説明

危険物検知システム

【課題】空港や港のターミナルゲート等、荷を搬送するコンベアが設けられ且つ人が多く集まる場所での設置に適した中性子照射手段を有する危険物検知システムの提供。
【解決手段】コンベア10と、コンベア10における搬送経路途中に設けられた核物質探知装置30と、を有する危険物検知システム1であって、核物質探知装置30は、上記中性子を放射状に照射する中性子発生装置31と、中性子発生装置31とその放射方向において間隔をあけて配置された円筒形の側壁32を有し、該側壁32に形成された手荷物の搬入口33a及び搬出口33bを開閉する開閉扉34a,34bを備える中性子遮蔽壁35と、中性子発生装置31と側壁32との間において中性子発生装置31を中心として回転可能に設けられると共にその回転方向において手荷物を複数、互いに間隔をあけて支持する回転床36と、を有するという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、危険物検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、テロ対策として、ホームランドセキュリティーの検討が各国で盛んに行われている。我が国においても、空港や港におけるターミナルゲート等において危険物の持出し/持込みを押さえるべく、種々の危険物検知システムの開発がなされている。下記特許文献1〜5には、荷の中身を非破壊的に検査するため、X線照射手段や中性子照射手段を用いた危険物検知システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−180563号公報
【特許文献2】特開2009−198469号公報
【特許文献3】特開2007−187467号公報
【特許文献4】特開2005−337764号公報
【特許文献5】特開2004−108994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、空港や港のターミナルゲート等、荷を搬送するコンベアが設けられ且つ人が多く集まる場所において、中性子照射手段を用いた危険物検知システムを設置する場合には、下記の課題が存在する。
空港等では荷が連続でコンベア搬送されるため、コンベア周辺の大部分を分厚い中性子遮蔽壁で覆わなくてはならない。また、コンベア搬送が連続式ゆえに、中性子遮蔽壁の搬入口/搬出口は常に開口した状態になっており、この状態で、中性子を荷に照射すると、遮蔽壁内での数回の散乱によって減速してもなお当該開口からストリーミングで漏れる虞がある。ちなみに、通常、核物質の検知で用いられるDT反応による照射中性子のエネルギーは14.1MeVと、また、DD反応による照射中性子のエネルギーは2.45MeVと、通常の原子炉内に存在する中性子エネルギーに比較して高く、当該開口から漏れる確率が高くなる。さらに、連続でコンベア搬送される荷毎に中性子を照射すると、中性子照射回数が多くなり、中性子レベルが高くなる。
【0005】
本発明は、上記課題点に鑑みてなされたものであり、空港や港のターミナルゲート等、荷を搬送するコンベアが設けられ且つ人が多く集まる場所での設置に適した中性子照射手段を有する危険物検知システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、荷を搬送するコンベアと、上記コンベアにおける搬送経路途中に設けられ、中性子を照射して上記荷に含まれる所定の物質を検知する中性子検知装置と、を有する危険物検知システムであって、上記中性子検知装置は、上記中性子を放射状に照射する中性子照射源と、上記中性子照射源とその放射方向において間隔をあけて配置された円筒形の側壁を有し、該側壁に形成された上記荷の搬入口及び搬出口を開閉する開閉扉を備える中性子遮蔽壁と、上記中性子照射源と上記側壁との間において上記中性子照射源を中心として回転可能に設けられると共にその回転方向において上記荷を複数、互いに間隔をあけて支持する回転床と、を有するという構成を採用する。
【0007】
また、本発明においては、上記中性子検知装置よりも上記搬送経路上流側の上記コンベアには、所定間隔で上記搬送されている上記荷の間隔を詰める間隔調整エリアが設けられているという構成を採用する。
【0008】
