説明

印字装置、印字方法、印字制御プログラムが記憶された記憶媒体

【課題】 印字物の住所、氏名又は電話番号等の個人情報を隠蔽するために、個人情報の種別に合致した複数の文字列を設定して重ねるように組み合せて配置することによる隠蔽パターンデータを作成することができる印字装置、印字方法及び印字制御プログラムが記憶された記憶媒体を提供する。
【解決手段】 本発明の印字装置は、住所、氏名又は電話番号等の個人情報を示す文字列が印字されている印字物の上記文字列を隠蔽するべく、上記印字物上に印字を行う印字装置であって、印字手段と、複数の任意の文字列データを入力設定する印字データ設定手段と、入力設定された複数の文字列データを重ねるように組み合せて配置してなる隠蔽パターンデータを作成する隠蔽パターンデータ作成手段と、上記印字物に印字されている上記文字列上に隠蔽パターンの印字を行う印字制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人情報を示す文字列が印字されている印字物の前記文字列を隠蔽するべく前記印字物上に印字を行う印字装置と、印字されている文字列を隠蔽する印字方法と、この印字装置に文字列の隠蔽を実現させるための印字制御プログラムが記憶された記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住所や宛名が載ったダイレクトメールや請求書を処分する際、シュレッダーやセキュリティスタンプを用いることにより、第三者への個人情報の漏洩を防いでいる。特にセキュリティスタンプは、シュレッダーと比較して安価であり、しかも、個人情報の記載部分に押印するだけで、個人情報を隠蔽することができることから、シュレッダーを有さない一般家庭などにとって便利な装置である。
【0003】
例えば、下記に示す特許文献1には、スタンプ装置本体を印字物の個人情報部分に当てて、押圧操作を行うことにより固定されたアルファベットや漢字、数字、記号等が押印されて個人情報を隠蔽することができるスタンプ装置が開示されている。また、下記に示す特許文献2には、スタンプ装置本体を印字物の個人情報部分に当て、装置本体を個人情報部分をなぞるように移動させることにより、宛名などによく使われる漢字やひらがな、数字などの固定された文字が押印されて個人情報を隠蔽することができるローラ式のスタンプ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−255515号公報
【特許文献2】特開2010−17881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1及び特許文献2に示す夫々のスタンプ装置は、所定のアルファベット文字、漢字、数字、記号等々で構成される印面を押印するものであり、その印面の内容が固定されたものであり、隠蔽すべき住所、氏名又は電話番号等の個人情報を示す種々の文字列に対して常に同一印面のスタンプによって隠蔽するものであるため、必ずしも隠蔽効果が十分に得られず、個人情報が読み取られてしまう虞があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、種々の隠蔽すべき個人情報を示す文字列に対して隠蔽性に優れた隠蔽のための印字を行うことができる印字装置を提供することを目的とするものであり、さらに隠蔽性に優れた隠蔽のための印字を行う印字方法、及び印字装置によって隠蔽性に優れた隠蔽のための印字を行う印字制御のプログラムが記憶された記憶媒体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、住所、氏名又は電話番号等の個人情報を示す文字列が印字されている印字物の前記文字列を隠蔽するべく、前記印字物上に印字を行う印字装置であって、装置本体の移動時に印字動作を行う印字手段と、印字すべき複数の任意の文字列データを入力設定する印字データ設定手段と、前記印字データ設定手段により入力設定された複数の文字列データを重ねるように組み合せて配置してなる隠蔽パターンデータを作成する隠蔽パターンデータ作成手段と、前記印字物上での前記装置本体の移動時に前記隠蔽パターンデータ作成手段により作成される隠蔽パターンデータに基づいて前記印字手段を印字動作させ、前記印字物に印字されている前記文字列上に隠蔽パターンの印字を行う印字制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記印字データ設定手段は、任意の住所、氏名、電話番号又はメールアドレスの何れかの複数の文字列データを入力する入力手段であることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の発明において、前記印字データ設定手段が、住所、氏名又は電話番号等の個人情報の種別を指定する個人情報指定手段と、郵便番号データに対応する住所データを予め格納する郵便番号辞書と、前記個人情報指定手段により個人情報の種別として住所が指定されたときに、実在する任意の郵便番号データを少なくとも1つ入力する郵便番号入力手段と、前記郵便番号入力手段により入力された所定の郵便番号データ、及びその郵便番号データの少なくとも一部の桁の数字を変更した実在する複数の郵便番号データの各郵便番号データに対応する住所データを前記郵便番号辞書から読み出すデータ読み出し手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2の発明において、前記印字データ設定手段が、住所、氏名又は電話番号等の個人情報の種別を指定する個人情報指定手段と、複数の姓データを予め格納する姓データ記憶手段と、複数の名データを予め格納する名データ記憶手段と、前記個人情報指定手段により個人情報の種別として氏名が指定されたときに、前記姓データ記憶手段及び前記名データ記憶手段から夫々複数の姓データ及び名データを読み出して、その姓データと名データを組み合せることにより、前記文字列データとして複数の氏名データを生成する氏名データ生成手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1又は請求項2の発明において、前記印字データ設定手段が、住所、氏名又は電話番号等の個人情報の種別を指定する個人情報指定手段と、前記個人情報指定手段により個人情報の種別として電話番号が指定されたときに、任意の数字を組合せた所定桁数の数字列の所定位置にハイフン又は括弧の区切り記号を介在させた複数の電話番号データを、前記文字列データとして生成する電話番号データ生成手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、住所、氏名又は電話番号等の個人情報を示す文字列が印字されている印字物の前記文字列を隠蔽するべく、装置本体の移動時に印字動作を行う印字手段を備えた印字装置を用いて前記印字物上に印字を行う印字方法であって、複数の文字列データを入力設定する印字データ設定処理と、前記印字データ設定処理により入力設定された複数の文字列データを重ねるように組み合せて配置してなる隠蔽パターンデータを作成する隠蔽パターンデータ作成処理と、前記印字物上での前記装置本体の移動時に前記隠蔽パターンデータ作成処理により作成される隠蔽パターンデータに基づいて前記印字手段を印字動作させ、前記印字物に印字されている前記文字列上に隠蔽パターンの印字を行う印字処理と、を行うことを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項6の発明において、前記印字データ設定処理は、任意の住所、氏名、電話番号又はメールアドレスの複数の文字列データを入力する文字列データ入力処理であることを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、請求項6又は請求項7の発明において、前記印字データ設定処理は、住所、氏名又は電話番号等の個人情報の種別を指定する個人情報指定処理と、前記個人情報指定処理により個人情報の種別として住所が指定されたときに、実在する任意の郵便番号データを少なくとも1つ入力する郵便番号入力処理と、前記郵便番号入力処理により入力された郵便番号データ、及びその郵便番号データの少なくとも一部の桁の数字を変更した実在する複数の郵便番号データの各郵便番号データに対応する住所データを、前記印字装置に設けられる郵便番号データに対応する住所データを予め格納する郵便番号辞書から読み出すデータ読み出し処理と、を実行することを特徴とする。
