説明

印字ヘッド、プリンタ装置、プリンタ装置制御方法、および、プリンタ装置制御プログラム

【課題】印字不良が発生した場合に、印字不良の発生した箇所から自動的に継続してプリンタ装置の運用ができない。
【解決手段】印字ヘッドは、印刷される媒体と対向する面に、進行方向と直交する方向に並ぶ複数のインクノズルと、インクノズルの後方に備えられ、インクノズルの印刷部分の濃度を個々の前記インクノズル別に測定するセンサと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印字ヘッド、プリンタ装置、プリンタ装置制御方法、および、プリンタ装置制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
復旧処置を行なうオペレータがついていない自動機に使用されるインクジェットプリンタ等のプリンタ装置には安定した運用が求められる。そのため、このようなプリンタ装置が使用される自動機は、印字部以外の搬送路の一部に設けられたラインセンサで印字不良を検出し、印字不良が発生した場合にはエラーとしてその運用を休止している。
【0003】
また、プリンタ装置には継続した運用が求められる。しかし、上述したプリンタ装置等に備えられている印字不良を検出するラインセンサは、通常自動機で扱う頁マーク(バーコードなど)を読み取る目的で装着されているため、印字範囲の一部しか読み取る事ができない。したがって、自動機が継続運用をすべくリカバリ動作を行なった場合、自動機は印字不良になり初めた場所が特定できないため、ラインセンサの読取範囲内で印字無とみなした行を別のインクノズル(別のインクカートリッジ)等で重ねて再印字する事になる。
【0004】
しかし、ラインセンサが印字無と判断した読取範囲以外は、印字が正常に印字できている可能性もあり、自動機がそこに印字を重ねると二重(重ね)印字となる。
【0005】
また、リカバリ動作によって印刷対象である媒体の搬送距離が長くなると、斜行搬送、搬送ピッチズレ等が発生し易くなり、例えば0.5mm程度の搬送ズレが発生する事もある。この場合には、印字位置も0.5mm程度ずれてしまうため、印字がにじみ、利用者が判読不能となる可能性もある。
【0006】
上記のような結果を避けるため、通常、自動機は、印字質の安定性を優先して、印字不良が発生しても重ね印字は行なわずに、エラーとしてシステムを停止している。
【0007】
ところが、自動機が運用を休止すると、保守員が駆けつけて復旧するまでの間は自動機が使用不可能となるため、利用者に迷惑をかけるだけでなく、運用者の機会損失による収入減を引き起こしてしまうという問題がある。
【0008】
また、プリンタ装置には、インクタンクの寿命を延命させながら運用されることが求められる。しかし、自動機がインクノズルから噴射したインクのドット数をカウントしてインクタンク残量の検知を行なう場合、初期の充填インク容量の誤差が大きいことなどの理由から、自動機は正確にインク残量を検知することができない。また、インク切れで印字カスレが発生すると大きな問題となる。そのため、設計者等はインク切れに対するマージンを十分大きく設計している。
【0009】
その結果、インクタンクに十分な量のインクが残っている場合でも自動機の運用が停止されており、インクタンク寿命は短くなっていた。
【0010】
このように、プリンタ装置の継続した運用やインクタンク寿命を延命させた運用を実現することが難しいという問題があった。
【0011】
この分野の関連技術として、特許文献1には、多数のプリンタヘッドを同時に利用してプリントジョブを行なうことにより、高速インクジェットプリントを行なうことが可能な一般的なインクジェットプリントに関する技術が記載されている。また、特許文献2には、ノズルの吐出不良を検出し、メンテナンスすることで該不良を解消するインクジェットプリンタに関する技術が記載されている。また、特許文献3には、ライン型インクジェットプリンタが、印刷ヘッドの1ドットラインの幅よりも狭い印刷領域にデータを印刷する場合でも、全てのインクノズルを印刷に使用することで、使用されるインクノズルと使用されないインクノズルの寿命差を縮めることが記載されている。また、特許文献4には、ジェットプリントヘッドのそれぞれに多数のジェットノズルが取り付けられ、使用可能なノズル総量の一部がバックアップノズルとして使用される印刷ブリッジシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−185397号公報
【特許文献2】特開2005−231245号公報
【特許文献3】再特WO2005/065952号公報
