説明

卵巣癌に関する健康状態及び卵巣癌のリスクに関する健康状態の診断方法

【課題】卵巣癌(OC)の存在を示す健康状態を予測する方法、具体的には、ビタミンEアイソフォーム及び関連代謝産物の測定を通した、OCの診断に関する。開業医が、スクリーニングした患者が卵巣癌に陽性である可能性又はそのリスクを有する可能性を判定することを可能にする。
【解決手段】未確定の健康状態を有する患者からの血液試料中の、代謝産物と呼ばれる特異的小有機分子の強度を測定し、これらの強度を、健康な個体の集団で観察される強度及び/又は確認された卵巣癌陽性の個体の集団で前に観察された強度と比較する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臨床的に診断された卵巣癌陽性の患者と正常な無病対象との間で存在度又は強度が有意に異なることが見出される小分子又は代謝産物に関する。本発明は、卵巣癌、又は卵巣癌の発症リスクの診断方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
卵巣癌は、女性の間で癌死の5番目の主な原因である(Screening for ovarian cancer: recommendation statement. Ann Fam Med 2004;2:260-2)。米国だけで、22,000件以上の卵巣癌の新症例が今年診断されると推定され、そのうち16,210人の死が予測される(Chu CS, Rubin SC. Screening for ovarian cancer in the general population. Best Pract Res Clin Obstet Gynaecol 2005)。患者が悪い予後と関連する第III期又はIV期に到達するまで、卵巣癌は一般に特定されない。5年生存率は、約25〜30%と推定される(Hanna L, Adams M. Prevention of ovarian cancer. Best Pract Res Clin Obstet Gynaecol 2005)。現行の卵巣癌のスクリーニング手順は、双手骨盤検査、経膣的超音波検査、及び、タンパク質癌抗原である癌抗原−125(CA125、cancer antigen-125)の上昇についての血清スクリーニングの組合せを含む(Chu CS, Rubin SC. Screening for ovarian cancer in the general population. Best Pract Res Clin ObstetGynaecol 2005)。スクリーニングが死亡率を低下させる証拠が不十分なので、卵巣癌のためのCA125スクリーニングの効力は、その恩恵が現在未知であり、偽陽性結果と関連するリスクのために、それは詳細な調査の最中である(Screening for ovarian cancer: recommendation statement. Ann Fam Med 2004;2:260-2、Rosenthal A, Jacobs I. Familial ovarian cancer screening. Best Pract Res Clin Obstet Gynaecol 2005)。アメリカ癌学会によると、CA125測定及び経膣的超音波検査は卵巣癌のための信頼できるスクリーニング若しくは診断検査ではなく、確定診断をするために利用可能な現在唯一の方法は手術によるものである(http://www.cancer.org)。
【0003】
CA125は、正常な細胞と比較してほとんどの卵巣癌細胞で上昇することが見出された、高分子量ムチンである(Chu CS, Rubin SC. Screening for ovarian cancer in the general population. Best Pract Res Clin Obstet Gynaecol 2005)。一般に、30〜35U/mlより高いCA125検査結果が、上昇したレベルであると受け入れられている(Chu CS, Rubin SC. Screening for ovarian cancer in the general population. Best Pract Res Clin Obstet Gynaecol 2005)。上昇したCA125を定義するために用いられる異なる閾値、検査する患者群の様々なサイズ、並びに患者の年齢及び民族性の広い範囲のために、卵巣癌のためのCA125スクリーニングの正確性、感受性及び特異性の確立が困難であった(Screening for ovarian cancer: recommendation statement. Ann Fam Med 2004;2:260-2)。ジョンズホプキンス大学病理学ウェブサイトによると、CA125検査は、第I期患者の約50%、並びに第II期、第III期及び第IV期患者の(http://pathology2.jhu.edu)約80%で卵巣癌について真の陽性結果を示すだけである。子宮内膜症、良性卵巣嚢胞、骨盤炎症性疾患、及び妊娠の第一の三半期さえも、すべて、CA125の血清レベルを上昇させることが報告されている(Rosenthal A, Jacobs I. Familial ovarian cancer screening. Best Pract Res Clin Obstet Gynaecol 2005)。国立予防衛生研究所ウェブサイトは、CA125が卵巣癌の有効な一般的スクリーニング検査ではないと記載している。上昇したCA125レベルを有する100人の健康女性のうちのわずか約3人が、実際に卵巣癌を有することが見出され、卵巣癌と診断された患者の約20%が実際に上昇したCA125レベルを有すると彼らは報告している(http://www.nlm.nih.gov/medlineplus/ency/article/007217.htm)。
【0004】
卵巣癌の検出を向上させる必要性があることは、明白である。卵巣癌のリスク若しくはその存在を検出することができる検査、又は攻撃的な疾患を高い特異性及び感受性で予測することができる検査は非常に有益であり、卵巣癌の罹患率に影響を与えるであろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Screening for ovarian cancer: recommendation statement. Ann Fam Med 2004;2:260-2
【非特許文献2】Chu CS, Rubin SC. Screening for ovarian cancer in the general population. Best Pract Res Clin Obstet Gynaecol 2005
【非特許文献3】Hanna L, Adams M. Prevention of ovarian cancer. Best Pract Res Clin Obstet Gynaecol 2005
【非特許文献4】Rosenthal A, Jacobs I. Familial ovarian cancer screening. Best Pract Res Clin Obstet Gynaecol 2005
【非特許文献5】http://www.cancer.org
【非特許文献6】http://pathology2.jhu.edu
【非特許文献7】http://www.nlm.nih.gov/medlineplus/ency/article/007217.htm
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、卵巣癌を有する者と正常な対象との間で存在度が有意に異なることが見出される小分子又は代謝産物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、卵巣癌を示すか卵巣癌の発症リスクのある健康状態の診断のために、ハイスループットスクリーニング(HTS、high-throughput screening)アッセイを特定、検
証及び実施する方法を提供する。特定の実施例では、本方法は正常な生体試料と卵巣癌陽性の生体試料との間で異なるすべての統計的に有意な代謝産物の特徴を特定するための、非標的フーリエ変換イオンサイクロトロン質量分析(FTMS、Fourier transform ion cyclotron mass spectrometry)技術を用いる卵巣癌陽性の生体試料及び正常な生体試料
の分析と、その後の、多変量統計を用いる最適な特徴のサブセットの選択、並びに、それらに限定されないがクロマトグラフ分離、質量分析(MS/MS)及び核磁気共鳴(NMR、nuclear magnetic resonance)を含む方法を用いる特徴セットの特徴づけを包含し、その目的は以下の通りである:
1.代謝産物を分離して、その保持時間を特定すること;
2.各代謝産物に特異的な記述的MS/MS断片化パターンを生むこと;
3.分子構造を解明すること;及び
4.それに限定されないがタンデム質量分析に基づいて、ハイスループットの定量的若しくは半定量的なMS/MSベースの診断アッセイを開発すること。
【0008】
本発明は、試料中に存在する特異的小分子のレベルを測定し、それらを「正常な」参照レベルと比較することによる、ヒトの卵巣癌又は卵巣癌の発症リスクの診断方法をさらに提供する。本方法は、患者からの試料中の代謝産物とも呼ばれる特異的小分子の強度を測定し、これらの強度を、健康な個体集団で観察される強度と比較する。ヒトから得られる試料は、血液試料であってよい。
【0009】
本発明は、卵巣癌又は卵巣癌の発症リスクを検出する能力をかなり改善することができ、したがって命を救うことができる。これらの試料に基づく検査の統計的性能は、その検査が、卵巣癌のための他の唯一の血清ベースの診断検査であるCA125検査に優ることを示唆する。或いは、本明細書で記載される検査とCA125検査との組合せは、各検査の全体の診断性能を向上させることができる。HTSアッセイの開発を含む本発明の方法は以下のために用いることができ、そこにおいて、特定の「健康状態」は、それに限定されないが卵巣癌を指す:
1.個体から採取される任意の生体試料を用いて、卵巣癌陽性の個体と卵巣癌陰性の個体とを区別することができる小分子代謝産物バイオマーカーを同定すること;
2.血清、血漿、全血及び/又は本明細書で記載される他の組織生検材料などの試料で同定された代謝産物を用いて卵巣癌を特異的に診断すること;
3.本明細書で指摘するものなどの様々な統計的方法を用いて、最適な診断アッセイ能力統計のために必要とされるより大きなサブセットからいくつかの代謝産物特徴を選択すること;
4.LC−MS/MS、MS及びNMRを用いる非標的代謝分析から選択されるバイオマーカー代謝産物の構造的特性を特定すること;
5.試料中の選択代謝産物レベルを分析するためのハイスループットタンデムMS法を開発すること;
6.それらに限定されないが質量分析、NMR、UV検出、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ、enzyme-linked immunosorbant assay)、化学反応、像解析又は他を含む
任意の方法を用いて、患者試料のFTMS分析から開示される代謝産物特徴の任意の組合せのレベルを判定することにより、卵巣癌又は卵巣癌の発症リスクを診断すること;
7.薬剤(化学療法)、放射線療法、手術、食事、生活様式の影響又は他を含む、卵巣癌の任意の治療処置をモニタリングすること;
8.方法で開示される任意の単一の特徴又は特徴の組合せを用いる、卵巣癌についての一般集団の長期的なモニタリング又はスクリーニング;
9.手術、化学療法、放射線療法、生物学的療法又は他を含む治療の影響を判定又は予測すること。
10.疾患病期及び攻撃性を含む腫瘍サブタイプを判定又は予測すること。
【0010】
本発明の一実施形態では、正常試料と卵巣癌陽性試料との間(p<0.05)で異なる代謝産物の集団が提供される。表1に示すように、424個の代謝産物がこの基準を満たした。これらの代謝産物は2つの集団の間で統計学的に異なり、したがって、潜在的な診断の有用性を有する。したがって、本発明の1つの実施形態は、424個の代謝産物又はそれらの亜集団に向けられる。本発明のさらなる実施形態は、卵巣癌又は卵巣癌の発症リスクを診断するための、424個の代謝産物又はそれらの亜集団の使用に向けられる。
【0011】
本発明のさらなる実施形態では、卵巣癌陽性試料と正常試料との間で統計的に有意な異なる存在度又は強度を有するいくつかの代謝産物が提供される。同定された代謝産物集団のうちの任意の亜集団を、卵巣癌陽性状態と正常な状態とを区別するために用いることができた。本発明では、37個の代謝産物質量の集団がさらに選択され、それらが卵巣癌試料と対照試料とを区別することが示される実施例が提供される。
【0012】
本発明のこの実施形態では、血清試料中の疾患の存在の診断指標として用いることができる、37個の代謝産物質量の集団が提供される。37個の代謝産物には、質量(ダルトンで測定)が440.3532、446.3413、448.3565、450.3735、464.3531、466.3659、468.3848、474.3736、478.405、484.3793、490.3678、492.3841、494.3973、502.4055、504.4195、510.3943、512.4083、518.3974、520.4131、522.4323、530.437、532.4507、534.3913、538.427、540.4393、548.4442、550.4609、558.4653、566.4554、574.4597、576.4762、578.493、590.4597、592.4728、594.4857、596.5015、598.5121のものを含めることができ、そこにおいて、+/−5ppmの差は同じ代謝産物を示すものとなろう。本発明のこの実施形態は、卵巣癌又は卵巣癌の発症リスクを診断するための、37個の代謝産物又はそれらの亜集団の使用も含む。
【0013】
本発明のさらなる実施形態では、血清試料中の疾患の存在の診断指標として用いることができる、31個の代謝産物質量の集団が提供される。31個の代謝産物には、質量(ダルトンで測定)が446.3413、448.3565、450.3735、468.3848、474.3872、476.5、478.405、484.3793、490.3678、492.3841、494.3973、496.4157、502.4055、504.4195、512.4083、518.3974、520.4131、522.4323、530.437、532.4507、538.427、540.4393、550.4609、558.4653、574.4597、576.4757、578.4848、592.357、594.4848、596.5012、598.5121のものを含めることができ、そこにおいて、+/−5ppmの差は同じ代謝産物を示すものとなろう。本発明のこの実施形態は、卵巣癌又は卵巣癌の発症リスクを診断するための、31個の代謝産物又はそれらの亜集団の使用も含む。
【0014】
本発明のさらなる実施形態では、血清試料中の疾患の存在の診断指標として用いることができる、30個の代謝産物質量の集団が提供される。30個の代謝産物には、446.3396、448.3553、450.3709、468.3814、474.3736、478.4022、484.3764、490.3658、492.3815、494.3971、496.4128、502.4022、504.4179、512.4077、518.3971、520.4128、522.8284、530.43351、532.44916、538.4233、540.4389、550.4597、558.4648、574.4597、576.4754、578.4910、592.47029、594.4859、596.5016及び598.5172に実質的に等しい質量(ダルトンで測定)のものを含めることができ、そこにおいて、+/−5ppmの差は同じ代謝産物を示すものとなろう。本発明のこの実施形態は、卵巣癌又は卵巣癌の発症リスクを診断するための、30個の代謝産物又はそれらの亜集団の使用も含む。本発明のこの実施形態では、これらの質量を有する代謝産物の分子式は、それぞれC28H46O4、C28H48O4、C28H50O4、C28H52O5、C30H50O4、C30H54O4、C28H52O6、C30H50O5、C30H52O5、C30H54O5、C30H56O5、C32H54O4、C32H56O4、C30H56O6、C32H54O5、C32H56O5、C32H60O5、C34H58O4、C34H60O4、C32H58O6、C32H60O6、C34H62O5、C36H62O4、C36H62O5、C36H64O5、C36H66O5、C36H64O6、C36H66O6、C36H68O6及びC36H70O6であり、提案されている構造は、それぞれ以下に示す通りである:
【0015】
【化1】


