説明

原子力発電所の構内トレンチの先行工事方法

【課題】本発明は、原子炉建屋の施工が完了した後、トレンチの施工をより早期に行うことができる原子力発電所の構内トレンチの先行工事方法に関する。
【解決手段】複数の原子力発電用の建屋を建設する工程と、トレンチの据付レベルにトレンチをレベル合わせする構台を介して、前記建屋間にトレンチを施行する工程と、トレンチの施行後に地盤と前記トレンチとの間の埋め戻しを行う工程と、を備えたことを特徴とする原子力発電所の構内トレンチの先行工事方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所の構内トレンチの施工を行う工事方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図11乃至図13を参照して、原子力発電所の構成について説明する。図11は、原子力発電所の構成概略斜視図である。図12は、原子力発電所の構成概略側面図である。図11及び図12に示すように、原子力発電所は、岩盤55上に設置される原子炉建屋51及び補助ボイラー建屋58と、埋め戻し部57A上で原子炉建屋51と補助ボイラー建屋58との間に施工されたトレンチ52と、トレンチ52の内部を通って原子炉建屋51と補助ボイラー建屋58との間に連結される配管53及びケーブルトレイ54を含む。図13は、トレンチ52の断面概略図である。トレンチ52の内部は、図13に示すように、配管53及びケーブルトレイ54が内蔵される構造となっている。
【0003】
更に、図14乃至図17を参照して、従来の原子力発電所の建設工事における構内トレンチの工事方法について説明する。図14乃至図17は、従来の原子力発電所の建設工事方法の施工手順を示す概略図である。先ず、図14に示すように、岩盤55が露出するまで地面56が掘削された後、原子炉建屋51と補助ボイラー建屋58とが岩盤55上に建設される。このとき、一般には、未掘削部分63が残る。次に、図15に示すように、原子炉建屋51及び補助ボイラー建屋58の廻りの岩盤55と未掘削部分63との上に、土砂が埋め戻される(この領域を埋め戻し部57Aと呼ぶことにする)。次に、図16に示すように、埋め戻し部57A上にトレンチ52が施工される。次に、図17に示すように、トレンチ52の施工が完了された後、配管53及びケーブルトレイ54の施工が行われる。これにより、原子炉建屋51と補助ボイラー建屋58との間が接続される。また、トレンチ52の施工が完了された後、地面56の高さまで土砂が埋め戻される(この領域を埋め戻し部57Bと呼ぶことにする)。そして、ケーブルトレイ54の施工後にケーブルが布設され、系統試験が行われる。
【0004】
このように、原子炉建屋51と補助ボイラー建屋58の施工が完了された後、原子炉建屋51及び補助ボイラー建屋58の廻りの岩盤55と未掘削部分63との上に、土砂が埋め戻されてから、トレンチ52の施工が行われるため、配管53及びケーブルトレイ54の据付完了が遅くなる。そのため、原子炉建屋51と補助ボイラー建屋58の系統試験が早期に行えず、その結果、原子力発電所の建設工事完了まで長い期間を要するという問題があった。
【0005】
一方、特許文献1には、配線作業を容易に行うための電気機器収納パッケージモジュールが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−150433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、原子炉建屋の施工が完了した後、トレンチの施工をより早期に行うことができる原子力発電所の構内トレンチの先行工事方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数の原子力発電用の建屋を建設する工程と、トレンチの据付レベルにトレンチをレベル合わせする構台を介して、前記建屋間にトレンチを施行する工程と、トレンチの施行後に地盤と前記トレンチとの間の埋め戻しを行う工程と、を備えたことを特徴とする原子力発電所の構内トレンチの先行工事方法である。
【0009】
本発明によれば、トレンチの据付レベルまで土砂が埋め戻されるのを待たずにトレンチの施工を行えることから、トレンチ内の配管及びケーブルトレイ等の据付を早期に行うことができる。そのため、建屋間の系統試験が早期に行われ、その結果、原子力発電所の建設工事完了までの期間を短縮することができる。
【0010】
好ましくは、前記構台は、前記トレンチに事前に組み付けられ、その後に前記トレンチの施工が行われる。この場合、建屋の建設完了前に構台の組み付けを行うことができるため、トレンチの施工をより早期に行うことができる。更に言及すれば、原子力発電所の建設工事完了までの期間をより短縮することができる。
