説明

原子力発電所の水位温度検出装置

【課題】使用済み燃料貯蔵プールの水位が所定の基準水位より下方であっても、この水位及び水温を確実に検出できる原子力発電所の水位温度検出装置を提供する。
【解決手段】原子力発電所の水位温度検出装置10は、銅−コンスタンタンのシース熱電対22と、このシース熱電対22の測温接点25の周辺温度を可変する熱源部24と、このシース熱電対22及び熱源部24を収容する収容管21と、を備える検出部20が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済燃料を冷却しながら放射線が弱まるまで貯蔵する使用済み燃料貯蔵プールに用いることができる原子力発電所の水位温度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済み燃料貯蔵プールでは、水による放射線の遮へい効果を確保するため、所定の基準水位、例えば使用済み燃料集合体の長さの2倍強程度の水位よりも低下しないように監視運用している。
従来における使用済み燃料貯蔵プールの水位は、プール上端部にフロート式レベルスイッチを設置して計測していた。また、このフロート式レベルスイッチとは別個に設置された温度計により、プール水の温度計測をしていた。
【0003】
使用済み燃料貯蔵プールは、その上部に燃料交換用のクレーンが配置され、上面全体を移動するために、水位計及び温度計の設置スペースが非常に限られている。また、プール水の漏えい防止の観点から、プール壁面部に貫通孔を設けることができず、水位計として一般的に採用される差圧式水位計測方式を採用することができない。さらに燃料貯蔵プール内に異物が落下すると取り出しが困難であるため、プール内への異物混入防止対策も考慮しなければならない。
【0004】
このような事情の下、温度計(アルメル−クロメル熱電対)の測温部の近傍にヒータを配置し、このヒータを発熱させて温度計測することにより、水位検出を実施することが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−153681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、使用済み燃料貯蔵プールにおいて冷却機能が長期間停止したり、給水ができなくなると、使用済み燃料の放熱により水位が低下し、放射線の遮へい効果が低下して放射線環境が悪化する。そこで、水位レベルが所定の基準水位より下がった場合は、この水位レベルを正確に把握して放射線環境の安全性を評価することが求められている。
【0007】
しかし、現行のフロート式レベルスイッチを多段化して検知可能な水位レベルを拡張することは、設置エリア確保の観点から困難である。
また、水位レベルが下がると温度100℃、湿度100%状態となり、さらに放射線環境も悪化する為、電子計器を配置して水位レベルを検知することは、耐環境性の観点から困難である。
【0008】
また、特許文献1の方法に基づいて、水位レベルの検出範囲を拡張するためには、熱電対を長く設置する必要がある。この場合、熱電対は、熱起電力の大きいことが求められる他に、素線自身の力学的強度も求められる。しかし現状において、この二つの要求を同時に満足する熱電対の素線はみあたらない。
【0009】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、使用済み燃料貯蔵プールの水位が所定の基準水位より下方であっても、この水位及び水温を確実に検出できる原子力発電所の水位温度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
原子力発電所の水位温度検出装置において、銅−コンスタンタンのシース熱電対と、前記シース熱電対の測温接点の周辺温度を可変する熱源部と、前記シース熱電対及び前記熱源部を収容する収容管と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、使用済み燃料貯蔵プールの水位が所定の基準水位より下方であっても、この水位及び水温を確実に検出できる原子力発電所の水位温度検出装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】使用済み燃料貯蔵プールの概略図。
【図2】(A)本発明の実施形態を示す原子力発電所の水位温度検出装置の部分縦断面図、(B)その水平断面図。
【図3】(A)検出部の縦断面図、(B)その水平断面図。