【0015】
請求項9の発明は、請求項6又は請求項7の発明において、前記印字データ設定処理は、住所、氏名又は電話番号等の個人情報の種別を指定する個人情報指定処理と、前記個人情報指定処理により個人情報の種別として氏名が指定されたときに、前記印字装置に夫々設けられる、複数の姓データを予め格納する姓データ記憶手段及び複数の名データを予め格納する名データ記憶手段から複数の姓データ及び名データを読み出して、その姓データと名データを組み合せることにより、前記文字列データとして複数の氏名データを生成する氏名データ生成処理と、を実行することを特徴とする。
【0016】
請求項10の発明は、請求項6又は請求項7の発明において、前記印字データ設定処理は、住所、氏名又は電話番号等の個人情報の種別を指定する個人情報指定処理と、前記個人情報指定処理により個人情報の種別として電話番号が指定されたときに、任意の数字を組合せた所定桁数の数字列の所定位置にハイフン又は括弧の区切り記号を介在させた複数の電話番号データを生成する電話番号データ生成処理と、を実行することを特徴とする。
【0017】
請求項11の発明は、住所、氏名又は電話番号等の個人情報を示す文字列が印字されている印字物の前記文字列を隠蔽するべく、装置本体の移動時に印字動作を行う印字手段を備えた印字装置を用いて前記印字物上に印字を行う印字処理方法を実現するためのプログラムを記憶したコンピュータ読取り可能な記憶媒体であって、複数の文字列データを入力設定する印字データ設定処理と、前記印字データ設定処理により入力設定された複数の文字列データを重ねるように組み合せて配置してなる隠蔽パターンデータを作成する隠蔽パターンデータ作成処理と、前記印字物上での前記装置本体の移動時に前記隠蔽パターンデータ作成処理により作成される隠蔽パターンデータに基づいて前記印字手段を印字動作させ、前記印字物に印字されている前記文字列上に隠蔽パターンの印字を行う印字処理と、を実現するための印字制御プログラムが記憶されていることを特徴とする。
【0018】
請求項12の発明は、請求項11の発明において、前記印字データ設定処理が、任意の住所、氏名、電話番号又はメールアドレスの何れかの複数の文字列データを入力する文字列入力処理を実現するための印字制御プログラムが記憶されていることを特徴とする。
【0019】
請求項13の発明は、請求項11又は請求項12の発明における前記印字データ設定処理において、住所、氏名又は電話番号等の個人情報の種別を指定する個人情報指定処理と、前記個人情報指定処理により個人情報の種別として住所が指定されたときに、実在する任意の郵便番号データを少なくとも1つ入力する郵便番号入力処理と、前記郵便番号入力処理により入力された郵便番号データ、及びその郵便番号データの少なくとも一部の桁の数字を変更した実在する複数の郵便番号データの各郵便番号データに対応する住所データを、前記印字装置に設けられる郵便番号データに対応する住所データを予め格納する郵便番号辞書から読み出すデータ読み出し処理と、を実現するための印字制御プログラムが記憶されていることを特徴とする。
【0020】
請求項14の発明は、請求項11又は請求項12の発明における前記印字データ設定処理において、住所、氏名又は電話番号等の個人情報の種別を指定する個人情報指定処理と、前記個人情報指定処理により個人情報の種別として氏名が指定されたときに、前記印字装置に夫々設けられる、複数の姓データを予め格納する姓データ記憶手段及び複数の名データを予め格納する名データ記憶手段から複数の姓データ及び名データを読み出して、その姓データと名データを組み合せることにより、前記文字列データとして複数の氏名データを生成する氏名データ生成処理と、を実現するための印字制御プログラムが記憶されていることを特徴とする。
【0021】
請求項15の発明は、請求項11又は請求項12の発明における前記印字データ設定処理において、住所、氏名又は電話番号等の個人情報の種別を指定する個人情報指定処理と、前記個人情報指定処理により個人情報の種別として電話番号が指定されたときに、任意の数字を組合せた所定桁数の数字列の所定位置にハイフン又は括弧の区切り記号をを介在させた複数の電話番号データを生成する電話番号データ生成処理と、を実現するための印字制御プログラムが記憶されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の印字装置によれば、使用者により入力された任意の文字列データを設定し、その設定された複数の文字列データを重ねるように組み合せて配置した隠蔽パターンデータを作成し、その隠蔽パターンを印字して個人情報の文字列を隠蔽するように構成したため、隠蔽すべき種々の個人情報の文字列に応じた隠蔽パターンによって個人情報の文字列の隠蔽が可能になり、隠蔽性に優れた隠蔽のための印字を行うことができる。特に、住所、氏名又は電話番号等の個人情報の種別に応じた隠蔽パターンを作成することにより、個人情報の隠蔽効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る走査型印字装置の側面断面を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る走査型印字装置の回路ブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る走査型印字装置の印字制御を示すフローチャートである。
【図4】走査型印字装置により個人情報の住所を隠蔽するまでの動作を示す説明図である。
【図5】走査型印字装置により個人情報の住所を隠蔽するための類似する住所データの抽出に関する説明図である。
【図6】走査型印字装置により個人情報の住所を隠蔽するために生成される住所データに関する説明図である。
【図7】走査型印字装置により個人情報の住所を隠蔽するために生成される隠蔽パターンデータに関する説明図である。
【図8】走査型印字装置により個人情報の住所を隠蔽するために生成される隠蔽パターンデータに関する説明図である。
【図9】走査型印字装置により個人情報の氏名を隠蔽するまでの動作を示す説明図である。
【図10】走査型印字装置により個人情報の氏名を隠蔽するために生成される氏名データに関する説明図である。
【図11】走査型印字装置により個人情報の氏名を隠蔽するために生成される隠蔽パターンデータに関する説明図である。
