説明

印字装置

【課題】長い時間をかけることなく迅速に2次電池の劣化検出を行う。
【解決手段】携帯用小型プリンタ装置1のCPU41は、電池収納部50aに収納した充電式電池50に対し充電処理を行い満充電状態を検出したとき、所定の負荷を所定時間範囲付与することにより、放電処理を行う。充電式電池50の放電処理開始時の検出電圧Voと放電処理終了後所定時間Ta経過後の検出電圧V1との電圧差V1−Voを検出する。このV1−Voと2つのしきい値Va,Vbとの大小関係に応じて、充電式電池50の劣化程度を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池により駆動される印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば使用者が手軽に使用できるように、充電可能である2次電池を用いて動作する印字装置が既に提唱されている。この場合、2次電池は、充電使用が繰り返されることによって劣化し、内部抵抗が大きくなる。したがって、電池が劣化したかどうかは、出力電圧値の経時変化(低下)によって見分けることができる。この点に着目した従来技術として、例えば特許文献1に記載の技術がある。この従来技術においては、予め設けた専用の劣化判定モード(電池寿命測定モード)へ移行し、テストパターンの印刷が行われる。そして、そのときの電圧降下挙動に基づき、装着されている電池の劣化程度が判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−104033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、電池の劣化検出を行いたい場合は、満充電まで充電を行った後に上記劣化判定モードに移行し、このモードにおいてテストパターンの印刷を連続して行う必要がある。このため、処理のために比較的長い時間を要し、迅速に劣化検出を行うことができなかった。
【0005】
本発明の目的は、長い時間をかけることなく迅速に2次電池の劣化検出を行える、印字装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、被印字媒体に所望の印字を行う印字手段と、前記印字手段を駆動する駆動源と、前記駆動源に電力を供給する、充電可能な電池を収納する電池収納部と、前記電池収納部に収納された前記電池に対し充電処理を行う充電手段と、前記充電手段の前記充電処理により前記電池が満充電状態になったことを検出する満充電検出手段と、前記満充電検出手段で前記電池の前記満充電状態が検出されたとき、当該満充電状態である前記電池に対し、所定の負荷を所定時間範囲付与することにより、放電処理を行う放電手段と、前記電池の前記放電処理終了後の電圧回復に関する所定の回復状態量を検出する状態量検出手段と、前記回復状態量に基づいて、電池劣化程度が小さいと判定するための第1しきい値、及び、電池劣化程度が大きいと判定するための第2しきい値、を記憶した特性記憶手段と、前記電池の前記放電処理終了後、前記状態量検出手段により検出される前記回復状態量が、前記第1しきい値と前記第2しきい値との間の中間領域に属するか、前記第1しきい値から前記中間領域と反対側の領域に属するか、前記第2しきい値から前記中間領域と反対側の領域に属するか、に応じて、前記電池の劣化程度を判定する劣化判定手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
本願発明の印字装置は、印字手段と、印字手段を駆動する駆動源と、電池収納部とを有する。被印字媒体に対し印字手段により所望の印字が行われる。電池収納部には充電可能な電池が収納され、上記駆動源への電力供給は、上記電池によって行われる。
【0008】
2次電池は、充電使用が繰り返されることによって次第に劣化し、内部抵抗が大きくなる。また、内部抵抗の増大に伴って、バッテリ容量も初期の値から徐々に低下していく。したがって、電池が劣化したかどうかは、満充電直後において負荷を加えて放電を行い電圧が降下した後の負荷を解放した状態での電圧回復挙動によって見分けることができる。すなわち、この負荷を解放した直後の電圧回復挙動は、劣化が大きいほど緩慢になる。そこで、本願発明では、特性記憶手段が、電池劣化程度が小さいと判定するための第1しきい値と、電池劣化程度が大きいと判定するための第2しきい値と、を記憶している。そして、まず充電手段が電池に充電処理を行い、検出手段により電池の満充電状態が検出された後、引き続いてその満充電状態の電池に対し放電手段が所定の負荷を所定時間範囲付与して放電処理を行う。
【0009】
そして、放電処理が終了したら、状態量検出手段が、電圧回復に関する所定の回復状態量を検出し、そのとき検出された回復状態量に基づき、劣化判定手段が電池の劣化程度を判定する。すなわち、検出された回復状態量が上記第1しきい値と第2しきい値との間の中間領域に属している場合には、電池劣化程度が若干認められる、要注意状態の電池であると判定される。また、回復状態量が上記第1しきい値から中間領域と反対側の領域に属し、第1しきい値よりも小さかった(又は大きかった)場合には、電池劣化程度が十分に小さく、劣化が少なく十分な容量がある電池であると判定される。また、上記回復状態量が上記第2しきい値から中間領域と反対側の領域に属し、第2しきい値よりも大きかった(又は小さかった)場合には、電池劣化程度が大きく、繰り返し使用により劣化し劣化が進み容量が減っていて使用困難な電池であると判定される。
【0010】
このように、本願発明では、劣化状況を良好に反映する、満充電直後の放電処理実施後の電圧回復挙動において、回復状態量に関し予め想定された2つのしきい値を用い電池の劣化程度を判定することができる。これにより、予め設けた専用の劣化判定モードへ移行して長い時間をかけて電池の劣化検出を行う必要がある従来の方法と異なり、満充電直後に迅速に2次電池の劣化検出を行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、長い時間をかけることなく迅速に2次電池の劣化検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態の印字装置である、携帯用小型プリンタ装置の外観を表す概略斜視図である。
