説明

即席麺類の製造方法

【課題】即席麺類において、その配合中に従来から使用されてきた馬鈴薯澱粉とは異なる澱粉を原料として、馬鈴薯澱粉の特徴であるつるみと弾力の良好な食感を維持しつつその食感の選択肢の幅を広げ、且つ安価な澱粉原料として供給し得る方法を提供する。
【解決手段】即席麺類の製造に際して、配合するワキシーコーンスターチおよび/またはタピオカ澱粉に膨潤度55〜12且つ溶解度30以下となる架橋処理を行なうことを特徴とする加工澱粉を使用する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来から即席麺に使用されてきた馬鈴薯澱粉とは異なる澱粉を原料として、馬鈴薯澱粉の特徴であるつるみと弾力の良好な食感を維持しつつその食感の選択肢の幅を広げ、且つ安価な澱粉原料として供給し得る即席麺類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
架橋処理を行なった澱粉を麺に利用する技術としては、引用文献1に架橋エーテル化澱粉および/または架橋エステル化澱粉を製麺に利用することが記載されている。
【0003】
しかしながらそれらは、麺線の湯戻りが速く、伸びにくいことを目的としており、本発明の課題である食感の改善と相違する。
【0004】
また、引用文献2には、うどんなどの粘り気の低減の目的に内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重合度が50以上であるグルカン(以下、クラスターデキストリンと呼ぶ)の麺に添加することが記載されている。
【0005】
しかしながら小麦粉との併用による食感の改善を目的としており、本発明の小麦粉、加工澱粉、クラスターデキストリンを特定の配合によって製麺するという本発明の技術についてはなんら記載がなされていない。
【特許文献1】特許公告昭63−3572
【特許文献2】特開2001−136898
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フライ麺、ノンフライ麺、フリーズドライ麺などの即席麺類の食感は穀粉類に馬鈴薯澱粉を配合することで湯戻りを良好にすると共に、つるみと弾力のある独特の食感を持たせ、この食感が消費者に馴染みのあるいわゆる「即席麺」として定着してきた。
【0007】
近年、ワキシーコーンスターチやタピオカ澱粉が食感改良および原料コストダウンの目的で使用されてきているものの、その独特の粘りのある食感が即席麺類としては好まれない傾向があった。
【0008】
そこで、即席麺類の食感の選択肢の幅を広げ且つ安価である馬鈴薯澱粉以外のワキシーコーンスターチやタピオカ澱粉などを配合し、且つ消費者に好まれる食感を保つことが望まれてきた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)ワキシーコーンスターチおよび/またはタピオカ澱粉を膨潤度55〜12好ましくは50〜25となる且つ溶解度30以下、好ましくは、30〜5となる架橋処理を行なうことを特徴する澱粉を使用すること。
(2)該澱粉(A)に架橋処理がエステル化、エーテル化の加工を併用すること。
(3)該澱粉(A)とコーンスターチ、サゴスターチ、甘藷澱粉から選ばれた一種もしくは二種以上の澱粉(B)が(A):(B)=10:90〜95:5の割合で配合されていること。
(4)内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重合度が50以上であるグルカンを穀粉類に対して0.1〜10質量%添加すること。
【発明の効果】
【0010】
即席麺類において、その配合中に従来から使用されてきた馬鈴薯澱粉とは異なる澱粉を原料として、馬鈴薯澱粉の特徴であるつるみと弾力の良好な食感を維持しつつその食感の選択肢の幅を広げ、且つ安価な澱粉原料として供給し得る方法を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
即席麺は、インスタント麺とも呼ばれ、小麦粉又は穀粉を主原料とし、これに水、食塩、改質剤を加えて製麺し、それらを油や水などで処理した後乾燥したものであり、調味料などを添加し、簡易な方法で食することの出来る。
【0012】
即席麺は、その乾燥方法によって油脂を使用するものをフライ麺、使用しないものをノンフライ麺、減圧乾燥によるフリーズドライ麺とに分類される。
【0013】
澱粉(A)は、膨潤度55〜12、好ましくは50〜25且つ溶解度30以下、好ましくは、30〜5となる架橋処理を行なうことを特徴とする。
【0014】
