説明

厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物及び厚膜レジストパターンの製造方法

【課題】解像性、寸法制御性が高く、かつ、矩形性の良好な厚膜レジストパターンを形成可能な厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物、及びそのような組成物を用いた厚膜レジストパターンの製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(a1)で表されるカチオン部と一般式(a2)で表されるアニオン部とを含む酸発生剤(A)と、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(B)とを含有するホトレジスト組成物。ただし、R1a〜R3aは、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基等を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物及び厚膜レジストパターンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ホトファブリケーションが精密微細加工技術の主流となっている。ホトファブリケーションとは、ホトレジスト組成物を被加工物表面に塗布してホトレジスト層を形成し、ホトリソグラフィー技術によってホトレジスト層をパターニングし、パターニングされたホトレジスト層(レジストパターン)をマスクとして化学エッチング、電解エッチング、又は電気メッキを主体とするエレクトロフォーミング等を行って、半導体パッケージ等の各種精密部品を製造する技術の総称である。
【0003】
また、近年、電子機器のダウンサイジングに伴い、半導体パッケージの高密度実装技術が進み、パッケージの多ピン薄膜実装化、パッケージサイズの小型化、フリップチップ方式による2次元実装技術、3次元実装技術に基づいた実装密度の向上が図られている。このような高密度実装技術においては、接続端子として、例えば、パッケージ上に突出したバンプ等の突起電極(実装端子)や、ウェーハ上のペリフェラル端子から延びる再配線と実装端子とを接続するメタルポスト等が基板上に高精度に配置される。
【0004】
上記のようなホトファブリケーションにはホトレジスト組成物が使用されるが、そのようなホトレジスト組成物としては、酸発生剤を含む化学増幅型ホトレジスト組成物が知られている(特許文献1,2等を参照)。化学増幅型ホトレジスト組成物は、放射線照射(露光)により酸発生剤から酸が発生し、加熱処理により酸の拡散が促進されて、組成物中のベース樹脂等に対し酸触媒反応を起こし、そのアルカリ溶解性が変化するというものである。
【0005】
また、上記のようなホトファブリケーションに使用されるホトレジスト組成物として、厚膜用ホトレジスト組成物がある(特許文献3等を参照)。厚膜用ホトレジスト組成物は、例えばメッキ工程によるバンプやメタルポストの形成等に用いられている。例えば、支持体上に膜厚約20μmの厚膜ホトレジスト層を形成し、所定のマスクパターンを介して露光し、現像して、バンプやメタルポストを形成する部分が選択的に除去(剥離)されたレジストパターンを形成する。そして、この除去された部分(非レジスト部)に銅等の導体をメッキによって埋め込んだ後、その周囲のレジストパターンを除去することにより、バンプやメタルポストを形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−176112号公報
【特許文献2】特開平11−52562号公報
【特許文献3】特開2010−185986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、今後、半導体パッケージがより一層高密度化するに伴って、突起電極やメタルポストのさらなる高密度化、高精度化が求められることとなる。そのため、化学増幅型ホトレジスト組成物を厚膜用ホトレジスト組成物として使用した場合、突起電極やメタルポストのさらなる高密度化、高精度化を実現するために、解像性、寸法制御性が高く、かつ、矩形性の良好な厚膜レジストパターンを形成可能な厚膜用化学増幅型ホトレジスト組成物が求められることとなる。
【0008】
しかし、本発明者らが検討したところ、従来知られている厚膜用化学増幅型ホトレジスト組成物では、これらの要求に応えられるものがないのが現状であった。特に、レジスト底部がフッティング形状、すなわち裾引き形状となる問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、解像性、寸法制御性が高く、かつ、矩形性の良好な厚膜レジストパターンを形成可能な厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物、及びそのような組成物を用いた厚膜レジストパターンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた。その結果、厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物に特定の酸発生剤を含有させることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0011】
本発明の第一の態様は、支持体上に厚膜ホトレジスト層を形成するために用いられる厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物であって、電磁波又は粒子線を含む放射線照射により酸を発生する酸発生剤(A)と、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(B)と、を含有し、前記酸発生剤(A)が、下記一般式(a1):
【化1】

[式(a1)中、R1a〜R3aは、それぞれ独立にアルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、及びアルキルオキシカルボニル基からなる群より選ばれる基A、又は2価の連結基に前記基Aが結合した基を表す。]
で表されるカチオン部と、下記一般式(a2):
【化2】

[式(a2)中、R4a〜R7aは、それぞれ独立にフッ素原子又はフェニル基を表し、該フェニル基の水素原子の一部又は全部は、フッ素原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。]
で表されるアニオン部と、を含む厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物である。
【0012】
本発明の第二の態様は、支持体上に、本発明に係る厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物からなる膜厚5μm以上の厚膜ホトレジスト層を積層する積層工程と、前記厚膜ホトレジスト層に、電磁波又は粒子線を含む放射線を照射する露光工程と、露光後の前記厚膜ホトレジスト層を現像して厚膜レジストパターンを得る現像工程と、を含む厚膜レジストパターンの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、解像性、寸法制御性が高く、かつ、矩形性の良好な厚膜レジストパターンを形成可能な厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物、及びそのような組成物を用いた厚膜レジストパターンの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
≪厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物≫
本発明に係る厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物(以下、単に「ホトレジスト組成物」という。)は、電磁波又は粒子線を含む放射線照射により酸を発生する酸発生剤(A)と、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(B)と、を少なくとも含有するものである。このホトレジスト組成物は、回路基板、及び回路基板に実装するCSP(チップサイズパッケージ)等の電子部品の製造において、バンプやメタルポスト等の接続端子、あるいは配線パターン等の形成に好適に用いられる。以下、本発明に係るホトレジスト組成物に含有される各成分について詳述する。
【0015】
<酸発生剤(A)>
電磁波又は粒子線を含む放射線照射により酸を発生する酸発生剤(A)、例えば光酸発生剤であり、光により直接又は間接的に酸を発生する。酸発生剤(A)は、以下に示すカチオン部とアニオン部とを含む。
【0016】
[カチオン部]
酸発生剤(A)に含まれるカチオン部は、下記一般式(a1)で表される。
【0017】
【化3】