【図2】携帯用小型プリンタ装置の本体ケースの概略平面図である。
【図3】携帯用小型プリンタ装置に装着される用紙パッケージの斜視図である。
【図4】携帯用小型プリンタ装置の本体ケースのピックアップローラ部の斜視図である。
【図5】携帯用小型プリンタ装置の側断面図である。
【図6】携帯用小型プリンタ装置のブロック図である。
【図7】充電式電池の放電特性を表すグラフである。
【図8】CPUによって実行される劣化状況判定処理を説明するための、図7中A部の拡大図に相当するグラフである。
【図9】CPUによって実行される劣化状況判定処理の手順を表すフローチャートである。
【図10】図9のステップS350の詳細手順を表すフローチャートである。
【図11】液晶表示部による充電式電池の劣化状況の表示例を表す図である。
【図12】本発明の第2実施形態のCPUによって実行される劣化状況判定処理を説明するための、図7中A部の拡大図に相当するグラフである。
【図13】本発明の第2実施形態のCPUによって実行される、図9のステップS350の詳細手順を表すフローチャートである。
【図14】本発明の第3実施形態のCPUによって実行される劣化状況判定処理を説明するための、図7中A部の拡大図に相当するグラフである。
【図15】本発明の第3実施形態のCPUによって実行される、図9のステップS350の詳細手順を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0014】
まず、本発明の第1実施形態を図1〜図11により説明する。
【0015】
図1〜図5において、本実施形態の印字装置である携帯用小型プリンタ装置1は、平面視A6サイズ又はA7サイズ程度の大きさで厚みが略1cm程度あるいはそれ以上の上面開放箱型の本体ケース2を有している。本体ケース2の上面には、固定カバー3と回動可能な蓋体13とが並んで設けられている。本体ケース2内には、カットシート状の被印字媒体としての感熱紙4を複数枚収納した用紙パッケージ5を収納する用紙収容部6が形成されている。用紙収容部6は、上記蓋体13により覆われている。また、本体ケース2内における固定カバー3の近傍には、後に詳述する印刷機構部7としてのサーマルヘッド8、プラテンローラ9、ペーパーガイド10や、ピックアップローラ11及び分離ブロック12等が配置されている。プラテンローラ9及びピックアップローラ11は、感熱紙4を搬送する搬送手段を構成している。
【0016】
サーマルヘッド8は、ラインヘッド型の印字手段であり、プラテンローラ9との間に挟まれて搬送される感熱紙4にライン毎に文字や画像等を印刷する。1ライン印刷する際の印刷幅は、感熱紙4の用紙幅に略等しく設定されている。サーマルヘッド8及びプラテンローラ9は、A6サイズ又はA7サイズ程度の感熱紙4の短辺方向の長さを有している。サーマルヘッド8を印刷ヘッドとして用いるのは、被印字媒体として感熱紙4を用いることにより、インクやインクリボンの消耗品が不要であり、かつそのための機構を省略でき、携帯用小型プリンタ装置1をコンパクトにできるからである。
【0017】
感熱紙4としては、サーマルヘッド8の加熱により発色する発色層を有する感熱発色タイプのものや、過熱により穿孔される穿孔層を基材上に積層した感熱穿孔タイプのもの等、種々のものを使用できる。
【0018】
上記用紙収容部6における上記印刷機構部7に近い側に、上記ピックアップローラ11と上記分離ブロック12とが配置されている。用紙収容部6内に収容された用紙パッケージ5は、上記閉止した蓋体13の本体内面側に設けた板バネ等の付勢手段15を介して用紙収容部6の底板6aに向けて付勢される。用紙パッケージ5における積層した感熱紙4のうち最下層の感熱紙4がピックアップローラ11に当接付勢される。このピックアップローラ11の回転駆動と分離ブロック12の案内係止面(不図示)との協働により、最下層の感熱紙4のみが分離ブロック12の下端とガイド板17との隙間を通過する。分離ブロック12に隣接して上記プラテンローラ9が回動可能に設けられ、プラテンローラ9の外周面に押圧コイルバネ等の付勢手段16により上記ペーパーガイド10が付勢されている。ピックアップローラ11と分離ブロック12の案内係止面(不図示)により、用紙パッケージ5から1枚だけ分離搬送された感熱紙4がプラテンローラ9とペーパーガイド10との間に搬送される。
【0019】
ペーパーガイド10とサーマルヘッド8の下面とにより、上記用紙収容部6から分離搬送された感熱紙4は横向きU字状に反転されて搬送され、プラテンローラ9の印字位置まで搬送される。サーマルヘッド8の背面(上面)側には、プラテンローラ9側に付勢するコイルスプリング19のバネ掛け部が係止され、サーマルヘッド8の印字部がプラテンローラ9に当接している。そして、サーマルヘッド8により感熱紙4の上面に印字が行われ、分離ブロック12の上面と固定カバー3の端縁との隙間20から蓋体13の外側に感熱紙4が排紙される。
【0020】
プラテンローラ9及びピックアップローラ11の駆動機構は、本体ケース2の長辺に沿う一方の内側面(実施形態では図2に示す感熱紙4の搬送方向側)に配置された駆動モータ22と歯車伝動機構(ギヤ列)23とからなる。プラテンローラ9の直径をピックアップローラ11の直径よりも大きくすることで、プラテンローラ9の箇所の用紙搬送速度をピックアップローラ11の箇所の用紙搬送速度より大きく設定してピックアップローラ11と分離ブロック12との箇所での用紙分離をゆっくり行い、プラテンローラ9による用紙搬送ひいては印字速度を高速化している。そのために、プラテンローラ9箇所での高速搬送に対してピックアップローラ11が連れ回り可能とするワンウェイクラッチ(図示せず)をギヤ列のプラテンローラ9より下流側に設けている。本体ケース2の一対の長辺に沿う内面には、ペーパーガイド10からプラテンローラ9側に延びる案内支持ブロック24が固定されている。
