説明

印字方法、サーマルプリンタ、プログラム、及び感熱記録媒体

【課題】盗難等された感熱記録媒体に所定の事項が印字されてチケット等が偽造されてしまっても、それが偽造であるということが容易に判別できるようにする。
【解決手段】印字開始指示を受け付けて、この印字開始指示があった場合、感熱記録媒体201にサーマルヘッドの発熱素子を接触させて感熱発色層221(221a、221b、221c)の範囲毎に感熱記録媒体201の幅方向に異ならせて設定された熱エネルギーの量をもって感熱発色層221に熱エネルギーを印加するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字方法、サーマルプリンタ、プログラム、及び感熱記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱エネルギーの印加によって感熱発色する感熱発色層が基材上に形成された感熱記録媒体があり、このような感熱記録媒体は、サーマルヘッドによって熱エネルギーが印加されて所定の印字データが印字される。
【0003】
また、基材上に発色特性が異なる複数の感熱発色層が積層された感熱記録媒体があり、このような感熱記録媒体ついては、印加する熱エネルギーの量を制御することで、任意の印字状態で印字される(例えば、特許文献1)。
【0004】
ところで、感熱記録媒体は、コンサートのチケット等の用途で使用されることがあるが、チケット等としてその内容、日時、座席番号等の所定事項が印字された感熱記録媒体は、カラーコピーによって偽造されてしまうことがある。
【0005】
そこで、特殊なインキ(オプティカルインキ、パールインキ、示温インキ、蛍光発光インキ等)で感熱記録媒体に文字や画像等をプレ印刷したり、マイクロ文字やモアレ潜像画像等を使用したり、チケットとしての感熱記録媒体の形状を加工したりして、偽造の防止が図られている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−030529公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような偽造防止の方法は、カラーコピーによる偽造に対しては有効である。しかしながら、特殊なインキを用いたり、特殊な印刷方法を行なったりしなければならないため、用紙や印字装置が高価なものとなってしまう。
【0008】
また、チケットとして印字される前の感熱記録媒体が盗難され、その感熱記録媒体に所定の事項が印字されて偽造されたチケットでは、正規のチケットであるか偽造されたチケットであるかを判別することは非常に困難である。
【0009】
本発明の目的は、盗難等された感熱記録媒体に所定の事項が印字された偽造チケットが、偽造されたものであることを容易に判別できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の印字方法は、サーマルヘッドによる熱エネルギーを感熱記録媒体に印加することによって印字を行う印字方法において、印字開始指示を受け付ける工程と、前記印字開始指示があった場合、基材と当該基材上に形成され熱エネルギーの印加により発色する感熱発色層とを有し当該感熱発色層の熱エネルギーに対する発色濃度の特性が異なるように複数の領域を設けた感熱記録媒体に対して、前記発色濃度の特性が異なる領域毎に前記サーマルヘッドにより印加する熱エネルギーの量を変えて印字を行う工程と、を備える。
【0011】
別の面から見た本発明の印字方法は、サーマルヘッドによる熱エネルギーを感熱記録媒体に印加することによって印字を行う印字方法において、印字開始指示を受け付ける工程と、前記印字開始指示があった場合、基材と当該基材上に形成され熱エネルギーの印加により発色する感熱発色層とを有し当該感熱発色層の熱エネルギーに対する明度の特性が異なるように複数の領域を設けた感熱記録媒体に対して、前記明度の特性が異なる領域毎に前記サーマルヘッドにより印加する熱エネルギーの量を変えて印字を行う工程と、を備える。
【0012】
本発明のサーマルプリンタは、サーマルヘッドによる熱エネルギーを感熱記録媒体に印加することによって印字を行うサーマルプリンタにおいて、基材と当該基材上に形成され熱エネルギーの印加により発色する感熱発色層とを有し当該感熱発色層の熱エネルギーに対する発色濃度の特性が異なるように複数の領域を設けた感熱記録媒体に、前記発色濃度の特性が異なる領域毎に前記サーマルヘッドにより印加する熱エネルギーの量を変えて印字を行うようにした。
【0013】
