説明

厚さ方向に構造化されたイオン交換膜及びこれらの膜の製造方法

支持ポリマーに共有結合するイオン交換部位を含む、厚さ方向に構造化された単層イオン交換膜であって、その膜が、中間領域のいずれの側に位置する二つの表面領域を含み、各表面領域の厚さが、膜の全厚さの15%以下であり、その表面領域が、少なくともDtotalである表面領域の厚さで計算された平均イオン交換部位密度Dsurfaceを有する、前記イオン交換膜。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、厚さ方向に構造化された(structured in the thickness)イオン交換膜に関する。また、本発明は、それらの製造方法及びそれらの使用に関する。
【0002】
用語「厚さ方向に構造化されたイオン交換膜」とは、その厚さに特性、例えばそのイオン交換能力の制御された勾配を有する膜であって、その表面の交換能力が、膜のコアにおけるものとは異なるものを意味する。
イオン交換膜は、当技術分野において公知である。アニオン又はカチオンに選択的に浸透可能なそれらの能力により、多くの用法が与えられる。塩素及び水酸化ナトリウムの共同生産用塩化ナトリウム溶液の膜電気分解、水処理のような多くの応用をそれ自体有する電気透析法、さらに燃料電池は、イオン交換膜を使用する技術例である。
【0003】
燃料電池は、高収率及び将来有望な汚染の低レベル化での生産が可能な、電気的及び熱的エネルギーである。しかし、それらのコスト高は、それらの広範囲な使用を妨げ、従って、それらのコストの低減を導くことが可能ないずれかの改善が望まれる。
ある公知のタイプの燃料電池は、主な構成要素としてイオン交換、及び特に、二つの電極間に挟まれた固形電解質として作用するプロトン交換ポリマー膜を含み:このアセンブリーは、公知の方法において、燃料及び酸化剤がそれぞれ導入される二つのチャンバーに分けられ、その化学反応(電子的酸化)は、電流を電極に集める。そのため、膜は、触媒金属、例えば、白金で被覆された二つの電極間で圧縮される。変形として、膜-電極アセンブリーは、膜の面上の原位置(in situ)で形成される触媒コーティングを含む。
【0004】
燃料電池に使用してもよい様々なタイプの燃料のうち、水素及びメタノールは、最も徹底的に研究されたものである。メタノールは貯蔵が容易であるという利点を有する。さらに、メタノールは、様々な方法において、例えば、天然ガス又は再生可能なもの、例えば、木材又はバイオマスから得られる。
ある燃料電池は、酸化剤との反応前に水素にまず変換するので、メタノールのみを間接的に使用する。他の燃料電池において、メタノールの反応は直接的である。これらの電池については、ダイレクトメタノール型燃料電池-DMFCとして以下に言及する。
【0005】
DMFCにおいて、以下の反応は電極で行われる:
カソード:O2+4H++4e-→2H2O
アノード:CH3OH+H2O→CO2+6H++6e-
そのような燃料電池のセパレーターとして使用される膜は、特定かつ厳密な要求を満たさなければならず、それは、その物理化学的特性が、その電池の性能品質にかなり影響するからである。特に、それらの重要なパラメーターは、プロトン伝導性及び燃料不浸透性である。
【0006】
DMFCに使用されるカチオン膜の燃料不浸透性を改善するために、支持ポリマーにグラフト化されたカチオン交換基からなる多層膜を使用することは公知のプラクティスであり(WO98/28811)、様々な相は異なる交換部位密度を有している。しかし、これら公知の膜は、製造が複雑である。さらに、それらの全イオン伝導性は不十分である。
【0007】
本発明は、不浸透性の改善を示し、同時に優れたイオン伝導性を保持するイオン交換膜を、単純な方法で提供することを目的とする。具体的には、本発明は、DMFCに使用される場合、イオン伝導性及びメタノールに対する不浸透性が改善された膜を提供することを目的とする。
【0008】
その結果、本発明は、支持ポリマーに共有結合するイオン交換部位を含む単層イオン交換膜に関し、その膜の平均イオン交換部位密度Dtotalは、膜の全厚さで計算した場合、少なくとも1.2meq/cm3であり、その膜は、中間領域(mid-zone)のいずれの側に(either side of)位置する二つの表面領域を含み、各表面領域は、膜の全厚さの15%以下の厚さを有し、その表面領域は、少なくともDtotalである表面領域の厚さで計算された平均イオン交換部位密度Dsurfaceを有する。
用語「単層イオン交換膜」とは、その厚さにおいて中間面を持たない膜を意味する。従って、そのような膜は、二つ以上の薄層の重層又はさらなる外層と膜の連続的オーバーラッピングから生じる多層膜とは区別される。単層膜は、厚さの方向において、その主な巨視的材料パラメーター、例えば、その密度、そのイオン伝導性又はその機械的特性となる連続的伸展(continuous evolution)を有する。単層膜において中間面及び不連続性がないことにより、例えば、より良好なイオン伝導性、層間剥離のリスクの欠如、より少ない内部張力及び従って摩耗による変形がより少ないという多くの利点が存在する。
【0009】
イオン交換膜は、それが、それぞれカチオン又はアニオンに対して選択的に浸透性であるかどうかにより、カチオン型又はアニオン型であり得る。それが含むイオン交換部位は、様々な公知の型、例えば、膜のタイプに依存して、カルボキシル基、スルホネート基又はトリメチルアンモニウム基であってもよい。