また、本発明においては、上記中性子検知装置よりも上記搬送経路下流側の上記コンベアには、上記搬送される荷の間隔を離して上記所定間隔に戻す第2の間隔調整エリアが設けられているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、連続式のコンベア搬送の途中にバッチ式の中性子検知装置を設置し、中性子遮蔽壁の搬入口/搬出口を中性子の照射時は中性子遮蔽の開閉扉で完全に塞ぐ。これにより、中性子遮蔽壁の搬入口/搬出口からの中性子のストリーミングを完全に防ぐことが可能となる。また、本発明によれば、中性子照射源を中心として荷を複数配置できるため、1回の中性子照射により複数の荷の検知が可能となる。これにより、中性子照射回数を低減して中性子レベルを低く抑えられ、また、中性子照射回数が低減するので、中性子照射時間及び中性子遮蔽壁の扉開閉時間に掛かる時間的なロスを低減でき、処理能力を連続式と同等にすることができる。さらに、本発明によれば、中性子照射源の周りに円筒形の側壁を有する中性子遮蔽壁を配置することにより、従来のコンベアの中性子照射源が設けられる側(バックグラウンド側)の中性子遮蔽壁を削減でき、中性子検知スペースが狭くてすみ、床占有面積を小さく抑えることができる。
加えて、本発明では、バッチ式による処理能力をさらに向上させ連続式と同等にすることを目的として、中性子検知装置より上流側のコンベアにおいて、所定間隔で搬送される荷の間隔を詰めて中性子検知装置に搬入されるまでの時間を稼ぎ、現在中性子検知を受けている荷の検知時間を確保すると共に、当該間隔を詰めることで次に中性子検知を受ける荷の中性子検知装置内に搬入されるまでの時間を短くする。そして、中性子検知後、中性子検知装置から搬出された複数の荷の間隔を、中性子検知装置より下流側のコンベアにおいて荷の間隔を離すことで、当初の間隔を維持して荷を送り出すことができ、後の検査や荷の積み込み/荷の受け渡し等への影響を与えないようにすることができる。
したがって、本発明では、空港や港のターミナルゲート等、荷を搬送するコンベアが設けられ且つ人が多く集まる場所での設置に適した中性子照射手段を有する危険物検知システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態における危険物検知システムの構成図である。
【図2】本発明の実施形態におけるコンベアの所定区画毎の動作及び核物質探知装置の動作について説明する図である。
【図3】本発明の別実施形態における核物質探知装置の動作について説明する図である。
【図4】本発明の別実施形態におけるコンベアの所定区画毎及び核物質探知装置内の手荷物の状態について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態における危険物検知システム1の構成図である。
本実施形態の危険物検知システム1は、空港のターミナルゲートに設けられ、航空機に搭乗する利用者の手荷物(荷)に含まれる危険物(ウランやプルトニウム等の核物質、コバルト等の放射性物質)を機内持ち込み前に検知するものである。
【0012】
危険物検知システム1は、手荷物を搬送するコンベア10と、コンベア搬送される手荷物に対しγ線を用いた計測を行うγ線計測装置20と、コンベア搬送される手荷物に対し中性子を用いた検知を行う核物質探知装置(中性子検知装置)30と、コンベア搬送される手荷物に対しX線を用いた検知を行う擬似2色X線DR装置40と、各構成装置の動作を制御する不図示の制御装置と、を有する。本実施形態の危険物検知システム1は、コンベア10の搬送経路途中にその下流側に向って、γ線計測装置20、核物質探知装置30、擬似2色X線DR装置40、が順に設けられている。
【0013】
γ線計測装置20は、γ線検出器を有して、手荷物に含まれるγ線放出核種探知を行うものである。γ線計測装置20は、手荷物から放出されるγ線を検出して、例えばコバルトやセシウム等のγ線放射性物質を検知する。核物質探知装置30は、アクティブ中性子法によって、例えばウランやプルトニウム等の核物質探知を行うものである。また、核物質探知装置30は、手荷物に含まれる中性子遮蔽物質の有無を判定する。擬似2色X線DR装置40は、擬似2色X線を用いた高精度DR(デジタルラジオグラフィー)計測をして、例えば金、鉛、ウラン、プルトニウム等の重金属物質検知を行うものである。また、擬似2色X線DR装置40は、手荷物に含まれるγ線遮蔽物(鉛等)の有無を判定する。
