説明

印影の画像を生成する装置及び方法

【課題】印鑑の印面を撮像することにより印影の画像を生成する場合に、生成される印影の画像の精度を向上させる。
【解決手段】印鑑の印面の方向にレンズ212を向けた状態で、これとカメラ本体211とを含むUSBカメラを設置する。また、反射板26aで反射した光がこれと遮光板25との間にできたスリットを通って印面を0°の方向から照射するような位置にLED22aを設置し、同様に、光が印面を120°の方向から照射するような位置、及び、光が印面を240°の方向から照射するような位置にも、それぞれLEDを設置する。これら3つのLEDを順番に点灯し、その都度USBカメラで印面を撮像して、3枚の撮像画像を得る。そして、USB接続された情報処理装置において、3枚の撮像画像の何れにおいても明るい部分を抽出する画像処理を行うことにより、印影画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印影の画像を生成する装置及び方法に関する。特に、本発明は、印鑑の印面を撮影することにより印影の画像を生成する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種手続きのペーパーレス化を促進するために、デジタルフォーム上で情報を入力することは広く行われている。ところが、デジタルフォームに押印する必要がある場合は問題となる。この場合は、紙面に押印し、それをスキャナで読み取って得られた画像をデジタルフォームに貼り付ける方法が一般的であるが、この方法では、真にペーパーレス化が実現されたことにはならない。
こうしたことから、従来、真にペーパーレス化を実現するための方法として、印影面を直接テレビカメラで撮像することにより印影を採取する方法は知られていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
尚、公報記載の技術としては、印鑑をセンサに押し付けることで印影を抽出する技術も知られている(例えば、特許文献2、3参照)。
特許文献1は、印影を印鑑から取得する圧力センサ群と印鑑との隙間を埋める伝圧シート、圧力センサ群にかかる余分な力を吸収して支持体の姿勢を調整するスプリングからなる衝撃緩衝姿勢調整機構、圧力センサからの信号をイメージデータに変換する変換回路を設けた印影入力装置を開示する。
特許文献2は、流体層を挟んで対向する一対の基板と、一方の基板の流体層側に並列して形成された複数の線状導体からなる行配線群と、他方の基板の流体層側に並列して形成された複数の別の線状導体からなる列配線群とを有し、線状導体と別の線状導体とが相互に交差するように配置され、かつ各線状導体の各交差部に静電容量が形成されてなり、行配線群が一方の基板に埋め込まれるとともに、行配線群をなす線状導体が、一方の基板の流体層対向面よりも流体層から離れた側に後退して配置されている面圧分布センサを開示する。そして、この開示面圧分布センサは、例えば印鑑の陰影を取り込むためのセンサとして用いることもできるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−280984号公報
【特許文献2】特開2005−250629号公報
【特許文献3】特開2005−207993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来、印影面(印面)を直接テレビカメラで撮像することにより印影を採取することは知られていた。
しかしながら、印面をカメラで普通に撮影したのでは、印面の文字の部分と彫られた部分とを高精度に区別することができないという問題が生ずる。
尚、特許文献2、3の技術は、印面を直接テレビカメラで撮像する場合のこのような問題に対する解決手段を提供するものではない。
【0006】
本発明の目的は、印鑑の印面を撮像することにより印影の画像を生成する場合に、生成される印影の画像の精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもと、本発明は、印鑑の印面を撮像することにより印影の画像を生成する装置であって、N個(Nは2以上の整数)の方向から印面に、印面の半径以上の長さの影が形成されるような角度で、光を照射することが可能な光照射部と、印面を撮像する撮像部と、N個の方向のうちの1つの方向から印面に光を照射するように光照射部を制御し、光照射部により1つの方向から光が照射された印面を撮像するように撮像部を制御することを、N個の方向について行うことにより、N個の撮像画像を取得する取得部と、取得部により取得されたN個の撮像画像の何れにおいても基準以上の明るさを有する部分を抽出することにより、印影の画像を生成する生成部とを含む、装置を提供する。
【0008】