【特許文献4】特表2004−509780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、上記技術は、インク切れやインクノズル詰まり等により印字不良が発生した場合に、印字不良の発生した箇所から自動的に継続してプリンタ装置の運用をすることができないという問題がある。
【0014】
そこで、本発明は上記課題を解決すべく、印字不良が発生した場合でも、印字不良の発生した箇所から自動的に継続して運用可能な印字ヘッド、プリンタ装置、プリンタ装置制御方法、および、プリンタ装置制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる目的を達成するため、本発明の一形態は、プリンタ装置の印字ヘッドであって、印刷される媒体と対向する面に、進行方向と直交する方向(横方向)に並ぶn(nは2以上の整数)個のインクノズルと、前記n個のインクノズルの後方に備えられ、前記n個のインクノズルの印刷部分の濃度を個々の前記インクノズル別に測定するセンサと、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、印字不良が発生した場合でも、印字不良の発生した箇所から自動的に継続して運用可能な印字ヘッド、プリンタ装置、プリンタ装置制御方法、および、プリンタ装置制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】プリンタ装置100における印字部20周辺の上面図の一例である。
【図2】プリンタ装置100における印字部20周辺を印字部20の進行方向から見た場合の断面図の一例である。
【図3】プリンタ装置100における印字部20周辺の側面図の一例である。
【図4】プリンタ装置100の印字不良検知動作を示すフロー図である。
【図5】プリンタ装置400のブロック構成図の一例である。
【図6】印字部20のブロック構成図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0019】
なお、各実施形態のプリンタ装置等を構成する各部は、制御部、メモリ、メモリにロードされたプログラム、プログラムを格納するハードディスク等の記憶ユニット、ネットワーク接続用インターフェースなどからなり、ハードウェアとソフトウェアの任意の組合せによって実現される。そして特に断りのない限り、その実現方法、装置は限定されない。
【0020】
また、制御部はCPU(Central Processing Unit)などからなり、オペレーティングシステムを動作させてプリンタ装置等の全体を制御するとともに、例えばドライブ装置などに装着された記録媒体からメモリにプログラムやデータを読み出し、これに従って各種の処理を実行する。
【0021】
記録媒体は、例えば光ディスク、フレキシブルディスク、磁気光ディスク、外付けハードディスク、半導体メモリ等であって、コンピュータプログラムをコンピュータが読み取り可能に記録する。また、コンピュータプログラムは、通信網に接続されている図示しない外部コンピュータからダウンロードされても良い。ここで、特に断りの無い限り、通信網は、インターネット、LAN(Local Area Network)、公衆回線網、無線通信網、または、これらの組み合わせ等によって構成されるネットワーク等であって良い。
【0022】
<第1の実施の形態>
次に、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して詳細に記述する。
【0023】
図1は、本実施の形態のプリンタ装置100の印字部20周辺の上面図の一例である。図2は、図1のプリンタ装置100を装置前方から見た場合の印字部20の断面図の一例を示している。図3は、図1を進行方向に直交する方向(側面)から見た場合のプリンタ装置100の印字部20周辺の一例を示している。図1、図2、図3を参照して、本実施形態のプリンタ装置100の構成を詳細に説明する。これらの図に示されるように、本発明の第1の実施の形態におけるプリンタ装置100は、印字部20と、印字部20を印字の際に摺動させるキャリアシャフト8、9に印字部20を接続するキャリア6(図3)と、ラインセンサ7と、媒体5を搬送するフィードローラ10、11と、フィードローラ10、11に対向するピンチローラ12(図3)と、制御部30(不図示)と演算装置40(不図示)とを備える。
【0024】
印字部20は、図3に示されるように、インクジェットヘッド3とインクノズル4とから構成され、キャリア6に装着される。
【0025】
