説明

印字データの作成方法及び印字方法

【課題】比較的小さな文字を印字する場合であっても印字した際に見やすい印字データを作成することを可能にした印字データの作成方法及び印字方法を提供する。
【解決手段】各文字について基準点を持った文字データの文字形状を、所定の間隔で配置されたドット配列に重ねる工程と、前記基準点が前記ドット配列のドットの中心位置にない場合には、前記基準点がドットの中心位置になるように文字形状全体を移動させてドットマップデータを作成する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鋼板等からなる被印字材の表面に印字する印字方法に関し、特にその印字データの作成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば造船所等では、鋼板を切断し、折り曲げ、溶接する作業が中心である。このため、鋼板の表面に該鋼板の引当情報や対応する図面番号、或いは切断線や溶接線及び溶接相手の部材情報や図面情報等の情報を印字することが行われている。このような印字は、数値制御(NC)切断装置に印字ヘッドを搭載しておき、このNC切断装置の印字機能と切断機能とを選択的に利用して行うのが一般的である。
【0003】
最近では、印字を専用に行う装置も開発されて利用されている。このような装置として、例えば「マーキングを必要とする広幅の板材の搬送装置と、この搬送装置により搬送される前記板材の全幅に亙るマーキング装置と、このマーキング装置を前記板材の上方に跨がって支持する支持装置とを備え、前記マーキング装置は、CADシステムからのマーキング情報をドットイメージとして前記搬送中の板材の全幅に亙ってマーキング可能な複数のドットマーキング・ヘッドを具備し、前記支持装置は、前記マーキング装置を両側から支持する構造で、前記板材の板厚方向の位置決め制御のための昇降機構と板幅方向の位置決め制御のための横スライド機構からなり、さらに、前記板材の板厚をあらかじめ入力した板材の板厚データと比較演算したうえで板厚方向の位置決め情報を前記昇降機構に送るための板厚検出センサと、板幅方向の位置決め情報を前記横スライド機構に送るための板耳検出センサとを、前記マーキング装置より上流側の前記搬送装置上方に設けるとともに、前記マーキング装置には、前記板材の搬送速度に同調して印字するための送り量検出センサと、印字開始の指示を行う起点検出センサと、前記板材の表面の高さの局部的な変化を検出して前記昇降機構に高さ修正の情報を送るための板面高さ検出センサとを設けたことを特徴とする罫書装置。」が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第2736604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の罫書装置を含めて鋼板等に印字する場合には、印字ヘッドの1文字当たりのドット数が少なく、そのため比較的小さな文字が印字される場合には、極端に見づらくなるという問題点があった。特に、印字ヘッドのドットの並びに対して斜行する方向に印字される場合にはそれが顕著であった。
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、比較的小さな文字を印字する場合であっても見やすい印字データを作成することを可能にした印字データの作成方法及び印字方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る印字データの作成方法は、各文字について基準点を持った文字データの文字形状を、所定の間隔で配置されたドット配列に重ねる工程と、前記基準点が前記ドット配列のドットの中心位置にない場合には、前記基準点がドットの中心位置になるように文字形状全体を移動させてドットマップデータを作成する工程とを有するものである。
【0008】
本発明に係る印字データの作成方法は、各文字について基準点を持った文字データの文字列の文字形状を所定の間隔で配置されたドット配列にそれぞれ重ねる工程と、前記文字列がドット配列に直交していない場合には、各文字形状を回転させてドット配列に直交させる工程と、前記基準点がドット配列のドットの中心位置にない場合には、当該基準点がドットの中心位置になるように文字形状の全体を移動させてドットマップデータを作成する工程とを有するものである。
【0009】
本発明に係る印字データの作成方法において、文字形状を回転させてドット配列に直交させる際には、各文字形状の高さ方向の中心位置を中心として回転させる。
【0010】
本発明に係る印字データの作成方法において、前記文字データは、同一サイズのものについては、同じ大きさの枠取りの中で描画される文字形状を有し、且つ、前記枠取りの中で同一の位置に基準点を備えている。
【0011】