【0018】
上記一般式(a1)中、R1a〜R3aは、それぞれ独立にアルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、及びアルキルオキシカルボニル基からなる群より選ばれる基A、又は2価の連結基に上記基Aが結合した基を表す。
【0019】
アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、及びアルキルオキシカルボニル基のアルキル部分は、例えば炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又は炭素数5〜12の環状のアルキル基である。特にアルコキシ基の場合、炭素数は1〜5であることが好ましい。
【0020】
上記直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基が特に好ましい。また、上記環状のアルキル基としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基等が挙げられる。これらの中でも、アダマンタンから1個の水素原子を除いた基(さらに置換基を有していてもよい)が好ましく、アダマンチル基、メチルアダマンチル基が特に好ましい。
【0021】
上記2価の連結基としては、特に限定されるものではないが、−R8a−又は−X−R8a−で表されるものが好ましい。ただし、R8aは2価の炭化水素基を表し、Xはヘテロ原子を表す。2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基等の炭素数1〜4のアルキレン基;フェニレン基等の炭素数6〜12のアリーレン基;あるいはそれらの組み合わせを挙げることができる。ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられ、酸素原子及び硫黄原子が好ましい。
【0022】
上記R1a〜R3aの置換位置は、特に限定されるものではないが、それぞれパラ位であることが好ましい。
【0023】
上記一般式(a1)で表されるカチオン部の好ましい具体例としては、下記式(a1−1)〜(a1−10)で表されるものを挙げることができる。
【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
[アニオン部]
酸発生剤(A)に含まれるアニオン部は、下記一般式(a2)で表される。
【0027】
【化6】

【0028】
上記一般式(a2)中、R4a〜R7aは、それぞれ独立にフッ素原子又はフェニル基を表し、該フェニル基の水素原子の一部又は全部は、フッ素原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。
【0029】
アニオン部の好ましい具体例としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([B(C)、テトラキス[(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート([B(CCF)、ジフルオロビス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(CBF)、トリフルオロ(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(C)BF)、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート([B(C)等が挙げられる。これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([B(C)が特に好ましい。
【0030】
本発明に係るホトレジスト組成物がこのような酸発生剤を含有することにより、解像性、寸法制御性が高く、かつ、矩形性の良好な厚膜レジストパターンを形成することができる。これは、R1a〜R3aが極性基を有していることにより、厚膜ホトレジスト層内で酸発生剤が均一に分散することが要因の1つになっていると推測される。
【0031】
酸発生剤(A)としては、上記一般式(a1)で表されるカチオン部と上記一般式(a2)で表されるアニオン部とを含む酸発生剤を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、酸発生剤(A)としては、上記以外の他の酸発生剤を併用してもよい。
【0032】
他の酸発生剤における第一の態様としては、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−ピペロニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(5−メチル−2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(5−エチル−2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(5−プロピル−2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,5−ジメトキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,5−ジエトキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,5−ジプロポキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3−メトキシ−5−エトキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3−メトキシ−5−プロポキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(2−フリル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(5−メチル−2−フリル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(3,5−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、トリス(1,3−ジブロモプロピル)−1,3,5−トリアジン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)−1,3,5−トリアジン等のハロゲン含有トリアジン化合物、並びにトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレ−ト等の下記一般式(a3)で表されるハロゲン含有トリアジン化合物が挙げられる。
【0033】
【化7】

【0034】
上記一般式(a3)中、R9a、R10a、R11aは、それぞれ独立にハロゲン化アルキル基を表す。
【0035】
また、他の酸発生剤における第二の態様としては、α−(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,4−ジクロロフェニルアセトニトリル、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,6−ジクロロフェニルアセトニトリル、α−(2−クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、並びにオキシムスルホネ−ト基を含有する下記一般式(a4)で表される化合物が挙げられる。
【0036】
【化8】

【0037】
上記一般式(a4)中、R12aは、1価、2価、又は3価の有機基を表し、R13aは、置換若しくは未置換の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、又は芳香族性化合物基を表し、nは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。
【0038】
上記一般式(a4)中、芳香族性化合物基とは、芳香族化合物に特有な物理的・化学的性質を示す化合物の基を示し、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基や、フリル基、チエニル基等のヘテロアリール基が挙げられる。これらは環上に適当な置換基、例えばハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基等を1個以上有していてもよい。また、R13aは、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。特に、R12aが芳香族性化合物基であり、R13aが炭素数1〜4のアルキル基である化合物が好ましい。
【0039】
上記一般式(a4)で表される酸発生剤としては、n=1のとき、R12aがフェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基のいずれかであって、R13aがメチル基の化合物、具体的にはα−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−(p−メチルフェニル)アセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−(p−メトキシフェニル)アセトニトリル、〔2−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−2,3−ジヒドロキシチオフェン−3−イリデン〕(o−トリル)アセトニトリル等が挙げられる。n=2のとき、上記一般式(a4)で表される酸発生剤としては、具体的には下記式で表される酸発生剤が挙げられる。
【0040】
【化9】

【0041】
また、他の酸発生剤における第三の態様としては、カチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩が挙げられる。この「ナフタレン環を有する」とは、ナフタレンに由来する構造を有することを意味し、少なくとも2つの環の構造と、それらの芳香族性が維持されていることを意味する。このナフタレン環は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基、水酸基、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基等の置換基を有していてもよい。ナフタレン環に由来する構造は、1価基(遊離原子価が1つ)であっても、2価基(遊離原子価が2つ)以上であってもよいが、1価基であることが望ましい(ただし、このとき、上記置換基と結合する部分を除いて遊離原子価を数えるものとする)。ナフタレン環の数は1〜3が好ましい。
【0042】
このようなカチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩のカチオン部としては、下記一般式(a5)で表される構造が好ましい。
【0043】
【化10】

【0044】
上記一般式(a5)中、R14a、R15a、R16aのうち少なくとも1つは下記一般式(a6)で表される基を表し、残りは炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、水酸基、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基を表す。あるいは、R14a、R15a、R16aのうちの1つが下記一般式(a6)で表される基であり、残りの2つはそれぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、これらの末端が結合して環状になっていてもよい。
【0045】
【化11】

【0046】
上記一般式(a6)中、R17a、R18aは、それぞれ独立に水酸基、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、R19aは、単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基を表す。l及びmは、それぞれ独立に0〜2の整数を表し、l+mは3以下である。ただし、R17aが複数存在する場合、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。また、R18aが複数存在する場合、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0047】
上記R14a、R15a、R16aのうち上記一般式(a6)で表される基の数は、化合物の安定性の点から好ましくは1つであり、残りは炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、これらの末端が結合して環状になっていてもよい。この場合、上記2つのアルキレン基は、硫黄原子を含めて3〜9員環を構成する。環を構成する原子(硫黄原子を含む)の数は、好ましくは5〜6である。
【0048】
また、上記アルキレン基が有していてもよい置換基としては、酸素原子(この場合、アルキレン基を構成する炭素原子とともにカルボニル基を形成する)、水酸基等が挙げられる。
【0049】
また、フェニル基が有していてもよい置換基としては、水酸基、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基等が挙げられる。
【0050】
これらのカチオン部として好適なものとしては、下記式(a7)、(a8)で表されるもの等を挙げることができ、特に下記式(a8)で表される構造が好ましい。
【0051】
【化12】