本発明の澱粉の架橋は、リン酸架橋、アジピン酸架橋などから選択できる。リン酸架橋はオキシ塩化リン、無水リン酸、トリメタリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩など架橋剤が例示されるが、オキシ塩化リンもしくはトリメタリン酸ナトリウムが最も好ましい。
【0015】
アジピン酸架橋は無水酢酸および無水アジピン酸の架橋剤が例示される。
【0016】
膨潤度の測定:目的の澱粉を1.0g(乾燥物換算)採取し、脱イオン水100mlに分散し、沸騰水中で10分間加温後30℃に冷却する。次いで、この糊化液を遠心分離(3000rpm、10分間)してゲル層と上澄層に分け、ゲル層の質量(g)を測定してこれをAとする。次いで、質量(g)測定したゲル層を乾固(105℃、恒量)して質量(g)を測定してこれをBとし、A /Bで表す。
【0017】
溶解度の測定:該膨潤度の測定における上澄液全量を乾固(105℃、恒量)し、質量(g)を測定してこれをCとし、(C/乾物試料質量(g))×100で表す。
【0018】
澱粉(B)は、コーンスターチ、サゴスターチ、甘藷澱粉から選ばれた一種もしくは二種以上の澱粉であればどのような配合、どのように加工が施されていても問題なく使用できる。
【0019】
しかしながら澱粉(A)と澱粉(B)が(A):(B)=10:90〜95:5の割合で配合され、(A)+(B)の含有量が穀粉類の合計質量中に5〜30質量%で配合することが必要である。
【0020】
内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重合度が50以上であるグルカンを穀粉類の例としての「クラスター デキストリン」(日本食品化工株式会社製)は、特許第3107358号に製造方法が記載されたデキストリンであり、その澱粉への膨潤抑制効果から即席麺類に配合することで澱粉由来の粘りを抑える食感の微調整として穀粉類に更に添加することが出来る。
【0021】
その添加量は、穀粉類に含まれる澱粉(A)および澱粉(B)の配合割合によって変化するが、概ね0.1〜10質量%添加、好ましくは、0.5〜5質量%添加すること望ましい。
【0022】
実施例 フライ麺による評価
表1に示す配合割合で以下の実施例および比較例の内容にて製麺を行った。ただし、実施例4については表2に示す配合割合によって製麺を行った。製麺方法は常法に従って混合、成型、複合、圧延して麺帯を作り麺線とした。麺線は蒸した後130〜140℃の油でフライし、冷却して試食評価用サンプルとした。
【実施例1】
【0023】
膨潤度45、溶解度30以下となるように架橋処理を行ったタピオカ澱粉(試作品(1))を配合したフライ麺(中華麺)
【実施例2】
【0024】
膨潤度30、溶解度30以下となるように架橋処理を行ったタピオカ澱粉(試作品(2))を配合したフライ麺(中華麺)
【実施例3】
【0025】
膨潤度45、溶解度30以下となるように架橋処理を行ったタピオカ澱粉とコーンスターチを7:3で混合使用したフライ麺(中華麺)
【実施例4】
【0026】
膨潤度45、溶解度30以下となるように架橋処理を行ったタピオカ澱粉とクラスター デキストリンを併用したフライ麺(中華麺)
(比較例1)
【0027】
馬鈴薯澱粉(市販品)を使用したフライ麺(中華麺)
(比較例2)
【0028】
膨潤度60、溶解度30以下であるタピオカ澱粉(試作品(3))を配合したフライ麺(中華麺)
(比較例3)
【0029】
膨潤度10、溶解度30以下となるように架橋処理を行ったタピオカ澱粉(試作品(4))を配合したフライ麺(中華麺)
(比較例4)
【0030】
膨潤度5、溶解度30以下となるように架橋処理を行ったタピオカ澱粉(試作品(5))を配合したフライ麺(中華麺)
【表1】

【表2】

【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワキシーコーンスターチおよび/またはタピオカ澱粉を膨潤度55〜12且つ溶解度30以下となる架橋処理を行なうことを特徴とする澱粉(A)を配合した即席麺類の製造方法。
【請求項2】
架橋処理がエステル化、エーテル化の加工を併用である請求項1の即席麺類の製造方法。
【請求項3】
該澱粉(A)とコーンスターチ、サゴスターチ、甘藷澱粉から選ばれた一種もしくは二種以上の澱粉(B)が(A):(B)=10:90〜95:5の割合で配合され、(A)+(B)の含有量が穀粉類の合計質量中に5〜30質量%で配合されることを特徴とする請求項1〜2記載の即席麺類の製造方法。
【請求項4】
内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重合度が50以上であるグルカンを穀粉類に対して0.1〜10質量%添加すること特徴とする請求項1〜3記載の即席麺類の製造方法。