ここで、光照射部は、N個の発光素子を含み、取得部は、N個の発光素子のうちの1つを点灯させることにより、1つの方向から印面に光を照射するように光照射部を制御する、ものであってよい。或いは、光照射部は、1個の発光素子を含み、取得部は、1個の発光素子を印面に対するN個の相対位置のうちの1つの相対位置に位置付けることにより、1つの方向から印面に光を照射するように光照射部を制御する、ものであってもよい。
また、この装置において、N個の方向の印面を含む仮想平面への投影像であるN個の仮想方向のうちの隣接する2つの仮想方向のなす角度は、何れも(360/N)°であってよい。
更に、この装置において、Nは3であってよい。
【0009】
また、本発明は、印鑑の印面を撮像することにより印影の画像を生成する装置であって、印面を含む仮想平面への投影像が第1の仮想方向である第1の方向から、印面に、印面の半径以上の長さの影が形成されるような角度で、光を照射することが可能な位置に設けられた第1の発光素子と、仮想平面への投影像が第1の仮想方向に対して120°をなす第2の仮想方向である第2の方向から、印面に、印面の半径以上の長さの影が形成されるような角度で、光を照射することが可能な位置に設けられた第2の発光素子と、仮想平面への投影像が第1の仮想方向に対して120°をなし第2の仮想方向とは異なる第3の仮想方向である第3の方向から、印面に、印面の半径以上の長さの影が形成されるような角度で、光を照射することが可能な位置に設けられた第3の発光素子と、印面を撮像することが可能な位置に設けられたカメラと、第1の発光素子を点灯させることにより第1の方向から光が照射された印面をカメラに撮像させることにより、第1の撮像画像を取得し、第2の発光素子を点灯させることにより第2の方向から光が照射された印面をカメラに撮像させることにより、第2の撮像画像を取得し、第3の発光素子を点灯させることにより第3の方向から光が照射された印面をカメラに撮像させることにより、第3の撮像画像を取得する取得部と、取得部により取得された第1の撮像画像、第2の撮像画像、第3の撮像画像の何れにおいても基準以上の明るさを有する部分を抽出することにより、印影の画像を生成する生成部とを含む、装置も提供する。
【0010】
更に、本発明は、印鑑の印面を撮像することにより印影の画像を生成する方法であって、N個(Nは2以上の整数)の方向のうちの1つの方向から、印面に、印面の半径以上の長さの影が形成されるような角度で、光を照射する光照射ステップと、光照射ステップで1つの方向から光が照射された印面を撮像する撮像ステップと、光照射ステップ及び撮像ステップをN個の方向について行うことにより、N個の撮像画像を取得する取得ステップと、取得ステップで取得されたN個の撮像画像の何れにおいても基準以上の明るさを有する部分を抽出することにより、印影の画像を生成する生成ステップとを含む、方法も提供する。
【0011】
更にまた、本発明は、印鑑の印面を撮像することにより印影の画像を生成する装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、コンピュータを、N個(Nは2以上の整数)の方向のうちの1つの方向から、印面に、印面の半径以上の長さの影が形成されるような角度で、光を照射する処理と、1つの方向から光が照射された印面を撮像する処理とを、N個の方向について行うことで得られたN個の撮像画像を取得する取得部と、取得部により取得されたN個の撮像画像の何れにおいても基準以上の明るさを有する部分を抽出することにより、印影の画像を生成する生成部として機能させる、プログラムも提供する。
ここで、このプログラムは、コンピュータを、N個の方向から印面に光を照射することが可能な光照射部が、1つの方向から印面に光を照射する処理と、印面を撮像する撮像部が、光照射部により1つの方向から光が照射された印面を撮像する処理とを、N個の方向について行うように制御する制御部として更に機能させる、ものであってよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、印鑑の印面を撮像することにより印影の画像を生成する場合に、生成される印影の画像の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態における印影画像生成システムの全体構成例を示した図である。
【図2】本発明の実施の形態における印影捕捉装置の構成例を示した図である。
【図3】本発明の実施の形態における印影捕捉装置の構成例を示した図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるLEDからの光の照射角度について説明するための図である。
【図5】光の乱反射等により若干明るくなる領域について説明するための図である。
