説明

原子価イオンキレートを伴うO3の使用による、廃水中のCOD(化学的酸素要求量)を低下させるための方法

【課題】有機物を含む廃水を処理するための、オゾンを節約した新規方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、廃水における化学的酸素要求量(COD)を低下させるための方法を提供し、この方法は、廃水中に含まれる有機物のオゾンによる酸化を終結させ得る原子価イオンが、オゾンと共に使用され、この廃水におけるCODを低下させることを特徴とする。1つの実施形態において、上記原子価イオンは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、クロムイオン、チタンイオン、およびニオブイオンからなる群より選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物を含む廃水を処理する方法に関し、そしてより具体的には、オゾンおよび原子価イオン(valent ion)のキレート形成を使用することによって、廃水における化学的酸素要求量(COD)を低下させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高度に産業化された発展および急速な人口増加によって、廃水の処理は、近代都市に対する重要な問題となっている。オゾンを使用して、有機物(油、脂肪油などを含む)を酸化することによって廃水におけるCODを低下させる場合に、最も通常の主生成物は、酸化反応の速度に依存して、有機酸、アルコール、またはアルデヒドである(非特許文献1を参照)。これらの場合において、CODは、わずかに低下されるのみであった。有機酸、アルコール、およびアルデヒドがさらに酸化されて、二酸化炭素および水となるまで、酸化反応を続けることを試みることが所望である場合、この反応プロセスは遅く、そして多量のオゾンが消費される。進歩した酸化プロセス(例えば、オゾンと共に過酸化水素を使用すること、オゾンと共にUV照射を使用すること、およびオゾンと共に触媒を使用すること)によって、廃水の処理のための酸化プロセスの反応速度を増加させることが、一般にできるようになっている。しかし、これらのプロセスは、オゾンの消費を低下させ得ず、そしてしばしば、全体の費用を大いに増加させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Basel,「International Ozone Symposium Proceedings」1999年10月21日〜22日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
公知の技術の観点から、本発明の課題は、有機物を含む廃水を処理するための、オゾンを節約した新規方法を提供することである。すなわち、有機酸中間体は、オゾンによる有機物の酸化から形成される場合に、水に溶解した原子価イオンとキレートを形成し、そしてこの廃水から沈殿し、これによって、消費されるオゾンの量を減少させ、そして費用節約の目的を大いに達成する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、廃水における化学的酸素要求量(COD)を低下させるための方法を提供し、この方法は、廃水中に含まれる有機物のオゾンによる酸化を終結させ得る原子価イオンが、オゾンと共に使用され、この廃水におけるCODを低下させることを特徴とする。
【0006】
1つの実施形態において、上記原子価イオンは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、クロムイオン、チタンイオン、およびニオブイオンからなる群より選択される。
【0007】
1つの実施形態において、上記原子価イオンはカルシウムイオンである。
【0008】
1つの実施形態において、上記カルシウムイオンの源は、炭酸カルシウム、水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムからなる群より選択される。
【0009】
1つの実施形態において、上記原子価イオンはマグネシウムイオンである。
【0010】
1つの実施形態において、上記マグネシウムイオンの源は、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、および酸化マグネシウムからなる群より選択される。
【0011】
1つの実施形態において、上記方法は、過酸化水素を添加する工程をさらに包含する。
【0012】
1つの実施形態において、炭酸カルシウムが使用される場合に、上記廃水のpH値が2〜4の範囲に調整される。
【0013】
1つの実施形態において、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムが使用される場合に、上記廃水のpH値が9〜13の範囲に調整される。