本発明の膜は、プロトン移動が目的とされ、また、スルホネート交換部位を含む場合、特に好都合である。
【0010】
本発明による膜は、コンビネーションにおいて、以下のものを有する:
・表面領域の厚さで計算されたDsurfaceが少なくともDtotalであるような表面領域における交換部位の密度増加、及び
・膜の全厚さで計算された交換部位平均密度Dtotalが少なくとも1.2、都合よくは1.75及び優先的には2.5meq/cm3。Dtotal値が少なくとも3、好ましくは3.5meq/cm3の膜が特に好都合である。
【0011】
meq/cm3で表されるDtotalを得るために、1995年12月にフランス標準AFNOR NF X45-200によりmeq/gで表される膜の全交換能力を測定し、g/cm3で表される膜の密度に乗じる。
【0012】
従って、これらの膜は、十分な平均密度と組み合わせて、厚さの平均値と比較して少なくとも表面と同等の部位密度(site density)を有する。これらの二つの特性は、膜に関して良好な全伝導性を確実にし、また、中心領域の交換部位のかなりの欠如のために平均交換部位密度が低い特定の公知のイオン交換膜とは区別される。一般的には、そのような膜は、全体の厚さの平均値と比較して、表面で高い交換部位密度を有するが、それらの実用にはイオン伝導性が不十分である。
さらに、膜の様々な表面物理化学的特性はそれらの性能品質に直接影響を与えることを、本発明者は確認した。具体的には、例えば、電極-燃料電池膜アセンブリーにおいて、電極と膜の間の中間面の品質は、本質的な役割を担う。電子触媒現象が最も優れているのはこの中間面である。膜の表面において、触媒及び電極と共に、膜のイオン伝導と電極の電子伝導との間の平衡を確実にするのが交換部位である。従って、膜の表面領域における交換部位密度は、触媒との接触に直接影響し、従って燃料電池の機能に影響する。
【0013】
また、本発明による膜の表面領域の交換部位の高い密度は、膜をより親水性にするという利点を有する。例えば、燃料電池の場合、電気浸透推力は、膜の脱水を導き、そのイオン伝導性に有害である。その機能に必要な膜の正確な含水量を維持するために、従って水の連続供給は必要である。膜の表面が十分に親水性であるならば、この供給は促進される。
平均密度Dsurface 及びDtotalは、膜の全体の厚さで確立された部位密度プロフィールから計算される。平均値は、望ましい領域の厚さの部位密度を積分することにより得られる。実際には、厚さの関数として、部位密度(又はそれらに対する比率の大きさ)を示すグラフにおいて、平均値は、平均値よりも上に位置するプロフィールの表面積が、それよりも下に位置するプロフィールの表面積と同等である値である。Dsurface を得るために、作業を、表面層のみで行い、一方、Dtotalを得るために、作業を、全ての厚さで行う。
【0014】
スルホネートタイプのイオン交換部位を含むカチオン膜の場合、表面領域の交換部位密度は、メチレンブルー(テトラメチルチオニン塩酸塩-C16H18SN3Cl)と接触して膜の表面に位置することにより、非常に素早くかつ容易に示すことができる。この染料は、高分子量を有し、膜へのその浸透を低減する。本発明による膜の場合、メチレンブルーは、スルホネート基と接触して固定され、強力な青色を与える。比較として、少ない表面交換部位を含む公知の膜は、染料とほとんど反応せず、青色の発色は明らかに少ないか又は全く現れないかのいずれかである。
【0015】
本発明によると、交換部位密度が高い表面領域は、膜の全厚さの15%の最大厚さを有する。それは、全体の厚さから計算される平均密度Dtotalと少なくとも同等であるべき、この領域の交換部位の平均密度Dsurfaceである。
推奨される本発明の一つの変形は、各表面領域の厚さが、膜の全厚さの10%以下、好都合には8%、優先的には5%、さらに優先的には2%である。各表面領域の厚さが、1%以下の厚さの膜は、特に好都合である。特に、これらの膜は、それらの最上層に高い交換部位密度を有する。
本発明による交換膜において、Dsurfaceは少なくともDtotalと等しい。
【0016】
前述したように、これらの膜が燃料電池に使用される場合、それらは、電極と触媒層との接触において良好なイオン伝導性を確実にするのに十分な表面領域部位密度を有する。
本発明による膜の一つの好ましい態様において、Dsurfaceは、少なくとも1.05、好都合には1.1、より好都合には、1.15、さらにより好都合には1.2Dtotalである。
この態様において、膜の表面領域における交換部位の極めて高い交換部位密度は、特に燃料電池において、それらに例外的な性能品質を与える。
【0017】
本発明の膜において、イオン交換部位、例えばカルボキシル基、スルホネート基又はトリメチルアミン基は、支持ポリマーに共有結合している。このポリマーは、特に、膜の機械的強度及びその寸法安定性を保証し、使用中の媒体に適した必要な耐化学性を有すると考えられる。多くの支持ポリマーは、既に、イオン交換膜に成功裏に使用されてきた。それは、例えば以下のような場合である:
・フッ素化ポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ペルフッ素化ポリ(エチレン-プロピレン)(FEP)及びエチレン-ポリテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE);
・ポリオレフィン(ポリエチレン及びポリプロピレン);
