説明

厚さ測定方法および測定装置

【課題】透明体、半透明体、多孔性材料の様な、両面からレーザー光を厚み測定のために発射した場合に、一部のレーザー光が反対側のレーザー変位計に達する可能性のある測定対象や、測定対象端部等で一部のレーザー光が反対側のレーザー変位計に達する可能性のある場合であっても、正確に、しかも高速に測定対象の厚みを測定することができる厚さ測定方法及び測定装置が求められていた。
【解決手段】測定対象の両面から挟み込む方向に配置されたレーザー変位計により厚み測定等を行う場合であって、両レーザー変位計の発射レーザー光が互いに干渉しないレーザー光であり、レーザー受光部が各々のレーザーのみを選択的に受光することを特徴とする厚さ測定方法及び測定装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明体、半透明体、多孔性材料の様な、両面からレーザー光を厚み測定のために発射した場合に、一部のレーザー光が反対側のレーザー変位計に達する可能性のある測定対象や、測定対象端部等で一部のレーザー光が反対側のレーザー変位計に達する可能性のある場合であっても、正確に測定対象の厚みを測定する厚さ測定方法および測定装置に係る。
【背景技術】
【0002】
測定対象の厚さの精密な計測にはレーザー変位計を用いることがある。特に厚み測定を行う場合、測定対象が金属等非透過性である場合は上下にそれぞれレーザー変位計を設置し、双方の結果と、あらかじめ確認してある両センサーの位置関係から測定対象の厚みを計算できる。
また、測定対象が透過性を有する場合にはレーザー変位計の機能により一台で計測できる場合もある。
【0003】
しかし、測定対象が透過性を有するものでも計測対象の表面状態によりレーザー変位計の機能による一台を用いた方法では測定できない場合もあり、この場合は非透過性の計測と同様に上下にレーザー変位計を設置することになる。
【0004】
この場合、上下のレーザー変位計の発射するレーザーが互いの計測へ影響を及ぼすことがあり、一方の測定中には他方のレーザーの発光は止められている、若しくは非透過性の物体で遮光されることが望ましい。
【0005】
非透過性の物体での遮光は機械的構造が必要となり、一般的にはレーザーの発光を止めることによりなされている。同メーカーで同種のレーザー変位計を用いる場合には極短時間にレーザーを切り替え測定できる機能を有している測定対象もある。
【0006】
ただし、上記機能を備えていない場合や、計測対象の表面状態などにより上下のレーザー変位計を別機種にする必要がある場合にはレーザー変位計それぞれのレーザーの発光を個別に停止させる制御が必要となる
【0007】
特別に調整された機能ではないため、切り替えと安定に数10μ秒から数100μ秒の時間が必要となる。計測点数が多くなると計測に要する時間が無視できなくなる。
また、わずかであっても全く同じ時間に全く同じ場所を両面から測定したものではないため、わずかであっても誤差が生じていた。
【0008】
もしくは、半導体ウエハの計測を目的としている特許文献1で開示されているような方法も用いることが可能である場合もあるが、対象物の材質や表面形状などにより特許文献1条件が整わない場合は用いることが出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−176087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の問題に鑑みなされたものであって、透明体、半透明体、多孔性材料の様な、両面からレーザー光を厚み測定のために発射した場合に、一部のレーザー光が反対側のレーザー変位計に達する可能性のある測定対象や、測定対象端部等で一部のレーザー光が反対側のレーザー変位計に達する可能性のある場合であっても、正確に測定対象の厚みを測定する厚さ測定方法または測定装置に係る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明の請求項1においては、測定対象の両面から挟み込む方向に配置されたレーザー変位計により厚み測定等を行う場合であって、両レーザー変位計の発射レーザー光が互いに干渉しないレーザー光であり、レーザー受光部が各々のレーザーのみを選択的に受光することを特徴とする厚さ測定方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明の請求項2においては、請求項1に記載の厚さ測定方法において、発射レーザー光が互いに直交する方向に偏光されたレーザー光であることを特徴とする厚さ測定方法を提供するものである。
【0013】
また、本発明の請求項3においては、請求項1または2に記載の厚さ測定方法において、偏光ビームスプリッタを用いて互いの発射レーザー光を遮へいすることを特徴とする厚さ測定方法を提供するものである。
【0014】
また、本発明の請求項4においては、請求項1から3何れかに記載の厚さ測定方法において、互いのレーザー変位計が、異なる方式のレーザー変位計を使用することを特徴とする厚さ測定方法を提供するものである。
【0015】