【0021】
パソコン等の外部機器53(後述)からUSB端子等を介して印字指令及び画像データ(印刷データ)を携帯用小型プリンタ装置1に送ると、駆動モータ22が回転駆動し、ピックアップローラ11及びプラテンローラ9が同時に回転し始める。そして、ピックアップローラ11の回転により、上記積層された感熱紙4のうち最下層の感熱紙4の先端のみが分離ブロック12に衝突する。これにより、最下層の感熱紙4のみが分離されて、分離ブロック12の下面とガイド板17との間に搬送される。そして、プラテンローラ9とペーパーガイド10との間に挟持された感熱紙4は、回転するプラテンローラ9とペーパーガイド10にて挟持搬送されてサーマルヘッド8方向に移動し、サーマルヘッド8により感熱紙4の表面に所望の印字が行われる。その後、固体カバー3と分離ブロック12の背面との隙間20から、印字の行われた感熱紙4が携帯用小型プリンタ装置1外に排紙される。
【0022】
図6において、携帯用小型プリンタ装置1はCPU41を有し、このCPU41には、ROM42(特性記憶手段)、SRAM43、電源SW回路44、電池電圧検出回路45、モータ駆動回路46、サーマルヘッド制御回路47、液晶表示部48、USB I/F駆動回路49、操作部51が接続されている。モータ駆動回路46には上記駆動モータ22が接続され、サーマルヘッド制御回路47には上記サーマルヘッド8が接続されている。モータ駆動回路46及びサーマルヘッド制御回路47には、電池収納部50aに収納された充電式電池50から電力が供給される。すなわち、これらモータ駆動回路46及びサーマルヘッド制御回路47が、各請求項記載の駆動源を構成している。
【0023】
ROM42には、後述する充電式電池50の劣化状況の判定を実行するためのプログラムと、充電式電池50の劣化状況の判定を実行する際に使用する第1しきい値及び第2しきい値(後述)とが記憶されている。SRAM43は印字データを展開するときのワークエリアとして使用する。電池電圧検出回路45は、充電式電池50の電圧を検出する。
【0024】
モータ駆動回路46は、上記駆動モータ22を駆動する回路であり、サーマルヘッド制御回路47は、上記サーマルヘッド8の発熱体部を制御する回路である。なお、この例では、サーマルヘッド8は、後述する放電回路を有している。USB I/F駆動回路49は、携帯用小型プリンタ装置1へ印刷信号を発信する外部機器53とUSB規格に基づいた通信を行うためのインターフェース回路であり、外部機器53は、USBコネクタ49aを介してUSB I/F駆動回路49と接続されている。また、電源SW回路44は、携帯用小型プリンタ装置1の電源のON/OFFを行う回路である。液晶表示部48は、電池劣化判定に係るユーザへの指示事項や電池劣化判定結果を表示し、ユーザに対して報知するための表示手段である。
【0025】
充電式電池50は、例えばニッケル水素電池又はリチウムイオン電池などの2次電池であり、当該充電式電池59に対する充電処理(急速充電)を行うための充電回路71に接続される。充電回路71はACアダプタ70によって外部電源と接続可能となっている。
【0026】
上記した基本構成において、本実施形態の最大の特徴は、劣化状況を良好に反映する、満充電直後に放電処理を実施し、その放電処理後の電圧回復挙動により充電式電池50の劣化程度を判定する点にある。以下、この詳細について説明する。
【0027】
<劣化判定処理の概要>
本実施形態の携帯用小型プリンタ装置1においては、前述のようにして、プラテンローラ9及びピックアップローラ11により搬送される感熱紙4に対しサーマルヘッド8により所望の印刷が行われる。サーマルヘッド8を駆動制御するサーマルヘッド制御回路47や、ピックアップローラ11及びプラテンローラ9を駆動する駆動モータ22を駆動制御するモータ駆動回路46への電力供給は、電池収納部50aに収納された充電式電池50によって行われる。この充電式電池50は、充電使用が繰り返されることによって劣化し、内部抵抗が大きくなる。そこで、本実施形態では、充電式電池50が劣化したかどうかを、満充電直後において負荷を加えて放電を行い電圧が降下した後の、負荷を解放した状態での電圧回復挙動によって見分けることができる。
【0028】
すなわち、本実施形態では、まず充電式電池50への充電処理が行われ、充電式電池50を満充電状態とする(図7参照)。このときの満充電状態の検出は、適宜の公知の手法で行えば足りる(詳細は後述)。満充電状態が検出されたら、引き続いてその満充電状態の充電式電池50に対し負荷が所定の短時間範囲で付与される。例えば、満充電後において所定の負荷を例えば10秒加える(図8参照)。その後、負荷を解放して放電処理を行う。このとき、負荷を解放した直後の電圧回復挙動は、劣化が大きいほど緩慢になる。
【0029】
そこで、本実施形態では、上記のようにして放電処理が終了したとき、当該放電終了時の電圧検出値Voが取得され、さらに当該放電終了後所定時間Ta経過時の電圧検出値V1が取得される。そして、電圧回復に関する所定の回復状態量として、上記Ta経過時の電圧検出値V1と放電終了時の電圧検出値Voとの電圧差V1−Voが算出される。このとき、ROM42に、電池劣化程度が小さいと判定するための上記第1しきい値としての第1電位差Vb(例えば0.08[V])と、電池劣化程度が大きいと判定するための上記第2しきい値としての第2電位差Va(例えば0.06[V])と、が記憶されている。そして、上記電圧差V1−Voと、上記第1電位差Vb及び第2電位差Vaとの大小が比較されてその比較結果に基づき、充電式電池50の劣化程度が判定される。
【0030】
