説明

印字ヘッドの制御方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は主に発熱要素を用いた印字ヘッドの制御装置およびコントロールICと印字ヘッドの制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、発熱要素を有する印字ヘッドの一種のサーマルヘッドを制御する制御装置あるいはコントロールICとしては、シフトレジスタとこのデータをラッチするラッチ回路を組み合わせたものが主流であった。これらの代表例として特開昭56−137978(対応米国特許USP4、364、063)、特開昭57−208281等がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】これら従来例の中で、前者は、ラッチ回路が一段のもので過去のデータの駆動履歴を参照する為に、印刷周期毎に履歴用データと本来の駆動データを全部入れ替える必要があった。このために動作速度に制約があったり、制御が複雑になるなどの欠点があった。また、これらを解消するため、後者のようにラッチ回路を2段保有し、これにシフトレジスタを接続し、上記ラッチ回路の一方を過去の、他方を現在の駆動データの格納に用いて駆動する方式も提案されているが、これでは、ラッチ回路が余分に必要なためコストアップになってしまうデメリットを有していた。
【0004】ここで、従来例に基づいて印字タイミングを検証してみる。
【0005】例えば、POSシステムに用いられる、ジャーナル又はレシート用のサーマルプリンタでは、印字幅が約4〜6cmで、発熱要素は512ドットのヘッドが用いられる。この総ドット512個に対応する512ビットのシフトレジスタに、例えば4MHzでデータを転送すると、0.25×512=128μsecとなる。すなわち、データの転送だけで128μsec必要となり、もしこれに履歴制御を組み合わせるとすると、従来のラッチ回路を一段用いたもの(特願昭55−41542)では、履歴用にデータを入れ換えるため2回分のデータ転送時間が必要でトータル256μsecがデータ転送に使われ、更に、通電時間としての時間を必要とするため通電周期は更にさらに大きくなり高速性を阻害することとなる。
【0006】この様な状態で、印字幅がファクシミリマシン等のように広がると、このデータ転送時間は無視できない値となる。
【0007】本発明の目的は、これら従来の欠点を除去し、簡略な回路で、コストアップすることなく過去の駆動履歴を比較、参照可能とし且つ制御が容易で印字品質の良い発熱要素を用いた印字ヘッドの駆動装置及びコントロールICと制御方法を提供することにある。
【0008】本発明の他の目的は、従来から一般的な発熱要素を用いたサーマルヘッドに適用可能であるばかりでなく高速性を要求されるバブルジェットタイプのインクジェットプリンタにも対応可能な印字ヘッドの制御装置、コントロールICと制御方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、発熱要素数N個に対応するNビットの個別レジスタを有し互いに独立してデータ入力可能な少なくとも2個のシフトレジスタユニットと、該シフトレジスタユニットに対し選択的に印刷すべき駆動データを入力するデータ入力手段と、それぞれのシフトレジスタユニットに入力された駆動データを前記発熱要素に出力するか否かを選択する第1、第2のゲート手段と、該第1、第2のゲート回路の出力時間を設定する第1の通電時間設定手段と、前記少なくとも2個のシフトレジスタユニットの前記Nビットのデータを同一発熱要素に対応するビット毎に比較する第3のゲート手段と、該第3のゲート手段の結果に対応してこの結果を前記発熱要素に出力するか否かを選択する第4、第5のゲート手段と、該第4、第5のゲート手段の出力時間を設定する第2の通電時間設定手段と、前記少なくとも2個のシフトレジスタユニットのどちらの駆動データを出力するかを選択する駆動出力選択手段とを有し、前記シフトレジスタユニットの一方を現在の駆動データとして出力するときは他方を過去の駆動データの参照用として活用し、次回は現在の駆動データが格納されている方を過去の駆動データの参照用として用い、過去の駆動データが格納されていた方へ新しいデータを入力することにより順次シフトレジスタユニットを切り換え、且つ過去の駆動履歴に基づいて前記発熱要素の駆動データを設定しながら前記発熱要素を制御することを特徴とする印字ヘッドの駆動装置である。
