危険物検出装置
【課題】危険物質の検出のための労力を軽減し、迅速、かつ、効率的に危険物質を検出することができる危険物検出装置および危険物検出方法を提供する。
【解決手段】切符基材9と、溶媒18とを備えた切符10であって、前記溶媒18が、切符表面の少なくとも一部を構成し、切符利用者に付着した危険物質を移し取って保持する部分である切符10を提供する。
【解決手段】切符基材9と、溶媒18とを備えた切符10であって、前記溶媒18が、切符表面の少なくとも一部を構成し、切符利用者に付着した危険物質を移し取って保持する部分である切符10を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、危険物検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、空港内や公共施設内に危険物が持ち込まれることを防止する危険物検出装置として、検査対象から採取した試料を加熱・気化することにより危険物を検出する技術が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−301479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したような従来の危険物の検出技術では、試料となる爆発物の粉末等が付着していると考えられる箇所、例えばパソコンのキーボードや鞄のハンドル等を検査片で拭き取ることにより試料を採取し、検査片等ごとに試料を加熱・気化して検出するため、連続で検出をすることができないという不都合が生じる。そのため、検出に労力と時間を要することとなり、大量の検査を短時間で行うことができないという問題がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、危険物質の検出のための労力を軽減し、迅速、かつ、効率的に危険物質を検出することができる危険物検出装置および危険物検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の危険物検出装置および危険物検出方法は以下の手段を採用する。
本発明は、基材と、採取部分とを備えた切符であって、前記採取部分が、切符表面の少なくとも一部を構成し、切符利用者に付着した危険物質を移し取って保持する部分である切符を提供する。
【0006】
本発明によれば、切符を基材と前記特性を有する採取部分とで構成したので、切符利用者が切符を持つ際に切符表面の採取部分に触れることにより、切符利用者の指表面の指紋に付着している粉末物質等が採取部分に移し取られる。したがって、切符利用者が切符を触る前に爆薬物等を扱っていた場合には、切符利用者の指表面に付着している爆薬物の粉末等が切符表面の採取部分に採取される。これにより、基材に採取部分を設けただけの簡易な構成により、すべての切符利用者を検査することができる。また、切符利用者が切符に触るだけの簡易な方法により、危険物質を回収することができる。その結果、危険物質の検出を迅速、かつ、効率的に行うことができる。
【0007】
また、上記発明においては、前記採取部分を溶媒としてもよい。
このように構成することで、切符利用者の指表面に付着している粉末物質等が切符表面の溶媒に取り込まれることにより、採取効率が向上される。したがって、切符を触る前に爆薬物等を扱っていた切符利用者から、爆薬物の粉末等を効率的に採取することができる。また、危険物質を取り込んだ溶媒ごと検出作業を行うことにより、危険物質を迅速に検出することができる。
【0008】
また、上記発明においては、前記採取部分を凹凸または繊維質としてもよい。
このように構成することで、切符利用者の指表面の指紋の隙間に挟まった粉末物質等が切符表面の凹凸または繊維質によって掻き出されることにより、採取効率が向上される。これにより、切符を触る前に爆薬物等を扱っていた切符利用者から、爆薬物の粉末等を効率的に採取することができる。また、危険物質を切符表面の凹凸または繊維質に付着させることにより、危険物質の回収を容易にし、迅速に検出することができる。
【0009】
また、上記発明においては、前記採取部分を砥粒としてもよい。
このように構成することで、切符利用者の指表面の指紋の隙間に挟まった粉末物質等が切符表面の砥粒によって掻き出されることにより、採取効率が向上される。これにより、切符を触る前に爆薬物等を扱っていた利用者から、爆薬物の粉末等を効率的に採取することができる。また、危険物質を切符表面の砥粒に付着させることにより、危険物質の回収を容易にし、迅速に検出することができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記基材と前記採取部分との間に、前記基材と前記採取部分との分離を容易にする中間層を設けることとしてもよい。
このように構成することで、採取部分を基材から容易に分離させることができ、採取部分とともに採取部分に付着した危険物質を容易に回収することができる。これにより、切符表面を傷付けることなく危険物質を回収することができるとともに、危険物質の回収効率を向上させることができる。
【0011】
また、本発明は、切符と該切符に付着した物質とを分離する分離手段と、前記物質を回収する回収手段と、前記物質を定性分析計に送る移送手段とを備えた危険物検出装置を提供する。
【0012】
本発明によれば、切符に付着した物質が、分離手段により切符から分離され、回収手段により回収される。また、回収された物質が移送手段により定性分析計に送られて、定性分析される。したがって、切符に爆薬物の粉末等の危険物質が付着している場合には、これを検出することができる。これにより、切符利用者が切符に触るだけの簡易な方法により、切符に付着している危険物質を回収することができ、迅速、かつ、効率的に危険物質を検出することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記危険物検出装置を自動改札機としてもよい。
このように構成することで、切符利用者が爆薬物の粉末等の付着した切符を自動改札機に通すだけの簡易な方法により、迅速、かつ、効率的に危険物質を検出することができる。また、危険物質の検出のための労力を軽減し、かつ、すべての切符利用者等を効率的に検査することができる。
【0014】
また、本発明は、切符と該切符に付着した物質とを分離する分離工程と、前記物質を回収する回収工程と、前記物質を定性分析計に送る移送工程とを備えた危険物検出方法を提供する。
【0015】
本発明によれば、切符に付着した物質が、分離工程により切符から分離され、回収工程により回収される。また、回収された物質が移送工程を介して定性分析計に送られて、定性分析される。したがって、切符に爆薬物の粉末等の危険物質が付着している場合には、これを検出することができる。これにより、切符利用者が切符に触るだけの簡易な方法により、切符に付着している危険物質を回収することができ、迅速、かつ、効率的に危険物質を検出することができる。
【0016】
また、本発明は、基材と採取部分とを備え、該採取部分が切符表面の少なくとも一部を構成し、切符利用者に付着した危険物質を移し取って保持する切符と、前記切符と該切符に付着した物質とを分離する分離手段と、前記物質を回収する回収手段と、前記物質を定性分析計に送る移送手段とを備えた危険物検出装置とを具備する危険物検出システムを提供する。
【0017】
本発明によれば、切符が、基材の表面の少なくとも一部に採取部分が設けられた構成となっているので、切符利用者が切符を持つ際に切符表面の採取部分に触れることにより、切符利用者の指表面の指紋に付着している粉末物質等が採取部分に移し取られる。また、切符に付着した物質が、分離手段により切符から分離され、回収手段により回収される。また、回収された物質が移送手段により定性分析計に送られて、定性分析される。
したがって、切符利用者が切符を触る前に爆薬物等を扱っていた場合には、切符利用者の指表面に付着している爆薬物の粉末等を切符表面の採取部分に採取することができる。また、この切符から、爆薬物の粉末等を回収して、危険物質を検出することができる。
【0018】
これにより、基材に採取部分を設けただけの簡易な構成により、すべての切符利用者を検査することができる。また、切符利用者が切符に触るだけの簡易な方法により、切符に付着している危険物質を回収することができる。その結果、危険物質の検出のための労力を軽減し、迅速、かつ、効率的に危険物質を検出することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、切符利用者が切符に触るだけの簡易な方法により、危険物質の検出のための労力を軽減して、すべての切符利用者を検査することができ、迅速、かつ、効率的に危険物質を検出することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
