説明

印面レイアウトシステム及びこれを利用した印判作成方法と電子印鑑

【課題】一般ユーザであっても好ましい印面レイアウトを容易に決定することができ、しかも全く同一の印面レイアウトを回避した印面を得ることを可能としたシステムを提供する。
【解決手段】入力装置1と、サーバ2と、画面表示装置3とからなる。サーバ2の演算装置4には、入力された印面データと構成値が共通する印面レイアウトを印面レイアウトデータベース5から検索する検索部11と、検索された印面レイアウトの平均値を演算して平均印面レイアウトとする平均印面作成部12と、この平均印面レイアウトと同一の印面レイアウトの有無を照合する照合部13と、同一の印面レイアウトが発見されたときにランダム値を付加するランダム値付加部14と、ランダム値が付加された印面レイアウトを新規印面レイアウトとして印面レイアウトデータベース5に登録する登録部15とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印面レイアウトデータベースを備えたサーバを利用した印面レイアウトシステム及びこれを利用した印判作成方法と電子印鑑に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印判は通常、印判発注者が専用用紙に、印判の種類、印面サイズ、印面文字、書体、小付きの有無、改行の有無、左右、縦横、枠形状などの必要事項を記載して印判製造者に送付し、それを受けた印判製造者はその記載内容に基づいて版下を作成し、その版下を使って印材に印面を形成して印判を製造している。
【0003】
また近年のコンピュータネットワークの普及に伴ってネットワークを利用して印判の発注を行い、納期短縮を可能とする技術も開発されており、本出願人の出願に係る特許文献1にもその一例が開示されている。
【0004】
このようなネットワークを利用した印判発注システムにおいては、一般ユーザが印判を直接発注することが可能であるが、その場合には画面上で印判の種類、印面サイズ、印面文字、書体、小付きの有無、改行の有無、左右、縦横、枠形状などの必要事項を決定する必要がある。しかし一般ユーザは印判を発注する経験は少ないのが普通であるから、画面上で自己の感覚に基づいて決定した印面レイアウトが、実際に印判として捺印してみると好ましくないことがある。
【0005】
また、印判製造者は全く同一の印面レイアウトの印判は製造しないのが原則であるが、一般ユーザがネットワークを利用して印判発注システムによって印判を発注する場合には、画面に表示された標準文字をそのまま発注する可能性が高く、同一の印面レイアウトの印判が多数製造されるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−169261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、一般ユーザであっても印判として好ましい印面レイアウトを容易に決定することができ、しかも全く同一の印面レイアウトを回避した印判を得ることを可能とした印面レイアウトシステム及びこれを利用した印判作成方法と電子印鑑を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、印面データを入力する入力装置と、演算装置と印面レイアウトデータベースとを備えたサーバと、画面表示装置とからなり、サーバの演算装置には、
入力された印面データと構成値が共通する印面レイアウトを印面レイアウトデータベース中から検索する検索部と、
検索された印面レイアウトの平均値を演算して平均印面レイアウトとする平均印面作成部と、
この平均印面レイアウトを印面レイアウトデータベース中の印面レイアウトと比較して同一の印面レイアウトの有無を照合する照合部と、
同一の印面レイアウトが発見されたときに平均印面レイアウトにランダム値を付加するランダム値付加部と、
ランダム値が付加された印面レイアウトを新規印面レイアウトとして画面表示装置に表示するとともに、印面レイアウトデータベースに登録する登録部とが設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
なお、印面データのその他の構成値が、印面文字、書体、小付きの有無、改行の有無、左右、縦横、枠形状であることが好ましい。
【0010】
また、ランダム値付加部は、乱数発生手段から得られた乱数に基づいて、平均印面レイアウトの座標データを目視不能な微小量だけ変更する機能を有するものであることが好ましい。
【0011】
また本発明の印判作成方法は、請求項1〜3の何れかに記載の印面レイアウトシステムにより決定された新規印面レイアウトを版下データとして、印判を作成することを特徴とするものである。また本発明の電子印鑑は、請求項1〜3の何れかに記載の印面レイアウトシステムにより決定された新規印面レイアウトからなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の印面レイアウトシステムによれば、サーバの演算装置が、入力された印面データと構成値が共通する印面レイアウトを印面レイアウトデータベース中から検索し、検索された印面レイアウトの平均値を演算して平均印面レイアウトとする。印面レイアウトデータベースには過去の印面レイアウトが蓄積されており、それらは各発注者が最も好ましい印面レイアウトであるとして発注した実績を持つものであるから、それらの平均値を取ればより好ましい印面レイアウトとなり、発注者は印判に適した印面レイアウトを容易に決定することができる。また印面レイアウトデータベースに最新の印面レイアウトを蓄積して行くことにより、印面レイアウトデータベースの精度も徐々に向上させることができる。
【0013】
しかも本発明の印面レイアウトシステムによれば、平均印面レイアウトと同一の印面レイアウトが発見されたときにはランダム値を自動的に付加し、ランダム値が付加された印面レイアウトを新規印面レイアウトとして決定するので、全く同一の印判が製造されることが防止される。なおこのランダム値が付加された印面レイアウトは肉眼では識別できない程度の微小な変更が加えられたものであるから、印面レイアウトの外観は変らず、しかも電子印鑑として用いる場合には全く相違するものである。よって本発明によれば、一般ユーザであっても印判として好ましい印面レイアウトを容易に決定することができ、しかも全く同一の印面レイアウトを回避した印判あるいは電子印鑑を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の印面レイアウトシステムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】入力時の印面レイアウトの説明図である。
【図3】平均印面レイアウトの説明図である。
【図4】本発明の印面レイアウトシステムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図1に示されるように、本発明の印面レイアウトシステムは、印面データを入力する入力装置1とサーバ2と画面表示装置3とから構成されている。サーバ2は、演算装置4と記憶装置に収納された印面レイアウトデータベース5とを備えたものである。これらの各装置は通信回線により接続されておれば遠隔配置あるいは、分散配置されていてもよく、例えば入力装置1と画面表示装置3とをユーザのパソコンとし、ネット回線により印判メーカー側のサーバ2と接続することもできる。印面レイアウトデータベース5は、第1データベース6、第2データベース7、レイアウト規定値データベース8を含むものである。それらの内容については以下に順次説明する。
【0016】
図1に示したように、サーバ2の演算装置4には、検索部11と、平均印面作成部12と、照合部13と、ランダム値付加部14と、登録部15とが設けられている。各部の機能については以下に説明するが、各部の機能を実現するためのプログラムを記憶装置に収納しておき、順次演算領域に読み出して、演算するように構成することができる。
【0017】
説明に先立ち、印面レイアウトの構成要素について説明する。図2の印面レイアウトでは、「一柳」が印面文字であり、通常は姓が用いられる。図2では楷書体が用いられているがその他様々な書体を用いることができるので、書体が2番目の要素である。また同性の多い場合には名前の一文字を印面文字に付加することがあり、これを小付きと呼ぶ。この小付きの有無が3番目の要素であり、図2では小付きは無しである。また文字数の多い場合には改行することがあり、改行の有無が4番目の要素である。図2では改行はない。次に、右書きか左書きかの区別があり、これが5番目の要素である。次に縦書きか横書きかの区別があり、これが6番目の要素である。さらに枠形状が丸か角かの区別があり、これが7番目の要素である。本明細書ではこれらの要素はコンピュータ上では全て数値化されるので、これらの要素を構成値と総称する。
【0018】
発注者は入力装置1から印面文字を含む上記した構成値を入力し、サーバ2に送る。その入力内容は、例えば表1に示すとおりである。この印面データに基づいて標準的に作成された印面レイアウトは図2のようになる。
【0019】
【表1】