【0016】
本発明のさらなる実施形態では、対照と比較して卵巣患者の血清中で有意により低いことが見出された6つのC28炭素分子(中性質量450(C28H50O4)、446(C28H46O4)、468(C28H52O5)、448(C28H48O4)、464(C28H48O5)及び466(C28H50O5))の集団が提供される。
【0017】
本発明の一実施形態では、卵巣癌を診断するために代謝産物を同定する方法であって、前記疾患状態を呈する患者からの試料を高分解能質量分析計、例えばフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計(FTMS)に導入する工程であって、前記試料が複数の未同定の代謝産物を含む工程と;代謝産物のデータを取得、特定及び定量化する工程と;前記データのデータベースを作成する工程と;試料からの前記データを対照集団の試料からの対応データと比較する工程と;異なる1又は複数の代謝産物を同定する工程と;最適診断のために必要とされる最少数の代謝産物マーカーを選択する工程とを含む方法が提供される。
【0018】
本発明のさらなる実施形態では、卵巣癌特異代謝マーカーを同定する方法であって、卵巣癌と診断された患者からの試料をフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計(FTMS)に導入する工程であって、前記試料が複数の未同定の代謝産物を含む工程と;代謝産物のデータを取得、特定及び定量化する工程と;前記データのデータベースを作成する工程と;試料からの前記データを対照試料からの対応データと比較する工程と;異なる1又は複数の代謝産物を同定する工程であって、代謝産物が、440.3532、446.3413、448.3565、450.3735、464.3531、466.3659、468.3848、474.3736、478.405、484.3793、490.3678、492.3841、494.3973、502.4055、504.4195、510.3943、512.4083、518.3974、520.4131、522.4323、530.437、532.4507、534.3913、538.427、540.4393、548.4442、550.4609、558.4653、566.4554、574.4597、576.4762、578.493、590.4597、592.4728、594.4857、596.5015、598.5121の精確な質量又はそれらと実質的に等しい質量を有する代謝産物からなる群から選択され、+/−5ppmの差は同じ代謝産物であることを示す工程とを含む方法が提供される。
【0019】
本発明のさらなる実施形態では、卵巣癌特異代謝マーカーを同定する方法であって、卵巣癌と診断された患者からの試料をフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計(FTMS)に導入する工程であって、前記試料が複数の未同定の代謝産物を含む工程と;代謝産物のデータを取得、特定及び定量化する工程と;前記データのデータベースを作成する工程と;試料からの前記データを対照試料からの対応データと比較する工程と;異なる1又は複数の代謝産物を同定する工程であって、代謝産物が、446.3413、448.3565、450.3735、468.3848、474.3872、476.5、478.405、484.3793、490.3678、492.3841、494.3973、496.4157、502.4055、504.4195、512.4083、518.3974、520.4131、522.4323、530.437、532.4507、538.427、540.4393、550.4609、558.4653、574.4597、576.4757、578.4848、592.357、594.4848、596.5012、598.5121の精確な質量又はそれらと実質的に等しい質量を有する代謝産物からなる群から選択され、+/−5ppmの差は同じ代謝産物であることを示す工程とを含む方法が提供される。
【0020】
本発明のさらなる実施形態では、卵巣癌特異代謝マーカーを同定する方法であって、卵巣癌と診断された患者からの試料をフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計(FTMS)に導入する工程であって、前記試料が複数の未同定の代謝産物を含む工程と;代謝産物のデータを取得、特定及び定量化する工程と;前記データのデータベースを作成する工程と;試料からの前記データを対照試料からの対応データと比較する工程と;異なる1又は複数の代謝産物を同定する工程であって、代謝産物が、446.3396、448.3553、450.3709、468.3814、474.3736、478.4022、484.3764、490.3658、492.3815、494.3971、496.4128、502.4022、504.4179、512.4077、518.3971、520.4128、522.8284、530.43351、532.44916、538.4233、540.4389、550.4597、558.4648、574.4597、576.4754、578.4910、592.47029、594.4859、596.5016及び598.5172の精確な質量又はそれらと実質的に等しい質量を有する代謝産物からなる群から選択され、+/−5ppmの差は同じ代謝産物であることを示す工程とを含む方法が提供される。本発明のこの実施形態では、これらの質量を有する代謝産物の分子式は、それぞれC28H46O4、C28H48O4、C28H50O4、C28H52O5、C30H50O4、C30H54O4、C28H52O6、C30H50O5、C30H52O5、C30H54O5、C30H56O5、C32H54O4、C32H56O4、C30H56O6、C32H54O5、C32H56O5、C32H60O5、C34H58O4、C34H60O4、C32H58O6、C32H60O6、C34H62O5、C36H62O4、C36H62O5、C36H64O5、C36H66O5、C36H64O6、C36H66O6、C36H68O6及びC36H70O6であり、提案されている構造はそれぞれ以下に示す通りである:
【0021】
【化2】


【0022】
本発明のさらなる実施形態では、卵巣癌特異代謝マーカーを同定する方法であって、卵巣癌と診断された患者からの試料をフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計(FTMS)に導入する工程であって、前記試料が複数の未同定の代謝産物を含む工程と;代謝産物のデータを取得、特定及び定量化する工程と;前記データのデータベースを作成する工程と;試料からの前記データを対照試料からの対応データと比較する工程と;異なる1又は複数の代謝産物を同定する工程であって、代謝産物が、6つのC28炭素分子(中性質量450(C28H50O4)、446(C28H46O4)、468(C28H52O5)、448(C28H48O4)、464(C28H48O5)及び466(C28H50O5))の精確な質量又はそれらと実質的に等しい質量を有する代謝産物からなる群から選択される工程とを含む方法が提供される。
【0023】
本発明のさらなる実施形態では、440.3532、446.3413、448.3565、450.3735、464.3531、466.3659、468.3848、474.3736、478.405、484.3793、490.3678、492.3841、494.3973、502.4055、504.4195、510.3943、512.4083、518.3974、520.4131、522.4323、530.437、532.4507、534.3913、538.427、540.4393、548.4442、550.4609、558.4653、566.4554、574.4597、576.4762、578.493、590.4597、592.4728、594.4857、596.5015、598.5121の精確な質量又はそれらと実質的に等しい質量を有する代謝産物からなる群から選択され、+/−5ppmの差は同じ代謝産物を示すものとなろう卵巣癌特異代謝マーカーが提供される。
【0024】
本発明のさらなる実施形態では、446.3413、448.3565、450.3735、468.3848、474.3872、476.5、478.405、484.3793、490.3678、492.3841、494.3973、496.4157、502.4055、504.4195、512.4083、518.3974、520.4131、522.4323、530.437、532.4507、538.427、540.4393、550.4609、558.4653、574.4597、576.4757、578.4848、592.357、594.4848、596.5012、598.5121の精確な質量又はそれらと実質的に等しい質量を有する代謝産物からなる群から選択され、+/−5ppmの差は同じ代謝産物を示すものとなろう卵巣癌特異代謝マーカーが提供される。
【0025】
本発明のさらなる実施形態では、446.3396、448.3553、450.3709、468.3814、474.3736、478.4022、484.3764、490.3658、492.3815、494.3971、496.4128、502.4022、504.4179、512.4077、518.3971、520.4128、522.8284、530.43351、532.44916、538.4233、540.4389、550.4597、558.4648、574.4597、576.4754、578.4910、592.47029、594.4859、596.5016及び598.5172の精確な質量又はそれらと実質的に等しい質量を有する代謝産物からなる群から選択され、+/−5ppmの差は同じ代謝産物であることを示す卵巣癌特異代謝マーカーが提供される。本発明のこの実施形態では、これらの質量を有する代謝産物の分子式は、それぞれC28H46O4、C28H48O4、C28H50O4、C28H52O5、C30H50O4、C30H54O4、C28H52O6、C30H50O5、C30H52O5、C30H54O5、C30H56O5、C32H54O4、C32H56O4、C30H56O6、C32H54O5、C32H56O5、C32H60O5、C34H58O4、C34H60O4、C32H58O6、C32H60O6、C34H62O5、C36H62O4、C36H62O5、C36H64O5、C36H66O5、C36H64O6、C36H66O6、C36H68O6及びC36H70O6であり、提案されている構造はそれぞれ以下に示す通りである:
【0026】
【化3】


【0027】
本発明のさらなる実施形態では、卵巣癌又は卵巣癌の発症リスクの存在について患者を診断する方法であって、前記患者からの試料を、表1に記載の質量の精確な質量又はそれらに実質的に等しい質量を有する代謝産物からなる群から選択される1又は複数の代謝マーカーの有無についてスクリーニングする工程であって、+/−5ppmの差は同じ代謝産物であることを示す工程を含み;前記代謝マーカーの1又は複数の非存在又は有意な減少は、卵巣癌又は卵巣癌の発症リスクの存在を示す、FTMSベースの方法である方法が提供される。
【0028】
本発明のさらなる実施形態では、卵巣癌又は卵巣癌の発症リスクの存在について患者を診断する方法であって、前記患者からの試料を、440.3532、446.3413、448.3565、450.3735、464.3531、466.3659、468.3848、474.3736、478.405、484.3793、490.3678、492.3841、494.3973、502.4055、504.4195、510.3943、512.4083、518.3974、520.4131、522.4323、530.437、532.4507、534.3913、538.427、540.4393、548.4442、550.4609、558.4653、566.4554、574.4597、576.4762、578.493、590.4597、592.4728、594.4857、596.5015、598.5121の精確な質量又はそれらに実質的に等しい質量を有する代謝産物からなる群から選択される1又は複数の代謝マーカーの有無についてスクリーニングする工程であって、+/−5ppmの差は同じ代謝産物であることを示す工程を含み;前記代謝マーカーの1又は複数の非存在又は有意な減少は、卵巣癌又は卵巣癌の発症リスクの存在を示す方法が提供される。
【0029】
本発明のさらなる実施形態では、卵巣癌又は卵巣癌の発症リスクの存在について患者を診断する方法であって、前記患者からの試料を、446.3413、448.3565、450.3735、468.3848、474.3872、476.5、478.405、484.3793、490.3678、492.3841、494.3973、496.4157、502.4055、504.4195、512.4083、518.3974、520.4131、522.4323、530.437、532.4507、538.427、540.4393、550.4609、558.4653、574.4597、576.4757、578.4848、592.357、594.4848、596.5012、598.5121の精確な質量又はそれらに実質的に等しい質量を有する代謝産物からなる群から選択される1又は複数の代謝マーカーの有無についてスクリーニングする工程であって、+/−5ppmの差は同じ代謝産物であることを示す工程を含み;前記代謝マーカーの1又は複数の非存在又は有意な減少は、卵巣癌又は卵巣癌の発症リスクの存在を示す方法が提供される。
【0030】
本発明のさらなる実施形態では、卵巣癌又は卵巣癌の発症リスクの存在について患者を診断する方法であって、前記患者からの試料を、446.3396、448.3553、450.3709、468.3814、474.3736、478.4022、484.3764、490.3658、492.3815、494.3971、496.4128、502.4022、504.4179、512.4077、518.3971、520.4128、522.8284、530.43351、532.44916、538.4233、540.4389、550.4597、558.4648、574.4597、576.4754、578.4910、592.47029、594.4859、596.5016及び598.5172の精確な質量又はそれらに実質的に等しい質量を有する代謝産物からなる群から選択される1又は複数の代謝マーカーの有無についてスクリーニングする工程であって、+/−5ppmの差は同じ代謝産物であることを示す工程を含み;前記代謝マーカーの1又は複数の非存在又は有意な減少は、卵巣癌又は卵巣癌の発症リスクの存在を示す方法が提供される。本発明のこの実施形態では、これらの質量を有する代謝産物の分子式は、それぞれC28H46O4、C28H48O4、C28H50O4、C28H52O5、C30H50O4、C30H54O4、C28H52O6、C30H50O5、C30H52O5、C30H54O5、C30H56O5、C32H54O4、C32H56O4、C30H56O6、C32H54O5、C32H56O5、C32H60O5、C34H58O4、C34H60O4、C32H58O6、C32H60O6、C34H62O5、C36H62O4、C36H62O5、C36H64O5、C36H66O5、C36H64O6、C36H66O6、C36H68O6及びC36H70O6であり、提案されている構造はそれぞれ以下に示す通りである:
【0031】
【化4】