本発明において、切符基材(基材)とは、例えば、従来の切符に相当するものであって、移動手段に用いる切符基材の他、例えば、比接触型ICカードやプリペイドカード等を含むものとしてよい。また、例えば、公共施設への入場手段として用いるチケット等も含むものとしてよい。
また、検出の対象となる危険物質とは、例えば、トリニトロトルエン、トリアセトントリパーオキサイド、ニトログリセリン、RDX、PETN等の爆発物および2,3−ジメチル−2,3−ジニトロブタン等の爆発物検知剤としてもよい。
【0021】
また、採取手段として用いられる溶媒とは、前記危険物質を溶解または分散させる液体であって、例えば、水、アセトン、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等)としてもよい。
また、採取手段として用いられる砥粒とは、前記危険物質を付着させる、例えば、一般にクレンジング剤として用いられるものであって、例えば、アルミナなどのセラミックス等としてもよい。
また、分析計として、真空紫外光イオン化イオントラップ飛行時間型質量分析計(VUV‐SPI‐IT‐TOFMS)を用いることとしてよい。
【0022】
[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態に係る切符について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る切符10は、切符基材9の表面の少なくとも一部に溶媒18を塗布したものである(図2(b)参照)。例えば、図1(a)および図1(b)に示すように、スプレー装置11や刷毛12により切符基材9に溶媒を塗布することとしてもよい。また、切符10に溶媒を染み込ませた層を持たせることとしてもよい。
【0023】
このように構成された、本実施形態に係る切符10の作用について説明する。
まず、切符利用者が切符10を購入する際に、例えば、発券機(図示せず)において、切符基材9の表面に溶媒18が塗布される。これにより、図2(a)および図2(b)に示すように、切符利用者が切符10を持つ際に、指14に付着している物質16が溶媒18に移し取られて保持される。したがって、例えば、切符10に触れる前に切符利用者が爆薬物等を扱っていた場合には、爆薬物の粉末等の危険物質が溶媒18に採取される。
【0024】
次に、図2(b)および図3(a)に示すように、切符10が自動改札機13に挿入されると、切符10の溶媒18に保持されている物質16が回収されて、定性分析計15により、定性分析される。これにより、物質16に爆薬物の粉末等の危険物質が含まれている場合には、危険物質が検出される。
【0025】
なお、上述した切符基材9に溶媒18を塗布する方法は一例にすぎず、これに代えて、例えば、予めゲル状の溶媒18を切符基材9の表面に塗布して、剥離紙等により、その表面を覆うこととしてもよい。これにより、切符10が使用される際に剥離紙等を剥がすだけの簡易な方法により、溶媒18を備えた切符10を使用することができる。
【0026】
また、図2(b)および図3(b)に示すように、例えば、前売券や比接触型ICカード等の切符基材9の場合には、自動改札機13(図3(a)参照)の前に設置される装置17に切符基材9を挿入することによりに、切符基材9の表面に溶媒18が塗布されることとしてもよい。これにより、切符基材9が利用者によって予め所有されるものであっても、切符基材9を使用する際に溶媒18を塗布することができる。また、これを自動改札機13に通すことにより、切符利用者の指14に付着している物質16を移し取り、定性分析を行うことができる。
【0027】
以上説明したように、本実施形態に係る切符10によれば、図2(b)に示すように、切符基材9に溶媒18を塗布するだけの簡易な構成により、すべての切符利用者の指に付着している物質16を採取することができ、採取効率を向上させることができる。また、切符10を触る前に爆薬物等の危険物質を扱っていた切符利用者の切符10を自動改札機13(図3(a)参照)に挿入するだけの簡易な方法により、切符利用者の指14に付着している危険物質を回収して、定性分析を行うことができる。また、揮発性の高い溶媒18を用いることにより、定性分析の際に溶媒18が蒸発されるので、危険物質の検出の妨害を防ぐことができる。これにより、危険物質の検出のための労力を軽減して、すべての切符利用者を検査することができ、迅速、かつ、効率的に危険物質を検出することができる。
【0028】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る切符について、図面を参照して説明する。
図4(b)または図5(b)にそれぞれ示すように、本実施形態に係る切符20または切符21は、採取部分の構成が上述した第一実施形態に係る切符10と異なっている。
以下、第一実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
本実施形態に係る切符20は、切符基材19の表面の少なくとも一部に凹凸28を備えている。また、切符21は、切符基材19の表面の少なくとも一部が繊維質でできたワイプ層29を備えている。
【0029】
このように構成された、本実施形態に係る切符20および切符21の作用について説明する。
まず、切符利用者が切符20を購入する際には、例えば、発券機等において、切符基材19の表面に物理的凹凸が型押しされる。これにより、図4(a)および図4(b)に示すように、切符利用者が切符20を持つ際に、特に、指24の指紋に挟まっている物質26の粉末等が、効率的に凹凸28に掻き出されて、切符20の表面に保持される。
また、切符利用者が切符21を購入する際には、例えば、発券機等において、切符基材19に繊維状の層が設けられる。これにより、図5(a)および図5(b)に示すように、切符利用者が切符21を持つ際に、特に、指24の指紋に挟まっている物質26の粉末等が、効率的にワイプ層29に掻き出されて、切符21の表面に保持される。
したがって、例えば、切符20または切符21に触る前に切符利用者が爆薬物等を扱っていた場合には、指紋に挟まっている爆薬物の粉末等も効率的に採取される。
【0030】
以上説明したように、本実施形態に係る切符20または切符21によれば、図4(b)または図5(b)に示すように、切符利用者の指24の指紋に挟まっている粉末状の物質26を効率的に切符表面に移し取ることができ、採取効率をより向上させることができる。
また、試薬等を使用することなく、切符利用者の指24に付着した物質26を物理的に移し取るため、切符20または切符21の取り扱いを容易にすることができる。
また、余分な蒸発物質がないため、危険物質を検出する際のノイズを減少させることができる。
【0031】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る切符について、図面を参照して説明する。
図6(b)に示すように、本実施形態に係る切符30は、採取部分の構成が上述した第一実施形態に係る切符10と異なっている。
以下、第一実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
本実施形態に係る切符30は、切符基材29の表面の少なくとも一部に砥粒38を備えている。なお、砥粒38の粒径は、一般的に、指34の指紋の溝幅(約500μm)より小さい径が望ましい。
【0032】
このように構成された、本実施形態に係る切符30の作用について説明する。
まず、切符利用者が切符30を購入する際に、例えば、発券機において、切符基材29の表面に砥粒38が塗布される。これにより、図6(a)および図6(b)に示すように、切符利用者が切符30を持つ際に、特に、指34の指紋に挟まっている物質36の粉末等が、効率的に砥粒38に掻き出されて、切符30の表面に保持される。したがって、例えば、切符30に触る前に切符利用者が爆薬物等を扱っていた場合には、指紋に挟まっている爆薬物の粉末等も効率的に採取される。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係る切符30によれば、図6(b)に示すように、切符利用者の指34の指紋に挟まっている粉末状の物質36を効率的に切符表面に移し取ることができ、採取効率をより向上させることができる。
また、砥粒38の材料に、蒸気圧が殆どない物質(例えば、アルミナなどのセラミックス)を用いることにより、危険物質を検出する際のノイズを減少させることができる。
【0034】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態に係る切符について、図面を参照して説明する。
図7(c)に示すように、本実施形態に係る切符44は、切符基材40と溶媒43との間の構成が上述した第一実施形態に係る切符10と異なっている。