本発明に係る印字データの作成方法において、前記文字データの文字形状は、前記基準点がドットの中心に位置するときに、前記枠取りの中に位置するドット上を描画するような形成に設定されている。
【0012】
本発明に係る印字データの作成方法において、前記基準点がドット配列のドットの中心位置にない場合には、前記基準点に最も近接した位置にあるドット側に基準点を移動させる。
【0013】
本発明に係る印字データの作成方法において、前記基準点がドット配列のドットの中間に位置する場合には、予め設定された方向に位置するドット側に基準点を移動させる。
【0014】
本発明に係る印字方法は、上記の印字データの作成方法により作成された印字データを印字処理をするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、各文字の基準点がドット配列のドットの中心位置にない場合には、基準点がドットの中心位置になるように文字形状全体を移動させ、文字形状をドット上に位置させてドットマップデータを作成するようにしたので、それを印字した場合には鮮明な印字が得られる。
また、文字列が斜めに印字されるような場合においても、文字形状をドット配列に直交するようにしてから、上記の処理をするようにしたので、それを印字した場合には鮮明な印字が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係る印字システムの全体構成を模式的に説明する図である。この印字システムは、鋼板等からなる被印字材Aを搬送する複数の搬送ローラ10、11を備えており、上流側の領域(AR1)の搬送ローラ(斜行ローラ)10は搬送方向に直交する方向に対して例えば5〜10度程度傾斜して設置されている。搬送ローラ10の下流側の領域(AR2)の搬送ローラ(直行ローラ)11は搬送方向に直交する方向に配置されている。これらの搬送ローラ10、11は後述の駆動モータによりそれぞれ回転駆動される。搬送ローラ10、11の一方の側には、サイドローラ12が所定の間隔で複数個立設されており、被印字材Aの端部に当接して当該被印字材Aの端部を位置決めする。そして、この印字システムは、搬送ローラ10、11の他方の側及びサイドローラ12の外側にそれぞれ敷設された1対のレール13を備えている。
【0017】
また、この印字システムは、この一対のレール13に載置されて走行する走行台車20と、走行台車20に搭載されてレール13の設置方向と直交する方向に横行する横行キャリッジ21と、横行キャリッジ21に対して高さ方向の位置が調整可能に搭載された複数の印字ヘッド23(23a〜23d)とを備えている。
【0018】
走行台車20は、レール13上に配置されるサドル20aと、レール13と直交する方向に設置され、両端がサドル20aにそれぞれ接続されたガーダー20bとを備えている。そして、サドル20aには走行台車20を移動するための走行モータ24と、制御装置を内蔵した制御盤25とが設けられている。ガーダー20bには横行レール20cが設けられており、横行キャリッジ21はこの横行レール20cに移動自在に設置されている。横行キャリッジ21には横行モータ26が設置されており、この横行モータ26が横行キャリッジ21を横行レール20cに沿って移動させる。そして、横行キャリッジ21には複数(図示の例では4個)の印字ヘッド23(23a〜23d)を予め設定された間隔を保持して搭載されている。
【0019】
したがって、図1の印字システムにおいては、走行モータ24が回転することにより走行台車20がレール13に沿って移動し、横行モータ26が回転することにより横行キャリッジ21が横行レール20cに沿って移動することとなり、横行キャリッジ21に搭載された印字ヘッド23は、走行台車20及び横行キャリッジ21の移動により、被印字材Aの上をその長さ方向及び幅方向(2次元方向)に移動することが可能になっている。
【0020】
図2は図1の印字システムの制御系のブロック図である。
この印字システムは制御装置31を備えており、これは上述の制御盤25に内蔵されている。この制御装置31は、各種プログラムが記憶される記憶部31a、演算データ等を一時的に記憶する一時記憶部31b及び各種の演算処理をする演算部31cを内蔵している。この制御装置31にはインターフェース32が接続されており、インターフェース32には先端部検出センサ33、傾斜検出センサ34、高さ検出センサ35、CDROMドライバ36、通信装置37及び入力装置38がそれぞれ接続されており、これらのセンサ等の出力がインターフェース32を介して制御装置31に取り込まれる。また、インターフェース32には、上記の印字ヘッド23、走行モータ24及び横行モータ26の他に、高さ制御モータ40、ローラ10を駆動するためのローラ駆動モータ41及びローラ11を駆動するためのローラ駆動モータ42がそれぞれ接続されており、これらの印字ヘッド23、走行モータ24等がインターフェース32を介して制御される。