【0032】
本発明のさらなる実施形態では、卵巣癌又は卵巣癌の発症リスクの存在について患者を診断する方法であって、前記患者からの試料を、中性質量450(C28H50O4)、446(C28H46O4)、468(C28H52O5)、448(C28H48O4)、464(C28H48O5)及び466(C28H50O5)の精確な質量又はそれらと実質的に等しい質量を有する代謝産物からなる群から選択される1又は複数の代謝マーカーの有無についてスクリーニングする工程を含み、前記代謝マーカーの1又は複数の非存在又は有意な減少は、卵巣癌又は卵巣癌の発症リスクの存在を示す方法が提供される。
【0033】
本発明のさらなる実施形態では、未知の卵巣癌状態の試験対象における卵巣癌の有無を診断する方法であって、試験対象からの血液試料を分析して、表1に示す精確な中性質量によって同定される分子を含む群から選択される分子であって、+/−5ppmの差は同じ代謝産物を示すものとなろう分子、又はこれらの分子若しくはそれらの誘導体の断片と実質的に同等の質量を有する分子についての定量化データを得る工程と;前記試験対象の前記分子について得られる定量化データを、卵巣癌陽性の複数のヒトからの前記分子から得られる定量化データ、又は卵巣癌陰性の複数のヒトから得られる定量化データと比較する工程とを含み;試験対象が卵巣癌陽性又は陰性である可能性を判定するために前記比較を用いることができる方法が提供される。
【0034】
本発明のさらなる実施形態では、未知の卵巣癌状態の試験対象における卵巣癌の有無を診断する方法であって、試験対象からの血液試料を分析して、中性の精確な質量440.3532、446.3413、448.3565、450.3735、464.3531、466.3659、468.3848、474.3736、478.405、484.3793、490.3678、492.3841、494.3973、502.4055、504.4195、510.3943、512.4083、518.3974、520.4131、522.4323、530.437、532.4507、534.3913、538.427、540.4393、548.4442、550.4609、558.4653、566.4554、574.4597、576.4762、578.493、590.4597、592.4728、594.4857、596.5015、598.5121によって同定される分子を含む群から選択される分子であって、+/−5ppmの差は同じ代謝産物を示すものとなろう分子、又はこれらの分子若しくはそれらの誘導体の断片と実質的に同等の質量を有する分子についての定量化データを得る工程と;前記試験対象の前記分子について得られる定量化データを、卵巣癌陽性の複数のヒトからの前記分子から得られる定量化データ、又は卵巣癌陰性の複数のヒトから得られる定量化データと比較する工程とを含み;試験対象が卵巣癌陽性又は陰性である可能性を判定するために前記比較を用いることができる方法が提供される。
【0035】
本発明のさらなる実施形態では、未知の卵巣癌状態の試験対象における卵巣癌の有無を診断する方法であって、試験対象からの血液試料を分析して、中性の精確な質量446.3413、476.5、448.3565、450.3735、468.3848、474.3872、478.405、484.3793、490.3678、492.3841、494.3973、496.4157、502.4055、504.4195、512.4083、518.3974、520.4131、522.4323、530.437、532.4507、538.427、540.4393、550.4609、558.4653、574.4597、576.4757、578.4848、592.357、594.4848、596.5012、598.5121によって同定される分子を含む群から選択される分子であって、+/−5ppmの差は同じ代謝産物を示すものとなろう分子、又はこれらの分子若しくはそれらの誘導体の断片と実質的に同等の質量を有する分子についての定量化データを得る工程と;前記試験対象の前記分子について得られる定量化データを、卵巣癌陽性の複数のヒトからの前記分子から得られる定量化データ、又は卵巣癌陰性の複数のヒトから得られる定量化データと比較する工程とを含み;試験対象が卵巣癌陽性又は陰性である可能性を判定するために前記比較を用いることができる方法が提供される。
【0036】
本発明のさらなる実施形態では、未知の卵巣癌状態の試験対象における卵巣癌の有無を診断する方法であって、試験対象からの血液試料を分析して、中性の精確な質量446.3396、448.3553、450.3709、468.3814、474.3736、478.4022、484.3764、490.3658、492.3815、494.3971、496.4128、502.4022、504.4179、512.4077、518.3971、520.4128、522.8284、530.43351、532.44916、538.4233、540.4389、550.4597、558.4648、574.4597、576.4754、578.4910、592.47029、594.4859、596.5016及び598.5172によって同定される分子を含む群から選択される分子であって、+/−5ppmの差は同じ代謝産物を示すものとなろう分子、又はこれらの分子若しくはそれらの誘導体の断片と実質的に同等の質量を有する分子についての定量化データを得る工程と;前記試験対象の前記分子について得られる定量化データを、卵巣癌陽性の複数のヒトからの前記分子から得られる定量化データ、又は卵巣癌陰性の複数のヒトから得られる定量化データと比較する工程とを含み;試験対象が卵巣癌陽性又は陰性である可能性を判定するために前記比較を用いることができる方法が提供される。本発明のこの実施形態では、これらの質量を有する代謝産物の分子式は、それぞれC28H46O4、C28H48O4、C28H50O4、C28H52O5、C30H50O4、C30H54O4、C28H52O6、C30H50O5、C30H52O5、C30H54O5、C30H56O5、C32H54O4、C32H56O4、C30H56O6、C32H54O5、C32H56O5、C32H60O5、C34H58O4、C34H60O4、C32H58O6、C32H60O6、C34H62O5、C36H62O4、C36H62O5、C36H64O5、C36H66O5、C36H64O6、C36H66O6、C36H68O6及びC36H70O6であり、提案されている構造はそれぞれ以下に示す通りである:
【0037】
【化5】