以下、第一実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0035】
本実施形態に係る切符44は、図7(a)〜図7(c)に示すように、切符基材40の表面に、切符基材40と溶媒43との分離を容易にする中間層41を備えている。また、切符44は、中間層41の表面の少なくとも一部に溶媒43備えている。
なお、中間層41は、この上に塗布する溶媒43を容易に分離させることができる、例えば、フッ素樹脂や、疎油性(親水性)材料の物質であることが望ましい。
【0036】
次に、上述した本実施形態に係る切符44の作用について説明する。
図8(a)に示すように、切符利用者が切符44を持つ際に、特に、指46の指紋に挟まっている物質47の粉末等が、効率的に切符44の表面の溶媒43に移し取られて保持される。したがって、例えば、切符44に触る前に切符利用者が爆薬物等を扱っていた場合には、指紋に挟まっている爆薬物の粉末等も効率的に採取される。
【0037】
また、図8(b)に示すように、切符44の表面が、例えば、加熱用ランプ48または加熱用ヒータ(図示せず)等によって加熱されることにより、中間層41から溶媒43が容易に分離されて、物質47が溶媒43ごと気化される。これにより、気化した溶媒43および物質47が、サンプリング管49にサンプリングされる。
【0038】
また、上記加熱の代わりに、アルコール蒸気(例えば、スプレー等)により、中間層41から溶媒43を容易に分離させて、溶媒43および物質47を剥ぎ取り、サンプリング管49にサンプリングすることとしてもよい。
また、エアブロアーにより、中間層41から溶媒43を容易に分離させて、溶媒43および物質47を吹き飛ばし、サンプリング管49にサンプリングすることとしてもよい。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る切符44によれば、図8(a)に示すように、切符基材40と溶媒43との間に中間層41を設けることにより、溶媒43および物質47を切符基材40から容易に分離させることができる。
また、図8(b)に示すように、例えば、加熱用ランプ48やアルコール蒸気、またはエアブロアー等により、物質47を溶媒43ごとサンプリングすることにより、サンプリング効率を向上させることができる。
また、図7(b)に示すように、中間層41を切符基材40の表面にコーティングすることにより、切符基材40、特に、切符基材40の表面の印字や記録情報等を加熱や薬剤から保護することができる。
【0040】
[第五実施形態]
次に、本発明の第五実施形態に係る切符について、図面を参照して説明する。
図9(c)に示すように、本実施形態に係る切符54は、切符基材50と砥粒53との間の構成が上述した第一実施形態に係る切符10と異なっている。
以下、第一実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0041】
本実施形態に係る切符54は、図9(a)〜図9(c)に示すように、切符基材50表面に、切符基材50と砥粒53との分離を容易にする中間層51を備えている。また、切符54は、中間層51の表面の少なくとも一部に砥粒53備えている。
なお、中間層51は、この上に塗布する砥粒53を容易に分離させることができる、例えば、フッ素樹脂や、疎油性(親水性)材料の物質が望ましい。
【0042】
次に、上述した本実施形態に係る切符54の作用について説明する。
図10(a)に示すように、切符利用者が切符54を持つ際に、特に、指56の指紋に挟まっている物質57の粉末等が、効率的に砥粒53に掻き出されて、切符54の表面に保持される。したがって、例えば、切符54に触れる前に切符利用者が爆薬物等を扱っていた場合には、指紋に挟まっている爆薬物の粉末等も効率的に採取される。
【0043】
また、図10(b)に示すように、切符54の表面が、例えば、加熱用ランプ58または加熱用ヒータ(図示せず)等により、加熱されることで、中間層51から砥粒53が容易に分離されて、物質57が砥粒53ごと気化される。これにより、気化した砥粒53および物質57が、サンプリング管59にサンプリングされる。
【0044】
また、上記加熱の代わりに、アルコール蒸気(例えば、スプレー等)により、中間層51から砥粒53を容易に分離させて、砥粒53および物質57を剥ぎ取り、サンプリング管59にサンプリングすることとしてもよい。
また、エアブロアーにより、中間層51から溶媒53を容易に分離させて、砥粒53および物質57を吹き飛ばし、サンプリング管58にサンプリングすることとしてもよい。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る切符54によれば、図10(a)に示すように、切符基材50と砥粒53との間に中間層51を設けることにより、砥粒53および物質57を切符基材50から容易に分離させることができる。
また、砥粒53の材料に、蒸気圧が殆どない物質(例えば、アルミナなどのセラミックス)を用いることにより、危険物質を検出する際のノイズを減少させることができる。
【0046】
また、図10(b)に示すように、例えば、加熱用ランプ58やアルコール蒸気、またはエアブロアー等により、物質57を砥粒53ごとサンプリングすることにより、サンプリング効率を向上させることができる。
また、図9(b)に示すように、中間層51を切符基材50の表面にコーティングすることにより、切符基材50、特に、切符基材50の表面の印字や記録情報等を加熱や薬剤から保護することができる。
【0047】
[第六実施形態]
次に、本発明の第六実施形態に係る危険物検出装置について、図11を参照して説明する。
本実施形態に係る危険物検出装置61は、切符60と該切符60に付着した物質(図示
せず)とを分離させるキャリアガスを噴出するキャリアガスノズル(分離手段)63と、前記分離した物質を回収する吸引ノズル(回収手段)64と、該吸引ノズル64を加熱するヒータ69´と、前記回収した物質を定性分析計68に送る移送管65と、切符60をサンプリング空間へ輸送するローラ62と、該ローラ62を加熱するヒータ69と、前記キャリアガスを浄化するフィルタ66と、前記キャリアガスを加熱するオーブン67とを備えている。なお、本実施形態において、サンプリング空間とは、切符60を加熱する部分、および、切符60の表面に付着する物質を吸引する部分等をいう。
【0048】
キャリアガスノズル63は、ローラ62により輸送されてくる切符60に向けてキャリアガスを噴出して、切符60の表面に付着する物質を気化するようになっている。
なお、ローラ62の表面は、石英で覆われていることが望ましい。これにより、切符60を輸送する際に、切符60の表面に付着する物質が、ローラ62の表面に付着することを防止することができる。
【0049】
また、ローラ62は、ヒータ69により加熱され、切符60をサンプリング空間へ輸送する際に切符60の表面を加熱するようになっている。
吸引ノズル64は、ヒータ69´により加熱され(サンプリング空間内の温度以上が望ましい。)、気化した物質蒸気を吸引して、移送管65へ送るようになっている。
移送管65は、前記吸引された物質を定性分析計68へ移送するようになっている。
なお、移送管65および定性分析計68は、加熱されていることが望ましい。
また、上記の各ヒータにおいて、加熱温度は、80℃以上200℃以下が望ましい。80℃未満では、危険物質によっては検出しにくいので好ましくない。また、200℃を超えると、危険物質によっては分解してしまうので好ましくない。
【0050】
次に、上述した本実施形態に係る危険物検出装置61の作用について説明する。
切符60は、ローラ62により、サンプリング空間に輸送されると同時に、ローラ62の熱によって加熱される。このとき、ローラ62の表面が石英で覆われていることにより、ローラ62の表面への物質の吸着や物質の分解を防止して、輸送することができる。
【0051】
また、キャリアガスノズル63から噴出されるキャリアガスは、予めフィルタ66によって浄化された後、オーブン67により、サンプリング空間内の温度以上に加熱される。これにより、切符60の表面に付着する物質の気化効率を向上させることができる。
また、ローラ62によって切符60が加熱されて、サンプリング空間に輸送されると、キャリアガスノズル63から加熱されたキャリアガスが切符60へ噴出される。これにより、切符60の表面に付着している物質が気化されて、物質蒸気が空気の流れに沿って吸引ノズル64により回収される。
【0052】
吸引ノズル64により回収された上記物質蒸気は、移送管65を介して、定性分析計68へと移送され、危険物質の検出が行われる。