【0021】
ところで、図2の先端部検出センサ33は、印字領域AR2の先端側に取り付けられて、被印字材Aの先端部を検出するものであり、それによってローラ駆動モータ42を停止させて被印字材Aの移動を停止させるものである。傾斜検出センサ34は、例えば横行キャリッジ21に取り付けられ、被印字材Aの側面側の端部を複数箇所で検出するセンサから構成されており、被印字材Aが印字領域AR2に停止したときの被印字材Aの傾斜角を検出するものであり、印字処理をする際にこの傾斜角情報に基づいて印字情報を修正する。高さ検出センサ35は、被印字材Aの表面までの距離(高さ)を計測するものであり、この距離情報に基づいて印字ヘッド23の高さ方向の位置を調整する高さ制御モータ40を制御する。CDROMドライバ36は例えば印字データが格納されたCDが挿入されると、そのCDの印字データを取り込むためのものであり、通信装置37は、ネットワークを介して印字データを取り込むためのものである。入力装置38は被印字材A、例えば鋼板の板厚、幅、長さのデータ等を入力するためのものである。印字開始前には、CDROMドライバ36、通信装置37又は入力装置38の駆動又は操作により、印字に必要な印字データ及び被印字材Aのデータがインターフェース32を介して制御装置31の記憶部31aに格納された状態になっている。
【0022】
次に、図1及び図2の印字システムの動作の概要を説明する。
(a)被印字材Aが例えば領域AR1よりも上流側の領域にクレーン等により搬入されると、その領域に設置されている搬送ローラ(図示せず)が被印字材Aを搬送し、被印字材Aが領域AR1に到達すると、領域AR1に設けられたセンサ(図示せず)がそれを検出してインターフェース32を介して制御装置31に出力する。制御装置31はその信号を取り込むとローラ駆動モータ41を駆動させる。この搬送ローラ41の駆動により搬送ローラ10が回転して被印字材Aを搬送する。その搬送の際には、搬送ローラ10が傾斜して配置されているので、被印字材Aはサイドローラ12側に移動しながら搬送される。そして、被印字材Aの側部がサイドローラ12に押しつけられながら搬送されることにより、被印字材Aの側部の位置決めがなされることになる。
【0023】
(b)そして、被印字材Aが領域AR2に到達し、更に搬送されて領域AR2の先端部側まで来ると、先端部検出センサ33が被印字材Aの先端部を検出し、その検出信号をインターフェース32を介して制御装置31に出力する。制御装置31はその検出信号を取り込むと、ローラ駆動モータ41及び42の駆動を停止させる。なお、ローラ駆動モータ41については、被印字材Aが領域AR2を脱したことを検出するセンサ(図示せず)を設けておいて、そのセンサの出力に基づいてローラ駆動モータ41の駆動を停止させるようにしてもよい。
【0024】
(c)ローラ駆動モータ42の駆動が停止したときに、被印字材Aの全体が領域AR2内に位置している状態になる。制御装置31は、走行モータ24を駆動して走行台車20を走行させる。制御装置31は、走行台車20が走行しているときの傾斜検出センサ34の出力をインターフェース32を介して適当な時間間隔で取り込んで被印字材Aの傾き(姿勢)を求める。そして、被印字材Aの傾きに応じて印字データを修正する。また、制御装置31は、高さ検出センサ35の出力をインターフェース32を介して取り込んで被印字材Aの表面までの距離(高さ)を求め、その距離が予め設定されている基準距離と相違する場合にはその差異を求め、その差異に基づいた制御信号をインターフェース32を介して高さ制御モータ40に出力し、高さ制御モータ40がその制御信号に基づいて駆動され、印字ヘッド23の高さ位置を調整する。
【0025】
(d)以上のようにして被印字材Aの傾き(姿勢)を検出するとともに印字ヘッド23の高さを調整した後に、横行キャリッジ21に於ける端部側の印字ヘッド23aを被印字材Aの端部に一致させるように横行キャリッジ21を横行させ、これにより、印字作業の準備が完了する。
【0026】
本実施形態においては、印字ヘッド23は4個の印字ヘッド23a〜26dから構成されているので、例えば被印字材Aを幅方向に4分割し、分割された各領域に印字ヘッド23a〜23dを割り当てる。そして、印字ヘッド23a〜26dの幅寸法に応じて往復動の回数を決めて、走行台車20を被印字材Aの長さ方向に一定速度で走行させるとともに、横行キャリッジ21を走行台車20が往復動の切替のタイミングで適宜走行させることにより印字ヘッド23の位置を被印字材Aの幅方向に移動させる。印字ヘッド23は、このように走行台車20及び横行キャリッジ21の移動に伴って被印字材Aの上を移動しながら、印字データに基づいてインクを吐出して被印字材Aに印字する。なお、本実施形態における印字とは文字だけでなく、図形の描画も含まれる。