【0052】
このようなカチオン部としては、ヨ−ドニウム塩であってもスルホニウム塩であってもよいが、酸発生効率等の点からスルホニウム塩が望ましい。
【0053】
したがって、カチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩のアニオン部として好適なものとしては、スルホニウム塩を形成可能なアニオンが望ましい。
【0054】
このような酸発生剤のアニオン部としては、水素原子の一部又は全部がフッ素化されたフルオロアルキルスルホン酸イオン又はアリールスルホン酸イオンである。
【0055】
フルオロアルキルスルホン酸イオンにおけるアルキル基は、炭素数1〜20の直鎖状でも分岐状でも環状でもよく、発生する酸の嵩高さとその拡散距離から、炭素数1〜10であることが好ましい。特に、分岐状や環状のものは拡散距離が短いため好ましい。また、安価に合成可能なことから、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等を好ましいものとして挙げることができる。
【0056】
アリールスルホン酸イオンにおけるアリール基は、炭素数6〜20のアリール基であって、アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもされていなくてもよいフェニル基、ナフチル基が挙げられる。特に、安価に合成可能なことから、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。好ましいものの具体例として、フェニル基、トルエンスルホニル基、エチルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基等を挙げることができる。
【0057】
上記フルオロアルキルスルホン酸イオン又はアリールスルホン酸イオンにおいて、水素原子の一部又は全部がフッ素化されている場合のフッ素化率は、好ましくは10〜100%、より好ましくは50〜100%であり、特に水素原子を全てフッ素原子で置換したものが、酸の強度が強くなるので好ましい。このようなものとしては、具体的には、トリフルオロメタンスルホネート、パ−フルオロブタンスルホネート、パーフルオロオクタンスルホネート、パーフルオロベンゼンスルホネート等が挙げられる。
【0058】
これらの中でも、好ましいアニオン部として、下記一般式(a9)で表されるものが挙げられる。
【0059】
【化13】

【0060】
上記一般式(a9)において、R20aは、下記一般式(a10)、(a11)で表される基や、下記式(a12)で表される基である。
【0061】
【化14】

【0062】
上記一般式(a10)中、xは1〜4の整数を表す。また、上記一般式(a11)中、R21aは、水素原子、水酸基、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基を表し、yは1〜3の整数を表す。これらの中でも、安全性の観点からトリフルオロメタンスルホネート、パーフルオロブタンスルホネートが好ましい。
【0063】
また、アニオン部としては、下記一般式(a13)、(a14)で表される窒素を含有するものを用いることもできる。
【0064】
【化15】

【0065】
上記一般式(a13)、(a14)中、Xは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基の炭素数は2〜6であり、好ましくは3〜5、最も好ましくは炭素数3である。また、Y、Zは、それぞれ独立に少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、該アルキル基の炭素数は1〜10であり、好ましくは1〜7、より好ましくは1〜3である。
【0066】
のアルキレン基の炭素数、又はY、Zのアルキル基の炭素数が小さいほど有機溶剤への溶解性も良好であるため好ましい。
【0067】
また、Xのアルキレン基又はY、Zのアルキル基において、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなるため好ましい。該アルキレン基又はアルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、好ましくは70〜100%、より好ましくは90〜100%であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキレン基又はパーフルオロアルキル基である。
【0068】
このようなカチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩として好ましいものとしては、下記式(a15)、(a16)で表される化合物が挙げられる。
【0069】
【化16】

【0070】
また、他の酸発生剤における第四の態様としては、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等のビススルホニルジアゾメタン類;p−トルエンスルホン酸2−ニトロベンジル、p−トルエンスルホン酸2,6−ジニトロベンジル、ニトロベンジルトシレ−ト、ジニトロベンジルトシラート、ニトロベンジルスルホナート、ニトロベンジルカルボナート、ジニトロベンジルカルボナート等のニトロベンジル誘導体;ピロガロールトリメシラート、ピロガロールトリトシラート、ベンジルトシラート、ベンジルスルホナート、N−メチルスルホニルオキシスクシンイミド、N−トリクロロメチルスルホニルオキシスクシンイミド、N−フェニルスルホニルオキシマレイミド、N−メチルスルホニルオキシフタルイミド等のスルホン酸エステル類;N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシナフタルイミド等のトリフルオロメタンスルホン酸エステル類;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、(p−tert−ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート等のオニウム塩類;ベンゾイントシラート、α−メチルベンゾイントシラート等のベンゾイントシレート類;その他のジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、フェニルジアゾニウム塩、ベンジルカルボナート等が挙げられる。
【0071】
他の酸発生剤として、好ましくは上記一般式(a4)で表される化合物であって、好ましいnの値は2であり、また、好ましいR12aは、2価の炭素数1〜8の置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換の芳香族基であり、また、好ましいR13aは、炭素数1〜8の置換若しくは非置換のアルキル基、又は置換若しくは非置換のアリール基であるが、これに限定されるものではない。
【0072】
このような他の酸発生剤を併用する場合の使用割合は、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されない。通常、上記一般式(a1)で表されるカチオン部と上記一般式(a2)で表されるアニオン部とを含む酸発生剤100質量部に対し、他の酸発生剤は1〜300質量部、好ましくは10〜100質量部である。
【0073】
酸発生剤(A)の含有量は、本発明に係るホトレジスト組成物の全質量に対して0.1〜10質量%とすることが好ましく、0.5〜3質量%とすることがより好ましい。
【0074】
<樹脂(B)>
酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(B)としては、特に限定されず、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する任意の樹脂を用いることができる。その中でも、ノボラック樹脂(B1)、ポリヒドロキシスチレン樹脂(B2)、及びアクリル樹脂(B3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有することが好ましい。
【0075】
[ノボラック樹脂(B1)]
ノボラック樹脂(B1)としては、下記一般式(b1)で表される構成単位を含む樹脂を使用することができる。
【0076】
【化17】

【0077】
上記一般式(b1)中、R1bは、酸解離性溶解抑制基を示し、R2b、R3bは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0078】
上記R1bで表される酸解離性溶解抑制基としては、下記一般式(b2)、(b3)で表される基、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基、テトラヒドロピラニル基、テトラフラニル基、又はトリアルキルシリル基であることが好ましい。
【0079】
【化18】

【0080】
上記一般式(b2)、(b3)中、R4b、R5bは、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、R6bは、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基を表し、R7bは、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基を表し、oは0又は1を表す。
【0081】
上記直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。また、上記環状のアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0082】
ここで、上記一般式(b2)で表される酸解離性溶解抑制基として、具体的には、メトキシエチル基、エトキシエチル基、n−プロポキシエチル基、イソプロポキシエチル基、n−ブトキシエチル基、イソブトキシエチル基、tert−ブトキシエチル基、シクロヘキシロキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、1−メトキシ−1−メチル−エチル基、1−エトキシ−1−メチルエチル基等が挙げられる。また、上記一般式(b3)で表される酸解離性溶解抑制基として、具体的には、tert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基等が挙げられる。また、上記トリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリ−tert−ブチルジメチルシリル基等の各アルキル基の炭素数が1〜6のものが挙げられる。
【0083】
[ポリヒドロキシスチレン樹脂(B2)]
ポリヒドロキシスチレン樹脂(B2)としては、下記一般式(b4)で表される構成単位を含む樹脂を使用することができる。
【0084】
【化19】

