印字ヘッドおよび印刷装置
【課題】アーマチュアの回転支点の浮きを防止する。
【解決手段】端部に印字ワイヤが取り付けられ、回動自在に設けられたアーマチュアを有する印字ヘッドにおいて、前記アーマチュアの回転支点と接触するヨークと、前記ヨークとの間で前記アーマチュアを挟んで、前記アーマチュアの回転支点を前記ヨークに押圧する片持ち梁構造の弾性部材と、前記弾性部材の一端部を固定するとともに前記弾性部材との間に空隙を形成しつつ前記弾性部材を覆う筐体と、前記筐体と前記弾性部材との間に、前記筐体および前記弾性部材に接触する押圧部材とを備えた。
【解決手段】端部に印字ワイヤが取り付けられ、回動自在に設けられたアーマチュアを有する印字ヘッドにおいて、前記アーマチュアの回転支点と接触するヨークと、前記ヨークとの間で前記アーマチュアを挟んで、前記アーマチュアの回転支点を前記ヨークに押圧する片持ち梁構造の弾性部材と、前記弾性部材の一端部を固定するとともに前記弾性部材との間に空隙を形成しつつ前記弾性部材を覆う筐体と、前記筐体と前記弾性部材との間に、前記筐体および前記弾性部材に接触する押圧部材とを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドットインパクト方式の印字ヘッドおよびその印字ヘッドを備えた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のSIDM(Serial Impact Dot Matrix)印字ヘッド(クラッパ型)(以下、「印字ヘッド」という。)は、複数の印字素子から構成されており、その構成を図10および図11に基づいて説明する。
【0003】
図10において、コイルボビン102に任意のターン数でコイル106が巻かれており、その内側に柱状で磁気特性の良いコア101が配置されている。このコア101に接触してコアヨーク103、スペースヨーク125、およびスペースシート126が、またコア101と空隙を挟んで対向するようにアーマチュア104が、さらにアーマチュア104を挟み込みスペースヨーク125と接触するようにアーマチュアヨーク116が配置されており、これらの磁性体部材が磁路121を構成している。
【0004】
アーマチュア104は、コンプレッションスプリング等で構成され、一端が固定されたリセットスプリング108によりリミッタ部107に押圧されており、先端にワイヤ105が溶着されている。図11に示すようにリミッタ部107(ラバーリミッタ107a、シートリミッタ107b)と筐体117との間には1枚、もしくは複数枚のスペーサ130が実装されており、これによりリミッタ部107のアーマチュア104との接触面の位置を上下させ、アーマチュア104のワイヤストロークを調整している。
【0005】
各印字素子としてのワイヤ105は、ガイドノーズ120に固定されているワイヤガイド109により、先端がドットマトリクスを構成するように位置決めされており、またガイドノーズ120に固定されている複数の中間ガイド118がワイヤ105の横振動や座屈を抑制している。
【0006】
前述したリセットスプリング108は、ホルダスプリング124に実装されており、アーマチュア104を押圧して待機位置に戻す力を作用させている。また、図11に示すようにアーマチュア104は、接触するスペースシート126を介してスペースヨーク125面およびアーマチュアヨーク116面へプレッシャスプリング115により押圧されており、この接触点が、アーマチュア104が運動する回転支点129となる。プレッシャスプリング115は、筐体117が構成する面に固定されており、アーマチュア104の支点部に押圧力が作用するように任意の角度に曲げ加工がされている。
【0007】
電源112からヘッド基板122にあるコネクタ123を通してコイル106に通電されると磁路121に磁束が発生し、その磁路121の一部であるコア101とアーマチュア104との空隙の磁束がアーマチュア104をコア101側に引き寄せる吸引力(電磁力)として作用する。
【0008】
これにより、アーマチュア104と接合されているワイヤ105は、プラテン114方向へ運動を開始し、プラテン114により背面を支持された用紙111にインクリボン110を介してインパクトし、ドットを生成する。
【0009】
電源112からコイル106への通電を止めると、吸引力が減少していき、インパクトの反力とリセットスプリング108のアーマチュア104への押圧力が、その吸引力の影響に勝ったときに、アーマチュア104は運動方向を反転し、リミッタ部107の位置に復帰する。このリミッタ部107は、制振材料もしくはその複合材により構成されており、リセット時のアーマチュア104の残振動を抑え、連続してドットを生成する場合の応答性に支障がないようにしている。
【0010】
この一連の動作タイミングを制御部113により制御することで、用紙111へのドットの集合体である文字を形成することができるようになっている。なお、クランプスプリング119は、これらの部品をユニット化するための部材である。
【0011】
このように従来の印字ヘッドは、構成されている。
【0012】
また、レバー(アーマチュア)を保持するレバーホルダとヘッド構成部材を締結保持する固定バネとの間に金属性の補強板を設けているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】実開平2−133345号公報(1頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述した従来の技術においては、アーマチュアの回転支点を押圧するプレッシャスプリングの形状が制限されるため、アーマチュアの回転支点の浮きを完全に防止する十分な押圧力を得ることが難しいという問題がある。
【0015】
上述のようにプレッシャスプリングの形状が制限されるのは、プレッシャスプリングの花弁状の板バネ部をそれぞれ片持ち梁としていることにより、幅を増やすことでの押圧力を強化することは、印字ヘッドの実装上、困難であり、また板厚を増やすことで押圧力を強化しようとすると塑性域に入ってしまいイレギュラー的な荷重が負荷された場合、変形が元に戻らず適切な押圧力を与えることができず、運動特性の低下やワイヤ間のバラつきを発生させてしまうためである。
【0016】
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、アーマチュアの回転支点の浮きを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