図8中、実線で示す曲線は劣化が少ない電池の特性の例である。この場合、図示のように、負荷解放後の電圧値の回復が鋭いので、上記検出された電圧差V1−Voが上記第1電圧差Vbより大きくなる。一方、図8中、一点鎖線で示す曲線は劣化が進み容量が減っている電池の特性の例である。この場合、図示のように、負荷解放後の電圧値の回復が鈍い(緩慢である)ので、上記検出された電圧差V1−Voが上記第2電圧差Vaより小さくなる。なお、図示を省略しているが、上記の中間の特性、すなわち、上記検出される電圧差V1−Voが第2電圧差Va以上第1電圧差Vb以下の中間領域である場合には、劣化が進みつつある電池であるとみなすことができる。
【0031】
本実施形態では、以上のようにして、電圧差V1−Voが、上記第1電圧差Vbより大きいか(言い換えれば第1電圧差Vbから、上記中間領域と反対側の領域に属するか)、上記中間領域に属するか、上記第2電圧差Vaより小さいか(言い換えれば第2電圧差Vaから、上記中間領域と反対側の領域に属するか)、に応じて、劣化が少なく十分な容量がある電池であるか、劣化が進みつつある要注意状態の電池であるか、劣化が進み容量が減っていて使用困難な電池であるか、が判別される。
【0032】
<制御手順>
上記内容を実行するためにCPU41が実行する制御手順を、図9及び図10により説明する。
【0033】
図9において、まずステップS300で、CPU41の制御により、電池電圧検出回路45で充電式電池50の出力電圧を検出しつつ、上記充電回路71によって、外部電源からの電力を用いて充電式電池50への充電処理が行われる。このステップS300が、各請求項記載の充電手段として機能する。
【0034】
そして、ステップS310において、CPU41は、充電式電池50が満充電状態であるかどうかを判定する。例えば、充電式電池50の種類がニッケル水素電池である場合には、充電式電池50の電圧(電池電圧検出回路45により検出される)が略一定値なったこと、若しくは、単位時間当たりの温度上昇率の変化、若しくは、満充電に十分な時間の経過等によって検出すればよい。充電式電池50の種類がリチウムイオン電池である場合には、定電流充電時には規定電圧値を検出し(電池電圧検出回路45により検出される)、定電圧充電時には規定電流を検出すればよい。これにより、電池収納部に収納された充電式電池50に対し充電処理が行われ満充電状態になったことを精度よく確実に検出することができる。なお、このステップS310が、各請求項記載の満充電検出手段として機能する。
【0035】
充電式電池50が満充電状態でない場合はステップS310の判定が満たされず(S310:NO)、ステップS300に戻って、満充電状態となるまで充電処理が続行される。充電式電池50が満充電状態である場合にはステップS310の判定が満たされ(S310:YES)、ステップS320に移る。
【0036】
ステップS320では、CPU41は、電池電圧検出回路45により検出された充電式電池50の電圧検出値に基づく前述の電圧差を、ROM42に記憶された上記第1電位差及び第2電位差と比較することで、充電式電池50の劣化状況を判定する劣化状況判定処理を行う。このステップS320については、後で詳述する。
【0037】
その後、ステップS330において、CPU41は、充電式電池50の劣化状況(後述のステップS470、ステップS490、ステップS510、ステップS520での設定内容)を液晶表示部48に表示させ、このフローを終了する。
【0038】
上記ステップS320の劣化状況判定処理の詳細を図10により説明する。図10において、まずステップS400で、CPU41がサーマルヘッド8の上記放電回路を制御して充電式電池50に対し短時間所定の負荷を付与し、放電処理を行う。なお、このステップS400が、各請求項記載の放電手段として機能する。なお、充電式電池50の放電処理は、サーマルヘッド8以外の抵抗負荷等を用いて行ってもよい。
【0039】
その後、ステップS410において、CPU41は、電池電圧検出回路45により検出された充電式電池50の電圧値Voを取得する。その後、ステップS420に移る。
【0040】
ステップS420では、CPU41は、上記放電回路を制御して充電式電池50に対する負荷の付与を停止し、充電式電池50の負荷を開放する。
【0041】
その後、ステップS430において、CPU41は、上記所定の時間Ta(例えば、3〜4分程度)が経過したかどうかを判定する。時間Taが経過するまではステップS430の判定が満たされず(S430:NO)ループ待機し、時間Taが経過したらステップS430の判定が満たされ(S430:YES)、ステップS440に移る。
【0042】
ステップS440では、上記ステップS410と同様、CPU41は、電池電圧検出回路45により検出された充電式電池50の電圧値V1を取得する。その後、ステップS450に移る。
【0043】
ステップS450では、CPU41は、上記ステップS440で取得された電圧値V1と上記ステップS410で取得された電圧値Voとに基づき、電圧差V1−Voを算出する。なお、このステップS450が、各請求項記載の第1電圧差検出手段として機能するとともに、状態量検出手段としても機能する。その後、ステップS460に移る。
【0044】
ステップS460では、CPU41は、ステップS450で算出された電圧差V1−Voが、上記ROM42に記憶された第2電位差Vaよりも小さいかどうかを判定する。V1−Vo<Vaの場合はステップS460の判定が満たされ(S460:YES)、ステップS470に移る。
【0045】
ステップS470では、CPU41は、充電式電池50の劣化程度が大きく、繰り返し使用により劣化が進み容量が減っていて使用困難な状態である(例えば実容量50%)と設定し、このルーチンを終了する。
【0046】
一方、ステップS460において、V1−Vo≧Vaの場合は判定が満たされず(S460:NO)、ステップS480に移る。
【0047】
ステップS480では、CPU41は、上記電圧差V1−Voが、上記ROM42に記憶された、第2電位差Va以上でかつ第1電位差Vb以下であるかどうかを判定する。Va≦V1−Vo≦Vbの場合はステップS480の判定が満たされ(S480:YES)、ステップS490に移る。
【0048】