【0038】
本発明のさらなる実施形態では、未知の卵巣癌状態の試験対象における卵巣癌の有無を診断する方法であって、試験対象からの血液試料を分析して、中性の精確な質量450(C28H50O4)、446(C28H46O4)、468(C28H52O5)、448(C28H48O4)、464(C28H48O5)及び466(C28H50O5)によって同定される分子を含む群から選択される分子についての定量化データを得る工程と、前記試験対象の前記分子について得られる定量化データを、卵巣癌陽性の複数のヒトからの前記分子から得られる定量化データ、又は卵巣癌陰性の複数のヒトから得られる定量化データと比較する工程とを含み;試験対象が卵巣癌陽性又は陰性である可能性を判定するために前記比較を用いることができる方法が提供される。
【0039】
したがって、検査が非侵襲性であろうし、おそらく疾患への個体の感受性をモニタリングするために従来の方法の前に、又はそれと併用して用いることができるであろうから、向上した診断精度によるヒト血清中の卵巣癌バイオマーカーの同定は極めて有益であろう。血清検査は最小限に侵襲性であり、一般集団全般に受け入れられるであろう。本発明は、ヒト血清中に存在する特異的小分子のレベルを測定し、それらを「正常な」参照レベルと比較することによる、卵巣癌又は卵巣癌の発症リスクの診断方法に関する。本発明は、卵巣癌陽性の血清と正常な血清との間で統計的に有意な差別的存在度を有することが見出された数百の代謝産物質量を開示し、そのうち、本発明の一実施形態では37個のサブセットが、さらなる実施形態では、31個の代謝産物質量のサブセット、30個の代謝産物質量のさらなるサブセット、及び6個の代謝産物マーカーのさらなるサブセットが、疾患陽性血清試料と対照血清試料とを区別することによる診断有用性を例示するために用いられる。本発明のさらなる実施形態では、卵巣癌の存在を示すために、本発明で同定される代謝産物の任意の1つ又は組合せを用いることができる。特異的代謝産物を検出することができるアッセイの開発が比較的単純で、アッセイあたりの費用効果が高いので、血清中の小分子又は代謝産物に基づく診断アッセイは、理想的なスクリーニング検査のための上記基準を満たす。現在の臨床化学研究室ハードウェアに適合する臨床アッセイへの本方法の翻訳は、商業的に受け入れられ、有効であろうし、世界中で急速に配備されよう。さらに、検査を実施、解釈するように高度に訓練された人員の要件が削除されよう。
【0040】
本発明によって同定された31個の選抜代謝産物を、分子式及び分子構造によってさらに特徴づけた。代謝産物のうちの30個についてのこの追加情報を、表35に示す。
【0041】
本発明は、健康な対照に対してOC陽性患者の血清で差別的に発現されるビタミンE様代謝産物の同定も開示する。開示される差別的発現は、OCに特異的である。
【0042】
本発明の一実施形態では、ビタミンE様代謝産物からなる群から選択される代謝産物の最適なサブセットを用いて開発された血清検査を、OC若しくは卵巣癌の発症リスクの存在、又はOCを促進若しくは阻害する環境の存在を診断するために用いることができる。
【0043】
本発明の別の実施形態では、ビタミンE様代謝産物からなる群から選択される代謝産物の最適なサブセットを用いて開発された血清検査を、OCと診断された患者の治療の影響からもたらされるOCに関する健康状態を診断するために用いることができる。治療としては、化学療法、手術、放射線療法、生物学的療法、又は他を挙げることができる。
【0044】
本発明の別の実施形態では、ビタミンE様代謝産物からなる群から選択される代謝産物の最適なサブセットを用いて開発された血清検査を、患者の適当な用量又は特定の療法を判断するために、OC療法中の患者のOC状態を長期間モニタリングするために用いることができる。
【0045】
本発明は、健康な対照に対してOC陽性患者の血清で差別的に発現される、芳香環構造が還元されているγ−トコフェロール/トコトリエノール代謝産物の同定も開示する。開示される差別的発現は、OCに特異的である。したがって、本発明によれば、代謝産物は、卵巣癌と関連する生物学的経路又は系における不規則性又は異常をモニタリングするために用いることができる。
【0046】
本発明は、ヒト血清中でヒドロキシクロマン含有構造に結合する−OC2H5、−OC4H9又は−OC8H17部分が存在する、γ−トコフェロール/トコトリエノール代謝産物の存在を開示する。
【0047】
本発明のさらなる実施形態では、抗酸化剤療法が有益な個体を同定及び診断する方法であって、試験対象からの血液試料を分析して、γトコフェロール、γトコトリエノール、オメガカルボキシ化γトコフェロール及びγトコトリエノール、ビタミンE関連の代謝産物、又は前記代謝産物群の代謝誘導体のすべて又はそれらのサブセットについての定量化データを得る工程と;前記試験対象の前記分子について得られた定量化データを、複数のOC陰性のヒトの分析から得られた参照データと比較する工程とを含み;試験対象にそのような療法が有益となるであろう可能性を判定するために前記比較を用いることができる方法が提供される。
【0048】
本発明のさらなる実施形態では、対象がOC発症リスクを有する可能性を判定する方法であって、OC無症候性対象からの血液試料を分析して、γトコフェロール、γトコトリエノール又は前記代謝産物群の代謝誘導体のすべて又はそれらのサブセットについての定量化データを得る工程と;前記試験対象の前記分子について得られた定量化データを、複数のOC陰性のヒトの分析から得られた参照データと比較する工程とを含み;試験対象がOC発症リスクを有する可能性を判定するために前記比較を用いることができる方法が提供される。
【0049】
本発明のさらなる実施形態では、卵巣癌と関連する生物学的経路又は系における不規則性又は異常のモニタリング方法であって、未知の卵巣癌状態の試験対象からの血液試料を分析して、γトコフェロール、γトコトリエノール又は前記代謝産物群の代謝誘導体のすべて又はそれらのサブセットについての定量化データを得る工程と;前記試験対象の前記分子について得られた定量化データを、複数のOC陰性のヒトの分析から得られた参照データと比較する工程とを含み;卵巣癌と関連する生物学的経路又は系における不規則性又は異常をモニタリングするために前記比較を用いることができる方法が提供される。
【0050】
本発明のさらなる実施形態では、OCを予防、治療若しくは安定化させるか、又はOCと関連する症状を改善するように設計された食事上の、化学的な又は生物学的な治療戦略に応答する個体を特定する方法であって、単一回の回収又は経時的な複数回の回収による試験対象からの1又は複数の血液試料を分析して、γトコフェロール、γトコトリエノール、オメガカルボキシル化γトコフェロール及びγトコトリエノール、ビタミンE様分子又は前記代謝産物群の代謝誘導体のすべて又はそれらのサブセットについての定量化データを得る工程と;前記試験対象の試料中の前記分子について得られた定量化データを、複数のOC陰性のヒトからの前記分子から得られた参照データと比較する工程とを含み;前記試験対象の代謝状態が前記治療戦略の間に改善されたかどうかを判定するために前記比較を用いることができる方法が提供される。
【0051】
本発明のさらなる実施形態では、それらに限定されないが、放射標識トレーサー研究、ビタミンE輸送タンパク質の遺伝子発現若しくはタンパク質発現分析、ビタミンE輸送タンパク質におけるゲノム異常若しくは突然変異の分析、ビタミンE輸送タンパク質レベルのインビボ若しくはエキソビボ画像化、ビタミンE輸送タンパク質の抗体に基づく検出(酵素結合免疫吸着アッセイ、ELISA)を含む様々な戦略を用いて、血清又は組織の分析によってビタミンE及び関連する代謝産物の細胞による取り込み又は輸送が不十分である個体を特定する方法が提供される。
【0052】
本発明のこの概要は、必ずしも本発明のすべての特徴を記載するわけではない。
【0053】
本発明のこれらの特徴及び他の特徴は、添付の図を参照する以下の記載からより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】血清試料の卵巣癌の及び正常な代謝産物プロフィールの主成分分析(PCA、principal component analysis)プロットを示す図である。図1Aは完全な代謝データセット(1,422個の質量)を用い、図1Bは424個の代謝産物を用い、p<0.05である。各点は、個々の患者の試料を表す。灰色の点は卵巣癌患者の試料を表し、黒い点は正常な対照を表す。PCAでは、互いに近くに集合する試料は、データに基づき類似した特性を有しなければならない。したがって、卵巣癌患者集団が共通の代謝上の特徴を共有し、それらが対照集団から異なることがこのプロットから明白である。
【図2A】以下の基準に基づき424個の表から選択される37個の代謝産物から得られたPCAプロットを示す図である:p<0.0001、13Cピークを除外し、分析モード1204(有機、負のAPCI)で検出された代謝産物だけ。灰色の点、卵巣癌試料;黒い点、正常な対照。
【図2B】図2AからのPC1負荷量スコア(x軸に沿った点の位置)に従って入れられた患者試料の分布を示す図である。これは、PCAプロットの起点をカットオフポイントとして用いると、20人の卵巣癌患者群の2人(灰色)が対照ビンとグループを形成し(90%感受性)、25人の正常対象の3人(黒)が卵巣癌患者とグループを形成することを示す(88%特異性)。
【図3】選択される37個の代謝産物の階層的にクラスター化された代謝産物アレイを示す図である。試料はユークリッドの二乗距離メートル法を用いてクラスター化し、37個の代謝産物はピアソンの相関メートル法を用いてクラスター化した。それぞれ、白いセルは強度のない代謝産物を示し、段々と黒くなるセルは、より大きな代謝産物強度に対応する。これらの結果は、2つの卵巣癌試料が対照群と集団を形成し、3つの対照が卵巣癌群と集団を形成することを示す、図2(A及びB)に示すPCA結果を反映する。しかし、プロットは、対照と比較して、分子の全体の集団が卵巣癌患者の血清から欠落していることを示す。検出された質量を図の左側に沿って示し、非同定患者のID番号を図の上部に沿って示す(灰色のヘッダー、卵巣癌;黒いヘッダー、対照)。灰色から黒にかけてのより濃い色合いのセルは、白色又は淡く陰のかかったセルよりも高い強度を有する代謝産物シグナルを表す。
【図4】選択される37個の代謝産物の相対強度の棒グラフを示す図である。強度値(±1s.d.)は、ゼロと1との間で個々の代謝産物のlog(2)変換強度をリスケールすることによって誘導した。グラフは、卵巣癌コホート(灰色)の37個すべての分子が、対照コホート(黒)と比較して強度が有意により低いことを示す。
【図5】FTMSで前に分析した同じ抽出物のフルスキャンHPLC結合飛行時間型(TOF、time-of-flight)質量分析を用いて再発見された37個の代謝産物のうちの29個の強度を用いて生成した、20個の試料(卵巣癌10個、対照10個)のPCAプロットを示す図である。卵巣癌試料(灰色)は、対照(黒)と完全に離れて集合することが示され、マーカーが抽出物中に実際に存在し、卵巣癌の存在に特異的であることが証明される。
【図6】TOF質量分析計による非標的分析で同定された(±1s.d.)、37代謝産物パネルのうちの29個のグラフを示す図である。これらの結果は、FTMSデータで観察されたもの、すなわち、これらの分子は対照(黒)と比較して卵巣癌患者(灰色)で強度が有意により低いことを証明する。
【図7】HPLC−TOF分析からの、15分〜20分の間の保持時間ウインドウの抽出された質量スペクトルを示す図である。これは、HPLCカラムのこの溶出時間内に検出された質量を示す。ピークは、10人の対照(上部パネル)及び10人の卵巣癌(中央パネル)の平均を表す。下部パネルは、上部及び中央のスペクトル間の正味の差を示す。これは、対照(上部パネル)と比較して、約450〜620の質量範囲のピークが卵巣癌試料(中央パネル)から欠落していることを明らかに示す。
【図8】標的HTS三重−四重極方法(相対強度+/−SEM)を用いた、C28卵巣マーカーのうちの6つの相対強度を示す図である。対照=289人の対象、卵巣=20人の対象。
【図9】標的HTS三重−四重極方法を用いた、31個の卵巣マーカーの相対強度を示す図である。対照=289人の対象、卵巣=241人の新症例(黒い棒)、及び元の20人のSeracare症例(白い棒)。パネルは、表1、2及び3の分子の組合せから誘導した。
【図10】表1に記載されているすべての質量を用いた、縮小セントロイド教師付き分類アルゴリズムのトレーニング誤差プロットを示す図である。プロットは、最も小さいトレーニング誤差(最も高い診断精度を表す)が、最大数の代謝産物(プロットの上部にわたって記載されている)、すなわち、表1のすべての質量(合計424個)で達成されることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明は、卵巣癌(OC、ovarian cancer)又はOC発症リスクの診断に関する。本発明は、内因性小分子とOCとの間の関係を記載する。具体的には、本発明は、ビタミンEアイソフォーム及び関連代謝産物の測定を通した、OC又はOC発症リスクの診断に関する。より具体的には、本発明は、ヒト血清中のビタミンE関連の代謝産物とOCにおけるその関連性との間の関係に関する。
【0056】
本発明は、OCと特異的に関連する明白で明確な生化学的変化を初めて開示する。これらの知見は、これらのバイオマーカーの測定が、OC療法の有効性を測定する普遍的な手段を提供することができることも示す。新しい治療法の能力を評価するために単純な生化学的検査を用いることができるので、これは臨床試験の実施費用を劇的に低減させよう。さらに、療法が利益をもたらしたかどうかを判定するために、腫瘍が進行するまで、又は患者が死に至るまで待つ必要はない。そのような検査の使用は、研究者が、OC療法の用量、製剤及び化学構造修飾の有効性を、数年ではなく数ヶ月で判定することを可能にするであろう。
【0057】
本発明は、ヒト血清中に存在する特異的小分子のレベルを測定し、それらを「正常な」参照レベルと比較することによる、OCの診断方法に関する。本出願の一実施形態では、OCの早期検出及び診断並びにOC療法の影響のモニタリングのための新規方法が記載される。
【0058】
本発明の1つの方法は、FTMSに基づく方法で精確な質量を用いる。本発明に従って用いることができる精確な質量には、表1に示す質量又はそのサブセットが含まれる。
【0059】
さらなる方法は、1又は複数の疾患又は特定の健康状態の診断のための、表1から選択される代謝産物のサブセットから開発されたハイスループットスクリーニング(HTS)アッセイの使用を含む。請求されている方法の有用性は、OC陽性の健康状態を診断することができるHTSアッセイの開発を通して証明、検証される。
【0060】
リスクを評価し、卵巣癌を早期に検出するために、文字通り誰でも生涯を通して長期間スクリーニングすることができるであろうから、そのようなアッセイのOCへの影響はおびただしいであろう。検査の能力特性は一般のOC集団にとって代表的であることを考えると、従来の方法によって検出可能なものの前に疾患の進行を検出する能力を有しようから、この検査は単独で、今日利用できる他のいかなるOCスクリーニング方法よりも優れているかもしれない。OCの早期検出は、プラスの治療予後に重要である。
【0061】
総称で用語「ビタミンE」は、8つの天然のアイソフォーム、4つのトコフェロール(α、β、γ及びδ)並びに4つのトコトリエノール(α、β、γ及びδ)を指す。西洋風の食事で優占して見られる形態はγトコフェロールであり、ヒトの血清/血漿で優占して見られる形態はαトコフェロールである。トコトリエノールも食事中に存在するが、穀類、並びにヤシ油及び米糠油などのある種の植物油で、より濃縮されている。興味深いことに、心血管の疾患及び癌の予防で、トコトリエノールがトコフェロールよりも強力であろうことが示唆されている(Theriault A, Chao JT, Wang Q, Gapor A, Adeli K. Tocotrienol: a review of its therapeutic potential. Clin Biochem 1999;32: 309-19)。このことは、トコフェロール対応物と比較して、脂質膜内のトコトリエノールのより大きな分配、ラジカルと相互作用するより高い能力、及びより速やかに再利用される能力に帰することができる(Serbinova E, Kagan V, Han D, Packer L. Free radical recycling and intramembrane mobility in the antioxidant properties of alpha-tocopherol and alpha-tocotrienol. Free Radic Biol Med 1991;10: 263-75)。ラット肝のミクロソームにおいて、鉄媒介脂質過酸化から保護するα−トコトリエノールの効力は、α−トコフェロールの効力よりも40倍高いことが証明されている(Serbinova E, Kagan V, Han D, Packer L. Free radical recycling and intramembrane mobility in the antioxidant properties of alpha-tocopherol and alpha-tocotrienol. Free Radic Biol Med 1991;10: 263-75)。しかし、ヒト血漿での測定は、おそらくより高い親油性が優先的な胆管排出をもたらしたために(Birringer M, Pfluger P, Kluth D, Landes N, Brigelius-Flohe R. Identities and differences in the metabolism of tocotrienols and tocopherols in HepG2 cells. J Nutr 2002;132: 3113-8)、トリエノールは検出されないか、又はわずかな濃度で存在するだけである(Lee BL, New AL, Ong CN. Simultaneous determination of tocotrienols, tocopherols, retinol, and major carotenoids in human plasma. Clin Chem 2003;49: 2056-66)ことを示す。
【0062】
