説明

印字制御方法および印字装置

【課題】 厚さの異なる記録媒体に対して常時安定した印字動作を行うことができる印字制御方法および印字装置を提供する。
【解決手段】 プラテン51上に搬送される通帳10に印字ヘッド41で印字するときの印字制御方法であって、通帳10の厚さに応じて、印字ヘッド41と通帳10の印字面との間のギャップである印字ギャップを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関で使用されている記帳機や自動預金支払兼用機などでの印字を行うときに用いる印字制御方法および印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行や郵便局などの金融機関では、自動預金支払兼用機(Automated Teller Machine:ATM)や記帳機等に組み込まれた通帳プリンタのような読取印字装置が設置されており、この読取印字装置等では、印字部に設置した印字装置で取引データの記帳(印字動作)が自動的に行われている。
【0003】
この印字装置には、昇降可能なプラテンと、これに対向するプラテン直上に設けた印字ヘッドと、この印字ヘッドを通帳幅(印字)方向に往復移動させる図示外のモータを有する移動手段と、通帳を印字位置へ送り出す搬送ローラとを備えたドットプリンタなどが知られている。このドットプリンタでは、搬送ローラで印字ヘッドとプラテンとの間に通帳や単票などの記録媒体を送り出し、そのプラテン上の記録媒体部分に、インクリボンを介して印字ヘッドのドットピンを押し付けて印字を行っている。
【0004】
ところで、この種の通帳プリンタでは、通帳印字する頁面(印字面)での厚さの違いなどにより、印字ヘッドと通帳の印字面との間のギャップ(印字ギャップ)が異なると、インパクト力も微妙に変化し、印字濃度が一様にならなかったり、印字する通帳の頁によっては、他の頁での印字に比べて著しく大きな音を発生するなどの問題があった。また、印字ヘッドの往復移動動作に印字ヘッドのドットピンの戻り動作が追いつかなくなったり、印字ヘッドのドットピンがインクリボンに引っ掛かるなどの問題を発生し、印字ヘッドのドットピンの折れが発生するといった問題も生じている。
【0005】
そこで、通帳の厚さを検出し、印字ヘッドと通帳の印字面との間のギャップを常時一定間隔に調整する媒体厚検知及びギャップ調整のための機構が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この機構では、プラテンまたは印字ヘッドの上下位置を微調整することで、通帳の厚さの薄厚にかかわらず、印字ヘッドと通帳の印面との間のギャップを常時一定間隔に調整できる。
【特許文献1】特開平11−160060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このようなギャップを一定に調整する構成では、単票のような薄手の記録媒体の場合、インパクト力がプラテン上の印字面に直接的に伝達するので、印字動作もしっかりと安定しており、薄いインク部分の発生などがない。一方、冊子状の厚手の記録媒体の場合は、例えば多数枚綴じられた頁に印字するような場合、紙面自身の屈曲性などのためにインパクト力が減殺され、打ち出し力が低下するため、印字ムラなどを発生しやすい。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、厚さの異なる記録媒体に対して常時良好で安定した印字動作を行うことができる印字制御方法および印字装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の印字制御方法は、プラテン上に搬送される記録媒体に印字ヘッドで印字するときの印字制御方法であって、
前記記録媒体の厚さに応じて、前記印字ヘッドと前記記録媒体の印字面との間のギャップである印字ギャップを調整する構成となっている。
【0009】
この構成により、厚さの異なる記録媒体に対して常時安定した印字動作ができる。
【0010】
また、本発明の印字制御方法は、前記記録媒体の厚さが厚くなると、前記印字ギャップを短縮させる方向に前記印字ヘッドと前記プラテンとの間のギャップである印字ギャップを調整する構成となっている。
【0011】
ドットプリンタなどの印字装置では、厚紙などの厚手の記録媒体に印字する場合は、紙面が有する弾力性のためにインパクト力が減殺され、紙面への打ち出し力が低下する。そこで、厚手の記録媒体に印字する場合は、薄手の記録媒体の場合よりも印字ギャップを短縮化させることで、印字の際のインパクト力を高めて、良好な印字を行うことができる。