そのため、本発明は、端部に印字ワイヤが取り付けられ、回動自在に設けられたアーマチュアを有する印字ヘッドにおいて、前記アーマチュアの回転支点と接触するヨークと、前記ヨークとの間で前記アーマチュアを挟んで、前記アーマチュアの回転支点を前記ヨークに押圧する片持ち梁構造の弾性部材と、前記弾性部材の一端部を固定するとともに前記弾性部材との間に空隙を形成しつつ前記弾性部材を覆う筐体と、前記筐体と前記弾性部材との間に、前記筐体および前記弾性部材に接触する押圧部材とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
このようにした本発明は、アーマチュアの回転支点の浮きを防止することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施例における印字ヘッドの構成を示す概略断面図
【図2】第1の実施例における印字ヘッドの構成を示す分解斜視図
【図3】第1の実施例におけるプレッシャフェルトの構成を示す説明図
【図4】第1の実施例におけるプレッシャフェルトの構成を示す断面図
【図5】第1の実施例におけるアーマチュア支点変位と押圧力の関係を示すグラフ
【図6】第1の実施例におけるアーマチュア支点浮きを示す波形
【図7】第2の実施例におけるアーマチュア支点部の構成を示す断面図
【図8】第3の実施例における筐体の構成を示す説明図
【図9】第3の実施例におけるプレッシャフェルトの構成を示す断面図
【図10】従来例における印字ヘッドの構成を示す概略断面図
【図11】従来例における印字ヘッドの構成を示す要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明による印字ヘッドおよび印刷装置の実施例を説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は第1の実施例における印字ヘッドの構成を示す概略断面図、図2(a)および図2(b)は第1の実施例における印字ヘッドの構成を示す分解斜視図である。
【0022】
図1および図2において、コイルボビン2に任意のターン数でコイル6が巻かれており、その内側に柱状で磁気特性の良いコア1が配置されている。このコア1に接触してコアヨーク3、スペースヨーク25、およびスペースシート26が、またコア1と空隙を挟んで対向するようにアーマチュア4が、さらにアーマチュア4を挟み込みスペースヨーク25と接触するようにアーマチュアヨーク16が配置されており、これらの磁性体部材が磁路21を構成している。
【0023】
アーマチュア4は、コンプレッションスプリング等で構成され、一端が固定されたリセットスプリング8によりリミッタ部7に押圧されており、先端部に印字ワイヤとしてのワイヤ5が溶着されている。図2に示すようにリミッタ部7(ラバーリミッタ7a、シートリミッタ7b)と筐体17との間には1枚、もしくは複数枚のスペーサ30が実装されており、これによりリミッタ部7のアーマチュア4との接触面の位置を上下させ、アーマチュア4のワイヤストロークを調整している。
【0024】
各印字素子としてのワイヤ5は、ガイドノーズ20に固定されているワイヤガイド9により、先端がドットマトリクスを構成するように位置決めされており、またガイドノーズ20に固定されている複数の中間ガイド18がワイヤ5の横振動や座屈を抑制している。
【0025】
前述したリセットスプリング8は、ホルダスプリング24に実装されており、アーマチュア4を押圧して待機位置に戻す力を作用させている。また、アーマチュア4は、接触するスペースシート26を介してスペースヨーク25面、およびアーマチュアヨーク16面へプレッシャスプリング15により押圧されており、この接触点が、アーマチュア4が運動する回転支点29となり、アーマチュア4は回動自在に構成されている。
【0026】
プレッシャスプリング15は、片持ち梁構造の弾性部材(例えば、板バネ)であり、その一端部が筐体17の一面に固定され、他端部が自由端となってアーマチュア4に接触するように配置されており、スペースヨーク25およびアーマチュアヨーク16との間でアーマチュア4を挟むように配置されている。また、プレッシャスプリング15は、アーマチュア4の回転支点29に押圧力が作用するように任意の角度に曲げ加工がされた屈曲部が形成されている。
【0027】
筐体17は、ホルダスプリング24との間でプレッシャスプリング15の一端部を挟持して固定し、プレッシャスプリング15との間に空隙を形成しつつ、そのプレッシャスプリング15全体を覆っている。
【0028】
また、アーマチュア4を押圧しているプレッシャスプリング15と筐体17との間には、繊維の目が細かい硬質フェルト等の繊維体で構成された押圧部材としてのプレッシャフェルト40がプレッシャスプリング15および筐体17に接触するように配置され、そのプレッシャフェルト40の弾性により、さらにプレッシャスプリング15をアーマチュア4に押圧するようにしている。
【0029】
電源12からヘッド基板22にあるコネクタ23を通してコイル6に通電されると磁路21に磁束が発生し、その磁路21の一部であるコア1とアーマチュア4との空隙の磁束がアーマチュア4をコア1側に引き寄せる吸引力(電磁力)として作用する。
【0030】
これにより、アーマチュア4と接合されているワイヤ5は、プラテン14方向へ運動を開始し、プラテン14により背面を支持された用紙11にインクリボン10を介してインパクトし、ドットを生成する。
【0031】
電源12からコイル6への通電を止めると、吸引力が減少していき、インパクトの反力とリセットスプリング8のアーマチュア4への押圧力が、その吸引力の影響に勝ったときに、アーマチュア4は運動方向を反転し、リミッタ部7の位置に復帰する。このリミッタ部7は、制振材料もしくはその複合材により構成されており、リセット時のアーマチュア4の残振動を抑え、連続してドットを生成する場合の応答性に支障がないようにしている。
【0032】
この一連の動作タイミングを中央演算処理装置等の制御部13が図示しないメモリ等の記憶部に記憶された制御プログラム(ソフトウェア)に基づいて制御することで、用紙11へのドットの集合体である文字を形成することができるようになっている。なお、クランプスプリング19は、これらの部品をユニット化するための部材である。
【0033】
ここで、プレッシャフェルト40を図3の第1の実施例におけるプレッシャフェルトの構成を示す説明図、図4の第1の実施例におけるプレッシャフェルトの構成を示す断面図に基づいて説明する。
