説明

原子力発電プラントの1/2次系冷却水システム及び原子力発電プラント

【課題】1次系建屋の設備機器設置スペースを確保すると共に、定期検査時における2次系設備への冷却水を供給できる原子力発電プラントの1/2次系冷却水システム及び原子力発電プラントを提供する。
【解決手段】原子炉格納容器に収容されている原子炉を含む原子炉冷却系が設置される1次系建屋と、原子炉冷却系と熱交換するタービン系が設置される2次系建屋と、を備え、1次系建屋には、1次系設備の安全系空調用冷却水設備を設置し、2次系建屋には、1次系設備の非安全系空調用冷却水設備を設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電プラントの1次系設備及び2次系設備の冷却水システム及び原子力発電プラントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントは大出力プラントに対応するために設備機器が大型化してきている。さらに通常運転中に保守作業が行えるように、1次系設備の台数を増やしている。
【0003】
特許文献1には、空調設備の冷却水系として予備機を含めた4台の冷凍機を備えた原子力発電所の空調設備が記載されている。これは4台のうちの3台を稼働してピーク負荷を賄え、1台の冷凍機が故障した非常時にも予備機が稼働して信頼性のある冷却水供給を行うことができるものである。
【0004】
特許文献2には、原子力発電所の複数のエリア毎に設けた冷却コイルに共通の冷凍機からの冷却水を分配して各エリアに供給し、給気を冷却する空調方法が記載されている。これは各エリアから合流して冷凍機に流入する冷却水の入り口温度が所定の設定値を超えないように制御し、過負荷時に冷凍機のオーバーロードを防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−82819号公報
【特許文献2】特開2002−6075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6は、1次系における空調用冷却水設備系統の一例を示す構成図である。1次系の安全系空調用冷却水設備のA系統設備は、A室空調ユニット30とA室冷房ユニット32とA安全系空調用冷水ポンプ33と安全系空調用冷水タンク34と蒸発器35と凝縮器36とSWS(Sea Water System:原子炉補機冷却海水設備)37と管路38,39とで構成されている。なお蒸発器35と凝縮器36とは一対で安全系空調用チラーと呼ばれるものである。
【0007】
ここで、1次系の安全系空調用冷却水設備のA系統設備の一連の動作について説明する。A安全系空調用チラーの凝縮器36の冷媒により蒸発器35で冷却された冷却水は、A安全系空調用冷水ポンプ33で送水され管路38を通って各空調機器に分配される。A室空調ユニット30及びA室冷房ユニット32で熱交換されることによって昇温した戻り冷却水は、管路39に合流し、A安全系空調用チラーの蒸発器35に戻り、再度冷却して再循環される。凝縮器36で熱交換されることによって昇温した冷媒は、SWS37の海水により冷却される。A室空調ユニット30及びA室冷房ユニット32の温度は、冷却水の流量により制御する。この温度制御は、管路38,39に設けられたバルブにより冷却水の流量を調節して行うようになっている。また安全系空調用冷水タンク34は冷却水の量を調節するためのものであり、A,B系統設備に共通なものである。
【0008】
上述したA系統設備(破線Aで囲まれた部分)と同様なB系統設備(破線Bで囲まれた部分)とが一対で1次系の安全系空調用冷却水設備の片側を構成している。そして一対のA,B系統設備と同様の構成で、一対のC,D系統設備(破線C,Dで囲まれた部分)が1次系の安全系空調用冷却水設備のもう一方の側を構成している。従って4つのA,B,C,D系統設備により1次系の安全系空調用冷却水設備は構成されていることになる。
【0009】
次に、1次系の非安全(常用)系空調冷却水設備(破線Eで囲まれた部分)は、F冷却ユニット41とG冷却ユニット42とH冷却ユニット43とI冷却ユニット44と空調用冷水ポンプ33と空調用冷水タンク34と蒸発器35と凝縮器36とSWS37と管路45,46,47,48とで構成されている。図6に示すように、上述した4つのA,B,C,D系統設備の安全系空調用チラーで冷却された冷却水は、各安全系空調用冷水ポンプにより管路45,47を通って送水されている。F〜I冷却ユニット41〜44で熱交換されることによって昇温した戻り冷却水は、管路46,48を通ってA〜D安全系空調用チラーに戻り、再度冷却して再循環される。
【0010】
