説明

原価設計支援システム及び原価企画方法

【課題】迅速で効率的な原価設計支援を行うことができる原価設計支援システム。
【解決手段】複数のサプライヤ毎に部品情報を予め記憶する記憶手段3と、製品を構成する部品情報を入力する入力手段5と、入力手段から入力された部品情報に対応した、複数のサプライヤ毎の部品情報を記憶手段から読み出し、部品情報を複数のサプライヤ毎に評価した評価値を算出する算出手段2と、製品の原価の設計を支援すべく、算出した複数のサプライヤ毎の部品情報の評価値を表示する表示手段5をもつ原価設計支援システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原価設計支援システムに関し、特に、サプライヤ毎の部品情報の評価値を求めることで製品の原価設計を支援する原価設計支援システム。
【背景技術】
【0002】
従来、製造業を中心にIT技術を駆使した最適部品調達支援システムが多く開発されている。すなわち、具体的には、コンピュータによる支援システムであって、製品の原価を設計するために、構成部品の各種情報を収集して製品の設計者のために提供する様々な形態のシステムが開発されている。
【0003】
特許文献1は、製品の原価を設計するために、複数の構成部品の複数の評価項目を総合的に評価しつつ、採用/不採用の決定を行う部品の採用決定支援システム、部品の採用決定支援方法、および部品の採用決定支援プログラム等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−159023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の従来技術は、部品情報が評価した情報に基づいて採用/不採用の決定を行っているが、部品を供給している企業等であるサプライヤごとに決定しているわけではないので、実務上、迅速で効率のよい原価設計支援を行うことができない。
【0006】
本発明は、迅速で効率的な原価設計支援を行うことができる原価設計支援システムおよび原価企画方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決するための一実施形態は、
複数のサプライヤ毎に部品情報を予め記憶する記憶手段(3)と、
製品を構成する部品情報を入力する入力手段(5)と、
前記入力手段から入力された前記部品情報に対応した、複数のサプライヤ毎の部品情報を前記記憶手段から読み出し、前記部品情報を前記複数のサプライヤ毎に評価した評価値を算出する算出手段(2)と、
前記製品の原価の設計を支援するために、前記算出手段が算出した前記複数のサプライヤ毎の前記部品情報の評価値を表示する表示手段(5)と、
を具備することを特徴とする原価設計支援システムである。
【発明の効果】
【0008】
その部品を供給するサプライヤ毎に、部品情報を予めデータベースに記憶しておき、設計者が入力した部品に応じて、単に部品の値段を表示するだけではなく、サプライヤ毎に各評価値を算出して表示する。これにより、コストを算出するための推奨サプライヤや標準仕様、代替品情報を簡単・正確・迅速に入手できるため、迅速で効率のよい原価設計のための支援を行うことができるシステムおよび方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る原価設計支援システムを示すブロック図。
【図2】同じく原価設計支援システムの支援処理の一例を示すフローチャート。
【図3】同じく原価設計支援システムの処理画面の一例を示す説明図。
【図4】同じく原価設計支援システムのプリント基板選定処理の一例を示すフローチャート。
【図5】同じく条件入力画面の一例を示す説明図。
【図6】同じく各テーブルの一例を示す説明図。
【図7】同じく査定結果の画面の一例を示す説明図。
【図8】同じく原価設計支援システムのコスト分析処理の一例を示すフローチャート。
【図9】同じくQCDSL分析のトップ画面の一例を示す説明図。
【図10】同じく条件入力画面の一例を示す説明図。
【図11】同じく分析結果画面の一例を示す説明図。
【図12】同じく原価設計支援システムの推奨サプライヤマップ作成処理の一例を示すフローチャート。
【図13】同じくサプライヤマップ作成処理のトップ画面の一例を示す説明図。
【図14】同じく重要係数入力画面の一例を示す説明図。
【図15】同じくロット個別サプライヤ順位画面の一例を示す説明図。
【図16】同じく推奨サプライヤマップ画面の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係る原価設計支援システム1は、図1に示すように、製品を構成する部品情報や、部品を供給する業者等であるサプライヤ情報等に基づいて、サプライヤ毎の部品等の評価値等を算出する算出手段である演算装置2と、サプライヤ情報に関連付けた部品情報等を予め記憶している記憶手段であるデータベース部3と、演算装置2と設計者側の端末装置5の通信を行なう通信回線機能4と、製品の原価を設計する入力手段および推奨サプライヤ等を表示する表示手段である設計者側の端末装置5を有している。ここで、演算装置2は、サプライヤ毎の部品等の評価値等を算出する演算処理を行う処理部11と、通信回線機能4と通信を行って端末装置5に対するサーバ機能を提供するウェブサーバ12を有している。