【0034】
図3において、プレッシャフェルト40は、材質を繊維の目が細かい硬質フェルトとし、中央部40aから花弁形状に延びたそれぞれの外周先端部40b(例えば、24箇所)が筐体17のリブ17a間に挿入されるようになっている。なお、図3(a)は筐体にプレッシャフェルトを実装した状態の正面図、図3(b)は筐体にプレッシャフェルトを実装した状態の斜視図、図3(c)はプレッシャフェルトの斜視図である。
【0035】
図4において、プレッシャフェルト40は、筐体17と、アーマチュア4を押圧しているプレッシャスプリング15との間に、プレッシャスプリング15とオーバラップするように、すなわちプレッシャフェルト40の厚さは、筐体17とプレッシャスプリング15との間の距離よりも大きく、またプレッシャフェルト40の長さは、プレッシャスプリング15の固定端から自由端までの長さと略同じ長さになっており、プレッシャスプリング15の屈曲部を押圧するように実装されている。
【0036】
また、そのプレッシャフェルト40には、フッ素オイル等の湿度特性が良好な潤滑オイルが含浸されている。また、スペースシート26は、ステンレス(金属)やポリイミド(ポリマー)などの耐摩耗特性の良い材料で構成されている。
【0037】
図4(a)はアーマチュアを実装した状態を示し、図4(b)はアーマチュアを実装していない状態を示しており、その図4(b)において、プレッシャフェルト40の板厚は、筐体17の段差高さhに対し、Δだけ大きく、厚さ(h+Δ)となっている。また、プレッシャスプリング15の板厚をt、プレッシャスプリング15を挟み込む筐体17とホルダスプリング24との空隙をdとすると、筐体17の段差高さhと筐体17とホルダスプリング24との空隙dの和が、プレッシャフェルト40の板厚(h+Δ)とプレッシャスプリング15の板厚tの和よりも小さくなっている。
【0038】
すなわち、h+d<(h+Δ)+t、の関係があり、Δ>d−t(ガタ)となる。
【0039】
Δは、プレッシャフェルト40が、筐体17およびプレッシャスプリング15にオーバラップする量となる。
【0040】
このように印字ヘッドは、プレッシャスプリング15と筐体17との間にプレッシャフェルト40が配置されて構成され、インパクトプリンタ等の印刷装置に実装される。
【0041】
上述した構成の作用について説明する。
【0042】
図4(a)に示すように、プレッシャスプリング15はプレッシャフェルト40の弾性力により押圧されるため、十分な力でアーマチュア4を押圧する。したがって、アーマチュア4の回転支点部は、スペースシート26に十分な力で押圧され、その浮き上がりが大幅に抑制される。
【0043】
図5は、第1の実施例におけるアーマチュア支点変位と押圧力の関係を示すグラフであり、従来の方式の場合と、第1の実施例のプレッシャフェルト40を設けた場合のアーマチュア4への押圧力を比較したものである。図5(a)は、横軸を図5(b)に示すアーマチュアの支点の変位量Xとし、縦軸を図5(b)に示すアーマチュアの支点の押圧力Fとしている。
【0044】
このように図5(a)は、プレッシャフェルト40を設けた場合のアーマチュア4をスペースシート26に押圧する力が、プレッシャフェルト40を設けない場合の押圧力と比較して大きくなっていることを示している。
【0045】
また、図6は第1の実施例におけるアーマチュア支点浮きを示す波形をワイヤ5の飛行波形およびコイル1への駆動電流の波形とともに示したものであり、図6(a)は従来例、図6(b)は本実施例を示している。なお、図6(a)および図6(b)の縦軸で示すワイヤ5飛行の正方向およびアーマチュア4の支点浮き正方向を図6(c)に示している。
【0046】
図6に示すように本実施例では、アーマチュア4の支点部の浮き上がりを大幅に抑制することができる。従来例では、アーマチュア4の支点部の浮き上がりは印字ヘッド動作時のワイヤ5のインパクトサイクルと相俟って微小振動となるが、本実施例ではその微小振動が抑制される。
【0047】
また、図4(a)に示すように、プレッシャフェルト40に含浸された潤滑オイルは、図中矢印Aが示す方向、すなわちプレッシャスプリング15、アーマチュア4、スペースヨーク25、アーマチュアヨーク16へと表面を伝わっていく。プレッシャフェルト40の中心部は十分な体積を有しているため、十分な潤滑オイルを含浸させることができる。
【0048】
以上説明したように、第1の実施例では、プレッシャフェルトの外周先端部が図5に示すように従来例と比較して大きな押圧力でアーマチュアの回転支点を拘束するようにしたことにより、アーマチュアの回転支点部の浮きを防止することができ、その回転支点部に発生する微小振動を抑制することができるという効果が得られる。
【0049】
また、アーマチュアの回転支点部に発生する微小振動に起因するアーマチュアの回転支点部およびそれと接触するスペースシート、アーマチュアヨークの摺動部のフレッジング磨耗を低減させることができるという効果が得られる。
【0050】
さらに、プレッシャフェルトの中心部に十分な体積を持たせているため、十分な潤滑オイルを含浸させることができ、その潤滑オイルが外周先端部を通り、アーマチュアと、プレッシャスプリング、スペースシート、およびアーマチュアヨークとの摺動面に供給され、境界(液体)潤滑となるため、これによる耐磨耗効果が得られる。
【0051】
またさらに、プレッシャフェルトは目の細かいフェルトで構成され、その中央部に体積を持たせるようにしているため、潤滑オイルの保持性能が良好であり、経時的に安定して潤滑オイルを供給することができる。その結果、長期間にわたり前記摺動部の磨耗を低減させることができ、ワイヤの印字力や速度等の運動性能を長期間にわたり安定させ、超寿命化させることができるという効果が得られる。
【0052】
また、プレッシャフェルトは、その外周部先端部でプレッシャスプリングを介し、アーマチュアを押圧するほか、その中心部でもオーバラップ量Δでプレッシャスプリングを押圧するため、プレッシャスプリングとそれが入り込む筐体とホルダスプリングが成す空隙とのガタを吸収することができ、拘束不良に伴うプレッシャスプリングのピン(ワイヤ)間の押圧力のバラつきや振動(騒音)を抑制することができるという効果が得られる。
【実施例2】
【0053】
第2の実施例の構成を図7の第2の実施例におけるアーマチュア支点部の構成を示す断面図に基づいて説明する。
【0054】