ステップS490では、CPU41は、充電式電池50の劣化程度が若干認められる、要注意状態(例えば実容量80%)と設定し、このルーチンを終了する。
【0049】
一方、ステップS480において、V1−Vo>Vbの場合は判定が満たされず(S480:NO)、ステップS500に移る。
【0050】
ステップS500では、CPU41は、上記電圧差V1−VoがVbを超える値であるかどうかを判定する。Vb<V1−Voの場合はステップS500の判定が満たされ(S500:YES)、ステップS510に移る。
【0051】
ステップS510では、CPU41は、充電式電池50の劣化程度が十分に小さく、劣化が少なく十分な容量がある(例えば実容量100%)と設定し、このルーチンを終了する。
【0052】
一方、ステップS500において、V1−Vo≦Vbの場合は判定が満たされず(S500:NO)、ステップS520に移る。ステップS520では、エラーと設定し、このルーチンを終了する。
【0053】
なお、上記ステップS460、ステップS470、ステップS480、ステップS490、ステップS500、及びステップS510が、各請求項記載の劣化判定手段として機能する。
【0054】
<劣化状況の表示>
液晶表示部48による充電式電池50の劣化状況の表示について、図11により説明する。図11において、液晶表示部48は、充電式電池50の劣化程度に対応した全体大きさで表される実容量図像61と、この実容量図像61中に占める割合(数)で充電式電池50の電力残量を表す残量図像62とを表示する。実容量図像61は、この例では電池マークの外形で表される。残量図像62は、電池マーク外形の中に存在する複数の矩形領域で表される。表示される矩形領域の数が多くなるほど、充電式電池50の電力残量が多くなる。
【0055】
図11の左側の表示例は、充電式電池50の劣化程度が十分に小さい(前述の実容量100%である)場合であって、かつ、電力残量が半分よりも少ない状態を表示したものである。図11の中央の表示例は、充電式電池50の劣化程度が若干認められる(実容量80%である)場合であって、かつ、電力残量が2/3程度である状態を表示したものである。図11の右側の表示例は、充電式電池50の劣化程度が大きい(実容量50%である)場合であって、かつ、電力残量が多い(ほぼ満量)状態を表示したものである。
【0056】
このように充電式電池50の劣化状況を実容量図像61及び残量図像62で表すことにより、ユーザに対し、充電式電池50の劣化状態を直感的に分かりやすく報知すると共に、その劣化状態の充電式電池50における電力残量も併せて報知することができる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態の携帯用小型プリンタ装置1においては、劣化状況を良好に反映する、満充電直後の放電処理実施後の電圧回復挙動において、電圧差V1−Voに関し予め想定された2つのしきい値Va,Vbを用い充電式電池50の劣化程度を判定する。これにより、予め設けた専用の劣化判定モードへ移行して長い時間をかけて充電式電池50の劣化検出を行う必要がある従来の方法と異なり、満充電直後に迅速に2次電池である充電式電池50の劣化検出を行うことができる。
【0058】
本発明の第2実施形態を図12及び図13により説明する。上記第1実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。本実施形態は、CPU41によって実行される充電式電池50の劣化程度の判定処理が上記第1実施形態と異なる。
【0059】
本実施形態では、上記第1実施形態と同様の放電処理を開始するときに電圧検出値Vo′が取得され、また、当該放電処理の終了後上記所定時間Ta経過時の電圧検出値V1が取得される。そして、電圧回復に関する所定の回復状態量として、上記放電開始時の電圧検出値Vo′と上記放電終了後Ta経過時の電圧検出値V1との電圧差Vo′−V1が算出される。このとき、ROM42に、電池劣化程度が小さいと判定するための上記第1しきい値としての第3電位差Va′(例えば0.02[V])と、電池劣化程度が大きいと判定するための上記第2しきい値としての第4電位差Vb′(例えば0.04[V])と、が記憶されている。そして、上記電圧差Vo′−V1と、上記第3電位差Va′及び第4電位差Vb′との大小が比較されてその比較結果に基づき、充電式電池50の劣化程度が判定される。
【0060】
図12中、実線で示す曲線は劣化が少ない電池の特性の例である。この場合、図示のように、放電開始時の電圧Vo′=8.40[V]程度、放電終了時の電圧Vo=8.30[V]程度となるとともに、負荷解放後の電圧値の回復が鋭いので、上記検出された電圧差Vo′−V1が上記第3電圧差Va′より小さくなる。一方、図12中、一点鎖線で示す曲線は劣化が進み容量が減っている電池の特性の例である。この場合、図示のように、放電開始時の電圧Vo′=8.40[V]程度、放電終了時の電圧Vo=8.28[V]程度となるとともに、負荷解放後の電圧値の回復が鈍い(緩慢である)ので、上記検出された電圧差Vo′−V1が上記第4電圧差Vb′より大きくなる。なお、図示を省略しているが、上記の中間の特性、すなわち、上記検出される電圧差Vo′−V1が第3電圧差Va′以上第4電圧差Vb′以下の中間領域である場合には、劣化が進みつつある電池であるとみなすことができる。
【0061】
本実施形態では、以上のようにして、電圧差Vo′−V1が、上記第3電圧差Va′より小さいか(言い換えれば第3電圧差Va′から、上記中間領域と反対側の領域に属するか)、上記中間領域に属するか、上記第4電圧差Vb′より大きいか(言い換えれば第4電圧差Vb′から、上記中間領域と反対側の領域に属するか)、に応じて、劣化が少なく十分な容量がある電池であるか、劣化が進みつつある要注意状態の電池であるか、劣化が進み容量が減っていて使用困難な電池であるか、が判別される。
【0062】