また、本発明の一実施形態に係る原価設計支援システム1に含まれる端末装置5は、一例として、製品コストを構成する各部品材料、製造加工、物流他の写真が次画面への遷移ボタンになったメニュー画面と、前記製品コストを構成する各要素の標準コスト、技術情報を算出するボタンやサプライヤ情報、技術情報などから成る構成要素のトップ画面と、コスト査定のための仕様入力画面、および結果出力画面、代替品情報を提案し出力する画面を表示する機能を有している。
【0011】
原価設計支援システム1は、設計者側の端末装置5から原価企画の構成要素の仕様入力を演算装置2に対して行い、演算装置2の処理部11およびウェブサーバ12によりコスト情報、標準仕様、推奨サプライヤ、代替品他の情報を生成し取得する。これらの情報は、通信回線機能4を介して端末装置5の画面において表示される。すなわち、原価設計支援システム1は、製品設計者が構想・開発段階で製品の原価を設計する処理を支援するシステムであり、原価要素としては、例えば、プリント基板、半導体、電源、板金、成形品などの部品材料費や製造加工費、物流などの経費、その他これらに準じるものが考えられる。
【0012】
これらの工程を、図2のフローチャートおよび図3の原価設計支援システムの処理画面を用いて説明すると、製品の原価を設計する設計者は、設計者側の端末装置5に対して、図3の全体トップ画面D1から例えば『プリント基板』という品目の選択を行う(ステップS11)。この全体トップ画面D1は、簡易操作性を目的に、現物写真やボタンクリックによる操作、またプルダウン選択方式を有しており、製品コストを構成する各部品材料、製造加工、物流他の写真が、次画面への遷移ボタンとなっており、例えば、『電源』、『コネクタ』、『プリント基板』、『IC』、『CCD』、『LCDモジュール』、『物流』等の品目が表示されている。また、ID、パスワードの入力窓が表示されている。
【0013】
次に、製品の原価を設定する設計者は、設計者側の端末装置5に対して、図3のプリント基板メニュー画面D2から、製品コストを構成する各要素の標準コストや、サプライヤ情報、技術情報を閲覧するボタン等を選択することができる。
さらに、製品の原価を設計する設計者は、設計者側の端末装置5に対して、図3の査定画面D3から、査定(評価)を行う場合の条件の入力を行う(ステップS12)。演算装置2の処理部11は、この条件に応じて標準コストや推奨仕様等の算出を行う(ステップS13)。そして、算出結果が通信回線機能4を介して、設計側の端末装置5に、査定画面D3の『推奨サプライヤの結果出力』のようにサプライヤ毎に表示される。さらに、設計側の端末装置5においてサプライヤ情報画面D4では、サプライヤ情報や代替品情報等を提案し表示する。
【0014】
また、図4乃至図16を用いて、本発明の一実施形態に係る原価設計支援システム1における各処理を以下に詳細に説明する。
はじめに、図4乃至図7を用いて、本発明の一実施形態に係る原価設計支援システム1におけるプリント基板選定処理を詳細に説明する。図4は、原価設計支援システムのプリント基板選定処理の一例を示すフローチャートである。原価設計支援システム1の設計者は、端末装置5の図5に示すような条件入力画面から、例えば、プリント基板を搭載した製品の『出荷時期』、『プリント基板の層数』、『表面処理』仕様、『シートサイズ』、『基材』(材料)、『出荷数』(物量)等の条件を入力する(ステップS21)。端末装置5または演算装置2は、入力チェックを行う(ステップS22)。
【0015】
次に、端末装置5から入力された条件情報を受けた演算装置2の処理部11は、図6に示す各種テーブルや上記のシートサイズと上記の出荷数に基づいて、消費される平方メートル数(ロット規模)を算出する。そして、演算装置2の処理部11は、算出した平方メートル数(ロット規模)と層数、予め算出された推奨サプライヤマップに基づいて、推奨サプライヤを選定する(ステップS23)。そして、演算装置2の処理部11は、その平米あたりの単価と上記シートサイズから、推奨サプライヤ名とプリント基板単価、イニシャル費を計算する(ステップS24)。そして、演算装置2の処理部11およびウェブサーバ12は、設計者側の端末装置5の表示画面において、選定結果、計算結果、サプライヤ毎のQCDSL評価結果、コスト低減コメントを、図7に示すように結果欄として表示する(ステップS25)。
【0016】
次に、図8乃至図11を用いて、本発明の一実施形態に係る原価設計支援システム1におけるコスト分析処理を詳細に説明する。図8は、品質Q、コストC、納期D、サービスS、ロケーションL分析のうち、コストC分析の評価プロセスを、プリント基板を例にして示したフローチャートである。原価設計支援システム1において、設計者側の端末装置5から演算装置2に対し、図9のQCDSL分析トップ画面においてC分析を選択することで、コスト分析の評価プロセスが開始する。次に、設計者は、図10に示す条件入力画面に対して、端末装置5からコストデータC、例えば、m単価、イニシャル費、ワークサイズ、取り数等の条件を入力する(ステップS31)。端末装置5または演算装置2は、入力チェックを行う(ステップS32)。そして、演算装置2の処理部11は、入力されたコストデータCの入力情報およびデータベース部3の各種テーブルから読み出したサプライヤ毎のデータに基づいて、コストレベルの評価を計算する(ステップS33)。