上述したように、1次系における空調用冷却水設備構成は、安全系と非安全(常用)系とが統合されている大規模なものであり、1次系建屋内に全ての空調用冷却水設備が設置されて1次系建屋内で完結したプラントシステムとなっていた。
【0011】
上述した特許文献1の空調用冷却水設備構成では大出力プラントに対応するために設備機器の大型化と設備機器の台数増加とにより、1次系建屋内の設備機器設置スペースが不足するという問題があった。
【0012】
また、特許文献2の構成では定期検査時にポンプが止まってしまうために2次系設備において冷却水を確保することができず、専用の冷却水設備が必要となるという問題があった。
【0013】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、1次系建屋の設備機器設置スペースを確保すると共に、定期検査時における2次系設備への冷却水を供給できる原子力発電プラントの1/2次系冷却水システム及び原子力発電プラントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の原子力発電プラントの1/2次系冷却水システムは、原子炉格納容器に収容されている原子炉を含む原子炉冷却系が設置される1次系建屋と、原子炉冷却系と熱交換するタービン系が設置される2次系建屋と、を備え、1次系建屋には、1次系設備の安全系空調用冷却水設備を設置し、2次系建屋には、1次系設備の非安全系空調用冷却水設備を設置することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、1次系設備のうちで安全系設備と非安全(常用)系設備とを分離することができ、安全系設備は1次系建屋内に設置され、管理クラスの低い非安全系設備を2次系建屋内に設置することが可能となる。これにより、1次系建屋の設備機器設置スペースを確保することができる。
【0016】
本発明の原子力発電プラントの1/2次系冷却水システムは、さらに2次系建屋に設置された非安全系空調用冷却水設備のチラー設備から2次系建屋に設置されている2次系設備へ冷却水を供給することが、好ましい。
【0017】
この構成によれば、非安全系設備の空調用チラー設備を2次系建屋内に設けることにより空調用チラー設備を冷却する冷却水を、同じ2次系建屋内に設置されている2次系設備機器に供給することが可能となる。これにより、定期検査時でも2次系設備機器を稼働させることができる。
【0018】
本発明の原子力発電プラントの1/2次系冷却水システムは、さらに2次系設備へ冷却水を供給するチラー設備は冷却塔方式であることが、好ましい。
【0019】
この構成によれば、非安全系設備の空調用チラー設備を2次系建屋内に設けることにより空調用チラー設備を冷却する冷却水を、同じ2次系建屋内に設置されている2次系設備機器に供給することが可能となる。これにより、定期検査時においても2次系設備機器を稼働させることができる。
【0020】
本発明の原子力発電プラントの1/2次系冷却水システムは、さらに2次系設備へ冷却水を供給するチラー設備は海水冷却方式であることが、好ましい。
【0021】
この構成によれば、空調用チラー設備を2次系建屋に設け、1次系の安全系空調用冷却水設備とは独立させることができる。これにより、定期検査時でも2次系設備機器を稼働させることができる。
【0022】
本発明の原子力発電プラントの1/2次系冷却水システムは、さらに2次系建屋には、1次系設備の安全系空調用冷却水設備とは独立した原子炉補機冷却海水設備を有し、2次系建屋に設置されている2次系設備へ冷却水を供給することが、好ましい。
【0023】
この構成によれば、定期検査時に安全系空調用冷却水設備のSWSが止まった場合でも、空調用チラー設備を2次系建屋に設けることで、空調用チラー設備を1次系の安全系空調用冷却水設備とは独立させることができる。これにより、定期検査時でも2次系設備機器を稼働させることができる。
【0024】
本発明の原子力発電プラントは、上記に記載の原子力発電プラントの1/2次系冷却水システムを備えたことを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、1次系設備のうちで安全系設備と非安全(常用)系設備とを分離することができ、安全系設備は1次系建屋内に設置され、管理クラスの低い非安全系設備を2次系建屋内に設けたことにより、1次系建屋内の設備機器設置スペースを確保することが可能となる。これにより、1次系建屋の設備機器設置スペースを確保することができる。また非安全系設備の空調用チラー設備を2次系建屋内に設けることにより空調用チラー設備を冷却する冷却水を、同じ2次系建屋内に設置されている2次系設備機器に供給することが可能となる。これにより、定期検査時においても2次系設備機器を稼働させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の原子力発電プラントの1/2次系冷却水システム及び原子力発電プラントによれば、1次系設備のうちで安全系設備と非安全(常用)系設備とを分離することができ、1次系建屋の設備機器設置スペースを確保すると共に、定期検査時における2次系設備機器への冷却水を供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本実施例1に係る1/2次系冷却水システムを適用する原子力発電プラントを模式的に表した概略構成図である。