【図4】(A)検出部の変形例の縦断面図、(B)その水平断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように使用済み燃料貯蔵プール1(以下「燃料プール1」という)には、複数の使用済み燃料集合体3を収納するラック2が配置されている。さらに、燃料プール1には、使用済み燃料集合体3の崩壊熱により昇温するプール水を冷却する循環冷却器(図示略)が配置されている。
【0014】
そして、例えば、使用済み燃料集合体3の長さa=約4.5m、ラック2の高さb=約5mの場合、深さd=約12m程度の燃料プール1が必要となり、基準水位である水深c=約11mとなるようにプール水の水位が維持されている。
これにより、使用済み燃料集合体3から放出される高レベルの放射線は、プール水に遮られ、燃料プール1から外部漏洩することが抑制される。
【0015】
水位温度検出装置10は、その先端が少なくとも所定の基準水位より下方になるように設置される。本実施形態においては、その先端がラック2の上面より下側に位置するように燃料プール1に固定されている。これにより、プール水の水位レベルが所定の基準水位より下方になっても、その水位及び温度の検知が可能になっている。
【0016】
図2に示すように水位温度検出装置10は、銅−コンスタンタンのシース熱電対22と、このシース熱電対22の測温接点25の周辺温度を可変する熱源部24と、このシース熱電対22及び熱源部24を収容する収容管21と、を備える検出部20が配置されている。
【0017】
このように検出部20が構成されることにより、シース熱電対22によりプール水の温度を計測する。さらに、熱源部24により測温接点25の周辺に温熱又は冷熱を投入し、そのときのシース熱電対22の検知温度の変化を導くことで、その周辺が気体であるか水であるかを判別する。
この判別法は、気体及び水の熱伝導率が異なることに起因して、熱源部24から投入された熱による周辺温度の変化に違いが生じることを原理としている。
【0018】
図3に示すように、シース熱電対22は、銅−コンスタンタン熱電対の素線23を、先端が閉じられているシース管に収容したものである。そして、この素線23とシース管の間には、絶縁材として酸化マグネシウムが充填されている。
測温接点25において、銅の素線とコンスタンタンの素線とが溶接されている。そして、これら素線23の反対端はプール水の外に導かれ、この反対端で検出される熱起電力に基づいて測温接点25の周辺温度が計測される。
【0019】
このために、燃料プール1の深い位置におけるプール水の水位を検出するためには、熱電対の素線23を長い状態で施設する必要がある。しかし、この場合、熱電対の素線23に大きな負荷がかかるために、素線23そのものに優れた機械的特性が求められる。さらに、熱電対の素線23が長くなる程に、検出される熱起電力のノイズも大きくなるために、S/N比を稼ぐために熱起電力の大きな熱電対を採用する必要がある。
【0020】
ところで、銅−コンスタンタン熱電対の素線23は、一般的に使用されているクロメルアルメル熱電対と比較して、大きな熱起電力が得られ、低温測定に適する点において優れるが、機械的特性において劣る。そこで、銅−コンスタンタンのシース熱電対22を採用して、機械的特性を担保することとした。
【0021】
この銅−コンスタンタンのシース熱電対22は、引張加工前の銅−コンスタンタン熱電対の素線を、引張加工前のシース管に挿入した状態で、両者を同時に引張加工することにより製造される。シース管に収納されているため、銅−コンスタンタン熱電対の素線23に過剰な負荷が付与されることのない、長尺のシース熱電対22を作成することができる。
【0022】
収容管21は、内部にシース熱電対22及び熱源部24を収容し、さらに熱伝導度の高い酸化マグネシウムで充填され、外側はプール水や大気に接する。シース熱電対22は、この収容管21及び酸化マグネシウムを介してプール水や大気の温度を計測し、熱源部24から投入された熱(温熱,冷熱)は、この酸化マグネシウム及び収容管21を通過してプール水や大気に放出される。
【0023】
熱源部24は、図3に示される検出部20Aにおいて、電気抵抗により加熱するヒータ線24Aで構成される。
ヒータ線24Aは、液面レベルの検出を実行する時点において、図示略の端部から所定電力を供給し、測温接点25の周辺に温熱を投入する。シース熱電対22は、このヒータ線への電力供給により温度上昇を検出する。そして、この温度上昇の変化量に基づいて、測温接点25の位置がプール水面下か大気中であるかを判別する。
【0024】
また変形例として熱源部24は、図4に示される検出部20Bにおいて、流動冷媒により冷却する冷却ライン24Bで構成される。
