説明

原子力設備の廃水処理装置及び廃水処理方法

【課題】原子炉建屋からの廃水から放射性ヨウ素イオン及び放射性ヨウ素化合物(ヨウ素酸イオン)を、還元剤の添加無しに除去し、周辺環境への汚染拡散を回避すると共に、廃水処理装置の健全性を両立することができる原子力設備の廃水処理装置及び廃水処理方法を提供する。
【解決手段】原子力設備からの放射性ヨウ素酸イオンを含む廃水から放射性ヨウ素酸イオンを除去する原子力設備の廃水処理装置1であって、水槽2と、前記水槽2内の底部に充填配置されたヨウ素酸イオン捕捉材3と、前記廃水を前記ヨウ素酸イオン捕捉材3に導入する導入手段4と、前記水槽2の側部に設けられ、前記ヨウ素酸イオン捕捉材3を通過した後の廃水を排出する排出口6とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力設備の廃水処理装置及び廃水処理方法に係り、更に詳しくは、原子力発電設備、核燃料再処理工場等の原子力設備の廃水処理装置及び廃水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子力発電設備等の各種原子力設備においては、タービン駆動用の蒸気を発生させるための核燃料を含む炉心を原子炉圧力容器内に備えている。原子炉圧力容器は格納容器に包囲され、さらに格納容器は原子炉建屋に収容されている。
【0003】
原子力設備において、原子炉格納容器や圧力容器から排出される廃水には、放射性ヨウ素イオン及び放射性ヨウ素化合物(ヨウ素酸イオン)が含まれ得るため、そのまま原子力設備外に排出することはできない。原子力設備外に廃水を排出するには、廃水の放射性核種を規制値以下まで除去する必要がある。
【0004】
このため、例えば、放射性ヨウ素化合物を含有する廃水を20℃以上80℃以下に保ち、その廃水100重量部に対して還元剤0.1〜3重量部と適量の硝酸銀とを添加し、0.5時間以上72時間以内の間、混合攪拌して沈殿を生成させる放射性ヨウ素化合物の沈殿分離方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−126995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1の放射性ヨウ素化合物の沈殿分離方法は、廃水を反応容器に入れ、還元剤(例えば亜硫酸ナトリウム:NaSO)と硝酸銀(AgNO)とを加える。還元剤を添加することにより、従来の凝集沈殿法では沈殿し難かったヨウ素酸イオン(IO)はヨウ素イオン(I)に還元され、これが硝酸銀と反応してヨウ化銀(AgI)が生成され沈殿する。この結果、従来技術では難しかったヨウ素酸類の沈殿が可能となり、放射性ヨウ素の環境への放出量を大幅に低減できる効果がある。
【0007】
しかしながら、この放射性ヨウ素化合物の沈殿分離方法には、以下のような課題がある。
(1)廃水中に還元剤を添加するためには、還元剤添加装置を設ける必要があると共に、廃水中のヨウ素酸イオンの濃度を例えば分析して見積もった後、そのヨウ素酸イオンの濃度に応じた還元剤をその都度供給する必要がある。したがって、廃水処理を連続して実行することはできず、処理時間がかかるという問題がある。
(2)同様に、廃水中に添加する硝酸銀の量も、廃水中の放射性ヨウ素分子のモル濃度に対して定めているので、分析して見積もる必要があるので、(1)と同様な問題がある。
(3)還元剤である亜硫酸ナトリウムが廃水中に残留した場合、廃水処理装置を構成する金属反応管などの腐食の発生が懸念され、廃水処理装置の健全性が損なわれる虞がある。
【0008】
本発明は、上述の事柄に基づいてなされたもので、その目的は、原子炉建屋から排出される廃水中の放射性ヨウ素イオン及び放射性ヨウ素化合物(ヨウ素酸イオン)等を、還元剤の添加無しに除去し、周辺環境への汚染拡散を回避すると共に、廃水処理装置の健全性を両立することができる原子力設備の廃水処理装置及び廃水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、原子力設備からの放射性ヨウ素酸イオンを含む廃水から放射性ヨウ素酸イオンを除去する原子力設備の廃水処理装置であって、水槽と、前記水槽内の底部に充填配置されたヨウ素酸イオン捕捉材と、前記廃水を前記ヨウ素酸イオン捕捉材に導入する導入手段と、前記水槽の側部に設けられ、前記ヨウ素酸イオン捕捉材を通過した後の廃水を排出する排出口とを備えたものとする。