上記内容を実行するために本実施形態におけるCPU41が実行する制御内容は、上記図9に示したものと概ね同等であり、上記図10に対応する部分(図9のステップS320の劣化状況判定処理の詳細)のみが異なる。以下その劣化状況判定処理の詳細手順を、図13により説明する。
【0063】
図13において、まずステップS610において、上記図10のステップS410と同様、CPU41は、電池電圧検出回路45により検出された充電式電池50の電圧値Vo′を取得する。その後、ステップS620に移る。
【0064】
ステップS620では、上記図10のステップS400と同様、CPU41がサーマルヘッド8の上記放電回路を制御して充電式電池50に対し短時間所定の負荷を付与し、放電処理を行う。なお、本実施形態では、このステップS620が、各請求項記載の放電手段として機能する。
【0065】
その後、ステップS630で、上記図10のステップS420と同様、CPU41は、上記放電回路を制御して充電式電池50に対する負荷の付与を停止し、充電式電池50の負荷を開放する。
【0066】
その後、ステップS640に移り、上記図10のステップS430と同様、CPU41は、上記所定の時間Ta(例えば、3〜4分程度)が経過したかどうかを判定する。時間Taが経過したら判定が満たされ(S640:YES)、ステップS650に移る。
【0067】
ステップS650では、上記図10のステップS440と同様、CPU41は、電池電圧検出回路45により検出された充電式電池50の電圧値V1を取得する。その後、ステップS660に移る。
【0068】
ステップS660では、CPU41は、上記ステップS650で取得された電圧値V1と上記ステップS610で取得された電圧値Vo′とに基づき、電圧差Vo′−V1を算出する。なお、このステップS650が、各請求項記載の第2電圧差検出手段として機能するとともに、本実施形態における状態量検出手段としても機能する。その後、ステップS670に移る。
【0069】
ステップS670では、CPU41は、ステップS660で算出された電圧差Vo′−V1が、上記ROM42に記憶された第4電位差Vb′よりも大きいかどうかを判定する。Vo′−V1>Vb′の場合はステップS670の判定が満たされ(S670:YES)、ステップS680に移る。
【0070】
ステップS680では、CPU41は、充電式電池50の劣化程度が大きく、繰り返し使用により劣化し劣化が進み容量が減っていて使用困難な状態である(例えば実容量50%)と設定し、このルーチンを終了する。
【0071】
一方、ステップS670において、Vo′−V1≦Vb′の場合は判定が満たされず(S670:NO)、ステップS690に移る。
【0072】
ステップS690では、CPU41は、上記電圧差Vo′−V1が、上記ROM42に記憶された、第3電位差Va′以上でかつ第4電位差Vb′以下であるかどうかを判定する。Va′≦Vo′−V1≦Vb′の場合はステップS690の判定が満たされ(S690:YES)、ステップS700に移る。
【0073】
ステップS700では、CPU41は、充電式電池50の劣化程度が若干認められる、要注意状態(例えば実容量80%)と設定し、このルーチンを終了する。
【0074】
一方、ステップS690において、Vo′−V1<Va′の場合は判定が満たされず(S690:NO)、ステップS710に移る。
【0075】
ステップS710では、CPU41は、上記電圧差Vo′−V1がVa′未満であるかどうかを判定する。Vo′−V1<Va′の場合はステップS710の判定が満たされ(S710:YES)、ステップS720に移る。
【0076】
ステップS720では、CPU41は、充電式電池50の劣化程度が十分に小さく、劣化が少なく十分な容量がある(例えば実容量100%)と設定し、このルーチンを終了する。
【0077】
一方、ステップS710において、Vo′−V1≧Va′の場合は判定が満たされず(S710:NO)、ステップS730に移る。ステップS730では、エラーと設定し、このルーチンを終了する。
【0078】
なお、上記ステップS670、ステップS680、ステップS690、ステップS700、ステップS710、及びステップS720が、本実施形態における、各請求項記載の劣化判定手段として機能する。
【0079】
本実施形態においても、上記第1実施形態と同様の効果を得る。すなわち、満充電直後の放電処理実施後の電圧回復挙動において、電圧差Vo′−V1に関し予め想定された2つのしきい値Va′,Vb′を用い充電式電池50の劣化程度を判定する。これにより、予め設けた専用の劣化判定モードへ移行して長い時間をかけて充電式電池50の劣化検出を行う必要がある従来の方法と異なり、満充電直後に迅速に2次電池である充電式電池50の劣化検出を行うことができる。
【0080】
なお、実容量50%、80%、100%それぞれのときの液晶表示部48での表示については、上記図11を用いて説明した第1実施形態のものと同様で足りるので、詳細な説明を省略する。
【0081】
本発明の第3実施形態を図14及び図15により説明する。上記第1及び第2実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。本実施形態は、CPU41によって実行される充電式電池50の劣化程度の判定処理が上記第1実施形態及び第2実施形態と異なる。
【0082】
本実施形態では、上記第1及び第2実施形態と同様の放電処理を開始するときに電圧検出値Vo′が取得され、また、当該放電処理の終了後、時間の経過と共に随時電圧検出値Vtが取得される。そして、電圧回復に関する所定の回復状態量として、上記放電終了後、上記電圧検出値Vtが予め定められた所定の値(例えば上記Vo′−△Vp;△Vpは0.02[V]程度の値)に達するまでの時間Tが検出される。このとき、ROM42に、電池劣化程度が小さいと判定するための上記第1しきい値としての第1時間Tyと、電池劣化程度が大きいと判定するための上記第2しきい値としての第2時間Txと、が記憶されている。そして、上記時間Tと、上記第1時間Tx及び第2時間Tyとの大小が比較されてその比較結果に基づき、充電式電池50の劣化程度が判定される。