【0012】
また、本発明の印字制御方法は、前記記録媒体が、冊子状の厚手の記録媒体である通帳に印字する場合は、複数枚の紙面が有する屈曲性のためにインパクト力が減殺され、紙面への打ち出し力が低下する。そこで冊子状の記録媒体に印字する場合は、薄手の記録媒体の場合よりも印字ギャップを短縮化させることで、印字の際の紙面からの反動を抑えてインパクト力を高め、良好な印字動作を行うことができる。
【0013】
本発明の印字装置は、プラテン上に搬送される記録媒体に印字ヘッドで印字するときの印字装置において、
前記プラテン又は印字ヘッドを昇降させる手段と、
前記記録媒体の厚さを検出する手段と、
前記記録媒体の厚さに応じて前記印字ヘッド又は前記プラテンを昇降させて、前記印字ヘッドと前記記録媒体の印字面との間のギャップである印字ギャップを調整する制御部と
を備える構成となっている。
【0014】
この構成により、厚さの異なる記録媒体に対して常時安定した印字動作ができる。
【0015】
また、本発明の印字装置は、前記制御部が、前記記録媒体の厚さが厚くなると、前記印字ギャップを短縮させる方向に前記印字ヘッドと前記プラテンとの間のギャップである印字ギャップを調整する構成となっている。
【0016】
この構成により、厚手の記録媒体に印字する場合は、薄手の記録媒体の場合よりも印字ギャップを短縮化させることで、インパクト力を高めて、良好な印字を行うことができる。
【0017】
また、本発明の印字装置は、前記記録媒体が、冊子状の厚手の記録媒体である通帳に印字する場合は、薄手の記録媒体の場合よりも印字ギャップを短縮化させることで、印字の際の紙面からの反動を抑えてインパクト力を高め、良好な印字動作を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、厚さの異なる記録媒体や冊子状の記録媒体に対して常時安定した印字動作が行える印字制御方法および印字装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係る印字制御方法が適用された印字装置を備える通帳プリンタ1を示すものであり、この通帳プリンタ1は、搬送部2と、媒体厚検知手段3と、印字ヘッド部4と、プラテン部5と、制御部6とを備えている。
なお、図中、符号71は挿入検知部(挿入検知センサ)、72は媒体搬送路、73は磁気ストライプリード/ライト部、74は頁/行読取部(頁/行読取センサ)、75は頁めくり機構、10は記録媒体である冊子状の通帳を示す。
【0020】
搬送部2は、搬送路72上で通帳を所定の方向に搬送するものであり、搬送路上側に設置し図示外のモータで駆動されるフィードローラ21とこれに対設する搬送路72下側に設置した従動ローラ22とを複数箇所に備えている。
【0021】
媒体厚検知手段3は、図3(A)において、通帳10の厚さを検知するために印宇ヘッド部4に隣接して設置しており、上下方向の高さが不動状態にあるフィードローラ31と、媒体搬送路72を隔ててフィードローラ31と対設する位置において上下方向に昇降可能に設けたセンシングローラ32と、このセンシングローラ32をマウントしマスク部33Aを有するローラブラケット33と、ローラブラケット33を支持し通帳10の搬送方向に対し垂直方向に回動する平行リンク34と、平行リンク34を支持するセンシングブラケット35と、センシングローラ32をフィードローラ31に圧接させるトーションバネ36とを備えている。
【0022】
フィードローラ31は、ステッピングモータであるフィードモータ31Aの図示外の出力軸と一体に固定されたシャフト31Bを介し、駆動力が伝達されて回転するようになっている。シャフト31Bには、原点(或いは「ホームポジション(HP)」)を割り出して設定するための切り欠き部31Dを有するスリット板31Cが一体回転可能に設けられている。スリット板31Cの近傍には、発光部と受光部を有し、切り欠き部31Dを検出するフォトセンサ31Eがプリンタ本体に固設されている。
なお、本実施形態では、後述の通帳厚さに応じて行うギャップ調整とともに、フィードローラ31の真円からのずれ(偏心)を補正するための回転偏心調整も行う。このため、ここでは、フィードローラ31の回転中心となるシャフト31Bにおける回転偏心量を予め測定してあり、この回転偏心量がスリット板31Cとフォトセンサ31Eで位置付けられる回転位置に対応して補正値として偏心量記憶部31Fに記憶されている。
【0023】