第2の実施例の構成は、図7(b)に示す第1の実施例の構成からスペースシート26を削除し、図7(a)に示すようにアーマチュア4の回転支点が直接スペースヨーク25に接触するように構成している。それに伴い、スペースヨーク25およびアーマチュアヨーク16に硬質で摩擦係数の低い無電解ニッケルボロンメッキ処理を行う。
【0055】
アーマチュア4は、一般的に無電解ニッケルメッキ処理等で良いが、アーマチュア4にも無電解ニッケルボロンメッキ処理を行うようにしても良い。
【0056】
なお、上述した第1の実施例と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0057】
上述した構成の作用について説明する。
【0058】
従来例および第1の実施例では、図7(b)に示すようにスペースシート26は、50μm程度の金属箔や樹脂シートにより構成されるが、その薄さにより反りが発生し易い。この反りがある場合、スペースシート26は、アーマチュア4の支点部を弾ませる(浮かせる)弾性体となり、微小振動を発生させる。
【0059】
第2の実施例では、図7(a)に示すようにスペースシート26を削除し、アーマチュア4の支点部が直接スペースヨーク25に接触するようにしているため、上記微小振動を発生させる要因を取り去ることができ、アーマチュア4の支点部に発生する微小振動を抑制することができる。
【0060】
また、スペースシート26の替わりに施行したスペースヨーク25およびアーマチュアヨーク16への無電解ニッケルボロンメッキ処理により、スペースヨーク25およびアーマチュアヨーク16の表面が硬化され、アーマチュア4との摺動面の摩擦力が低減される。
【0061】
以上説明したように、第2の実施例では、第1の実施例の効果に加え、第1の実施例で採用していたスペースシートの加工不良等による反りに起因して発生し得る微小振動をなくし、この微小振動に起因するフレッジング磨耗を防止することができるという効果が得られる。
【0062】
また、無電解ニッケルボロンメッキ処理により、アーマチュアとスペースヨークおよびアーマチュアヨークとの摺動面の摩擦力が小さくなるため、ワイヤの印字力や速度等の運動特性を向上させることができるという効果が得られる。
【0063】
さらに、無電解ニッケルボロンメッキの持つ摩擦係数低下の効果および硬化の効果により、アーマチュア、スペースヨークおよびアーマチュアヨークの磨耗量を低減させることができ、耐食性により塩害等の腐食の影響(腐食磨耗)を受けづらく、第1の実施例よりも印字ヘッドの動作を安定させ、また長寿命化させることができるという効果が得られる。
【0064】
またさらに、スペースヨーク、アーマチュアヨーク、およびアマーチュアとワイヤとの溶着部品は、他の部材と接着等でユニット化されておらず、それらの部品は磨耗の影響が出てきた場合、部品毎に保守交換ができるという効果が得られる。
【実施例3】
【0065】
第3の実施例の構成を図8の第3の実施例における筐体の構成を示す説明図に基づいて説明する。なお、図8(a)は第3の実施例における筐体の平面図、図8(b)は第3の実施例における筐体の斜視図、図8(c)は従来例における筐体の平面図、図8(d)は従来例における筐体の斜視図である。
【0066】
第3の実施例の構成は、図8(a)、図8(b)に示すように、第1の実施例または第2の実施例の構成における筐体17のプレッシャフェルト40との接触面に凹形状の閉空間としてのオイル溜り部(オイル貯留部)50を形成している。図8(a)、図8(b)では、各アーマチュアに対応するように複数のオイル溜り部50を形成しているが、それらを繋げて1つの閉空間としても良い。また、オイル溜り部50にプレッシャフェルト40のような材質からなるオイル吸収体を入れるようにしても良い。
【0067】
なお、上述した第1の実施例および第2の実施例と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0068】
上述した構成の作用について説明する。
【0069】
図9は第3の実施例におけるプレッシャフェルトの構成を示す断面図である。
【0070】
筐体17のプレッシャフェルト40との接触部に凹型の閉空間としてのオイル溜り部50を形成したことにより、そのオイル溜り部50を利用してプレッシャフェルト40に吸収された容量以上に潤滑オイルを貯蔵することができる。
【0071】
図9に示すように、オイル溜り部50に貯蔵された潤滑オイルは、図中矢印Bが示す方向、すなわちプレッシャフェルト40、プレッシャスプリング15、アーマチュア4、スペースヨーク25、アーマチュアヨーク16へと表面を伝わっていく。
【0072】
以上説明したように、第3の実施例では、第1の実施例および第2の実施例の効果に加え、オイル溜り部を形成したことにより、そのオイル溜り部を利用してプレッシャフェルトに吸収された容量以上に潤滑オイルを貯蔵し、潤滑オイルの総容量を増加させることができるため、アーマチュアと各部品の摺動部への潤滑オイルの供給時間を延ばすことができ、さらに印字ヘッドを長寿命化することができるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0073】
4 アーマチュア
5 ワイヤ
15 プレッシャスプリング
16 アーマチュアヨーク
17 筐体
25 スペースヨーク
30 スペーサ
40 プレッシャフェルト
50 オイル溜り部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドットインパクト方式の印字ヘッドおよびその印字ヘッドを備えた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のSIDM(Serial Impact Dot Matrix)印字ヘッド(クラッパ型)(以下、「印字ヘッド」という。)は、複数の印字素子から構成されており、その構成を図10および図11に基づいて説明する。
【0003】
図10において、コイルボビン102に任意のターン数でコイル106が巻かれており、その内側に柱状で磁気特性の良いコア101が配置されている。このコア101に接触してコアヨーク103、スペースヨーク125、およびスペースシート126が、またコア101と空隙を挟んで対向するようにアーマチュア104が、さらにアーマチュア104を挟み込みスペースヨーク125と接触するようにアーマチュアヨーク116が配置されており、これらの磁性体部材が磁路121を構成している。
【0004】
