説明

即湯システム

【課題】貯湯タンクの温度成層を破壊することなく、循環配管からの湯水を貯湯タンクに返湯することができる即湯システムを提供する。
【解決手段】即湯システム1は、給湯配管7から分岐して貯湯タンク2へ戻る循環配管8を有し、この循環配管8に設置した循環ポンプ6を用いて即湯循環運転を行い、循環配管8内の湯温を検出する温度センサ4と、温度センサ4において検出される湯温に応じて、循環配管8から貯湯タンク2に複数形成された湯水の戻り口までの経路を切替える流路切替部3とを備える。この構成により、貯湯タンク2の温度成層を破壊することなく、循環配管8からの湯水を貯湯タンク2に返湯することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即湯を行うことができる即湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、出湯時に即時に湯を出湯する即湯を行うことができる即湯システムがある。この即湯システムにおいては、出湯端末と貯湯タンクとを接続する配管内に貯湯タンク内の湯を循環させることにより、配管内の湯水温度を高温に保つようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5に示すように、この種の即湯システム50は、給湯配管52の出湯端末側の給湯水栓の近くの部位と貯湯タンク51とを接続する循環配管53を備える。この即湯システム50では、給湯配管52の内部の水温が低下したときに循環ポンプ54を動作させて、循環配管53内に湯を循環させることにより、長時間湯の使用がない場合でもすぐに湯を出湯端末から出湯させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−157551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の即湯システム50では、循環運転をするため循環配管53内の湯温は、湯の使用状況や外気温などの環境条件により変化する。また、貯湯タンク51内の湯量も、湯の使用状況などにより変化する。このため、循環配管53から貯湯タンク51に戻る湯の湯温と、貯湯タンク51の湯温とが大きく異なる場合があり、この場合、循環された湯水が貯湯タンク51に戻ると貯湯タンク51内に対流が発生し、貯湯タンク51の温度成層を破壊してしまうという問題がある。
【0006】
具体的には、循環配管53から循環された中温水が貯湯タンク51の低温水の箇所に戻ると、貯湯タンク51は全体的にぬるま湯となってしまう。また、循環配管53から循環された中温水が貯湯タンク51の高温水の箇所に戻ると、貯湯タンク51内の高温水を中温水にしてしまう。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、貯湯タンクの温度成層を破壊することなく、循環配管からの湯水を貯湯タンクに戻すことができる即湯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、給湯配管から分岐して貯湯タンクへ戻る循環配管を有し、この循環配管に設置した循環ポンプを用いて即湯循環運転を行う即湯システムにおいて、循環配管内の湯温を検出する温度検出部と、前記温度検出部において検出される湯温に応じて、前記循環配管から前記貯湯タンクに複数形成された湯水の戻り口までの経路を切替える流路切替部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記即湯システムにおいて、前記貯湯タンクには、当該貯湯タンク内の湯温を検知する温度センサが設けられ、前記流路切替部は、前記温度検出部により検出される湯温と、前記温度センサにより検出される湯温との差分が少なくなるように、前記経路を切替えることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る即湯システムによれば、循環配管から貯湯タンクに形成された複数の湯水の戻り口までの経路を、循環配管に設置した温度センサの検出値に基づいて変更するため、貯湯タンクの温度成層を破壊することなく、湯水を貯湯タンクに戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る即湯システムの構成図。
【図2】同即湯システムの動作手順を示すフローチャート。
【図3】本実施形態の変形例に係る即湯システムの構成図。
【図4】同即湯システムの動作手順を示すフローチャート。
【図5】従来の即湯システムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係る即湯システムについて図面を参照して説明する。本実施形態に係る即湯システム1は、湯水を貯える貯湯タンク2、流路切替部3、温度センサ4、逆止弁5、及び即湯用の循環ポンプ6を備えている。この即湯システム1は、図1の点線の矢印に示すように貯湯タンク2、給湯配管7、及びこの給湯配管7から分岐して貯湯タンク2へ戻る循環配管8から成る湯水の循環経路を有し、循環配管8に設置した循環ポンプ6を用いて即湯循環運転を行う機能を有している。この機能により、給湯配管7及び循環配管8内の湯水を所定温度以上に保ち、出湯端末からすぐに湯を出湯できる。
【0013】
貯湯タンク2は、熱源機であるヒートポンプ(図示せず)に給水すると共に、断熱材を用いてヒートポンプで加熱された湯を保温しながら貯留する機能を有する。この貯湯タンク2には、循環配管8からの湯水の戻り口が複数形成されている。貯湯タンク2内の湯の温度は、貯湯タンク2の上層部が最も高温で、中層部ではそれよりも低い中温となり、下層部では最も低温になり、上層部から高温水を給湯配管7に出湯し、給水管からの水と混合し、所定温度にして出湯端末へ給湯している。なお、貯湯タンク2の上層部から出湯が行なわれると、貯湯タンク2の下層部にその出湯分だけ水が供給される。
【0014】