別の面から見た本発明のサーマルプリンタは、サーマルヘッドによる熱エネルギーを感熱記録媒体に印加することによって印字を行うサーマルプリンタにおいて、基材と当該基材上に形成され熱エネルギーの印加により発色する感熱発色層とを有し当該感熱発色層の熱エネルギーに対する明度の特性が異なるように複数の領域を設けた感熱記録媒体に対して、前記明度の特性が異なる領域毎に前記サーマルヘッドにより印加する熱エネルギーの量を変えて印字を行うようにした。
【0014】
本発明のプログラムは、サーマルヘッドによる熱エネルギーを感熱記録媒体に印加することによって印字を行うサーマルプリンタのコンピュータにインストールされ、当該コンピュータに、印字開始指示を受け付ける機能と、前記印字開始指示があった場合、基材と当該基材上に形成され熱エネルギーの印加により発色する感熱発色層とを有し当該感熱発色層の熱エネルギーに対する発色濃度の特性が異なるように複数の領域を設けた感熱記録媒体に対して、前記発色濃度の特性が異なる領域毎に前記サーマルヘッドにより印加する熱エネルギーの量を変えて印字を行う機能と、を実行させる。
【0015】
本発明のプログラムは、サーマルヘッドによる熱エネルギーを感熱記録媒体に印加することによって印字を行うサーマルプリンタのコンピュータにインストールされ、当該コンピュータに、印字開始指示を受け付ける機能と、前記印字開始指示があった場合、基材と当該基材上に形成され熱エネルギーの印加により発色する感熱発色層とを有し当該感熱発色層の熱エネルギーに対する明度の特性が異なるように複数の領域を設けた感熱記録媒体に対して、前記明度の特性が異なる領域毎に前記サーマルヘッドにより印加する熱エネルギーの量を変えて印字を行う機能と、を実行させる。
【0016】
本発明は、さらに、上記本発明の印字方法及びプログラムの実行に際して使用され、サーマルプリンタに用いられる感熱記録媒体についても規定する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、感熱記録媒体に対応した熱エネルギーで印字された場合にのみ、感熱記録媒体の印字状態は適切なものとなることから、その感熱記録媒体に対応しない熱エネルギーで印字したならば、その感熱記録媒体の印字状態は適切なものとならないため、真偽について容易に判別することができる。また、偽造防止のためのプレ印刷等が必要ないことから、感熱記録媒体のコストも抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の一形態を図1ないし図7に基づいて説明する。
【0019】
図1は、サーマルプリンタ101の構造を概略的に示す縦断側面図である。サーマルプリンタ101は、上面開放のサーマルプリンタ本体102とサーマルプリンタカバー103とを備えている。サーマルプリンタカバー103は、サーマルプリンタ本体102に対して支軸104を中心に開閉自在とされている。サーマルプリンタ本体102には、ローラ構造のプラテン105と円弧状の収納部106とが設けられ、収納部106にはロール状の感熱記録媒体201が収納保持されている。一方、サーマルプリンタカバー103側にはプラテン105に対向接触して印字部108を構成するライン型のサーマルヘッド109が設けられている。これにより、サーマルプリンタカバー103が閉じられた場合に、収納部106から印字部108を経て排紙側につながる搬送経路110が形成され、この搬送経路110を介してサーマルヘッド109をプラテン105に対して所定の力で付勢して当接させることができるように構成されている。
【0020】
ここで、サーマルヘッド109は、プラテン105に対向接触する部分に多数の発熱素子(図示せず)が搬送される感熱記録媒体201の幅方向にライン状に配列されている。
【0021】
また、搬送経路110の排紙側出口には、カッタ機構111が設けられている。このカッタ機構111は、ともに平板長板状の固定刃112と可動刃113とを組み合わせてなり、固定刃112に対して可動刃113が摺動することにより搬送経路110を搬送される感熱記録媒体201を切断する構造のものである。
【0022】
図2は、感熱記録媒体201を概略的に示す平面図であり、図3は、そのA−A線断面図である。感熱記録媒体201は、長尺状の基材211と、この基材211上に基材211の幅方向に複数形成された感熱発色層221(221a、221b、221c)とを備えている。ここでいう基材211の幅方向は、図2中に矢視する感熱記録媒体201が搬送経路110(図1参照)を搬送される方向と直交する方向である。また、感熱発色層221(221a、221b、221c)が複数形成されているという意味は、感熱発色層221が複数層形成されているということではなく、感熱発色層221の領域が感熱発色層221aと感熱発色層221bと感熱発色層221cとの三つに分割されているという意味である。感熱発色層221は、図2中矢印で示す搬送方向に搬送されると共にサーマルヘッド109によって熱エネルギーが印加されて発色する。なお、感熱発色層221は、3つに限らないことは言うまでも無い。