【図2】図2は、本実施例1に係る1次系の安全系空調用冷却水設備系統構成図である。
【図3】図3は、本実施例1に係る1次系の安全系空調用冷却水設備系統構成図である。
【図4】図4は、本実施例1に係る1次系の非安全(常用)系における空調用冷却水設備系統構成図である。
【図5】図5は、本実施例2に係る1次系の非安全(常用)系空調用冷却水設備系統構成図である。
【図6】図6は、従来の1次系における空調用冷却水設備系統の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明にかかる原子力発電プラントの1/2次系冷却水システム及び原子力発電プラントの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0029】
図1は、本発明の実施例1に係る1/2次系冷却水システムを適用する原子力発電プラントを模式的に表した概略構成図である。
【0030】
本実施例1が適用される原子力発電プラント1の原子炉5は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、1次系全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って二次冷却材と熱交換させることにより蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電する加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。なお、本実施例は、このPWRに限らず、これを改良した改良型加圧水型原子炉(APWR:Advanced Pressurized Water Reactor)に適用することができ、また、安全系及び非安全系設備を備えている他の発電プラントにも適用可能である。
【0031】
原子炉5を用いた原子力発電プラント1は、1次系建屋に設置される原子炉5を含む原子炉冷却系3と、2次系建屋に設置される原子炉冷却系3と熱交換するタービン系4とで構成されており、原子炉冷却系3には、原子炉冷却材が流通し、タービン系4には、二次冷却材が流通している。
【0032】
原子炉冷却系3は、原子炉5と、コールドレグ6a及びホットレグ6bを介して原子炉5に接続された蒸気発生器7とを有している。また、ホットレグ6bには、加圧器8が介設され、コールドレグ6aには、原子炉冷却材ポンプ9が介設されている。そして、原子炉5、コールドレグ6a、ホットレグ6b、蒸気発生器7、加圧器8及び原子炉冷却材ポンプ9は、原子炉格納容器10に収容されている。
【0033】
原子炉5は、上記したように加圧水型原子炉であり、その内部は原子炉冷却材で満たされている。そして、原子炉5内は、多数の燃料集合体15を収容すると共に、燃料集合体15の燃料棒内の核燃料の核分裂を制御する多数の制御棒16が、各燃料集合体15に対し挿入可能に設けられている。
【0034】
制御棒16により核分裂反応を制御しながら燃料集合体15の燃料棒内の核燃料を核分裂させると、この核分裂により熱エネルギーが発生する。発生した熱エネルギーは原子炉冷却材を加熱し、加熱された原子炉冷却材は、ホットレグ6bを介して蒸気発生器7へ送られる。一方、コールドレグ6aを介して各蒸気発生器7から送られてきた原子炉冷却材は、原子炉5内に流入して、原子炉5内を冷却する。
【0035】
ホットレグ6bに介設された加圧器8は、高温となった原子炉冷却材を加圧することにより、原子炉冷却材の沸騰を抑制している。また、蒸気発生器7は、高温高圧となった原子炉冷却材を二次冷却材と熱交換させることにより、二次冷却材を蒸発させて蒸気を発生させ、かつ、高温高圧となった原子炉冷却材を冷却している。原子炉冷却材ポンプ9は、原子炉冷却系3において原子炉冷却材を循環させており、原子炉冷却材を蒸気発生器7からコールドレグ6aを介して原子炉5へ送り込むと共に、原子炉冷却材を原子炉5からホットレグ6bを介して蒸気発生器7へ送り込んでいる。
【0036】
原子炉冷却材は、原子炉5と蒸気発生器7との間を循環している。なお、原子炉冷却材は、冷却材及び中性子減速材として用いられる軽水である。
