説明

原子力発電プラントのタンクモジュール及びそのタンクモジュール据付方法

【課題】
できる限りコストを抑え、建設工期の短縮が図れる原子力発電プラントのタンクモジュールを提供すること。
【解決手段】
本発明は、上記課題を敬決するために、原子力発電所の躯体天井に設置されるタンクモジュールであって、前記タンクモジュールは、原子炉補機冷却水系或いはタービン補機冷却水系内のポンプ吸込圧力を確保するために設置されるタンクと、該タンクが固定されて前記躯体天井に設置される仮設材とから成り、前記仮設材は、前記タンクが固定される基礎台が設置されている天板と、該天板を支える複数の支柱と、該各支柱の前記天板とは反対側にそれぞれ固定され、前記躯体天井に固定されるプレートとを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原子力発電プラントのタンクモジュール及びそのタンクモジュール据付方法に係り、例えば、原子炉補機冷却水系(以下、RCWという)、或いはタービン補機冷却水系(以下、TCWという)のような閉ループで構成された系統内のポンプ吸込圧力を確保するためのサージタンクに好適な原子力発電プラントのタンクモジュール及びそのタンクモジュール据付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントには、RCW或いはTCWのような閉ループで水を循環させ、熱交換を行う系統があるが、RCW、TCWのような冷却水系は、プラント内の各機器に冷却水を供給することから、通常は、プラント全体に配管が布設されており、建設工程上は、特に上部階の工程裕度が無いことが知られている。
【0003】
即ち、プラント建設の前半では、工期までに余裕があるので、計画より建設工程が遅れても後で工程を挽回できるが、上部階の建設、つまり、建設工程の終盤になるにつれ工程を挽回できなくなる。特に、プラント内の各機器に冷却水を供給するには、下層から上層まで設置されている機器に配管を布設する必要があり、また、冷却系にはサージタンクが備えられている。このサージタンクの役目を果たすには、各機器よりも高い箇所にサージタンクを設置しなければならないので、サージタンクの設置は、建設工程の終盤での作業となってしまため、計画より建設工程が遅れると終盤では工程を挽回できなくなり、上部階の建設には、工程裕度が無くなってしまう。
【0004】
また、フラッシング(機器、配管、タンク等の残留物を除去して清浄度を上げ、設備、装置を正常に作動、運転させること)や試運転に伴うポンプの運転の際、RCW、TCWは、冷却のために必要となるので、できる限り早いうちにインサートサービスの状態になることが、工期確保の上で必須である。
【0005】
原子力発電プラントの建設工期の短縮の例としては、特許文献1が挙げられる。この特許文献1には、原子力発電プラントの建設作業の工期短縮を達成するために、モジュールを工場や現地のヤードで制作し、原子炉建屋に一体化したモジュールを搬入することで、原子力発電プラントの建設工期を短縮することが記載されている。
【0006】
通常、RCWやTCWでは、閉ループで構成された系統内のポンプ吸込圧力を確保するために上述したサージタンクが設置されているが、このサージタンクの据付時にモジュール工法を取り入れようとしたものの、建設工期よりもコストの面でデメリットが大きいため、現状では、サージタンクを据付する階層まで建屋が建築された後に、その階層にサージタンクを据付し、それに付属する配管やバルブを現地溶接している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−113667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、高階層に設置されるサージタンクに代表されるように、建設後半の据付作業となる機器及び取合い配管他の据付については、前作業の遅れがあった場合には、当該機器、配管の設置に必要な工程が確保できず、全体工程のマイルストンを維持できない。即ち、RCWやTCWでは、閉ループで構成された系統内のポンプ吸込圧力を確保するためサージタンクを設置しているが、吸込圧力が低下した場合、系統内へ冷却水を供給するためにRCW、TCWともに冷却対象機器、及びそれらに接続する配管よりも高いレベルにサージタンクを据え付ける必要がある。結果、両サージタンクは高階層に設置されることになり、建設の後工程となるため、前作業の遅れがあった場合には、当該機器、配管の設置に必要な工程が確保できず、全体工程のマイルストンを維持できない。
【0009】