【図12】走査型印字装置により個人情報の電話番号を隠蔽するまでの動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。ここでは、印字装置としてハンディプリンタ等の走査型印字装置1を適用して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る走査型印字装置1の側面断面を示す模式図である。
【0025】
この走査型印字装置1は、図1に示すように、紙などの印字物40上に押し当てながら移動させることで印字物40に文字や模様等を印字する装置である。また、この走査型印字装置1は、把持することのできる大きさに形成された中空方形状の筐体2を有している。そして、筐体2の上方には液晶表示面上にタッチセンサー面が積層されて成るタッチパネル4が形成されている。
【0026】
このタッチパネル4は、入力されたデータに関する文字や模様等の画像の全部又は一部、各種の設定のための選択メニュー、各種の処理に関するメッセージ等が表示されるものであって、手指やタッチペン等によって各種の設定や、文字データの入力、表示中の印字候補等から印字データを決定するための選択入力が行えるようになっている。
【0027】
また、筐体2の側面には印字を実行させるキー入力部である動作スイッチ5、電源スイッチ3などのスイッチが形成されている。そして、筐体2の下面にはインクジェットヘッド6に対応した位置に開口が形成され、筐体2の下方両端部近傍には印字物40に接触されるローラ8が配設されている。
【0028】
そして、筐体2の内部には、インクを吐出すノズル列を有するインクジェットヘッド6やインクタンク、バッテリが配設されている。このインクジェットヘッド6は、印字手段とされるものであり、筐体2の下面の開口に対応して配設され、筐体2のローラ8を平面台などに載置された印字物40の面に接触させたとき、インクジェットヘッド6のノズルから印字物40の面に対して垂直方向にインクを吐出させることで、印字を行うことができるようになっている。
【0029】
また、筐体2の内部にはロータリーエンコーダ9が配設されており、図示しないギア列を介してローラ8の回転にロータリーエンコーダ9のスリット円盤の回転機構が連動している。したがって、ローラ8を印字物40上に載置して装置本体を移動させたとき、ローラ8の回転に応じたパルス信号がロータリーエンコーダ9から発生されて後述する制御部に送信され、制御部はそのパルス信号をタイミング信号としてインクジェットヘッド6を駆動して印字動作を行う。さらに、図示しないが、筐体2には、パーソナルコンピュータ等の外部機器と接続するための入力端子、メモリーカード等の記憶媒体が挿入される挿入口等も形成されている。。
【0030】
図2は、この走査型印字装置1の回路構成を示す回路ブロック図である。この走査型印字装置1は、図2に示すように、制御部10、ROM12、RAM13、記憶装置37、タッチパネル4、インクジェットヘッド6、ロータリーエンコーダ9、キー入力部14、印字制御部16、電圧調整部17及びバッテリ18を備える。
【0031】
また、この走査型印字装置1は、住所、氏名又は電話番号等の個人情報を示す文字列が印字されている印字物40の個人情報を隠蔽するべく、印字物40上に印字を行う印字装置である。つまり、この走査型印字装置1は、印字物40の個人情報を隠蔽するためのセキュリティスタンプ機能を有する。
【0032】
制御部10は、制御手段とされるマイクロコンピュータとしてのCPUであってROM12に予め記憶されているシステムプログラム、印字制御プログラム等を起動させ、RAM13をワークメモリとして回路各部の動作を制御する。
【0033】
また、制御部10は、セキュリティスタンプ機能を実施するにあたって、複数の任意の文字列データを入力設定する印字データ設定手段として機能する。そして、制御部10は、住所、氏名又は電話番号等の個人情報を示す文字列が印字されている印字物40の文字列を隠蔽するべく、印字データ設定手段として入力設定した複数の文字列データをランダム又は周期的にずらすなどの規則的に位置を変化させて各文字列データを重ねるように組み合せて配置してなる隠蔽パターンデータを作成する隠蔽パターンデータ作成手段としても機能する。
【0034】
さらに、制御部10は、印字データ設定手段として機能するにあたって、住所、氏名、電話番号又はメールアドレスの隠蔽する個人情報の種別を指定する個人情報指定手段としても機能する。
【0035】
また、制御部10は、印字データ設定手段として機能するにあたって、個人情報指定手段により個人情報の種別として住所が指定され、実在する任意の7桁の郵便番号データを郵便番号入力手段であるキー入力部14又はタッチパネル4により入力させる。制御部10は、入力された郵便番号データの少なくとも一部の桁の数字を変更して実在する郵便番号データを複数生成し、後述の郵便番号辞書30から文字列データである複数の住所データを読み出すデータ読み出し手段としても機能する。
【0036】
制御部10は、データ読み出し手段として入力された郵便番号データの一部又は全部の桁の数字を変更させる変更レベルとして「都道府県」、「市区」、「町村」の3種類を有する。そして、制御部10は、郵便番号データの入力とともに、郵便番号データのこの変更レベルをユーザに設定させる。制御部10は、設定された変更レベルが郵便番号データの全桁の数字を変更させる「都道府県」であれば、隠蔽させる個人情報の住所とは、かけ離れた地域の住所データにより隠蔽パターンデータを生成することとなる。
【0037】
また、制御部10は、設定された変更レベルが、郵便番号データの下5桁の数字を変更させる「市区」であれば、隠蔽させる個人情報の住所とは、「都道府県」については変化せず、「市区」部分が異なる住所データにより隠蔽パターンデータを生成することとなる。
【0038】
さらに、制御部10は、設定された変更レベルが、郵便番号データの下4桁の数字を変更させる「町村」であれば、隠蔽させる個人情報の住所とは、「都道府県・市区」については変化せず、「町村」部分が異なる所謂近隣の住所データにより隠蔽パターンデータを生成することとなる。
【0039】
さらに、制御部10は、印字データ設定手段として機能するにあたって、個人情報指定手段により個人情報の種別として氏名が指定されると、複数の姓データが格納される姓データ記憶手段とされる後述の姓データメモリ31と、複数の名データが格納される名データ記憶手段とされる後述の名データメモリ32とから夫々複数の姓データ及び名データを読み出す。そして、制御部10は、その姓データと名データを組み合せて、文字列データとする複数の氏名データを生成する氏名データ生成手段としても機能する。
【0040】
また、制御部10は、印字データ設定手段として機能するにあたって、個人情報指定手段により個人情報の種別として電話番号が指定されると、所定桁数で任意数字の組合せの数字列からなり所定位置に電話番号の区切り文字であるハイフン又は数字を挟む小括弧を介在させて、文字列データとする複数の電話番号データを生成する電話番号データ生成手段としても機能する。
【0041】
ROM12は、記憶手段であって、タッチパネル4から選択入力された文字列等を印字するためのプログラム、印字フォント、表示フォント、記号、模様等が記憶され、CPUで読み取り可能な印字制御プログラムが記憶された記憶媒体としても機能する。
【0042】
RAM13は、一時記憶手段であって、キー入力部14やタッチパネル4で入力された文字等の文字列データや文章の編集情報をワークメモリとして記憶する処理や、タッチパネル4に表示される各種設定メニューを記憶する処理等を行う。
【0043】