【0010】又、本発明は印字ヘッドの発熱要素のそれぞれの過去の駆動履歴に基づいて制御するごとき印字ヘッドの制御方法に於いて、少なくとも2個のシフトレジスタユニットを配置し、該シフトレジスタユニットに通電タイミング毎に交互にデータを入力する手段と、保持されている他方のデータを過去のデータとして参照する手段とを有し、通電タイミング毎に駆動データとして出力するシフトレジスタユニットを順次切り換えて現在の駆動データを格納してある方を前記発熱要素に出力した後は、次回は過去の駆動履歴の参照用として用い、過去の駆動履歴の参照用として用いた側に次回のデータを入力することにより、順次前記シフトレジスタユニットを切り換えて発熱要素を制御することを特徴とする印字ヘッドの制御方法である。
【0011】更に本発明は前記N個の発熱要素をそれぞれON/OFF制御するドライブ素子と、前記N個に対応するNビットのシフトレジスタユニットを少なくとも2個設置し、印刷すべき駆動データを順次入力するため前記シフトレジスタユニットのそれぞれに設置されたシリアルデータ入力端子と、それぞれのシフトレジスタユニットに入力された駆動データを前記発熱要素に出力するか否かを選択しその通電時間も決定する第1、第2のゲート手段と、前記少なくとも2個のシフトレジスタユニットの前記Nビットのデータを同一発熱要素に対応するビット毎に比較する第3のゲート手段と、前記シフトレジスタユニットの一方を駆動データの記憶回路とする時、他方を過去のデータの記憶回路として用いて前記第3のゲート回路の結果に対応してこの結果を前記発熱要素に出力するか否かを選択しその通電時間も決定する第4、第5のゲート手段とを有し、前記シフトレジスタユニットの一方を現在の駆動データとして出力するときは他方は過去の駆動データとして活用し、互いに駆動データを順次切り換え、且つ過去のデータを比較、参照し前記発熱要素の印加エネルギを過去の駆動履歴に応じて可変可能に構成したことを特徴とする印字ヘッドのコントロールICである。
【0012】
【作用】本発明では、発熱要素の数に対応する単位レジスタを有するシフトレジスタユニットを複数個備え、これらのシフトレジスタユニットを切り換えて通電タイミング毎に駆動データを入力する手段と、入力された駆動データを保持したシフトレジスタユニットの出力と、前回駆動されたデータを保持しているシフトレジスタユニットの出力を比較する手段と、入力されたデータを前記発熱要素に出力させる手段と、比較された結果に基づいてこれを発熱要素の駆動データとして出力する手段とを有し、過去の駆動データに対応して発熱要素の印加エネルギを変化させながらその時の発熱要素に最適な駆動条件を選択可能に構成した印字ヘッドの駆動装置、あるいはその一部又は全部をワンチップ化したコントロールICを構成する。
【0013】又、本発明の印字ヘッド駆動方法は上記構成の印字制御装置に於いて、一方のシフトレジスタユニットのデータを駆動データとして出力するとき、他方を過去の駆動履歴の比較参照として用い、この時印字タイミングに同期して、最も古い過去の駆動データを参照した結果に基づく通電の後、順次現在の駆動データの出力へと移行し、最も古い過去のデータが比較された後、このシフトレジスタユニットに次回のデータを転送することを特徴とする。
【0014】このような構成、あるいは手順により、必要な時点に現在の駆動データと過去の駆動データが同時に保持、格納されている。順次データを切り換えて入力する手段を付加することにより、どちらが過去か現在かといったことをヘッド制御用のプロセッサは判断する必要がなく、これらのデータの比較、参照をする演算をゲート回路に実行させる構成により、印字ヘッドを制御するプロセッサは通電タイミング毎にシリアル入力端子にデータを入力し、所定の通電時間をセットしてやるだけでよい。
【0015】本発明は、発熱要素を用いた印字ヘッドの制御に有効であり、従来からあるサーマルプリンタのみならず、発熱要素を用いてインク液滴を噴射するバブルジェットタイプの印字ヘッドにも有効な手段である。
【0016】
【実施例】本発明について以下に詳述する。