インクジェットヘッド3は、インクカートリッジ2を装着可能に構成される。インクジェットヘッド3は、インクカートリッジ2内のインクタンク1から、インクヘッド3のインク流路を通じてインクをインクノズル4に供給する。
【0026】
インクノズル4は、図2に示されるように、2個以上のノズルを備える。例えば、インクノズル4は、インクノズル41、インクノズル42、インクノズル43の3つのノズルから構成される。これらの各ノズルは、インクタンク1から供給されるインクを用いて、媒体5に、例えばインクジェット方式で印字を行う。なお、インクノズル4の先端に付着したインクが転写しないようにガイドするプロテクタ60がインクノズル4の先端やインクジェットヘッド3に装着されても良い。
【0027】
キャリア6は、図3に示されるように、印字部20のインクジェットヘッド3に装着されるとともに、例えば、2本のキャリアシャフト8、9に装着されており、制御部30から制御信号を入力された図外のアクチュエータによりタイミングベルト等でキャリアシャフト8、9上を往復動作するように構成される。制御部30の制御を受けて、印字部20を往復動作させる機構を移動機構というが、移動機構は上記に限定されない。キャリア6は、図3に示すように、インクノズル4の脇で印字部20の進行方向に対し後方にラインセンサ7を装着できるよう構成される。なお、ラインセンサ7は、インクノズル4の脇に直接装着されても良いし、プロテクタ60に装着されても良い。
【0028】
インクカートリッジ2は、図2に示されるように、インクタンク1を2個以上独立して配置することが可能である。例えば、インクカートリッジ2は、インクタンク11、インクタンク12、インクタンク13の3つのインクタンクを備えている。また、例えば、インクタンク11はインクノズル41に、インクタンク12はインクノズル42に、インクタンク13はインクノズル43にそれぞれ対応しており、各々のインクノズル4は対応するインクタンク1のインクを印字の際に用いる。この場合には、印字部20は、1回の印字動作で1度に3行の印字ができる。
【0029】
ラインセンサ7は、例えば、発行側ラインセンサと受光側ラインセンサとから構成される。発光側ラインセンサは、印字を行う媒体5の印字面に焦点が合うように赤外光を照射し、受光側ラインセンサは、印字面から反射した赤外光の量を検出する。このようにして、ラインセンサ7は、インクノズル4から媒体5に印字を行った印字文字の濃度を印字直後に検出することができる。
【0030】
ラインセンサ7は、例えば、照射した赤外線と受光した赤外線との光量の比の値を演算装置40に送信する。演算装置40は、ラインセンサ7から受信した値が、予め定めた値以下の場合や、受信した値と適性値との差分が許容される所定範囲内に無い場合には、印字が正常に行なわれていないと判定する(異常検知)。適性値とは、ラインセンサ7が照射する赤外線の光量とラインセンサ7が受光する赤外線の光量との比の適正値であり、例えば、図示しない記憶部が、この適正値をインクタンク1の種類やインクノズル4の種類ごとにあらかじめ記憶していてもよい。この場合、演算装置40は、ラインセンサ7から実際に送られてきた値と、記憶部が記憶する適正値とを比較して、該値が適性値から許容範囲内であるか否か判定することにより、印字が正常に行なわれているか否かを判定することができる。
【0031】
また、制御部30は、演算装置40の判定した印字が正常に行なわれているかどうかの判定結果と、インクノズル4が印字を行なった該検出が行なわれた位置の情報とから、不良印字が行なわれた媒体5上の箇所を取得することができる。ここで、位置の情報とは、個々のインクノズル4が媒体5の上のどの位置、すなわち、どの行のどの列の上に存在するかを表す行の情報と列の情報である。行の情報は、フィードローラ10、11等が媒体5を印字開始行から何行分移動させているかを制御部30が取得することによって得られる。また、列の情報は、例えば、キャリア6がキャリアシャフト8、9上のどの位置にあるかという情報やラインセンサ7の位置情報を制御部30が取得することによって得られる。制御部30は、ラインセンサ7が検出動作をしている間、常に位置情報(行の情報と列の情報)を取得し、演算装置40内の図示しない記憶部に該位置の情報を送信してもよい。演算装置40内の記憶部は、制御部30から送信された位置情報と、演算装置40の判定結果とを対応付けて記憶する。制御部30は、該記憶部を参照することによって、どの箇所で印字不良が発生したかを取得することができる。
【0032】