【0023】
なお、図示せず詳細な説明は行わないが、一般的に、感熱発色層221の更に上には、保護層が形成されている。
【0024】
感熱発色層221は、感熱発色に寄与するロイコ染料及び顕色剤、発色の立ち上がり特性を良好にする増感剤、所定の熱エネルギーでロイコ染料又は顕色剤の少なくとも一方に作用して消色する消色剤等から構成されている。そして、これらの含有量は感熱発色層221毎に異なっており、したがって各感熱発色層221(221a、221b、221c)の熱エネルギーに対する発色特性はそれぞれに異なっている。
【0025】
このとき、感熱発色層221は、それぞれに異なる種類のロイコ染料を含有することで発色色相が異なっていても良く、例えば、感熱発色層221aが赤色、感熱発色層221bが黒色、感熱発色層221cが青色に感熱発色するようにしてもよい。
【0026】
図4は、感熱発色層221の発色濃度の特性を示すグラフである。縦軸は発色濃度を示し、横軸はサーマルヘッド109によって印加される熱エネルギーの量を示す。図4中、線aは感熱発色層221aの発色濃度の特性を、線bは感熱発色層221bの発色濃度の特性を、線cは感熱発色層221cの発色濃度の特性を示している。
【0027】
図4に示すように、発色濃度が最高値(約1.40)となる熱エネルギーの量は感熱発色層221毎にそれぞれ異なっている。個別に見ると、発色濃度が最高値となる熱エネルギーの量は、感熱発色層221aでは約0.25mJ、感熱発色層221bでは約0.33mJ、感熱発色層221cでは約0.4mJとなっている。
【0028】
また、各感熱発色層221は、消色剤を含有しており、発色濃度が最高値となる熱エネルギーの量を超過して熱エネルギーの印加がなされると、発色濃度は低下する。
【0029】
なお、本実施の形態では、各感熱発色層221の発色濃度の最高値は同一(約1.40)である例を示したが、感熱発色層221毎に異なっていても良い。
【0030】
図5は、サーマルプリンタ101が備える各部の電気的接続を示すブロック図である。サーマルプリンタ101にはCPU151が備えられており、CPU151には、ROM152とRAM153とがバスライン154を介して接続されている。ROM152は、サーマルプリンタ101の制御プログラムを格納した媒体であり、この制御プログラムに従ってCPU151が各部を制御する。RAM153は、各種データを一時的に格納し、一部の領域は、印字データが展開される印字バッファやサーマルヘッド109の通電時間が設定される設定テーブル(いずれも図示せず)等に使用される。
【0031】
また、CPU151にはバスライン154を介してサーマルヘッド109、プラテン105を回転駆動するモータ161、感熱記録媒体201の温度に代えられる周囲温度としてサーマルプリンタ101の温度を検出する周囲温度センサ162、搬送に際して感熱記録媒体201を検出する用紙検出センサ164、外部装置(図示せず)との通信を可能にする外部インターフェース165が接続されている。
【0032】
さらに、CPU151にはバスライン154を介して不揮発性メモリ171が接続されている。不揮発性メモリ171には、図4のグラフで示したような感熱発色層221の発色濃度の特性等の情報を含む感熱記録媒体201についての各種情報が予め記憶された情報ファイル(図示せず)が格納されている。この情報ファイルは、サーマルプリンタ101起動時にRAM153に展開されて使用される。
【0033】
ここで、ROM152に格納された制御プログラムに基づいてCPU151が実行するサーマルヘッド109の通電時間の算出処理について説明する。
【0034】
例えば、電源(図示せず)から供給される一定の電圧が24V、サーマルヘッド109の抵抗値が720Ωである場合、このときサーマルヘッド109の発熱素子1ドットあたりの電力は0.8Wとなる。ここで、サーマルヘッド109の抵抗値は、サーマルヘッド109それ自身に設定される場合と、サーマルプリンタ101内のメモリ(例えば、ROM152、あるいはデータバックアップ構造を有するRAM153等)に記憶される場合とがある。
【0035】
そして、CPU151は、周囲温度センサ162により検出される周囲温度に基づいて不揮発性メモリ171に格納された情報ファイルを参照することになる。このとき、周囲温度が含まれる温度ランクが、感熱記録媒体201が図4のグラフで示した発色濃度の特性を示す温度ランクである場合、CPU151は、電力(0.8W)と熱エネルギーの量(0.25mJ)とに基づき、感熱発色層221aに対応するドット位置の発熱素子の通電時間を、0.315msecと算出する。このとき、発熱素子の全ドット数が「640」である場合、感熱発色層221aに対応する発熱素子のドット位置は、感熱記録媒体201の搬送方向に向かって右側(図2中上側)から「001−192」としてある。このような情報についても、不揮発性メモリ171の情報ファイルに記憶されている。