・芳香族ポリマー、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)及びポリスルホン(PSU);
・ポリアミド。
【0018】
放射化学グラフト化を企図する膜を得るために、支持ポリマーは、厚さ及び得られるべき膜の寸法、また、それらの必要な精度に合ういずれかの手段により使用される。高い精度の広範な厚さの小さな膜に関して、注入技術は好適かもしれない。通常、膜は、押し出し又はカレンダリングにより使用される。イオン交換部位は、膜の形態においてそれを実行する前又は後に、支持ポリマーに結合されてもよい。それらは、好ましくは、膜の形態においてそれを実行した後に、支持ポリマーに結合される。
【0019】
本発明によるイオン交換膜が、少なくともDtotalである、表面領域の厚さで計算されたイオン交換部位密度Dsurfaceを有するために、膜の製造の間、その厚さのプロフィールにおいてイオン交換部位密度をコントロール可能にすることが必要である。このコントロールは、様々な方法で得ることができる。例えば、膜を製造するために異なる分子量の二つの支持ポリマーを使用し、低分子量ポリマーが高いグラフト反応性を有するものが都合よい。二つのポリマーは、膜の押し出しの前又はその間に、共に混合される。プラスチックのレオロジーの周知の法則によると、高分子量(従って高粘性)の部分及び低分子量(従って低粘性)の部分を含むポリマー溶融混合物の押し出しの間、低分子量部分は、押し出しの間に膜の表面領域へ移動する傾向がある。高グラフト反応性のポリマーは表面にあるので、表面領域のより高い交換部位密度を有する膜は、グラフト化及び官能化後に得られると考えられる。
【0020】
イオン交換部位は、いずれかの好適な技術により支持ポリマーに結合されてもよい。しかし、本発明による膜の一つの好ましい変形において、それは、放射化学グラフト化の工程を含むプロセスにより得られる。放射化学グラフト化は、支持ポリマー(それ自体ホモポリマー又はコポリマーであってもよい)を、そこで反応性ラジカルを作ることを企図する高エネルギー照射にかけることによるコポリマー製造技術である。照射のコンビネーションにおいて、ポリマーは、グラフト化が望ましいモノマーを含む組成物と接触して配置される。このモノマー(好都合にはスチレン)は、照射により活性化される部位でポリマー化される。続いて、グラフト化された基は、さらなる官能化処理(例えば、スルホン化、ホスホン化、アミノ化、カルボキシル化等)の手段により、イオン交換基に変換されてもよい。放射化学グラフト化工程の実験パラメータ、例えば照射、及びモノマーを含む組成物の性質に関するもののコントロールは、従って、得られる膜の交換能力である厚さの構造のコントロールに直接的な影響を有する。照射に使用される放射線は、電磁気、例えば、X線又はγ線であってもよく、又は、荷電粒子、例えば電子からなっていてもよい。十分なエネルギー、例えば少なくとも0.5MeV及び好ましくは少なくとも1MeVを有する電子からなるβ放射線は好適かも知れない。通常、20MeVを超えない放射線が好ましく、1.5〜10MeVの範囲の値が推奨される。この放射線は、反応性ラジカルの十分な量を得るために要求される時間、支持ポリマーに施されるべきである。これは、kGy(キログレイ)で表される照射量を生じ、1グレイは104エルグ/グラムと等しい。照射量は、ポリマーの放射線に対する感受性に依存する。支持ポリマーがETFEの場合、20〜100kGyの量に相当する時間が好適であると思われた。その照射は、ポリマーが、モノマーを含む組成物と接触する時に行われてもよい。また、それは前もって行われてもよい。この場合、照射されるポリマーは、モノマーを含む組成物との接触を待ちながら、低温で有利に保持される。本発明による膜の製造に関して、既に膜の形態で実行された支持ポリマーの照射が推奨される。また、モノマーを含む組成物との接触においてポリマーを置く前に実行される照射が推奨される。
【0021】
また、モノマーを含む組成物は、グラフト化及びポリマー化をコントロールするために、様々な添加物を含んでいてもよい。ポリマー阻害剤、好ましくは高い立体障害を有するもの、例えばメチレンブルー(テトラメチルチオニンヒドロクロライド-C16H18SN3Cl)、好ましくは、拡散の遅い連鎖移動剤、例えば、ヘキサンチオール又はドデカンチオールを使用することが推奨され、後者が好ましく、これら二つの添加剤は、硬化剤、例えば、ジビニルベンゼンと都合よく合わせられる。
【0022】
グラフト化組成物中の少なくとも一つのそのような添加物の存在により、グラフト化、特に阻害剤に関して良好なコントロールが確実となり、組成物それ自体内でモノマーのポリマー化を減らすことにより組成物の有効性が維持される。
照射された膜が、モノマーを含む組成物と接触して配置される場合、表面内部(surface inwards)から前面(front)の進行によりグラフト化が進む。技術的説明により結び付けられることが望まれることなく、前面の進行のメカニズムのコントロールが、その厚さにおいて膜の構造の改善及び具体的にはグラフト化程度の優れたコントロールの獲得を可能にすると、本発明者らは考えている。特定の環境下、前面の進行の動態は、モノマーを含む組成物のみを時間の経過で変化させることにより、膜の構造を得ることを可能にする。
【0023】
その結果として、また、本発明は、厚さ方向に構造化された放射化学グラフト化膜、具体的にはイオン交換膜であって、その膜が、照射され、またグラフト化されるべき少なくとも一つのモノマーをそれぞれ含む少なくとも二つの異なるグラフト化組成物と成功裏に接触して配置されるものに関する。