【0017】図1は本発明による発熱要素を有する印字ヘッドの制御装置の一実施例の略図である。60は発熱要素を駆動制御する駆動制御部であり、11は複数Nビットのシフトレジスタユニット(シフトレジスタAと呼ぶ)であり、12も同様にNビットのシフトレジスタユニット(シフトレジスタBと呼ぶ)であり、駆動データの記憶回路として用いられる。任意の個別レジスタ11a、12aはそれぞれ、発熱要素50を駆動する駆動データが格納される。この駆動データは一例として、ONデータは論理レベル1、すなわちHレベルで格納される。
【0018】40は、発熱要素のデータ入出力、通電時間、通電タイミングを制御するデータ入出力タイミング制御部であり上記駆動制御部60に接続されている。
【0019】シフトレジスタA、Bは、それぞれシリアルデータ入力端子61、63とクロック入力端子62、64を有しデータ共通入力端子26とクロック共通入力端子24を用いてシリアルにデータが入力可能に構成されている。通常印字スタート直前か電源立ち上げ時に、リセット端子27を用いて、入力端子65を経てデータはリセットされている。
【0020】25は共通にデータ入力端子が接続されたシフトレジスタユニットのどちらの端子にデータを転送するかを選択するデータ入力選択端子であり、データ入力選択回路を構成するAND回路35、36によってクロック信号入力端子24の入力先が選択され、Hレベルならクロック入力端子64がアクティブとなりシフトレジスタBに、Lレベルならクロック入力端子62がアクティブとなりシフトレジスタAにデータが入力されるように構成されている。駆動データは、通電周期毎に交互にシフトレジスタユニットに入力される。次にどちらかを初回のデータを入力するシフトレジスタユニットとして入力端子25を用いて選択し、駆動データが入力される。
【0021】上記クロック入力端子24の入力信号はCLK、データ入力選択端子25の入力信号はCK−A/B、共通データ入力端子26の入力信号はSRDとする。
【0022】70はシフトレジスタA、Bの対応するビット毎に接続され、発熱要素50の数に対応して設置されたゲート回路群であり、AND回路17はシフトレジスタAを駆動データの格納部とする時の現在の駆動データを出力するための第1のゲート回路であり、AND回路16はシフトレジスタBを駆動データの格納部とする時の現在の駆動データを出力する為の第2のゲート回路であり、双方とも入力端子21から入力される第1のストローブ信号である通電信号ST1のパルス幅の時間が発熱要素に出力可能に構成されている。この入力端子21はシフトレジスタA、Bに共通に設置され、この入力端子のパルス幅の時間だけ、駆動データがオンデータの時に発熱要素に通電が実行される。
【0023】23はどちらのシフトレジスタユニットを今回の駆動データとして出力するかを選択する駆動データ出力選択手段のイネーブル選択端子でありゲート回路31、33によって、この入力がHレベルならシフトレジスタAを現在の駆動データの格納部としてLレベルならシフトレジスタBを現在の駆動データの格納部として設定する。ゲート回路31、33と第1のストローブ入力端子21を構成要素として第1の通電時間設定回路を構成している。
【0024】13はシフトレジスタAとシフトレジスタBの同一発熱要素を駆動するシフトレジスタユニットの出力をビット毎に比較し論理積を出力する第3のゲート回路のNAND回路であり、15はこの出力とシフトレジスタAを駆動データとするときに履歴データとしてシフトレジスタBを参照し、もし連続した通電データでないときには入力端子22からの第2のストローブ信号である通電信号ST2の時間だけ通電時間を増すための第4のゲート回路であり、連続しているときには逆にNAND回路13がLレベル出力となるため通電出力がでないので通電時間が削減されることになる。ゲート回路32、34と第2のストローブ入力端子22を構成要素として第2の通電時間設定回路を構成している。AND回路14はAND回路15と同様にシフトレジスタAを過去の駆動データとするときに連続かどうかを参照し、選択的に通電出力をする第5のゲート回路である。
【0025】18はAND回路14、15、16、17の出力信号を混合してヘッドドライブ素子であるヘッドドライブトランジスタ19に伝達するゲートである。これらのゲート回路からなるゲート回路群70が同様にNビット分が接続されていて、これにより通電時間を最適化し、それぞれの発熱エネルギが好ましいレベルに制御される。