また、ラインセンサ7は、インクノズル4が印字する文字のドット数を検出するセンサでも良い。この場合には、演算装置40が、インクノズル4が印字する文字が本来有しているドット数と、ラインセンサ7が検出した文字のドット数とを、ラインセンサ7の印字文字検出ごとに比較し、ラインセンサ7が検出したドット数が、インクノズル4が印字した文字が有しているべきドット数よりも少ない場合に印字不良と判定しても良い。インクノズル4が印字する文字が本来有しているドット数は、インクタンク1の種類やインクノズル4の種類ごとに予め演算装置40内の記憶部に格納されていてもよい。例えば、インクタンクのインクの色が黒であれば、ラインセンサ7は媒体5に印字された印字文字の黒ドット数を検出して、演算装置40に送信する。演算装置40は、記憶部に格納されている黒ドット数の適性値と実際にラインセンサ7が検出した黒ドット数とを比較して、印字不良が発生したか否かを判定する。また、演算装置40は、印字文字の濃度の変化率が所定値を越えた場合などに異常が発生したとして印字不良と判定しても良い。このように、ラインセンサ7は、文字が適切に印字されているか否かを検出可能であれば、他の公知の方法を用いて検出を行なっても良い。ラインセンサ7が検出する値を、以下では色レベル(濃度)と呼ぶ。
【0033】
印字が行われる媒体5は、例えば通帳や印刷用紙、はがき、冊子などであり、印字可能な媒体であれば特にその材質は制限されない。制御部30からの制御信号を入力された図外のアクチュエータ等はフィードローラ10、11を回転させて媒体5を図1の前後方向に搬送させ、印字位置決めされた位置に印字部20を移動させる。
【0034】
フィードローラ10、11は媒体5を送り出すローラである。ピンチローラ12は各々のフィードローラ10、11に対向した位置に設けられるローラである。ピンチローラ12は、媒体の厚さに応じて上下方向に一定の押圧力を加えたまま上下動する機構を有する。当該機構は、制御部30が弾性部材等を介して押圧力を制御するなどの一般的な方法を用いて実現できるため詳細説明は省略する。この機構により、各々のフィードローラ10、11と各々のピンチローラ12とが媒体5を挟持する。制御部30の制御を受けて媒体5を搬送する機構を搬送機構というが、搬送機構は上記に限定されない。
【0035】
制御部30はCPU(Central Processing Unit)などからなり、プリンタ装置100の各部や全体を制御する。制御部30は、例えばドライブ装置などに装着された記録媒体からメモリにプログラムやデータを読み出し、これに従って、媒体5の前後方向の搬送の制御や、キャリアシャフト8、9上のキャリア6の往復動作の制御や、ラインセンサ7の検出制御や、各インクノズル4の噴射の開始あるいは停止制御等の各種の処理を実行する。
【0036】
演算装置40は、CPU(Central Processing Unit)などからなり、上述のとおり、ラインセンサ7から送られてきた赤外線光量比の値、あるいは黒字等のドット数と、図示しない記憶部が記憶する適正値とを比較することにより、印字が正常に行なわれているかどうかを判定する。
【0037】
次に、プリンタ装置100の動作について図4のフローチャートを用いて説明する。
【0038】
例としてインクタンク41がインク切れとなった場合を想定して説明する。まず、媒体5がフィードローラ10、11とピンチローラ12に挟持された状態で印字部20付近に搬送される。その後、図示しないアクチュエータが印字部20をタイミングベルト等でキャリアシャフト8、9上で動作させる。また、図示しない位置決めセンサがインクノズル4の位置を媒体5の印字行が合った箇所に決定する(ステップS1)。
【0039】
次にインクノズル41、42、43が媒体5の指定行に印字を行う(ステップS2)。図1に示すように、インクノズル41、42、43が印字を行なう方向は、キャリアシャフト8、9に平行な方向である。
【0040】
ラインセンサ7は、インクノズル4が印字を行う都度、印字文字の色レベルを検出する(ステップS3)。ラインセンサ7は、検出したインクノズル4ごとの色レベルを表す情報を、演算装置40に送信する。また、制御部30は、インクノズル4の位置情報を演算装置40に送信する。
【0041】
演算装置40は、上述の方法により、例えば、各インクノズル4で印字を行うはずの色レベルと、実際に検出した色レベルとの比較を行ない、それらのずれが所定範囲内にあるか否かを比較する(ステップS4)。演算装置40は、比較した判定結果と、制御部30から送信された位置情報とを対応付けて記憶部に格納する。
【0042】
演算装置40は、各インクノズル4で印字を行う本来の色レベルである適性値と、実際に検出した色レベルとの差分が所定範囲内にある場合には判定結果を制御部30に送信しない。この場合、インクノズル41、42、43は印字をそのまま行い続ける(ステップS5)。