【0010】
また、第2の発明は、原子力設備からの放射性ヨウ素イオンと放射性ヨウ素酸イオンとを含む廃水から放射性ヨウ素イオンと放射性ヨウ素酸イオンとを除去する原子力設備の廃水処理装置であって、第1の水槽と、前記第1の水槽内の底部に充填配置されたヨウ素イオン捕捉材と、前記廃水を前記ヨウ素イオン捕捉材に導入する第1の導入手段と、前記第1の水槽の側部に設けられ、前記ヨウ素イオン捕捉材を通過した後の廃水を排出する第1の排出口とを有する第1の廃水処理装置と、第2の水槽と、前記第2の水槽内の底部に充填配置されたヨウ素酸イオン捕捉材と、前記第1の処理装置の前記第1の排出口から排出された廃水を前記ヨウ素酸イオン捕捉材に導入する第2の導入手段と、前記第2の水槽の側部に設けられ、前記ヨウ素酸イオン捕捉材を通過した後の廃水を排出する第2の排出口とを有する第2の廃水処理装置とを備えたものとする。
【0011】
更に、第3の発明は、原子力設備からの放射性ヨウ素イオンと放射性ヨウ素酸イオンとを含む廃水から放射性ヨウ素イオンと放射性ヨウ素酸イオンとを除去する原子力設備の廃水処理装置であって、水槽と、前記水槽内の底部に充填配置されたヨウ素イオン及びヨウ素酸イオン捕捉材と、前記廃水を前記ヨウ素イオン及びヨウ素酸イオン捕捉材に導入する導入手段と、前記水槽の側部に設けられ、前記ヨウ素イオン及びヨウ素酸イオン捕捉材を通過した後の廃水を排出する排出口とを備えたものとする。
【0012】
また、第4の発明は、第1又は第2の発明において、前記ヨウ素酸イオン捕捉材は、貴金属であるPd,Pt,Rhの内少なくとも一つの貴金属を含む多孔質無機酸化物であることを特徴とする。
【0013】
更に、第5の発明は、第2の発明において、前記ヨウ素イオン捕捉材は、Agを含む多孔質無機酸化物であることを特徴とする。
【0014】
また、第6の発明は、第3の発明において、前記ヨウ素イオン及びヨウ素酸イオン捕捉材は、貴金属であるPd,Pt,Rhの内少なくとも一つの貴金属とAgとを含む多孔質無機酸化物であることを特徴とする。
【0015】
更に、第7の発明は、第3の発明において、前記ヨウ素イオン及びヨウ素酸イオン捕捉材は、貴金属であるPd,Pt,Rhの内少なくとも一つの貴金属を含む多孔質無機酸化物と、Agを含む多孔質無機酸化物とを接合したものであることを特徴とする。
【0016】
また、第8の発明は、原子力設備からの放射性ヨウ素酸イオンを含む廃水から放射性ヨウ素酸イオンを除去する原子力設備の廃水処理方法であって、廃水処理装置を構成する水槽内に設けた導入手段によって、前記廃水を水槽内に導入し、前記導入手段によって水槽内に導入された前記廃水を、前記水槽の底部に充填配置したヨウ素酸イオン捕捉材に通過させ、前記ヨウ素酸イオン捕捉材を通過した処理後の廃水を前記水槽の側部から前記水槽外に排出するものとする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、廃水処理装置にヨウ素酸イオン捕捉材を備えたので、還元剤の添加無しに廃水から放射性ヨウ素イオン及び放射性ヨウ素化合物(ヨウ素酸イオン)を除去し、周辺環境への汚染拡散を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の本発明の原子力設備の廃水処理装置及び廃水処理方法の第1の実施の形態を示す断面図である。
【図2】本発明の原子力設備の廃水処理装置及び廃水処理方法の第2の実施の形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の原子力設備の廃水処理装置及び廃水処理方法の実施の形態を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は本発明の原子力設備の廃水処理装置及び廃水処理方法の第1の実施の形態を示す断面図である。
【0021】