【0026】71、72はシリアルデータ出力端子であり、Nビット毎に発熱要素の数に対応して増設するための出力である。
【0027】次に、本発明のサーマルヘッドの駆動方法を図2を用いて詳述する。図2は本発明のサーマルヘッドの駆動方法を示すタイミング図である。
【0028】101はサーマルヘッドの通電周期を示す通電タイミング信号であり、t1、t2、t3のタイミングで順次ヘッドへの通電が実行される。102はどちらのシフトレジスタユニットのシフトレジスタを駆動データとして用いるか選択するものでイネーブル選択信号(以下EN−A/B信号と呼ぶ)であり、103はどちらのシフトレジスタユニットにクロック信号(以下CLK信号と呼ぶ)104を与え、その結果としてデータを入力するか切り換えるデータ入力選択信号(以下CK−A/B信号と呼ぶ)である。105はシリアルデータ入力信号(以下SRD信号と呼ぶ)、106は第2のストローブ信号(以下ST2信号と呼ぶ)、107は第1のストローブ信号(以下ST1信号と呼ぶ)をそれぞれ示している。
【0029】電源投入直後、すなわちt1以前には、シフトレジスタユニットのデータは全てリセットされている。よってどちらのシフトレジスタユニットを初回のタイミングに選択しても良い。先ず始めCK−A/B信号がLレベルのためシフトレジスタユニットAにデータが入力される。データ入力が終了し通電周期T1になると先ずST2信号がHレベルとなり通電許可信号を受け取る。この時、EN−A/B信号がHレベルとなっているため、シフトレジスタAを現在のデータとしてシフトレジスタBのデータを参照してサーマルヘッドの制御が実行される。この時、通電データが連続駆動データでない場合ST2信号のパルス幅TW0が通電時間として出力されると、当然初回はシフトレジスタBは全てオフデータであるのでシフトレジスタAの任意のビットがオンデータならTW0区間の通電が発熱要素に与えられることになる。この後、ST1信号がHレベルとなるとシフトレジスタAの駆動データがそのパルス幅TW1分だけ発熱要素に付与される。
【0030】上記ST1信号がオン信号の時は、シフトレジスタユニットのシフトレジスタAのみしか使用されていない。つまり、この時シフトレジスタBのデータを変えても何等通電結果に問題がないことがわかる。このためST1信号がHレベルに変わり、すなわち現在の駆動データ出力をするイネーブル信号を示したときに、シフトレジスタBへの次のデータの入力を開始する。データ入力を終了すると今度はEN−A/B信号がLレベルとなりAND回路17、16が作動し、シフトレジスタBを現在の駆動データとして、シフトレジスタAのデータはそのまま残っているので過去のデータとして参照され、通電時間が決定されて発熱要素がその駆動履歴に最適な制御が実行され、同様にt2、t3のタイミングで通電制御が実行される。
【0031】このように、従来ラッチ回路を2段用いて過去のデータを記憶していたが、本発明のサーマルヘッドの駆動装置では、シフトレジスタユニットとデータ切り換え回路を利用することにより、ラッチ回路を増加することなく有効に過去、及び現在のデータを記憶させることができる。
【0032】ST2の信号はインバータ37を介して、AND回路35、36に入力され、NAND回路14が作動し過去のデータを参照し、通電時間データを発熱要素に送出している時は、データ入力が禁止されるように構成されている。
【0033】通常このようなコントロールはプロセッサに接続されて制御されるが、通電時間設定用のデータストローブ端子22のST2信号をこのプロセッサを用いて監視することによりデータを誤って入れ替えてしまうという事故は発生しない。又本実施例では過去一回分データを参照して、通電時間を決定する例で説明したが、シフトレジスタユニットを3シフトレジスタとすることにより過去2回分のデータを参照する履歴制御をさせることが可能である。この時データ入力をするシフトレジスタユニットのシフトレジスタを順次切り換える構成とすれば良いことは言うまでもない。また、一般に本来の駆動データを出力する通電時間と、履歴を参照する通電時間では大きな差があり、ラインヘッドのようにデータビット数が多くても駆動データを出力する時間に他方のシフトレジスタユニットにデータを入力する時間は充分とれる。