【0027】
次に、図1及び図2の印字システムに用いられる印字データ(文字データ・図形データ)の作成過程について説明する。
図3は印字データの作成過程を示したフローチャートであり、これは設計システムと印字情報創成システムの2段階を含んでいる。設計システムはCAD等によって設計される段階であり、印字情報創成システムは設計システムにより設計されたデータに基づいて印字データを作成する段階である。
【0028】
まず、設計システムの段階について説明する。
製造対象物の構造データを作成し(S1)、その構造データに基づいて切断すべき部材を計画し(S2)、その計画された部材を被印字材Aに無駄なく割り付けるためのネスティングを行い、切断計画図及びNC切断データを作成する(S3)。この切断計画図は例えばプリントされ、NC切断データは被印字材Aを切断する際のNCデータとして用いられる。ネスティングされて作成された配置図に基づいて印字下図を作成し、それをDXFファイルに変換する(S4)。なお、ネスティングされて作成された配置図の文字は、例えば図4に示されるように、文字の内容(部品名称、取付部材名称…)と文字の大きさとが規定され、レイヤー番号(1、2…)が関連付けられており、後述のようにその関係を変更することにより文字の大きさを任意に編集できるように構成されている。また、DXFファイルの文字データについては、文字形状、サイズ、位置情報等が含まれている。
【0029】
次に、印字情報創成システムの段階について説明する。
上記のDXFファイルを編集する(S5)。この編集に際しては、文字や図形の移動、修正、追加及び移動処理がなされる(この具体例は後述の図5及び図6参照)。編集後のDXFファイルから文字データ及び図形データを抽出する(S6)。そして、この抽出された文字データ及び図形データをドットマップに変換しNC印字用データを作成する(S7、この具体例は後述の図7以降を参照)。このNC印字用データをCDROMに格納し(S8)、図2のCDROMドライバ36により読み込んで制御装置31に出力する。或いはNC印字用データをネットワーク(図示せず)を介して図2の通信装置37が受信し、制御装置31に出力する。
【0030】
図5及び図6は上記のDXFファイルの編集例を示した説明図であり、図5は文字を移動する編集例、図6は文字の大きさを変更する編集例を示した説明図である。
図5の編集例においては、文字が切断線に跨った位置にあることから、そのまま印字された場合には見づらくなることから、その位置を図示のようにずらす編集をしている。
図6の編集例においては、編集する文字を選択して、その文字サイズ(レイヤー)を表示し、次に、文字サイズ(レイヤー)の種類を表示し、選択している。その結果、編集対象の文字のサイズが、選択された文字サイズ(レイヤー)に変更される。
図5及び図6の編集例に示されるように印字対象の文字を編集することにより、印字された際にその文字が見やすいものとなる。
【0031】
ところで、図4の処理(S7)では文字データ及び図形データをドットマップデータに変換する処理を行っているが、ドット配列の上に文字形状及び図形を重ねて、文字形状及び図形を構成する線に重なるドットを塗り潰すことによりドットマップデータを作成している。そして、その塗り潰されたドットに該当するドットを被印字材に(印字)転写することにより、文字形状及び図形の大きさ、形状、方向に関わりなく、自由に印字できるようにしている。しかし、印字ヘッドの1文字当たりのドット数が少ない場合には、次のような不都合が生じる。
(A)ドットの配列と図形としての文字の重なり方(相互の位置関係)によって、文字を表現するドットの配置が変わるが、文字が小さい場合には配置の変化によって判読し易さが著しく変化する。
(B)文字の向きがドットの配列と直交する場合には、ドットの配置によっては比較的小さな文字まで判読できるが、傾斜した場合には同程度の文字の大きさでも判読が困難になる。
【0032】
本実施形態においては、上記の(A)及び(B)の対策をドットマップを作成する際に行っており、それを以下説明する。
【0033】
上記の(A)及び(B)の対策に先立って、本実施形態の文字データの文字形状とドット配列との関係について説明する。
図7(a)(b)(c)は、本実施形態における文字形状とドット配列との関係を示した説明図である。図示の例においては、文字として、1、2、3の数字が示されているが、このドットマップデータの作成については次のような点が配慮されている。
(1)文字形状とドット配列が直交する場合においては、ドットの配置が最も判読しやすくなるように各文字の形状を予め設定しておく。即ち、制約されたドット配列に馴染むように文字形状を予め設定しておく。そのように文字形状を設定しておくことにより、印字した際には判読しやすい文字が得られる。例えば図7(a)〜(c)の例がそれである。