【0036】
そして、同様に、感熱発色層221bに対応するドット位置「193−448」の発熱素子の通電時間を0.413msecと算出し、感熱発色層221cに対応するドット位置「449−640」の発熱素子の通電時間を0.500msecと算出する。
【0037】
算出されたサーマルヘッド109の通電時間は、RAM153に設けられた設定テーブルに記憶されることで設定される。
【0038】
このように、感熱記録媒体201に接触して感熱発色層221に熱エネルギーを印加するサーマルヘッド109の熱エネルギーの量は、各感熱発色層221の範囲毎に感熱記録媒体201の幅方向に異ならせて設定される。そして、本実施の形態では、サーマルヘッド109の熱エネルギー量は、サーマルヘッド109の通電時間として設定されることになる。
【0039】
次に、ROM152に格納された制御プログラムに基づいてCPU151が実行する算出処理を含んだ印字処理について説明する。
【0040】
図6は、印字処理の流れを示すフローチャートである。まず、CPU151は、サーマルプリンタ101の電源が投入された状態で、外部インターフェース165を介して外部装置から所定の印字開始信号を受信する(ステップS1)。このように、印字開始指示を受け付ける。この印字開始信号を受信したならば(ステップS1のY)、CPU151は、周囲温度センサ162により周囲温度を検出し(ステップS2)、サーマルヘッド109の抵抗値を検出する(ステップS3)。
【0041】
次に、CPU151は、外部インターフェース165を介して印字データを受信し、RAM153の印字バッファにドット展開する。(ステップS4)。そして、所定の複数ライン分の印字データの受信が終了したならば(ステップS5のY)、CPU151は、前述した算出処理を実行して最適な通電時間を算出し、サーマルヘッド109における感熱記録媒体201の幅方向に所定の範囲毎に異なった通電時間をRAM153に設けられた設定テーブル(図示せず)に記憶させることで通電時間を設定する(ステップS6)。
【0042】
そして、CPU151は、感熱記録媒体201を搬送すると共に、ステップS6で設定テーブルに記憶されて設定された通電時間に基づきサーマルヘッド109の発熱素子を駆動して、印字バッファに展開された印字データの印字を実行する(ステップS7)。このように、感熱記録媒体201にサーマルヘッド109の発熱素子を接触させて各感熱発色層221の範囲毎に感熱記録媒体201の幅方向に異ならせて設定された熱エネルギーの量をもって感熱発色層221に熱エネルギーを印加する。
【0043】
なお、ステップS7の印字に際しては熱履歴制御が実行される。サーマルヘッド109では、印字直後の発熱素子は熱が蓄積しているため、連続して印字を行うと、前ラインの印字時の熱が蓄積された状態で現在ラインの印字が行われてしまい、最適温度よりも高温の発熱素子で印字されて印字品質低下の原因となる。そこで、このような印字品質低下を防止するため、前ラインと現在ラインの印字間隔を求め、算出処理によって算出された通電時間に対して印字間隔に応じた補正がかかるような補正係数の制御を行い、通電時間を制御する。このような制御は熱履歴制御と称されて周知の技術であり、詳細については省略する。
【0044】
ステップS4ないしS7の処理は、例えばチケット一枚分の印字データが印字されるまで繰り返され、全ての印字データ、つまり全ラインの印字が終了したならば(ステップS8のY)、印字処理を終える。
【0045】
図7は、所定の印字データが印字された感熱記録媒体201を示し、(a)は本実施の形態のサーマルプリンタ101によって印字された印字状態を示す平面図であり、(b)は他のサーマルプリンタによって印字された印字状態を示す平面図である。
【0046】
図7(a)に示す感熱記録媒体201は、図6のフローチャートで説明した印字処理により印字されたものであり、発色濃度が最高値となる熱エネルギーで印字が行われているため、各感熱発色層221は、全て同一の発色濃度を呈している。
【0047】
一方、図7(b)に示す感熱記録媒体201は、サーマルプリンタ101ではない他のサーマルプリンタで印字されたものであるため、印加された熱エネルギーは感熱記録媒体201に対応したものではなく、印字データが同一内容であっても、その発色濃度は感熱発色層221毎に異なっている。詳細に見ると、図7(b)に示す感熱記録媒体201は、感熱発色層221aに対して最適な熱エネルギーが幅方向に同一に印加されており、感熱発色層221aでは発色濃度は最高値であるものの、感熱発色層221bの発色濃度は感熱発色層221aよりも薄く、また、感熱発色層221cの発色濃度はさらに感熱発色層221bよりも薄くなってしまっている。