【図6】明るい領域の位置と光の照射方向との関係について説明するための図である。
【図7】本発明の実施の形態における3枚の静止画像の合成方法について説明するための図である。
【図8】本発明の実施の形態における情報処理装置の機能構成例を示したブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態における情報処理装置の動作例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、本実施の形態の概要について説明する。
本実施の形態では、印鑑の文字が彫られた面(以下、「印面」という)に対して、印鑑の枠及び文字に影ができるように鋭角に光を照射し、情報処理装置に接続されたCCD(Charge Coupled Device)カメラで印面の静止画像を撮影する。このような撮影を光の照射方向を120°刻みで変えながら行い、3枚の静止画像を情報処理装置のメモリに蓄積する。この蓄積された3枚の静止画像を画像処理にて重ね合わせると、3枚の静止画像に共通の明るい部分を抽出でき、その結果、紙面への押印イメージに非常に近い印影画像を非接触で抽出することができる。これにより、情報処理装置上のデジタルフォーム等に押印イメージを重ね合わせることが可能となり、押印を必要とする書類のペーパーレス化が実現できる。また、この押印イメージを登録しておけば、この押印イメージは、紙面への押印イメージとの印鑑照合に利用することもできる。
【0015】
ところで、光の照射方向を120°刻みで変える手法としては、3つの光源を各光源からの光の照射方向が120°刻みで変わるような位置に設置して3つの光源を順番に点灯させる第1の手法、1つの光源からの光の照射方向が120°刻みで変わるような印鑑に対する3つの相対位置を設定して1つの光源を3つの相対位置に順番に位置付ける第2の手法等が考えられる。本実施の形態では、第1の手法を採用するが、第2の手法等を採用してもよい。
【0016】
図1は、本実施の形態における印影画像生成システムの構成例を示したブロック図である。
図示するように、この印影画像生成システムは、情報処理装置10と、印影捕捉装置20とが、USBケーブル30を介して接続されることにより構成されている。
【0017】
情報処理装置10は、演算手段であるCPU(Central Processing Unit)11と、記憶手段であるメモリ12及びハードディスク13と、通信手段であるUSB制御部14とを備える。ここで、CPU11は、OS(Operating System)やアプリケーション等の各種ソフトウェアを実行し、後述する各機能を実現する。また、メモリ12は、各種ソフトウェアやその実行に用いるデータ等を記憶する記憶領域であり、ハードディスク13は、各種ソフトウェアに対する入力データや各種ソフトウェアからの出力データ等を記憶する記憶領域である。更に、USB制御部14は、印影捕捉装置20との間でUSBケーブル30を介して情報を送受信する。
【0018】
印影捕捉装置20は、USBカメラ21と、LED(Light Emitting Diode)22a,22b,22cと、USBLED制御部23と、USBHUB部24とを備える。ここで、USBカメラ21は、USBケーブル30を介して情報処理装置10に接続され、撮像した画像を情報処理装置10に映し出すカメラであり、撮像部の一例である。また、LED22a,22b,22cは、電流が流れることで発光する発光素子である。これらを区別する必要がない場合は、LED22と称することもある。更に、USBLED制御部23は、LED22a,22b,22cに接続された配線上のスイッチのオン/オフを切り替えることにより、LED22a,22b,22cの点灯及び消灯を制御する。尚、LED22a,22b,22cとUSBLED制御部23とを合わせた部分は、光照射部の一例である。更にまた、USBHUB部24は、USBカメラ21による撮像を制御する信号をUSBカメラ21へ、LED22a,22b,22cの点灯及び消灯を制御する信号をUSBLED制御部23へ振り分ける。
【0019】
このような印影画像生成システムにおいて、印影捕捉装置20では、情報処理装置10に接続されたUSBカメラ21を、印面に対向する位置に配置する。
図2は、印影捕捉装置20を印鑑の中心軸及びLED22aを通る切断面で切断したときの断面図である。
【0020】
図示するように、印影捕捉装置20は、USBカメラ21を構成する部品として、カメラ本体211と、レンズ212とを備えている。ここで、レンズ212は、印面を垂直な方向から撮像可能なように、レンズ面が印面に平行になるように設置されている。