【0034】図1の60は本発明による発熱要素を用いた印字ヘッドの駆動装置の制御ブロックで個別増設可能部分を示し、データ入力あるいはストローブ入力などの共通部分を省略し、他の部分をIC化することによってサーマルヘッドのビット数に応じて増設可能に構成されている。増設部分は共通部分を省略しているためその分だけはローコストで、量産することができる。
【0035】61、63はそれぞれのシフトレジスタユニットのデータ入力端子を、62、64はそれぞれのシフトレジスタユニットのクロック端子を示している。71、72はデータ出力するための出力端子であり、シフトレジスタユニットを発熱要素の数に対応して増設する際に他のシフトレジスタユニットの入力端子61、63に接続する。66、68はシフトレジスタユニットのシフトレジスタのそれぞれを駆動データの記憶回路とするときのシフトレジスタユニットに入力された駆動データを前記発熱要素に出力するか否かを選択しその通電時間も決定する第1、第2の通電イネーブル端子であり、67、69はシフトレジスタユニットの一方を駆動データの記憶回路とする時、他方を過去のデータの記憶回路として用いた時、ゲート回路14の結果に対応して、この結果を前記発熱要素に出力するか否かを選択しその通電時間をも決定する第3、第4の通電イネーブル端子である。
【0036】この制御ブロックをデータ入出力端子を直列に接続し、ゲート回路31から34及びゲート回路35、36等を共通にすることによって効率よくICを制御することができる。 本発明は発熱要素を用いて印字するあらゆるタイプの印字ヘッドに用いることができる。例えば、サーマルヘッドを用いるサーマルプリンタ、サーマルトランスファープリンタ、熱的に気泡を発生しインクを吐出するようなバブルジェト式インクジェット等が上げられる。
【0037】次に、本発明の他の実施例について詳述する。
【0038】一般に、高速タイプのサーマルプリンタでは、過去の履歴を更に遡って参照し、印字品質やヘッド寿命の向上を図っている。図3は、このような高速タイプのサーマルプリンタのサーマルヘッドの駆動に適した一実施例である。
【0039】131、141、151は第1図と同様のNビットのシフトレジスタユニットである。(以下それぞれシフトレジスタC、D、Eと呼ぶ) 132、142、152はシフトレジスタC、D、Eのデータ入力端子を、133、143、153はクロック入力端子を、134、144、154はデータ出力端子をそれぞれ示している。130はシフトレジスタC、D、Eに共通なリセット端子を示している。
【0040】100は、ドライブ可能な発熱要素の数に対応したゲート回路群であり、シフトレジスタユニットの個別レジスタ131a、141a、151aに接続されている。121は同一発熱要素の駆動に対応したシフトレジスタC、D、Eの個別レジスタの出力の全ての論理積、NANDを取るゲート回路であり、122、123、124はシフトレジスタC、D、Eの任意の2つの個別レジスタのNANDを取るゲート回路である。101〜109は、前記それぞれのNANDゲートの出力を対応する駆動データ出力と比較し、あるいはその駆動データを直接に、発熱要素に出力するタイミングあるいは時間を設定する通電設定入力端子である。111〜119は通電設定入力端子を対応するゲート出力とのANDを取るゲート回路を、120はこれらを混合し発熱要素を駆動するヘッドドライバをそれぞれ示している。
【0041】シフトレジスタC、D、Eの個別レジスタの数をNに対応してゲート回路群100、ヘッドドライバ110が配置されるが、図3では紙面の都合上省略されている。通電設定入力端子101〜109は上記Nに対応するゲート回路群に共通に用いられる。
【0042】次に、各要素の働きについて説明する。
【0043】シフトレジスタC、D、Eは、電源立ち上げ直後は、初期化処理によってリセット端子130を用いてクリアされている。初め、シフトレジスタCに駆動データが入力されると、この後、印字タイミングに同期して順次シフトレジスタを切り換えてデータが入力される。例えば、次のタイミングではシフトレジスタCのデータはそのままで、シフトレジスタEにデータが入力され、次のタイミングではシフトレジスタC、E共そのままで、シフトレジスタDにデータが入力されるという具合である。次に一巡した後は、シフトレジスタCに新規データが書き込まれ以前のデータは破棄される。この時、シフトレジスタDには一回前の過去のデータが保存され、シフトレジスタEには二回前の過去のデータが保存されていることになる。