アーマチュア104は、コンプレッションスプリング等で構成され、一端が固定されたリセットスプリング108によりリミッタ部107に押圧されており、先端にワイヤ105が溶着されている。図11に示すようにリミッタ部107(ラバーリミッタ107a、シートリミッタ107b)と筐体117との間には1枚、もしくは複数枚のスペーサ130が実装されており、これによりリミッタ部107のアーマチュア104との接触面の位置を上下させ、アーマチュア104のワイヤストロークを調整している。
【0005】
各印字素子としてのワイヤ105は、ガイドノーズ120に固定されているワイヤガイド109により、先端がドットマトリクスを構成するように位置決めされており、またガイドノーズ120に固定されている複数の中間ガイド118がワイヤ105の横振動や座屈を抑制している。
【0006】
前述したリセットスプリング108は、ホルダスプリング124に実装されており、アーマチュア104を押圧して待機位置に戻す力を作用させている。また、図11に示すようにアーマチュア104は、接触するスペースシート126を介してスペースヨーク125面およびアーマチュアヨーク116面へプレッシャスプリング115により押圧されており、この接触点が、アーマチュア104が運動する回転支点129となる。プレッシャスプリング115は、筐体117が構成する面に固定されており、アーマチュア104の支点部に押圧力が作用するように任意の角度に曲げ加工がされている。
【0007】
電源112からヘッド基板122にあるコネクタ123を通してコイル106に通電されると磁路121に磁束が発生し、その磁路121の一部であるコア101とアーマチュア104との空隙の磁束がアーマチュア104をコア101側に引き寄せる吸引力(電磁力)として作用する。
【0008】
これにより、アーマチュア104と接合されているワイヤ105は、プラテン114方向へ運動を開始し、プラテン114により背面を支持された用紙111にインクリボン110を介してインパクトし、ドットを生成する。
【0009】
電源112からコイル106への通電を止めると、吸引力が減少していき、インパクトの反力とリセットスプリング108のアーマチュア104への押圧力が、その吸引力の影響に勝ったときに、アーマチュア104は運動方向を反転し、リミッタ部107の位置に復帰する。このリミッタ部107は、制振材料もしくはその複合材により構成されており、リセット時のアーマチュア104の残振動を抑え、連続してドットを生成する場合の応答性に支障がないようにしている。
【0010】
この一連の動作タイミングを制御部113により制御することで、用紙111へのドットの集合体である文字を形成することができるようになっている。なお、クランプスプリング119は、これらの部品をユニット化するための部材である。
【0011】
このように従来の印字ヘッドは、構成されている。
【0012】
また、レバー(アーマチュア)を保持するレバーホルダとヘッド構成部材を締結保持する固定バネとの間に金属性の補強板を設けているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】実開平2−133345号公報(1頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述した従来の技術においては、アーマチュアの回転支点を押圧するプレッシャスプリングの形状が制限されるため、アーマチュアの回転支点の浮きを完全に防止する十分な押圧力を得ることが難しいという問題がある。
【0015】
上述のようにプレッシャスプリングの形状が制限されるのは、プレッシャスプリングの花弁状の板バネ部をそれぞれ片持ち梁としていることにより、幅を増やすことでの押圧力を強化することは、印字ヘッドの実装上、困難であり、また板厚を増やすことで押圧力を強化しようとすると塑性域に入ってしまいイレギュラー的な荷重が負荷された場合、変形が元に戻らず適切な押圧力を与えることができず、運動特性の低下やワイヤ間のバラつきを発生させてしまうためである。
【0016】
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、アーマチュアの回転支点の浮きを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
そのため、本発明は、端部に印字ワイヤが取り付けられ、回動自在に設けられたアーマチュアを有する印字ヘッドにおいて、前記アーマチュアの回転支点と接触するヨークと、前記ヨークとの間で前記アーマチュアを挟んで、前記アーマチュアの回転支点を前記ヨークに押圧する片持ち梁構造の弾性部材と、前記弾性部材の一端部を固定するとともに前記弾性部材との間に空隙を形成しつつ前記弾性部材を覆う筐体と、前記筐体と前記弾性部材との間に、前記筐体および前記弾性部材に接触する押圧部材とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
このようにした本発明は、アーマチュアの回転支点の浮きを防止することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施例における印字ヘッドの構成を示す概略断面図
【図2】第1の実施例における印字ヘッドの構成を示す分解斜視図
【図3】第1の実施例におけるプレッシャフェルトの構成を示す説明図
【図4】第1の実施例におけるプレッシャフェルトの構成を示す断面図
【図5】第1の実施例におけるアーマチュア支点変位と押圧力の関係を示すグラフ
【図6】第1の実施例におけるアーマチュア支点浮きを示す波形
【図7】第2の実施例におけるアーマチュア支点部の構成を示す断面図
【図8】第3の実施例における筐体の構成を示す説明図
【図9】第3の実施例におけるプレッシャフェルトの構成を示す断面図
【図10】従来例における印字ヘッドの構成を示す概略断面図
【図11】従来例における印字ヘッドの構成を示す要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明による印字ヘッドおよび印刷装置の実施例を説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は第1の実施例における印字ヘッドの構成を示す概略断面図、図2(a)および図2(b)は第1の実施例における印字ヘッドの構成を示す分解斜視図である。
【0022】