記憶装置37は、磁気的、光学的記憶媒体、若しくは半導体メモリなどCPUで読み取り可能なメモリである。この記憶装置37は、メモリーカード等の可搬型の媒体や、ハードディスク等の固定的な媒体を含む。
【0044】
そして、記憶装置37は、図2に示すように、郵便番号辞書30、番地データが格納される番地データメモリ33、姓データが格納される姓データメモリ31、名データが格納される名データメモリ32及びドメインデータが格納されるドメインデータメモリ35を有する。
【0045】
郵便番号辞書30は、日本全国の各地域毎に7桁表記の郵便番号と都道府県名、市区名、町村名から成る住所データとを対応付けて成る最新の辞書である。なお、この郵便番号辞書30には、都・道・府・県・市・区・町・村等の住所データが記憶されている。
【0046】
番地データメモリ33には、番地、ビル名、アパート名、階数、部屋番号等の住所データ生成のための追加文字列データとして例えば「9丁目8番地7号」「1234番地」等の複数の番地情報と「ABCマンション302号」「コーポABC101号」等の架空のアパートマンション情報とが複数格納されている。なお、アパート、マンションの部屋番号はランダムに設定されるようにしても構わない。
【0047】
そして、郵便番号入力手段により郵便番号が入力されると、先述のデータ読み出し手段である制御部10は、入力された郵便番号データの一部又は全部の桁の数字を変更して実在する郵便番号データを複数生成し、郵便番号辞書30から複数の住所データを読み出す。そして、制御部10は、その読み出した複数の住所データに先述の追加文字列データを組み合せて文字列データである複数の住所データを生成し、隠蔽パターンデータ作成手段として、隠蔽パターンデータを作成する。
【0048】
姓データメモリ31は、個人情報として氏名が記載されている印字物40の氏名を隠蔽するために予め「佐藤」「高橋」等の姓データの文字列データが複数格納されているメモリである。名データメモリ32は、個人情報として氏名が記載されている印字物40の氏名を隠蔽するために予め「大輔」「翔太」等の名データの文字列データが複数格納されているメモリである。
【0049】
そして、先述のとおり氏名データ生成手段である制御部10は、個人情報の種別として氏名が指定されると、複数の姓データが格納される姓データ記憶手段とされる姓データメモリ31と、複数の名データが格納される名データ記憶手段とされる名データメモリ32とから夫々複数の姓データ及び名データを読み出す。そして、制御部10は、その姓データと名データを組み合せて、文字列データとする複数の氏名データを生成し、隠蔽パターンデータ作成手段として、隠蔽パターンデータを作成する。
【0050】
ドメインデータメモリ35は、個人情報としてEメールアドレスが記載されている印字物40のEメールアドレスを隠蔽するために予め実在する「docomo.ne.jp」「ezweb.ne.jp」等のドメインデータの文字列データが複数格納されているメモリである。
【0051】
そして、制御部10は、Eメールアドレス生成手段として、個人情報指定手段により個人情報の種別としてEメールアドレスが指定されると、任意の文字の組合せにアットマークを合成して文字列データを生成する。そして、制御部10は、その文字列データとドメインデータメモリ35に複数格納されている「docomo.ne.jp」「ezweb.ne.jp」等のドメインデータの文字列データと合成することによりEメールアドレスデータを生成させて、隠蔽パターンデータ作成手段として、隠蔽パターンデータを作成する。
【0052】
印字制御手段である印字制御部16は、電源スイッチ3が押下されて装置本体が起動され、ユーザにより印字開始となる動作スイッチ5を押しながら印字物40上で装置本体が移動されると、制御部10により制御されて隠蔽パターンデータの印字を行う印字手段とされるインクジェットヘッド6を制御する。
【0053】
ロータリーエンコーダ9は、インクリメンタル式のエンコーダであり、ローラ8が回転したときに回転されるスリット列を有する回転板と、該回転板を挟むように配設される2組の発光素子及び受光素子とを備えている。また、このロータリーエンコーダ9は、回転板が回転したときに発光素子から射出されてスリットを通る光を受光素子に受光させることで、走査型印字装置1の移動量を検出する信号としてパルス信号を制御部10に送信する。
【0054】
そして、制御部10は、ロータリーエンコーダ9からのパルス信号に基づいて、つまり、走査型印字装置1の移動量に対応して、印字制御手段とされる印字制御部16を制御して、走査方向に配列されるノズル列から1ライン動作毎にインクが吐出されるように印字手段とされるインクジェットヘッド6を駆動制御する。また、制御部10は、パルス信号の入力をカウントすることにより、装置本体の移動量を算出することで、印字終了の判定も行う。
【0055】
バッテリ18は、装置内の各部に電圧を供給する。そして、電圧調整部17は、そのバッテリ18の残留電圧レベルをモニターする働きを有し、装置本体が適正に印字できるように電圧レベルを監視し、所定の電圧レベルを下回ると警告等を案内してユーザに充電又はバッテリ18の交換を促す。
【0056】
次に、図3のフローチャートを参照して実施形態の走査型印字装置1におけるセキリュティスタンプの印字方法の具体的な流れについて説明する。また、図4乃至図12には、印字方法の具体的な流れを説明するにあたって各処理の具体例を示す。
【0057】
制御部10は、電源がON状態となりユーザによりセキリュティスタンプの設定メニューを選択されると、オプション設定処理(ステップS100)を実行する。
【0058】
制御部10は、オプション設定処理(ステップS100)として、ユーザにより選択されるセキリュティスタンプのオプション設定である文字フォント種、文字体、印字幅、印字長、言語、印刷方向、濃度又はフォントサイズの何れかの設定メニューをタッチパネル4に表示させる。ユーザは、これにより各種オプション設定を逐次設定していく。
【0059】
例えば、文字フォント種の設定であれば、明朝体、ゴシック体、毛筆流麗体、毛筆楷書体、ランダムのいずれかをユーザに選択させる。また、文字体の設定であれば、標準、太字、白抜き、影付き、立体、ランダムのいずれかをユーザに選択させる。印字幅の設定であれば、0〜最大印字幅(印字ヘッド幅)の間でユーザに値を設定させる。印字長の設定であれば、0〜最大印字長の間でユーザに値を設定させる。
【0060】
また、言語の設定であれば、日本語、英語、フランス語、ドイツ語、中国語、韓国語等のいずれかをユーザに選択させる。印字方向の設定であれば、縦方向又は横方向のどちらかをユーザに選択させる。濃度の設定であれば、「薄い」から「濃い」までを5段階に分割して濃度をユーザに選択させる。
【0061】
また、フォントサイズの設定であれば、フォントサイズとして例えば8ポイント(1/9インチ)から36ポイント(1/2インチ)において適宜、ユーザに選択させる。なお、これらの設定にはそれぞれデフォルト値を設けておく。
【0062】
制御部10は、セキリュティスタンプの各種の設定が完了したか否かを監視して設定変更完了判断処理(ステップS110)を行う。制御部10は、設定変更完了判断処理(ステップS110)としてユーザによるセキリュティスタンプの各種の設定の変更が完了した場合又はデフォルト値を選択された場合であれば、次に、個人情報の項目選択による個人情報指定処理(ステップS115)を行う。また、制御部10は、各種の設定の変更が完了していなければ、オプション設定処理(ステップS100)に戻って、ユーザにより選択される何れかの設定メニューをタッチパネル4に表示させる。