【0043】
一方、インクノズル41が印字を行う本来の色レベルと、実際に検出した色レベルとの差分が所定範囲内に無い場合、演算装置40は、インク切れ若しくはインクノズル詰まり等による印字不良が発生したと判定する。この場合、演算装置40は制御部30に判定結果を通知する。制御部30は、判定結果を受信すると、演算装置40内の記憶部を参照し印字不良が発生した箇所を取得する。制御部30は、その印字行が終了した時点で、フィードローラ10、11を回転させ、印字不良となった箇所が存在する行(インクノズル41が印字していた行)が、インクノズル42が印字する行となるように、一行分だけ媒体5を後ろ方向(正常な印刷と逆方向)に移動させる(ステップS6)。
【0044】
次に、制御部30は、キャリア6を進行方向と逆方向に移動させ、インクノズル41で印字不良が発生した箇所に印字部20を移動させるとともに、当該位置からインクノズル42の印字を開始する(ステップS7)。なお、印字不良となった箇所(異常が検出された箇所)とは、印字不良が発生して媒体5上でカスレ字等になっている箇所でも良いし、そのカスレ字等の隣の未だ印字されていない箇所でも良い。つまり、印字部20は、カスレ字等の上から重ねて二重に印字しても良いし、カスレ字等には二重に印字せず、カスレ字等の隣の箇所から印字を始めてもよい。
【0045】
制御部30は、インクノズル41で印字不良が発生した事を確認したため、次行以降の印字においてはインクノズル41の使用を中止し、インクノズル42、43のみで印字を継続する(ステップS8)。
【0046】
それ以降、インクノズル42、43が印字を継続し、同様のステップを繰り返す。すなわち、ラインセンサ7が、インクノズル42、43のいずれかで印字不良を検出した場合には、上記同様に、制御部30は、正常なインクノズル4が不良インクノズル4の印字を補うように制御し、不良となったインクノズル4は動作させないようにする。
【0047】
以上の説明では、インクノズル4が3つの場合について述べたが、インクノズル4の数は、2以上のいくつであってもかまわない。すなわち、一般に、インクノズル4の数がインクノズル41、42、・・・、4k、・・・、4nのn個(kは1以上の整数。nは2以上の整数。n>k。)であってもよい。
【0048】
ラインセンサ7がk番目のインクノズル4kを不良であると判定した場合、制御部30は、印字不良となった箇所が存在する行(インクノズル4kが印字していた行)が、k−1番目のインクノズル4(k−1)あるいはk+1番目のインクノズル4(k+1)が印字する行となるように、フィードローラ10、11を回転させて一行分だけ媒体5を移動させる。
【0049】
ここで、k−1番目、k+1番目のノズルが存在しない場合、あるいは、k−1番目、k+1番目のインクノズルが印字不良であるなどの理由で使用できない場合には、さらに隣のk−2番目のインクノズル4(k−2)、あるいは、k+2番目のインクノズル4(k+2)が印字するように、制御部30はフィードローラ10、11を回転させて2行分だけ媒体5を移動させる。
【0050】
次に、制御部30は、インクノズル4kが印字不良を生じた箇所に印字部20を移動させるとともに、当該位置からインクノズル4(k−1)あるいはインクノズル4(k+1)が印字を行なうように制御する。そして、以降の印字処理において、制御部30は、k番目のインクノズル4kを停止させて残りのインクノズル4のみを用いて印字を継続する。
【0051】
なお、制御部30は、インクノズル4kが印字不良を生じさせた場合に、1番目からk−1番目までのインクノズルのみを用いて印字を継続してもよいし、k+1番目からn番目までのインクノズルのみを用いて印字を継続してもよい。
【0052】
制御部30は、k−1>n−kのときには、1番目からk−1番目までのインクノズルのみを用いて印字を継続し、k−1<n−kのときにはk+1番目からn番目までのインクノズルのみを用いて印字を継続してもよい。例えば、インクノズル4の数が、インクノズル41〜46までの6つである場合であって、4番目のインクノズル44が印字不良を発生させたとする。この場合、n=6、k=4である。k−1=3、n−k=2であるから、k−1>n−kである。この場合、制御部30は、1からk−1番目(1から3番目)までのインクノズル41〜43のグループを稼働させ、インクノズル45、46を停止させてもよい。制御部30がこのような制御を行なえば、プリンタ装置100は、一列に隣り合うインクノズルのグループのなかで、正常に印字可能なインクノズルの数が多い方のグループを稼働させることができる。上記の例では、プリンタ装置100は、隣り合う2つのインクノズル45、46ではなく、隣り合う3つのインクノズル41〜43を可動させることができる。