【0024】
グラフト化組成物に含まれるモノマーは、同じでも異なっていてもよい。それらが異なっている場合、膜は、その厚さにおいて、その化学的組成物の構造を有すると考えられる。厚さにおけるこの空間構造は、グラフト化組成物の一時的な変形に依存すると考えられ、続いて膜と接触して配置されるグラフト化組成物に含まれるモノマーは、予め接触して配置される組成物中に含まれるモノマーに比べて、膜の最外側層においてグラフト化される。グラフト化組成物が幾つかのモノマーを含む場合、また、膜が多くの異なるグラフト化組成物と接触して配置される場合、様々なグラフト化組成物のモノマー含量を徐々に変化させ、厚さにおいて、様々なグラフト化組成物含量がよりゆっくりと変化するにつれて、比例してより連続的な化学組成物勾配を有する膜を得ることが可能である。
【0025】
本発明の方法の一つの推奨される態様において、膜と接触して続いて配置される少なくとも一つのグラフト化組成物は、予め接触して配置される少なくとも一つの組成物が欠如するバリヤーモノマーを含む。用語「バリヤーモノマー」とは、それがグラフト化組成物中に存在する場合、グラフト化組成物中のバリヤーモノマーが欠如しているものよりも少ない浸透性を有する材料を生じるモノマーを意味する。本発明による方法において、考慮される浸透性は、膜が使用時に接触して配置される液体に対する浸透性である。燃料電池用の膜の場合、気体又は液体の流体は、燃料であると考えられる。燃料がメタノールの場合、クロロメチルビニルベンゼンは、効率的なバリヤー層を生じるモノマーの例である。この態様において、得られる膜は、最内側層のないバリヤー層をその表面領域に有する。
【0026】
少なくとも二つの様々なグラフト化組成物が同じモノマー(類)を含む場合、それらは、異なる添加剤含有物又はさらに異なる添加剤を都合よく含んでいてもよい。前記のように、グラフト化組成物は、多くの場合、連鎖移動剤、重合阻害剤及び硬化剤を含む。これらの添加剤は、支持ポリマーにおいて、モノマーのコポリマー化の制御を可能にする。異なる添加剤含有物を含むグラフト化組成物とうまく膜を接触して置くことにより、そのグラフト化が厚さにおいて構造化される膜は製造されると考えられる。
【0027】
本発明による方法の他の推奨される態様において、少なくとも二つのグラフト化組成物は、異なる含量のポリマー添加剤を有する。膜の厚さにおけるグラフト化の程度は、この方法において制御されてもよい。この態様によると、また、グラフト化組成物において硬化剤の含量を制御することにより、その内層に比べてその表面領域において多かれ少なかれ硬化する膜を得ることが可能である。
【0028】
この態様の一つの特に好都合な変形によると、膜と予め接触して配置される少なくとも一つのグラフト化組成物は、接触して続いて配置される少なくとも一つの浴のものよりも少ない少なくとも一つのポリマー添加剤含有量を有し、ポリマー添加剤は、連鎖移動剤、阻害剤又は硬化剤であり、これらの添加剤は都合よく組み合わされる。このため、膜は、実質的な表面グラフト化を得るためにこれらの添加剤が十分に含まれていないグラフト化組成物と接触して先ず配置される。次に、グラフト化が前面から膜の内部層に到達する時に、膜は、十分な量のポリマー阻害剤及び連鎖移動剤を含む第二のグラフト化組成物と接触して配置される。一般的に、グラフト化組成物中のこれらの添加剤の正確な含量は、支持ポリマー及びグラフト化されるべきモノマーの関数として、当業者により、場合により測定されると考えられる。
【0029】
この変形において、グラフト化組成物がイオン交換部位を得ることを目的とする場合(例えば、追加の処置、例えばスルホン化の後)、本発明による方法が、表面領域の交換部位の非常に高い密度を有する本発明による膜の製造を可能にすることが観察された。この変形において、連鎖移動剤、阻害剤及び/又は硬化剤は、方法のより後の段階まで、膜と接触して実質的に置かれないので、非常に強い表面グラフト化効果が長鎖で得られる。予めのグラフト化組成物との接触時間が十分に短い場合、添加剤及び具体的に阻害剤は、組成物に全体的に欠如していてもよい。さらに、グラフト化のその後の段階を通して、グラフト化組成物中の連鎖移動剤、阻害剤及び硬化剤の存在(この続いての段階は、膜の厚さの80%より多いグラフト化に都合よく対応する)は、ポリマー化及び硬化のコントロールのためのこれらの添加剤の存在の利点を全て維持することを可能にする。膜の徹底的な硬化は、その不浸透性を実際に改善する。
【0030】
この変形において得られる膜は、また、表面において高度に親水性であってもよい。
グラフト化組成物の温度は、少なくとも55℃であることが推奨される。95℃より高い温度は、好都合ではない。都合よくは、本発明による方法において、膜と接触して続いて配置されるグラフト化組成物は、予め接触して配置される組成物のものを超える温度であり、これらの温度の差異は少なくとも10℃であり、より好ましくは15℃である。第一の組成物に関して55〜65℃、また第二に関して75〜85℃の値は、特に適している。
【0031】