また、印影捕捉装置20は、LED22a,22b,22cを備えている。しかしながら、これらのLEDは光の照射方向が互いに120°異なるようになる位置に設置されるため、切断面にはLED22aのみが存在することから、ここでは、LED22aのみを示している。
【0021】
更に、印影捕捉装置20は、レンズ212の前面に、LED22aから印面へ直接光が照射されないようにするための遮光板25を備えている。但し、この遮光板25は、USBカメラ21が印面を撮像可能なように、レンズ212の部分に開口部を有している。
更にまた、印影捕捉装置20は、遮光板25の端部にわずかな間隙を空けて、LED22aから照射された光を印面の方向へ反射する反射板26aを備えている。尚、この遮光板25と反射板26aとの間隙は、LED22aからの光を印面へ直線状に照射させるためのスリットとして機能する。
【0022】
尚、この図では、USBカメラ21を印鑑の上方に設置したが、これには限らない。USBカメラ21は、印鑑の印面を撮像可能な位置であれば、如何なる位置に設置されていてもよい。
また、ここでは、印影捕捉装置20を印鑑の中心軸及びLED22aを通る切断面で切断したときの断面図に示される構成について説明したが、印影捕捉装置20を印鑑の中心軸及びLED22bを通る切断面で切断したときの断面図、及び、印影捕捉装置20を印鑑の中心軸及びLED22cを通る切断面で切断したときの断面図に示される構成についても、同様である。
【0023】
一方、図3は、印影捕捉装置20を印鑑側から見たときの図である。例えば印面を含む仮想平面を考え、印影捕捉装置20のその仮想平面への投影像を印鑑側から見たときの様子を示したものである。ここでは、印鑑側から直接見える部分を実線で示し、印鑑側から直接見えない部分を破線で示している。
図示するように、遮光板25、カメラ本体211、レンズ212の外郭は全て、印面の中心Sを中心とする同心円を構成している。尚、図中、遮光板25の外郭とカメラ本体211の外郭との間の円は、遮光板25の折れ目を表しており、レンズ212の外郭の内側にある円は、遮光板25の開口部を表している。
【0024】
また、LED22a,22b,22cの印鑑側から見たときの位置(LED22a,22b,22cの印面を含む仮想平面への投影像の位置)をそれぞれA、B、Cとすると、線分SA、線分SB、線分SCが互いに120°をなすように、LED22a,22b,22cは設置されている。
更に、反射板26a,26b,26cの印鑑側から見たときの位置(反射板26a,26b,26cの印面を含む仮想平面への投影像の位置)が、それぞれ、線分SAのA側の延長線上、線分SBのB側の延長線上、線分SCのC側の延長線上に存在するように、反射板26a,26b,26cは設置されている。尚、これらを区別する必要がない場合は、反射板26と称することもある。
【0025】
次に、LED22から印面に光を照射するときの照射角度について説明する。
図4は、このような照射角度について説明するための図である。
(a)は、印鑑の枠及び文字の影ができるようにLED22の照射角度を設定し、LED22から印面に光を照射したときの様子を示している。尚、光源としてLEDを使用したのは、光直進性に優れているからであり、LED22からの光を、スリットを通して印面に照射している。
ここで、図示するように、LED22の照射角度をθ、印面の半径をR、印面の文字外の彫られた深さをh、印面上の枠及び文字の影の長さをLとしたとき、条件「θ≦arctan(h/R)」が満たされていれば、L≧Rとなる。
【0026】
尚、この場合、印面の半径Rは、印面の中心から印鑑の枠の外側までの長さであるので、印鑑の枠の幅を含むのに対し、影の長さLは、影の先端から印鑑の枠の内側までの長さであるので、印鑑の枠の幅を含まない。よって、LED22の照射角度θに関する上記条件には、印鑑の枠の幅が関係しそうにも思われる。しかしながら、本実施の形態では、印鑑の枠の幅は未定であることから、これを条件に含めないようにした。印鑑の枠の幅が大きくなると、影の先端は光の照射方向とは反対の方向へ位置するようになる。従って、「θ≦arctan(h/R)」が満たされていれば、印鑑の枠の幅がどのような値であってもL≧Rとなり、印鑑の幅を含めなくても問題は生じない。
【0027】
また、この図では、光が照射されてくる方向にLED22があることのみを示し、図2のようにLED22からの光が反射板26で反射されて印面に照射されることは示さなかった。即ち、LED22は、光が反射板26で反射されて印面に照射されるような位置に設置されている必要はなく、印面の半径以上の長さの影が形成されるような角度で光を照射することが可能な位置であれば、如何なる位置に設置されていてもよい。
【0028】