【0037】
タービン系4は、蒸気管21を介して各蒸気発生器7に接続されたタービン22と、タービン22に接続された復水器23と、復水器23と各蒸気発生器7とを接続する給水管26に介設された給水ポンプ24と、を有している。そして、上記のタービン22には、発電機25が接続されている。
【0038】
ここで、原子力発電プラント1のタービン系4における一連の動作について説明する。蒸気管21を介して蒸気発生器7から蒸気がタービン22に流入すると、タービン22は回転する。タービン22が回転すると、タービン22に接続された発電機25は、発電を行う。この後、タービン22から排出した蒸気は復水器23に流入する。復水器23は、その内部に冷却管27が配設されており、冷却管27の一方には冷却水(例えば、海水)を供給するための取水管28が接続され、冷却管27の他方には冷却水を排水するための排水管29が接続されている。そして、復水器23は、タービン22から流入した蒸気を冷却管27により冷却することで、蒸気を液体に戻している。液体となった二次冷却材は、給水ポンプ24により給水管26を介して蒸気発生器7に送られる。蒸気発生器7に送られた二次冷却材は、蒸気発生器7において原子炉冷却材と熱交換を行うことにより再び蒸気となる。
【0039】
次に、図2〜図4を参照しながら、本実施例1の1次系建屋内の1次系設備について説明する。
【0040】
図2及び図3は、本実施例1に係る1次系の安全系空調用冷却水設備系統構成図である。図4は、本実施例1に係る1次系の非安全(常用)系空調用冷却水設備系統構成図である。
【0041】
本実施例1の原子力プラント1は、1次系設備のうちで安全系設備と非安全(常用)系設備とを分離した構成とし、従来通り安全系設備は1次系建屋内に設置され、管理クラスの低い非安全系設備を2次系建屋内に設けたことが特徴である。これにより、1次系建屋内の設備機器設置スペースを確保することが可能となる。また非安全系設備の空調用チラー設備を2次系建屋内に設けることにより空調用チラー設備を冷却する冷却水を、同じ2次系建屋内に設置されている2次系設備機器に供給することが可能となる。本実施例1の空調用チラー設備を冷却する方式は冷却塔方式となっている。なお安全系設備は管理区域内に設置される設備(放射線に被曝するもの)であり、非安全系設備は非管理区域内に設置される設備(放射線に被曝しないもの)のことを示す。また非安全系設備を常用系設備とも記述する。
【0042】
実施例1の1次系の安全系空調用冷却水設備100は、図2に示すように一対のA,B系統設備と図3に示すように一対のC,D系統設備とで構成されている。一対のA,B系統設備のうちA系統設備は、A室空調ユニット50とA室冷房ユニット52とA安全系空調用冷水ポンプ53と安全系空調用冷水タンク54と蒸発器55と凝縮器56とSWS(Sea Water System:原子炉補機冷却海水設備)57と管路58,59とで構成されている。なお蒸発器55及び凝縮器56は一対でA安全系空調用チラーと呼ばれるものである。B系統設備は、B室空調ユニット60とB室冷房ユニット62とB安全系空調用冷水ポンプ63と安全系空調用冷水タンク54と蒸発器65と凝縮器66とSWS(Sea Water System:原子炉補機冷却海水設備)67と管路68,69とで構成されている。なお空調用冷水タンク54は、A,B系統設備に共通なものである。また蒸発器65及び凝縮器66は一対でB安全系空調用チラーと呼ばれるものである。
【0043】
ここで、1次系の安全系空調用冷却水設備100のA系統設備の一連の動作について説明する。A安全系空調用チラーの凝縮器56の冷媒により蒸発器55で冷却された冷却水は、A安全系空調用冷水ポンプ53で送水され管路58を通って各空調機器に分配される。A室空調ユニット50及びA室冷房ユニット52で熱交換されることによって昇温した戻り冷却水は、管路59に合流し、A安全系空調用チラーの蒸発器55に戻り、再度冷却して再循環される。凝縮器56で熱交換されることによって昇温した冷媒は、SWS57の海水により冷却される。A室空調ユニット50及びA室冷房ユニット52の温度は、冷却水の流量により制御する。この温度制御は、管路58,59に設けられたバルブにより冷却水の流量を調節して行うようになっている。また安全系空調用冷水タンク54は冷却水の量を調節するためのものであり、管路59及びB系統の管路69に繋がっている。
【0044】