【0083】
図14中、実線で示す曲線は劣化が少ない電池の特性の例である。この場合、図示のように、放電開始時の電圧Vo′=8.40[V]程度、放電終了時の電圧Vo=8.30[V]程度となるとともに、負荷解放後の電圧値の回復が鋭いので、上記Vt=Vo′−△Vpの範囲に到達する時間Tは上記第1時間Tyより小さく(短く)なる。一方、図14中、一点鎖線で示す曲線は劣化が進み容量が減っている電池の特性の例である。この場合、図示のように、放電開始時の電圧Vo′=8.40[V]程度、放電終了時の電圧Vo=8.28[V]程度となるとともに、負荷解放後の電圧値の回復が鈍い(緩慢である)ので、上記Vt=Vo′−△Vpの範囲に到達する時間Tは上記第2時間Txより大きく(長く)なる。なお、図示を省略しているが、上記の中間の特性、すなわち、上記時間Tが第1時間Ty以上第2時間Tx以下の中間領域である場合には、劣化が進みつつある電池であるとみなすことができる。
【0084】
本実施形態では、以上のようにして、時間Tが、上記第1時間Tyより小さいか(言い換えれば第1時間Tyから、上記中間領域と反対側の領域に属するか)、上記中間領域に属するか、上記第2時間Txより大きいか(言い換えれば第2時間Txから、上記中間領域と反対側の領域に属するか)、に応じて、劣化が少なく十分な容量がある電池であるか、劣化が進みつつある要注意状態の電池であるか、劣化が進み容量が減っていて使用困難な電池であるか、が判別される。
【0085】
上記内容を実行するために本実施形態におけるCPU41が実行する制御内容は、上記図9に示したものと概ね同等であり、上記図10に対応する部分(図9のステップS320の劣化状況判定処理の詳細)のみが異なる。以下その劣化状況判定処理の詳細手順を、図15により説明する。
【0086】
図15において、まずステップS810において、上記同様、CPU41は、充電式電池50の電圧値Vo′を取得する。その後、ステップS820に移る。
【0087】
ステップS820では、上記同様、CPU41の制御により、充電式電池50に対し短時間所定の負荷を付与し、放電処理を行う。なお、本実施形態では、このステップS820が、各請求項記載の放電手段として機能する。
【0088】
その後、ステップS830で、上記同様、CPU41は、充電式電池50の負荷を開放する。
【0089】
その後、ステップS840に移り、上記図10のステップS410と同様、CPU41は、この時点における、電池電圧検出回路45により検出された充電式電池50の電圧値Vtを取得する。その後、ステップS850に移る。
【0090】
ステップS850では、CPU41は、上記ステップS850で取得された電圧値Vtが、所定の値(この例では前述したように上記Vo′±△Vpの範囲の値)に達したかどうかを判定する。電圧値Vtが所定の値に達するまでは判定が満たされず(S850:NO)ステップS840に戻って同様の手順を繰り返す。電圧値Vtが所定の値に達したらステップS850の判定が満たされ(S850:YES)、ステップS860に移る。
【0091】
ステップS860では、CPU41は、例えば適宜の箇所に設けられたタイマー等のカウント値を用いて、上記ステップS830で負荷を解放したときから上記ステップS850の判定が満たされたときまでの経過時間Tを算出する。なお、このステップS860が、各請求項記載の時間検出手段として機能するとともに、本実施形態における状態量検出手段としても機能する。その後、ステップS870に移る。
【0092】
ステップS870では、CPU41は、ステップS860で算出された時間Tが、上記ROM42に記憶された第2時間Txよりも大きい(長い)かどうかを判定する。T>Txの場合はステップS870の判定が満たされ(S870:YES)、ステップS880に移る。
【0093】
ステップS880では、CPU41は、充電式電池50の劣化程度が大きく、繰り返し使用により劣化し劣化が進み容量が減っていて使用困難な状態である(例えば実容量50%)と設定し、このルーチンを終了する。
【0094】
一方、ステップS870において、T≦Txの場合は判定が満たされず(S870:NO)、ステップS890に移る。
【0095】
ステップS890では、CPU41は、上記時間Tが、上記ROM42に記憶された、第1時間Ty以上でかつ第2時間Tx以下であるかどうかを判定する。Ty≦T≦Txの場合はステップS890の判定が満たされ(S890:YES)、ステップS900に移る。
【0096】
ステップS900では、CPU41は、充電式電池50の劣化程度が若干認められる、要注意状態(例えば実容量80%)と設定し、このルーチンを終了する。
【0097】
一方、ステップS890において、T<Tyの場合は判定が満たされず(S890:NO)、ステップS910に移る。
【0098】
ステップS910では、CPU41は、上記時間TがTy未満であるかどうかを判定する。T<Tyの場合はステップS910の判定が満たされ(S910:YES)、ステップS920に移る。
【0099】
ステップS920では、CPU41は、充電式電池50の劣化程度が十分に小さく、劣化が少なく十分な容量がある(例えば実容量100%)と設定し、このルーチンを終了する。
【0100】
一方、ステップS910において、T≧Tyの場合は判定が満たされず(S910:NO)、ステップS930に移る。ステップS930では、エラーと設定し、このルーチンを終了する。
【0101】
なお、上記ステップS870、ステップS880、ステップS890、ステップS900、ステップS910、及びステップS920が、本実施形態における、各請求項記載の劣化判定手段として機能する。
【0102】
本実施形態においても、上記第1及び第2実施形態と同様の効果を得る。すなわち、満充電直後の放電処理実施後の電圧回復挙動において、放電終了後に所定電圧値に到達するまでの経過時間Tに関し予め想定された2つのしきい値Tx,Tyを用い充電式電池50の劣化程度を判定する。これにより、予め設けた専用の劣化判定モードへ移行して長い時間をかけて充電式電池50の劣化検出を行う必要がある従来の方法と異なり、満充電直後に迅速に2次電池である充電式電池50の劣化検出を行うことができる。