【0085】
上記一般式(b4)中、R8bは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R9bは、酸解離性溶解抑制基を表す。
【0086】
上記炭素数1〜6のアルキル基は、例えば炭素数1〜6の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基である。直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられ、環状のアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0087】
上記R9bで表される酸解離性溶解抑制基としては、上記一般式(b2)、(b3)に例示したものと同様の酸解離性溶解抑制基を用いることができる。
【0088】
さらに、ポリヒドロキシスチレン樹脂(B2)は、物理的、化学的特性を適度にコントロールする目的で他の重合性化合物を構成単位として含むことができる。このような重合性化合物としては、公知のラジカル重合性化合物や、アニオン重合性化合物が挙げられる。また、このような重合性化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸類;2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシル基及びエステル結合を有するメタクリル酸誘導体類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステル類;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジブチル等のジカルボン酸ジエステル類;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシスチレン、α−メチルヒドロキシスチレン、α−エチルヒドロキシスチレン等のビニル基含有芳香族化合物類;酢酸ビニル等のビニル基含有脂肪族化合物類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有重合性化合物類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有重合性化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド結合含有重合性化合物類;等を挙げることができる。
【0089】
[アクリル樹脂(B3)]
アクリル樹脂(B3)としては、下記一般式(b5)〜(b7)で表される構成単位を含む樹脂を使用することができる。
【0090】
【化20】

【0091】
上記一般式(b5)〜(b7)中、R10b〜R17bは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、フッ素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のフッ素化アルキル基を表し(ただし、R11bが水素原子であることはない)、Xは、それが結合している炭素原子とともに炭素数5〜20の炭化水素環を形成し、Yは、置換基を有していてもよい脂肪族環式基又はアルキル基を表し、pは0〜4の整数を表し、qは0又は1を表す。
【0092】
なお、上記直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。また、フッ素化アルキル基とは、上記アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されたものである。
【0093】
上記R11bとしては、高コントラストで、解像度、焦点深度幅等が良好な点から、炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましく、上記R13b、R14b、R16b、R17bとしては、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0094】
上記Xは、それが結合している炭素原子とともに炭素数5〜20の脂肪族環式基を形成する。このような脂肪族環式基の具体例としては、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。特に、シクロヘキサン、アダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基(さらに置換基を有していてもよい)が好ましい。
【0095】
さらに、上記Xの脂肪族環式基が、その環骨格上に置換基を有する場合、該置換基の例としては、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、酸素原子(=O)等の極性基や、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。極性基としては特に酸素原子(=O)が好ましい。
【0096】
上記Yは、脂肪族環式基又はアルキル基であり、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。特に、アダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基(さらに置換基を有していてもよい)が好ましい。
【0097】
さらに、上記Yの脂肪族環式基が、その環骨格上に置換基を有する場合、該置換基の例としては、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、酸素原子(=O)等の極性基や、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。極性基としては特に酸素原子(=O)が好ましい。
【0098】
また、Yがアルキル基である場合、炭素数1〜20、好ましくは6〜15の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましい。このようなアルキル基は、特にアルコキシアルキル基であることが好ましく、このようなアルコキシアルキル基としては、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−n−プロポキシエチル基、1−イソプロポキシエチル基、1−n−ブトキシエチル基、1−イソブトキシエチル基、1−tert−ブトキシエチル基、1−メトキシプロピル基、1−エトキシプロピル基、1−メトキシ−1−メチル−エチル基、1−エトキシ−1−メチルエチル基等が挙げられる。
【0099】
上記一般式(b5)で表される構成単位の好ましい具体例としては、下記式(b5−1)〜(b5−33)で表されるものを挙げることができる。
【0100】
【化21】

【0101】
【化22】

【0102】
【化23】

【0103】
上記式(b5−1)〜(b5−33)中、R18bは、水素原子又はメチル基を表す。
【0104】
上記一般式(b6)で表される構成単位の好ましい具体例としては、下記式(b6−1)〜(b6−24)で表されるものを挙げることができる。
【0105】
【化24】

【0106】
【化25】

【0107】
上記式(b6−1)〜(b6−24)中、R18bは、水素原子又はメチル基を表す。
【0108】
上記一般式(b7)で表される構成単位の好ましい具体例としては、下記式(b7−1)〜(b7−15)で表されるものを挙げることができる。
【0109】
【化26】

【0110】
【化27】

【0111】
上記式(b7−1)〜(b7−15)中、R18bは、水素原子又はメチル基を表す。
【0112】
さらに、アクリル樹脂(B3)は、上記一般式(b5)〜(b7)で表される構成単位に対して、さらにエーテル結合を有する重合性化合物から誘導された構成単位を含む共重合体からなる樹脂であることが好ましい。
【0113】
上記エーテル結合を有する重合性化合物としては、エーテル結合及びエステル結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体等のラジカル重合性化合物を例示することができ、具体例としては、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、上記エーテル結合を有する重合性化合物は、好ましくは、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートである。これらの重合性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0114】
さらに、アクリル樹脂(B3)には、物理的、化学的特性を適度にコントロールする目的で他の重合性化合物を構成単位として含めることができる。このような重合性化合物としては、公知のラジカル重合性化合物や、アニオン重合性化合物が挙げられる。また、このような重合性化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸類;2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシル基及びエステル結合を有するメタクリル酸誘導体類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステル類;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジブチル等のジカルボン酸ジエステル類;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシスチレン、α−メチルヒドロキシスチレン、α−エチルヒドロキシスチレン等のビニル基含有芳香族化合物類;酢酸ビニル等のビニル基含有脂肪族化合物類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有重合性化合物類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有重合性化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド結合含有重合性化合物類;等を挙げることができる。
【0115】
上記樹脂(B)の中でも、アクリル樹脂(B3)を用いることが好ましい。このようなアクリル樹脂(B3)の中でも、上記一般式(b5)で表される構成単位と、(メタ)アクリル酸から誘導された構成単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類から誘導された構成単位と、(メタ)アクリル酸アリールエステル類から誘導された構成単位とを有する共重合体であることが好ましい。
【0116】
このような共重合体としては、下記一般式(b8)で表される共重合体であることが好ましい。
【0117】
【化28】