また、工程確保のための手段としてのモジュール工法は知られているが、サージタンクのように、機器と一緒にモジュール化するその他の据付品(配管、サポート、架台等)の物量が少ない場合、モジュール化による輸送費、仮設費の増加により、コストの面でデメリットが大きいため、モジュールの採用を見送っていた。従って、できる限りコストを抑え、工期短縮を目的とした建設工法が課題となっている。
【0010】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、できる限りコストを抑え、建設工期の短縮が図れる原子力発電プラントのタンクモジュール及びそのタンクモジュール据付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の原子力発電プラントのタンクモジュールは、上記目的を達成するために、原子力発電所の躯体天井に設置されるタンクモジュールであって、前記タンクモジュールは、原子炉補機冷却水系或いはタービン補機冷却水系内のポンプ吸込圧力を確保するために設置されるタンクと、該タンクが固定されて前記躯体天井に設置される仮設材とから成り、前記仮設材は、前記タンクが固定される基礎台が設置されている天板と、該天板を支える複数の支柱と、該各支柱の前記天板とは反対側にそれぞれ固定され、前記躯体天井に固定されるプレートとを備えていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の原子力発電プラントのタンクモジュール据付方法は、上記目的を達成するために、原子力発電所の躯体天井ができ上がった段階で、該躯体天井上に、上述した構成のタンクモジュールをクレーンで搬入し、その後、前記仮設材の天板に設けられたスリーブ穴を通るようにスリーブを設置して該スリーブ内に配管を通し、この配管と前記タンクモジュールを接続した後、鉄筋を複数の支柱間に通して前記仮設材ごとコンクリートで埋め込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、できる限りコストを抑え、建設工期の短縮が図れるのでタンクモジュールを据付ける際には、非常に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の原子力発電プラントのタンクモジュールの一実施例を示す斜視図である。
【図2】図1に示したタンクモジュールに採用される仮設材を示す斜視図である。
【図3(a)】本発明の原子力発電プラントのタンクモジュール据付方法の工程順の一実施例であり、タンクモジュールを原子発電所の躯体天井上に配置した状態を示す図である。
【図3(b)】本発明の原子力発電プラントのタンクモジュール据付方法に採用される、配管をスリーブ内に配置した状態を示す図である。
【図3(c)】本発明の原子力発電プラントのタンクモジュール据付方法の図3(a)の状態に、図3(b)の状態の配管を設置した状態を示す図である。
【図3(d)】本発明の原子力発電プラントのタンクモジュール据付方法の図3(c)の状態に鉄筋を配置した状態を示す図である。
【図3(e)】本発明の原子力発電プラントのタンクモジュール据付方法の図3(d)の状態に、コンクリートを打設した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の原子力発電プラントのタンクモジュール及びそのタンクモジュール据付方法を説明する。
【実施例1】
【0016】
図1に、本発明の原子力発電プラントのタンクモジュールの一実施例を示す。
【0017】
該図に示す原子力発電プラントのタンクモジュールは、原子力発電所の躯体天井(図示せず)に設置されるものであり、このタンクモジュールは、RCW或いはTCW内のポンプ吸込圧力を確保するために設置されるサージタンク8と、該サージタンク8が固定されて躯体天井に設置される仮設材100とから概略構成され、仮設材100の天板6の上に本設品(計装ラック14、オーバーフローライン16、純水補給水系配管18等)を設置して製作される。
【0018】
即ち、サージタンク8を仮設材100に設置した後、計装ラック14が設置され、この計装ラック14とサージタンク8が、計装配管15を介して溶接により接続される。また、オーバーフローライン16は、仮サポート17にてサージタンク8に取り付けられ、更に、純水補給水系配管18は、本設サポート20を使用し、天板6に取り付けられる。
【0019】
尚、機器ファンネルに接続する全ての配管に関しては、スプール1つ分の配管は、モジュールに組み込まず、現地溶接にて対応する。また、プラントにより、操作架台が取り付けられる場合があるが、重量が増大するため、現地で据付後の架台を固定するようにしている。
【0020】