αトコフェロールとγトコフェロールとの間の分配の相違に関する相当な量の研究が、これらのアイソフォームについて実施されてきた。γ−トコフェロール及びα−トコフェロールは類似した腸管吸収を有するが、かなり異なる血漿中濃度を有することが、1974年という早い時期に知られ、報告された(Bieri JG, Evarts RP. Gamma tocopherol: metabolism, biological activity and significance in human vitamin E nutrition. Am J Clin Nutr 1974;27: 980-6)。Bieri and Evartsの研究(Bieri JG, Evarts RP. Gamma tocopherol: metabolism, biological activity and significance in human vitamin E nutrition. Am J Clin Nutr 1974;27: 980-6)では、10日間ラットからビタミンEを奪い、次に、0.5のα:γ比を含有する食事を14日間与えた。14日目に、血漿中のα:γ比は、5.5と観察された。著者は、これをγ−トコフェロールのかなりより高いターンオーバーによるものと考えたが、このより高いターンオーバーの原因は未知であった。トコフェロールの血漿中濃度は、肝トコフェロール結合タンパク質によって厳重に調節されると考えられている。このタンパク質は、α−トコフェロールに優先的に結合することがわかっている(Traber MG. Determinants of plasma vitamin E concentrations. Free Radic Biol Med 1994;16: 229-39)。α−トコフェロール消費の大きな増加は、血漿中濃度の小さな増加をもたらすだけである(Princen HM, van Duyvenvoorde W, Buytenhek R, et al. Supplementation with low doses of vitamin E protects LDL from lipid peroxidation in men and women. Arterioscler Thromb Vasc Biol 1995;15: 325-33)。トコトリエノールについても類似した結果が観察され、そこでは、高い用量の補充が約わずか1〜3マイクロモルの最大血漿中濃度をもたらすことがわかっている(Schaffer S, Muller WE, Eckert GP. Tocotrienols: constitutional effects in aging and disease. J Nutr 2005;135: 151-4)。より最近、摂取されたγ−トコフェロールの少なくとも
50%がヒト肝癌HepG2細胞によって、様々なアルコール及びカルボン酸へのオメガ酸化によって代謝されるが、α−トコフェロールの3%未満がこの経路によって代謝されることを、Birringer et al(Birringer M, Pfluger P, Kluth D, Landes N, Brigelius-Flohe R. Identities and differences in the metabolism of tocotrienols and tocopherols in HepG2 cells. J Nutr 2002;132: 3113-8)は示した。この系が、γ−トコフェロールのターンオーバーの増加の原因のようである。この論文で、彼らは、γ−トコフェロールからのオメガCOOHの生成が、α−トコフェロールからの類似したオメガCOOHの生成速度の50倍を超える速度で起こることを示した。Birringerは、トリエノール
が、補助酵素を必要とする、類似しているがより複雑なオメガカルボキシル化経路を通して代謝されることも示した(Birringer M, Pfluger P, Kluth D, Landes N, Brigelius-Flohe R. Identities and differences in the metabolism of tocotrienols and tocopherols in HepG2 cells. J Nutr 2002;132: 3113-8)。
【0063】
これらの2つの構造選択的な過程の存在が、生物学的重要性を有することはあり得る。Birringer et al(Birringer M, Pfluger P, Kluth D, Landes N, Brigelius-Flohe R. Identities and differences in the metabolism of tocotrienols and tocopherols in HepG2 cells. J Nutr 2002;132: 3113-8)は、γ−トコフェロール特異的P450オメガヒドロキシラーゼの目的が、2,7,8−トリメチル−2−(β−カルボキシ−3’−カルボキシエチル)−6−ヒドロキシクロマン(γ−CEHC)としてのγ−トコフェロール/トリエノールの優先除去であると提唱する。しかし、生物学的目的がγ−トコフェロール/トリエノールを単に除去することであるならば、それは、選択的なヒドロキシル化及びグルクロン酸化を通す方がはるかにより単純でエネルギー効率が高いであろうと我々は主張する。ビタミンEの文献ではコメントされていないが、これらの2つの過程の正味の生物効果は、2つの主要な食事由来のビタミンEアイソフォーム(α及びγ)が、初回通過代謝の間に肝臓に入ると、2つの別々の代謝系に分流されるということである。系1は、最も生物学的に活性な抗酸化剤アイソフォーム(α−トコフェロール)を速やかに血流中に移動させ、体組織にこの必須ビタミンの十分なレベルを供給する。系2は、γ−トコフェロールを速やかにオメガCOOHに変換する。本発明では、γ−トコフェロール/トコトリエノールオメガCOOHの複数のアイソフォームのかなりの濃度が、常に正常ヒト血清中に存在することが開示される。我々は、三重−四重極方法で用いられる有機溶解性カルボン酸含有内標準であるコール酸を測定することによって、ヒト血清中のこれらの分子の各々の濃度が低いマイクロモル濃度の範囲にあると推定することができた。これは、γ−トコフェロールについて以前に報告された0.5〜2のマイクロモル濃度の血漿濃度範囲内である(α−トコフェロールのそれより約20倍低い)(Winklhofer-Roob BM, van't Hof MA, Shmerling DH. Reference values for plasma concentrations of vitamin E and A and carotenoids in a Swiss population from infancy to adulthood, adjusted for seasonal influences. Clin Chem 1997;43: 146-53)したがって、血清中の前記新規γ−トコエン(tocoenoic)酸すべての累計は取るに足らないものではなく、γ−トコフェロール自体のそれをおそらく超える。Birringer et al(Birringer M, Pfluger P, Kluth D, Landes N, Brigelius-Flohe R. Identities and differences in the metabolism of tocotrienols and tocopherols in HepG2 cells. J Nutr 2002;132: 3113-8)によって記載される他のより短い鎖長のγ−トコフェロール/トリエノール代謝産物のいずれも、血清中に検出されなかった。また、α及びγトコトリエノールは、この論文で報告されている研究で用いられた患者の血清でも検出されておらず、γ−トコフェロール/トリエノール特異的P450オメガヒドロキシラーゼの主な目的が、γ−CEHCではなくオメガCOOHの形成であることを示唆した。理論の正当性によって束縛されないが、したがって、本出願で開示される様々なγ−トコフェロール/トコトリエノールオメガCOOH代謝産物は新規生体活性剤であり、それらが正常な健康の維持のため、及び疾患の予防のために、特異的で必要な生物学的機能を果たすことが示唆される。
【0064】
また、哺乳動物がトリエノールをトコフェロールにインビボで変換することができることが示されている(Qureshi AA, Qureshi N, Wright JJ, et al. Lowering of serum cholesterol in hypercholesterolemic humans by tocotrienols (palmvitee). Am J Clin Nutr 1991;53: 1021S-6S、Qureshi AA, Peterson DM, Hasler-Rapacz JO, Rapacz J. Novel tocotrienols of rice bran suppress cholesterogenesis in hereditary hypercholesterolemic swine. J Nutr 2001;131: 223-30)事実も重要である。本明細書で開示される新規ビタミンE様代謝産物のいくつかは、半飽和のフィチル側鎖を含むので、トコトリエノール前駆体の可能性を排除することはできない。
【0065】
トリエノールがトコフェロールと別の生物活性を有することが報告されている(Sen CK, Khanna S, Roy S. Tocotrienols: Vitamin E beyond tocopherols. Life Sci 2006;78: 2088-98)ように、γ−トコフェロールは、α−トコフェロールとは別の異なる生物学的機能を有することが報告されている。例えば、αトコフェロールとαトコトリエノールとの間の重要な差には、細胞死の特異的媒介物質を調節することによって神経変性を特異的に予防するαトコトリエノールの能力(Khanna S, Roy S, Ryu H, et al. Molecular basis of vitamin E action: tocotrienol modulates 12-lipoxygenase, a key mediator of glutamate-induced neurodegeneration. J Biol Chem 2003;278: 43508-15)、コレステロールを低下させるトリエノールの能力(Qureshi AA, Sami SA, Salser WA, Khan FA. Synergistic effect of tocotrienol-rich fraction (TRF(25)) of rice bran and lovastatin on lipid parameters in hypercholesterolemic humans. J Nutr Biochem 2001;12: 318-29)、酸化的タンパク質損傷を減少させてC.エレガンス(C. elegans)の寿命を延長させる能力(Adachi H, Ishii N. Effects of tocotrienols on life span and protein carbonylation in Caenorhabditis elegans. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2000;55: B280-5)、及び乳癌細胞の増殖を抑制する能力(Nesaretnam K, Guthrie N, Chambers AF, Carroll KK. Effect of tocotrienols on the growth of a human breast cancer cell line in culture. Lipids 1995;30: 1139-43、McIntyre BS, Briski KP, Tirmenstein MA, Fariss MW, Gapor A, Sylvester PW. Antiproliferative and apoptotic effects of tocopherols and tocotrienols on normal mouse mammary epithelial cells. Lipids 2000;35: 171-80)が含まれる。トコフェロールのγ形態とα形態との間の重要な差には、ラットにおける炎症害で炎症誘発性エイコサノイドを減少させるγの能力(Jiang Q, Ames BN. Gamma-tocopherol, but not alpha-tocopherol, decreases proinflammatory eicosanoids and inflammation damage in rats. Faseb J 2003;17: 816-22)、及びシクロオキシゲナーゼ(COX−2)活性の阻害(Jiang Q, Elson-Schwab I, Courtemanche C, Ames BN. gamma-tocopherol and its major metabolite, in contrast to alpha-tocopherol, inhibit cyclooxygenase activity in macrophages and epithelial cells. Proc Natl Acad Sci U S A 2000;97: 11494-9)が含まれる。Jiang et al(Jiang Q, Elson-Schwab I, Courtemanche C, Ames BN. gamma-tocopherol and its major metabolite, in contrast to alpha-tocopherol, inhibit cyclooxygenase activity in macrophages and epithelial cells. Proc Natl Acad Sci U S A 2000;97: 11494-9)では、γ−トコフェロールが有効になるのに8〜24時間かかり、アラカドン(arachadonic)酸がγ−トコフェロールの抑制活性を競合的に阻害すると報告された。γ−トコフェロールのオメガCOOH代謝産物が、その消炎活性の役割を担う主要な生体活性種であろうと仮定されている。エイコサノイドへのアラカドン酸の変換は、炎症の重要な段階である。それらのアラカドン酸との構造類似性のために、γ−トコフェロールのオメガCOOHの形態が、天然のγ−トコフェロールよりも強力な、この形成の競合的阻害剤であるとより考えられる。
【0066】
本発明の一態様では、ヒト血清中の新規γ−トコフェロール/トコトリエノール代謝産物が提供される。これらのγ−トコフェロール/トリエノール代謝産物は、芳香環構造が還元されている。本発明のこの態様では、γ−トコフェロール/トコトリエノール代謝産物は、ヒト血清中のヒドロキシクロマン構造に結合した−OC2H5、−OC4H9、又は−OC8H17部分を含む。
【0067】
いかなる特定の理論によっても束縛されることを欲しないが、本発明では、本明細書で開示される新規代謝産物がビタミンE活性の指標であり、そのような代謝産物の減少は以下の状況の1つを示すと仮定される:
a.ビタミンE及び関連代謝産物を、食事によって供給されるものを上回る速度で消費する超酸化的又は代謝的状態;
b.ビタミンE及び関連代謝産物の食事性欠乏又は吸収障害;
c.ビタミンE関連代謝産物の食事性欠乏又は吸収障害/上皮輸送障害;
d.γ−トコフェロールのオメガカルボキシル化を担う、それに限定されないがCYP4F2を含むシトクロムp450酵素の酵素欠乏。そのような欠乏は、一塩基多型(SNP、single nucleotide polymorphism)、転位又はメチル化などの後成的修飾などの遺伝的変化を含むことができる。或いは、欠乏はタンパク質の翻訳後修飾から、或いは、要求された補助的因子を通しての、又はプロモーター突然変異若しくは不適切な転写複合体アセンブリー形成によって媒介される転写発現抑制を通しての活性化の欠如から生じることができる。
【0068】
ビタミンEに関する前記の関連する疫学調査のすべてにおいて、γトコフェロールとOCとの間の相関関係についてほとんど知られていない。本出願時に、「卵巣癌」及び「γトコフェロール」をPubMedで検索すると、OC患者と対照との間で血漿γトコフェロールのレベルの変化が見られなかったことを報告する、唯1つの刊行物が検索された(Helzlsouer KJ, Alberg AJ, Norkus EP, Morris JS, Hoffman SC, Comstock GW. Prospective study of serum micronutrients and ovarian cancer. Journal of the National Cancer Institute 1996;88: 32-7)。より最近の知見は、α−トコフェロール補充と卵巣癌リスクとの間の潜在的な逆比例の関係を明らかにしている(Pan SY, Ugnat AM, Mao Y, Wen SW, Johnson KC. A case-control study of diet and the risk of ovarian cancer. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2004;13: 1521-7)。基礎研究は、αトコフェロールが卵巣癌細胞のテロメラーゼ活性をインビトロで阻害することができることを示しており、卵巣癌細胞増殖の制御での可能な役割が示唆された。卵巣癌細胞に及ぼすγトコフェロールのインビトロでの影響は、報告されていない。
【0069】
本出願で開示される発見に基づくと、特異的ビタミンE代謝酵素の食事性欠乏又は欠乏がOC発生のリスクを高めることがあるが、OCの存在がビタミンEアイソフォーム及び関連代謝産物の減少をもたらすことがあると考えられる。そのような強い関連性は、例えばHelzlsouer et al(Helzlsouer KJ, Alberg AJ, Norkus EP, Morris JS, Hoffman SC, Comstock GW. Prospective study of serum micronutrients and ovarian cancer. Journal of the National Cancer Institute 1996;88: 32-7)によって実施された研究などの疫学調査で過去に明らかにされているであろうから、このようなレベルの減少は単純な食事性欠乏の結果ではなさそうである。
【0070】
また、本出願で開示される発見に基づくと、ビタミンE様代謝産物レベルの減少は単純な食事性欠乏の結果でなく、むしろビタミンE及び関連分子の結腸上皮からの取り込みの障害の結果であると考えられる。したがってこれは、酸化的ストレス負荷の下にある上皮細胞への抗酸化能の十分な供給のための、律速段階を表す。このモデルでは、赤色の肉、高飽和脂肪及び繊維分の減少(鉄キレート化作用の低下をもたらす(Babbs CF. Free radicals and the etiology of colon cancer. Free Radic Biol Med 1990;8: 191-200))を通しての鉄消費の増加の食事による影響は、以前に指摘されたフェントン誘導性のフリーラジカル増殖をもたらし、その十分な排出は上皮中の十分なビタミンEレベルに依存する。したがって、上皮フリーラジカル負荷の増加は、ビタミンE関連の輸送欠乏と合わさると、抗酸化剤としてのビタミンE様代謝産物の減少、並びに、肝摂取及びP450媒介性代謝から生じる還元型カルボキシ化アイソフォームの減少に反映される。CaCo−2結腸上皮細胞へのビタミンEの取り込みが飽和過程であり、タンパク質媒介性事象に強く依存することが最近示された(Reboul E, Klein A, Bietrix F, et al. Scavenger receptor class B type I (SR-BI) is involved in vitamin E transport across the enterocyte. J Biol Chem 2006;281: 4739-45)。タンパク質トランスポータは本質的に酵素であり、典型的なミカエリス−メントン動態に従うので、ビタミンEが結腸上皮細胞に取り込まれることができる速度は最大速度(Vmax)に到達し、それは、OCの発達に対して十分な抗酸化保護作用を提供することができないかもしれない。したがってある時点で、ビタミンEを食事から輸送することができる速度を上回って酸化的ストレスの量を増加させることは、内因性のプールを消耗させる。