【0118】
上記一般式(b8)中、R19bは、水素原子又はメチル基を表し、R20bは、炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、Xは上記と同義であり、R21bは、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は炭素数1〜6のアルコキシアルキル基を表し、R22bは、炭素数6〜12のアリール基を表す。
【0119】
さらに、上記一般式(b8)で表される共重合体において、s、t、u、vはそれぞれの構成単位のモル比を表し、sは8〜45モル%であり、tは10〜65モル%であり、uは3〜25モル%であり、vは6〜25モル%である。
【0120】
樹脂(B)のポリスチレン換算質量平均分子量は、好ましくは10000〜600000であり、より好ましくは10000〜300000であり、さらに好ましくは20000〜150000である。このような質量平均分子量とすることにより、支持体との剥離性が低下することなく厚膜ホトレジスト層の十分な強度を保持でき、さらにはメッキ時のプロファイルの膨れや、クラックの発生を防ぐことができる。
【0121】
また、樹脂(B)は、分散度が1.05以上の樹脂であることが好ましい。ここで、分散度とは、質量平均分子量を数平均分子量で除した値のことである。このような分散度とすることにより、所望とするメッキに対する応力耐性や、メッキ処理により得られる金属層が膨らみやすくなるという問題を回避できる。
【0122】
樹脂(B)の含有量は、本発明に係るホトレジスト組成物の全質量に対して5〜60質量%とすることが好ましい。
【0123】
<アルカリ可溶性樹脂(C)>
本発明に係るホトレジスト組成物は、クラック耐性を向上させるため、さらにアルカリ可溶性樹脂(C)を含有することが好ましい。ここで、アルカリ可溶性樹脂とは、樹脂濃度20質量%の樹脂溶液(溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)により、膜厚1μmの樹脂膜を基板上に形成し、2.38質量%のTMAH水溶液に1分間浸漬した際、0.01μm以上溶解するものをいう。アルカリ可溶性樹脂(C)としては、ノボラック樹脂(C1)、ポリヒドロキシスチレン樹脂(C2)、及びアクリル樹脂(C3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。
【0124】
[ノボラック樹脂(C1)]
ノボラック樹脂(C1)は、例えばフェノール性水酸基を有する芳香族化合物(以下、単に「フェノール類」という。)とアルデヒド類とを酸触媒下で付加縮合させることにより得られる。
【0125】
上記フェノール類としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、p−フェニルフェノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、フロログリシノール、ヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、没食子酸、没食子酸エステル、α−ナフトール、β−ナフトール等が挙げられる。
上記アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、アセトアルデヒド等が挙げられる。
付加縮合反応時の触媒は、特に限定されるものではないが、例えば酸触媒では、塩酸、硝酸、硫酸、蟻酸、シュウ酸、酢酸等が使用される。
【0126】
なお、o−クレゾールを使用すること、樹脂中の水酸基の水素原子を他の置換基に置換すること、あるいは嵩高いアルデヒド類を使用することにより、ノボラック樹脂の柔軟性を一層向上させることが可能である。
【0127】
このノボラック樹脂(C1)の質量平均分子量は、1000〜50000であることが好ましい。
【0128】
[ポリヒドロキシスチレン樹脂(C2)]
ポリヒドロキシスチレン樹脂(C2)を構成するヒドロキシスチレン系化合物としては、p−ヒドロキシスチレン、α−メチルヒドロキシスチレン、α−エチルヒドロキシスチレン等が挙げられる。
さらに、ポリヒドロキシスチレン樹脂(C2)は、スチレン樹脂との共重合体とすることが好ましい。このようなスチレン樹脂を構成するスチレン系化合物としては、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等が挙げられる。
【0129】
このポリヒドロキシスチレン樹脂(C2)の質量平均分子量は、1000〜50000であることが好ましい。
【0130】
[アクリル樹脂(C3)]
アクリル樹脂(C3)としては、エーテル結合を有する重合性化合物から誘導された構成単位、及びカルボキシル基を有する重合性化合物から誘導された構成単位を含むことが好ましい。
【0131】
上記エーテル結合を有する重合性化合物としては、2−メトキシエチル(メタ)アクリラート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリラート、3−メトキシブチル(メタ)アクリラート、エチルカルビトール(メタ)アクリラート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリラート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリラート等のエーテル結合及びエステル結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体等を例示することができる。上記エーテル結合を有する重合性化合物は、好ましくは、2−メトキシエチルアクリラート、メトキシトリエチレングリコールアクリラートである。これらの重合性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0132】
上記カルボキシル基を有する重合性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸類;2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシル基及びエステル結合を有する化合物;等を例示することができる。上記カルボキシル基を有する重合性化合物は、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。これらの重合性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0133】
このアクリル樹脂(C3)の質量平均分子量は、50000〜800000であることが好ましい。
【0134】
アルカリ可溶性樹脂(C)の含有量は、上記樹脂(B)100質量部に対して、好ましくは5〜95質量部であり、より好ましくは10〜90質量部である。アルカリ可溶性樹脂(C)の含有量を樹脂(B)100質量部に対して5質量部以上とすることによりクラック耐性を向上させることができ、95質量部以下とすることにより現像時の膜減りを防ぐことができる傾向がある。
【0135】
なお、アルカリ可溶性樹脂(C)を用いる場合、ノボラック樹脂(C1)及びポリヒドロキシスチレン樹脂(C2)を、上記アクリル樹脂(B3)と組み合わせて用いることが好ましい。この場合、これらの樹脂の合計に占めるアクリル樹脂の割合は、5〜80質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましく、10〜35質量%であることがさらに好ましい。また、ノボラック樹脂の割合は、5〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましく、45〜65質量%であることがさらに好ましい。また、ポリヒドロキシスチレン樹脂の割合は、5〜60質量%であることが好ましく、5〜35質量%であることがより好ましく、5〜30質量%であることがさらに好ましい。このような割合にすることにより、厚膜ホトレジスト層内で酸発生剤をより均一に分散させることができる。
【0136】
<酸拡散制御剤(D)>
本発明に係るホトレジスト組成物は、レジストパターン形状、引き置き安定性等の向上のため、さらに酸拡散制御剤(D)を含有することが好ましい。酸拡散制御剤(D)としては、含窒素化合物(D1)が好ましく、さらに必要に応じて、有機カルボン酸、又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体(D2)を含有させることができる。
【0137】
[含窒素化合物(D1)]
含窒素化合物(D1)としては、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリベンジルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3,−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、イミダゾール、ベンズイミダゾール、4−メチルイミダゾール、8−オキシキノリン、アクリジン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、2,4,6−トリ(2−ピリジル)−S−トリアジン、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等を挙げることができる。これらの中でも、特にトリエタノールアミンのようなアルカノールアミンが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0138】
含窒素化合物(D1)は、上記樹脂(B)及び上記アルカリ可溶性樹脂(C)の合計質量100質量部に対して、通常0〜5質量部の範囲で用いられ、特に0〜3質量部の範囲で用いられることが好ましい。
【0139】
[有機カルボン酸、又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体(D2)]
有機カルボン酸、又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体(D2)のうち、有機カルボン酸としては、具体的には、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸等が好適であり、特にサリチル酸が好ましい。
【0140】
リンのオキソ酸又はその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステル等のリン酸及びそれらのエステルのような誘導体;ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸−ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステル等のホスホン酸及びそれらのエステルのような誘導体;ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸等のホスフィン酸及びそれらのエステルのような誘導体;等が挙げられる。これらの中でも、特にホスホン酸が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0141】