【0063】
次に、制御部10は、印字物40に記載されている住所、氏名又は電話番号等の個人情報の種別を指定させる個人情報指定手段として、タッチパネル4に住所、氏名、電話番号及びEメールアドレスの何れかを選択させるための選択画面を表示させる個人情報指定処理(ステップS115)を実行する。
【0064】
制御部10は、ユーザにより住所、氏名、電話番号及びEメールアドレスのどれが選択されたかを判断する項目判断処理(ステップS120、ステップS125)を実行する。
【0065】
項目判断処理(ステップS120)として、個人情報の種別が「電話番号」と選択されたときには、個人情報の電話番号を隠蔽するための複数の電話番号データを生成するための電話番号データ生成処理(ステップS155)に進み、「電話番号」以外であれば、次の項目判断処理(ステップS125)に進む。
【0066】
項目判断処理(ステップS125)として、個人情報の種別が「住所」と選択されたときには、隠蔽したい個人情報の住所に合致した郵便番号の入力を求める郵便番号入力処理(ステップS130)に進む。
【0067】
さらに、項目判断処理(ステップS125)として、個人情報の種別が「氏名」と選択されたときには、個人情報の氏名を隠蔽するための文字列データである複数の氏名データを生成するための氏名データ生成処理(ステップS150)に進む。
【0068】
そして、項目判断処理(ステップS125)として、個人情報の種別が「Eメールアドレス」と選択されたときには、個人情報のEメールアドレスを隠蔽するための複数のEメールアドレスデータを生成するためのEメールアドレスデータ生成処理(ステップS160)に進む。
【0069】
個人情報の種別に「住所」が選択されると、郵便番号入力手段である制御部10は、郵便番号入力処理(ステップS130)として、タッチパネル4に郵便番号を入力させるための入力画面を表示させるとともに、住所データとしてアパートマンション情報を付加させるか否か及び郵便番号の変更レベル(都道府県レベル、市区レベル、町村レベル)を設定させる。ここで、個人情報の種別として「住所」が選択され、その個人情報の住所を隠蔽するまでの動作について説明する。図4は、個人情報の種別として「住所」が選択され、郵便番号が入力されて、その個人情報の住所を隠蔽するまでの動作を示す説明図である。
【0070】
図4に示すように、制御部10は、個人情報の種別として住所、氏名、電話番号、Eメールアドレスの内「住所」が選択され、郵便番号データとして「0480132」が入力され、入力された郵便番号データ「0480132」が示す住所である「北海道寿都郡黒松内町チョポシナイ」に対して、郵便番号データを一部変更させる。そして、例えば郵便番号の下5桁を変化させて「市区」(ここでは群町)が異なる「北海道山越郡都長万部町国縫」や「北海道寿都郡寿都町矢追町」などの実在する住所データにより隠蔽パターンデータ56を生成することとなる。そして、図4に示したように隠蔽パターンデータ56は、予め設定されたセキリュティスタンプの各種オプション設定における印字幅、印字長等により生成される。
【0071】
つまり、郵便番号及び変更レベル(都道府県レベル、市区レベル、町村レベル)等が入力されると、データ読み出し手段である制御部10は、その入力された郵便番号データを変更レベルの設定に基づいて変更して実在する郵便番号データとして、例えば7個生成し、郵便番号辞書30からその生成された郵便番号データに対応する住所データを読み出すデータ読み出し処理(ステップS140)を実行する。図5は、先述の郵便番号、変更レベル(都道府県レベル、市区レベル、町村レベル)の入力設定により生成される複数の住所データの生成例を示す。
【0072】
図5に示すように、「山形県米沢市御廟」の地域を示す郵便番号データとして「9920055」が入力され、例えば変更レベル設定が近隣を示す町村レベルであれば、郵便番号データの下4桁を変更し、郵便番号辞書30に格納される「9920054」、「9920062」、「9921443」等の実在する郵便番号データを生成する。そして、データ読み出し手段である制御部10は、「9920054」に対応する住所データとして「山形県米沢市城西」、「9920062」に対応する住所データとして「山形県米沢市林泉寺」、「9921443」に対応する住所データとして「山形県米沢市笹野」を郵便番号辞書30から読み出す。
【0073】
同様に、郵便番号データとして「山形県米沢市御廟」地域を示す「9920055」が入力され、例えば変更レベル設定が同県の異なる市区を示す市区レベルであれば、郵便番号データの下5桁を変更し、郵便番号辞書30に格納される「9900042」、「9970035」、「9996835」等の実在する郵便番号データを生成する。そして、データ読み出し手段である制御部10は、「9900042」に対応する住所データとして「山形県山形市七日町」、「9970035」に対応する住所データとして「山形県鶴岡市馬場町」、「9996835」に対応する住所データとして「山形県酒田市本町」を郵便番号辞書30から読み出す。
【0074】
さらに、郵便番号データとして「山形県米沢市御廟」地域を示す「9920055」が入力され、例えば変更レベル設定が都道府県レベルであれば、郵便番号データの上2桁(又は全桁)を変更し、郵便番号辞書30に格納される「0100951」、「9800803」、「9608111」等の実在する郵便番号データを生成する。そして、データ読み出し手段である制御部10は、「0100951」に対応する住所データとして「秋田県秋田市山王」、「9800803」に対応する住所データとして「宮城県仙台市青葉区国分町」、「9608111」に対応する住所データとして「福島県福島市五老内町」を郵便番号辞書30から読み出す。
【0075】
そして、制御部10は、データ読み出し処理(ステップS140)により生成された7個の住所データと、番地データメモリ33にある番地、ビル名、アパート名、階数、部屋番号等の追加文字列データからランダムに7個の追加文字列データを抽出し組み合せて7個の住所データを生成する印字データ設定処理である住所データ生成処理(ステップS145)を実行する。これにより、個人情報の住所を隠蔽させるための7個の住所データが生成される。図6は、先述の番地データメモリ33に格納される番地、ビル名、アパート名、階数、部屋番号等の追加文字列データからランダムに抽出し組み合せて住所データを生成する住所データ生成例を示す。
【0076】
図6に示すように、先述の変更レベル設定が近隣を示す町村レベルで生成された「山形県米沢市城西」、「山形県米沢市林泉寺」、「山形県米沢市笹野」などの実在する住所データに対して、番地データメモリ33にある追加文字列データとして例えば「9丁目8番地7号」、「1丁目2号」、「1234号」等の番地情報と、アパートマンション情報を付加させるか否かの設定に応じて組み合わせられる「ABCマンション302号」、「コーポABC101号」、「エリシオン米沢803号」等のアパートマンション情報を組合わせることにより、「山形県米沢市城西9−8−7」、「山形県米沢市城西9−8−7ABCマンション302号」等の住所データを生成する。
【0077】