本実施形態の危険物検知システム1は、上記各方式の長所を活かし、それぞれの弱点を補うことで、高信頼度で危険物の検知を行う構成となっている。
【0014】
続いて、本実施形態の核物質探知装置30における特徴的な構成について説明する。
核物質探知装置30は、中性子を放射状に照射する中性子発生装置(中性子照射源)31と、中性子発生装置31とその放射方向において間隔をあけて配置された円筒形の側壁32を有して該側壁32に形成された手荷物の搬入口33a及び搬出口33bを開閉する開閉扉34a,34bを備える中性子遮蔽壁35と、中性子発生装置31と側壁32との間において中性子発生装置31を中心として回転可能に設けられると共にその回転方向において手荷物を複数、互いに間隔をあけて支持する回転床36と、を有する構成となっている。
【0015】
中性子発生装置31は、線源として中性子遮蔽壁35の中心部において、回転床36に支持されるべき手荷物と同等の高さに設置された点線源を有する。本実施形態の線源は、DT反応による中性子源であり、中性子エネルギーは14.1MeVの単一エネルギーで、放射方向は全方位等方となっている。中性子遮蔽壁35の側壁32には、その内周面に不図示のHe‐3(ヘリウム3)シンチレータ等の中性子検出器が複数設けられており、核物質探知装置30は、DT反応によって生成される中性子を手荷物に照射して、手荷物に含まれる核物質に核分裂反応を生起せしめ、その核分裂中性子を検知する構成となっている。
【0016】
中性子遮蔽壁35は、中性子遮蔽体としてSUS304とポリエチレンとを用いて構成されている。本実施形態の中性子遮蔽壁35は、内側にSUS304が、その外側にポリエチレンが配置されて層状となっている。なお、ポリエチレンの外側には不図示のSUS304がさらに設けられている。円筒形の側壁32には、コンベア10上流側と連通する搬入口33aと、コンベア10下流側と連通する搬出口33bとが形成されている。搬入口33aは、不図示の制御装置の制御の下、スライド駆動する開閉扉34aによって開閉自在となっている。また、同様に、搬出口33bは、不図示の制御装置の制御の下、スライド駆動する開閉扉34bによって開閉自在となっている。開閉扉34a,34bは、それぞれ側壁32の外周面に沿ってスライド自在な構成となっている。
【0017】
回転床36は、不図示の制御装置の制御の下、中性子発生装置31の周りを回転駆動する構成となっている。本実施形態の回転床36には、搬入口33aから搬入された手荷物をその回転方向で間隔をあけて支持するトレイ37を複数(本実施形態では60度間隔で6つ)有する。トレイ37には、中性子検知が終了した手荷物を搬出口33bから下流側のコンベア10に払い出す不図示の払出装置がそれぞれ設けられている。
【0018】
コンベア10には、チェックインカウンターで受け取った手荷物が投入されコンベア搬送される入口部11aと、セキュリティゲートで警報が鳴った機内持ち込み手荷物が投入されコンベア搬送される入口部11bとを有する。入口部11a,11bの下流側は合流しており、手荷物は、先ずその合流地点の下流側に設置されたγ線計測装置20を通過する。γ線計測装置20を通過した手荷物は、核物質探知装置30、擬似2色X線DR装置40を経て、分岐部12に至る。分岐部12においては、不図示の払出装置が設けられており、γ線計測装置20、核物質探知装置30、擬似2色X線DR装置40においてなんらかの物質が検知された場合には、その手荷物が、人による開封検査エリア13に向かうルートに払い出される。開封検査エリア13における検査で手荷物に危険物が含まれていることが確認された場合には、隔離して然るべき処理を行う。一方、開封検査エリア13における検査をクリアした手荷物は、分岐部12の下流側に戻される。そして、払い出されなかった手荷物、あるいは、戻された手荷物は、チェックイン手荷物として出口部14aから機内に積み込みされるか、または、機内持込手荷物として出口部14bから搭乗者に受け渡されることとなる。
【0019】