有機カルボン酸、又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体(D2)は、上記樹脂(B)及び上記アルカリ可溶性樹脂(C)の合計質量100質量部に対して、通常0〜5質量部の範囲で用いられ、特に0〜3質量部の範囲で用いられることが好ましい。
【0142】
また、塩を形成させて安定させるために、有機カルボン酸、又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体(D2)は、上記含窒素化合物(D1)と同等量を用いることが好ましい。
【0143】
<有機溶剤(S)>
本発明に係るホトレジスト組成物は、粘度調整のため、有機溶剤(S)を含有することが好ましい。有機溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル、モノフェニルエーテル等の多価アルコール類及びその誘導体;ジオキサン等の環式エーテル類;蟻酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0144】
有機溶剤(S)の含有量は、スピンコート法等により得られるホトトレジスト層の膜厚が5μm以上となるように、本発明に係るホトレジスト組成物の固形分濃度が30〜55質量%となる範囲が好ましい。
【0145】
<その他の成分>
本発明に係るホトレジスト組成物は、可塑性を向上させるため、さらにポリビニル樹脂を含有していてもよい。ポリビニル樹脂の具体例としては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリヒドロキシスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニル安息香酸、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルフェノール、及びこれらの共重合体等が挙げられる。ポリビニル樹脂は、ガラス転移点の低さの点から、好ましくはポリビニルメチルエーテルである。
【0146】
また、本発明に係るホトレジスト組成物は、支持体との接着性を向上させるため、さらに接着助剤を含有していてもよい。この接着助剤としては、官能性シランカップリング剤が好ましい。官能性シランカップリング剤としては、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアナート基、エポキシ基等の反応性置換基を有するシランカップリング剤が挙げられ、具体例としては、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0147】
また、本発明に係るホトレジスト組成物は、塗布性、消泡性、レベリング性等を向上させるため、さらに界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤の具体例としては、BM−1000、BM−1100(いずれもBMケミー社製)、メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173、メガファックF183(いずれも大日本インキ化学工業社製)、フロラードFC−135、フロラードFC−170C、フロラードFC−430、フロラードFC−431(いずれも住友スリーエム社製)、サーフロンS−112、サーフロンS−113、サーフロンS−131、サーフロンS−141、サーフロンS−145(いずれも旭硝子社製)、SH−28PA、SH−190、SH−193、SZ−6032、SF−8428(いずれも東レシリコーン社製)等の市販のフッ素系界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0148】
また、本発明に係るホトレジスト組成物は、現像液に対する溶解性の微調整を行うため、酸、酸無水物、又は高沸点溶媒をさらに含有していてもよい。
【0149】
酸及び酸無水物の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、n−吉草酸、イソ吉草酸、安息香酸、桂皮酸等のモノカルボン酸類;乳酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、サリチル酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ桂皮酸、3−ヒドロキシ桂皮酸、4−ヒドロキシ桂皮酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、シリンギン酸等のヒドロキシモノカルボン酸類;シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、ヘキサヒドロフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、1,2,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸等の多価カルボン酸類;無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバニル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビス無水トリメリタート、グリセリントリス無水トリメリタート等の酸無水物;等を挙げることができる。
【0150】
また、高沸点溶媒の具体例としては、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセタート等を挙げることができる。
【0151】
また、本発明に係るホトレジスト組成物は、感度を向上させるため、増感剤をさらに含有していてもよい。
【0152】
<ホトレジスト組成物の調製>
本発明に係るホトレジスト組成物の調製は、上記各成分を通常の方法で混合、撹拌するだけでよく、必要に応じ、ディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等の分散機を用いて分散、混合してもよい。また、混合した後で、さらにメッシュ、メンブランフィルタ等を用いて濾過してもよい。
【0153】
≪厚膜レジストパターンの製造方法≫
本発明に係る厚膜レジストパターンの製造方法は、支持体上に本発明に係るホトレジスト組成物からなる膜厚5μm以上の厚膜ホトレジスト層を積層する積層工程と、この厚膜ホトレジスト層に、電磁波又は粒子線を含む放射線を照射する露光工程と、露光後の厚膜ホトレジスト層を現像して厚膜レジストパターンを得る現像工程と、を含むものである。
【0154】
支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等を例示することができる。この基板としては、シリコン、窒化シリコン、チタン、タンタル、パラジウム、チタンタングステン、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板やガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、銅、ハンダ、クロム、アルミニウム、ニッケル、金等が用いられる。
【0155】
まず、上記積層工程では、本発明に係るホトレジスト組成物を支持体上に塗布し、加熱(プリベーク)により溶媒を除去することによって、厚膜ホトレジスト層を形成する。支持体上への塗布方法としては、スピンコート法、スリットコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、アプリケーター法等の方法を採用することができる。
また、プリベーク条件は、本発明に係るホトレジスト組成物の組成や厚膜ホトレジスト層の膜厚等によっても異なるが、通常は70〜150℃、好ましくは80〜140℃で、2〜60分間程度である。
厚膜ホトレジスト層の膜厚は、5μm以上、好ましくは30〜80μmの範囲である。
【0156】
次いで、上記露光工程では、得られた厚膜ホトレジスト層に、所定パターンのマスクを介して、電磁波又は粒子線を含む放射線、例えば波長300〜500nmの紫外線又は可視光線を選択的に照射(露光)する。
【0157】
放射線の線源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、アルゴンガスレーザー等を用いることができる。また、放射線には、マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、γ線、電子線、陽子線、中性子線、イオン線等が含まれる。放射線照射量は、本発明に係るホトレジスト組成物の組成や厚膜ホトレジスト層の膜厚等によっても異なるが、例えば超高圧水銀灯使用の場合、100〜10000mJ/cmである。また、放射線には、酸を発生させるために、酸発生剤(A)を活性化させる光線が含まれる。
【0158】
露光後は、公知の方法を用いて加熱することにより酸の拡散を促進させて、露光部分の厚膜ホトレジスト層のアルカリ溶解性を変化させる。
【0159】
次いで、上記現像工程では、例えば所定のアルカリ性水溶液を現像液として用いて、不要な部分を溶解、除去して所定の厚膜レジストパターンを得る。
【0160】
現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノナン等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。また、上記アルカリ類の水溶液にメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。
【0161】
現像時間は、本発明に係るホトレジスト組成物の組成や厚膜ホトレジスト層の膜厚等によっても異なるが、通常1〜30分間である。現像方法は、液盛り法、ディッピング法、パドル法、スプレー現像法等のいずれでもよい。
【0162】
現像後は、流水洗浄を30〜90秒間行い、エアーガンや、オーブン等を用いて乾燥させる。
【0163】
このようにして得られた厚膜レジストパターンの非レジスト部(現像液で除去された部分)に、メッキ等によって金属等の導体を埋め込むことにより、バンプやメタルポスト等の接続端子を形成することができる。なお、メッキ処理方法は特に制限されず、従来から公知の各種方法を採用することができる。メッキ液としては、特にハンダメッキ、銅メッキ、金メッキ、ニッケルメッキ液が好適に用いられる。残っている厚膜レジストパターンは、最後に、定法に従って剥離液等を用いて除去する。
【実施例】
【0164】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0165】
<実施例1〜10>
酸発生剤(A)としては、上記一般式(a1)で表されるカチオン部を下記表1のとおりとし、上記一般式(a2)で表されるアニオン部を[B(Cとした化合物(PAG−1〜10)を準備した。
【0166】
【表1】