【0048】
つまり、感熱記録媒体201に対応した熱エネルギーで印字された場合にのみ、感熱記録媒体201の印字状態が図7(a)に示すように適切なものとなることから、印字前の感熱記録媒体201が盗難されてしまった場合であっても、感熱記録媒体201に対応しない熱エネルギーで印字したならば、図7(b)に示すように感熱記録媒体201の印字状態は適切なものとならないため、偽造したものであることが一目で容易に判別することができる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、感熱記録媒体201に対してオプティカルインキやパールインキ等の特殊なインキによるプレ印刷等を施さなくてもよいため、感熱記録媒体201のコストも抑えることができる。
【0050】
なお、本実施の形態では、図7(a)のように全ての感熱発色層221の発色濃度が最高値であるものを適切な印字状態としたが、これに限ることはなく、図7(b)のように感熱発色層221毎に発色濃度が異なるものを適切な印字状態としてもよい。この場合、さらに、感熱発色層221毎に発色色相を異ならせることで、感熱記録媒体201の印字状態の色や濃度が複雑なものを適切な印字状態とすることができる。そのような印字状態は、再現することは難しく、したがって、より偽造防止の効果を高めることができる。
【0051】
ところで、本実施の形態の感熱記録媒体201に形成された複数の感熱発色層221は、それぞれに熱エネルギーに対する発色濃度の特性が異なっているが、一方で、熱エネルギーに対する明度の特性が異なっているとも言える。つまり、感熱発色層221は、印加される熱エネルギーの量の増加に従って発色濃度が濃くなることから、印加される熱エネルギーの量の増加に従ってその明度は低下していると言える。そして、発色濃度が最高値となる熱エネルギーの量が感熱発色層221毎にそれぞれに異なっていることから、明度が最適値(最低値)となる熱エネルギーの量も感熱発色層221毎それぞれに異なっている。したがって、感熱発色層221(221a、221b、221c)は、熱エネルギーに対する明度の特性がそれぞれに異なっている
そして、このような感熱記録媒体201について、図6のフローチャートで説明した印字処理と同様にして、サーマルヘッド109の熱エネルギーの量を、明度が予め決められた最適値となるように通電時間を制御して、感熱発色層221の範囲毎に感熱記録媒体201の幅方向に異ならせて設定し、設定された熱エネルギーの量をもってサーマルヘッド109を感熱記録媒体201に接触させて感熱発色層221に熱エネルギーを印加することで、図7(a)に示したような、各感熱発色層221の明度が最適値(最低値)となった適切な印字状態の感熱記録媒体201を得ることができる。また、感熱記録媒体201に対応しない熱エネルギーで印字したならば、図7(b)に示したような各感熱発色層221の明度がそれぞれに異なった印字状態の感熱記録媒体201となるため、容易に真偽の判別をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】サーマルプリンタの構造を概略的に示す縦断側面図である。
【図2】感熱記録媒体を概略的に示す平面図である。
【図3】図2におけるA−A線断面図である。
【図4】感熱発色層の発色濃度の特性を示すグラフである。
【図5】サーマルプリンタが備える各部の電気的接続を示すブロック図である。
【図6】印字処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】所定の印字データが印字された感熱記録媒体を示し、(a)は本実施の形態のサーマルプリンタによって印字された印字状態を示す平面図であり、(b)は他のサーマルプリンタによって印字された印字状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0053】
101…サーマルプリンタ,109…サーマルヘッド,201…感熱記録媒体,211…基材,221…感熱発色層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルヘッドによる熱エネルギーを感熱記録媒体に印加することによって印字を行う印字方法において、
印字開始指示を受け付ける工程と、
前記印字開始指示があった場合、基材と当該基材上に形成され熱エネルギーの印加により発色する感熱発色層とを有し当該感熱発色層の熱エネルギーに対する発色濃度の特性が異なるように複数の領域を設けた感熱記録媒体に対して、前記発色濃度の特性が異なる領域毎に前記サーマルヘッドにより印加する熱エネルギーの量を変えて印字を行う工程と、