図1および図2において、コイルボビン2に任意のターン数でコイル6が巻かれており、その内側に柱状で磁気特性の良いコア1が配置されている。このコア1に接触してコアヨーク3、スペースヨーク25、およびスペースシート26が、またコア1と空隙を挟んで対向するようにアーマチュア4が、さらにアーマチュア4を挟み込みスペースヨーク25と接触するようにアーマチュアヨーク16が配置されており、これらの磁性体部材が磁路21を構成している。
【0023】
アーマチュア4は、コンプレッションスプリング等で構成され、一端が固定されたリセットスプリング8によりリミッタ部7に押圧されており、先端部に印字ワイヤとしてのワイヤ5が溶着されている。図2に示すようにリミッタ部7(ラバーリミッタ7a、シートリミッタ7b)と筐体17との間には1枚、もしくは複数枚のスペーサ30が実装されており、これによりリミッタ部7のアーマチュア4との接触面の位置を上下させ、アーマチュア4のワイヤストロークを調整している。
【0024】
各印字素子としてのワイヤ5は、ガイドノーズ20に固定されているワイヤガイド9により、先端がドットマトリクスを構成するように位置決めされており、またガイドノーズ20に固定されている複数の中間ガイド18がワイヤ5の横振動や座屈を抑制している。
【0025】
前述したリセットスプリング8は、ホルダスプリング24に実装されており、アーマチュア4を押圧して待機位置に戻す力を作用させている。また、アーマチュア4は、接触するスペースシート26を介してスペースヨーク25面、およびアーマチュアヨーク16面へプレッシャスプリング15により押圧されており、この接触点が、アーマチュア4が運動する回転支点29となり、アーマチュア4は回動自在に構成されている。
【0026】
プレッシャスプリング15は、片持ち梁構造の弾性部材(例えば、板バネ)であり、その一端部が筐体17の一面に固定され、他端部が自由端となってアーマチュア4に接触するように配置されており、スペースヨーク25およびアーマチュアヨーク16との間でアーマチュア4を挟むように配置されている。また、プレッシャスプリング15は、アーマチュア4の回転支点29に押圧力が作用するように任意の角度に曲げ加工がされた屈曲部が形成されている。
【0027】
筐体17は、ホルダスプリング24との間でプレッシャスプリング15の一端部を挟持して固定し、プレッシャスプリング15との間に空隙を形成しつつ、そのプレッシャスプリング15全体を覆っている。
【0028】
また、アーマチュア4を押圧しているプレッシャスプリング15と筐体17との間には、繊維の目が細かい硬質フェルト等の繊維体で構成された押圧部材としてのプレッシャフェルト40がプレッシャスプリング15および筐体17に接触するように配置され、そのプレッシャフェルト40の弾性により、さらにプレッシャスプリング15をアーマチュア4に押圧するようにしている。
【0029】
電源12からヘッド基板22にあるコネクタ23を通してコイル6に通電されると磁路21に磁束が発生し、その磁路21の一部であるコア1とアーマチュア4との空隙の磁束がアーマチュア4をコア1側に引き寄せる吸引力(電磁力)として作用する。
【0030】
これにより、アーマチュア4と接合されているワイヤ5は、プラテン14方向へ運動を開始し、プラテン14により背面を支持された用紙11にインクリボン10を介してインパクトし、ドットを生成する。
【0031】
電源12からコイル6への通電を止めると、吸引力が減少していき、インパクトの反力とリセットスプリング8のアーマチュア4への押圧力が、その吸引力の影響に勝ったときに、アーマチュア4は運動方向を反転し、リミッタ部7の位置に復帰する。このリミッタ部7は、制振材料もしくはその複合材により構成されており、リセット時のアーマチュア4の残振動を抑え、連続してドットを生成する場合の応答性に支障がないようにしている。
【0032】
この一連の動作タイミングを中央演算処理装置等の制御部13が図示しないメモリ等の記憶部に記憶された制御プログラム(ソフトウェア)に基づいて制御することで、用紙11へのドットの集合体である文字を形成することができるようになっている。なお、クランプスプリング19は、これらの部品をユニット化するための部材である。
【0033】
ここで、プレッシャフェルト40を図3の第1の実施例におけるプレッシャフェルトの構成を示す説明図、図4の第1の実施例におけるプレッシャフェルトの構成を示す断面図に基づいて説明する。
【0034】
図3において、プレッシャフェルト40は、材質を繊維の目が細かい硬質フェルトとし、中央部40aから花弁形状に延びたそれぞれの外周先端部40b(例えば、24箇所)が筐体17のリブ17a間に挿入されるようになっている。なお、図3(a)は筐体にプレッシャフェルトを実装した状態の正面図、図3(b)は筐体にプレッシャフェルトを実装した状態の斜視図、図3(c)はプレッシャフェルトの斜視図である。
【0035】
図4において、プレッシャフェルト40は、筐体17と、アーマチュア4を押圧しているプレッシャスプリング15との間に、プレッシャスプリング15とオーバラップするように、すなわちプレッシャフェルト40の厚さは、筐体17とプレッシャスプリング15との間の距離よりも大きく、またプレッシャフェルト40の長さは、プレッシャスプリング15の固定端から自由端までの長さと略同じ長さになっており、プレッシャスプリング15の屈曲部を押圧するように実装されている。
【0036】
また、そのプレッシャフェルト40には、フッ素オイル等の湿度特性が良好な潤滑オイルが含浸されている。また、スペースシート26は、ステンレス(金属)やポリイミド(ポリマー)などの耐摩耗特性の良い材料で構成されている。
【0037】
図4(a)はアーマチュアを実装した状態を示し、図4(b)はアーマチュアを実装していない状態を示しており、その図4(b)において、プレッシャフェルト40の板厚は、筐体17の段差高さhに対し、Δだけ大きく、厚さ(h+Δ)となっている。また、プレッシャスプリング15の板厚をt、プレッシャスプリング15を挟み込む筐体17とホルダスプリング24との空隙をdとすると、筐体17の段差高さhと筐体17とホルダスプリング24との空隙dの和が、プレッシャフェルト40の板厚(h+Δ)とプレッシャスプリング15の板厚tの和よりも小さくなっている。
【0038】
すなわち、h+d<(h+Δ)+t、の関係があり、Δ>d−t(ガタ)となる。
【0039】
Δは、プレッシャフェルト40が、筐体17およびプレッシャスプリング15にオーバラップする量となる。
【0040】
このように印字ヘッドは、プレッシャスプリング15と筐体17との間にプレッシャフェルト40が配置されて構成され、インパクトプリンタ等の印刷装置に実装される。