なお、このフィードローラ31の回転偏心量の測定及び記憶方法について、以下に説明する。
まず、フィードローラ31をスリット板31Cの切り欠き部31Dをフォトセンサ31Eで検出した位置で停止させる。この位置をフィードローラ31の「基準位置」とする。
次に、このフィードローラ31を基準位置の保持したまま、図4に示すプラテン用のモータ52を駆動させ、マスク37Aがプラテン51に付設の後述するフォトセンサ51Aに遮られている「ホ−ムポジション」(初期位置)からプラテン51の上昇を開始させる。そしてフォトセンサ51Aがローラブラケット33のマスク部33Aで遮光させる位置(図3(B)参照)まで、プラテン51が上昇すると、ホームポジションからマスク部33Aを検出するまでのモータ52の回転パルス数を記憶させる。これを「基準パルス数」とする。
【0024】
次に、一定量(偏心量検出分解能を8に(一周を1/8等分に分割)したときには、45°に相当するパルス数)フィードローラ31を回転させてホームポジションからマスク部33Aを検出するまでのモータ52の「回転パルス数」を「基準パルス数」と比較し、差分をポジションとの「偏心量補正値」として記憶させる。この操作を続けて各分割毎に実施し、各ポジションにおける差分を偏心量補正値として記憶させる。そして、センシングローラ32で通帳10の厚さを検出するとき、その記憶されている回転偏心量を補正値として加味し補正する。これにより、フィードローラ31の偏心量に影響されることなく、通帳10の正確な厚さが検出できる。
【0025】
印字ヘッド部4は、印字ヘッド41と、この印字へッド41に対向させて上下動可能に配置した後述するプラテン部5側(通帳10の側)に設けたリポンプロテクタブラケット41Aなどを備えている。
この印字ヘッド41は、図3(A)に示すように、インクリボンを介して印字ヘッドのドットピンを通帳10の印字面に打ちつけて印字を行うインパクトタイプのものであり、同図には示してないが、通帳10の印字面に略平行に、かつ、通帳10の搬送方向に対して略直角の主走査方向(図3(A)では紙面の表裏方向)に移動する図示外のキャリッジに搭載されている。即ち、この印字ヘッド41は、キャリッジと一体に主走査方向に往復移動を行い、制御部6により印字指令を受けた位置で、印字面に印字を行う。
【0026】
プラテン部5は、プラテン51が印字ヘッド4に対して接近、離反する方向に移動されるもので、その移動は移動動手段50によりなされる。この移動手段50は、図4及び図5に詳細な構造を示している。この図4及び図5を用いて説明すると、移動手段50は、フレーム50Aに固定されたモータ52を有し、このモ一タ52の回転軸52Aには周縁部に複数のスリット53Aを一定間隔で設けた円板状のスリット板53と駆動ギア52Bが設けられている。なお、スリット板53と対応した位置には、モータ52の回転量を検知するためのフオトセンサ53Cが設けられている。また、駆動ギア52Bとプラテン5との間には動力伝達機構54が設けられている。
【0027】
この動力伝達機構54は、駆動ギア52Bに噛み合わされたギア541Aとこのギア541Aと一体回転可能に設けられたギア541Bと、ギア541Bに噛み合わされたギア542Aと、このギア542Aと同じ軸542に一体回転可能に設けられたギア542Bと、このギア542Bに噛み合わされたギア543Aと、このギア543Aと同じ長軸543の一端に一体回転可能に設けられたギア543B、及び長軸543の他端に一体回転可能に設けられたギア543Cを有し、これらはフレーム50Aに支持されている。
さらに、動力伝達機構54のギア543B及びギア543Cに対応して、プラテン51の両側にラック544が上下方向に延びるようにして設けられ、この両ラック544がギア543B、543Cと噛み合っている。なお、プラテン51の両側において、このプラテン51とラック544との間には、図示外のガイド部材がそれぞれ設けられている。
【0028】
このプラテン51は、モータ52が回転されると、そのモータ52の回転が動力伝達機構54の各ギアを介してラック544に伝達され、さらにガイド部材によるガイドに従って、かつ、モータ52の回転方向に応じて上下方向に移動され、印字ヘッド4に対して接近、離反するようになっている。また、そのプラテン51には、フォトセンサ51Aが固定して取り付けられ、プラテン51と一体に上下動する状態になっている。このフォトセンサ51Aには、図3(B)に示すように、所定波長の光を出射する発光部511と、この光を入射する受光部512とが対向配置されている。