冷却ライン24Bは、液面レベルの検出を実行する時点において、図示略の端部の一方から流動冷媒を供給し、測温接点25の周辺に冷熱を投入する。シース熱電対22は、この冷媒供給により温度下降を検出する。そして、この温度下降の変化量に基づいて、測温接点25の位置がプール水面下か大気中であるかを判別する。
この変形例によれば、プール水を加熱することがないために、液面レベルの検出を実行する度にプール水の温度を上昇させることがない。
【0025】
図2(A)に示すように、測温接点25の高さレベルの異なる複数の検出部20が、支持部材13により保護管12の内部に支持されている。これにより、プール水の液面レベルの変化を監視することができる。
図2(B)に示すように、保護管12の内部には、内筒15が配置され、この保護管12の内側と内筒15の外側との間に検出部20が同心円状に配列している。
図2(A)に示す実施形態においては、検出部20の下端部を同一高さレベルに揃えているが、夫々の検出部20の高さレベルを例えば測定接点25の下方位置としても良い。
なお、検出部20は、図示されるように複数配列される場合に限定されることはなく、単独で使用される場合も含まれる。
【0026】
この保護管12は、下部先端が開口し、その側面には、それぞれの測温接点25の高さ位置において内側と外側を連通する開口11(図1参照)が設けられている。さらに、支持部材13には、上側の部屋及び下側の部屋を連通する孔部14が設けられている。
これにより、プール水の全体水位の変化に追従して、保護管12の内部の水位レベルを変化させることができる。このように、開口11及び孔部14は、対向する二つ支持部材13と保護管12の内壁とにより形成される部屋の内部に、プール水が滞留しないように作用する。
【0027】
支持部材13は、保護管12の内側水平断面に一致する形状を有している。そして、支持部材13は、検出部20を貫通させる複数の孔と、プール水を通過させる複数の孔部14とが設けられている。
そして、支持部材13は、保護管12の長さ方向に一定間隔で配置され、対向する二つ支持部材13に挟まれる位置に測温接点25が存在する。
【0028】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の原子力発電所の温度検出装置によれば、使用済み燃料貯蔵プールの水位が所定の基準水位より下方になっても、この水位及び水温を正確に検出ることが可能となる。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0030】
1…使用済み燃料貯蔵プール、10…水位温度検出装置、11…開口、12…保護管、13…支持部材、14…孔部、15…内筒、2…ラック、20(20A,20B)…検出部、21…収容管、22…シース熱電対、23…素線、24…熱源部、24A…ヒータ線、24B…冷却ライン、25…測温接点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅−コンスタンタンのシース熱電対と、
前記シース熱電対の測温接点の周辺温度を可変する熱源部と、
前記シース熱電対及び前記熱源部を収容する収容管と、を備えることを特徴とする原子力発電所の水位温度検出装置。
【請求項2】
前記熱源部は、電気抵抗による加熱又は流動冷媒による冷却によることを特徴とする請求項1に記載の原子力発電所の水位温度検出装置。
【請求項3】
前記測温接点の高さレベルの異なる複数の前記収容管が、支持部材により保護管の内部に支持されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の原子力発電所の水位温度検出装置。
【請求項4】
前記保護管の側面には、それぞれの前記測温接点の高さ位置において内側と外側を連通する複数の開口が設けられることを特徴とする請求項3に記載の原子力発電所の水位温度検出装置。
【請求項5】
前記支持部材には、上側の部屋及び下側の部屋を連通する孔部が設けられていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の原子力発電所の水位温度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−7721(P2013−7721A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142119(P2011−142119)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000183945)助川電気工業株式会社 (79)
【Fターム(参考)】