なお、ドット配列は、印字ヘッドの液滴を吐出するノズルの間隔に対応し又は関連した配置間隔になっている。
(2)各文字には基準点を設定しておくものとする。そして、同一サイズの各文字の基準点は、それぞれの枠取り(上記の例では4×7ドット)の中で相互に同一の位置に設定する。このようにすることにより、例えば1個の文字列の間で文字相互の位置ずれがなくなり、又は位置ずれがあったとしても最小することができる。図7の例では4×7ドットの内、左下の隅のドットに合致するように基準点が決められている。このことは、文字の基準点を左下の隅のドットに一致させると、図7(a)〜(c)に示されるように、文字の形状がドットの中心上に描画されることを意味する。
(3)文字の形状をドットに重ねた際に、文字の基準点がドットの中心に位置しなかった場合には、文字の基準点を最も近接したドットの中心にずらすようにして文字形状の全体をずらす。但し、文字の基準点が周囲のドットのちょうど中間に位置した場合には、一定の方向にずらすように予め決めておくものとする。
【0034】
図8は、文字データをドットマップデータに変換しNC印字用データを作成する際の処理(S7)の一例を示したフローチャートであり、特に、ここでは上記の(A)の対策をする場合の処理を示している。図9(a)〜(d)はそのときのドットマップの説明図である。なお、文字データは、例えばコードデータに対応する文字形状と上記の基準点のデータとを保有しているものとする。
文字データの文字形状(この例は数値の「2」)を仮に、図9(a)(c)に示されるようにドット配列に重ねる(S11)。次に、文字データの基準点がドットの中心位置と一致しているかどうかを判定し(S12)、一致していなければ、文字データの基準点をその周囲のドットの内、最も近いドットの中心と一致するように文字形状をずらす処理を行う(S13)。例えば図9(a)(c)に示されるような状態のまま印刷した場合には見づらくなるが、文字データの基準点をドットの中心と一致するように文字データの形状をずらす処理を行う。このように処理することにより、図9(b)(d)に示されるようなドットマップが得られる。このような処理がなされることにより、常に一定のドット配置で構成された文字が印字されることになる。
【0035】
図10は、文字データをドットマップに変換しNC印字用データを作成する際の処理(S7)の他の例を示しており、特に、ここでは上記の(B)の対策をする場合の処理を示している。図11(a)(b)(c)はそのときのドットマップの説明図である。
【0036】
文字列の文字形状を、仮に、図11(a)に示されるようにドット配列に重ねる(S21)。そして、この文字列がドット配列に直交しているかどうかを判定する(S22)。文字列の方向がドット配列に対して傾斜しており直交していない場合には、文字の枠取りの中の一点を中心として文字の方向をドット配列と直交するように回転させる(S23)。この中心は例えば文字の高さ方向の中心位置とする。回転方向は、文字列の方向と、ドット配列の縦列又は横列のいずれか近い方向が一致するように回転させる。この例では、縦列に合わせるように回転させている。このような処理がなされると、図11(b)に示されるようなドットマップが得られる。この後は、上記の(A)の対策と同様な処理(S12、S13)を行うことにより、図11(c)に示されるようなドットマップが得られる。
【0037】
図12は傾斜配置されている文字列と、それについて上記の処理(図11)をした場合の文字列とを対比した例である。
【0038】
なお、上記の印字情報創成システムの処理は、本印字システムの制御装置31以外のところで行われるという前提で説明したが、この処理は制御装置31において自動的に処理してもよい。
【0039】
以上のように本実施形態においては、文字形状をドット配列に重ねてドットマップデータを作成する際には、文字データが持っている基準点がドットの中心位置にくるように文字形状の全体をずらすことによりドットマップデータを作成するようにしたので、小さな文字であっても印字した際に判別し易い印字データが得られる。
また、文字列の方向がドット配列に対して傾斜している場合には、文字データの枠取りの中の一点を中心として文字の方向をドット配列と直交するように回転させてから、上記のように基準点がドットの中心位置にくるように文字形状をずらしてドットマップデータを作成するようにしたので、小さな文字であっても印字した際に判別し易い印字データが得られる。
そして、このようにして作成された印字データを印字処理すると、印字された文字は、比較的小さな文字であっても判別し易いものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る印字システムの全体構成を示す模式図である。