なお、危険物検出装置61内のサンプリング空間内、特に、切符60を加熱する部分または吸引ノズル64の壁面の材質を石英により構成し、その周りを熱容量が高く、耐熱性に優れる物質(例えば、ステンレス)で覆うことが望ましい。また、上記サンプリング空間内を、例えばヒータ69´により、予め加熱しておくことが望ましい。これにより、切符60の表面に付着する物質の蒸気圧を高め、サンプリングし易くすることができる。また、切符60を出し入れする際に危険物検出装置61内の温度低下を防止することができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係る危険物検出装置61によれば、切符60を直接加熱するため、危険物検出装置61の構成を簡素にすることができ、また、物質の蒸気圧を上げて、物質の回収効率を向上させることができる。
また、上述のように、切符60の表面に付着する物質を危険物検出装置61内の表面に吸着させることなく回収することができるので、回収効率を向上させることができる。これにより、サンプリング空間内に前記物質が残存しないので、他の切符の検査の妨げとならず、連続して切符の検査を行うことができる。したがって、危険物質の検出を迅速、かつ、効率的に行うことができる。
【0054】
[第七実施形態]
次に、本発明の第七実施形態に係る危険物検出装置について、図12(a)および図12(b)を参照して説明する。
本実施形態に係る危険物検出装置71は、切符70と該切符70に付着した物質(図示
せず)とを分離させる超音波振動子(分離手段)72と、前記分離した物質を加熱して、その物質蒸気を回収する吸引ノズル(回収手段)74と、該吸引ノズル74を加熱するヒータ79と、前記物質を定性分析計78へ導入するキャリアガスを噴出するキャリアガスノズル73と、前記キャリアガスを浄化するフィルタ76と、前記キャリアガスを加熱するオーブン77とを備えている。なお、吸引ノズル74は、加熱容器を兼ねていることとしてもよい。なお、本実施形態において、切符70の表面から物質を分離させる部分、および、分離した物質を吸引する部分等をサンプリング空間という。
【0055】
超音波振動子72は、危険物検出装置71に挿入された切符70に、切符70の表面の両側から超音波振動を与え、切符70に付着した物質を振るい落とすようになっている。
吸引ノズル74は、例えば、内表面が石英で覆われており、超音波振動子72によって振るい落とされた物質を保持するようになっている。また、吸引ノズル74は、ヒータ79またはランプ(図示せず)等により加熱されるようになっている。これにより、吸引ノズル74に保持される物質が気化されるようになっている。なお、吸引ノズル74は、例えば、表面がフッ素樹脂やガラスウールで覆われていることとしてもよい。
なお、移送管75および定性分析計78は、加熱されていることが望ましい。
また、上記の各ヒータにおいて、加熱温度は、80℃以上200℃以下が望ましい。80℃未満では、危険物質によっては検出しにくいので好ましくない。また、200℃を超えると、危険物質によっては分解してしまうので好ましくない。
【0056】
次に、上述した本実施形態に係る危険物検出装置71の作用について説明する。
切符70が危険物検出装置71に挿入されると、超音波振動子72により切符70に超音波振動が与えられて、切符70の表面に付着している物質が振るい落とされる。これにより、振るい落とされた物質が吸引ノズル74に保持される。吸引ノズル74に保持された物質は、吸引ノズル74がヒータ79によって加熱されることにより気化し、物質蒸気となる。
上記物質蒸気は、キャリアガスノズル73から噴出されるキャリアガスの流れに乗り、移送管75を介して、定性分析計78へと導入される。これにより、物質蒸気が定性分析計78で定性分析されて、危険物質の検出が行われる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る危険物検出装置71によれば、切符70に付着した物質を切符70の表面から振るい落として検出するため、切符70の本体から放出される、例えば、インク等によるガスが定性分析計78に流入することを防止し、危険物質の検出の際のノイズ源を低減させることができる。
また、超音波振動子72により、切符70と共にサンプリング空間内の側壁に超音波振動が与えられるため、切符70の表面から分離された物質の粉末等が上記側壁に再付着することを防止することができる。
【0058】
また、吸引ノズル74や上記サンプリング空間内の側壁等の表面の材質を石英にすることにより、切符70から分離した物質が上記側壁等に吸着することを防止することができる。これにより、回収効率を向上させることができるとともに、他の切符の検査の妨げとなることを防止して、連続して切符の検査を行うことができる。したがって、迅速、かつ、効率的に危険物質の検出を行うことができる。また、金属表面では分解の可能性のある物質(例えば、トリアセトントリパーオキサイド等)であっても、分解を抑制して、検出することができる。
また、切符70の表面を直接加熱しないため、切符70の表面に耐熱性のコーティング等を施さなくても、切符70の印字や記録を傷つけずに危険物質の検出を行うことができる。
【0059】
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第一実施形態に係る切符における溶媒塗布を示す図であって、(a)はスプレー装置による溶媒塗布を示す図であり、(b)は刷毛による溶媒塗布を示す図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る溶媒を塗布した切符を示す図であって、(a)は切符利用者の指と切符を示す図であり、(b)はその拡大図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る危険物検出装置を示す図であって、(a)は自動改札機を示す図であり、(b)は自動改札機の前に置かれる装置を示す図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る凹凸を備える切符を示す図であって、(a)は切符利用者の指と切符を示す図であり、(b)はその拡大図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る繊維質でできたワイプ層を供える切符を示す図であって、(a)は切符利用者の指と切符を示す図であり、(b)はその拡大図である。
【図6】本発明の第三実施形態に係る砥粒を塗布した切符を示す図であって、(a)は切符利用者の指と切符を示す図であり、(b)はその拡大図である。
【図7】本発明の第四実施形態に係る切符を示す図である。
【図8】本発明の第四実施形態に係る切符を示す図であって、(a)は切符利用者の指と切符を示す図であり、(b)は物質と溶媒の回収を示した図である。
【図9】本発明の第五実施形態に係る切符を示す図である。
【図10】本発明の第五実施形態に係る切符を示す図であって、(a)は切符利用者の指と切符を示す図であり、(b)は物質と溶媒の回収を示した図である。
【図11】本発明の第六実施形態に係る危険物検出装置の概略構成図である。
【図12】本発明の第七実施形態に係る危険物検出装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0061】
9 切符基材(基材)
10 切符
16 物質
18 溶媒
【技術分野】
【0001】
本発明は、危険物検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、空港内や公共施設内に危険物が持ち込まれることを防止する危険物検出装置として、検査対象から採取した試料を加熱・気化することにより危険物を検出する技術が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−301479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したような従来の危険物の検出技術では、試料となる爆発物の粉末等が付着していると考えられる箇所、例えばパソコンのキーボードや鞄のハンドル等を検査片で拭き取ることにより試料を採取し、検査片等ごとに試料を加熱・気化して検出するため、連続で検出をすることができないという不都合が生じる。そのため、検出に労力と時間を要することとなり、大量の検査を短時間で行うことができないという問題がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、危険物質の検出のための労力を軽減し、迅速、かつ、効率的に危険物質を検出することができる危険物検出装置および危険物検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の危険物検出装置および危険物検出方法は以下の手段を採用する。
本発明は、基材と、採取部分とを備えた切符であって、前記採取部分が、切符表面の少なくとも一部を構成し、切符利用者に付着した危険物質を移し取って保持する部分である切符を提供する。