【0167】
なお、R1a〜R3aの置換位置はいずれもパラ位である。また、表1中、Phはフェニレン基を表し、Ad、MAdは、それぞれ下記式で表されるアダマンチル基、メチルアダマンチル基を表す。
【0168】
【化29】

【0169】
そして、下記に示す各成分をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに均一に溶解し、孔径1μmのメンブランフィルタを通して濾過し、固形分濃度50質量%のホトレジスト組成物を調製した。
・酸発生剤(A)
PAG−1〜10のいずれか・・・表1記載の配合量(PAG−1が2質量部であり、PAG−2〜10についてはその等モル量とした。)
・樹脂(B)
下記式(z1)で表されるアクリル樹脂(質量平均分子量40000、分散度1.8)・・・50質量部
・アルカリ可溶性樹脂(C)
m−クレゾールとp−クレゾールとをホルムアルデヒド及び酸触媒の存在下で付加縮合して得たノボラック樹脂・・・37質量部
ポリヒドロキシスチレン樹脂(VP−2500:日本曹達社製)・・・10質量部
・増感剤
1,5−ジヒドロキシナフタレン・・・1質量部
【0170】
【化30】

【0171】
<比較例1>
酸発生剤(A)として、下記式で表される化合物(PAG−11)を等モルで用いた(2.05質量部)ほかは、実施例1〜10と同様にしてホトレジスト組成物を調製した。
【0172】
【化31】

【0173】
<比較例2>
酸発生剤(A)として、下記式で表される化合物(PAG−12)を等モルで用いた(3.37質量部)ほかは、実施例1〜10と同様にしてホトレジスト組成物を調製した。
【0174】
【化32】

【0175】
<比較例3>
酸発生剤(A)として、下記式で表される化合物(PAG−13)を等モルで用いた(3.30質量部)ほかは、実施例1〜10と同様にしてホトレジスト組成物を調製した。
【0176】
【化33】

【0177】
<比較例4>
樹脂(B)としてのアクリル樹脂を38.8質量部とし、アルカリ可溶性樹脂(C)としてのノボラック樹脂を48.5質量部、ポリヒドロキシスチレン樹脂を9.7質量部とし、すなわち、これらの樹脂の合計に占めるアクリル樹脂の割合を40質量%、ノボラック樹脂の割合を50質量%、ポリヒドロキシスチレン樹脂の割合を10質量%とし、酸発生剤(A)として、下記式で表される化合物(PAG−14)を2.00質量部用いたほかは、実施例1と同様にしてホトレジスト組成物を調製した。
【0178】
【化34】

【0179】
<比較例5>
酸発生剤(A)として、下記式で表される化合物(PAG−15)を2.00質量部用いたほかは、比較例4と同様にしてホトレジスト組成物を調製した。
【0180】
【化35】

【0181】
<評価>
[感度の評価]
上記実施例1〜10、比較例1〜5で調製したホトレジスト組成物を、スピンコーターを用いて8インチの銅基板上に塗布し、膜厚50μmの厚膜ホトレジスト層を得た。そして、この厚膜ホトレジスト層を140℃で5分間プリベークした。プリベーク後、所定ホールパターンのマスクと露光装置Prisma GHI(Ultratech社製)を用いて、露光量を段階的に変化させながらghi線でパターン露光した。次いで、基板をホットプレート上に載置して80℃で3分間の露光後加熱(PEB)を行った。その後、2.38%テトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAH)水溶液を厚膜ホトレジスト層に滴下して、23℃で60秒間放置し、これを3回繰り返して現像した。その後、流水洗浄し、窒素ブローして60μmのコンタクトホールパターンを有する厚膜レジストパターンを得た。
そして、パターン残渣が認められなくなる露光量、すなわち厚膜レジストパターンを形成するのに必要な最低露光量を求め、感度の指標とした。結果を下記表2に示す。
【0182】
[解像性の評価]
マスク寸法を変更し、露光量を上記最低露光量×1.2としたほかは、上記[感度の評価]と同様にして厚膜レジストパターンを得た。そして、解像可能なホール径の最小値を求め、解像性の指標とした。結果を下記表2に示す。
【0183】
[矩形性の評価]
露光量を上記最低露光量×1.2としたほかは、上記[感度の評価]と同様にして厚膜レジストパターンを得た。そして、厚膜レジストパターンの頂部のホール径から底部のホール径を減じた値をフッティング長として測定し、矩形性の指標とした。結果を下記表2に示す。
【0184】
[寸法制御性の評価]
露光量を上記最低露光量×1.2としたほかは、上記[感度の評価]と同様にして厚膜レジストパターンを得た。そして、(頂部のホール径+中央部のホール径+底部のホール径)/3の値を当該厚膜レジストパターンのホール径とし、マスク寸法に対する割合(%)を求め、寸法制御性の指標とした。結果を下記表2に示す。
【0185】
【表2】