【図2】上記印字システムの制御系のブロック図である。
【図3】印字情報創成処理の過程を示したフローチャートである。
【図4】文字の内容とレイヤー(文字サイズ)との関係を示した図である。
【図5】DXFファイルの編集例(その1)を示す説明図である。
【図6】DXFファイルの編集例(その2)を示す説明図である。
【図7】文字データの形状とドット配列との関係を示す説明図である。
【図8】文字データをドットマップに変換しNC印字用データを作成する際の処理(S7)の一例を示したフローチャートである。
【図9】図8の処理をしたときのドットマップの説明図である。
【図10】文字データをドットマップに変換しNC印字用データを作成する際の処理(S7)の他の例を示したフローチャートである。
【図11】図10の処理をしたときのドットマップの説明図である。
【図12】傾斜配置されている文字列と、それについて処理をした場合の文字列とを対比した例を示した図である。
【符号の説明】
【0041】
10 搬送ローラ、11 搬送ローラ、12 サイドローラ、13 レール、20 走行台車、20a サドル、20b ガーダー、20c 横行レール、21 横行キャリッジ、23 印字ヘッド、24 走行モータ、25 制御盤、26 横行モータ、31 制御装置、31a 記憶部、31b 一時記憶部、31c 演算部、32 インターフェース、33 先端部検出センサ、34 傾斜検出センサ、35 高さ検出センサ、36 CDROMドライバ、37 通信装置、38 入力装置、40 ローラ駆動モータ、41 ローラ駆動モータ、42 ローラ駆動モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各文字について基準点を持った文字データの文字形状を、所定の間隔で配置されたドット配列に重ねる工程と、
前記基準点が前記ドット配列のドットの中心位置にない場合には、前記基準点がドットの中心位置になるように文字形状の全体を移動させ、前記文字形状をドット上に位置させてドットマップデータを作成する工程と
を有することを特徴とする印字データの作成方法。
【請求項2】
各文字について基準点を持った文字データの文字列の文字形状を所定の間隔で配置されたドット配列にそれぞれ重ねる工程と、
前記文字列がドット配列に直交していない場合には、各文字形状を回転させてドット配列に直交させる工程と、
前記基準点がドット配列のドットの中心位置にない場合には、当該基準点がドットの中心位置になるように文字形状の全体を移動させ、前記文字形状をドット上に位置させてドットマップデータを作成する工程と
を有することを特徴とする印字データの作成方法。
【請求項3】
前記文字形状を回転させてドット配列に直交させる際には、各文字形状の高さ方向の中心位置を中心として回転させることを特徴とする請求項2記載の印字データの作成方法。
【請求項4】
前記文字データは、同一サイズのものについては、同じ大きさの枠取りの中で描画される文字形状を有し、且つ、前記枠取りの中で同一の位置に基準点を備えていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の印字データの作成方法。
【請求項5】
前記文字データの文字形状は、前記基準点がドットの中心に位置するときに、前記枠取りの中に位置するドット上を描画するような形成に設定されていることを特徴とする請求項4記載の印字データの作成方法。
【請求項6】
前記基準点がドット配列のドットの中心位置にない場合には、前記基準点に最も近接した位置にあるドット側に基準点を移動させることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の印字データの作成方法。
【請求項7】
前記基準点がドット配列のドットの中間に位置する場合には、予め設定された方向に位置するドット側に基準点を移動させることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の印字データの作成方法。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の印字データの作成方法により作成された印字データを印字処理をすることを特徴とする印字方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−547(P2010−547A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159247(P2008−159247)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(502116922)ユニバーサル造船株式会社 (172)
【出願人】(000185374)小池酸素工業株式会社 (64)
【Fターム(参考)】