(b)は、LED22の照射角度θが「θ≦arctan(h/R)」という条件を満たす場合に印面にできる影を示している。図中、斜線ハッチングが影を示す。即ち、印面の文字外の彫られた領域のうちLED22の照射方向とは反対方向に向けて半分以上の領域に影ができている。具体的には、領域271は、印鑑の枠272の影ができた領域であり、領域273は、印鑑の文字274の影ができた領域である。但し、印面の文字外の彫られた領域の中には、領域275のように、影ができない領域も存在する。
【0029】
また、印鑑の枠及び文字の縁には、実際はアールがあったり、アール状に朱肉が残ったりするため、光の乱反射等により光が照射される側が若干明るくなる領域も存在する。
図5は、このような若干明るくなる領域について説明するための図である。
(a)は、図4(b)と同様に、LED22の照射角度θが「θ≦arctan(h/R)」という条件を満たす場合に印面にできる影を示している。領域271〜275については、図4(b)と同様であるが、ここでは、印鑑の枠272の縁の若干明るくなる領域277、及び、文字274の縁の若干明るくなる領域279についても示している。
【0030】
(b)は、(a)の破線で囲んだ部分を拡大した図である。
この場合、印鑑の枠272及び文字274の表面の領域(領域X)は、LED22からの光が直接照射されるため、明るくなっている。また、印面の文字外の彫られた領域(領域Z)は、深さhだけ低いため、印鑑の枠272及び文字274等の影ができ、暗くなっている。一方、印鑑の枠272及び文字274の縁でLED22側の領域(領域Y)は、アールや朱肉の残り等があり、乱反射された光を受け易い角度であるため、若干明るくなっている。
【0031】
(c)は、(b)に対応する印面の断面図である。
凸部281は、(b)の領域Xに対応する部分であり、凹部282は、(b)の領域Zに対応する部分である。一方、凸部281と凹部282との境界部283は、(b)の領域Yに対応し、アールや朱肉の残りがある部分である。
【0032】
本実施の形態では、USBカメラ21がこのような状態で静止画像を撮影する。
このとき、印面の文字外の彫られた領域内の明るい領域275、及び、光の乱反射等により若干明るくなる領域277,279(図5(b)の領域Y)の位置は、光の照射方向に依存する。
図6は、明るい領域の位置と光の照射方向との関係について説明するための図である。尚、以下では、LED22aを光の照射方向が0°の方向であるという意味でLED0と表記し、LED22bを光の照射方向が120°の方向であるという意味でLED120と表記し、LED22cを光の照射方向が240°の方向であるという意味でLED240と表記する。
【0033】
図示するように、LED0から光を照射した状態で撮像された静止画像PIC0では、印鑑の枠及び文字の0°の方向の縁に若干明るい領域277,279が存在する。また、印鑑の枠の影ができなかった明るい領域275が0°とは反対の方向に存在する。
また、LED120から光を照射した状態で撮像された静止画像PIC120では、印鑑の枠及び文字の120°の方向の縁に若干明るい領域277,279が存在する。また、印鑑の枠の影ができなかった明るい領域275が120°とは反対の方向に存在する。
更に、LED240から光を照射した状態で撮像された静止画像PIC240では、印鑑の枠及び文字の240°の方向の縁に若干明るい領域277,279が存在する。また、印鑑の枠の影ができなかった明るい領域275が240°とは反対の方向に存在する。
【0034】
この3枚の静止画像で共通に明るく輝度が高い部分は、印面のうち彫られた部分及びアールや朱肉の残り等がある部分を除いた表面部分であり、押印時に紙面に残る印影と同等の部分となる。そこで、本実施の形態では、この3枚の静止画像を合成する。
図7は、このような静止画像の合成方法について説明するための図である。
図示するように、本実施の形態では、画像処理により、3枚の静止画像PIC0、PIC120、PIC240のANDをとる。具体的には、静止画像PIC0、PIC120、PIC240の何れにおいても明るく輝度が高い部分、つまり、基準以上の明るさを有する部分を抽出する。すると、これらの静止画像の光の照射方向に依存する部分が消え、印面の明るい部分だけが残る。これを2値化することにより、印影画像が得られるので、この印影画像を印鑑照合可能な画像として保存する。
【0035】
次に、このような印影画像生成システムにおける情報処理装置10の構成及び動作について説明する。
図8は、情報処理装置10の機能構成例を示したブロック図である。
図示するように、情報処理装置10は、LED制御部51と、画像取得部52とを備える。また、重ね合わせ部53と、2値化部54と、明暗反転部55と、色変換部56と、不要部分削除部57とを備える。
【0036】