【0029】
なお、図4では、フォトセンサ51Aは1個のみプラテン4に取り付けられ、プラテン51とともに昇降運動してマスク37Aおよびマスク33Aに重なるようになっているが、例えば、図5に示すように、フォトセンサ51Aから離れたプラテン51上に追加のフォトセンサ51Bを取り付け(都合2個)、フォトセンサ51Aはマスク部33Aと重なるようにし、追加のフオトセンサ51Bはマスク37Aと重なるように配置してもよい。
【0030】
制御部6は、マイクロプロセッサであり、図2に示すように、挿入検知センサ71、頁/行読み取りセンサ74、及びフォトセンサ31E、51A、53Cなどが接続されており、これらセンサからの信号に基づきプリンタ全体を制御するとともに、媒体厚検知手段3の媒体厚さ検出部3A、偏心量記憶部31Fに対する数値データの記憶や呼び出しを制御する。なお、上記以外にも、この制御部6により制御させるため、例えば、頁めくり機構75、フィードローラ用モータ31A、プラテン用モータ52などが接続されている。
【0031】
次に、印字ヘッド41と通帳10との間の印字ギャップLの調整作業について、具体的に説明する。なお、本実施形態では、この調整作業を、(I)フィードローラ31の回転偏心量調整作業と、(II)本発明に係る通帳10の厚さに応じた印字ギャップLの調整作業との2つを行う。
(I)回転偏心量調整作業:
ここでの印字ギャップLの調整動作は、図3(A)において、スリット板31Cのスリット31Dをフォトセンサ31Eで検出した位置でフィードローラ31を停止させ、記録媒体である通帳10が印字位置に達する前に行う(この停止位置をフィードローラ31の「基準位置」とする)。
【0032】
即ち、フィードローラ31がこの基準位置に停止した状態のままで、つまり通帳10が不在の状態において、図3(A)に示すように、プラテン51のセンサ51Aがローラブラケット33のマスク部33Aで遮光されてからプラテン用のモータ52を回転させ、プラテン51と印字ヘッド41とのギャップ(これを基準ギャップLoとする。上記印字ギャップLとは異なる)が最適値になるようにプラテンモータ52の回転パルス数を求めることにより調整できる。ここで、上記印字ギャップLと基準ギャップLoとの間には、
Lo=L+(通帳の厚さ)
という関係が成り立つ。
【0033】
(II)印字ギャップLの調整作業:
次に、通帳10の印字面での厚さ(これを「印字厚」とよぶ)に応じた印字ギャップLの調整作業は、以下のように行う。
即ち、この印字ギャップLの調整方法では、記録媒体である通帳10の印字厚tを検出し、その印字厚tが所定の基準厚さt0値を越えている場合に、図6(A)に示すように、プラテン51を所要距離ΔLだけ上昇移動させて、通帳10の印字上面と印字ヘッド41の下面との間の印字ギャップLを短縮させる。即ち、印字ギャップLを次式で示すギャップ
L=Lo−ΔL−(通帳の厚さ)
に変更させる。
【0034】
一方、通帳10の印字厚tが所定の基準厚さt0値を越えていない場合には、図6(B)に示すように、プラテン51を上方へ移動させずにそのまま予め設定された最適距離Loだけ保持させておく。
【0035】
従って、本実施形態によれば、フィードローラ31とセンシングローラ32との間に通帳10が搬送されてくると、通帳10の厚さ分だけセンシングローラ32が押し下げられ、このとき平行リンク34もトーションバネ36の付勢力に抗して下側に枢軸35A、35Bを支点として回転運動し、センシングローラ32をマウントするローラブラケット33が押し下げられる。
なお、通帳10が印字位置で停止すると、プラテン51は、このプラテン51に付設されているフォトセンサ51Aがホームポジション(HP)においてマスク37Aで遮光されていた位置から、ローラブラケット33のマスク部33Aで遮光される位置まで上昇する。
【0036】
さらに、フィードローラ31の回転偏心量に応じた補正パルス数分と、検知した通帳10の(印字するときの)厚さに応じてあらかじめ設定されたパルス数分とを加算したパルス数だけプラテンモータ52を回転させて、マスク部33Aで遮光された位置からさらにプラテンを上昇移動させることにより、印字ヘッド41と通帳10との印字ギャップLが最適値となり、印字可能な状態になる。
【0037】
次に、図8は、本実施形態に係る制御部6で制御される要部動作の処理手順の一例を示すフローチャートであり、そのフローチャートと共に通帳10の印字動作全体について説明する。