【0071】
正常な健康対照に対して卵巣癌陽性で差別的に発現される代謝産物の発見及び同定
臨床試料。特定の集団に所与の健康状態の生化学的マーカーが存在するかどうかを判定するために、その健康状態(すなわち特定の疾患)を代表する患者群及び「正常な」対応する群が必要である。次に、それら2つの群の間の差を特定する目的で、それらに限定されないがFTMS及びLC−MSを含む様々な分析プラットホームを用いて試料を抽出、分析することによって、特定の健康状態カテゴリーの患者から採取された生体試料を正常な集団から採取された同等試料と比較することができる。生体試料は、それらに限定されないが、血液(血清/血漿)、脳脊髄液(CSF、cerebrospinal fluid)、尿、便、呼
気、唾液、又は、腫瘍、隣接する正常な平滑筋及び骨格筋、脂肪組織、肝臓、皮膚、髪、腎臓、膵臓、肺、結腸、胃若しくは他を含む任意の固体組織の生検材料を含む、体内の任意の場所に由来することができよう。
【0072】
本明細書で記載される卵巣癌の診断アッセイのために、健康な卵巣癌陰性の個体、及び専門的に診断された卵巣癌陽性の患者の代表的な集団から血清試料を得た。本出願を通して、用語「血清」が用いられるが、血漿又は全血又は全血の亜分画を本方法で用いることもできることは、当分野の技術者にとって明らかとなる。本発明で記載される卵巣癌の生化学的マーカーは、卵巣癌陽性の患者からの20個の血清試料及び健康な対照からの25個の血清試料の分析から誘導した。以降の検証試験では、539個の対照試料(卵巣癌と診断されていない;C28 HTSパネルを用いた289人の対象、及び31個の分子HTSパネルを用いた別の250人)、並びに、241個の卵巣癌試料を評価した。すべての試料は単一の時点で収集されたものであり、289個の卵巣癌試料は、腫瘍の外科切除の直前又は直後(化学療法又は放射線療法の前)に採取された。250個の卵巣のサブセット(図8に示す)は、治療(化学的、外科的又は放射線)の後に収集された。
【0073】
非標的代謝戦略。NMR(Reo NV. NMR-based metabolomics. Drug Chem Toxicol 2002;25: 375-82)、GC−MS(Fiehn O, Kopka J, Dormann P, Altmann T, Trethewey RN, Willmitzer L. Metabolite profiling for plant functional genomics. Nat Biotechnol 2000;18: 1157-61.、Hirai MY, Yano M, Goodenowe DB, et al. Integration of transcriptomics and metabolomics for understanding of global responses to nutritional stresses in Arabidopsis thaliana. Proc Natl Acad Sci U S A 2004;101: 10205-10、Roessner U, Luedemann A, Brust D, et al. Metabolic profiling allows comprehensive phenotyping of genetically or environmentally modified plant systems. Plant Cell 2001;13: 11-29)、LC−MS及びFTMS戦略(Reo NV. NMR-based metabolomics. Drug Chem Toxicol 2002;25: 375-82、Castrillo JI, Hayes A, Mohammed S, Gaskell SJ, Oliver SG. An optimized protocol for metabolome analysis in yeast using direct infusion electrospray mass spectrometry. Phytochemistry 2003;62: 929-37、Fiehn O. Metabolomics--the link between genotypes and phenotypes. Plant Mol Biol 2002;48: 155-71、Aharoni A, Ric de Vos CH, Verhoeven HA, et al. Nontargeted metabolome analysis by use of Fourier Transform Ion Cyclotron Mass Spectrometry. Omics 2002;6: 217-34)を含む、複数の非標的代謝戦略が科学文献に記載されている。本出願で差別的に発現される代謝産物の発見のために使用されたメタボリックプロファイリング戦略は、Phenomenome Discoveries社によって発明された非標的FTMS戦略であった(Hirai MY, Yano M, Goodenowe DB, et al. Integration of transcriptomics and metabolomics for understanding of global responses to nutritional stresses in Arabidopsisthaliana. Proc Natl Acad Sci U S A 2004;101: 10205-10、Aharoni A, Ric de Vos CH, Verhoeven HA, et al. Nontargeted metabolome analysis by use of Fourier Transform Ion Cyclotron Mass Spectrometry. Omics 2002;6: 217-34、Hirai MY, Klein M, Fujikawa Y, et al. Elucidation of gene-to-gene and metabolite-to-gene networks in arabidopsis by integration of metabolomics and transcriptomics. J Biol Chem 2005;280: 25590-5、Murch SJ, Rupasinghe HP, Goodenowe D, Saxena PK. A metabolomic analysis of medicinal diversity in Huang-qin (Scutellaria baicalensis Georgi) genotypes: discovery of novel compounds. Plant Cell Rep 2004;23: 419-25、Tohge T, Nishiyama Y, Hirai MY, et al. Functional genomics by integrated analysis of metabolome and transcriptome of Arabidopsis plants over-expressing an MYB transcription factor. Plant J 2005;42: 218-35)。非標的分析は、事前の知識及び分析前の成分の選択がない下での、試料中のできるだけ多くの分子の測定を含む。したがって、新規代謝産物バイオマーカーを発見する非標的分析の可能性は、事前に決められた分子リストを検出する標的方法に比して高い。本発明は、卵巣癌陽性個体と健康な個体との間で異なる代謝産物成分を同定するために非標的方法を用い、その後、非標的分析から同定された代謝産物のサブセットのためのハイスループット標的アッセイの開発が続く。しかし、本出願で開示される差別的に調節された代謝産物の一部若しくは全部を発見するために、他の代謝産物プロファイリング戦略を用いることができるかもしれないこと、及び、発見されたか若しくは測定されたものであれ、本明細書で記載される代謝産物は、それらを検出、測定するために用いることができる分析技術とは無関係である特異な化学成分を表すことは、当分野の技術者にとって明らかであろう。
【0074】
試料処理。血液試料を患者から引き抜くとき、試料を処理することができるいくつかの方法がある。処理の範囲は、無処理(すなわち冷凍全血)のように限定的、又は特定の細胞型の分離のように複雑であることができる。最も一般的で常用される手順は、全血からの血清又は血漿の調製を含む。ろ紙又は他の固定された物質などの固相支持体の上への血液試料のスポッティングを含むすべての血液試料処理方法も、本発明によって企図される。
【0075】
試料抽出。次に、上記の処理した血液試料をさらに処理し、それを、処理された血液試料(我々の場合、血清試料)に含まれる生化学物質の検出及び測定で使用される分析手法に適合させる。処理の種類は、さらなる処理のないものから、差別的抽出及び化学的誘導体化のように複雑なものまで広がることができる。抽出法には、それらに限定されないが、一般的な溶媒、例えばメタノール、エタノール、アルコール及び水の混合液、又は酢酸エチル若しくはヘキサンなどの有機溶媒中での、超音波処理、ソックスレー抽出、マイクロ波支援抽出(MAE、microwave assisted extraction)、超臨界流体抽出(SFE、supercritical fluid extraction)、加速溶媒抽出(ASE、accelerated solvent extraction)、加圧液体抽出(PLE、pressurized liquid extraction)、加圧熱水抽出(PHWE、pressurized hot water extraction)及び/又は界面活性剤支援抽出(PHWE、surfactant assisted extraction)を含めることができる。FTMS非標的分析のための好ましい代謝産物抽出方法は、無極性の代謝産物が有機溶媒に溶解し、極性の代謝産物が水性溶媒に溶解する、液/液抽出を実施することである。本出願で用いられる血清試料に含まれる代謝産物は、超音波処理及び激しい混合(撹拌混合)を通して、極性及び無極性の抽出物に分離した。
【0076】
抽出物の質量分光分析。生体試料の抽出物は、直接注入によろうが又はクロマトグラフ分離に従おうが、基本的にいかなる質量分析プラットホーム上での分析に適合する。一般的な質量分析計は、試料中の分子をイオン化する発生源、及びイオン化された粒子を検出するための検出器を含む。一般的な発生源の例には、電子衝撃、エレクトロスプレーイオン化(ESI、electrospray ionization)、大気圧化学イオン化(APCI、atmospheric pressure chemical ionization)、マトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI、matrix assisted laser desorption ionization)、表面増強レーザ脱離イオン化(SELDI、surface enhanced laser desorption ionization)及びそれらから派生したものが含まれる。一般的なイオン検出器には、四重極に基づくシステム、飛行時間型(TOF)、磁性セクター、イオンサイクロトロン及びそれらから派生したものを含めることができる。
【0077】
本発明は、以下の実施例でさらに例示される。
【実施例1】
【0078】
差別的に発現された代謝産物の同定
本明細書に記載される本発明は、FTMSへの直接注入、及び正負モードのESI又はAPCIによるイオン化による、45個体(卵巣癌20個体、健康な対照25個体)からの血清抽出物の分析を含んだ。他のMSベースのプラットホームに勝るFTMSの利点は、その多くはより低い分解機器によっては見落とされるであろう、数百ダルトンだけ異なる代謝産物の分離を可能にする高分解能である。試料抽出物を、負のイオン化モードではメタノール:0.1%(v/v)水酸化アンモニウム(50:50、v/v)で、正のイオン化モードではメタノール:0.1%(v/v)ギ酸(50:50、v/v)で、3倍又は6倍に希釈した。APCIについては、試料抽出物は、希釈することなく直接に注入した。すべての分析は、7.0Tの能動シールド超伝導磁石を備えたBruker Daltonics APEX III FTMS(Bruker Daltonics社製、Billerica、MA)で実施した。エレクトロスプレーイオン化(ESI)及び大気圧化学イオン化(APCI)を用いて、毎時600μLの流速で試料を直接注入した。イオン移動/検出パラメータは、セリン、テトラアラニン、レセルピン、Hewlett-Packardチューニング混合物、及び副腎皮質刺激ホルモン断片4〜10の標準混合物を用いて最適化した。さらに、機器製造業者の推奨に従い、機器条件を調整して、100〜1000amuの質量範囲にわたってイオン強度及び広帯域蓄積を最適化した。100〜1000amuの獲得範囲にわたる質量精度のために、上述の標準物質の混合物を用いて、各試料スペクトルを内部的に較正した。
【0079】
全体で、抽出物及びイオン化モードの組合せを含む6つの別々の分析が、各試料について得られた:
水抽出物
1.正のESI(分析モード1101)
2.負のESI(分析モード1102)
有機抽出物
3.正のESI(分析モード1201)
4.負のESI(分析モード1202)
5.正のAPCI(分析モード1203)
6.負のAPCI(分析モード1204)
【0080】
質量分析データ処理。一次最小二乗回帰線を用いて、各内部標準の質量ピークが、その理論的質量と比較して<1ppmの質量誤差を有するように、質量軸値を較正した。Bruker Daltonics社製のXMASSソフトウェアを用いて、1メガワードのデータファイルサイズを獲得し、2メガワードにゼロで充填した。sinmデータ変換は、フーリエ変換及び大きさの計算の前に実施した。各分析からの質量スペクトルを統合して、各ピークの精確な質量及び絶対強度を含むピークのリストを作成した。100〜2000m/zの範囲の化合物を分析した。異なるイオン化モード及び極性にわたってデータを比較し、要約するために、水素付加物形成を仮定して、検出された全質量ピークをそれらの対応する中性質量に変換した。次に、DISCOVAmetrics(商標)ソフトウェア(Phenomenome Discoveries社製、Saskatoon、SK、Canada)を用いて、自己生成した二次元(質量対試料強度)アレイを作成した。複数ファイルからのデータを統合し、次にこの組合せファイルを処理して特異な質量のすべてを判定した。各特異質量の平均を求め、y軸に表した。分析するために初めに選択した各ファイルについてカラムを作成し、x軸に表した。次に、選択した各ファイルで見出される各質量の強度を、その代表的なx,y座標に入れた。強度値を含まない座標は、ブランクにしておいた。アレイに入ると、データをさらに処理、視覚化、解釈して、推定上の化学的素性を割り当てた。次に、検出されたすべての代謝産物の質量及び強度を得るために、スペクトルの各々をピーク選択した。次に、すべてのモードからのこれらのデータを融合して、1試料につき1つのデータファイルを作成した。次に、45個すべての試料からのデータを融合して整列させ、各試料がカラムによって表され、各特異代謝産物が単一の行によって表される、二次元の代謝産物アレイを作成した。所与の代謝産物試料の組合せに対応する細胞では、その試料中の代謝産物の強度が表示される。データがこのフォーマットで表される場合、試料群(すなわち、標準及び癌)の間で差を示す代謝産物を判定することができる。
【0081】
高度データ解釈。正常試料と卵巣癌陽性試料との間(p<0.05)で異なる代謝産物を選択するために、スチューデントのT検定を用いた。424個の代謝産物がこの基準を満たした(表1に示す)。これらはすべて、2つの集団の間で統計学的に異なり、したがって、潜在的な診断有用性を有する特徴的な形態である。これらの特徴的な形態は、それらの精確な質量及び分析モード(1204、有機抽出物及び負のAPCI)によって記載され、それらは一緒に、各代謝産物の推定上の分子式及び化学特性(例えば極性及び推定上の官能基)を提供するのに十分である。表1は、正常試料及び卵巣試料中のバイオマーカー平均強度及び強度の標準偏差も示す。代謝産物強度のlog(2)比(正常/卵巣)を、右端のカラムに示す。定義上、表1の各代謝産物は卵巣及び対照の集団の間の統計的に有意な差(p<0.05)を示すので、ある人の健康状態が本来「正常」であるか「卵巣」であるかを判定するために、各質量を単独で個々に用いることができるであろう。例えば、この診断は、表1の各質量の最適カットオフポイントを判定することによって、及び、未知試料中のバイオマーカーの相対強度を正常集団及び卵巣集団のマーカーのレベルと比較し、卵巣陽性であるか正常であるかの尤度比を未知試料について計算することによって実施することができよう。この手法は、表1に記載される質量のいずれか又は全部について、個々に用いることができよう。或いは、この手法は、各質量について、次に、用いたすべての質量に基づく組合せ平均尤度スコアについて用いることができよう。
【0082】
上記の実施例に類似した手法には、卵巣癌のすべての測定バイオマーカー強度を表す平均又は標準化された値を生成するために質量のそれぞれ又はすべてを用いる、いかなる方法も含まれよう。例えば、各質量の強度を測定し、次に、それを直接用いるか標準化方法(例えば平均標準化、ログ標準化、Z値変換、最低−最高スケーリングなど)の後に用いて、合計又は平均されたスコアを生成するであろう。そのような合計値又は平均値は、卵巣集団と正常集団との間で有意に異なり、将来の未分類試料で卵巣癌又は正常さの可能性を予測するためにカットオフスコアを用いることを可能にする。個々の質量のためであれ又は表1のすべての質量の平均値又は標準化された平均値のためであれ、カットオフスコア自体は、標準のオペレータ−受容体特性計算を用いて選択することができる。
【0083】