【0006】
本発明によれば、切符を基材と前記特性を有する採取部分とで構成したので、切符利用者が切符を持つ際に切符表面の採取部分に触れることにより、切符利用者の指表面の指紋に付着している粉末物質等が採取部分に移し取られる。したがって、切符利用者が切符を触る前に爆薬物等を扱っていた場合には、切符利用者の指表面に付着している爆薬物の粉末等が切符表面の採取部分に採取される。これにより、基材に採取部分を設けただけの簡易な構成により、すべての切符利用者を検査することができる。また、切符利用者が切符に触るだけの簡易な方法により、危険物質を回収することができる。その結果、危険物質の検出を迅速、かつ、効率的に行うことができる。
【0007】
また、上記発明においては、前記採取部分を溶媒としてもよい。
このように構成することで、切符利用者の指表面に付着している粉末物質等が切符表面の溶媒に取り込まれることにより、採取効率が向上される。したがって、切符を触る前に爆薬物等を扱っていた切符利用者から、爆薬物の粉末等を効率的に採取することができる。また、危険物質を取り込んだ溶媒ごと検出作業を行うことにより、危険物質を迅速に検出することができる。
【0008】
また、上記発明においては、前記採取部分を凹凸または繊維質としてもよい。
このように構成することで、切符利用者の指表面の指紋の隙間に挟まった粉末物質等が切符表面の凹凸または繊維質によって掻き出されることにより、採取効率が向上される。これにより、切符を触る前に爆薬物等を扱っていた切符利用者から、爆薬物の粉末等を効率的に採取することができる。また、危険物質を切符表面の凹凸または繊維質に付着させることにより、危険物質の回収を容易にし、迅速に検出することができる。
【0009】
また、上記発明においては、前記採取部分を砥粒としてもよい。
このように構成することで、切符利用者の指表面の指紋の隙間に挟まった粉末物質等が切符表面の砥粒によって掻き出されることにより、採取効率が向上される。これにより、切符を触る前に爆薬物等を扱っていた利用者から、爆薬物の粉末等を効率的に採取することができる。また、危険物質を切符表面の砥粒に付着させることにより、危険物質の回収を容易にし、迅速に検出することができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記基材と前記採取部分との間に、前記基材と前記採取部分との分離を容易にする中間層を設けることとしてもよい。
このように構成することで、採取部分を基材から容易に分離させることができ、採取部分とともに採取部分に付着した危険物質を容易に回収することができる。これにより、切符表面を傷付けることなく危険物質を回収することができるとともに、危険物質の回収効率を向上させることができる。
【0011】
また、本発明は、切符と該切符に付着した物質とを分離する分離手段と、前記物質を回収する回収手段と、前記物質を定性分析計に送る移送手段とを備えた危険物検出装置を提供する。
【0012】
本発明によれば、切符に付着した物質が、分離手段により切符から分離され、回収手段により回収される。また、回収された物質が移送手段により定性分析計に送られて、定性分析される。したがって、切符に爆薬物の粉末等の危険物質が付着している場合には、これを検出することができる。これにより、切符利用者が切符に触るだけの簡易な方法により、切符に付着している危険物質を回収することができ、迅速、かつ、効率的に危険物質を検出することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記危険物検出装置を自動改札機としてもよい。
このように構成することで、切符利用者が爆薬物の粉末等の付着した切符を自動改札機に通すだけの簡易な方法により、迅速、かつ、効率的に危険物質を検出することができる。また、危険物質の検出のための労力を軽減し、かつ、すべての切符利用者等を効率的に検査することができる。
【0014】
また、本発明は、切符と該切符に付着した物質とを分離する分離工程と、前記物質を回収する回収工程と、前記物質を定性分析計に送る移送工程とを備えた危険物検出方法を提供する。
【0015】
本発明によれば、切符に付着した物質が、分離工程により切符から分離され、回収工程により回収される。また、回収された物質が移送工程を介して定性分析計に送られて、定性分析される。したがって、切符に爆薬物の粉末等の危険物質が付着している場合には、これを検出することができる。これにより、切符利用者が切符に触るだけの簡易な方法により、切符に付着している危険物質を回収することができ、迅速、かつ、効率的に危険物質を検出することができる。
【0016】
また、本発明は、基材と採取部分とを備え、該採取部分が切符表面の少なくとも一部を構成し、切符利用者に付着した危険物質を移し取って保持する切符と、前記切符と該切符に付着した物質とを分離する分離手段と、前記物質を回収する回収手段と、前記物質を定性分析計に送る移送手段とを備えた危険物検出装置とを具備する危険物検出システムを提供する。
【0017】
本発明によれば、切符が、基材の表面の少なくとも一部に採取部分が設けられた構成となっているので、切符利用者が切符を持つ際に切符表面の採取部分に触れることにより、切符利用者の指表面の指紋に付着している粉末物質等が採取部分に移し取られる。また、切符に付着した物質が、分離手段により切符から分離され、回収手段により回収される。また、回収された物質が移送手段により定性分析計に送られて、定性分析される。
したがって、切符利用者が切符を触る前に爆薬物等を扱っていた場合には、切符利用者の指表面に付着している爆薬物の粉末等を切符表面の採取部分に採取することができる。また、この切符から、爆薬物の粉末等を回収して、危険物質を検出することができる。
【0018】
これにより、基材に採取部分を設けただけの簡易な構成により、すべての切符利用者を検査することができる。また、切符利用者が切符に触るだけの簡易な方法により、切符に付着している危険物質を回収することができる。その結果、危険物質の検出のための労力を軽減し、迅速、かつ、効率的に危険物質を検出することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、切符利用者が切符に触るだけの簡易な方法により、危険物質の検出のための労力を軽減して、すべての切符利用者を検査することができ、迅速、かつ、効率的に危険物質を検出することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
本発明において、切符基材(基材)とは、例えば、従来の切符に相当するものであって、移動手段に用いる切符基材の他、例えば、比接触型ICカードやプリペイドカード等を含むものとしてよい。また、例えば、公共施設への入場手段として用いるチケット等も含むものとしてよい。
また、検出の対象となる危険物質とは、例えば、トリニトロトルエン、トリアセトントリパーオキサイド、ニトログリセリン、RDX、PETN等の爆発物および2,3−ジメチル−2,3−ジニトロブタン等の爆発物検知剤としてもよい。
【0021】
また、採取手段として用いられる溶媒とは、前記危険物質を溶解または分散させる液体であって、例えば、水、アセトン、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等)としてもよい。
また、採取手段として用いられる砥粒とは、前記危険物質を付着させる、例えば、一般にクレンジング剤として用いられるものであって、例えば、アルミナなどのセラミックス等としてもよい。
また、分析計として、真空紫外光イオン化イオントラップ飛行時間型質量分析計(VUV‐SPI‐IT‐TOFMS)を用いることとしてよい。
【0022】
[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態に係る切符について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る切符10は、切符基材9の表面の少なくとも一部に溶媒18を塗布したものである(図2(b)参照)。例えば、図1(a)および図1(b)に示すように、スプレー装置11や刷毛12により切符基材9に溶媒を塗布することとしてもよい。また、切符10に溶媒を染み込ませた層を持たせることとしてもよい。
【0023】
このように構成された、本実施形態に係る切符10の作用について説明する。
まず、切符利用者が切符10を購入する際に、例えば、発券機(図示せず)において、切符基材9の表面に溶媒18が塗布される。これにより、図2(a)および図2(b)に示すように、切符利用者が切符10を持つ際に、指14に付着している物質16が溶媒18に移し取られて保持される。したがって、例えば、切符10に触れる前に切符利用者が爆薬物等を扱っていた場合には、爆薬物の粉末等の危険物質が溶媒18に採取される。
【0024】