【0186】
表2から分かるように、上記一般式(a1)で表されるカチオン部と上記一般式(a2)で表されるアニオン部とを含む酸発生剤を用いた実施例1〜10では、解像性、寸法制御性が高く、かつ、矩形性の良好な厚膜レジストパターンを形成することができた。
一方、カチオン部及びアニオン部のいずれも上記一般式(a1)、(a2)に包含されない酸発生剤を用いた比較例1では、解像性、寸法制御性、矩形性のいずれも実施例1〜10よりも劣っていた。また、アニオン部が上記一般式(a2)に包含される酸発生剤を用いた比較例2,3では、解像性、寸法制御性が良好であったものの、矩形性が劣っていた。また、カチオン部及びアニオン部のいずれも上記一般式(a1)、(a2)に包含されない酸発生剤を用いた比較例4、及びアニオン部が上記一般式(a2)に包含される酸発生剤を用いた比較例5では、解像性、矩形性が良好であったものの、寸法制御性が劣っていた。
【0187】
<実施例11>
樹脂(B)としてのアクリル樹脂を48.5質量部とし、アルカリ可溶性樹脂(C)としてのノボラック樹脂を38.8質量部、ポリヒドロキシスチレン樹脂を19.7質量部としたほかは、すなわち、これらの樹脂の合計に占めるアクリル樹脂の割合を50質量%、ノボラック樹脂の割合を40質量%、ポリヒドロキシスチレン樹脂の割合を10質量%としたほかは、実施例1と同様にしてホトレジスト組成物を調製した。
【0188】
<実施例12>
樹脂(B)としてのアクリル樹脂を29.1質量部とし、アルカリ可溶性樹脂(C)としてのノボラック樹脂を48.5質量部、ポリヒドロキシスチレン樹脂を19.4質量部としたほかは、すなわち、これらの樹脂の合計に占めるアクリル樹脂の割合を30質量%、ノボラック樹脂の割合を50質量%、ポリヒドロキシスチレン樹脂の割合を20質量%としたほかは、実施例1と同様にしてホトレジスト組成物を調製した。
【0189】
<実施例13>
樹脂(B)としてのアクリル樹脂を14.55質量部とし、アルカリ可溶性樹脂(C)としてのノボラック樹脂を48.5質量部、ポリヒドロキシスチレン樹脂を33.95質量部としたほかは、すなわち、これらの樹脂の合計に占めるアクリル樹脂の割合を15質量%、ノボラック樹脂の割合を50質量%、ポリヒドロキシスチレン樹脂の割合を35質量%としたほかは、実施例1と同様にしてホトレジスト組成物を調製した。
【0190】
<実施例14>
樹脂(B)としてのアクリル樹脂を29.1質量部とし、アルカリ可溶性樹脂(C)としてのノボラック樹脂を58.2質量部、ポリヒドロキシスチレン樹脂を9.7質量部としたほかは、すなわち、これらの樹脂の合計に占めるアクリル樹脂の割合を30質量%、ノボラック樹脂の割合を60質量%、ポリヒドロキシスチレン樹脂の割合を10質量%としたほかは、実施例1と同様にしてホトレジスト組成物を調製した。
【0191】
<実施例15>
樹脂(B)としてのアクリル樹脂を38.8質量部とし、アルカリ可溶性樹脂(C)としてのノボラック樹脂を58.2質量部、ポリヒドロキシスチレン樹脂を0質量部としたほかは、すなわち、これらの樹脂の合計に占めるアクリル樹脂の割合を40質量%、ノボラック樹脂の割合を60質量%、ポリヒドロキシスチレン樹脂の割合を0質量%としたほかは、実施例1と同様にしてホトレジスト組成物を調製した。
【0192】
<比較例6>
酸発生剤(A)として上記のPAG−12を用いたほかは、実施例14と同様にしてホトレジスト組成物を調製した。
【0193】
<評価>
[矩形性の評価]
上記実施例11〜15、比較例6で調製したホトレジスト組成物を、スピンコーターを用いて8インチの銅基板上に塗布し、膜厚50μmの厚膜ホトレジスト層を得た。そして、この厚膜ホトレジスト層を140℃で5分間プリベークした。プリベーク後、所定ホールパターンのマスクと露光装置Prisma GHI(Ultratech社製)を用いて、露光量を1000mJ/cmとして、ghi線でパターン露光した。次いで、基板をホットプレート上に載置して80℃で3分間の露光後加熱(PEB)を行った。その後、2.38%テトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAH)水溶液を厚膜ホトレジスト層に滴下して、23℃で60秒間放置し、これを3回繰り返して現像した。その後、流水洗浄し、窒素ブローして60μmのコンタクトホールパターンを有する厚膜レジストパターンを得た。
そして、厚膜レジストパターンの頂部のホール径から底部のホール径を減じた値をフッティング長として測定し、矩形性の指標とした。結果を下記表3に示す。
【0194】
【表3】

【0195】
表3から分かるように、上記一般式(a1)で表されるカチオン部と上記一般式(a2)で表されるアニオン部とを含む酸発生剤を用いた実施例11〜15では、アクリル樹脂、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂の割合を種々に変化させた場合にも、矩形性の良好な厚膜レジストパターンを形成することができた。その中でも、アルカリ可溶性樹脂(C)としてのノボラック樹脂の割合を相対的に増やした場合には、矩形性が特に良好であった。
一方、アニオン部が上記一般式(a2)に包含される酸発生剤を用いた比較例6では、アクリル樹脂、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂の割合が実施例14と同じであるにも関わらず、実施例14よりも矩形性が大きく劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に厚膜ホトレジスト層を形成するために用いられる厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物であって、
電磁波又は粒子線を含む放射線照射により酸を発生する酸発生剤(A)と、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(B)と、を含有し、
前記酸発生剤(A)が、下記一般式(a1):
【化1】

[式(a1)中、R1a〜R3aは、それぞれ独立にアルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、及びアルキルオキシカルボニル基からなる群より選ばれる基A、又は2価の連結基に前記基Aが結合した基を表す。]
で表されるカチオン部と、
下記一般式(a2):
【化2】

[式(a2)中、R4a〜R7aは、それぞれ独立にフッ素原子又はフェニル基を表し、該フェニル基の水素原子の一部又は全部は、フッ素原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。]
で表されるアニオン部と、を含む厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物。
【請求項2】
前記アルコキシ基の炭素数が1〜5である請求項1記載の厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物。
【請求項3】
前記2価の連結基が、−R8a−又は−X−R8a−(ただし、R8aは2価の炭化水素基を表し、Xはヘテロ原子を表す。)で表される請求項1又は2記載の厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物。
【請求項4】
前記樹脂(B)が、ノボラック樹脂(B1)、ポリヒドロキシスチレン樹脂(B2)、及びアクリル樹脂(B1)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有する請求項1から3のいずれか1項記載の厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物。
【請求項5】
さらに、アルカリ可溶性樹脂(C)を含有する請求項1から4のいずれか1項記載の厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物。
【請求項6】
前記アルカリ可溶性樹脂(C)が、ノボラック樹脂(C1)、ポリヒドロキシスチレン樹脂(C2)、及びアクリル樹脂(C3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有する請求項5記載の厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物。
【請求項7】
前記樹脂(B)がアクリル樹脂(B3)であり、前記アルカリ可溶性樹脂(C)がノボラック樹脂(C1)及びポリヒドロキシスチレン樹脂(C2)である請求項5記載の厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物。
【請求項8】
支持体上に、請求項1から7のいずれか1項記載の厚膜用化学増幅型ポジ型ホトレジスト組成物からなる膜厚5μm以上の厚膜ホトレジスト層を積層する積層工程と、
前記厚膜ホトレジスト層に、電磁波又は粒子線を含む放射線を照射する露光工程と、
露光後の前記厚膜ホトレジスト層を現像して厚膜レジストパターンを得る現像工程と、
を含む厚膜レジストパターンの製造方法。

【公開番号】特開2012−137741(P2012−137741A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245494(P2011−245494)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】