【0041】
上述した構成の作用について説明する。
【0042】
図4(a)に示すように、プレッシャスプリング15はプレッシャフェルト40の弾性力により押圧されるため、十分な力でアーマチュア4を押圧する。したがって、アーマチュア4の回転支点部は、スペースシート26に十分な力で押圧され、その浮き上がりが大幅に抑制される。
【0043】
図5は、第1の実施例におけるアーマチュア支点変位と押圧力の関係を示すグラフであり、従来の方式の場合と、第1の実施例のプレッシャフェルト40を設けた場合のアーマチュア4への押圧力を比較したものである。図5(a)は、横軸を図5(b)に示すアーマチュアの支点の変位量Xとし、縦軸を図5(b)に示すアーマチュアの支点の押圧力Fとしている。
【0044】
このように図5(a)は、プレッシャフェルト40を設けた場合のアーマチュア4をスペースシート26に押圧する力が、プレッシャフェルト40を設けない場合の押圧力と比較して大きくなっていることを示している。
【0045】
また、図6は第1の実施例におけるアーマチュア支点浮きを示す波形をワイヤ5の飛行波形およびコイル1への駆動電流の波形とともに示したものであり、図6(a)は従来例、図6(b)は本実施例を示している。なお、図6(a)および図6(b)の縦軸で示すワイヤ5飛行の正方向およびアーマチュア4の支点浮き正方向を図6(c)に示している。
【0046】
図6に示すように本実施例では、アーマチュア4の支点部の浮き上がりを大幅に抑制することができる。従来例では、アーマチュア4の支点部の浮き上がりは印字ヘッド動作時のワイヤ5のインパクトサイクルと相俟って微小振動となるが、本実施例ではその微小振動が抑制される。
【0047】
また、図4(a)に示すように、プレッシャフェルト40に含浸された潤滑オイルは、図中矢印Aが示す方向、すなわちプレッシャスプリング15、アーマチュア4、スペースヨーク25、アーマチュアヨーク16へと表面を伝わっていく。プレッシャフェルト40の中心部は十分な体積を有しているため、十分な潤滑オイルを含浸させることができる。
【0048】
以上説明したように、第1の実施例では、プレッシャフェルトの外周先端部が図5に示すように従来例と比較して大きな押圧力でアーマチュアの回転支点を拘束するようにしたことにより、アーマチュアの回転支点部の浮きを防止することができ、その回転支点部に発生する微小振動を抑制することができるという効果が得られる。
【0049】
また、アーマチュアの回転支点部に発生する微小振動に起因するアーマチュアの回転支点部およびそれと接触するスペースシート、アーマチュアヨークの摺動部のフレッジング磨耗を低減させることができるという効果が得られる。
【0050】
さらに、プレッシャフェルトの中心部に十分な体積を持たせているため、十分な潤滑オイルを含浸させることができ、その潤滑オイルが外周先端部を通り、アーマチュアと、プレッシャスプリング、スペースシート、およびアーマチュアヨークとの摺動面に供給され、境界(液体)潤滑となるため、これによる耐磨耗効果が得られる。
【0051】
またさらに、プレッシャフェルトは目の細かいフェルトで構成され、その中央部に体積を持たせるようにしているため、潤滑オイルの保持性能が良好であり、経時的に安定して潤滑オイルを供給することができる。その結果、長期間にわたり前記摺動部の磨耗を低減させることができ、ワイヤの印字力や速度等の運動性能を長期間にわたり安定させ、超寿命化させることができるという効果が得られる。
【0052】
また、プレッシャフェルトは、その外周部先端部でプレッシャスプリングを介し、アーマチュアを押圧するほか、その中心部でもオーバラップ量Δでプレッシャスプリングを押圧するため、プレッシャスプリングとそれが入り込む筐体とホルダスプリングが成す空隙とのガタを吸収することができ、拘束不良に伴うプレッシャスプリングのピン(ワイヤ)間の押圧力のバラつきや振動(騒音)を抑制することができるという効果が得られる。
【実施例2】
【0053】
第2の実施例の構成を図7の第2の実施例におけるアーマチュア支点部の構成を示す断面図に基づいて説明する。
【0054】
第2の実施例の構成は、図7(b)に示す第1の実施例の構成からスペースシート26を削除し、図7(a)に示すようにアーマチュア4の回転支点が直接スペースヨーク25に接触するように構成している。それに伴い、スペースヨーク25およびアーマチュアヨーク16に硬質で摩擦係数の低い無電解ニッケルボロンメッキ処理を行う。
【0055】
アーマチュア4は、一般的に無電解ニッケルメッキ処理等で良いが、アーマチュア4にも無電解ニッケルボロンメッキ処理を行うようにしても良い。
【0056】
なお、上述した第1の実施例と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0057】
上述した構成の作用について説明する。
【0058】
従来例および第1の実施例では、図7(b)に示すようにスペースシート26は、50μm程度の金属箔や樹脂シートにより構成されるが、その薄さにより反りが発生し易い。この反りがある場合、スペースシート26は、アーマチュア4の支点部を弾ませる(浮かせる)弾性体となり、微小振動を発生させる。
【0059】
第2の実施例では、図7(a)に示すようにスペースシート26を削除し、アーマチュア4の支点部が直接スペースヨーク25に接触するようにしているため、上記微小振動を発生させる要因を取り去ることができ、アーマチュア4の支点部に発生する微小振動を抑制することができる。
【0060】
また、スペースシート26の替わりに施行したスペースヨーク25およびアーマチュアヨーク16への無電解ニッケルボロンメッキ処理により、スペースヨーク25およびアーマチュアヨーク16の表面が硬化され、アーマチュア4との摺動面の摩擦力が低減される。
【0061】
以上説明したように、第2の実施例では、第1の実施例の効果に加え、第1の実施例で採用していたスペースシートの加工不良等による反りに起因して発生し得る微小振動をなくし、この微小振動に起因するフレッジング磨耗を防止することができるという効果が得られる。
【0062】
また、無電解ニッケルボロンメッキ処理により、アーマチュアとスペースヨークおよびアーマチュアヨークとの摺動面の摩擦力が小さくなるため、ワイヤの印字力や速度等の運動特性を向上させることができるという効果が得られる。
【0063】