【0014】
1つの実施形態において、上記有機物が有機酸に酸化されたときに、上記原子価イオンが添加されて、この酸化を終結させる。
【0015】
1つの実施形態において、上記有機物がアルコールに酸化されたときに、上記原子価イオンが添加されて、この酸化を終結させる。
【0016】
1つの実施形態において、上記有機物がアルデヒドに酸化されたときに、上記原子価イオンが添加されて、この酸化を終結させる。
【0017】
1つの実施形態において、上記原子価イオンは任意の適切な量で上記廃水に添加される。
【0018】
1つの実施形態において、上記原子価イオンは、1単位のCODあたり約1当量の原子価イオン〜1単位のCODあたり2当量の原子価イオンの量で添加される。
【0019】
1つの実施形態において、上記原子価イオンはアルミニウムイオンである。
【0020】
1つの実施形態において、上記アルミニウムイオンの源は、アルミナおよび水酸化アルミニウムからなる群より選択される。
本発明は、廃水におけるCODを低下させるための方法に関し、この方法は、廃水における有機物のオゾンによる酸化を終結させ得る原子価イオンが、この廃水のpH値に依存して、オゾンと共に使用されて、この廃水に含まれる有機物のCODを低下させることを特徴とする。本発明の方法は、オゾンの消費を減少させること、廃水に含まれる酸化プロセスを単純にすること、および費用を節約するという利点を有し、そして産業において広く使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の方法のオゾン使用量およびオゾンのみを使用する従来の方法のオゾン使用量と、CODとの間の関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書中において使用される語句「原子価イオン」とは、廃水中の有機物のオゾンによる酸化を終結させ得る、任意の原子価イオンをいう。このような原子価イオンは、本発明の方法に適切であり、好ましくは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、クロムイオン、チタンイオン、およびニオブイオンである。カルシウムイオンの源は、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、および酸化カルシウムからなる群より選択される。マグネシウムイオンの源は、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、および酸化マグネシウムからなる群より選択される。アルミニウムイオンの源は、アルミナおよび水酸化アルミニウムからなる群より選択される。
【0023】
本発明に従って、廃水におけるCODを低下させるための方法は、過酸化水素を添加する工程をさらに包含し得る。本発明における、過酸化水素のさらなる使用は、好ましい結果を有することが見出されている。
【0024】
カルシウムイオンを、本発明の方法において使用される二価のイオンの例とすると、炭酸カルシウムが使用される場合、廃水のpH値は、好ましくは、2〜4の範囲内であり、そして水酸化カルシウムまたは酸化カルシウムが使用される場合、廃水のpH値は、好ましくは、9〜13の範囲内である。炭酸カルシウム、水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムは、水に溶解してカルシウムイオン(Ca2+)および2つの水酸化物イオン(OH)を形成する。このカルシウムイオンは、オゾンの酸化力に有意に影響を与えない。
【0025】
廃水中に含まれる有機物の、オゾンによる従来の酸化の最も通常の主生成物は、酸化反応の速度に依存して、有機酸、アルコール、またはアルデヒドである。本発明においては、有機物が有機酸、アルコール、またはアルデヒドに酸化された任意の時点で、原子価イオンが添加されて、この酸化を終結させ得る。好ましくは、原子価イオンは、有機物が有機酸に酸化されたときに、本発明の方法に添加される。このことは、カルボン酸官能基が分子に形成され、そしてその分子がカルシウムイオンをキレートし、そして廃水から沈澱することに起因する。従って、炭酸カルシウムまたは酸化カルシウムと共にオゾンを使用する本発明の方法においては、廃水中の有機物を有機酸に酸化することのみが、必要である。所定の量の廃水におけるCOD、オゾンの消費量、および本発明においてCODを低下させるために必要とされる時間の全ては、オゾンのみまたは上記のような他の進歩した酸化プロセスを使用する従来の方法と比較して、大いに減少する。酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムの低い費用、ならびに沈澱物の容易な処理に起因して、本発明の方法は、廃水を取り扱う費用を有意に低下させる。