次に、上述した仮設材100の詳細について説明する。仮設材100は、図2に示す如く、サージタンク8が固定される基礎台1が設置されている天板6と、該天板6を支える上部支柱3と下部支柱4とからなる複数の支柱と、各支柱の天板6とは反対側にそれぞれ固定され、躯体天井(図示せず)に固定されるプレート5とから概略構成されている。
【0021】
更に、仮設材100を詳述すると、仮設材100は、基礎台1、ボルト穴2、上部支柱3、下部支柱4、鉄鋼製で正方形のプレート5、天板6を備えている。天板6の支えとなるプレート5に、上部支柱3と下部支柱4を合わせた支柱を溶接で結合している。上部支柱3と下部支柱4は、据付後のレベル調整が可能なようにねじ切りされて係合されている。本実施例では、4本の支柱の上に天板6を乗せ、溶接固定している。
【0022】
また、天板6の上には、サージタンク8を乗せるための基礎台1が取り付けられており、サージタンク8を固定するためのボルト9が挿入できるよう天板6、基礎台1を合わせた状態でねじ切りが施されている。サージタンク8は、メンテナンスや交換の際、取り外せられるようにねじ切りはされてなく、サージタンク8側に切り穴を設け、締め圧でサージタンク8を固定するようにしている。
【0023】
また、ボルト9は、サージタンク8、天板6、基礎台1を通したあと、端部を直角に2回折り曲げ、その先端部分が、天板6の下面に溶接固定されている。サージタンク8を取り付けた後は、天板6の上面に本設品が取り付けられる。本設品の組み立て方法については、後述する。
【0024】
尚、仮設材100には、サージタンクモジュールを据付する際、下層から配管11が通るように、スリーブ穴13が設けられている(図3(c)を参照)。
【0025】
次に、上述した構成のサージタンクモジュールの据付方法の一例について、図3(a)-(e)を用いて説明する。
【0026】
先ず、図3(a)に示す如く、原子力発電所のサージタンク8がある階層の下の躯体天井7ができ上がった段階で、この躯体天井7上に、図1及び図2で説明した構成のサージタンクモジュール(RCW、TCWサージタンクとその周辺の配管、バルブ、計装ラックなどの機器と計装配管を仮設の鋼鉄天板の上で構成したもの)を、ヤードにある大型クローラクレーン(図示せず)により、水切り後直接搬入する。この際に、ねじが切られている下部支柱4を回転させ、サージタンク8が水平になるようレベルの調整を行う。その後、ボルト9を、サージタンク8、天板6、基礎台1を通し、その端部を直角に2回折り曲げ、先端部分を、天板6の下面に溶接固定する。
【0027】
次に、下層からの配管11が通るので、仮設材100に設けたシリーブ穴13を通るように配管11が通るスリーブ10を設置する(図3(b)参照)。その後、サージタンクモジュールと本設配管とを、フランジや溶接により接続する(図3(c)参照)。このサージタンクモジュールと本設配管の接続後、建築による鉄筋12の組み上げを、天板6の下で、かつ、4本の上部及び下部支柱3及び4の間を通すように行う(図3(d)参照)。最後に、仮設材100ごとコンクリート19で埋めることで、サージタンクモジュールの据付が完了する(図3(e)参照)。
【0028】
これにより、コンクリート19の打設を待たずに、仮設材100の上でサージタンクモジュールの据付作業を行うことができる。即ち、従来は、建築屋が鉄筋を通した後にコンクリートを打設し、十分に乾いて強度が出た後にサージタンクを設置していたが、本実施例では、仮設材100を先に設置した後であれば、その仮設材100の上で作業が行え、鉄筋12を通す作業と並行してコンクリート19の打設が行える。また、コンクリート19を打設して強度が出るまで数週間かかるが、その間にも仮設材100の天板6の上で作業を行うことができるメリットがある。
【0029】
他の方法として、鉄筋をサージタンクに直接接続する方法もあるが、これと比較して、鉄筋配置とタンク配置とを独立した作業に分離することで、並行作業が可能となり、工期の短縮に繋がる。
【0030】
このような本実施例によれば、仮設材の上で、計装ラックなどの本設品をモジュールとして組み込むことにより、仮サポートを分解する手間が省けるのでコストが抑えられ、更には、据付工期の短縮を図ることができる。また、タンクの取付けに必要なボルトをねじ切りした仮設材に通し、更に端部と仮設材とを溶接することにより、床部躯体鉄筋との干渉をなくした上で、タンクの引っ張り強度を上げることができる。更に、支柱の端部には、正方形の鉄鋼製のプレートが溶接されているので、モジュールの荷重を利用して安定化させることができる。
【0031】
尚、本実施例では、サージタンクモジュールを例にして説明したが、他のタンクモジュールに本発明を適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