【0044】シフトレジスタCの印字タイミングの時、先ずNAND回路121によって、過去二回分のデータが比較され、全てがONデータの時、通電指定入力103がONデータであっても通電が指定されない。すなわち過去のデータのどちらかがOFFデータなら通電指定入力端子103のパルス幅だけ通電される。次に、一回前の過去のデータが保存されているシフトレジスタDのデータがNANDゲート122で参照され、通電指定入力端子102の入力に同期して、一回前の過去の駆動データがONなら通電がなされず、OFFデータならこのパルス幅分の通電が実行される。更に、通電指定入力端子101の入力に応じてこのパルス幅分の通電が、シフトレジスタCに格納された現在の駆動データに対応して実行される。
【0045】第一の実施例でも説明したように、履歴の参照に預かる通電を、通電タイミングの先頭で実行すれば、それ以降は過去の通電データが書き換えられても現在の通電に支障がないため、過去二回分のデータが参照された後、シフトレジスタEのデータが次の印字タイミングのために書き換えられる。
【0046】ある任意の時点の印字タイミングnでは、(タイミングn−1にてシフトレジスタCヘのデータ入力)→シフトレジスタD、Eのデータ参照、通電制御→シフトレジスタDのデータ参照、通電制御・この間シフトレジスタEのデータ書き換え→シフトレジスタCの駆動データ出力→印字タイミングnの終了→印字タイミングn+1のシフトレジスタEの駆動データ出力へ移行→(同様の制御の繰り返し)となる。
【0047】このように、順次、シフトレジスタユニットを印字タイミングに連れて切り換えることにより、効率的に過去のデータを参照した、いわゆる履歴制御を実行させることができる。
【0048】図3の制御装置は第1の実施例と同様にIC化することができ、これを、発熱要素の数に対応して増設することにより容易にラインタイプのサーマルヘッドに搭載することができることは言うまでもない。
【0049】図4は、図3の制御ブロックを効率よく駆動するための周辺駆動部の回路図である。
【0050】周辺駆動部の出力端子は以下のように、図3R>3の回路と接続される。
【0051】DRG1/T1→101、DRG1/T2→102、DRG1/T3→103DRG2/T1→104、DRG2/T2→105、DRG1/T3→106DRG3/T1→107、DRG3/T2→108、DRG1/T3→109201、202、203はそれぞれの通電時間とタイミングを指定するストローブ入力端子である。204はイネーブル選択端子(ENSELECT信号)であり、2ビットの入力D0、D1よりデコーダ211を介して3ビットの出力信号を得るものであり、この出力信号とストローブ信号をANDゲート回路221〜229混合することにより、図3の通電指定入力端子101〜109に対応した出力信号DRG1/T1、T2、T3〜DRG3/T1、T2、T3が得られる。DRG1/T1は図3の101端子に、/T2は102端子に、/T3は103端子に接続される。
【0052】例えば、シフトレジスタCを駆動データとする時をグループ1とすると、上記入力端子101、102、103が使われ、ENSELECT信号のD0=0、D1=1とすることによってデコーダから1が出力されANDゲート221、222、223への入力のみがイネーブルとなり、DRG1/T1信号がST1の入力パルス幅分出力され、シフトレジスタCの駆動データに応じた駆動出力が得られる。同様に、ST2、ST3信号のパルス幅に応じて、入力端子102、103から通電指定入力が設定され、これに対応して、過去の駆動データに基づいた出力が発熱要素に印加される。
【0053】次に、205はシリアルデータ出力端子(SRDATA信号)であり、図3のデータ入力端子132、142、152に対応して、SD1、SD2、SD3信号に分配されている。206はクロック入力端子であり、207はクロックセレクト端子であり、クロックセレクト端子207の2ビットの入力をデコーダ212によって3ビットのデータに変換し、これらの出力とCLOCK信号をゲート回路231、232、233により混合しクロック出力信号CL1、CL2、CL3を得て、これらをそれぞれシフトレジスタC、D、Eに選択的に入力可能である。又、208はシフトレジスタC、D、Eを同時にリセットするリセット端子である。