次に、図2(b)および図3(a)に示すように、切符10が自動改札機13に挿入されると、切符10の溶媒18に保持されている物質16が回収されて、定性分析計15により、定性分析される。これにより、物質16に爆薬物の粉末等の危険物質が含まれている場合には、危険物質が検出される。
【0025】
なお、上述した切符基材9に溶媒18を塗布する方法は一例にすぎず、これに代えて、例えば、予めゲル状の溶媒18を切符基材9の表面に塗布して、剥離紙等により、その表面を覆うこととしてもよい。これにより、切符10が使用される際に剥離紙等を剥がすだけの簡易な方法により、溶媒18を備えた切符10を使用することができる。
【0026】
また、図2(b)および図3(b)に示すように、例えば、前売券や比接触型ICカード等の切符基材9の場合には、自動改札機13(図3(a)参照)の前に設置される装置17に切符基材9を挿入することによりに、切符基材9の表面に溶媒18が塗布されることとしてもよい。これにより、切符基材9が利用者によって予め所有されるものであっても、切符基材9を使用する際に溶媒18を塗布することができる。また、これを自動改札機13に通すことにより、切符利用者の指14に付着している物質16を移し取り、定性分析を行うことができる。
【0027】
以上説明したように、本実施形態に係る切符10によれば、図2(b)に示すように、切符基材9に溶媒18を塗布するだけの簡易な構成により、すべての切符利用者の指に付着している物質16を採取することができ、採取効率を向上させることができる。また、切符10を触る前に爆薬物等の危険物質を扱っていた切符利用者の切符10を自動改札機13(図3(a)参照)に挿入するだけの簡易な方法により、切符利用者の指14に付着している危険物質を回収して、定性分析を行うことができる。また、揮発性の高い溶媒18を用いることにより、定性分析の際に溶媒18が蒸発されるので、危険物質の検出の妨害を防ぐことができる。これにより、危険物質の検出のための労力を軽減して、すべての切符利用者を検査することができ、迅速、かつ、効率的に危険物質を検出することができる。
【0028】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る切符について、図面を参照して説明する。
図4(b)または図5(b)にそれぞれ示すように、本実施形態に係る切符20または切符21は、採取部分の構成が上述した第一実施形態に係る切符10と異なっている。
以下、第一実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
本実施形態に係る切符20は、切符基材19の表面の少なくとも一部に凹凸28を備えている。また、切符21は、切符基材19の表面の少なくとも一部が繊維質でできたワイプ層29を備えている。
【0029】
このように構成された、本実施形態に係る切符20および切符21の作用について説明する。
まず、切符利用者が切符20を購入する際には、例えば、発券機等において、切符基材19の表面に物理的凹凸が型押しされる。これにより、図4(a)および図4(b)に示すように、切符利用者が切符20を持つ際に、特に、指24の指紋に挟まっている物質26の粉末等が、効率的に凹凸28に掻き出されて、切符20の表面に保持される。
また、切符利用者が切符21を購入する際には、例えば、発券機等において、切符基材19に繊維状の層が設けられる。これにより、図5(a)および図5(b)に示すように、切符利用者が切符21を持つ際に、特に、指24の指紋に挟まっている物質26の粉末等が、効率的にワイプ層29に掻き出されて、切符21の表面に保持される。
したがって、例えば、切符20または切符21に触る前に切符利用者が爆薬物等を扱っていた場合には、指紋に挟まっている爆薬物の粉末等も効率的に採取される。
【0030】
以上説明したように、本実施形態に係る切符20または切符21によれば、図4(b)または図5(b)に示すように、切符利用者の指24の指紋に挟まっている粉末状の物質26を効率的に切符表面に移し取ることができ、採取効率をより向上させることができる。
また、試薬等を使用することなく、切符利用者の指24に付着した物質26を物理的に移し取るため、切符20または切符21の取り扱いを容易にすることができる。
また、余分な蒸発物質がないため、危険物質を検出する際のノイズを減少させることができる。
【0031】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る切符について、図面を参照して説明する。
図6(b)に示すように、本実施形態に係る切符30は、採取部分の構成が上述した第一実施形態に係る切符10と異なっている。
以下、第一実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
本実施形態に係る切符30は、切符基材29の表面の少なくとも一部に砥粒38を備えている。なお、砥粒38の粒径は、一般的に、指34の指紋の溝幅(約500μm)より小さい径が望ましい。
【0032】
このように構成された、本実施形態に係る切符30の作用について説明する。
まず、切符利用者が切符30を購入する際に、例えば、発券機において、切符基材29の表面に砥粒38が塗布される。これにより、図6(a)および図6(b)に示すように、切符利用者が切符30を持つ際に、特に、指34の指紋に挟まっている物質36の粉末等が、効率的に砥粒38に掻き出されて、切符30の表面に保持される。したがって、例えば、切符30に触る前に切符利用者が爆薬物等を扱っていた場合には、指紋に挟まっている爆薬物の粉末等も効率的に採取される。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係る切符30によれば、図6(b)に示すように、切符利用者の指34の指紋に挟まっている粉末状の物質36を効率的に切符表面に移し取ることができ、採取効率をより向上させることができる。
また、砥粒38の材料に、蒸気圧が殆どない物質(例えば、アルミナなどのセラミックス)を用いることにより、危険物質を検出する際のノイズを減少させることができる。
【0034】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態に係る切符について、図面を参照して説明する。
図7(c)に示すように、本実施形態に係る切符44は、切符基材40と溶媒43との間の構成が上述した第一実施形態に係る切符10と異なっている。
以下、第一実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0035】
本実施形態に係る切符44は、図7(a)〜図7(c)に示すように、切符基材40の表面に、切符基材40と溶媒43との分離を容易にする中間層41を備えている。また、切符44は、中間層41の表面の少なくとも一部に溶媒43備えている。
なお、中間層41は、この上に塗布する溶媒43を容易に分離させることができる、例えば、フッ素樹脂や、疎油性(親水性)材料の物質であることが望ましい。
【0036】
次に、上述した本実施形態に係る切符44の作用について説明する。
図8(a)に示すように、切符利用者が切符44を持つ際に、特に、指46の指紋に挟まっている物質47の粉末等が、効率的に切符44の表面の溶媒43に移し取られて保持される。したがって、例えば、切符44に触る前に切符利用者が爆薬物等を扱っていた場合には、指紋に挟まっている爆薬物の粉末等も効率的に採取される。
【0037】
また、図8(b)に示すように、切符44の表面が、例えば、加熱用ランプ48または加熱用ヒータ(図示せず)等によって加熱されることにより、中間層41から溶媒43が容易に分離されて、物質47が溶媒43ごと気化される。これにより、気化した溶媒43および物質47が、サンプリング管49にサンプリングされる。
【0038】
また、上記加熱の代わりに、アルコール蒸気(例えば、スプレー等)により、中間層41から溶媒43を容易に分離させて、溶媒43および物質47を剥ぎ取り、サンプリング管49にサンプリングすることとしてもよい。
また、エアブロアーにより、中間層41から溶媒43を容易に分離させて、溶媒43および物質47を吹き飛ばし、サンプリング管49にサンプリングすることとしてもよい。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る切符44によれば、図8(a)に示すように、切符基材40と溶媒43との間に中間層41を設けることにより、溶媒43および物質47を切符基材40から容易に分離させることができる。
また、図8(b)に示すように、例えば、加熱用ランプ48やアルコール蒸気、またはエアブロアー等により、物質47を溶媒43ごとサンプリングすることにより、サンプリング効率を向上させることができる。