また、本発明の請求項5においては、測定対象の両面から挟み込む方向に配置されたレーザー変位計からなる厚み測定装置であって、両レーザー変位計の発射レーザー光が互いに干渉しないレーザー光であり、レーザー受光部が各々のレーザーのみを選択的に受光することを特徴とする厚さ測定装置を提供するものである。
【0016】
また、本発明の請求項6においては、請求項5に記載の厚さ測定装置において、発射レーザー光が互いに直交する方向に偏光されたレーザー光であることを特徴とする厚さ測定装置を提供するものである。
【0017】
また、本発明の請求項7においては、請求項5または6に記載の厚さ測定装置において、レーザー受光部の前に、互いの発射レーザー光を遮へいする偏光ビームスプリッタが設けられていることを特徴とする厚さ測定装置を提供するものである。
【0018】
また、本発明の請求項8においては、請求項5から7何れかに記載の厚さ測定装置において、互いのレーザー変位計が、異なる方式のレーザー変位計から構成されていることを特徴とする厚さ測定装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、透明体、半透明体、多孔性材料の様な、両面からレーザー光を厚み測定のために発射した場合に、一部のレーザー光が反対側のレーザー変位計に達する可能性のある測定対象や、測定対象端部等で一部のレーザー光が反対側のレーザー変位計に達する可能性のある場合であっても、正確に、しかも高速に測定対象の厚みを測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の厚さ測定方法または測定装置実施形態の一例を示す模式断面図である。
【図2】本発明の図1に示した実施形態とは異なる厚さ測定方法または測定装置実施形態の一例を示す模式断面図である。
【図3】本発明の図1や図2に示した実施形態とは異なる厚さ測定方法または測定装置実施形態の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のレーザー変位計の配置方法について説明する。
【0022】
(第一の実施の形態)
本発明の厚さ測定方法または測定装置実施形態の一例を、測定対象が透明体である場合を用いて、図1を用いて以下説明する。
測定対象30の上面側に、共焦点光学系レーザー変位計の上側レーザー変位計10が設けられ、測定対象30の下面側に、共焦点光学系レーザー変位計の下側レーザー変位計11が設けられており、その上側レーザー変位計10の発射レーザー光1と、下側レーザー変位計11の発射レーザー光2とでは、偏光角度が90度ずれて、直交している。
【0023】
また、測定対象30の上面と上側レーザー変位計10の間には、偏光板20が設けられている。この偏光板20は、上側レーザー変位計10の発射レーザー光1は透過するが、下側レーザー変位計11の発射レーザー光2は遮蔽する。他方、測定対象30の下面と下側レーザー変位計11の間には、偏光板21が設けられている。この偏光板21は、下側レーザー変位計11の発射レーザー光2は透過するが、上側レーザー変位計10の発射レーザー光1は遮蔽する。
【0024】
この結果、上側レーザー変位計10の発射レーザー光1は、偏光板20を透過して、測定対象30の上面に達する。ここで反射した場合、発射レーザー光1は再び偏光板20に戻ってくるが、発射レーザー光1は、偏光板20を透過するので、最終的に上側レーザー変位計10のレーザー受光部(図示せず)で受光し、位相差等で正確な測定対象30の上面までの距離を測定する。他方、測定対象30の上面を透過した場合は、発射レーザー光1は下面を通り越して、偏光板21に進むが、発射レーザー光1は、偏光板21を透過できず、遮蔽されるので、最終的に下側レーザー変位計11のレーザー受光部(図示せず)で受光することはない。
【0025】
同様に下側レーザー変位計11の発射レーザー光2は、偏光板21を透過して、測定対象30の下面に達する。ここで、反射した場合には発射レーザー光2は再び偏光板21に戻ってくるが、発射レーザー光2は、偏光板21を透過するので、最終的に下側レーザー変位計11のレーザー受光部(図示せず)で受光し、位相差等で正確な測定対象30の下面までの距離を測定する。他方、測定対象30の下面を透過した場合は、発射レーザー光2は上面を通り越して、偏光板20に進むが、発射レーザー光2は、偏光板20を透過できず、遮蔽されるので、最終的に上側レーザー変位計10のレーザー受光部(図示せず)で受光することはない。
【0026】
この様に測定された上側レーザー変位計10から測定対象30の上面までの距離と、下側レーザー変位計11から測定対象30の下面までの距離を、予め精密に測定しておいた上側レーザー変位計10と下側レーザー変位計11との間の距離から除くことで、測定対象30の上面と下面の距離を求めることが可能になり、この値がすなわち求める測定対象30の厚さである。
【0027】
従って、同時に上側レーザー変位計10の発射レーザー光1による距離測定と下側レーザー変位計11の発射レーザー光2による距離測定はその発射レーザー光が干渉したり、混同したりすることはなく、上下切り替えの構造をとることなく正確な同時測定が可能である。