診断出力を提供するために表1に記載されるすべての質量を用いることができるであろう3番目の実施例は、多変量教師付き若しくは教師なし分類又はクラスタリングのアルゴリズムの使用を通したものであろう。最適な特徴セットの選択のために下に記載するものと同様に、主成分分析(PCA)及び階層的クラスタリング(RCA)(両方とも教師なし、すなわち、アルゴリズムはどの試料がどの疾患変数に属するかわかっていない)などの多変量分類法、並びに、教師付きPCA、部分最小二乗判別分析(PLSDA、partial least squared discriminant analysis)、ロジスティック回帰、人工神経ネットワーク(ANN、artificial neural network)、支持体ベクターマシン(SVM、support vector machine)、ベイズ法、その他(レビューについてはWu B, Abbott T, Fishman D, et al. Comparison of statistical methods for classification of ovarian cancer using mass spectrometry data. Bioinformatics 2003;19: 1636-43を参照)などの教師付き方法は、より多くの特徴で最適に性能を発揮する。これは、表1の質量のいくつが最適な診断分類のために必要とされたかを表すプロットを生成するために教師付き縮小セントロイド手法が用いられた、図10の実施例に示される。図は、424個すべての質量(図の上部全体に記載される)で最低の誤分類率が達成されること、及び、アルゴリズムの閾値を高めることによって、より少ない代謝産物の使用がより高い誤分類率をもたらすことを示す。したがって、一緒に用いられる424個すべての質量は、最も高い程度の診断精度をもたらす。
【0084】
しかし、商業的に有用なアッセイへの424個のシグナルの組込み及び開発は非実用的であり、したがって、許容レベルの診断精度を維持するために必要な最少数の特徴を判定するために、上記のものなどの教師付き方法がしばしば使用される。本出願では、リストをさらに狭めるためにいかなる教師付きトレーニング分類子も用いず;むしろ、一変量分析、13C濾過及びモード選択に基づいて、リストを37個まで減少させた(表2を参照)。卵巣癌を検出するためのアッセイを開発するために、表1に記載される424個の質量からの他の任意のサブセットを、本発明に従って用いることができる。30個の代謝産物マーカーのサブセットを、表35に記載する。さらに、29個の代謝産物マーカーのサブセットを、表3に記載する。或いは、人工神経ネットワーク(ANN)、支持体ベクターマシン(SVM)、部分最小二乗判別分析(PLSDA)、亜線形関連方法、ベイズの推論方法、教師付き主成分分析、縮小セントロイド、又は他(レビューについては(38)を参照)を含むいくつかの教師付き方法も存在し、そのいずれか1つを、質量の代わりのサブセットを同定するために用いることができた。
【実施例2】
【0085】
FTMS非標的代謝手法を用いた卵巣癌関連の代謝産物の発見
卵巣癌患者の血清と健康対照の血清を区別することができる代謝産物の同定は、実施例1に記載の20人の卵巣癌患者及び25人の対照の包括的な代謝プロフィールの生成から始まった。完全なデータセットは1,244個の試料特異的質量を含み、そのうち424個は、データをlog(2)変換して、卵巣癌試料と対照との間でスチューデントのt検定を実施した場合、0.05未満のp値を示した(表1)。これらの質量のそれぞれは、卵巣癌と対照コホートとの区別では統計的に有意であり、したがって、潜在的な診断有用性を有する。さらに、424個の代謝産物マーカーのいかなるサブセットも、潜在的な診断有用性を有する。表1は、p値に従って並べた(最低のp値は表の最初の方)これらの質量を示す。
【0086】
多変量のデータセット内の分散を調べるために、主成分分析(PCA)と呼ばれる統計分析技術を用いた。この方法は「教師なし」と呼ばれ、どの試料がどのコホートに属しているか、その方法にはわかっていないことを意味する。PCA分析の出力は、その分散に従ってプロット上で各試料について単一の点を投影する、二次元又は三次元のプロットである。データに基づき、それらの点が一緒により緊密に集合するほど、試料間の分散は小さく、又は試料が互いにより類似する。図1では、1,244個の質量の完全セットについて先ずPCAを実施し、疾患状態に従って点を着色した。有意性又はp値に従う質量の濾過がない場合でさえ、PCAプロットは、卵巣癌試料を対照と区別することができる強い代謝サインが存在することを示す。卵巣癌試料と対照試料との間の強度の統計的に有意な差を有する質量の最大数を特定するために、スチューデントのt検定を実施した結果、p値が0.05未満の424個の代謝産物が得られた。図1BのPCAプロットは、特に対照コホート(黒)についてより緊密に集合した群を示す、これらの424個の代謝産物を用いて生成した。424個の質量が2つの群を区別する能力を保持するだけでなく、向上もさせることをこのことは示す。
【0087】
しかし、常用される臨床スクリーニング方法へのp<0.05の424個すべての質量の組込みは、実際的ではない。先に述べたように、最適な診断マーカーとしてこれらの424個の質量のサブセットを抽出するために、教師付き及び教師なしの方法を含む任意の数の統計的方法を用いることができようし、様々な方法はわずかに異なる結果を与えるであろう。37個の代謝産物のサブセット(表2を参照)は、卵巣癌スクリーニングマーカーの1つの可能なパネルとして、424個のリストから選択した。37個の代謝産物は、p値が0.0001未満の質量のデータを濾過し、すべての13C同位体を除去し、モード1204で検出されなかった代謝産物を除外することによって選択した。37個の代謝産物のリストを表2に示すが、それらには、質量440.3532、446.3413、448.3565、450.3735、464.3531、466.3659、468.3848、474.3736、478.405、484.3793、490.3678、492.3841、494.3973、502.4055、504.4195、510.3943、512.4083、518.3974、520.4131、522.4323、530.437、532.4507、534.3913、538.427、540.4393、548.4442、550.4609、558.4653、566.4554、574.4597、576.4762、578.493、590.4597、592.4728、594.4857、596.5015、598.5121が含まれ、そこにおいて、+/−5ppmの差は同じ代謝産物を示すものとなろう。これらの質量だけに基づくPCAプロットを図2Aに示すが、それは、PC1軸に沿って卵巣癌試料と対照試料との間の高い分離度を示す。このデータセットのPC1軸は全体の分散の80%を捕捉しているので、各試料のPC1位置を、各患者の診断スコアとして用いることができよう。各コホートのあらゆる試料のPC1スコアの分布を図2Bに示すが、それは、6つのビン範囲に入るPC1スコアを有する卵巣癌試料及び対照の数を示す。図2AのPCAプロットの起点をカットオフポイントとして用いる場合、卵巣癌患者のうちの2人が分布の対照側と集合し、3人の対照が卵巣癌側と集合するのがわかる。これは、概算で90%の感受性及び88%の特異性を示唆する。
【0088】
PCAプロットは、クラスターの分離の役割を担う代謝産物の実際の強度を視覚化させるのに十分ではない。したがって、それ自体はピアソン相関距離測定を用いてクラスター化された前記37個の代謝産物を用いたユークリッド距離測定に基づいて患者試料を群に配列するために、階層的クラスタリング(HCA)と呼ばれる第二の統計的方法を用いた。生じた代謝産物アレイを図3に示すが、それは、PCA分析で観察された結果を明らかに繰り返すもので、すなわち、卵巣癌コホート及び対照コホートは明らかに識別でき、2人の卵巣癌患者は対照コホートの中に集合し、3人の対照は卵巣癌コホートの中に集合している。アレイ自体はFTMSからのlog(2)強度を表す細胞を含み、そこでは、白はゼロ強度の代謝産物を示し、増加する灰色の色合いは増加する強度値の代謝産物をそれぞれ示す。対照と比較して卵巣癌コホートでは、37個すべての代謝産物の強度がないか又は比較的低いことが明らかである。図4のグラフは、37個の代謝産物の平均log(2)強度(±1 s.d.)をプロットすることにより(後に、ゼロと1との間で評価する)、この点をさらに例示する。
【実施例3】
【0089】
発見された代謝産物の独立した確認方法
代謝産物、及び実施例1に記載される臨床変数とのその関連性を、独立した質量分析系を用いてさらに確認する。各変数群からの代表的な試料抽出物を、調査中の臨床変数の間で強度が異なる代謝産物を同定する目的で質量及び強度情報を得るために、HP 1050高性能液体クロマトグラフィー(HPLC、high-performance liquid chromatography)、又は、ABI Q-Star(Applied Biosystems社製、Foster City、CA)と接続された同等物、又は同等の質量分析計を用いてLC−MSによって再分析する。これは、保持時間指数(代謝産物がHPLCカラムから溶離するのにかかる時間)を提供し、タンデムMS構造調査を可能にする、非標的手法でもある。この場合、卵巣癌患者及び対照からの試料抽出物が前記マーカーの差別的存在度を実際有していたことを検証するために、各コホートからの選択される抽出物を、前記手法を用いて独立に分析した。前に記載した37個の前記代謝産物のうち、29個は10個の卵巣癌試料及び10個の対照試料のセットにわたって検出された。これらの29個の質量に基づくPCAプロットを、図5に示す。結果は、TOF MSで検出され、質量446.3544、448.3715、450.3804、468.3986、474.3872、476.4885、478.4209、484.3907、490.3800、492.3930、494.4120、502.4181、504.4333、512.4196、518.4161、520.4193、522.4410、530.4435、532.4690、538.4361、540.4529、550.4667、558.4816、574.4707、578.5034、592.4198、594.5027、596.5191、598.5174を含み、+/−5ppmの差は同じ代謝産物を示すであろう29個の代謝産物(表3を参照)は、10個の対照からの10個の卵巣癌試料の完全な分離によって証明されるように、明らかに差別的に発現されたことを示唆する。29個の代謝産物の棒グラフを図6に示すが、それは、対照と比較して卵巣癌コホートにおけるこれらの分子の明らかな欠乏又は減少を再確認する。
【0090】
図6に示す29個の代謝産物の保持時間は、クロマトグラフィー条件下で約15〜18分の範囲内であった。卵巣癌のこの時間ウインドウ内で溶出する分子の特異性をさらに例示するために、対照、卵巣癌の15〜20分の間の平均の抽出質量スペクトル、並びに2つのコホート間の正味の差を図7に示すように生成した。上パネル(対照)を中央パネル(卵巣癌)と比較することによって、ピークは対照群(上パネル)では明らかに検出可能であるが卵巣癌対象(中央パネル)ではそうではない位置である、質量約400に到達するまで、両方の試料でピークが同等の高さにあることは明白である。下パネルは正味の差を図示するが、それは、FTMSデータで同定された37個と重複する29個の質量を含む。
【実施例4】
【0091】
選択される卵巣癌代謝産物マーカーのMSMS断片化及び構造調査
以下の実施例は、卵巣マーカーのサブセットのタンデム質量分光分析を記載する。一般原理は、娘イオンのパターンへの各親イオンの選択及び断片化に基づく。断片化は、不活性気体(アルゴンなど)を親イオンと衝突させてより小さな成分への断片化をもたらす衝突解離と呼ばれる過程を通して、質量分析計の中で起こる。次に、電荷は、対応する断片の1つと一緒に移動する。生じた断片又は「娘イオン」のパターンは、各分子の特異的「フィンガープリント」を表す。異なる構造の分子(同じ式を有するものを含む)は、異なる断片化パターンを生じ、したがって、分子を同定する非常に特異的な方法となる。断片イオンへ精確な質量及び式を割り当てることによって、分子についての構造上の洞察を判定することができる。
【0092】
この実施例では、MSMS分析は、31個の卵巣マーカー(表2及び3から)のサブセットで実施した。選択した各親イオンの生じた断片イオンを、表4〜34に記載する。親イオンは各表の最上部に(その中性質量として)記載し、以後の断片は負荷電したイオン[M〜H]として示す。強度(カウント及びパーセント)は、それぞれ中央及び右のカラムに示す。特異的保持時間(高速液体クロマトグラフィーからの)を、中央のカラムの最上部に示す。すべての卵巣マーカーは、用いたクロマトグラフィー条件下で、16〜18分の保持時間を有していた(下の方法を参照)。
【0093】
断片化パターンの解釈に基づいて提案された構造を、表35に要約する。以降の表36〜65には、各親分子の各断片の断片質量及び提案された構造を記載する。表の質量は名目上の検出された質量[M〜H]として示し、各断片について提案された分子式を示す。さらに、右のカラムは、予測された中性断片の減少を示す。
【0094】
MSMSデータの解釈は、それらがクロマン環様部分及びフィチル側鎖を含むという点で、代謝産物マーカーがγ−トコフェロール形態のビタミンEに構造的に関係することを明らかにした。しかし、これらの分子は、γトコフェロールと異なるいくつかの重要な差を有する。
a).オメガカルボキシ化フィチル側鎖(フィチル鎖の末端炭素位置のカルボキシル化)。
b).半飽和の、開放クロマン環様の系
c).環系への潜在的な炭化水素鎖の付加のために増加した炭素数。
γ−トコフェロールとの類似性及びオメガ−カルボキシル部分の存在に基づき、新規代謝産物の群を「γ−トコエン酸」と名づけた。
【0095】
HPLC分析は、四次ポンプ、自動噴射器、脱ガス器、並びに、インラインフィルターを有するHypersil ODカラム(5μmの粒径のシリカ、4.6i.d×200mm)及び半プレップカラム(5μmの粒径のシリカ、9.1i.d×200mm)を備えた高速液体クロマトグラフで実施した。移動相:流速1.0ml/分で52分間のHO−MeOHから100%MeOHへの直線勾配。
【0096】
HPLCからの溶出液を、負のモードの大気圧化学イオン化(APCI)源を装着したABI QSTAR(登録商標)XL質量分析計を用いて分析した。フルスキャンモードのスキャン型は、1.0000秒の蓄積時間、50〜1500Daの質量範囲、55分の持続時間による飛行時間型(TOF)であった。源パラメータは以下の通りであった:イオン源ガス1(GS1)80;イオン源ガス2(GS2)10;カーテンガス(CUR)30;噴霧器気流(NC、Nebulizer Current)−3.0;温度 400℃;デクラスタリングポテンシャル(DP、Declustering Potential)−60;フォーカシングポテンシャル(FP、Focusing Potential)−265;デクラスタリングポテンシャル2(DP2)−15。MS/MSモードでは、スキャン型は生成イオン型であり、蓄積時間は1.0000秒、スキャン範囲は50〜650Da、持続時間は55分間であった。MSMS分析についてはすべての源パラメータは上と同じであり、−35Vの衝突エネルギー(CE、collision energy)、5psiの衝突ガス(CAD、窒素)を用いた。
【実施例5】
【0097】
選択される卵巣マーカーの標的三重−四重極アッセイ
以下の実施例は、卵巣マーカーのサブセットの三重−四重極質量分析に基づくハイスループットスクリーニング(HTS)アッセイの開発を記載する。抽出過程で加えた内部標準分子に対する卵巣の28炭素含有代謝産物のうちの6つの比を判定するために、最初に予備的方法を確立した。これは、2007年3月22日に公開された出願人による同時係属のCRC/Ovarian国際出願(国際公開第2007/030928号パンフレット)で報告されたHTS方法に類似する。卵巣癌患者と卵巣癌なしの対象とを区別するこの方法の能力を図8に示すが、そこでは、初期発見のために用いた20人の卵巣癌対象を289人の無病対象と比較する。6つのC28炭素分子(中性質量450(C28H50O4)、446(C28H46O4)、468(C28H52O5)、448(C28H48O4)、464(C28H48O5)及び466(C28H50O5)は、対照と比較して卵巣患者の血清中で有意により低いことが検証された。各分子のp値を、表66に示す。
【0098】
残りの分子のMSMS分析の完了に基づき、卵巣マーカーのより大きなサブセットを分析するために新しいHTS三重−四重極方法を開発した。この拡張された三重−四重極方法は、γトコエン酸の包括的な一団を測定し、表67に記載される代謝産物を含む。本方法は各親の娘断片イオン、並びに内標準分子を測定する(下の方法を参照)。次に、内標準のピーク面積で割ることによって、バイオマーカーピーク面積を標準化する。
【0099】
次に、対照及び卵巣癌陽性の対象の以降の独立した集団におけるγトコエン酸の減少を検証するために、本方法を用いた。図9のグラフは、対照と比較して卵巣癌患者での各γトコエン酸のシグナル強度の平均差を示す。コホートには、250人の対照(すなわち、試料採取時に卵巣癌と診断されていない、灰色の棒)、及び241人の卵巣癌の対象(黒い棒)が含まれた。元の20人の卵巣癌が発見された試料(白色の棒)の平均も、この方法のために示す。結果は、卵巣癌患者からの血清が、無病対照と比較して低いレベルのγトコエン酸を有することを確認する。各代謝産物のp値(250人の対照対241人の卵巣癌)を、各マーカーについて表67並びに図9に示す。
【0100】
非標的FTMS分析について記載した通りに、血清試料を抽出する。各試料の分析のために、酢酸エチル有機分画を用いる。120μL酢酸エチル分画の各試料の一定分量に、15μLの内標準を加え(メタノール中の1ng/mLの(24−13C)−コール酸)、135μLの総容量とする。オートサンプラーは、フローインジェクション分析によって100μLの試料を4000QTRAPに注入する。担体溶媒は、90%メタノール:10%酢酸エチルであり、APCI源へ360μL/分の流速である。
【0101】
MS/MS HTS方法は、APCIプローブを有するTurboV(商標)源を備えた四重極線状イオントラップABI 4000QTrap質量分析計で開発した。源ガスパラメータは以下の通りであった:CUR:10.0、CAD:6、NC:−3.0、TEM:400、GS1:15、インターフェイスヒーターをオンにする。「化合物」設定は以下の通りであった:入口ポテンシャル(EP、entrance potential):−10、及び衝突セル出口ポテンシャル(CXP、cell exit potential):−20.0。本方法は、各代謝産物の1つの親イオン移行及び内標準の単一の移行の複数の反応モニタリング(MRM、multiple reaction monitoring)に基づく。各移行は、250msの時間、合計周期時間2.3秒の間モニタリングする。試料あたりの合計獲得時間は、約1分間である。本方法は、上で参照した国際出願例(国際公開第2007/030928号パンフレット)に記載のものに類似するが、表67に示す分子のより大きなサブセットを含むように拡張した。
【0102】
すべての引用文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0103】
本発明は、1又は複数の実施形態に関して記載されている。しかし、請求項で定義される本発明の範囲を逸脱しない範囲で、いくつかの変更及び修正を加えることができることは、当分野の技術者にとって明らかとなる。
【0104】
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【0105】
【表1】