【0026】
廃水のpH値に依存して、原子価イオンは、任意の適切な量で廃水に添加され、この量は、当業者によって、オゾンの添加前か、またはオゾンでの有機物の酸化から有機酸が形成するときにいつでものいずれかに、決定され得る。好ましくは、原子価イオンは、1単位のCODあたり約1当量の原子価イオン〜1単位のCODあたり2当量の原子価イオンの量で、より好ましくは、1単位のCODあたり約1当量の原子価イオンの量で、添加される。すなわち、炭酸カルシウムまたは酸化カルシウムが使用される場合、この量は、1単位のCODあたり約1当量のカルシウムイオン〜1単位のCODあたり2当量のカルシウムイオンの量である。CODの単位が、例えばmg/Lであることは、慣習的である。
【0027】
いくらかの時間の後にCOの気泡が形成される場合には、このことは、オゾンが廃水中の有機分子と反応していることの証明である。この時点で、廃水に溶解した酸化カルシウムは、その添加量に依存して、ゲルを形成する。CODの低下は、使用されるオゾンの使用量に依存する。塩基性条件下では、原子価イオンはゲルを形成する。酸性条件下では、沈殿物が形成される。攪拌は、ゲルの形成を促進し得る。本発明は、以下の利点を有する:(1)本発明の方法において、廃水中の有機物を有機酸に酸化することのみが必要であり、次いで原子価イオンとのキレート形成および沈澱によってこの形成した酸を廃水から除去して、この廃水におけるCODを低下させること;(2)本発明の方法は、大きな分子の有機物に対して使用される場合に、なおより効果的であること;(3)カルシウムイオンのような安価な原子価イオンが、本発明の方法において直接的に使用され、全費用を低下させ得ること。
【0028】
以下の実施例は、本発明をさらに詳細に説明する役に立つが、本発明を限定しない。
【実施例】
【0029】
本実施例は、グリセリン(1,2,3−プロパントリオールC(OH))を酸化カルシウム溶液中で酸化することによる、廃水における化学的酸素要求量(COD)を低下させるための本発明の方法を説明する。最初に、酸化カルシウム(CaO)を、グリセリンを含む塩基性の廃水に溶解させた。次いで、オゾン(O)を、気泡塔法によって廃水に注入し、グリセリンおよび酸化カルシウムと反応させた。
【0030】
他方で、上記実験を、CaOを使用しないことを除いて繰り返して行った。すなわち、O単独を使用して、廃水中に含まれるグリセリンを酸化した。実験データを収集し、そしてCODと、本発明の方法のオゾン使用量およびオゾン単独を使用する従来の方法のオゾン使用量との間の関係として、図1に作製した。
【0031】
図1に示すように、O+CaOでの処理のオゾン消費は、O単独のほんの3分の2であった。CaOがない場合には各グリセリン分子が平均5.6個のオゾン分子を必要とすると仮定すると、この6:4の減少は、反応プロセスからの2つのオゾン分子の減少を意味する。このことは、カルボン酸に酸化されるグリセリン分子が、カルシウムイオンキレートの沈澱によって、この反応プロセスから除去されることに起因する。
【0032】
本発明の方法を最適化するために、上記実験に、過酸化水素(H)が添加され得ることが見出される。
【0033】
本発明を、上記において説明の目的で詳細に記載したが、このような詳細は単なる説明の目的であること、ならびに特許請求の範囲において制限され得る場合を除いて、本発明の意図および範囲から逸脱することなく、当業者によってバリエーションが作製され得ることが、理解される。
【0034】
化学的酸素要求量(COD)を低下させるために、原子価イオン(例えば、廃水のpH値に依存して、CaO/CaCO)を添加することによって、廃水を処理するための技術が提供される。オゾンでの有機物の酸化から形成される有機酸中間体は、水に溶解した原子価イオンとキレートを形成し、そして廃水から沈澱して、消費されるオゾンの量を減少させ、そして費用を削減する。本発明の方法は、好ましくは、反応のpH値を調整すること、および/または過酸化水素の添加によって、行われる。
【0035】
[発明の効果]
本発明によれば、有機物を含む廃水を処理するための、オゾンを節約した新規方法が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【公開番号】特開2010−207818(P2010−207818A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152495(P2010−152495)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【分割の表示】特願2003−48353(P2003−48353)の分割
【原出願日】平成15年2月25日(2003.2.25)
【出願人】(500465983)
【氏名又は名称原語表記】LIOU, HUEI−TARNG
【Fターム(参考)】