また、図7(b)に示すように、中間層41を切符基材40の表面にコーティングすることにより、切符基材40、特に、切符基材40の表面の印字や記録情報等を加熱や薬剤から保護することができる。
【0040】
[第五実施形態]
次に、本発明の第五実施形態に係る切符について、図面を参照して説明する。
図9(c)に示すように、本実施形態に係る切符54は、切符基材50と砥粒53との間の構成が上述した第一実施形態に係る切符10と異なっている。
以下、第一実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0041】
本実施形態に係る切符54は、図9(a)〜図9(c)に示すように、切符基材50表面に、切符基材50と砥粒53との分離を容易にする中間層51を備えている。また、切符54は、中間層51の表面の少なくとも一部に砥粒53備えている。
なお、中間層51は、この上に塗布する砥粒53を容易に分離させることができる、例えば、フッ素樹脂や、疎油性(親水性)材料の物質が望ましい。
【0042】
次に、上述した本実施形態に係る切符54の作用について説明する。
図10(a)に示すように、切符利用者が切符54を持つ際に、特に、指56の指紋に挟まっている物質57の粉末等が、効率的に砥粒53に掻き出されて、切符54の表面に保持される。したがって、例えば、切符54に触れる前に切符利用者が爆薬物等を扱っていた場合には、指紋に挟まっている爆薬物の粉末等も効率的に採取される。
【0043】
また、図10(b)に示すように、切符54の表面が、例えば、加熱用ランプ58または加熱用ヒータ(図示せず)等により、加熱されることで、中間層51から砥粒53が容易に分離されて、物質57が砥粒53ごと気化される。これにより、気化した砥粒53および物質57が、サンプリング管59にサンプリングされる。
【0044】
また、上記加熱の代わりに、アルコール蒸気(例えば、スプレー等)により、中間層51から砥粒53を容易に分離させて、砥粒53および物質57を剥ぎ取り、サンプリング管59にサンプリングすることとしてもよい。
また、エアブロアーにより、中間層51から溶媒53を容易に分離させて、砥粒53および物質57を吹き飛ばし、サンプリング管58にサンプリングすることとしてもよい。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る切符54によれば、図10(a)に示すように、切符基材50と砥粒53との間に中間層51を設けることにより、砥粒53および物質57を切符基材50から容易に分離させることができる。
また、砥粒53の材料に、蒸気圧が殆どない物質(例えば、アルミナなどのセラミックス)を用いることにより、危険物質を検出する際のノイズを減少させることができる。
【0046】
また、図10(b)に示すように、例えば、加熱用ランプ58やアルコール蒸気、またはエアブロアー等により、物質57を砥粒53ごとサンプリングすることにより、サンプリング効率を向上させることができる。
また、図9(b)に示すように、中間層51を切符基材50の表面にコーティングすることにより、切符基材50、特に、切符基材50の表面の印字や記録情報等を加熱や薬剤から保護することができる。
【0047】
[第六実施形態]
次に、本発明の第六実施形態に係る危険物検出装置について、図11を参照して説明する。
本実施形態に係る危険物検出装置61は、切符60と該切符60に付着した物質(図示
せず)とを分離させるキャリアガスを噴出するキャリアガスノズル(分離手段)63と、前記分離した物質を回収する吸引ノズル(回収手段)64と、該吸引ノズル64を加熱するヒータ69´と、前記回収した物質を定性分析計68に送る移送管65と、切符60をサンプリング空間へ輸送するローラ62と、該ローラ62を加熱するヒータ69と、前記キャリアガスを浄化するフィルタ66と、前記キャリアガスを加熱するオーブン67とを備えている。なお、本実施形態において、サンプリング空間とは、切符60を加熱する部分、および、切符60の表面に付着する物質を吸引する部分等をいう。
【0048】
キャリアガスノズル63は、ローラ62により輸送されてくる切符60に向けてキャリアガスを噴出して、切符60の表面に付着する物質を気化するようになっている。
なお、ローラ62の表面は、石英で覆われていることが望ましい。これにより、切符60を輸送する際に、切符60の表面に付着する物質が、ローラ62の表面に付着することを防止することができる。
【0049】
また、ローラ62は、ヒータ69により加熱され、切符60をサンプリング空間へ輸送する際に切符60の表面を加熱するようになっている。
吸引ノズル64は、ヒータ69´により加熱され(サンプリング空間内の温度以上が望ましい。)、気化した物質蒸気を吸引して、移送管65へ送るようになっている。
移送管65は、前記吸引された物質を定性分析計68へ移送するようになっている。
なお、移送管65および定性分析計68は、加熱されていることが望ましい。
また、上記の各ヒータにおいて、加熱温度は、80℃以上200℃以下が望ましい。80℃未満では、危険物質によっては検出しにくいので好ましくない。また、200℃を超えると、危険物質によっては分解してしまうので好ましくない。
【0050】
次に、上述した本実施形態に係る危険物検出装置61の作用について説明する。
切符60は、ローラ62により、サンプリング空間に輸送されると同時に、ローラ62の熱によって加熱される。このとき、ローラ62の表面が石英で覆われていることにより、ローラ62の表面への物質の吸着や物質の分解を防止して、輸送することができる。
【0051】
また、キャリアガスノズル63から噴出されるキャリアガスは、予めフィルタ66によって浄化された後、オーブン67により、サンプリング空間内の温度以上に加熱される。これにより、切符60の表面に付着する物質の気化効率を向上させることができる。
また、ローラ62によって切符60が加熱されて、サンプリング空間に輸送されると、キャリアガスノズル63から加熱されたキャリアガスが切符60へ噴出される。これにより、切符60の表面に付着している物質が気化されて、物質蒸気が空気の流れに沿って吸引ノズル64により回収される。
【0052】
吸引ノズル64により回収された上記物質蒸気は、移送管65を介して、定性分析計68へと移送され、危険物質の検出が行われる。
なお、危険物検出装置61内のサンプリング空間内、特に、切符60を加熱する部分または吸引ノズル64の壁面の材質を石英により構成し、その周りを熱容量が高く、耐熱性に優れる物質(例えば、ステンレス)で覆うことが望ましい。また、上記サンプリング空間内を、例えばヒータ69´により、予め加熱しておくことが望ましい。これにより、切符60の表面に付着する物質の蒸気圧を高め、サンプリングし易くすることができる。また、切符60を出し入れする際に危険物検出装置61内の温度低下を防止することができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係る危険物検出装置61によれば、切符60を直接加熱するため、危険物検出装置61の構成を簡素にすることができ、また、物質の蒸気圧を上げて、物質の回収効率を向上させることができる。
また、上述のように、切符60の表面に付着する物質を危険物検出装置61内の表面に吸着させることなく回収することができるので、回収効率を向上させることができる。これにより、サンプリング空間内に前記物質が残存しないので、他の切符の検査の妨げとならず、連続して切符の検査を行うことができる。したがって、危険物質の検出を迅速、かつ、効率的に行うことができる。
【0054】
[第七実施形態]
次に、本発明の第七実施形態に係る危険物検出装置について、図12(a)および図12(b)を参照して説明する。
本実施形態に係る危険物検出装置71は、切符70と該切符70に付着した物質(図示
せず)とを分離させる超音波振動子(分離手段)72と、前記分離した物質を加熱して、その物質蒸気を回収する吸引ノズル(回収手段)74と、該吸引ノズル74を加熱するヒータ79と、前記物質を定性分析計78へ導入するキャリアガスを噴出するキャリアガスノズル73と、前記キャリアガスを浄化するフィルタ76と、前記キャリアガスを加熱するオーブン77とを備えている。なお、吸引ノズル74は、加熱容器を兼ねていることとしてもよい。なお、本実施形態において、切符70の表面から物質を分離させる部分、および、分離した物質を吸引する部分等をサンプリング空間という。
【0055】
超音波振動子72は、危険物検出装置71に挿入された切符70に、切符70の表面の両側から超音波振動を与え、切符70に付着した物質を振るい落とすようになっている。
吸引ノズル74は、例えば、内表面が石英で覆われており、超音波振動子72によって振るい落とされた物質を保持するようになっている。また、吸引ノズル74は、ヒータ79またはランプ(図示せず)等により加熱されるようになっている。これにより、吸引ノズル74に保持される物質が気化されるようになっている。なお、吸引ノズル74は、例えば、表面がフッ素樹脂やガラスウールで覆われていることとしてもよい。