【0053】
正常に印字可能なインクノズルの個数が1個、あるいは、所定値以下の個数となった場合、制御部30は、図示しない通信部を介してネットワークにつながった図示しない監視端末にインクのエンプティアラームを送信してもよい。これにより、エンプティアラームを受けた監視端末は保守員を現地に送り、保守員は古いインクカートリッジと新品のインクカートリッジとを交換できる。なお、該プリンタ装置100は自動機に搭載されるのみならず、一般家庭等においてユーザが使用することも可能である。この場合、プリンタ装置100は通信部のかわりにランプの点灯やスピーカ等を用いてアラームを発するようにしても良い。
【0054】
プリンタ装置100は、インク切れによるリカバリ動作だけでなく、インクノズル詰まり等による印字不良が発生した場合にも、インク切れのリカバリ動作と同様の運用が可能である。
【0055】
なお、通常自動機では主に黒印字がなされるため、全てのインクタンクは黒インクである(この場合色レベルは、黒色の濃さのレベルである黒レベルとなる)が、上記プリンタ装置100はそれに限定されるものではない。
【0056】
次に、本実施の形態におけるプリンタ装置100の効果を説明する。
【0057】
本実施の形態におけるプリンタ装置100は、インク切れやインクノズル詰まり等により印字不良が発生しても、別の正常なインクノズル4で印字の運用が可能であるため、プリンタ装置100を停止しないで継続運用することが可能となる。具体的には、インクカートリッジ2のインク切れやインクノズル4の目詰まり等による印字不良を、インクノズル4に設置したラインセンサ7が印字直後に検知することで、制御部30は印字不良が発生したインクノズル4(インクタンク1)の使用を停止し、別のインクノズル4(別のインクタンク1)を用いて、印字不良が発生した位置から印字を続けることができる。
【0058】
この一連の動作は全て自動で行なわれるため、常時オペレータが操作していない自動機においても印字不良が発生した場合にエラーとしてシステム休止する事無く、連続動作が可能となる。
【0059】
また、本実施の形態におけるプリンタ装置100は、上述した仕組みを使用する事で、インクタンク1内の1つのインクタンクのインクが空になって印字不良となった場合に、空になったインクノズル4(インクタンク1)の使用を停止し、インク残量のある別のインクノズル4(別のインクタンク1)に切り替えて印字を続ける事が可能となる。そのため、プリンタ装置100は、1つのインクタンク内のインクが空になるまで印字を続ける事が可能であり、インクカートリッジ2のインク容量を増やす等の施策を施す事なく、インクタンク寿命の延命が可能となる。
【0060】
なお、上述の説明はインクタンク1が2個装着されている場合の説明であり、インクタンク1をn個装着している場合は、プリンタ装置100は、同様の運用を行なう事でn−1個のインクタンク1内のインクが空になるまで印字を続ける事が可能となる。
【0061】
また、プリンタ装置100は、通信部を備えることで、使用可能なインクタンク1が最後の1個となった場合、インクタンク交換のワーニング(警告やアラーム)を上位システム等に発信することができる。
【0062】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0063】
本実施の形態におけるプリンタ装置200は、インクノズル4をクリーニングするノズルクリーニング部50を備える点でプリンタ装置100と異なる。
【0064】
ノズルクリーニング部50は、インクノズル4の噴射口先端をクリーニングする。例えばノズルクリーニング部50は、図1に示すようにプリンタ装置200の装置後方に配置されてもよい。例えば、制御部30は、インクノズル4に異常が発生した場合に印字部20を装置後方に移動させ、ノズルクリーニング部50の吸引口に設けられたポンプやパッドがインクノズル4のインク噴射口を吸引したり、ゴムヘラ等で拭うなどの動作を行なってもよい。あるいは、インクノズル4がインクの乾燥詰まりや異物を取り除くために空打ちを行なっても良い。ノズルクリーニング部50の構成、配置、動作方法等はこれに限定されない。他の構成はプリンタ装置100と同様であるから、説明を省略する。
【0065】
次に本実施の形態におけるプリンタ装置200の動作のうち、プリンタ装置100との相違点を中心に説明する。
【0066】