【0054】図5は図3の実施例の駆動タイミングを示すタイミングチャートである。ストローブ端子ST1〜ST3の出力手順は印字タイミングt1、t2、t3、t4・・・と変化して行くに連れシフトレジスタC、E、D、Cと駆動データの出力部が切り替わり、その印字タイミングの中では、ST3、ST2、ST1の出力タイミングでそれぞれ、パルス幅TW2、TW3、TW4で出力される。もし前回、前々回の駆動データがOFFデータなら、TW2+TW3+TW4のパルス幅で駆動データが出力され、前回のみが駆動データであった時はTW2+TW4のパルス幅が、前回、前々回ともONデータの時はTW4のパルス幅で駆動データが出力される。
【0055】本実施例によれば、このようにデータをインプットするシフトレジスタユニットを選択するだけで、過去の駆動データに対応した印加パルス幅が容易に選択できる。
【0056】本発明は上記実施例に限定されること無く、同様のコンセプトを用いてシフトレジスタユニットの数を増加し、過去のデータを参照する回数を3回、4回と容易に増加することが可能でありきわめて簡略に高品質で制御が容易な発熱要素を用いたプリンタの制御装置を実現できる。及び、印字ヘッドのコントロールICを実現できる。
【0057】また、図1、図3の制御回路をIC化して、印字ヘッド上に搭載することにより配線を簡略化したり、発熱要素の数に対応して容易に増設することが可能である。
【0058】図6は、上記ICを発熱要素を有するサーマルヘッドに搭載した時の配置を示す略図である。
【0059】B1、B2、B3、B4は図1の駆動制御ブロック60をワンチップ化した個々のICである。例えば、このICが64ビット駆動の出力端子を有するとすると、64ビットの発熱要素毎に配置し、サーマルヘッド300の発熱要素350の総数256ビットをカバーする。これらのICは、シリアルデータ入力端子361、362、データ出力端子363、364により直列に接続されている。370は図1の周辺制御部と同様に、シリアルデータの入力制御、駆動時間、通電タイミングの制御等を実行するデータ入出力タイミング制御ブロック(DTCと略す)である。
【0060】この様に配置することにより図1のICに於いては駆動制御ブロックが一個あたり9本の入力端子を有するのに対して、4個のICを接続してもこの制御部に対して7本の制御端子ですむことになる。この制御線の効率化は図3の実施例のようにシフトレジスタのユニットが増すほどもっと顕著になる。
【0061】このDTC370を制御ブロックと一体にワンチップ化しIC380を構成し、その内部で、マルチプル接続に対応できるように配線を切り離すか、ゲート回路等により便宜接続切り離し可能に構成して置けば、DTC370の機能を使うもののみ選択して使用可能であり、別途ICを作る必要がなく、又配線も簡略になり、信頼性も増す。
【0062】更に、発熱要素がA4サイズの紙幅をカバーするようなラインヘッドタイプのサーマルヘッドの場合、一般に全発熱要素を同時に通電するような制御は、電源の通電容量の負担を考慮して実施していない。この様な場合は全発熱要素を、幅方向の所定の領域に分割して駆動するのが一般的である。この時、上記DTC370を領域毎に配置して制御することにより、同様の制御が可能となる。この制御方式に対応するにも、DTC370を駆動制御部と一緒にワンチップ化して置くことは大きなメリットとなる。
【0063】上記実施例では、サーマルヘッドを用いて説明してきたが、印字要素として発熱要素を用い、その発熱による熱蓄積が問題となるようなものであれば幅広く応用することができる。
【0064】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によればシフトレジスタユニットを複数設置しこれを現在のデータと過去のデータに切り換えて使うことによりデータ記憶回路を効率的に使え、ヘッド制御回路のコストアップを抑制し、且つ印字品質を犠牲にすること無く過去のデータを参照する履歴制御をも達成することができる。
【0065】又、従来のようなラッチ回路を増設しなくてもデータ転送をする余裕を作り、システムの高速化などにも対応する制御方法を実現することが可能である。
【0066】又、同様のコンセプトを用いて過去のデータを参照する回数を3回、4回と容易に増加することが可能でありその制御方法もきわめて簡略である。