【0103】
なお、実容量50%、80%、100%それぞれのときの液晶表示部48での表示は、上記同様で足りるので、詳細な説明を省略する。
【0104】
なお、以上において、図6等に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
【0105】
また、図9、図10、図13、図15等に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0106】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0107】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0108】
1 携帯用小型プリンタ装置(印字装置)
4 感熱紙(被印字媒体)
8 サーマルヘッド(印字手段)
22 駆動モータ
41 CPU
42 ROM(特性記憶手段)
45 電池電圧検出回路
46 モータ駆動回路(駆動源)
47 サーマルヘッド制御回路(駆動源)
48 液晶表示部(表示手段)
50 充電式電池
50a 電池収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印字媒体に所望の印字を行う印字手段と、
前記印字手段を駆動する駆動源と、
前記駆動源に電力を供給する、充電可能な電池を収納する電池収納部と、
前記電池収納部に収納された前記電池に対し充電処理を行う充電手段と、
前記充電手段の前記充電処理により前記電池が満充電状態になったことを検出する満充電検出手段と、
前記満充電検出手段で前記電池の前記満充電状態が検出されたとき、当該満充電状態である前記電池に対し、所定の負荷を所定時間範囲付与することにより、放電処理を行う放電手段と、
前記電池の前記放電処理終了後の電圧回復に関する所定の回復状態量を検出する状態量検出手段と、
前記回復状態量に基づいて、電池劣化程度が小さいと判定するための第1しきい値、及び、電池劣化程度が大きいと判定するための第2しきい値、を記憶した特性記憶手段と、
前記電池の前記放電処理終了後、前記状態量検出手段により検出される前記回復状態量が、前記第1しきい値と前記第2しきい値との間の中間領域に属するか、前記第1しきい値から前記中間領域と反対側の領域に属するか、前記第2しきい値から前記中間領域と反対側の領域に属するか、に応じて、前記電池の劣化程度を判定する劣化判定手段と、
を有することを特徴とする印字装置。
【請求項2】
請求項1記載の印字装置において、
前記状態量検出手段は、
前記回復状態量として、前記電池の前記放電処理終了時の前記電池の出力電圧値と、前記電池の前記放電処理終了後所定時間経過後の前記電池の出力電圧値との、電圧差を検出する第1電圧差検出手段であり、
前記特性記憶手段は、
前記第1しきい値としての第1電圧差、前記第2しきい値としての第2電圧差を記憶しており、
前記劣化判定手段は、
前記電池の前記放電処理終了後、前記所定時間経過後に前記第1電圧差検出手段により検出される前記電池の前記電圧差が、前記第2電圧差以上前記第1電圧差以下であるか、前記第1電圧差より大きいか、前記第2電圧差より小さいか、に応じて、前記電池の劣化程度を判定する
ことを特徴とする印字装置。
【請求項3】
請求項1記載の印字装置において、
前記状態量検出手段は、
前記回復状態量として、前記電池の前記放電処理開始時の前記電池の出力電圧値と、前記電池の前記放電処理終了後所定時間経過後の前記電池の出力電圧値との、電圧差を検出する第2電圧差検出手段であり、
前記特性記憶手段は、
前記第1しきい値としての第3電圧差、前記第2しきい値としての第4電圧差を記憶しており、
前記劣化判定手段は、
前記電池の前記放電処理終了後、前記所定時間経過後に前記第2電圧差検出手段により検出される前記電池の前記電圧差が、前記第3電圧差以上前記第4電圧差以下であるか、前記第3電圧差より小さいか、前記第4電圧差より大きいか、に応じて、前記電池の劣化程度を判定する
ことを特徴とする印字装置。
【請求項4】
請求項1記載の印字装置において、
前記状態量検出手段は、
前記回復状態量として、前記電池の前記放電処理終了後から前記電池の出力電圧値が所定電圧値に達するまでの時間を検出する時間検出手段であり、
前記特性記憶手段は、
前記第1しきい値としての第1時間、前記第2しきい値としての第2時間を記憶しており、
前記劣化判定手段は、
前記電池の前記放電処理終了後、前記電池の出力電圧値が所定電圧値に達したときに前記時間検出手段により検出される前記時間が、前記第1時間以上前記第2時間以下であるか、前記第1時間より小さいか、前記第2時間より大きいか、に応じて、前記電池の劣化程度を判定する
ことを特徴とする印字装置。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれか1項記載の印字装置において、
前記満充電検出手段は、
前記電池の種類がニッケル水素電池である場合には、前記電池の電圧が略一定値なったことを検出する、若しくは、単位時間当たりの温度上昇率の変化を検出する、若しくは、満充電に十分な時間の経過を検出する手段であり、
前記電池の種類がリチウムイオン電池である場合には、定電流充電時には規定電圧値を検出し、定電圧充電時には規定電流を検出する手段である
ことを特徴とする印字装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−210743(P2012−210743A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76873(P2011−76873)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】