制御部30は、ラインセンサ7が印字不良を検出した場合、該印字不良を発生させたインクノズル4を一旦停止させる。その後、ノズルクリーニング部50は該インクノズル4のクリーニングを行う。プリンタ装置200は、クリーニング終了後に再度該インクノズル4を印字に使用する。制御部30は、印字不良を発生させたインクノズル4がクリーニング中停止している間は、第1の実施の形態と同様の処理を行うが、該インクノズル4のクリーニング終了後に再度該インクノズル4を印字に使用する点で第1の実施の形態のプリンタ装置100とは異なる。なお、ノズルクリーニング部50がクリーニングを行なったにもかかわらず、該インクノズル4が再度印字不良を発生させた場合、あるいは、所定回数印字不良を発生させた場合には、該インクノズル4は第1の実施の形態と同様に次行以降の印字には用いず縮退させてもよい。
【0067】
このような構成により、インクノズル4を無駄にすることなく効率的にプリンタ装置200の運用を行なうことができる。
【0068】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0069】
本実施の形態におけるプリンタ装置300は、図1に示す媒体5上を左右双方向、すなわち、媒体5の行に沿ってどちらの方向にも印字可能な印字部20を備える。また、第1の実施の形態で説明したラインセンサ7がインクノズル4の両脇2箇所に装着された構成である点がプリンタ装置100と異なる。他の構成はプリンタ装置100と同様であるから、説明を省略する。
【0070】
このような構成により、印字部20が左右双方向に印字可能であっても、印字直後の印字文字をラインセンサ7が検出できるため、第1の実施の形態における効果と同様の効果を得ることができる。
【0071】
<第4の実施の形態>
本実施の形態におけるプリンタ装置400は、図5に示されるように、印字部20、制御部30、演算装置40を備える。演算装置40はプリンタ装置400の内部に設けられても良いし、外部に設けられてもよい。これらの各構成部の構成、動作については上述したとおりであるから説明を省略する。
【0072】
このような構成によれば、印字部20と、印字部20の前記センサの測定値に基づいて異常を判定し、印刷の異常箇所と前記異常を発生した第1のインクノズルを特定する演算手段と、前記媒体を前記横方向に移動させるとともに印字部20を前記進行方向と逆方向に移動させて、前記媒体上の前記異常箇所に前記第1のインクノズルとは別の第2のインクノズルを位置づける制御手段と、を備えるプリンタ装置が提供される。
【0073】
本実施の形態のプリンタ装置400は、印字不良が発生した場合でも、印字不良の発生した箇所から自動的に継続して運用される。その理由は、ラインセンサ7の検出によって演算装置40がインクノズル4の印字不良の発生を判定した場合、プリンタ装置400は印字不良を発生させたインクノズル4以外の他のインクノズル4を用いて、印字不良が検出された箇所から引き続き印字を行なうことができるからである。
【0074】
図6には、印字部20のブロック構成図の一例を示す。印字部20は、媒体5に対向する面に、印字部20の進行方向と直交する方向に並ぶ2以上のインクノズル4を備える。また、該進行方向に対し、インクノズル4よりも後方に個々のインクノズル4から印字された印字文字の濃度を検出するラインセンサ7を備える。なお、上述のとおり、印字部20が双方向に可動な場合には、ラインセンサ7は印字部20の両脇に備えられても良い。この構成により、印字部20は、個々のインクノズル4から印字された印刷部分の濃度をラインセンサ7で検出することができるため、インクノズル4の一部が印字不良となった場合でも他のインクノズル4を用いて印字することができる。
【0075】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0076】
2 インクカートリッジ
3 インクジェットヘッド
4 インクノズル
6 キャリア
7 ラインセンサ
10、11 フィードローラ
20 印字部
30 制御部
40 演算装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷される媒体と対向する面に、進行方向と直交する方向(横方向)に並ぶn(nは2以上の整数)個のインクノズルと、
前記n個のインクノズルの後方に備えられ、前記n個のインクノズルの印刷部分の濃度を個々の前記インクノズル別に測定するセンサと、
を備えるプリンタ装置の印字ヘッド。
【請求項2】
移動機構により前記進行方向およびその逆方向に移動可能な請求項1に記載の印字ヘッドと、
前記印字ヘッドの前記センサの測定値に基づいて異常を判定し、印刷の異常箇所と前記異常を発生した第1のインクノズルを特定する演算手段と、