まず、図1において、オペレータにより通帳10が手差し挿入排出ロ11に挿入される(ステップST101)。すると、この挿入された通帳10が挿入検知センサ71により検知され、その検知信号に基づき制御部6の指示によりフィードローラ用のモータ31Aが駆動され、通帳10を印宇部4に向かう方向にフィードローラ21及び31を回転させる(ステッブST102)。これにより、通帳10は磁気ストライプリード/ライト部73ヘ搬送されて、通帳10に設けられている図示しない磁気ストライプのデータが磁気ヘッドにより読み取られ、通帳10の種類や所有者の口座データが認識される。その後、通帳10はさらにフィードローラ21及び31の回転により頁/行読み取りセンサ74の位置に送られる。
【0038】
頁/行読み取りセンサ74まで通帳10が搬送されてくると、開かれている頁にバーコードなどで表示されている頁マークを読み取り、さらにその頁の何行目まで印字されているか読み取る。これにより、制御部6は、現在、通帳10の何頁が開かれているか、また何行目まで印字済みかを確認し、次の印字を何行目から行えばよいかを認識する。その後、通帳10は、印字部4の印字ヘッド41とプラテン51の間に搬送される。また、フィードローラ31とセンシングローラ32との間に通帳10が搬送されてくると、通帳10の厚さ(印字厚)の分だけセンシングローラ32が押し下げられる。このとき平行リンク34もトーションバネ36の付勢力に抗して下側に枢軸35A、35Bを支点として回転運動する。そのため、センシングローラ32をマウントするローラブラケット33が押し下げられ、マスク部33Aが通帳10の印字面での厚さ(印字厚)に応じた位置まで下側に移動する(ステッブST103)。そして、印字を開始すべき行が印字ヘッド41と対向する位置に達すると、モータ31Aが停止する(ステップST104)。そして、フィードローラ31の停止位置が基準位置に対してどのポジションかを検出し、また、そのポジション(停止位置)の偏心量補正値を偏心量記憶部31Fから取り出して補正値として設定するとともに、通帳10の印字面での厚さ(印字厚)に応じた印字ギャップの調整量を設定する(ステップST105)。
【0039】
続いて、制御部6の指示によりプラテン用のモータ52が駆動され(ステップST106)、フォトセンサ51Aがマスク37Aで遮られているホームポジション(初期位置)からプラテン51が上昇を開始する。フォトセンサ51Aがローラブラケット33のマスク部33Aで遮光される位置まで上昇すると、制御部6がこれを検出する(ステップST107)。そして、偏心量記憶部31Fに記憶されている偏心量に応じたパルス数が(シャフト31Bの停止したときのフィードローラ31の回転角度位置に対応させて)取り出され、演算処理によりモータ52のパルス値として加味し補正される。また、通帳10の厚さが所定の基準厚さt0値を越えている場合には、プラテン51を所要距離ΔLだけさらに上昇移動させるためにモータ52のパルス値の加算がなされる(ステップST108)。これらのパルス数に対応する分だけプラテン51が上昇することにより、適正な印字ギャップが確保できることになる。その後、印字ヘッド41とプラテン51との間の印字ギャップLの調整が完了したか否かをチェックし(ステップST110)、ギャップ調整が完了していなければステップST109に戻ってモータ52を再度回転させる。一方、ギャップ調整が完了していれば、モータ52を停止させて(ステップST111)、次の印字動作に移行させる。これにより、通帳10での印字面での印字厚が厚い場合でも、またフィードローラ31の偏心量に影響されることもなく、正確に印字ヘッドギャップ(例えば0.1mm)が確保でき、印字可能な状態になる。その後、印字動作が開始する。
【0040】
従って、以上のように構成されている本発明の実施形態に係る通帳プリンタでは、通帳10の厚さを、フォトセンサにより、マスク(ホームポジション)37Aとマスク部33A間の距離で検出し、次にマスク部33Aを基準としてプラテン51を移動させるようにしているが、特に、通帳の印字面の厚さが所定の基準値よりも厚い場合にはプラテン51の移動距離を所定量だけ増加させ、印字ギャップLを短縮させる微調整を行うようにしている。従って、このプラテン51上に配置されている通帳10と印字ヘッド41間の印字ギャップLを、厚手の印字面での印字の際にも最適なものに設定することができる。
【0041】