本発明の方法において、グラフト化組成物は、気体の形態又はさらにはプラズマの形態であってもよいが、グラフト化組成物については、液体の形態にあること、また、接触して置くことについては少なくとも二つの異なる浴に膜を浸すことにより行われることが推奨される。膜が少なくとも二つの異なる浴と接触して成功裏に配置される場合、浴の組成物は、長時間一定であることが可能である。この場合、接触して配置されるのはバッチ式であってもよく、全ての量の製造される膜は、所定の瞬間、一つの所定の浴(「バッチ」モード)又は連続的であってもよく、膜の異なる部分は異なる浴中にあり、膜は可動性であってもよい。また、浴の組成物は、特定の成分の添加又はさらには除去により、経時的に変化してもよい。この場合、膜は、一つの浴のみと接触してとどまっていてもよい。
【0032】
本発明による方法において、製造するのに望ましい膜に適するいずれかのグラフト化組成物を使用してもよい。特に、イオン交換膜を得ることが望ましい場合、グラフト化組成物は、望ましい膜のカチオン性又はアニオン性に依存する。グラフト化組成物は、クロロメチルスチレン(アニオン性膜)又はスチレン(カチオン性膜)を都合よく含む。また、良好な結果が、所望により置換されていてもよいフルオロスチレンで得ることができる。述べることができるフルオロスチレンの例としては、α-フルオロスチレン、α、β-ジフルオロスチレン、α、β、β-トリフルオロスチレン及び対応するフルオロナフチレンが挙げられる。用語「置換フルオロスチレン」とは、芳香環に置換基を含むフルオロスチレンを意味する。
【0033】
特に、前記方法の変形(予め膜と接触して配置される少なくとも一つのグラフト化組成物は、続いて接触して配置される少なくとも一つの浴のものよりも少ない、少なくとも一つのポリマー添加剤の含有物を有する)において、より少ないポリマー添加剤を含有するグラフト化組成物は、グラフト化モノマーの容量に比例して1.6%未満、好ましくは1%未満の硬化剤及び/又はグラフト化組成物の全容量中に0.15%未満及び好ましくは0.05%未満の連鎖移動剤及び/又は組成物に含まれるモノマーの質量に比例して0.05%未満、好ましくは0.04%未満及びさらにより好ましくは0.03%未満の阻害剤を含むことが好都合である。この変形において、また、グラフト化組成物が、液体の形態にあること及びスチレンを含むことが好都合である。特に使用してもよい連鎖移動剤は、ヘキサンチオール及びドデカンチオールが挙げられる。硬化剤の例は、ジビニルベンゼンである。この変形において、多量の少なくとも一つのポリマー添加剤を含むグラフト化組成物が、少なくとも2%の硬化剤、少なくとも0.005%の連鎖移動剤及び少なくとも0.005%の阻害剤を含むことが推奨され、百分率は、それぞれ前記定義の通りである。
【0034】
本発明の方法は、具体的にはその好ましい変形において、本発明による膜の製造に特に適している。
本発明による方法により得られるイオン交換膜は、特にその好ましい変形により得られるものは、低い電気抵抗と良好な不浸透性の間に優れた妥協点を有する。それらには、燃料電池、好ましくはメタノール作動の燃料電池において多くの応用が見い出された。
その結果として、また、本発明は、本発明による膜の使用又は燃料電池において本発明の方法により得られるものに関する。
【0035】
また、本発明は、本発明により又は本発明の方法により得られる膜を含む燃料電池に関する。
以下の実施例は、本発明を説明するためのものである。
【実施例】
【0036】
これらの実施例において、その方法は、以下の手法で行った。
膜の照射は、空気の存在下、1.5MeVの電位の電子ビーム下及び10kGy/sの線量率で行った。フィルムに堆積した量は、20〜100kGyであった。照射膜は、使用時まで、-18℃以下で貯蔵した。-18℃で、照射膜は、非常に少ない反応性の損失で12ヶ月間貯蔵してもよい。
【0037】
モノマー、及び特に、多量の安定化剤、例えばジビニルベンゼン(DVB)及びクロロメチルスチレン(CMS)を含むものを水性塩基性媒体0.1M NaOH中で洗うことにより不安定化し、続いて、分別漏斗において硬質除去された水でpHを中性にするために濯いだ。不安定化されたモノマーを、使用時まで-18℃で貯蔵した。
イオン伝導性、含水量及び得られる膜の交換力は、フランス標準AFNOR NF X45-200 1995 12月により測定した。
【0038】
断面8.55cm2のメジャーリングセルに、研究する膜を導入することにより、メタノール浸透性を周囲圧で測定した。膜を二つの10mlコンパートメントに設定した。膜の一方の面は、24ml/hの一定の速度で連続的に更新するメタノールの1モル溶液に曝露した。第二のコンパートメントは、400ml/分の流速でヘリウムを流した。メジャーリングセルを、25℃に維持した。同調された蒸気を、2℃でアセトンを含む二つの連続トラップに圧縮した。その圧縮物の分析は、ガスクロマトグラフィーにより行った。同じ測定条件下、参考に使用されるNafion(登録商標)117膜は、メタノール浸透性1215g/m2日及び水浸透性11 230g/m2日であった。
【0039】
接触角を、水及びジヨードメタンで測定した(KrussのG2測定機)。
炭素及びフッ素濃度及び/又は硫黄濃度プロフィールを、低温(cryogenic)ミクロトームで切断することにより得られる膜の部分において、X線微量分析(SEM-EDX)により測定した。サンプルの断面は、室温でのウルトラミクトーム平滑化により得た。続いて、白金/パラジウム合金をベースにした薄い伝導層での陰極スパッタリングにより、それを覆った。試験は、Oxford InstrumentsのX ISIS 300ミクロアナライズ系を備えたブランドLEO 982の電界効果スキャニング電子顕微鏡を使用して行った。使用した電子エネルギーは、20keVであった。濃度プロフィールを測定するために、膜の厚さに平行する選ばれる線に沿った電子の発生後に照射される、モニターされるべき元素(硫黄、フッ素、任意に炭素及び酸素)のX線シグナルを逐一回収し、イメージのために使用されるリールを使用して、電子ビームの偏光により置換を行った。プロフィールが測定される元素の濃度は、測定されるX線シグナルの強度に比例していた。