【0011】
一方、前記構台は、地盤に対して据え付けされ、その後に前記トレンチの施工が行われるのが好ましい場合もある。例えば、トレンチが据付される部分の地盤の起伏が激しい場合や、ヤードエリア内で構台をトレンチに予め組み付けることが困難な場合には、そのような態様が好ましい。
【0012】
好ましくは、前記トレンチは、少なくとも配管またはケーブルが予め一体化されたトレンチモジュールとして構成されている。この場合、トレンチ構内の配管及びケーブルトレイ等の据付をより早期に行うことができる。その結果、原子力発電所の建設工事完了までの期間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トレンチの据付レベルまで土砂が埋め戻されたのを待たずにトレンチの施工を行えることから、トレンチ構内の配管及びケーブルトレイ等の据付を早期に行うことができる。そのため、建屋間の系統試験が早期に行われ、その結果、原子力発電所の建設工事完了までの期間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の原子力発電所の構内トレンチの先行工事方法の第1の実施の形態における施工手順1を示す概略図である。
【図2】前記第1の実施の形態における施工手順2を示す概略図である。
【図3】前記第1の実施の形態における施工手順3を示す概略図である。
【図4】前記第1の実施の形態における施工手順4を示す概略図である。
【図5】前記第1の実施の形態における施工手順5を示す概略図である。
【図6】前記第1の実施の形態による工期と従来の工事方法による工期とを比較して示す図である。
【図7】本発明の原子力発電所の構内トレンチの先行工事方法の第2の実施の形態における施工手順1を示す概略図である。
【図8】前記第2の実施の形態における施工手順2を示す概略図である。
【図9】前記第2の実施の形態における施工手順3を示す概略図である。
【図10】前記第2の実施の形態における施工手順4を示す概略図である。
【図11】原子力発電所の構成概略斜視図である。
【図12】原子力発電所の構成概略側面図である。
【図13】トレンチの断面概略図である。
【図14】従来の原子力発電所の建設工事方法の施工手順1を示す概略図である。
【図15】従来の原子力発電所の建設工事方法の施工手順2を示す概略図である。
【図16】従来の原子力発電所の建設工事方法の施工手順3を示す概略図である。
【図17】従来の原子力発電所の建設工事方法の施工手順4を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。
【0016】
図1乃至図5は、本発明の原子力発電所の構内トレンチの先行工事方法の第1の実施の形態における施工手順1−5を示す概略図である。図6は、前記第1の実施の形態による工期と従来の工事方法による工期とを比較して示す図である。
【0017】
先ず、図1に示すように、岩盤5が露出するまで地面6が掘削された後、原子炉建屋1と補助ボイラー建屋8とが岩盤5上に建設される。
【0018】
次に、トレンチ2の据付レベルにトレンチ2をレベル合わせするために、未掘削部分13の形状に合わせて据付用構台10が作成される。そして、据付用構台10は、トレンチ2に組み付けられる。据付用構台10を組み付けられたトレンチ2は、配管3及びケーブルトレイ4を内蔵して、一体化されたトレンチモジュール11として構成される。ここで、図6から分かる通り、原子炉建屋1と補助ボイラー建屋8との建設完了前に構台の組み付けを行うことが可能である。
【0019】
次に、図2及び図3に示すように、トレンチモジュール11は、クレーン12を利用して、岩盤5上及び未掘削部分13上に据付けされる。
【0020】
次に、図4に示すように、トレンチモジュール11の施工が完了された後、原子炉建屋1と補助ボイラー建屋8との間を連結する配管3及びケーブルトレイ4の未接続部分が接続される。これにより、原子炉建屋1と補助ボイラー建屋8との間が接続される。ここで、一体化されたトレンチモジュール11を使用することにより、配管及びケーブルトレイ等の据付をより早期に行うことができる。
【0021】
一方、図5に示すように、原子炉建屋1と補助ボイラー建屋8の施工が完了された時点から、地面6の高さまで土砂の埋め戻しが開始される(埋め戻し部7A、7B)。そして、ケーブルトレイ4の施工後にケーブルが布設され、系統試験が行われる。
【0022】
図6からも分かる通り、本実施の形態によれば、トレンチの据付レベルまで土砂が埋め戻されるのを待たずにトレンチの施工が行われることから、トレンチ内の配管及びケーブルトレイ等の据付を早期に行うことができる。更に、配管3及びケーブルトレイ4等の据付と並行して、土砂の埋め戻しを行うことも可能である。そのため、建屋間の系統試験が早期に行われ、その結果、原子力発電所の建設工事完了までの期間を短縮することができる。