を備える印字方法。
【請求項2】
前記印加する熱エネルギーの量は、複数の前記領域毎に前記感熱発色層の発色濃度が最高値となる熱エネルギーの量である、請求項1記載の印字方法。
【請求項3】
前記感熱発色層は、前記発色濃度が最高値となる熱エネルギーの量を超過した熱エネルギーの印加により消色する、請求項1又は2記載の印字方法。
【請求項4】
前記感熱発色層の発色色相は、複数の前記領域毎に異なる、請求項3記載の印字方法。
【請求項5】
サーマルヘッドによる熱エネルギーを感熱記録媒体に印加することによって印字を行う印字方法において、
印字開始指示を受け付ける工程と、
前記印字開始指示があった場合、基材と当該基材上に形成され熱エネルギーの印加により発色する感熱発色層とを有し当該感熱発色層の熱エネルギーに対する明度の特性が異なるように複数の領域を設けた感熱記録媒体に対して、前記明度の特性が異なる領域毎に前記サーマルヘッドにより印加する熱エネルギーの量を変えて印字を行う工程と、
を備える印字方法。
【請求項6】
サーマルヘッドによる熱エネルギーを感熱記録媒体に印加することによって印字を行うサーマルプリンタにおいて、
基材と当該基材上に形成され熱エネルギーの印加により発色する感熱発色層とを有し当該感熱発色層の熱エネルギーに対する発色濃度の特性が異なるように複数の領域を設けた感熱記録媒体に、前記発色濃度の特性が異なる領域毎に前記サーマルヘッドにより印加する熱エネルギーの量を変えて印字を行うようにした、ことを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項7】
サーマルヘッドによる熱エネルギーを感熱記録媒体に印加することによって印字を行うサーマルプリンタにおいて、
基材と当該基材上に形成され熱エネルギーの印加により発色する感熱発色層とを有し当該感熱発色層の熱エネルギーに対する明度の特性が異なるように複数の領域を設けた感熱記録媒体に対して、前記明度の特性が異なる領域毎に前記サーマルヘッドにより印加する熱エネルギーの量を変えて印字を行うようにした、ことを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項8】
サーマルヘッドによる熱エネルギーを感熱記録媒体に印加することによって印字を行うサーマルプリンタのコンピュータにインストールされ、当該コンピュータに、
印字開始指示を受け付ける機能と、
前記印字開始指示があった場合、基材と当該基材上に形成され熱エネルギーの印加により発色する感熱発色層とを有し当該感熱発色層の熱エネルギーに対する発色濃度の特性が異なるように複数の領域を設けた感熱記録媒体に対して、前記発色濃度の特性が異なる領域毎に前記サーマルヘッドにより印加する熱エネルギーの量を変えて印字を行う機能と、
を実行させるプログラム。
【請求項9】
サーマルヘッドによる熱エネルギーを感熱記録媒体に印加することによって印字を行うサーマルプリンタのコンピュータにインストールされ、当該コンピュータに、
印字開始指示を受け付ける機能と、
前記印字開始指示があった場合、基材と当該基材上に形成され熱エネルギーの印加により発色する感熱発色層とを有し当該感熱発色層の熱エネルギーに対する明度の特性が異なるように複数の領域を設けた感熱記録媒体に対して、前記明度の特性が異なる領域毎に前記サーマルヘッドにより印加する熱エネルギーの量を変えて印字を行う機能と、
を実行させるプログラム。
【請求項10】
基材と、
前記基材上に当該基材の幅方向に複数形成された熱エネルギーの印加により発色する感熱発色層と、
を備え、
前記感熱発色層の熱エネルギーに対する発色濃度の特性は、当該感熱発色層に設けられた複数の領域毎に異なる、
感熱記録媒体。
【請求項11】
前記感熱発色層は、前記発色濃度が最高値となる熱エネルギーの量を超過した熱エネルギーの印加により消色する、請求項10記載の感熱記録媒体。
【請求項12】
前記感熱発色層の発色色相は、複数の前記領域毎に異なる、請求項11記載の感熱記録媒体。
【請求項13】
基材と、
前記基材上に当該基材の幅方向に複数形成された熱エネルギーの印加により発色する感熱発色層と、
を備え、
前記感熱発色層の熱エネルギーに対する明度の特性は、当該感熱発色層に設けられた複数の領域毎に異なる、
感熱記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−307780(P2007−307780A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138533(P2006−138533)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】