LED制御部51は、LED0、LED120、LED240に接続された配線上のスイッチのオン/オフを切り替えることにより、これらのLEDが順番に点灯するように制御する。本実施の形態では、光照射部が1つの方向から印面に光を照射する処理をN個の方向について行うように制御する制御部の一例として、LED制御部51を設けている。
画像取得部52は、LED0、LED120、LED240が点灯される都度、USBカメラ21が印面を撮像するように制御し、静止画像PIC0、PIC120、PIC240を取得する。尚、USBカメラ21が実際に撮像した静止画像と、押印時に紙面に残る印影画像とは、鏡像の関係にある。従って、静止画像PIC0、PIC120、PIC240は、画像取得部52又はUSBカメラ21の設定により、USBカメラ21が実際に撮像した画像を鏡像反転した画像であるとする。本実施の形態では、撮像部が1つの方向から光が照射された印面を撮像する処理をN個の方向について行うように制御する制御部、撮像画像を取得する取得部の一例として、画像取得部52を設けている。
【0037】
重ね合わせ部53は、画像取得部52により取得された静止画像PIC0、PIC120、PIC240を重ね合わせることにより、合成画像を生成する。具体的には、静止画像PIC0、PIC120、PIC240の何れにおいても明るい部分を、合成画像における明るい部分とし、静止画像PIC0、PIC120、PIC240の何れかにおいて暗い部分を、合成画像における暗い部分とする処理を行う。このような処理としては、例えば、画素ごとに、静止画像PIC0、PIC120、PIC240のR、G、Bのそれぞれの値を加算し、加算後のR、G、Bのそれぞれの最大値が加算前のR、G、Bのそれぞれの最大値と同じになるように正規化する処理が考えられる。本実施の形態では、基準以上の明るさを有する部分を抽出することにより、印影の画像を生成する生成部の一例として、重ね合わせ部53を設けている。
2値化部54は、重ね合わせ部53により生成された合成画像を2値化する。この2値化は、例えば、予め閾値を設定し、閾値より高い明度を有する画素を、明度「1」を有する明るい画素とし、閾値より低い明度を有する画素を、明度「0」を有する暗い画素とすることによって、行うとよい。
【0038】
明暗反転部55は、2値化部54により2値化された合成画像では、印面の枠及び文字の部分が明るくなっており、印面の彫られた部分が暗くなっていることから、これらの明暗を反転させる。例えば、明度「1」の画素を明度「0」の画素とし、明度「0」の画素を明度「1」の画素とする。
色変換部56は、明暗反転部55により明暗が反転された合成画像では、印面の枠及び文字が黒色で表されていることから、印影画像として相応しい画像となるように、黒色を例えば朱肉の色に変換する色変換処理を行う。
不要部分削除部57は、色変換部56により色変換処理が行われた合成画像内の不要部分を削除することにより、印鑑照合等に利用可能な印影画像を生成する。
【0039】
図9は、情報処理装置10の動作例を示したフローチャートである。
図示するように、情報処理装置10では、まず、LED制御部51が、LED0を点灯させる(ステップ501)。そして、画像取得部52が、この状態でUSBカメラ21に印面を撮像させ、静止画像PIC0を取得する(ステップ502)。尚、静止画像PIC0が取得されると、LED0はLED制御部51により消灯される。
次に、LED制御部51は、LED120を点灯させる(ステップ503)。そして、画像取得部52は、この状態でUSBカメラ21に印面を撮像させ、静止画像PIC120を取得する(ステップ504)。尚、静止画像PIC120が取得されると、LED120はLED制御部51により消灯される。
その次に、LED制御部51は、LED240を点灯させる(ステップ505)。そして、画像取得部52は、この状態でUSBカメラ21に印面を撮像させ、静止画像PIC240を取得する(ステップ506)。尚、静止画像PIC240が取得されると、LED240はLED制御部51により消灯される。
【0040】
その後、重ね合わせ部53が、ステップ502で取得した静止画像PIC0と、ステップ504で取得した静止画像PIC120と、ステップ506で取得した静止画像PIC240とを重ね合わせることにより、合成画像を求める(ステップ507)。
次に、2値化部54が、この合成画像を2値化する(ステップ508)。
また、明暗反転部55が、2値化した合成画像の明暗を反転させる(ステップ509)。
更に、色変換部56が、明暗を反転させた合成画像の黒色を、例えば朱色に変換する色変換処理を行う(ステップ510)。
最後に、不要部分削除部57が、色変換処理を行った合成画像の不要部分を削除する(ステップ511)。
【0041】