一方、B安全系空調用チラーの凝縮器66からの冷媒により蒸発器65で冷却された冷却水は、B安全系空調用冷水ポンプ63で送水され管路68を通って各空調機器に分配される。B室空調ユニット60及びB室冷房ユニット62で熱交換されることによって昇温した戻り冷却水は、管路69に合流し、B安全系空調用チラーの蒸発器65に戻り、再度冷却して再循環される。凝縮器66で熱交換されることによって昇温した冷媒は、SWS67の海水により冷却される。B室空調ユニット60及びB室冷房ユニット62の温度は、冷却水の流量により制御する。この温度制御は、管路68,69に設けられたバルブにより冷却水の流量を調節して行うようになっている。また安全系空調用冷水タンク54は冷却水の量を調節するためのものであり、管路59及びB系統の管路69に繋がっている。
【0045】
上述したA,B系統設備と同様な構成、動作をするのが、図3で示したC,D系統設備であるので、同様な部分に符号を付すだけで各部の詳細な説明は省略する。
【0046】
このように、実施例1の1次系の安全系空調用冷却水設備100は、一対のA,B系統設備と一対のC,D系統設備とで構成されることになる。
【0047】
図4に示すように、実施例1の1次系非安全系空調用冷却水設備200は、放射線管理室冷却ユニット201と格納容器冷却ユニット202と冷却ユニット203と冷却コイル204と常用系空調用冷水タンク205と常用系空調用冷水ポンプ206,216と蒸発器207,217と凝縮器208,218とクーリングタワー用ポンプ209,219とクーリングタワー210,220と送水管路230,231,232と戻り管路234,235,236とで構成されている。また1次系非安全系空調用冷却水設備200は、クーリングタワー210,220で冷却された冷却水を2次系設備機器250に送水するための送水管路240と戻り管路241とを備える。なお蒸発器207,217と凝縮器208,218とは、それぞれ一対で常用系空調用チラーと呼ばれるものである。
【0048】
上記の設備のうち、放射線管理室冷却ユニット201と格納容器冷却ユニット202と冷却ユニット203と冷却コイル204と、は1次系建屋内に設置される。常用系空調用冷水タンク205と常用系空調用冷水ポンプ206,216と蒸発器207,217と凝縮器208,218とクーリングタワー用ポンプ209,219とクーリングタワー210,220と、は2次系建屋内に設置される。また実施例1においては、クーリングタワー210,220は、1次系の安全系空調用冷却水設備100とは独立して2次系建屋内に設置されるので、定期検査時でもクーリングタワー210,220で冷却された冷却水を2次系建屋内の2次系設備機器250に供給できるようになっている。なお1次系建屋には原子炉格納容器10に収容されている原子炉5を含む原子炉冷却系3と蒸気発生器7とそれらの関連設備とが設置される。2次系建屋には原子炉冷却系3と熱交換するタービン系4と復水器23と発電機25とそれらの関連設備とが設置される。また従来の原子力発電プラントの場合は、定期検査時に安全系空調用冷却水設備のSWSが止まってしまい冷却水が確保できなかったが、常用系空調用チラー設備を2次系建屋内に設け、1次系の安全系空調用冷却水設備100とは常用系空調用チラー設備を独立させることによって、定期検査時でも2次系設備機器250を稼働させることができる。
【0049】
ここで、1次系の非安全系空調用冷却水設備200の一連の動作について説明する。常用系空調用チラーの凝縮器208,218冷媒により蒸発器207,217で冷却された冷却水は、常用系空調用冷水ポンプ206,216で送水され送水管路230,231を通って送水管路232にて合流し、各空調機器に分配される。冷却ユニット201,202,203及び冷却コイル204で熱交換されることによって昇温した戻り冷却水は、戻り管路234に合流した後、戻り管路235,236とに分配されて、常用系空調用チラーの蒸発器207,217に戻り、再度冷却して再循環される。凝縮器208,218で熱交換されることによって昇温した冷媒は、クーリングタワー210,220で冷却した冷却水により冷却される。冷却ユニット201,202,203及び冷却コイル204の温度は、冷却水の流量により制御する。この温度制御は、送水管路230,231,232及び戻り管路234,235,236に設けられたバルブにより冷却水の流量を調節して行うようになっている。また常用系空調用冷水タンク205は冷却水の量を調節するためのものであり、戻り管路234に繋がっている。このように常用系空調用チラーを2台配置して常用系空調用冷却水を供給することで、どちらか一方の常用系空調用チラーを定期検査などで止めた場合でも各空調機器を稼働させることができる。
【0050】
実施例1によれば、1次系設備のうちで安全系設備と非安全(常用)系設備とを分離した構成とし、安全系設備は1次系建屋内に設置され、管理クラスの低い非安全系設備を2次系建屋内に設けたことにより、1次系建屋内の設備機器設置スペースを確保することが可能となる。