流路切替部3は、温度センサ4から循環配管8を通る湯水の湯温を取得し、この湯温に基づいて、循環配管8から貯湯タンク2に複数形成された湯水の戻り口までの流路の切り替えを行う。即湯システム1では、流路切替部3と貯湯タンク2との間の循環配管8に三方弁が設けられ、循環配管8から貯湯タンク2の戻り口へと戻る湯の経路が3つに分岐されている。流路切替部3は、温度センサ4の検出値に応じて三方弁に制御信号を送信して弁方向を自動で切替えることで、湯水が貯湯タンク2へ戻る経路を高温部、中温部、若しくは低温部に切替える。
【0015】
温度センサ4は、例えば半導体などの電気抵抗が温度で変化することを利用して循環配管8内を通る湯水の温度を測る温度センサである。逆止弁5は、循環配管8に取り付けられ、湯水が貯湯タンク2から循環配管8を経由して出湯端末に流れることを防止する。循環ポンプ6は、循環配管8内の湯水を循環させるためのポンプであり、この循環ポンプ6が駆動されることにより、循環経路中の水を貯湯タンク2の比較的温度が高い湯水により暖めることができる。
【0016】
次に、本実施形態の循環システム1の動作を説明する。図2に示すように、最初に、流路切替部3は、温度センサ4から循環配管8を通る湯水の湯温を取得し、デフォルト値などで保持された高温の範囲となるか否かを判定する(S21)。高温である場合(S21でYes)、流路切替部3は、弁方向を図1に示す経路1に切替える(S22)。また、流路切替部3は、高温でない場合には(S21でNo)、中温の範囲となるか否かを判定する(S23)。中温となる場合には(S23でYes)、流路切替部3は、弁方向を図1に示す経路2に切替える(S24)。一方、流路切替部3は、中温とならない場合には(S23でNo)、低温となるため弁方向を経路3に切替える(S25)。
【0017】
以上のように、本実施形態に係る即湯システム1は、循環配管8内の湯温を検出する温度センサ4と、温度センサ4において検出される湯温に応じて循環配管8から貯湯タンク2に複数形成された湯水の戻り口までの経路を切替える流路切替部3とを備える。この構成により、流路切替部3は、循環配管8から貯湯タンク2に戻る湯温に適した経路に切替えることができ、貯湯タンク2の温度成層を破壊することなく、循環配管8からの湯水を貯湯タンク2に返湯することができる。
【0018】
以下、本実施形態の変形例に係る給湯システムについて図面を参照しながら説明する。本変形例に係る即湯システム1は、図3に示すように、貯湯タンク2の湯水の温度分布を検知する複数のサーミスタ9a〜9dを備えている。なお、上記の実施形態の即湯システム1と同様の構成部には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0019】
サーミスタ9a〜9dは、貯湯タンク2の湯水の温度分布を測る温度センサであり、貯湯タンク2の側壁に上部から下部にかけて複数備えられる。本変形例においては、サーミスタ9aでは湯温T1が、サーミスタ9bでは湯温T2が、サーミスタ9cでは湯温T3が、サーミスタ9dでは湯温T4が検出される。ここでT1からT4の順番で温度は低下している。流路切替部3は、温度センサ4の検出温度と、貯湯タンク2に設置したサーミスタ9a〜9dの検出温度T1〜T4とを比較して、湯温の差分ができるだけ少なくなるように循環配管8から貯湯タンク2に複数形成された湯水の戻り口までの経路を切替える。
【0020】
次に、本変形例に係る即湯システム1の動作を説明する。図4に示すように、最初に、流路切替部3は、温度センサ4により検出される循環配管8内の湯水の湯温TがT1以上の場合には(S41でYes)、経路1に弁方向を切替える(S42)。そして、流路切替部3は、湯温TがT2以上T1未満となる場合には(S43でYes)、経路2に弁方向を切替える(S44)。次に、流路切替部3は、湯温TがT3以上T2未満の場合には(S45でYes)、経路3に弁方向を切替え(S46)、湯温Tがこれを満たさないT3未満の場合には(S45でNo)、経路4に弁方向を切替える(S47)。
【0021】
以上のように、本変形例に係る即湯システム1において、流路切替部3は、温度センサ4により検出される循環配管8内の湯温Tと、サーミスタ9a〜9dにより検出される貯湯タンク2内の湯温T1〜T4とに基づいて、湯温の差分が少なくなるように循環配管8から貯湯タンク2に複数形成された湯水の戻り口までの経路を切替える。従って、流路切替部3は、沸き上げ時など貯湯タンク2内の湯量の判定に必要で元々設置していたサーミスタ9a〜9dを用いて、貯湯タンク2の温度成層を破壊することなく、循環配管8からの湯水を貯湯タンク2に返湯することができる。
【0022】
なお、本発明は、上記実施形態及び変形例の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、流路切替部3において切替えられる貯湯タンク2の戻り口までの経路は2つ以上であればよく、貯湯タンク2に設置されるサーミスタも2つ以上あればよい。
【符号の説明】
【0023】
1 即湯システム
2 貯湯タンク
3 流路切替部
4 温度センサ
5 逆止弁
6 循環ポンプ
7 給湯配管
8 循環配管
9a〜9d サーミスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯配管から分岐して貯湯タンクへ戻る循環配管を有し、この循環配管に設置した循環ポンプを用いて即湯循環運転を行う即湯システムにおいて、
循環配管内の湯温を検出する温度検出部と、前記温度検出部において検出される湯温に応じて、前記循環配管から前記貯湯タンクに複数形成された湯水の戻り口までの経路を切替える流路切替部と、を備えることを特徴とする即湯システム。
【請求項2】
前記貯湯タンクには、当該貯湯タンク内の湯温を検知する温度センサが設けられ、
前記流路切替部は、前記温度検出部により検出される湯温と、前記温度センサにより検出される湯温との差分が少なくなるように、前記経路を切替えることを特徴とする請求項1記載の即湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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