なお、移送管75および定性分析計78は、加熱されていることが望ましい。
また、上記の各ヒータにおいて、加熱温度は、80℃以上200℃以下が望ましい。80℃未満では、危険物質によっては検出しにくいので好ましくない。また、200℃を超えると、危険物質によっては分解してしまうので好ましくない。
【0056】
次に、上述した本実施形態に係る危険物検出装置71の作用について説明する。
切符70が危険物検出装置71に挿入されると、超音波振動子72により切符70に超音波振動が与えられて、切符70の表面に付着している物質が振るい落とされる。これにより、振るい落とされた物質が吸引ノズル74に保持される。吸引ノズル74に保持された物質は、吸引ノズル74がヒータ79によって加熱されることにより気化し、物質蒸気となる。
上記物質蒸気は、キャリアガスノズル73から噴出されるキャリアガスの流れに乗り、移送管75を介して、定性分析計78へと導入される。これにより、物質蒸気が定性分析計78で定性分析されて、危険物質の検出が行われる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る危険物検出装置71によれば、切符70に付着した物質を切符70の表面から振るい落として検出するため、切符70の本体から放出される、例えば、インク等によるガスが定性分析計78に流入することを防止し、危険物質の検出の際のノイズ源を低減させることができる。
また、超音波振動子72により、切符70と共にサンプリング空間内の側壁に超音波振動が与えられるため、切符70の表面から分離された物質の粉末等が上記側壁に再付着することを防止することができる。
【0058】
また、吸引ノズル74や上記サンプリング空間内の側壁等の表面の材質を石英にすることにより、切符70から分離した物質が上記側壁等に吸着することを防止することができる。これにより、回収効率を向上させることができるとともに、他の切符の検査の妨げとなることを防止して、連続して切符の検査を行うことができる。したがって、迅速、かつ、効率的に危険物質の検出を行うことができる。また、金属表面では分解の可能性のある物質(例えば、トリアセトントリパーオキサイド等)であっても、分解を抑制して、検出することができる。
また、切符70の表面を直接加熱しないため、切符70の表面に耐熱性のコーティング等を施さなくても、切符70の印字や記録を傷つけずに危険物質の検出を行うことができる。
【0059】
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第一実施形態に係る切符における溶媒塗布を示す図であって、(a)はスプレー装置による溶媒塗布を示す図であり、(b)は刷毛による溶媒塗布を示す図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る溶媒を塗布した切符を示す図であって、(a)は切符利用者の指と切符を示す図であり、(b)はその拡大図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る危険物検出装置を示す図であって、(a)は自動改札機を示す図であり、(b)は自動改札機の前に置かれる装置を示す図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る凹凸を備える切符を示す図であって、(a)は切符利用者の指と切符を示す図であり、(b)はその拡大図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る繊維質でできたワイプ層を供える切符を示す図であって、(a)は切符利用者の指と切符を示す図であり、(b)はその拡大図である。
【図6】本発明の第三実施形態に係る砥粒を塗布した切符を示す図であって、(a)は切符利用者の指と切符を示す図であり、(b)はその拡大図である。
【図7】本発明の第四実施形態に係る切符を示す図である。
【図8】本発明の第四実施形態に係る切符を示す図であって、(a)は切符利用者の指と切符を示す図であり、(b)は物質と溶媒の回収を示した図である。
【図9】本発明の第五実施形態に係る切符を示す図である。
【図10】本発明の第五実施形態に係る切符を示す図であって、(a)は切符利用者の指と切符を示す図であり、(b)は物質と溶媒の回収を示した図である。
【図11】本発明の第六実施形態に係る危険物検出装置の概略構成図である。
【図12】本発明の第七実施形態に係る危険物検出装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0061】
9 切符基材(基材)
10 切符
16 物質
18 溶媒
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
採取部分とを備えた切符であって、
前記採取部分が、切符表面の少なくとも一部を構成し、切符利用者に付着した危険物質を移し取って保持する部分である切符。
【請求項2】
前記採取部分が、溶媒からなる請求項1に記載の切符。
【請求項3】
前記採取部分が、凹凸または繊維質からなる請求項1に記載の切符。
【請求項4】
前記採取部分が、砥粒からなる請求項1に記載の切符。
【請求項5】
前記基材と前記採取部分との間に、前記基材と前記採取部分との分離を容易にする中間層を設けた請求項2または請求項4に記載の切符。
【請求項6】
切符と該切符に付着した物質とを分離する分離手段と、
前記物質を回収する回収手段と、
前記物質を定性分析計に送る移送手段とを備えた危険物検出装置。
【請求項7】
前記危険物検出装置が、自動改札機である請求項6に記載の危険物検出装置。
【請求項8】
切符と該切符に付着した物質とを分離する分離工程と、
前記物質を回収する回収工程と、
前記物質を定性分析計に送る移送工程とを備えた危険物検出方法。
【請求項9】
基材と採取部分とを備え、該採取部分が切符表面の少なくとも一部を構成し、切符利用者に付着した危険物質を移し取って保持する切符と、
前記切符と該切符に付着した物質とを分離する分離手段と、
前記物質を回収する回収手段と、
前記物質を定性分析計に送る移送手段とを備えた危険物検出装置と
を具備する危険物検出システム。
【請求項1】
基材と、
採取部分とを備えた切符であって、
前記採取部分が、切符表面の少なくとも一部を構成し、切符利用者に付着した危険物質を移し取って保持する部分である切符。
【請求項2】
前記採取部分が、溶媒からなる請求項1に記載の切符。
【請求項3】
前記採取部分が、凹凸または繊維質からなる請求項1に記載の切符。
【請求項4】
前記採取部分が、砥粒からなる請求項1に記載の切符。
【請求項5】
前記基材と前記採取部分との間に、前記基材と前記採取部分との分離を容易にする中間層を設けた請求項2または請求項4に記載の切符。
【請求項6】
切符と該切符に付着した物質とを分離する分離手段と、
前記物質を回収する回収手段と、
前記物質を定性分析計に送る移送手段とを備えた危険物検出装置。
【請求項7】
前記危険物検出装置が、自動改札機である請求項6に記載の危険物検出装置。
【請求項8】
切符と該切符に付着した物質とを分離する分離工程と、
前記物質を回収する回収工程と、
前記物質を定性分析計に送る移送工程とを備えた危険物検出方法。
【請求項9】
基材と採取部分とを備え、該採取部分が切符表面の少なくとも一部を構成し、切符利用者に付着した危険物質を移し取って保持する切符と、
前記切符と該切符に付着した物質とを分離する分離手段と、
前記物質を回収する回収手段と、
前記物質を定性分析計に送る移送手段とを備えた危険物検出装置と
を具備する危険物検出システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−64618(P2008−64618A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243090(P2006−243090)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度文部科学省科学技術総合研究委託業務、「重要課題解決型研究等の推進 テロ対策のための爆発物検出・処理統合システムの開発」産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度文部科学省科学技術総合研究委託業務、「重要課題解決型研究等の推進 テロ対策のための爆発物検出・処理統合システムの開発」産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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