尚、この動作例では、静止画像PIC0、PIC120、PIC240を重ね合わせた合成画像を生成してから、この合成画像を2値化したが、この限りではない。静止画像PIC0、PIC120、PIC240のそれぞれを、明るい画素を「1」、暗い画素を「0」というように2値化した2値化画像を生成してから、これらの2値化画像のAND演算(論理積演算)を行うようにしてもよい。
【0042】
このように、本実施の形態では、0°、120°、240°の3方向から、印面の半径以上の長さの影ができるような角度で光を照射しながら印面を撮影し、撮影で得られた3枚の静止画像に共通の明るい部分を抽出することにより、印影画像を生成するようにした。これにより、高精度な印影画像を生成することが可能となる。
【0043】
また、本実施の形態で生成した印影画像をデジタルフォームに貼り付ければ、情報処理装置10の画面に高精度な印影画像を表示することが可能となる。そして、押印者がデジタルフォームを確認した後に電子署名してロックすれば、デジタルフォームを証明書類として使用することも可能となる。
更に、本実施の形態における印影画像生成システムを用いれば、出先で印影を高精度にデジタル化してデジタルフォーム上に貼り付けることも容易になる。
【0044】
尚、本実施の形態では、0°、120°、240°という3つの方向から印面に光を照射するものとしたが、これには限らない。より一般的に、N個(Nは2以上の整数)の方向から印面に光を照射するものとしてもよい。
【0045】
また、このN個の方向のうちの隣り合う2つの方向のなす角度、より正確に言えば、このN個の方向の印面を含む仮想平面への投影像であるN個の仮想方向のうちの隣り合う仮想方向のなす角度は、全て等しくしてもよいが、互いに異なるものを含むようにしてもよい。全て等しくした場合は、何れの角度も(360/N)°である。例えばN=3であれば、上述した通り120°である。互いに異なるものを含むようにするとは、N=3であれば、例えば0°、120°、270°という3つの方向から光を照射するような場合を意味する。
【0046】
更に、本実施の形態では、印影捕捉装置20で撮像した静止画像をUSBケーブル30を介して情報処理装置10に送信し、この静止画像に対して情報処理装置10で画像処理を施すことにより印影画像を生成するようにしたが、これには限らない。例えば、印影捕捉装置20で撮像した静止画像に対して印影捕捉装置20で画像処理を施すことにより、印影画像を生成するようにしてもよい。
【0047】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態には限定されない。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々に変更したり代替態様を採用したりすることが可能なことは、当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0048】
10…情報処理装置、11…CPU、12…メモリ、13…ハードディスク、14…USB制御部、20…印影捕捉装置、21…USBカメラ、22a,22b,22c…LED、23…USBLED制御部、24…USBHUB部、30…USBケーブル、51…LED制御部、52…画像取得部、53…重ね合わせ部、54…2値化部、55…明暗反転部、56…色変換部、57…不要部分削除部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印鑑の印面を撮像することにより印影の画像を生成する装置であって、
N個(Nは2以上の整数)の方向から前記印面に、当該印面の半径以上の長さの影が形成されるような角度で、光を照射することが可能な光照射部と、
前記印面を撮像する撮像部と、
前記N個の方向のうちの1つの方向から前記印面に光を照射するように前記光照射部を制御し、前記光照射部により当該1つの方向から光が照射された当該印面を撮像するように前記撮像部を制御することを、当該N個の方向について行うことにより、N個の撮像画像を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記N個の撮像画像の何れにおいても基準以上の明るさを有する部分を抽出することにより、前記印影の画像を生成する生成部と
を含む、装置。
【請求項2】
前記光照射部は、N個の発光素子を含み、
前記取得部は、前記N個の発光素子のうちの1つを点灯させることにより、前記1つの方向から前記印面に光を照射するように前記光照射部を制御する、請求項1の装置。
【請求項3】
前記光照射部は、1個の発光素子を含み、
前記取得部は、前記1個の発光素子を前記印面に対するN個の相対位置のうちの1つの相対位置に位置付けることにより、前記1つの方向から前記印面に光を照射するように前記光照射部を制御する、請求項1の装置。
【請求項4】