なお、このような互いに干渉しないレーザー光の組み合わせは、上の例で説明した様な偏光角度が90度ずれて、直交している場合に限られることはなく、左円偏光と右円偏光の様な、組み合わせでも可能である。
【0028】
また、偏光角度が90度ずれて、直交している場合においては、上下それぞれのレーザー変位計の発射するレーザー光の波の向きが直角となるように配置されたもの、もしくは、レーザーの偏光が円偏光(楕円偏光を含む)の場合などには波長板を用いる等で直線偏光とした上で、それぞれの向きが直角となるよう配置する様な構成などが考えられる。
なお、図1のレーザー光1と2は説明の便宜上はなれた位置に図示しているが、実際には同一点に向けて照射することで使用することもできる。
【0029】
(第二の実施の形態)
図2は本発明の第二の実施形態の一例を示した模式図である。実施例1では偏光板を用いていたが、偏光板は光の吸収により偏光を行うため、光の集中する箇所が焼けてしまうことにより偏光の機能を失う場合がある。このため偏光板の代わりに偏光ビームスプリッタを用いたものである。
【0030】
なお、偏光板は安価であり入手も容易であるが、他方、レーザー光が比較的強い場合には長時間の使用により上記説明の様に劣化が問題となる場合、レーザー光の照射による劣化が発生しない様に、偏光ビームスプリッタを用いたものである。
具体的には、偏光板20の代わりに偏光ビームスプリッタ22、偏光板21の代わりに偏光ビームスプリッタ23を用いる。この場合、偏光ビームスプリッタは、遮蔽すべき偏光レーザー光を吸収するのではなく、光軸から外れる方向へ反射するものであるので、偏光板の様な劣化がほとんど問題とならない。
【0031】
(第三の実施の形態)
図3は本発明の第三の実施形態の一例を示した模式図である。図3では下側のレーザー変位計に反射型のレーザー変位計12を用いた例を示している。上下共に共焦点型のセンサーは、基本的に高価であり、そこでどちらかの反射型のものを用いることが出来れば費用を抑えることができる。
【0032】
そこで、測定対象の表面状態などにより、両側へ反射型のレーザー変位計を用いることが出来ない場合などに、本実施の形態の様な、別方式のものを用いることも出来る。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明にかかる厚さ測定方法または測定装置は、レーザー変位計の使用方法やその構造により、透明体の厚み測定等を高速に行うことができるため、その測定精度の向上や測定速度の向上に有用であり、測定対象の生産や加工の速度や精度向上に役立つ。
【符号の説明】
【0034】
1、2・・・レーザー光
10、11、12・・・レーザー変位計
20、21・・・偏光板
22、23・・・偏光ビームスプリッタ
30・・・測定対象(透明体測定対象)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の両面から挟み込む方向に配置されたレーザー変位計により厚み測定等を行う場合であって、両レーザー変位計の発射レーザー光が互いに干渉しないレーザー光であり、レーザー受光部が各々のレーザーのみを選択的に受光することを特徴とする厚さ測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の厚さ測定方法において、発射レーザー光が互いに直交する方向に偏光されたレーザー光であることを特徴とする厚さ測定方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の厚さ測定方法において、偏光ビームスプリッタを用いて互いの発射レーザー光を遮へいすることを特徴とする厚さ測定方法。
【請求項4】
請求項1から3何れかに記載の厚さ測定方法において、互いのレーザー変位計が、異なる方式のレーザー変位計を使用することを特徴とする厚さ測定方法。
【請求項5】
測定対象の両面から挟み込む方向に配置されたレーザー変位計からなる厚み測定装置であって、両レーザー変位計の発射レーザー光が互いに干渉しないレーザー光であり、レーザ受光部が各々のレーザーのみを選択的に受光することを特徴とする厚さ測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の厚さ測定装置において、発射レーザー光が互いに直交する方向に偏光されたレーザー光であることを特徴とする厚さ測定装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の厚さ測定装置において、レーザー受光部の前に、互いの発射レーザー光を遮へいする偏光ビームスプリッタが設けられていることを特徴とする厚さ測定装置。
【請求項8】
請求項5から7何れかに記載の厚さ測定装置において、互いのレーザー変位計が、異なる方式のレーザー変位計から構成されていることを特徴とする厚さ測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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