【0040】
膜の表面でのスルホネート部位の存在及び到達性は、メチレンブルー5g/lを含む水溶液中、1分間、サンプルを浸すことにより、続いて、発光体D65での透過及び観察角度10°におけるL*a*b*座標を測定することにより評価した。
交換部位密度Dtotal及びDsurfaceを測定するために、プロセスを以下の方法で行った。meq/cm3で表されるDtotalを得るために、フランス標準AFNOR NF X45-200 1995年12月により測定されるmeq/gで表される膜の全交換能力を計り、g/cm3で表される膜の密度を乗じた。Dsurfaceを得るために、採用した最初の仮説は、交換部位の密度は硫黄の密度に比例するということであった。硫黄濃度プロフィールから初め、全体の厚さの平均硫黄濃度(Ctotal)及び表面領域の平均硫黄濃度(Csurface)を、図の積分により測定した。これらの平均濃度は、平均値を超えて位置するプロフィールの表面積が、考えられる領域(表面のみ又は全厚さ)において、下に位置する表面積と等しいものである。続いて、Dsurfaceは、表面とその厚み全体の平均硫黄濃度の比とDtotalをかけたものに等しい。
Dsurface=Dtotal×(Csurface/Ctotal)
【0041】
例1
非不安定化スチレン30容量%及びメチレンブルー0.1g/lを含むエタノール70%を含むグラフト化溶液を製造した。この溶液に、使用されるスチレンの容量に対して純粋なジビニルベンゼン3.15容量%及びグラフト化溶液の全容量に対して1-ドデカンチオール0.055容量%を加えた。60kGyの用量で照射したETFE膜を、グラフト化溶液に導入し、反応器のヘッドスペースの酸素濃度100ppm未満が得られるまで、アセンブリーを窒素パージした。
グラフト化溶液を80℃で16時間維持した。得られるグラフトの程度は、47%であった。サンプル中でグラフト化されたスチレンを、室温で、12時間、クロロスルホン酸6質量%を含む1,2-ジクロロエタン(DCE)溶液中で、続いてスルホン化した。膜をDCE中で、続いて、エタノール中で1時間濯いだ。最終的に、0.1M水溶液中、60℃で、16時間、クロロスルホニル部位の加水分解により、スルホネート部位は得られた。グラフト化フィルムの厚さにおける硫黄分布のプロフィールは、グラフトがフィルムのコアに浸透し、表面に少ないグラフト化領域を含むことを示した(図1)。
【0042】
10g/l NaCl水溶液中で測定した場合、膜の抵抗は1.8Ω.cm2であった。含水量は34.4%〜36%であり、交換容量は2.17〜2.19meq/gであった。メチレンブルー試験の結果は、低濃度の表面部位(L:74.5; a:41.9; b:26.5)を示し、接触角(水86°及びジヨードメタン57°)は、低水和性を示した。測定したメタノール浸透性は452g/m2日であった。
評価したDtotalは3.2meq/cm3であり、全厚さの2%を示す領域で計算されたDsurfaceは3.0meq/cm3であった。
【0043】
例2
非不安定化スチレン20容量%及びメチレンブルー0.3g/lを含むエタノール80%を含むグラフト化溶液を製造した。使用されるスチレンの容量に対して純粋なジビニルベンゼン4容量%及びグラフト化溶液の全容量に対して1-ドデカンチオール0.050容量%を、この溶液に加えた。60kGyの用量で照射したETFE膜を、グラフト化溶液に導入し、反応器のヘッドスペースの酸素濃度100ppm未満が得られるまで、アセンブリーを窒素パージした。グラフト化溶液を80℃で6時間維持した。得られるグラフトの程度は、35%〜40%であった。その膜を、続いて、例1のように処理した。炭素及びフッ素及び硫黄に関するシグナルの、膜の厚さにおけるプロフィールは、グラフトがフィルムのコアに浸透し、フィルムの深さでグラフト勾配を含むことを示した(図2)。
【0044】
10g/l NaCl水溶液中で測定した場合、膜の抵抗は3.5Ω.cm2であった。含水量は30%であり、交換容量は1.8meq/gであった。メチレンブルー試験は、表面部位が低濃度であることを示した。メタノール浸透性は566g/m2日であり、水浸透性は14 370g/m2日であった。
評価したDtotalは2.7meq/cm3であり、全厚さの3%を示す領域で計算されたDsurfaceは2.6meq/cm3であった。
【0045】
例3
非不安定化スチレン30容量%及びメチレンブルー0.1g/lを含むエタノール70%を含むグラフト化溶液を製造した。60kGyの用量で照射したETFE膜を、グラフト化溶液に導入し、反応器のヘッドスペースの酸素濃度100ppm未満が得られるまで、アセンブリーを窒素パージした。グラフト化溶液を60℃で12分間維持した。グラフト化を中断することなく、追加のグラフト化溶液を攪拌しながら導入し、1-ドデカンチオール0.02%及びDVB3.2%を含む溶液を得た。グラフト化を16時間、80℃で続けた。グラフト化フィルムをTHFで洗い、60℃で1時間乾燥した。出発フィルムの質量に対する質量増加の平均により測定したグラフト化の程度は50%であった。示されたグラフト化フィルムの厚さにおける炭素及びフッ素シグナルのプロフィールは、フィルムの表面がグラフト化部位に豊富なことを示した(図3)。
