説明

原子力プラントの原子炉建屋基礎構造

【課題】本発明は、原子力プラントの原子炉建屋の基礎の平面寸法を拡大することに依存することなく、原子炉建屋の建屋接地率を増加させることにある。
【解決手段】原子炉建屋5は、原子炉圧力容器3を内蔵する原子炉格納容器1と、前記原子炉格納容器1の周囲に配置された機械室7と、前記原子炉格納容器1と前記機械室7を支持する原子炉建屋基礎2とを備えており、前記原子炉建屋基礎2の下部には複数本の杭6が前記原子炉建屋基礎2と一体化及び分散して設けられて建屋接地率を増加させることに寄与している。また、前記各杭6の内、水平方向中央部に配置された杭が水平方向外周部に配置された杭6よりも長さが短く設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰水型原子炉を備えた原子力発電所等の原子力プラントにおける原子炉格納容器およびこれに付随する機器室等から構成される原子炉建屋の基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉建屋の耐震設計においては、原子炉建屋基礎の浮き上りを考慮した評価を行っている。この原子炉建屋基礎の浮き上りを考慮した評価では、建屋を転倒させようとする力に対する耐震安全性を評価する指標である建屋接地率を用いた評価を行う。
【0003】
近年、原子炉建屋の耐震成立性が厳しくなってきているため、設計地震力に対して必要な建屋接地率を確保できるだけの十分な建屋基礎平面寸法を設定する。建屋基礎平面寸法を大きくすれば、建屋接地率を大きく確保でき、原子炉建屋の建屋接地率を一定値以上確保する耐震設計の必要性を満たすことができる。
【0004】
地震による水平加振力の対応として、原子炉建屋基礎の下部構造を凹凸にした構造として岩盤と噛み合わせるようにした対策が開示されている(例えば、特許文献1参照)。その特許文献1には、原子炉建屋基礎の底面に複数の突状部分または溝部分を分散して形成し、かつこれらの突状部分または溝部分に対応する溝部分および突状部分を岩盤に設けて、両者を水平方向に噛み合わせることにより地震による水平せん断力を岩盤に有効に伝達させる構造とすること、及び水平せん断力の働く面を上下に分散するために、突状部分の長さに長短を付けることが記述されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭52−71816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
原子炉建屋の設計用の設定地震動が大きくなるなかで、原子炉建屋基礎平面寸法の拡大による原子炉建屋に必要な接地率の確保は困難な状況となっている。
【0007】
また、建屋接地率を確保するために原子炉建屋基礎平面寸法を拡大すると、原子炉建屋配置レイアウトが制限され、サイト敷地の有効利用が阻害される。
【0008】
従って、本発明の目的は、原子炉建屋基礎平面寸法の拡大に依存することなく、建屋転倒モーメントが抑制される原子炉建屋基礎構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的を達成するための手段は、原子炉建屋の基礎の下部に、前記基礎と一体の杭を設けた原子炉建屋の基礎構造を採用したことである。
【0010】
好ましくは、前記杭が複数本分散して前記基礎に設けられていることである。
【0011】
このような原子炉建屋基礎構造とすることで、原子炉建屋基礎平面寸法を拡大させることなく、建屋の必要接地率を確保して、建屋転倒モーメントが良く抑制できることが可能となる。
【0012】
一層好ましくは、その杭の長さが、原子炉建屋の基礎の外周部よりに配置された杭では長く、それに比較して中央部よりに配置された杭では短く異なるようにすることである。
【0013】
このようにすれば、杭の物量を抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、原子炉建屋基礎平面寸法を拡大させることなく、原子炉建屋の建屋転倒モーメントの抑制を高める接地状況を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例による原子炉建屋とその原子炉建屋基礎との縦断面図である。
【図2】図1の原子炉建屋基礎を下方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0017】
本発明の実施例においては、原子炉建屋基礎の仮面に原子炉建屋と一体の鉄筋コンクリート製の杭を分散して設けてある。その杭の長さは、杭の配置位置が原子炉建屋基礎の中央部から外周部へ行くに従って、長くなるように設定されている。
【0018】
それら杭は、地震による水平加振力や上下加振力に抵抗し、岩盤と原子力建屋との間の加振力のスムーズな伝達や、原子炉建屋の浮き上がり防止及び転倒モーメントの抑制に役立つ。
【実施例1】
【0019】
以下に本発明の実施例を図に基づいて説明する。原子力プラントの一例として、沸騰水型原子炉を備えた原子力発電所の原子炉建屋5に本発明を適用した例が図1及び図2に示されている。
【0020】
図1に示すように、原子炉建屋5内には、水平方向中央部分に、原子炉格納容器1が、同じく外周囲部分に機械室7が設けられている。この様な配置にて原子炉格納容器1と機械室7は原子炉建屋5に設けられている。
【0021】