さらに、無電解ニッケルボロンメッキの持つ摩擦係数低下の効果および硬化の効果により、アーマチュア、スペースヨークおよびアーマチュアヨークの磨耗量を低減させることができ、耐食性により塩害等の腐食の影響(腐食磨耗)を受けづらく、第1の実施例よりも印字ヘッドの動作を安定させ、また長寿命化させることができるという効果が得られる。
【0064】
またさらに、スペースヨーク、アーマチュアヨーク、およびアマーチュアとワイヤとの溶着部品は、他の部材と接着等でユニット化されておらず、それらの部品は磨耗の影響が出てきた場合、部品毎に保守交換ができるという効果が得られる。
【実施例3】
【0065】
第3の実施例の構成を図8の第3の実施例における筐体の構成を示す説明図に基づいて説明する。なお、図8(a)は第3の実施例における筐体の平面図、図8(b)は第3の実施例における筐体の斜視図、図8(c)は従来例における筐体の平面図、図8(d)は従来例における筐体の斜視図である。
【0066】
第3の実施例の構成は、図8(a)、図8(b)に示すように、第1の実施例または第2の実施例の構成における筐体17のプレッシャフェルト40との接触面に凹形状の閉空間としてのオイル溜り部(オイル貯留部)50を形成している。図8(a)、図8(b)では、各アーマチュアに対応するように複数のオイル溜り部50を形成しているが、それらを繋げて1つの閉空間としても良い。また、オイル溜り部50にプレッシャフェルト40のような材質からなるオイル吸収体を入れるようにしても良い。
【0067】
なお、上述した第1の実施例および第2の実施例と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0068】
上述した構成の作用について説明する。
【0069】
図9は第3の実施例におけるプレッシャフェルトの構成を示す断面図である。
【0070】
筐体17のプレッシャフェルト40との接触部に凹型の閉空間としてのオイル溜り部50を形成したことにより、そのオイル溜り部50を利用してプレッシャフェルト40に吸収された容量以上に潤滑オイルを貯蔵することができる。
【0071】
図9に示すように、オイル溜り部50に貯蔵された潤滑オイルは、図中矢印Bが示す方向、すなわちプレッシャフェルト40、プレッシャスプリング15、アーマチュア4、スペースヨーク25、アーマチュアヨーク16へと表面を伝わっていく。
【0072】
以上説明したように、第3の実施例では、第1の実施例および第2の実施例の効果に加え、オイル溜り部を形成したことにより、そのオイル溜り部を利用してプレッシャフェルトに吸収された容量以上に潤滑オイルを貯蔵し、潤滑オイルの総容量を増加させることができるため、アーマチュアと各部品の摺動部への潤滑オイルの供給時間を延ばすことができ、さらに印字ヘッドを長寿命化することができるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0073】
4 アーマチュア
5 ワイヤ
15 プレッシャスプリング
16 アーマチュアヨーク
17 筐体
25 スペースヨーク
30 スペーサ
40 プレッシャフェルト
50 オイル溜り部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に印字ワイヤが取り付けられ、回動自在に設けられたアーマチュアを有する印字ヘッドにおいて、
前記アーマチュアの回転支点と接触するヨークと、
前記ヨークとの間で前記アーマチュアを挟んで、前記アーマチュアの回転支点を前記ヨークに押圧する片持ち梁構造の弾性部材と、
前記弾性部材の一端部を固定するとともに前記弾性部材との間に空隙を形成しつつ前記弾性部材を覆う筐体と、
前記筐体と前記弾性部材との間に、前記筐体および前記弾性部材に接触する押圧部材とを備えたことを特徴とする印字ヘッド。
【請求項2】
請求項1の印字ヘッドにおいて、
前記押圧部材に、潤滑油を含浸させたことを特徴とする印字ヘッド。
【請求項3】
請求項2の印字ヘッドにおいて、
前記筐体は、前記弾性部材と接触する面に凹形状のオイル貯留部が形成されている
ことを特徴とする印字ヘッド。
【請求項4】
請求項1、請求項2または請求項3の印字ヘッドにおいて、
前記ヨークは、表面に無電解ニッケルボロンメッキ処理が施され、その表面に前記アーマチュアの回転支点が接触することを特徴とする印字ヘッド。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項の印字ヘッドを備えた印刷装置。
【請求項1】
端部に印字ワイヤが取り付けられ、回動自在に設けられたアーマチュアを有する印字ヘッドにおいて、
前記アーマチュアの回転支点と接触するヨークと、
前記ヨークとの間で前記アーマチュアを挟んで、前記アーマチュアの回転支点を前記ヨークに押圧する片持ち梁構造の弾性部材と、
前記弾性部材の一端部を固定するとともに前記弾性部材との間に空隙を形成しつつ前記弾性部材を覆う筐体と、
前記筐体と前記弾性部材との間に、前記筐体および前記弾性部材に接触する押圧部材とを備えたことを特徴とする印字ヘッド。
【請求項2】
請求項1の印字ヘッドにおいて、
前記押圧部材に、潤滑油を含浸させたことを特徴とする印字ヘッド。
【請求項3】
請求項2の印字ヘッドにおいて、
前記筐体は、前記弾性部材と接触する面に凹形状のオイル貯留部が形成されている
ことを特徴とする印字ヘッド。
【請求項4】
請求項1、請求項2または請求項3の印字ヘッドにおいて、
前記ヨークは、表面に無電解ニッケルボロンメッキ処理が施され、その表面に前記アーマチュアの回転支点が接触することを特徴とする印字ヘッド。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項の印字ヘッドを備えた印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−56776(P2011−56776A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208700(P2009−208700)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【出願人】(594202361)株式会社沖データシステムズ (259)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【出願人】(594202361)株式会社沖データシステムズ (259)
【Fターム(参考)】
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