【0046】
サンプルにグラフト化したスチレンを、続いて、スルホン化し、例1のように加水分解した。10g/l NaCl水溶液中で測定した場合、膜の抵抗は2.1Ω.cm2であった。含水量は46%であり、交換容量は2.1meq/gであった。メチレンブルー試験の結果は、高濃度の表面部位(L:36.1;a:6.9;b:60.4)を示し、接触角(水12°及びジヨードメタン49°)は良好な水和性を示した。メタノール浸透性は955g/m2日であり、水浸透性は10330g/m2日であった。
評価したDtotalは3.1meq/cm3であり、全厚さの3%を示す領域で計算されたDsurfaceは3.4meq/cm3、即ち1.1Dtotalであった。
【0047】
例4
非不安定化スチレン30容量%及びメチレンブルーを含まないエタノール70%を含むグラフト化溶液を製造した。60kGyの用量で照射したETFE膜を、グラフト化溶液に導入し、反応器のヘッドスペースの酸素濃度100ppm未満が得られるまで、アセンブリーを窒素パージした。グラフト化溶液を60℃で30分間維持した。反応器を空気下で空にすることによりグラフト化を中断した。部分的にグラフト化した膜を、第二のグラフト化工程を待つ間、低温で維持した。コントロールサンプルにおいて、例1のように測定したグラフト化の程度は、グラフト化程度13%を示した。
続いて、非不安定化スチレン30容量%及びメチレンブルー0.1g/lを含むエタノール70容量%を含む新規グラフト化溶液に膜を導入した。この溶液に、全容量に対して0.02容量%の1-ドデカンチオール溶液及びスチレンの容量に対して3.1容量%の純粋なDVBを加えた。グラフト化を80℃で16時間続けた。グラフト化膜をTHFで洗い、60℃で1時間乾燥した。出発フィルムの質量に対する質量増加の平均により測定したグラフト化の程度は、44%であった。
【0048】
サンプルにグラフト化したスチレンを、続いて、スルホン化し、例1のように加水分解した。10g/l NaCl水溶液中で測定した場合、膜の抵抗は1.1Ω.cm2であった。含水量は40%であり、交換容量は2.0meq/gであった。メチレンブルー試験の結果は、高濃度の表面スルホネート部位を示した。
【0049】
例5
非不安定化スチレン30容量%及びメチレンブルー0.1g/lを含むエタノール70%を含むグラフト化溶液を製造した。20kGyの用量で照射したETFE膜を、グラフト化溶液に導入し、反応器のヘッドスペースの酸素濃度100ppm未満が得られるまで、アセンブリーを窒素パージした。グラフト化溶液を70℃で30分間維持した。脱酸素化の後、さらなる溶液を攪拌しながらグラフト化反応器に導入し、スチレンの容量に対して、1-ドデカンチオール0.045%、純粋なDVB3.2容量%及びCMS0.75%を含むグラフト化溶液を得た。グラフト化を80℃で16時間続けた。グラフト化膜をTHFで洗い、60℃で1時間乾燥した。出発膜の質量に対する質量増加の平均により測定したグラフト化の程度は、37%と評価した。炭素及びフッ素シグナルの、グラフト化膜の厚さにおけるプロフィールは、膜の表面がスルホネート部位に豊富であることを示した(図4)。
【0050】
サンプルにグラフト化したスチレンを、続いて、スルホン化し、例1のように加水分解した。スルホン化スチレンの加水分解の間、クロロメチルスチレンをベンジルアルコールの形態において加水分解した。10g/l NaCl水溶液中で測定した場合、膜の抵抗は2.7Ω.cm2であった。含水量は30%であり、交換容量は1.6meq/gであった。メチレンブルー試験の結果は、表面スルホネート部位の低い到達性(L 66;a-41.2;b-28.3)を示し、また、接触角は、低い水和性を示した(水で94°及びジヨードメタンで59°の接触角)。メタノール浸透性は831g/m2日であり、水浸透性は9430g/m2日であった。
評価されたDtotalは2.4meq/cm3であり、全厚さの5%を示す領域で計算されたDsurfaceは2.7meq/cm3、即ち1.14Dtotalであった。
【0051】
例6
100kGyで照射した100μm膜を、不安定化CMS20容量%及びメチレンブルー0.3g/lを含むエタノール80%を含むグラフト化溶液に浸した。この溶液に、CMS2.4容量%に相当する量の純粋なDVBを加えた。脱酸素化の後、グラフト化反応器を75℃で16時間維持した。得られるグラフト化の程度は48.8%であった。45%のトリメチルアミン水溶液中のアミノ化、続いての10g/l NaCl溶液中の24時間の平衡後、膜の抵抗は3.6〜4.7Ωcm2であった。コンゴレッド水溶液中に1分間浸した膜は脱色せず、表面に四級アミン部位がないことを確認した。
【0052】
例7
非不安定化クロロメチルスチレン30容量%及びメチレンブルー0.1g/lを含むエタノール70%を含むグラフト化溶液を製造した。80kGyの用量で照射した100μmETF膜を、グラフト化溶液に導入し、反応器のヘッドスペースの酸素濃度100ppm未満が得られるまで、アセンブリーを窒素パージした。グラフト化溶液を75℃で30分間維持した。反応器を空気で空にした。得られたグラフト化の程度は7.5%であった。官能化の後、10g/l NaClに伝導しなかった。コンゴレッド中に浸漬することによる、アニオン交換部位の存在の試験は陽性であり、フィルム表面での部位の存在を示した。
【0053】
例8