【0051】
また非安全系設備の空調用チラー設備を2次系建屋内に設けることにより空調用チラー設備を冷却する冷却水を、同じ2次系建屋内に設置されている2次系設備機器に供給することが可能となるため、定期検査時においても2次系設備機器を稼働させることができる。
【実施例2】
【0052】
本実施例2に係る1/2次系冷却水システムを適用する原子力発電プラントは、実施例1と同様であるため詳細な説明は省略する。また本実施例2に係る1次系の安全系空調用冷却水設備の構成・動作は、実施例1と同様であるため詳細な説明は省略する。本実施例2の1次系の安全系空調用冷却水設備は、一対のA,B系統設備と一対のC,D系統設備とで構成されていることになる。
【0053】
本実施例2の原子力プラント1は、1次系設備のうちで安全系設備と非安全(常用)系設備とを分離した構成とし、従来通り安全系設備は1次系建屋内に設置され、管理クラスの低い非安全系設備を2次系建屋内に設けたことが特徴である。これにより、1次系建屋内の設備機器設置スペースを確保することが可能となる。また空調用チラー設備を2次系建屋内に設けることにより空調用チラー設備を冷却する冷却水を、同じ2次系建屋内に設置されている2次系設備機器に供給することが可能となる。実施例1とは空調用チラー設備を冷却する方式が海水冷却方式であることが異なる。
【0054】
図5は、本実施例2に係る1次系の非安全(常用)系空調用冷却水設備系統構成図である。
【0055】
図5に示すように、実施例2の1次系非安全系空調用冷却水設備300は、放射線管理室冷却ユニット301と格納容器冷却ユニット302と冷却ユニット303と冷却コイル304と常用系空調用冷水タンク305と常用系空調用冷水ポンプ306,316と蒸発器307,317と凝縮器308,318とSWS310,320と送水管路330,331,332と戻り管路334,335,336とで構成されている。なお蒸発器307,317及び凝縮器308,318は、それぞれ一対で常用系空調用チラーと呼ばれるものである。また1次系非安全系空調用冷却水設備300は、SWS310,320で取水した海水を2次系設備機器350に送水するための送水管路340と戻り管路341とを備える。
【0056】
上記の設備のうち、放射線管理室冷却ユニット301と格納容器冷却ユニット302と冷却ユニット303と冷却コイル304と、は1次系建屋内に設置される。常用系空調用冷水タンク305と常用系空調用冷水ポンプ306,316と蒸発器307,317と凝縮器308,318とSWS310,320と、は2次系建屋内に設置される。また実施例2においては、SWS310,320は、1次系の安全系空調用冷却水設備100とは独立して2次系建屋内に設置されるので、定期検査時でもSWS310,320の冷却水を2次系建屋内の2次系設備機器350に供給できるようになっている。なお1次系建屋には原子炉格納容器10に収容されている原子炉5を含む原子炉冷却系3と蒸気発生器7とそれらの関連設備とが設置される。2次系建屋には原子炉冷却系3と熱交換するタービン系4と復水器23と発電機25とそれらの関連設備とが設置される。また従来の原子力発電プラントの場合は、定期検査時に安全系空調用冷却水設備のSWSが止まってしまい冷却水が確保できなかったが、常用系空調用チラー設備を2次系建屋に設け、1次系の安全系空調用冷却水設備100とは常用系空調用チラー設備を独立させることによって、定期検査時でも2次系設備機器350を稼働させることができる。
【0057】
ここで、1次系の非安全系空調用冷却水設備300の一連の動作について説明する。常用系空調用チラーの凝縮器308,318からの冷媒により蒸発器307,317で冷却された冷却水は、常用系空調用冷水ポンプ306,316で送水され送水管路330,331を通って送水管路332にて合流し、各空調機器に分配される。冷却ユニット301,302,303及び冷却コイル304で熱交換されることによって昇温した戻り冷却水は、戻り管路334に合流した後戻り管路335,336とに分配されて、常用系空調用チラーの蒸発器307,317に戻り、再度冷却して再循環される。凝縮器308,318で熱交換されることによって昇温した冷媒は、SWS310,320により取水された海水により冷却される。冷却ユニット301,302,303及び冷却コイル304の温度は、冷却水の流量により制御する。この温度制御は、送水管路330,331,332及び戻り管路334,335,336に設けられたバルブにより冷却水の流量を調節して行うようになっている。また常用系空調用冷水タンク305は冷却水の量を調節するためのものであり、戻り管路334に繋がっている。このように常用系空調用チラーを2台配置して常用系空調用冷却水を供給することで、どちらか一方の常用系空調用チラーを定期検査で止めた場合でも各空調機器を稼働させることができる。