【0020】
サーバ2の演算装置4はまず検索部11が印面レイアウトデータベース5にアクセスし、入力された印面データと印面文字が同一でその他の構成値が共通する印面レイアウトを検索する。本実施形態では、印面レイアウトデータベース5は図1に示すように、第1データベース6と第2データベース7を含むものである。印面レイアウトデータベース5には過去の印面データが蓄積されている。第1データベース6は入力された印面データとほぼ同様の構成であり、その一部を表2に示す。
【0021】
【表2】

【0022】
この例では、表1に示す入力された印面データの構成値と第1データベース6の一意値8のデータが一致するので、検索部11が第1データベース6から一意値8のレコードを抽出する。第1データベース6の各一意値のレコードはそれぞれ第2データベース7とリンクされており、第1データベース6の一意値8とリンクする第2データベース7の構成は、例えば表3に示すとおりである。
【0023】
【表3】

【0024】
この実施形態では、表3に示すように第1データベース6の一意値8とリンクする8件のレコードが第2データベース7に存在している。このレコードは一文字毎に作成されているため、一意値「6と7」、「8と9」、「10と11」、「12と13」の4種類の印面レイアウトが過去に作成されたことを意味している。そこで平均印面作成部12がこれらの4種類の構成値の平均値を演算する。演算は文字の大きさ、原点から横方向の加算値、幅方向の扁平率などについて行なう。その結果、表4のとおりの平均値が得られる。
【0025】
【表4】