本実施形態のコンベア10は、ローラーコンベア方式を採用しており、不図示の制御装置の制御の下、その搬送経路において所定区画毎にその搬送速度が調整される構成となっている。
以下、図2を参照して、コンベア10の所定区画毎の動作及び核物質探知装置30の動作について説明する。なお、図2における符号Mは、コンベア搬送される手荷物を示す。また、図2においては、危険物検知システム1における手荷物Mの流れを所定時間毎に経時的に示す(ステップS1〜S17)。また、以下の説明では、コンベア10における搬送区画を第1のエリアA、第2のエリアB、第3のエリアC、第4のエリアD(図1及び図2参照)に分けて説明することがある。
【0020】
図2に示すように、コンベア10の第1のエリアAでは、入口部11aあるいは入口部11bから投入された手荷物を、所定間隔をあけて所定速度で搬送する。そして、第1のエリアAを通過した手荷物Mは、第2のエリア(間隔調整エリア)Bに搬送される(ステップS1)。
コンベア10の第2のエリアBでは、第1のエリアAから所定間隔で搬送されてくる手荷物Mの間隔を不図示の制御装置により調整する。コンベア10の第2のエリアBでは、ローラーコンベアの搬送速度を低下あるいは停止させて手荷物Mの間隔を詰めるように制御し、核物質探知装置30の上流側に6個の手荷物Mを溜めさせる(ステップS2〜S6)。
【0021】
コンベア10の第2のエリアBに、手荷物Mが6個溜まったら、核物質探知装置30の開閉扉34aを開状態にすると共に、第2のエリアBの搬送速度を第1のエリアAの搬送速度よりも2倍以上となるよう制御し、第2のエリアBに手荷物Mが1個搬送されてくる間に核物質探知装置30に少なくとも2個の手荷物Mを収納させる(ステップS7〜S9)。このとき、核物質探知装置30の回転床36もコンベア10の第2のエリアBの速度変化に同期して駆動し、手荷物Mを1個ずつトレイ37に受けて回転し、6個の手荷物Mを等間隔で中性子発生装置31の周りに配置する。
核物質探知装置30に6個の手荷物Mが収納されたら、開閉扉34a,34bで、搬入口33a及び搬出口33bを完全に塞いだ後、中性子発生装置31からDT反応により中性子を放射方向全方位に照射し、中性子検知を行う(ステップS10)。
【0022】
核物質探知装置30における中性子検知が終了したら、核物質探知装置30の開閉扉34bを開状態にすると共に、回転床36を回転駆動させ、トレイ37に支持された手荷物Mの6個全てを不図示の払出装置で、核物質探知装置30の下流側であるコンベア10の第3のエリアCに払い出す(ステップS11)。
コンベア10の第3のエリアCでは、核物質探知装置30から払い出された手荷物Mを第4のエリア(第2の間隔調整エリア)Dに搬送する(ステップS12)。なお、このとき、核物質探知装置30の上流側の第2のエリアBには、6個の手荷物Mが溜まっており、次のステップS13では、上述したステップS7と同様に2個ずつ手荷物Mが核物質探知装置30に収納されることとなる。
【0023】
コンベア10の第4のエリアDでは、第3のエリアCから搬送されてくる手荷物Mの間隔を調整する。コンベア10の第4のエリアDでは、ローラーコンベアの搬送速度が第3のエリアCにおける搬送速度よりも速く、第1のエリアAの搬送速度と同等となっており、第3のエリアCから搬送されてくる手荷物Mの間隔を離して、第1のエリアAにおける当初の間隔に戻させる(ステップS13)。
コンベア10の第4のエリアDでは、当該間隔調整を行いながら、手荷物Mを出口部14aあるいは出口部14bに向けて搬送する(ステップS14〜S16)。次のステップS17では、コンベア10の第3のエリアCの6個の手荷物Mが全て、第4のエリアDに搬送される。また、同時に、核物質探知装置30から中性子検知を終えた次の6個の手荷物Mが払い出されてくる。そして、コンベア10の第3のエリアCに払い出された6個の手荷物Mは、ステップS13〜S17と同様にして、コンベア10の第4のエリアDにおいて当初の間隔に調整されて搬送される。
以上のように、危険物検知システム1は、上述したステップを繰り返してコンベア搬送される手荷物Mの検査を継続する。そして、手荷物Mの全ての検査が終了したらコンベア搬送を停止して全動作を終了させる。
【0024】
