び一価フェノール化合物を反応させて得られるエポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマー
を含むことを特徴とする印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項30】
エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーが、前記の分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマ100重量部、前記の分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂10〜250重量部、及び前記一価フェノール化合物2〜60重量部を反応させて得られるエポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーである、請求の範囲第29項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項31】
さらに、ポリフェニレンエーテル樹脂を含む、請求の範囲第29項又は第30項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項32】
前記の分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマが、式(I):
【化34】


式中、R1は、
【化35】


を示し、R2及びR3は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、それぞれ同じであっても、異なってもよい、
で示されるシアネートエステル化合物、及び式(II):
【化36】


式中、R4は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、mは、1〜7の整数を示す、
で示されるシアネートエステル化合物、並びにこれらのプレポリマからなる群より選択される1種以上である、請求の範囲第29項〜第31項のいずれか1項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項33】
前記の分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂における、分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂が、式(III):
【化37】


式中、R5は、水素原子又はメチル基を示し、nは、0〜6の整数を示す、
で示されるエポキシ樹脂、及び式(IV):
【化38】


式中、pは、1〜5の整数を示す、
で示されるエポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上である、請求の範囲第29項〜第32項のいずれか1項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項34】
難燃剤として、さらに、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、式(VII):
【化39】


式中、s、t、uは1〜5の整数を表し、それぞれ同じ値であっても異なってもよい、
で示される臭素化トリフェニルシアヌレート、臭素化ポリフェニレンエーテル及び臭素化ポリスチレンからなる群より選択される1種以上を含む、請求の範囲第29項〜第33項のいずれか1項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項35】
さらに、酸化防止剤を含む、請求の範囲第29項〜第34項のいずれか1項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項36】
分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマ、分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂、及び一価フェノール化合物を反応させて得られるエポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーと、
一価フェノール化合物と
を含むことを特徴とする印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項37】
エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーが、前記の分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマ100重量部、前記の分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂10〜250重量部、及び前記一価フェノール化合物0.4重量部以上、かつ60重量部未満を反応させて得られるエポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーであり、追加で前記一価フェノール化合物を、該エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーの生成に用いられる前記一価フェノール化合物との合計が2〜60重量部となる量で含む、請求の範囲第36項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項38】
さらに、ポリフェニレンエーテル樹脂を含む、請求の範囲第36項又は第37項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項39】
前記の分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマが、式(I):
【化40】


式中、R1は、
【化41】


を示し、R2及びR3は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、それぞれ同じであっても、異なってもよい、
で示されるシアネートエステル化合物、及び式(II):
【化42】


式中、R4は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、mは、1〜7の整数を示す、
で示されるシアネートエステル化合物、並びにこれらのプレポリマからなる群より選択される1種以上である、請求の範囲第36項〜第38項のいずれか1項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項40】
前記の分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂における、分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂が、式(III):
【化43】


式中、R5は、水素原子又はメチル基を示し、nは、0〜6の整数を示す、
で示されるエポキシ樹脂、及び式(IV):
【化44】


式中、pは、1〜5の整数を示す、
で示されるエポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上である、請求の範囲第36項〜第39項のいずれか1項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項41】
難燃剤として、さらに、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、式(VII):
【化45】


式中、s、t、uは1〜5の整数を表し、それぞれ同じ値であっても異なってもよい、
で示される臭素化トリフェニルシアヌレート、臭素化ポリフェニレンエーテル及び臭素化ポリスチレンからなる群より選択される1種以上を含む、請求の範囲第36項〜第40項のいずれか1項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項42】
さらに、酸化防止剤を含む、請求の範囲第36項〜第41項のいずれか1項記載の印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項43】
フェノール変性シアネートエステルオリゴマーを、ポリフェニレンエーテル樹脂の存在下で、分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマと一価フェノール化合物とを反応させて得る印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項44】
エポキシ/フェノール変性シアネートエステルオリゴマーを、ポリフェニレンエーテル樹脂の存在下で、分子中にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物及び/又はこれらのプレポリマと、一価フェノール化合物及び分子中にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有するエポキシ樹脂とを反応させて得ることを特徴とする印刷配線板用樹脂組成物。
【請求項45】
請求の範囲第1項〜第44項のいずれか1項記載の印刷配線板用樹脂組成物を、溶媒に溶解又は分散させて得られる印刷配線板用樹脂ワニス。
【請求項46】
請求の範囲第1項〜第44項のいずれか1項記載の印刷配線板用樹脂組成物又は請求の範囲第45項記載の印刷配線板用樹脂ワニスを基材に含浸後、80〜200℃で乾燥させて得られる印刷配線板用プリプレグ。
【請求項47】
請求の範囲第46項記載の印刷配線板用プリプレグを1枚以上重ね、少なくともその片面に金属箔を積層し、加熱加圧して得られる金属張積層板。

【公開番号】特開2010−196059(P2010−196059A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50775(P2010−50775)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【分割の表示】特願2004−539564(P2004−539564)の分割
【原出願日】平成15年9月29日(2003.9.29)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】