その原子炉格納容器1内には、原子炉圧力容器3が格納されている。この原子炉圧力容器3内には、原子炉炉心が格納され、その原子炉炉心の核燃料が核分裂したときに発生する熱エネルギーが原子炉圧力容器3内の冷却水を沸騰させて蒸気を発生させる構成を備えている。その蒸気は原子炉建屋5の外側に配管で導き出されて蒸気タービンに駆動エネルギーとして供給され、駆動された蒸気タービンは発電機を回転駆動して発電させる構成を原子力発電所は有している。
【0022】
原子炉格納容器1は、内部で発生した気体に対する耐圧,耐漏洩機能を持たせるために内側にライナを張った鉄筋コンクリート製で、原子炉格納容器1壁を側面、原子炉建屋基礎2を下面、そして上部をドーム形状のトップヘッド及びトップスラブとする水平断面が円筒形状を有する構造である。
【0023】
原子炉圧力容器3は、原子炉圧力容器基礎4を介して、原子炉建屋基礎2上に支持される。また、原子炉格納容器1の周囲に配置された機械室7も、原子炉格納容器1と原子炉圧力容器基礎4と同様に、原子炉建屋基礎2にて支持されている。
【0024】
このように、原子炉建屋5は、主として原子炉圧力容器3,原子炉格納容器1,原子炉圧力容器基礎4,機械室7および原子炉建屋基礎2から構成される。この原子炉建屋5,原子炉建屋基礎2は、支持強度部材として必要な構造強度及び周辺への放射線を遮蔽するために必要な厚さを確保した上で鉄筋コンクリート製にて建設されている。
【0025】
ここで、原子炉建屋5に水平方向の地震力が作用した場合、原子炉建屋5の重心位置を中心とした回転モーメントが転倒モーメントとして発生する。この回転モーメントは、原子炉建屋5を転倒させるような荷重であるため、原子炉建屋5が転倒しないように、耐震成立性の構成を採用する必要がある。
【0026】
この耐震成立性の構成として、原子炉建屋基礎2の平面寸法を拡大して、地震により発生する転倒モーメントに対する抵抗力を大きくすると、原子力発電所の敷地条件により、原子炉建屋配置レイアウトが制限され、原子力発電所の敷地の有効利用が阻害されるといった弊害が出る。
【0027】
その弊害を避けるために、その耐震成立性を、図1と図2に示した構成で達成することにした。即ち、図1に示すように、原子炉建屋基礎2の下部にスタッド状の張り出し構造である杭6を複数本分散配置して設けた構造とし、杭6の長さが原子炉建屋基礎2の中央部で短く、外周部で長くなるように長さが異なるように設定した構造とする。
【0028】
各杭6は図2中で円で表示してあるが、各杭6の形状は、円柱状の形状を有し、原子炉建屋基礎2と一体化された構造とされる。そのため、各杭6は、原子炉建屋基礎2の構造と同様に鉄筋コンクリート構造にて原子炉建屋基礎2と一体化されている。また、各杭6の平面寸法及び長さは、考慮する地震力により必要な分を確保して設定される。
【0029】
各杭6は、岩盤に埋設されて、原子炉建屋基礎2と岩盤の固着力が強くなり、転倒モーメントを抑制することが可能となり、原子炉建屋基礎2平面寸法を拡大させることなく、建屋接地率を増加させることができる。
【0030】
さらに、原子炉建屋基礎2の下部に杭6を設けた構造とすることで、鉛直方向の地震動に対して、原子炉建屋基礎2と岩盤との接触面積が増加し、張り出し構造6部と岩盤の摩擦力が大きくなり、鉛直方向の地震動による原子炉建屋5の応答を低減させることができる。
【0031】
また、各杭6の長さについて、原子炉建屋基礎2の水平方向中心部側に配置された杭6の長さが、外側(外周部)には位置された杭6の長さよりも短くすることにより、転倒モーメントの抑制効果を低減させることなく、杭6の物量を低減させることができる。
【0032】
以上により、原子炉建屋基礎2の下部に長さの異なるスタッド状の張り出し構造6を設けることで、原子炉建屋基礎2平面寸法を拡大させることなく、転倒モーメントを抑制することが可能となり、建屋接地率を増加させることができるため、原子力発電所の敷地の有効利用ができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、原子力発電所の原子炉建屋の基礎構造に利用可能性がある。
【符号の説明】
【0034】
1 原子炉格納容器
2 原子炉建屋基礎
3 原子炉圧力容器
4 原子炉圧力容器基礎
5 原子炉建屋
6 杭
7 機械室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力プラントの原子炉建屋の基礎の下部に、前記基礎と一体化した杭を備えた原子力プラントの原子炉建屋基礎構造。
【請求項2】
請求項1において、複数本の前記杭を分散して前記基礎に設けてあることを特徴とした原子力プラントの原子炉建屋基礎構造。
【請求項3】
請求項2において、前記杭の長さが、原子炉建屋の基礎の外周部よりに設けた杭に比較して中央部よりに設けた杭では短く設定されて、相互に異なるようにしてある原子力プラントの原子炉建屋基礎構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項において、前記原子炉建屋は、原子炉圧力容器を内蔵する原子炉格納容器と、前記原子炉格納容器の周囲に配置された機械室と、前記原子炉格納容器と前記機械室を支持する前記基礎とを備えている原子力プラントの原子炉建屋基礎構造。

【図1】
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【図2】
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