したがって、上述の本実施形態によれば、手荷物Mを搬送するコンベア10と、コンベア10における搬送経路途中に設けられ、中性子を照射して手荷物Mに含まれる核物質を検知する核物質探知装置30と、を有する危険物検知システム1であって、核物質探知装置30は、上記中性子を放射状に照射する中性子発生装置31と、中性子発生装置31とその放射方向において間隔をあけて配置された円筒形の側壁32を有し、該側壁32に形成された手荷物Mの搬入口33a及び搬出口33bを開閉する開閉扉34a,34bを備える中性子遮蔽壁35と、中性子発生装置31と側壁32との間において中性子発生装置31を中心として回転可能に設けられると共にその回転方向において手荷物Mを複数、互いに間隔をあけて支持する回転床36と、を有するという構成を採用し、連続式のコンベア搬送の途中にバッチ式の核物質探知装置30を設置して、中性子遮蔽壁35の搬入口33a/搬出口33bを中性子の照射時は中性子遮蔽の開閉扉34a,34bで完全に塞ぐことができる。これにより、中性子遮蔽壁35の搬入口33a/搬出口33bからの中性子のストリーミングを完全に防ぐことが可能となる。
【0025】
また、本実施形態によれば、中性子発生装置31を中心として手荷物Mを6個配置できるため、1回の中性子照射により6個の手荷物Mの検知が可能となる。これにより、中性子照射回数を1/6に低減して中性子レベルを低く抑えて、また、中性子照射回数が低減するので、中性子照射時間及び中性子遮蔽壁35の扉開閉時間に掛かる時間的なロスを低減でき、処理能力を連続式と同等にすることができる。さらに、本実施形態によれば、中性子発生装置31の周りに円筒形の側壁32を有する中性子遮蔽壁35を配置することにより、従来のコンベア10の中性子発生装置31が設けられる側(バックグラウンド側)の中性子遮蔽壁35を削減でき、中性子検知スペースが狭くてすみ、床占有面積を従来と比べて1/2以下に小さく抑えることができる。
【0026】
加えて、本実施形態では、バッチ式による処理能力をさらに向上させ連続式と同等にすることを目的として、核物質探知装置30より上流側のコンベア10において、所定間隔で搬送される手荷物Mの間隔を詰めて核物質探知装置30に搬入されるまでの時間を稼ぎ、現在中性子検知を受けている手荷物Mの検知時間を確保すると共に、当該間隔を詰めることで次に中性子検知を受ける手荷物Mの核物質探知装置30内に搬入されるまでの時間を短くする。そして、中性子検知後、核物質探知装置30から搬出された複数の手荷物Mの間隔を、核物質探知装置30より下流側のコンベア10において手荷物Mの間隔を離すことで、当初の間隔を維持して手荷物Mを送り出すことができ、後の検査や手荷物Mの積み込み/手荷物Mの受け渡し等への影響を与えないようにすることができる。
また、本実施形態の危険物検知システム1においては、手荷物Mを核物質探知装置30の上流側で6個溜めた時刻から核物質探知装置30の下流側で6個まとめた払い出しが完了するまでの時間を、コンベア10のある点を手荷物Mが6個通過する時間に制御することで、従来の連続式と同等の処理能力を達成できる。
【0027】
したがって、本実施形態では、空港のターミナルゲートにおいて、手荷物Mを搬送するコンベア10が設けられ且つ人が多く集まる場所での設置に適した危険物検知システム1を提供することができる。
【0028】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0029】
例えば、上記実施形態では、本発明の危険物検知システム1を空港のターミナルゲートに設置した例について説明したが、本発明はこの構成に限定されることなく、港、駅、野球場、サッカー場、イベントホール、劇場、博物館、美術館等の人の集まる場所にも設置することが可能である。
【0030】
また、例えば、核物質探知装置30への手荷物Mの搬入及び核物質装置30からの手荷物Mの払い出し動作を次のようにしても良い。
図3は、本発明の別実施形態における核物質探知装置の動作について説明する図である。図4は、本発明の別実施形態におけるコンベアの所定区画毎及び核物質探知装置内の手荷物の状態について説明する図である。なお、図3及び図4において同じハッチを付された手荷物Mは対応している。
【0031】