【0067】更に、本発明の印字ヘッドの駆動制御装置、及びこの駆動制御部をワンチップ化したコントロールICはラインサーマルヘッド等の発熱要素数が大きなサーマルヘッドにたいして柔軟に対応可能であり且つ、履歴制御する部分の回路を簡略化したため、特に大きな発熱要素数のヘッドほどコストメリットが大きいという利点を有している。更に又、本発明はサーマルヘッドばかりでなく、印字要素として発熱要素を用いたバブルジェットタイプのインクジェットヘッドに於いても、高速駆動時の発熱による熱の蓄積を抑制し、安定したインク吐出性能を引き出すことが可能であり幅広く応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の印字ヘッドの駆動装置の一実施例の略図。
【図2】本発明の印字ヘッドの駆動方法を説明するタイミング図。
【図3】本発明の印字ヘッドの駆動装置、及びコントロールICの他の実施例の略図。
【図4】本発明の印字ヘッドの他の実施例の駆動装置の周辺駆動部の回路図。
【図5】本発明の印字ヘッド駆動装置の図3の実施例の駆動タイミングを示すタイミング図。
【図6】本発明の印字ヘッドのコントロールICをサーマルヘッドに搭載した時の配置を示す略図。
【符号の説明】
11、12・・・・シフトレジスタユニット
11a、12a・・・・シフトレジスタユニットの個別レジスタ
14、15、16、17・・・・ANDゲート
13・・・・ANDゲート
18・・・・ORゲート
19・・・・発熱要素駆動用トランジスタ
31、32、33、34・・・・ANDゲート
35、36・・・・ANDゲート
21・・・・第1のストローブ端子
22・・・・第2のストローブ端子
23・・・・イネーブル選択端子
24・・・・クロック入力端子
25・・・・データ入力選択端子
26・・・・データ共通入力端子
61、63・・・・シリアルデータ入力端子
71、72・・・・データ出力端子
131、141、151・・・シフトレジスタユニット
70、100・・・ゲート回路群
300・・・サーマルヘッド
B1、B2、B3、B4・・・コントロールIC
370・・・データ入出力タイミング制御ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】 印字ヘッドの発熱要素のそれぞれの過去の駆動履歴に基づいて制御するごとき印字ヘッドの制御方法に於いて、それぞれの個別レジスタの数が前記発熱要素の数に対応する少なくとも2個のシフトレジスタを配置し、該シフトレジスタに通電タイミング毎に交互にデータを入力する手段と、保持されている他方のデータを過去のデータとして参照する手段とを有し、通電タイミング毎に前記参照データを出力するステップと一方のシフトレジスタから駆動データを出力するステップと、前記駆動データの出力をスタートした後、過去の駆動履歴の参照用として用いた側に次回のデータを入力するステップにより、シフトレジスタを順次切り換えて現在の駆動データを格納してある方を前記発熱要素に出力した後は、次回は過去の駆動履歴の参照用として用い、過去の駆動履歴の参照用として用いた側に次回のデータを入力することにより、順次前記シフトレジスタを切り換えて発熱要素を制御し、任意の通電タイミングで過去の駆動データを参照し、この参照結果に対応する駆動時間の後、現在の駆動データを出力する駆動時間を設定するとともに、現在の駆動データを出力している間に、過去の駆動データを格納してあるシフトレジスタユニットに次回のデータを転送することを特徴とする印字ヘッドの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【特許番号】特許第3254913号(P3254913)
【登録日】平成13年11月30日(2001.11.30)
【発行日】平成14年2月12日(2002.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−160198
【出願日】平成6年7月12日(1994.7.12)
【公開番号】特開平7−81125
【公開日】平成7年3月28日(1995.3.28)
【審査請求日】平成11年2月8日(1999.2.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【参考文献】
【文献】特開 昭57−208281(JP,A)