【0023】
次に、図面を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0024】
本実施の形態は、トレンチが据付される部分の地盤の起伏が激しい場合や、ヤードエリア内で構台をトレンチに予め組み付けることが困難な場合などに有効である。
【0025】
図7乃至図10は、本発明の原子力発電所の構内トレンチの先行工事方法の第2の実施の形態における施工手順1−4を示す概略図である。
【0026】
先ず、図7に示すように、岩盤5が露出するまで地面6が掘削された後、原子炉建屋1と補助ボイラー建屋8とが岩盤5上に建設される。
【0027】
次に、図8に示すように、トレンチ2の据付レベルにトレンチ2をレベル合わせするために、構台14が、未掘削部分13の形状に合わせて岩盤5及び未掘削部分13上に据付される。トレンチ2は、配管3及びケーブルトレイ4を内蔵して、一体化された第二トレンチモジュール15として構成される。
【0028】
次に、図9及び図10に示すように、第二トレンチモジュール15は、クレーン12を利用して岩盤5上及び未掘削部分13上に据付けられる。
【0029】
次に、第二トレンチモジュール15の施工が完了された後、原子炉建屋1と補助ボイラー建屋8との間を連結する配管3及びケーブルトレイ4の未接続部分が接続される。これにより、原子炉建屋1と補助ボイラー建屋8との間が接続される。ここで、一体化された第二トレンチモジュール15を使用することにより、配管及びケーブルトレイ等の据付をより早期に行うことができる。
【0030】
一方、構台14の据付が完了された時点から、地面6の高さまで土砂の埋め戻しが開始される(埋め戻し部7A、7B)。そして、ケーブルトレイ4の施工後にケーブルが布設され、系統試験が行われる。
【0031】
本実施の形態によれば、トレンチが据付される部分の地盤の起伏が激しい場合や、ヤードエリア内で構台をトレンチに予め組み付けることが困難な場合であっても、トレンチの据付レベルまで土砂が埋め戻されるのを待たずにトレンチの施工を行うことができる。これにより、トレンチ内の配管及びケーブルトレイ等の据付を早期に行うことができる。更に、配管3及びケーブルトレイ4等の据付と並行して、土砂の埋め戻しを行うことも可能である。そのため、建屋間の系統試験が早期に行われ、その結果、原子力発電所の建設工事完了までの期間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 原子炉建屋
2 トレンチ
3 配管
4 ケーブルトレイ
5 岩盤
6 地面
7A、7B 埋め戻し部
8 補助ボイラー建屋
9 木
10 据付用構台
11 トレンチモジュール
12 クレーン
13 未掘削部分
14 構台
15 第二トレンチモジュール
51 原子炉建屋
52 トレンチ
53 配管
54 ケーブルトレイ
55 岩盤
56 地面
57A、57B 埋め戻し部
58 補助ボイラー建屋
63 未掘削部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の原子力発電用の建屋を建設する工程と、
トレンチの据付レベルにトレンチをレベル合わせする構台を介して、前記建屋間にトレンチを施行する工程と、
トレンチの施行後に地盤と前記トレンチとの間の埋め戻しを行う工程と、
を備えたことを特徴とする原子力発電所の構内トレンチの先行工事方法。
【請求項2】
前記構台は、前記トレンチに事前に組み付けられ、その後に前記トレンチの施工が行われる
ことを特徴とする請求項1に記載の原子力発電所の構内トレンチの先行工事方法。
【請求項3】
前記構台は、地盤に対して据え付けされ、その後に前記トレンチの施工が行われる
ことを特徴とする請求項1に記載の原子力発電所の構内トレンチの先行工事方法。
【請求項4】
前記トレンチは、少なくとも配管またはケーブルが予め一体化されたトレンチモジュールとして構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の原子力発電所の構内トレンチの先行工事方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−2846(P2013−2846A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131516(P2011−131516)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)