上記実施形態では、核物質探知装置30における検査が終了したら、手荷物Mの6個全てを第3のエリアCに払い出すと説明したが、図3及び図4に示す別実施形態では、検査後の手荷物Mを一個ずつ払い出しつつ、検査前の手荷物Mを一個ずつ搬入する構成を採用している。
【0032】
具体的には、図3及び図4に示すように、
(1) 後述する(14)の後、回転床を1/6回転する。
(2) 検査前の手荷物Mを一個搬入すると共に検査後の手荷物Mを一個払い出す。
(3) 回転床を1/6回転する。
(4) 検査前の手荷物Mを一個搬入すると共に検査後の手荷物Mを一個払い出す。
(5) 回転床を1/6回転する。
(6) 検査前の手荷物Mを一個搬入すると共に検査後の手荷物Mを一個払い出す。
(7) 回転床を1/6回転する。
(8) 検査前の手荷物Mを一個搬入すると共に検査後の手荷物Mを一個払い出す。
(9) 回転床を1/6回転する。
(10)検査前の手荷物Mを一個搬入すると共に検査後の手荷物Mを一個払い出す。
(11)回転床を1/6回転する。
(12A)検査前の手荷物Mを一個搬入する。
(12B)出入口を閉める。
(12C)検査を行う。
(13)出入口を開ける。
(14)検査後の手荷物Mを一個払い出す。
の工程を繰り返す。
【0033】
上記(1)〜(14)までの工程が、手荷物Mが6個コンベア搬送されてくる時間よりも短く設定すれば、前述した実施形態の処理能力と同等にすることができる。
具体的には、t1が手荷物一個を出し入れする時間、t2が回転床を1/6回転する時間、t3が出入口を閉める時間、t4が手荷物Mの検査を行う時間、t5が手荷物Mの出入口を開ける時間とすると、検査シーケンス合計時間T1は、
T1=t1+t2+t3+t4+t5
で表すことができる。一方で、前述した実施形態の検査シーケンス合計時間T2は、t6を通常速度で手荷物Mが流れる間隔とすると、
T2=t6×6
で表すことができる。したがって、T2>T1となるように設定すれば良い。
【符号の説明】
【0034】
1…危険物検知システム、10…コンベア、30…核物質探知装置(中性子検知装置)、31…中性子発生装置(中性子照射源)、32…側壁、33a…搬入口、33b…搬出口、34a,34b…開閉扉、35…中性子遮蔽壁、36…回転床、B…第2のエリア(間隔調整エリア)、D…第4のエリア(第2の間隔調整エリア)、M…手荷物(荷)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷を搬送するコンベアと、前記コンベアにおける搬送経路途中に設けられ、中性子を照射して前記荷に含まれる所定の物質を検知する中性子検知装置と、を有する危険物検知システムであって、
前記中性子検知装置は、
前記中性子を放射状に照射する中性子照射源と、
前記中性子照射源とその放射方向において間隔をあけて配置された円筒形の側壁を有し、該側壁に形成された前記荷の搬入口及び搬出口を開閉する開閉扉を備える中性子遮蔽壁と、
前記中性子照射源と前記側壁との間において前記中性子照射源を中心として回転可能に設けられると共にその回転方向において前記荷を複数、互いに間隔をあけて支持する回転床と、を有することを特徴とする危険物検知システム。
【請求項2】
前記中性子検知装置よりも前記搬送経路上流側の前記コンベアには、所定間隔で前記搬送されている前記荷の間隔を詰める間隔調整エリアが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の危険物検知システム。
【請求項3】
前記中性子検知装置よりも前記搬送経路下流側の前記コンベアには、前記搬送される荷の間隔を離して前記所定間隔に戻す第2の間隔調整エリアが設けられていることを特徴とする請求項2に記載の危険物検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−122804(P2012−122804A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272660(P2010−272660)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、文部科学省、科学技術総合研究委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】