【0026】
このようにして演算された平均印面レイアウトは、例えば図3に示されるようになる。本発明では、演算装置4の照合部13が、この平均印面レイアウトを印面レイアウトデータベース5中の印面レイアウトと比較して同一の印面レイアウトの有無を照合する。そして第1データベース6中に同一の印面レイアウトがなかった場合には、それを画面表示装置3に表示するとともに、登録部15が新規印面レイアウトとして印面レイアウトデータベース5に登録する。決定された新規印面レイアウトを版下データとして印判が作成され、発注者に納品されるが、この印判作成工程は従来と変わりがないので説明を省略する。
【0027】
一方、もし第1データベース6中に同一の印面レイアウトが発見された場合には、演算装置4のランダム値付加部16が、平均印面レイアウトにランダム値を付加する。ランダム値付加部16は、乱数発生手段から得られた乱数に基づいて、平均印面レイアウトの座標データを目視不能な微小量だけ変更する機能を有するものである。なお、乱数発生手段から得られた乱数には、擬似乱数生成器により生成した擬似乱数も含まれる。ランダム値の付加方法としては、次のような方法がある。
【0028】
第1は、文字の大きさや枠の大きさ(ピクセルなどのサイズ)の加減である。1/100単位で指定可能であり、非常に微細な値の変更であるためにレイアウト結果は肉眼では判断不能である。しかし電子情報としては明確に相違するため、電子印鑑として使用する場合には識別される。
【0029】
第2は、文字や枠の位置の上下左右への移動である。原点から1/10単位で指定することができる。移動量が1以下の場合には肉眼では判断不能である。
【0030】
第3は、文字や枠の扁平率の加減である。1/10単位で指定することができる。変更幅が1以下の場合には肉眼では判断できないので、重複を回避することができる。
【0031】
そのほか、文字や枠の太さ(ウエイト)の加減も可能である。1/1000単位で指定することができ、非常に微細な値の変更であるため、レイアウト結果は肉眼では判断不能である。
【0032】
このようにしてランダム値が付加された印面レイアウトは、登録部15が新規印面レイアウトとして印面レイアウトデータベース5に登録する。そして決定された新規印面レイアウトを版下データとして印判が作成され、発注者に納品される。印判の作成方法は、ゴム加硫、レーザ加工、サーマル加工、機械彫りなど、従来公知の全ての製造方法を用いることができる。
【0033】
なお、入力された印面データの構成値と一致するデータが第1データベース6中に存在しない場合には、検索部11はレイアウト規定値データベース8中から、文字数と配置を決定する構成値(書体、小付き、改行位置、左右表示、縦横書き、枠形状)を比較し、検索を行なう。レイアウト規定値データベース8の内容は、例えば表5に示すとおりである。
【0034】
【表5】

【0035】
本実施形態の場合、書体、小付き、改行位置、左右表示、縦横書き、枠形状が表1に示す入力された印面データの構成値と一致するのは一意値2であるから、これを選択する。すなわち、印面文字が異なっていても文字数と配置が共通する過去の印面レイアウトを抽出し、以下は前述のとおり平均値を演算し、照合し、必要な場合にはランダム値を付加して新規印面レイアウトを決定する。
【0036】
以上に説明した本発明のフローを図4にまとめた。
【0037】
以上に説明したように、本発明によれば、経験に乏しい一般ユーザであっても印判として好ましい印面レイアウトを容易に決定することができ、しかも全く同一の印面レイアウトを回避した印判を得ることができる利点がある。また新規の印面レイアウトを印面レイアウトデータベースに蓄積して行くことにより、システムの精度を高めていくことができる。なお、上記した印面レイアウトシステムにより決定された新規印面レイアウトは、印判としてのみならず、電子印鑑としてもそのまま使用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 入力装置
2 サーバ
3 画面表示装置
4 演算装置
5 印面レイアウトデータベース
6 第1データベース
7 第2データベース
8 レイアウト規定値データベース
11 検索部
12 平均印面作成部
13 照合部
14 ランダム値付加部
15 登録部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印面データを入力する入力装置と、演算装置と印面レイアウトデータベースとを備えたサーバと、画面表示装置とからなり、サーバの演算装置には、
入力された印面データと構成値が共通する印面レイアウトを印面レイアウトデータベース中から検索する検索部と、
検索された印面レイアウトの平均値を演算して平均印面レイアウトとする平均印面作成部と、
この平均印面レイアウトを印面レイアウトデータベース中の印面レイアウトと比較して同一の印面レイアウトの有無を照合する照合部と、
同一の印面レイアウトが発見されたときに平均印面レイアウトにランダム値を付加するランダム値付加部と、
ランダム値が付加された印面レイアウトを新規印面レイアウトとして画面表示装置に表示するとともに、印面レイアウトデータベースに登録する登録部とが設けられていることを特徴とする印面レイアウトシステム。
【請求項2】
印面データの構成値が、印面文字、書体、小付きの有無、改行の有無、左右、縦横、枠形状であることを特徴とする請求項1に記載の印面レイアウトシステム。
【請求項3】
ランダム値付加部は、乱数発生手段から得られた乱数に基づいて、平均印面レイアウトの座標データを目視不能な微小量だけ変更する機能を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の印面レイアウトシステム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の印面レイアウトシステムにより決定された新規印面レイアウトを版下データとして、印判を作成することを特徴とする印判作成方法。
【請求項5】
請求項1〜3の何れかに記載の印面レイアウトシステムにより決定された新規印面レイアウトからなることを特徴とする電子印鑑。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−168601(P2012−168601A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26966(P2011−26966)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(390017891)シヤチハタ株式会社 (162)
【Fターム(参考)】