【0058】
実施例2によれば、1次系設備のうちで安全系設備と非安全(常用)系設備とを分離した構成とし、安全系設備は1次系建屋内に設置され、管理クラスの低い非安全系設備を2次系建屋内に設けたことにより、1次系建屋内の設備機器設置スペースを確保することが可能となる。
【0059】
また非安全系設備の空調用チラー設備を2次系建屋内に設けることにより空調用チラー設備を冷却する冷却水を、同じ2次系建屋内に設置されている2次系設備機器に供給することが可能となるため、定期検査時においても2次系設備機器を稼働させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明にかかる原子力発電プラントの1/2次系冷却水システム及び原子力発電プラントは、1次系建屋の設備機器設置スペースを確保することに有用であり、特に安全系及び非安全系設備を備えている原子力発電プラントで、定期検査時における2次系設備への冷却水を供給する必要がある場合に適している。
【符号の説明】
【0061】
1 原子力発電プラント
3 原子炉冷却系
4 タービン系
5 原子炉
6a コールドレグ
6b ホットレグ
7 蒸気発生器
8 加圧器
9 原子炉冷却材ポンプ
10 原子炉格納容器
15 燃料集合体
16 制御棒
22 タービン
23 復水器
24 給水ポンプ
25 発電機
30 A室空調ユニット
33 A安全系空調用冷水ポンプ
35 蒸発器
36 凝縮器
37 SWS(原子炉補機冷却海水設備)
41 F冷却ユニット
42 G冷却ユニット
43 H冷却ユニット
44 I冷却ユニット
50 A室空調ユニット
53 A安全系空調用冷水ポンプ
55 蒸発器
56 凝縮器
57 SWS(原子炉補機冷却海水設備)
58、59 管路
60、70、80 B〜D室空調ユニット
63、73、83 B〜D安全系空調用冷水ポンプ
65、75、85 蒸発器
66、76、86 凝縮器
67、77、87 SWS(原子炉補機冷却海水設備)
100 安全系空調用冷却水設備
200 非安全系空調用冷却水設備
201 放射線管理室冷却ユニット
202 格納容器冷却ユニット
206、216 常用系空調用冷水ポンプ
207、217 蒸発器
208、218 凝縮器
210、220 クーリングタワー
250、350 2次系設備機器
300 非安全系空調用冷却水設備
301 放射線管理室冷却ユニット
302 格納容器冷却ユニット
306、316 常用系空調用冷水ポンプ
307、317 蒸発器
308、318 凝縮器
310、320 SWS

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉格納容器に収容されている原子炉を含む原子炉冷却系が設置される1次系建屋と、
前記原子炉冷却系と熱交換するタービン系が設置される2次系建屋と、を備え、
前記1次系建屋には、1次系設備の安全系空調用冷却水設備を設置し、
前記2次系建屋には、前記1次系設備の非安全系空調用冷却水設備を設置することを特徴とする原子力発電プラントの1/2次系冷却水システム。
【請求項2】
前記2次系建屋に設置された前記非安全系空調用冷却水設備のチラー設備から前記2次系建屋に設置されている2次系設備へ冷却水を供給することを特徴とする請求項1に記載の原子力発電プラントの1/2次系冷却水システム。
【請求項3】
前記2次系設備へ冷却水を供給する前記チラー設備は冷却塔方式であることを特徴とする請求項2に記載の原子力発電プラントの1/2次系冷却水システム。
【請求項4】
前記2次系設備へ冷却水を供給する前記チラー設備は海水冷却方式であることを特徴とする請求項2に記載の原子力発電プラントの1/2次系冷却水システム。
【請求項5】
前記2次系建屋には、前記1次系設備の安全系空調用冷却水設備とは独立した原子炉補機冷却海水設備を有し、
前記2次系建屋に設置されている2次系設備へ冷却水を供給することを特徴とする請求項1に記載の原子力発電プラントの1/2次系冷却水システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の1/2次系冷却水システムを備えたことを特徴とする原子力発電プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−149967(P2012−149967A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8216(P2011−8216)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)