【0106】
【表2】

【0107】
【表3】

【0108】
選択される卵巣癌診断質量のMSMS断片
各表は、電圧で表した衝突エネルギー、分で表したHPLC保持時間及び断片イオンの強度百分率を示す。表題の質量は中性であり、m/z(amu)の下に記載の質量は(M−H)である。
【0109】
【表4】

【0110】
【表5】

【0111】
【表6】

【0112】
【表7】

【0113】
【表8】

【0114】
【表9】

【0115】
【表10】

【0116】
【表11】

【0117】
【表12】

【0118】
【表13】

【0119】
【表14】

【0120】
【表15】

【0121】
【表16】

【0122】
【表17】

【0123】
【表18】

【0124】
【表19】

【0125】
【表20】

【0126】
【表21】

【0127】
【表22】

【0128】
【表23】

【0129】
【表24】

【0130】
【表25】

【0131】
【表26】

【0132】
【表27】

【0133】
【表28】

【0134】
【表29】

【0135】
【表30】

【0136】
【表31】

【0137】
【表32】

【0138】
【表33】

【0139】
【表34】

【0140】
【表35】



【0141】
卵巣癌バイオマーカーのMS/MS断片の帰属
【0142】
【表36】

【0143】
【表37】

【0144】
【表38】

【0145】
【表39】

【0146】
【表40】

【0147】
【表41】

【0148】
【表42】

【0149】
【表43】

【0150】
【表44】

【0151】
【表45】


【0152】
【表46】

【0153】
【表47】

【0154】
【表48】

【0155】
【表49】

【0156】
【表50】

【0157】
【表51】

【0158】
【表52】

【0159】
【表53】

【0160】
【表54】

【0161】
【表55】

【0162】
【表56】

【0163】
【表57】

【0164】
【表58】

【0165】
【表59】

【0166】
【表60】

【0167】
【表61】

【0168】
【表62】

【0169】
【表63】

【0170】
【表64】

【0171】
【表65】

【0172】
【表66】

【0173】
【表67】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
未知の卵巣癌状態の試験対象における卵巣癌の有無を診断する方法であって、
表1に記載される424個の代謝産物の群から選択される分子、又はこれらの分子に実質的に同等の質量を有する分子若しくはそれらの誘導体の断片に関する定量化データを得るために、試験対象からの血液試料を分析する工程と;
前記試験対象の前記分子について得られる定量化データを、卵巣癌陽性の複数のヒトからの前記分子から得られる定量化データ、又は卵巣癌陰性の複数のヒトから得られる定量化データと比較する工程とを含み;試験対象が卵巣癌陽性又は陰性である可能性を判定するために前記比較を用いることができる方法。
【請求項2】
FTMSに基づく方法である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
分子が、中性の精確な質量440.3532、446.3413、448.3565、450.3735、464.3531、466.3659、468.3848、474.3736、478.405、484.3793、490.3678、492.3841、494.3973、502.4055、504.4195、510.3943、512.4083、518.3974、520.4131、522.4323、530.437、532.4507、534.3913、538.427、540.4393、548.4442、550.4609、558.4653、566.4554、574.4597、576.4762、578.493、590.4597、592.4728、594.4857、596.5015、598.5121によって同定される代謝産物から選択され、+/−5ppmの差は同じ代謝産物であることを示す、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
分子が液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)方法又は直接注入三重−四重極質量分析方法によって分析される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記分子の各々の強度移行(intensity transition)及び内標準の強度移行を測定する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
患者スコアが、前記患者の分子間の最低の平均−標準化log(2)変換比を判定することによって作成される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
分子が、中性の精確な質量446.3396、448.3553、450.3709、468.3814、474.3736、478.4022、484.3764、490.3658、492.3815、494.3971、496.4128、502.4022、504.4179、512.4077、518.3971、520.4128、522.8284、530.43351、532.44916、538.4233、540.4389、550.4597、558.4648、574.4597、576.4754、578.4910、592.47029、594.4859、596.5016及び598.5172によって同定される代謝産物から選択され、+/−5ppmの差は同じ代謝産物であることを示す、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
これらの質量を有する代謝産物の分子式が、それぞれC28H46O4、C28H48O4、C28H50O4、C28H52O5、C30H50O4、C30H54O4、C28H52O6、C30H50O5、C30H52O5、C30H54O5、C30H56O5、C32H54O4、C32H56O4、C30H56O6、C32H54O5、C32H56O5、C32H60O5、C34H58O4、C34H60O4、C32H58O6、C32H60O6、C34H62O5、C36H62O4、C36H62O5、C36H64O5、C36H66O5、C36H64O6、C36H66O6、C36H68O6及びC36H70O6である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
これらの代謝産物の構造が、それぞれ
【化1】

である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
代謝産物がそれぞれ表36〜65に示すLC−MS/MS断片パターンを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
代謝産物が、γトコフェロール、γトコトリエノール、オメガカルボキシ化γトコフェロール及びγトコトリエノール、ビタミンE関連代謝産物又は前記代謝産物の代謝誘導体である、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
未知の卵巣癌状態の試験対象における卵巣癌又は卵巣癌の発症リスクを診断する方法であって、
表1に記載される424個の代謝産物の群から選択される分子に関する定量化データを得るために、試験対象からの血液試料を分析する工程と;
前記試験対象の前記分子について得られた定量化データを、複数の卵巣癌陰性のヒトからの前記分子から得られた定量化データと比較する工程とを含み;前記代謝産物の1又は複数の非存在又は有意な減少が、卵巣癌又は卵巣癌の発症リスクの存在を示す方法。
【請求項13】
FTMSに基づく方法である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
分子が、中性の精確な質量440.3532、446.3413、448.3565、450.3735、464.3531、466.3659、468.3848、474.3736、478.405、484.3793、490.3678、492.3841、494.3973、502.4055、504.4195、510.3943、512.4083、518.3974、520.4131、522.4323、530.437、532.4507、534.3913、538.427、540.4393、548.4442、550.4609、558.4653、566.4554、574.4597、576.4762、578.493、590.4597、592.4728、594.4857、596.5015、598.5121によって同定される代謝産物から選択され、+/−5ppmの差は同じ代謝産物であることを示す、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
分子が液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)方法又は直接注入三重−四重極質量分析方法によって分析される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記分子の各々の強度移行及び内標準の強度移行を測定する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
患者スコアが、前記患者の分子間の最低の平均−標準化log(2)変換比を判定することによって作成される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
分子が、中性の精確な質量446.3396、448.3553、450.3709、468.3814、474.3736、478.4022、484.3764、490.3658、492.3815、494.3971、496.4128、502.4022、504.4179、512.4077、518.3971、520.4128、522.8284、530.43351、532.44916、538.4233、540.4389、550.4597、558.4648、574.4597、576.4754、578.4910、592.47029、594.4859、596.5016及び598.5172によって同定される代謝産物から選択され、+/−5ppmの差は同じ代謝産物であることを示す、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
これらの質量を有する代謝産物の分子式が、それぞれC28H46O4、C28H48O4、C28H50O4、C28H52O5、C30H50O4、C30H54O4、C28H52O6、C30H50O5、C30H52O5、C30H54O5、C30H56O5、C32H54O4、C32H56O4、C30H56O6、C32H54O5、C32H56O5、C32H60O5、C34H58O4、C34H60O4、C32H58O6、C32H60O6、C34H62O5、C36H62O4、C36H62O5、C36H64O5、C36H66O5、C36H64O6、C36H66O6、C36H68O6及びC36H70O6である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
これらの代謝産物の構造が、それぞれ
【化2】

である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
代謝産物がそれぞれ表36〜65に示すLC−MS/MS断片パターンを有する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
代謝産物が、γトコフェロール、γトコトリエノール、オメガカルボキシ化γトコフェロール及びγトコトリエノール、ビタミンE関連代謝産物又は前記代謝産物の代謝誘導体である、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
抗酸化剤療法が有益であろう個体を同定及び診断する方法であって、
個体からの血液試料を分析して、γトコフェロール、γトコトリエノール、オメガカルボキシ化γトコフェロール及びγトコトリエノール、ビタミンE関連の代謝産物、又は前記代謝産物群の代謝誘導体のすべて又はそれらのサブセットについての定量化データを得る工程と;
前記個体の前記分子について得られた定量化データを、複数のOC陰性のヒトの分析から得られた参照データと比較する工程とを含み;個体にそのような療法が有益となるであろう可能性を判定するために前記比較を用いることができる方法。
【請求項24】
γトコフェロール、γトコトリエノール、オメガカルボキシ化γトコフェロール及びγトコトリエノール、ビタミンE関連代謝産物又は前記代謝産物群の代謝誘導体が、表1に記載の代謝産物、又はそれらの断片若しくは誘導体からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
γトコフェロール、γトコトリエノール、オメガカルボキシ化γトコフェロール及びγトコトリエノール、ビタミンE関連の代謝産物又は前記代謝産物群の代謝誘導体が、446.3396(C28H46O4)、448.3553(C28H48O4)、450.3709(C28H50O4)、468.3814(C28H52O5)、474.3736(C30H50O4)、478.4022(C30H54O4)、484.3764(C28H52O6)、490.3658(C30H50O5)、492.3815、(C30H52O5)、494.3971(C30H54O5)、496.4128(C30H56O5)、502.4022(C32H54O4)、504.4179(C32H56O4)、512.4077(C30H56O6)、518.3971(C32H54O5)、520.4128(C32H56O5)、522.8284(C32H60O5)、530.43351(C34H58O4)、532.44916(C34H60O4)、538.4233(C32H58O6)、540.4389(C32H60O6)、550.4597(C34H62O5)、558.4648(C36H62O4)、574.4597(C36H62O5)、576.4754(C36H64O5)、578.4910(C36H66O5)、592.47029(C36H64O6)、594.4859(C36H66O6)、596.5016(C36H68O6)、及び598.5172(C36H70O6)の精確な中性質量(M−H質量親及び娘イオン質量)(ダルトンで測定した)若しくはそれらと実質的に同等な質量を有する代謝産物、又はそれらの断片若しくは誘導体からなる群から選択され、+/−5ppmの差は同じ代謝産物であることを示す、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
代謝産物がそれぞれ表36〜65に示すLC−MS/MS断片パターンを有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
OCを予防、治療若しくは安定化させるか、又はOCと関連する症状を改善するように設計された食事上の、化学的な又は生物学的な治療戦略に応答する個体を診断する方法であって、
単一回の回収又は経時的な複数回の回収による前記個体からの1又は複数の血液試料を分析して、γトコフェロール、γトコトリエノール、オメガカルボキシル化γトコフェロール及びγトコトリエノール、ビタミンE様分子又は前記代謝産物群の代謝誘導体のすべて又はそれらのサブセットについての定量化データを得る工程と;
前記試料の前記分子について得られた定量化データを、複数のOC陰性のヒトからの前記分子から得られた参照データと比較する工程とを含み;前記個体の代謝状態が前記治療戦略の間に改善されたかどうかを判定するために前記比較を用いることができる方法。
【請求項28】
γトコフェロール、γトコトリエノール、オメガカルボキシ化γトコフェロール及びγトコトリエノール、ビタミンE関連代謝産物又は前記代謝産物群の代謝誘導体が、表1に記載の代謝産物、又はそれらの断片若しくは誘導体からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
γトコフェロール、γトコトリエノール、オメガカルボキシ化γトコフェロール及びγトコトリエノール、ビタミンE関連の代謝産物又は前記代謝産物群の代謝誘導体が、446.3396(C28H46O4)、448.3553(C28H48O4)、450.3709(C28H50O4)、468.3814(C28H52O5)、474.3736(C30H50O4)、478.4022(C30H54O4)、484.3764(C28H52O6)、490.3658(C30H50O5)、492.3815、(C30H52O5)、494.3971(C30H54O5)、496.4128(C30H56O5)、502.4022(C32H54O4)、504.4179(C32H56O4)、512.4077(C30H56O6)、518.3971(C32H54O5)、520.4128(C32H56O5)、522.8284(C32H60O5)、530.43351(C34H58O4)、532.44916(C34H60O4)、538.4233(C32H58O6)、540.4389(C32H60O6)、550.4597(C34H62O5)、558.4648(C36H62O4)、574.4597(C36H62O5)、576.4754(C36H64O5)、578.4910(C36H66O5)、592.47029(C36H64O6)、594.4859(C36H66O6)、596.5016(C36H68O6)、及び598.5172(C36H70O6)の精確な中性質量(ダルトンで測定した)若しくはそれらと実質的に同等な質量を有する代謝産物、又はそれらの断片若しくは誘導体からなる群から選択され、+/−5ppmの差は同じ代謝産物であることを示す、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
代謝産物がそれぞれ表36〜65に示すLC−MS/MS断片パターンを有する、請求項29に記載の方法

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−101141(P2013−101141A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−10685(P2013−10685)
【出願日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【分割の表示】特願2009−547508(P2009−547508)の分割
【原出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(504353730)フェノメノーム ディスカバリーズ インク (16)
【Fターム(参考)】