そして、個人情報の住所を隠蔽させるための7個の住所データが生成されると、制御部10は、隠蔽パターンデータ作成手段として、これらの文字列データである住所データをオプション設定処理(ステップS100)に基づいて編集しながら、ランダム又は周期的にずらすなどの規則的に位置を変化させて各文字列を重ねるように組み合せて配置することにより隠蔽パターンデータを作成する隠蔽パターンデータ作成処理(ステップS170)を実行する。図7及び図8は、先述の7個の住所データをオプション設定に基づいて編集しながらランダムに重ねるように組み合せて配置して生成された隠蔽パターンデータの生成例を示す。
【0078】
図7に示すように、例えば「山形県米沢市浅川11−2−5」「山形県米沢市梓川1234」等の複数生成された住所データを、予め設定されたセキリュティスタンプの各種オプション設定における文字体の設定として「太字」を設定した場合には、図示する隠蔽パターンデータ51となって、個人情報の住所を隠蔽することとなる。また、「影付き」を設定した場合には、図示する隠蔽パターンデータ52となって、個人情報の住所を隠蔽することとなる。さらに、「ランダム」を設定した場合には、図示する隠蔽パターンデータ53となって、個人情報の住所を隠蔽することとなる。
【0079】
また、図8に示すように、例えば「山形県米沢市浅川11−2−5」「山形県米沢市梓川1234」等の複数生成された住所データを、予め設定されたセキリュティスタンプの各種オプション設定における印刷方向の設定として「横方向」を設定した場合には、図示する隠蔽パターンデータ54となって、個人情報の住所を隠蔽することとなる。また、「縦方向」を設定した場合には、図示する隠蔽パターンデータ55となって、個人情報の住所を隠蔽することとなる。
【0080】
制御部10は、作成された隠蔽パターンデータによる印字データをセットし、ユーザにより動作スイッチ5が押下されると印字処理(ステップS175)を実行する。制御部10は、ユーザが動作スイッチ5を押しながら印字物40上に載置した装置本体を移動させると、装置本体が所定距離移動する毎にロータリーエンコーダ9から発生されるパルス信号をタイミング信号として、印字制御部16を制御してインクジェットヘッド6を駆動させて印字物40上に隠蔽パターンデータを1ラインづつ印字させ、所定位置まで移動されると処理を終了する。
【0081】
一方、項目判断処理(ステップS125)で個人情報の種別を「氏名」と選択されると制御部10は、氏名データ生成手段として複数の氏名データを生成することにより隠蔽パタンデータを生成して個人情報の氏名を隠蔽させる。図9は、個人情報の種別に「氏名」を選択し、その個人情報の氏名を隠蔽するまでの動作を示す説明図である。
【0082】
図9に示すように、個人情報の種別として住所、氏名、電話番号、Eメールアドレスの内「氏名」が選択され、予め設定されたセキリュティスタンプの各種オプション設定における文字フォント種を「ゴシック体」と設定し、所定の印字幅、印字長を設定することにより隠蔽パターンデータ60が生成され印字される。
【0083】
制御部10は、氏名データ生成手段として、姓データ記憶処理により複数の姓データが格納される姓データ記憶手段とされる姓データメモリ31と、名データ記憶処理により複数の名データが格納される名データ記憶手段とされる名データメモリ32とから夫々複数の姓データ及び名データを読み出す。そして、制御部10は、その姓データと名データを組み合せて、印字させる複数の氏名データを生成する印字データ設定処理である氏名データ生成処理(ステップS150)を実行する。図10は、姓データと名データを組み合せて複数の氏名データを生成させる動作に関する説明図である。
【0084】
図10に示すように、先述の姓データメモリ31には、予め「佐藤」、「高橋」、「鈴木」、「渡辺」等の姓データが複数格納されている。また、名データメモリ32には、予め「大輔」、「翔太」、「愛」、「陽菜」、等の名データが複数格納されている。
【0085】
そして、先述のとおり氏名データ生成手段である制御部10は、夫々のメモリから夫々複数の姓データ及び名データを読み出し、その姓データと名データを組み合せて、図10に示したように、「佐藤大輔」、「鈴木翔太」等の複数の氏名データを生成させる。
【0086】
さらに、制御部10は、隠蔽パターンデータ作成手段として、これらの氏名データをオプション設定処理(ステップS100)に基づいて編集しながら、ランダム又は周期的にずらすなどの規則的に位置を変化させて各文字列を重ねるように組み合せて配置することにより隠蔽パターンデータを作成する隠蔽パターンデータ作成処理(ステップS170)を実行する。そして、生成された隠蔽パターンデータにより印字処理(ステップS175)を実行し、処理を終了する。図11は、先述の氏名データをオプション設定に基づいて編集しながら、重ねるように組み合せて配置し生成された隠蔽パターンデータ57,58,59の生成例を示す。
【0087】
図11に示すように、例えば生成された氏名データとして「高橋瑛太」、「山本蓮」、「中村健太」等の20個の氏名データを、予め設定されたセキリュティスタンプの各種オプション設定における文字フォント種の設定として「ゴシック体」を設定した場合には、隠蔽パターンデータ57となって、個人情報の氏名を隠蔽することとなる。また、「明朝体」を設定した場合には、図示する隠蔽パターンデータ58となって、個人情報の氏名を隠蔽することとなる。さらに、「ランダム」を設定した場合には、図示する隠蔽パターンデータ59となって、個人情報の氏名を隠蔽することとなる。
【0088】
さらに、項目判断処理(ステップS120)で個人情報の種別を「電話番号」と選択されると制御部10は、電話番号データ生成手段として、所定桁数で任意の数字の組合せの数字列からなり所定位置に電話番号の区切り文字であるハイフン又は数字を挟む小括弧を介在させて、印字すべき文字列データとして複数の電話番号データを生成させる印字データ設定処理である電話番号データ生成処理(ステップS155)を実行する。
【0089】
そして、個人情報の電話番号を隠蔽させるための複数の電話番号データが生成されると、制御部10は、隠蔽パターンデータ作成手段として、これらの文字列データをオプション設定処理(ステップS100)に基づいて編集しながら、ランダム又は周期的にずらすなどの規則的に位置を変化させて各文字列を重ねるように組み合せて配置することにより隠蔽パターンデータを作成する隠蔽パターンデータ作成処理(ステップS170)を実行する。そして、生成された隠蔽パターンデータによる印字処理(ステップS175)を実行し、処理を終了する。図12は、個人情報の種別に「電話番号」を選択し、その個人情報の電話番号を隠蔽するまでの動作を示す説明図である。
【0090】
図12に示すように、個人情報の種別として住所、氏名、電話番号、Eメールアドレスの内「電話番号」が選択されると、予め設定されたセキリュティスタンプの各種オプション設定における印字幅、印字長等により隠蔽パターンデータ61が生成され印字される。
【0091】
また、項目判断処理(ステップS125)で個人情報の種別を「Eメールアドレス」と選択されると制御部10は、Eメールアドレスデータ生成手段として、任意の文字の組合せにアットマークを合成し、さらにドメインデータメモリ35に複数格納されている「docomo.ne.jp」「ezweb.ne.jp」等のドメインデータの文字列データと合成することにより印字させる複数のEメールアドレスデータを生成する印字データ設定処理であるEメールアドレスデータ生成処理(ステップS160)を実行する。
【0092】