1…基礎台、2…ボルト穴、3…上部支柱、4…下部支柱、5…プレート、6…天板、7…躯体天井、8…サージタンク、9…ボルト、10…スリーブ、11…配管、12…鉄筋、13…スリーブ穴、14…計装ラック、15…計装配管、16…オーバーフロー配管、17…仮設サポート、18…純水補給水系配管、19…コンクリート、20…本設サポート、100…仮設材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電所の躯体天井に設置されるタンクモジュールであって、
前記タンクモジュールは、原子炉補機冷却水系或いはタービン補機冷却水系内のポンプ吸込圧力を確保するために設置されるタンクと、該タンクが固定されて前記躯体天井に設置される仮設材とから成り、
前記仮設材は、前記タンクが固定される基礎台が設置されている天板と、該天板を支える複数の支柱と、該各支柱の前記天板とは反対側にそれぞれ固定され、前記躯体天井に固定されるプレートとを備えていることを特徴とする原子力発電プラントのタンクモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の原子力発電プラントのタンクモジュールにおいて、
前記支柱は、上部支柱と下部支柱から成り、該上部支柱と下部支柱は、前記タンクの据付時にレベル調整可能なようにねじ切りされて係合されていることを特徴とする原子力発電プラントのタンクモジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の原子力発電プラントのタンクモジュールにおいて、
前記タンクは、前記基礎台に取り外し可能なように固定されていることを特徴とする原子力発電プラントのタンクモジュール。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の原子力発電プラントのタンクモジュールにおいて、
前記タンクは、前記基礎台を介して前記天板に固定されていることを特徴とする原子力発電プラントのタンクモジュール。
【請求項5】
請求項4に記載の原子力発電プラントのタンクモジュールにおいて、
前記基礎台と天板にはねじ切りが施され、該ねじ切り部にボルトが挿入されていることを特徴とする原子力発電プラントのタンクモジュール。
【請求項6】
請求項5に記載の原子力発電プラントのタンクモジュールにおいて、
前記ボルトは、その先端が折り曲げられ、折り曲げられた該ボルトの先端部分が前記天板に溶接固定されていることを特徴とする原子力発電プラントのタンクモジュール。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の原子力発電プラントのタンクモジュールにおいて、
前記天板には、前記タンクと接続される原子力発電所の低階層から伸びる配管を通すスリーブが設置されるスリーブ穴が形成されていることを特徴とする原子力発電プラントのタンクモジュール。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の原子力発電プラントのタンクモジュールにおいて、
前記天板には、前記タンクの他に、計装ラック、純水補給水系配管が少なくとも設置されていることを特徴とする原子力発電プラントのタンクモジュール。
【請求項9】
原子力発電所の躯体天井ができ上がった段階で、該躯体天井上に、請求項1乃至8のいずれかに記載のタンクモジュールをクレーンで搬入し、その後、前記仮設材の天板に設けられたスリーブ穴を通るようにスリーブを設置して該スリーブ内に配管を通し、この配管と前記タンクモジュールを接続した後、鉄筋を複数の支柱間に通して前記仮設材ごとコンクリートで埋め込むことを特徴とする原子力発電プラントのタンクモジュール据付方法。
【請求項10】
請求項9に記載の原子力発電プラントのタンクモジュール据付方法において、
前記躯体天井上に、前記タンクモジュールをクレーンで搬入した後、前記下部支柱を回転させ、前記タンクが水平になるようにレベル調整を行うことを特徴とする原子力発電プラントのタンクモジュール据付方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3(a)】
image rotate

【図3(b)】
image rotate

【図3(c)】
image rotate

【図3(d)】
image rotate

【図3(e)】
image rotate


【公開番号】特開2013−32927(P2013−32927A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168132(P2011−168132)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)