【0017】
また、演算装置2の処理部11は、他のQ分析、D分析、S分析、L分析、O分析についても、同様に入力されたデータの入力情報およびデータベース部3の各種テーブルから読み出したサプライヤ毎のデータに基づいて、コストレベルの評価を計算する(ステップS34)。算出されたC分析の評価値、または他のQ分析、D分析、S分析、L分析、O分析の評価値、または、各評価値の総合点は、図11の分析結果画面に示すように、端末装置5の画面においてそれぞれ表示される。
【0018】
次に、図12乃至図16を用いて、本発明の一実施形態に係る原価設計支援システム1における推奨サプライヤのマップ作成処理を詳細に説明する。本発明の一実施形態に係る原価設計支援システム1は、図11に示す分析結果画面で評価値を表示するだけでなく、図16に示すように推奨サプライヤマップを作成し、推奨するサプライヤの順位を付けて表示することが可能である。品質Q、コストC、納期D、サービスS、ロケーションL、企業財務状況他の各分析結果から推奨サプライヤマップを作成する場合を、図12のフローチャートで説明する。
【0019】
原価設計支援システム1において、設計者は、端末装置5が表示する図13のサプライヤマップ作成トップ画面を経て図14に示す重要度係数入力画面から、上記の分析結果の重要度を入力する(ステップS41)。これに対して、演算装置2の処理部11は、各分析結果、入力された重要度、データベース部3から読み出された必要なサプライヤ情報に基づいて、各サプライヤの総合評価点を算出する(ステップS42)。
【0020】
この時の評価値の計算方法の一例は、
(サプライヤ総合評価点)=(品質Q)×I+(コストC)×I+(納期D)×I+(サービスS)×I+(ロケーションL)×I+(企業財務状況他)×I
ただし、Iは、それぞれ各分析項目の重要度係数である。
次に、演算装置2の処理部11およびウェブサーバ12は、算出した総合得点から図15に示すように、ロット別、層別のサプライヤランキング順位を生成する(ステップS43)。さらに、演算装置2の処理部11およびウェブサーバ12は、このサプライヤランキング順位に基づいて、図16に示すような推奨サプライヤマップを生成する(ステップS44)。これにより設計者は、端末装置5の画面において、図15のロット別、層別のサプライヤランキング順位や、図16の推奨サプライヤマップを参照することができる。
【0021】
従って、本発明の一実施形態に係る原価設計支援システムによって、設計者は、任意に重要度を選択した評価項目に応じて、これまで曖昧だったサプライヤの評価を数値化し、さらにサプライヤ毎に順位で表示し、さらに推奨サプライヤマップとして表示することで、多様な原価の設計を容易に行うことができる。従って、迅速で効率的な原価設計支援を行うことができる原価設計支援システムおよび原価企画方法を提供することができる。
【0022】
以上記載した様々な実施形態は複数同時に実施することが可能であり、これらの記載により、当業者は本発明を実現することができるが、更にこれらの実施形態の様々な変形例を思いつくことが当業者によって容易であり、発明的な能力をもたなくとも様々な実施形態へと適用することが可能である。
一例として、上述した原価設計支援システムおよび原価企画方法は、汎用のコンピュータ装置で処理を行うことができるコンピュータプログラムとして実現することが可能である。
従って、本発明は、開示された原理と新規な特徴に矛盾しない広範な範囲に及ぶものであり、上述した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0023】
1…原価設計支援システム、2…演算装置、3…データベース部、4…通信回路、5…設計者側端末ウェブブラウザ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサプライヤ毎に部品情報を予め記憶する記憶手段と、
製品を構成する部品情報を入力する入力手段と、
前記入力手段から入力された前記部品情報に対応した、複数のサプライヤ毎の部品情報を前記記憶手段から読み出し、前記部品情報を前記複数のサプライヤ毎に評価した評価値を算出する算出手段と、
前記製品の原価の設計を支援するために、前記算出手段が算出した前記複数のサプライヤ毎の前記部品情報の評価値を表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする原価設計支援システム。
【請求項2】
複数のサプライヤ毎に部品情報を予め記憶領域に記憶し、
製品を構成する部品情報を入力し、
前記入力された前記部品情報に対応した、複数のサプライヤ毎の部品情報を前記記憶領域から読み出し、前記部品情報を前記複数のサプライヤ毎に評価した評価値を算出し、
前記製品の原価の設定を支援するために、前記算出した前記複数のサプライヤ毎の前記部品情報の評価値を表示することを特徴とする原価企画方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2011−159056(P2011−159056A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19407(P2010−19407)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)