そして、個人情報のEメールアドレスを隠蔽させるための複数のEメールアドレスデータが生成されると、制御部10は、隠蔽パターンデータ作成手段として、これらの文字列データをオプション設定処理(ステップS100)に基づいて編集しながら、ランダム又は周期的にずらすなどの規則的に位置を変化させて各文字列を重ねるように組み合せて配置することにより隠蔽パターンデータを作成する隠蔽パターンデータ作成処理(ステップS170)を実行する。そして、生成された隠蔽パターンデータによる印字処理(ステップS175)を実行し、処理を終了する。
【0093】
以上のように、本発明の実施形態によれば、印字物40の住所、氏名又は電話番号等の個人情報を隠蔽するために、個人情報の種別に合致した複数の文字列を設定してランダム又は周期的にずらすなどの規則的に位置を変化させて各文字列を重ねるように組み合せて配置することによる隠蔽パターンデータを作成し、しかも、その隠蔽パターンデータを随時変化させることができるため、個人情報の種々の文字の大きさや、個人情報の内容に合わせて個人情報の文字列を隠蔽することのできる印字装置、印字されている個人情報の文字列を隠蔽することのできる印字方法及びこの印字装置に文字列の隠蔽を実現させるための印字制御プログラムが記憶された記憶媒体を提供することができる。
【0094】
また、本発明の実施形態によれば、印字物40の住所、氏名又は電話番号等の個人情報を隠蔽するために、個人情報の種別を指定し、その種別に応じた隠蔽パターンデータを生成させることから、例えば、多数の名前が密集して印字されていれば、個人情報の氏名を特定することが困難にさせることができる。
【0095】
さらに、本発明の実施形態によれば、印字物40の個人情報である住所を隠蔽するために、郵便番号を入力することにより、例えば、変更レベルを町村レベルとして隣接する地域の住所データを複数生成して、ランダム又は周期的にずらすなどの規則的に位置を変化させて各文字列を重ねるように組み合せて配置して印字させることにより、個人情報の住所がどれかを特定することを困難にさせることができる。
【0096】
そして、本発明の実施形態によれば、印字物40の個人情報である氏名を隠蔽するために、予め姓データメモリ31と名データメモリ32に複数の姓データ及び名データを格納し、組み合せて、多数の氏名データを生成して、ランダム又は周期的にずらすなどの規則的に位置を変化させて各文字列を重ねるように組み合せて印字させることにより、個人情報の氏名がどれかを特定することを困難にさせることができる。
【0097】
また、本発明の実施形態によれば、印字物40の個人情報である電話番号を隠蔽するために、多数の電話番号データを生成して、ランダム又は周期的にずらすなどの規則的に位置を変化させて各文字列を重ねるように組み合せて配置させて印字させることにより、隠蔽したい個人情報の電話番号がどれかを特定することを困難にさせることができる。
【0098】
なお、本発明の実施形態におけるフローチャートに示した処理は、コンピュータに実現させることのできるプログラムとして、例えば磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記憶媒体に書き込んだ状態で各種装置に適用する、或いは、通信媒体により伝送して各種装置に適用することも可能である。このように所望の記憶媒体に本発明の実施形態で述べた各処理を記憶させ、他のコンピュータ等でプログラムを実行させることにより、本発明の実施形態の装置を用いた場合と同様の作用効果が得られる。なお、コンピュータは、本発明の実施形態で述べた装置に内蔵されたコンピュータに限定されるわけではなく、記憶媒体に記憶されたプログラムを読み取り可能であって、読み取ったプログラムに従って制御動作を行うCPU等の演算装置を備えているあらゆるコンピュータを含む。
【0099】
さらに、本発明の実施形態では、印字装置として手動で装置本体を移動させて印字物40に印字させる走査型印字装置1を適用した場合について説明してきたが、印字物40上を自動で走査して印字させる印字装置にも適用できる。
【0100】
また、本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で自由に変更、改良が可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 走査型印字装置 2 筐体
3 電源スイッチ 4 タッチパネル
5 動作スイッチ
6 インクジェットヘッド
8 ローラ 9 ロータリーエンコーダ
10 制御部
12 ROM 13 RAM
14 キー入力部 16 印字制御部
17 電圧調整部 18 バッテリ
30 郵便番号辞書 31 姓データメモリ
32 名データメモリ 33 番地データメモリ
35 ドメインデータメモリ
37 記憶装置 40 印字物
51,52,53,54,55,56 隠蔽パターンデータ(住所データ)
57,58,59,60 隠蔽パターンデータ(氏名)
61 隠蔽パターンデータ(電話番号)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
住所、氏名又は電話番号等の個人情報を示す文字列が印字されている印字物の前記文字列を隠蔽するべく、前記印字物上に印字を行う印字装置であって、
装置本体の移動時に印字動作を行う印字手段と、
印字すべき複数の任意の文字列データを入力設定する印字データ設定手段と、
前記印字データ設定手段により入力設定された複数の文字列データを重ねるように組み合せて配置してなる隠蔽パターンデータを作成する隠蔽パターンデータ作成手段と、
前記印字物上での前記装置本体の移動時に前記隠蔽パターンデータ作成手段により作成される隠蔽パターンデータに基づいて前記印字手段を印字動作させ、前記印字物に印字されている前記文字列上に隠蔽パターンの印字を行う印字制御手段と、
を備えることを特徴とする印字装置。
【請求項2】
前記印字データ設定手段は、任意の住所、氏名、電話番号又はメールアドレスの何れかの複数の文字列データを入力する入力手段であることを特徴とする請求項1に記載の印字装置。
【請求項3】
前記印字データ設定手段は、
住所、氏名又は電話番号等の個人情報の種別を指定する個人情報指定手段と、
郵便番号データに対応する住所データを予め格納する郵便番号辞書と、
前記個人情報指定手段により個人情報の種別として住所が指定されたときに、実在する任意の郵便番号データを少なくとも1つ入力する郵便番号入力手段と、
前記郵便番号入力手段により入力された郵便番号データ、及びその郵便番号データの少なくとも一部の桁の数字を変更した実在する複数の郵便番号データの各郵便番号データに対応する住所データを前記郵便番号辞書から読み出すデータ読み出し手段と、
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印字装置。
【請求項4】
前記印字データ設定手段は、
住所、氏名又は電話番号等の個人情報の種別を指定する個人情報指定手段と、
複数の姓データを予め格納する姓データ記憶手段と、
複数の名データを予め格納する名データ記憶手段と、
前記個人情報指定手段により個人情報の種別として氏名が指定されたときに、前記姓データ記憶手段及び前記名データ記憶手段から夫々複数の姓データ及び名データを読み出し、その姓データと名データを組み合せることにより、前記文字列データとして複数の氏名データを生成する氏名データ生成手段と、
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印字装置。