非不安定化クロロメチルスチレン30容量%及びメチレンブルー0.1g/lを含むエタノール70%を含むグラフト化溶液を製造した。80kGyの用量で照射した100μmETFE膜を、グラフト化溶液に導入し、反応器のヘッドスペースの酸素濃度100ppm未満が得られるまで、アセンブリーを窒素パージした。グラフト化溶液を75℃で30分間維持した。反応器を窒素下で空にした。予め脱酸素化した新規グラフト化溶液を直ちに導入し、その溶液を75℃で16時間維持した。第二のグラフト化溶液を、脱安定化CMS30容量%及びメチレンブルー0.1g/lを含むエタノール70容量%を混合することにより製造した。この溶液に、CMS2.4容量%に相当する量の純粋なDVBを続いて加えた。得られたグラフト化の程度は50.5%であった。官能化の後、例5に従うと、膜の抵抗は2.2〜2.6Ω.cm2であった。コンゴレッド試験は、高度に陽性であり、高濃度の表面アニオン交換部位を示した。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、例1、2、3及び5でそれぞれ得られる膜に関して、膜の厚さにおける硫黄及び炭素-フッ素のプロフィールを示している。
【図2】図2は、例1、2、3及び5でそれぞれ得られる膜に関して、膜の厚さにおける硫黄及び炭素-フッ素のプロフィールを示している。
【図3】図3は、例1、2、3及び5でそれぞれ得られる膜に関して、膜の厚さにおける硫黄及び炭素-フッ素のプロフィールを示している。
【図4】図4は、例1、2、3及び5でそれぞれ得られる膜に関して、膜の厚さにおける硫黄及び炭素-フッ素のプロフィールを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持ポリマーに共有結合するイオン交換部位を含む、厚さ方向に構造化された単層イオン交換膜であって、前記膜の平均イオン交換部位密度Dtotalが、膜の全厚さで計算された場合、少なくとも1.2meq/cm3であり、前記膜が、中間領域のいずれの側に位置する二つの表面領域を含み、各表面領域の厚さが、膜の全厚さの15%以下であり、前記表面領域が、少なくともDtotalである表面領域の厚さで計算された平均イオン交換部位密度Dsurfaceを有することを特徴とするイオン交換膜。
【請求項2】
各表面領域の厚さが、膜の全厚さの10%以下である、請求項1に記載のイオン交換膜。
【請求項3】
各表面領域の厚さが、膜の全厚さの5%以下である、請求項1又は2に記載のイオン交換膜。
【請求項4】
Dsurfaceが少なくとも1.05Dtotalである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のイオン交換膜。
【請求項5】
Dsurfaceが少なくとも1.10Dtotalである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のイオン交換膜。
【請求項6】
放射化学グラフト化の工程を含む方法により得られる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のイオン交換膜。
【請求項7】
厚さ方向に構造化された放射化学グラフト化膜、特にイオン交換膜の製造方法であって、膜を照射し、及び該膜をグラフト化されるべき少なくとも一つのモノマーをそれぞれ含む少なくとも二つの異なるグラフト化組成物と成功裏に接触して配置することを特徴とする方法。
【請求項8】
続いて、膜と接触して配置される少なくとも一つのグラフト化組成物が、接触して予め配置される少なくとも一つの組成物を欠くバリヤーモノマーを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
グラフト化組成物が液体の形態にあり、また、前記接触した配置を、少なくとも二つの異なる浴に前記膜を浸すことにより行う、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも二つのグラフト化組成物が、種々のポリマー添加剤含有量を有する、請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記膜と予め接触して配置される少なくとも一つのグラフト化組成物が、続いて接触して配置される少なくとも一つの組成物よりも少ない少なくとも一つのポリマー添加剤含有量を有し、前記ポリマー添加剤が、連鎖移動剤及び/又は阻害剤及び/又は硬化剤である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか1項に記載による、又は請求項7〜11のいずれか1項、特に請求項11に記載の方法により得られるイオン交換膜の燃料電池における使用。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のイオン交換膜を含む燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−516066(P2008−516066A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536158(P2007−536158)
【出願日】平成17年10月10日(2005.10.10)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055116
【国際公開番号】WO2006/040305
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】