前記N個の方向の前記印面を含む仮想平面への投影像であるN個の仮想方向のうちの隣接する2つの仮想方向のなす角度は、何れも(360/N)°である、請求項1乃至請求項3の何れかの装置。
【請求項5】
Nは3である、請求項1乃至請求項4の何れかの装置。
【請求項6】
印鑑の印面を撮像することにより印影の画像を生成する装置であって、
前記印面を含む仮想平面への投影像が第1の仮想方向である第1の方向から、当該印面に、当該印面の半径以上の長さの影が形成されるような角度で、光を照射することが可能な位置に設けられた第1の発光素子と、
前記仮想平面への投影像が前記第1の仮想方向に対して120°をなす第2の仮想方向である第2の方向から、前記印面に、当該印面の半径以上の長さの影が形成されるような角度で、光を照射することが可能な位置に設けられた第2の発光素子と、
前記仮想平面への投影像が前記第1の仮想方向に対して120°をなし前記第2の仮想方向とは異なる第3の仮想方向である第3の方向から、前記印面に、当該印面の半径以上の長さの影が形成されるような角度で、光を照射することが可能な位置に設けられた第3の発光素子と、
前記印面を撮像することが可能な位置に設けられたカメラと、
前記第1の発光素子を点灯させることにより前記第1の方向から光が照射された前記印面を前記カメラに撮像させることにより、第1の撮像画像を取得し、前記第2の発光素子を点灯させることにより前記第2の方向から光が照射された前記印面を前記カメラに撮像させることにより、第2の撮像画像を取得し、前記第3の発光素子を点灯させることにより前記第3の方向から光が照射された前記印面を前記カメラに撮像させることにより、第3の撮像画像を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記第1の撮像画像、前記第2の撮像画像、前記第3の撮像画像の何れにおいても基準以上の明るさを有する部分を抽出することにより、前記印影の画像を生成する生成部と
を含む、装置。
【請求項7】
印鑑の印面を撮像することにより印影の画像を生成する方法であって、
N個(Nは2以上の整数)の方向のうちの1つの方向から、前記印面に、当該印面の半径以上の長さの影が形成されるような角度で、光を照射する光照射ステップと、
前記光照射ステップで前記1つの方向から光が照射された前記印面を撮像する撮像ステップと、
前記光照射ステップ及び前記撮像ステップを前記N個の方向について行うことにより、N個の撮像画像を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得された前記N個の撮像画像の何れにおいても基準以上の明るさを有する部分を抽出することにより、前記印影の画像を生成する生成ステップと
を含む、方法。
【請求項8】
印鑑の印面を撮像することにより印影の画像を生成する装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
N個(Nは2以上の整数)の方向のうちの1つの方向から、前記印面に、当該印面の半径以上の長さの影が形成されるような角度で、光を照射する処理と、当該1つの方向から光が照射された当該印面を撮像する処理とを、当該N個の方向について行うことで得られたN個の撮像画像を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記N個の撮像画像の何れにおいても基準以上の明るさを有する部分を抽出することにより、前記印影の画像を生成する生成部と
して機能させる、プログラム。
【請求項9】
前記コンピュータを、
前記N個の方向から前記印面に光を照射することが可能な光照射部が、前記1つの方向から当該印面に光を照射する処理と、当該印面を撮像する撮像部が、前記光照射部により当該1つの方向から光が照射された当該印面を撮像する処理とを、当該N個の方向について行うように制御する制御部と
して更に機能させる、請求項8のプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−84107(P2013−84107A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223411(P2011−223411)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【復代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
【復代理人】
【識別番号】100118201
【弁理士】
【氏名又は名称】千田 武
【復代理人】
【識別番号】100118108
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 洋之
【Fターム(参考)】