【請求項5】
前記印字データ設定手段は、
住所、氏名又は電話番号等の個人情報の種別を指定する個人情報指定手段と、
前記個人情報指定手段により個人情報の種別として電話番号が指定されたときに、任意の数字を組合せた所定桁数の数字列の所定位置にハイフン又は括弧の区切り記号を介在させた複数の電話番号データを、前記文字列データとして生成する電話番号データ生成手段と、
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印字装置。
【請求項6】
住所、氏名又は電話番号等の個人情報を示す文字列が印字されている印字物の前記文字列を隠蔽するべく、装置本体の移動時に印字動作を行う印字手段を備えた印字装置を用いて前記印字物上に印字を行う印字方法であって、
複数の文字列データを入力設定する印字データ設定処理と、
前記印字データ設定処理により入力設定された複数の文字列データを重ねるように組み合せて配置してなる隠蔽パターンデータを作成する隠蔽パターンデータ作成処理と、
前記印字物上での前記装置本体の移動時に前記隠蔽パターンデータ作成処理により作成される隠蔽パターンデータに基づいて前記印字手段を印字動作させ、前記印字物に印字されている前記文字列上に隠蔽パターンの印字を行う印字処理と、
を行うことを特徴とする印字方法。
【請求項7】
前記印字データ設定処理は、任意の住所、氏名、電話番号又はメールアドレスの何れかの複数の文字列データを入力する文字列データ入力処理であることを特徴とする請求項6に記載の印字方法。
【請求項8】
前記印字データ設定処理は、
住所、氏名又は電話番号等の個人情報の種別を指定する個人情報指定処理と、
前記個人情報指定処理により個人情報の種別として住所が指定されたときに、実在する任意の郵便番号データを少なくとも1つ入力する郵便番号入力処理と、
前記郵便番号入力処理により入力された郵便番号データ、及びその郵便番号データの少なくとも一部の桁の数字を変更した実在する複数の郵便番号データの各郵便番号データに対応する住所データを、前記印字装置に設けられる郵便番号データに対応する住所データを予め格納する郵便番号辞書から読み出すデータ読み出し処理と、
を実行することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の印字方法。
【請求項9】
前記印字データ設定処理は、
住所、氏名又は電話番号等の個人情報の種別を指定する個人情報指定処理と、
前記個人情報指定処理により個人情報の種別として氏名が指定されたときに、前記印字装置に夫々設けられる、複数の姓データを予め格納する姓データ記憶手段及び複数の名データを予め格納する名データ記憶手段から複数の姓データ及び名データを読み出して、その姓データと名データを組み合せることにより、前記文字列データとして複数の氏名データを生成する氏名データ生成処理と、
を実行することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の印字方法。
【請求項10】
前記印字データ設定処理は、
住所、氏名又は電話番号等の個人情報の種別を指定する個人情報指定処理と、
前記個人情報指定処理により個人情報の種別として電話番号が指定されたときに、任意の数字を組合せた所定桁数の数字列の所定位置にハイフン又は括弧の区切り記号を介在させた複数の電話番号データを生成する電話番号データ生成処理と、
を実行することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の印字方法。
【請求項11】
住所、氏名又は電話番号等の個人情報を示す文字列が印字されている印字物の前記文字列を隠蔽するべく、装置本体の移動時に印字動作を行う印字手段を備えた印字装置を用いて前記印字物上に印字を行う印字処理方法を実現するためのプログラムを記憶したコンピュータ読取り可能な記憶媒体であって、
複数の文字列データを設定する印字データ設定処理と、
前記印字データ設定処理により設定された複数の文字列データを重ねるように組み合せて配置してなる隠蔽パターンデータを作成する隠蔽パターンデータ作成処理と、
前記印字物上での前記装置本体の移動時に前記隠蔽パターンデータ作成処理により作成される隠蔽パターンデータに基づいて前記印字手段を印字動作させ、前記印字物に印字されている前記文字列上に隠蔽パターンの印字を行う印字処理と、
を実現するための印字制御プログラムが記憶されていることを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項12】
前記印字データ設定処理は、任意の住所、氏名、電話番号又はメールアドレスの何れかの複数の文字列データを入力する文字列データ入力処理を実現するための印字制御プログラムが記憶されていることを特徴とする請求項11に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項13】
前記印字データ設定処理において、
住所、氏名又は電話番号等の個人情報の種別を指定する個人情報指定処理と、
前記個人情報指定処理により個人情報の種別として住所が指定されたときに、実在する任意の郵便番号データを少なくとも1つ入力する郵便番号入力処理と、
前記郵便番号入力処理により入力された郵便番号データ、及びその郵便番号データの少なくとも一部の桁の数字を変更した実在する複数の郵便番号データの各郵便番号データに対応する住所データを、前記印字装置に設けられる郵便番号データに対応する住所データを予め格納する郵便番号辞書から読み出すデータ読み出し処理と、
を実現するための印字制御プログラムが記憶されていることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項14】
前記印字データ設定処理において、
住所、氏名又は電話番号等の個人情報の種別を指定する個人情報指定処理と、
前記個人情報指定処理により個人情報の種別として氏名が指定されたときに、前記印字装置に夫々設けられる、複数の姓データを予め格納する姓データ記憶手段及び複数の名データを予め格納する名データ記憶手段から複数の姓データ及び名データを読み出して、その姓データと名データを組み合せることにより、前記文字列データとして複数の氏名データを生成する氏名データ生成処理と、
を実現するための印字制御プログラムが記憶されていることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項15】
前記印字データ設定処理において、
住所、氏名又は電話番号等の個人情報の種別を指定する個人情報指定処理と、
前記個人情報指定処理により個人情報の種別として電話番号が指定されたときに、任意の数字を組合せた所定桁数の数字列の所定位置にハイフン又は括弧の区切り記号をを介在させた複数の電話番号データを生成する電話番号データ生成処理と、
を実現するための印字制御プログラムが記憶されていることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−11580(P2012−11580A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147821(P2010−147821)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EZweb
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】