なお、本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施し得るものである。即ち、本実施形態に係る印字ギャップLの調整方法では、検出した通帳の厚さが一定値を上回るか否かで薄厚いずれに属するかを判断し、厚いと判断した場合に印字ヘッドの先端部と記録媒体の上面との間の印字ギャップLを一定量だけ短縮させる構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、本発明の印字制御方法では、検出する記録媒体の厚さに応じて、印字ヘッドの先端部と記録媒体の上面との間の印字距離を無段階で調整する構成や、記録媒体の厚さを幾つかの階級に分け、どの階級に属するかでその移動距離が異なるように多段階で調整する構成などとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、記録媒体の印字すべき印字面での厚さに応じて印字ヘッドとプラテンとの間の印字ギャップを調整するように構成しており、厚さの異なる記録媒体に対して常時良好で安定した印字動作を行うことができるようになり、例えば金融機関で使用されている記帳機や自動預金支払兼用機などに設けた、冊子状の通帳に印字を行う通帳プリンタなどとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る印字装置を備えた通帳プリンタを示す概略側面図
【図2】本発明に係る印字制御方法が適用された通帳プリンタの電気的構成を示すブロック図
【図3】(A)は本発明に係る通帳プリンタの印字ヘッド周辺を示す拡大側面図、(B)はフォトセンサ部分の拡大斜視図
【図4】本発明に係る通帳プリンタのプラテンと移動手段の周辺を示す拡大平面図
【図5】本発明に係る通帳プリンタのプラテンと移動手段の周辺を示す拡大斜視図
【図6】(A)は本発明に印字制御方法により厚手の通帳に印字する場合の印字ヘッドとプラテンとの間の基準ギャップを示す説明図、(B)は薄手の通帳に印字する場合の基準ギャップを示す説明図
【図7】(A)は本発明に印字制御方法により厚手の通帳に印字する場合の印字ヘッドと通帳の印字面との間の印字ギャップを示す説明図、(B)は薄手の通帳に印字する場合の印字ギャップを示す説明図
【図8】本発明の印字制御方法を含む印字動作を示すフローチャート
【符号の説明】
【0044】
1 通帳プリンタ
10 通帳(冊子状の記録媒体)
2 搬送部
3 媒体厚検知手段
31 フィードローラ
31A モータ
31E フォトセンサ
32 センシングローラ
33A マスク部
37A マスク(ホームポジション)
4 印字ヘッド部
41 印字ヘッド
5 プラテン部
51 プラテン
51A フォトセンサ
52 モータ
6 制御部
71 挿入検知部(挿入検知センサ)
72 媒体搬送路
L 印字ギャップ
Lo,Lo−ΔL 基準ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラテン上に搬送される記録媒体に印字ヘッドで印字するときの印字制御方法であって、
前記記録媒体の厚さに応じて、前記印字ヘッドと前記記録媒体の印字面との間のギャップである印字ギャップを調整する印字制御方法。
【請求項2】
前記記録媒体の厚さが厚くなると、前記印字ギャップを短縮させる方向に前記印字ヘッドと前記プラテンとの間のギャップである印字ギャップを調整する請求項1に記載の印字制御方法。
【請求項3】
前記記録媒体は、冊子状の記録媒体である請求項1又は2に記載の印字制御方法。
【請求項4】
プラテン上に搬送される記録媒体に印字ヘッドで印字するときの印字装置において、
前記プラテン又は印字ヘッドを昇降させる手段と、
前記記録媒体の厚さを検出する手段と、
前記記録媒体の厚さに応じて前記印字ヘッド又は前記プラテンを昇降させて、前記印字ヘッドと前記記録媒体の印字面との間のギャップである印字ギャップを調整する制御部と
を備える印字装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記記録媒体の厚さが厚くなると、前記印字ギャップを短縮させる方向に前記印字ヘッドと前記プラテンとの間のギャップである印字ギャップを調整する請求項4に記載の印字装置。
【請求項6】
前記記録媒体は、冊子状の記録媒体である請求項4又は5記載の印字装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−7468(P2006−7468A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184924(P2004−184924)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】