前記媒体の搬送機構を制御して前記媒体を前記横方向に移動させるとともに、前記移動機構を制御して前記印字ヘッドを前記逆方向に移動させて、前記媒体上の前記異常箇所に前記第1のインクノズルとは別の第2のインクノズルを位置づける制御手段と、
を備えるプリンタ装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第2のインクノズルの印刷後、前記第1のインクノズルが、前記インクノズルの一端からk番目(kは1以上n以下の整数)のインクノズルであった場合、n−kがk−1よりも小さい場合には、前記一端からk−1個のインクノズルを用い、n−kがk−1よりも大きい場合には、前記一端の他の一端からn−k個のインクノズルを用いて、以降の印刷を行なう請求項2に記載のプリンタ装置。
【請求項4】
前記第1のインクノズルをクリーニングするクリーニング手段と、
前記クリーニング手段によるクリーニングを行ない、クリーニング後には前記第1のインクノズルを含めたインクノズルで前記印刷を行ない、前記クリーニング後に印刷する前記第1のインクノズルが前記異常を所定回数発生させた場合には前記クリーニング手段を制御して前記第1のインクノズルのクリーニングを中止する前記制御手段と、
を備える請求項2乃至3のいずれかに記載のプリンタ装置。
【請求項5】
前記濃度が所定値以下である印字が検出されたインクノズルの数が所定数を越えた場合に警報を発信する警報手段をさらに備える請求項2乃至4のいずれかに記載のプリンタ装置。
【請求項6】
移動機構により前記進行方向およびその逆方向に移動可能な請求項1に記載の印字ヘッドを備えるプリンタ装置に、
前記印字ヘッドの前記センサの測定値に基づいて異常を判定し、印刷の異常箇所と前記異常を発生した第1のインクノズルを特定する演算ステップと、
前記媒体の搬送機構を制御して前記媒体を前記横方向に移動させるとともに、前記移動機構を制御して前記印字ヘッドを前記逆方向に移動させて、前記媒体上の前記異常箇所に前記第1のインクノズルとは別の第2のインクノズルを位置づける制御ステップと、
を実行させるプリンタ装置制御プログラム。
【請求項7】
前記第2のインクノズルの印刷後、前記第1のインクノズルが、前記インクノズルの一端からk番目(kは1以上n以下の整数)のインクノズルであった場合、n−kがk−1よりも小さい場合には、前記一端からk−1個のインクノズルを用い、n−kがk−1よりも大きい場合には、前記一端の他の一端からn−k個のインクノズルを用いて、以降の印刷を行なう前記制御ステップを前記プリンタ装置に実行させる請求項6に記載のプリンタ装置制御プログラム。
【請求項8】
クリーニング手段により前記第1のインクノズルのクリーニングを行ない、クリーニング後には前記第1のインクノズルを含めたインクノズルで前記印刷を行ない、前記クリーニング後に印刷する前記第1のインクノズルが前記異常を所定回数発生させた場合には前記クリーニングステップにおける前記第1のインクノズルのクリーニングを中止する前記制御ステップと、
を前記プリンタ装置に実行させる請求項6乃至7のいずれかに記載のプリンタ装置制御プログラム。
【請求項9】
移動機構により前記進行方向およびその逆方向に移動可能な請求項1に記載の印字ヘッドを備えるプリンタ装置が、
前記印字ヘッドの前記センサの測定値に基づいて異常を判定し、印刷の異常箇所と前記異常を発生した第1のインクノズルを特定し、
前記媒体の搬送機構を制御して前記媒体を前記横方向に移動させるとともに、前記移動機構を制御して前記印字ヘッドを前記逆方向に移動させて、前記媒体上の前記異常箇所に前記第1のインクノズルとは別の第2のインクノズルを位置づけるプリンタ装置制御方法。
【請求項10】
前記プリンタ装置が、
前記第2のインクノズルの印刷後、前記第1のインクノズルが、前記インクノズルの一端からk番目(kは1以上n以下の整数)のインクノズルであった場合、n−kがk−1よりも小さい場合には、前記一端からk−1個のインクノズルを用い、n−kがk−1よりも大きい場合には、前記一端の他の一端からn−k個のインクノズルを用いて、以降の印刷を行なう請求項9に記載のプリンタ装置制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−86500(P2012−86500A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236951(P2010−236951)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】