図1において、廃水処理装置1は、円筒状の水槽2と、水槽2の底部に充填配設された放射性物質捕捉材3と、水槽2の中心部の放射性物質捕捉材3の中にその先端部(下流側)が埋設するように配置された中空円筒状の隔壁4と、放射性物質捕捉材3の上部に配設され、隔壁4の外周部にその内周面が接合するリング状の邪魔板5と、水槽2から廃水を排出する排出口6とを備えている。邪魔板5の外周面と水槽2の内周面との間には隙間が設けられている。また、側壁4の末端部(上流側)には、例えば、図示しない廃水タンクから廃水を供給する配管が設けられている。
【0022】
隔壁4は、導入手段として廃水の流れを放射性物質捕捉材3に導く役割を果たすものである。隔壁4の内周通路を介して廃水が供給され、廃水はヨウ素イオンまたは/及びヨウ素酸イオンを捕捉する放射性物質捕捉材3を通って、放射性物質捕捉材3及び邪魔板5の上部に滞留する。滞留した廃水の水位が排出口6の高さ以上になれば、廃水は排出口6から排出される。このとき、供給された廃水は、隔壁4によって水槽2の底部近傍を通り、さらに邪魔板5によって水槽2の内壁近くを通過するので、水槽2に設けられたヨウ素イオンまたは/及びヨウ素酸イオンを捕捉する放射性物質捕捉材3を廃水が通過する距離が確保され、放射性物質捕捉材3の利用効率をより向上させることができる。
【0023】
ヨウ素イオンを捕捉する放射性物質捕捉材3としてヨウ素イオン捕捉材3Aは、Agを含む多孔質無機酸化物を用いる。また、ヨウ素酸イオンを捕捉する放射性物質捕捉材3としてヨウ素酸イオン捕捉材3Bは、貴金属(Pd,Pt,Rh)の内少なくとも一つの選択された貴金属を含む多孔質無機酸化物を用いる。更に、ヨウ素イオンとヨウ素酸イオンを同時に捕捉する放射性物質捕捉材3としてヨウ素イオン及びヨウ素酸イオン捕捉材3Cは、貴金属(Pd,Pt,Rh)の内少なくとも一つの選択された貴金属と、Agとを含む多孔質無機酸化物を用いる。
【0024】
なお、ヨウ素イオンとヨウ素酸イオンを同時に捕捉する放射性物質捕捉材3としては、ヨウ素イオン捕捉材3Aとヨウ素酸イオン捕捉材3Bの混合物を用いてもよい。
<実験例>
上記廃水処理装置1の放射性物質捕捉材3について、以下の試験を行った。
本試験の形態においては、Pd又はAgの少なくとも一方を含む多孔質無機酸化物を用いている。
Ag又はPdを含む放射性物質捕捉材3としては、ゼオライト、アルミナ、シリカ、チタニアなどの無機酸化物を担体として、Ag又はPdをイオン交換法、浸漬法等で含有させたものを用いた。具体的には、ヨウ素イオン捕捉材3Aとしてゼオライトを担体としてAgを含有させたもの(以下、Ag/ゼオライトという)、ヨウ素酸イオン捕捉材3Bとしてアルミナを担体としてPdを含有させたもの(以下、Pd/アルミナという)、及びヨウ素イオン及びヨウ素酸イオン捕捉材3Cとしてアルミナを担体としてPdとAgとを含有させたもの(以下、Pd-Ag/アルミナという)である。
【0025】
Pd/アルミナは、直径5mm程度のγ-アルミナ粒子にPd溶液を含浸法で担持させたものである。Pd溶液としては、硝酸Pd溶液、塩化Pd溶液などがある。本実施の形態ではアルミナ100gに対して金属換算でPdを2g担持させた。
【0026】
Pd-Ag/アルミナは、アルミナにAg溶液を用いた含浸法で担持させて得たAg/アルミナに、さらにPd溶液を用いた含浸法で担持させて得た。アルミナ100gに対して金属換算でPdを2g、Agを20g含有させた。
【0027】
Ag/ゼオライトは、市販のAg/ゼオライトを用いた。
【0028】
Pd/アルミナまたはAg/ゼオライトまたはPd-Ag/アルミナのヨウ素イオン(I)およびヨウ素酸イオン(IO)の捕捉性能を調べる方法を以下に記す。
【0029】
まず、模擬海水として、精製水:96.6wt%、NaCl:2.65wt%、MgCl:0.33wt%、MgSO:0.21wt%、CaSO:0.14wt%、KCl:0.07wt%を混合した溶液を用いる。
【0030】
次に、模擬海水20ml中にKIをI換算で1.2mg(0.06mg/ml)、KIOをIO換算で0.53mg(0.0265mg/ml)となるように添加したものを模擬廃水として作成した。そして、この模擬廃水にPd/アルミナまたはAg/ゼオライトまたはPd-Ag/アルミナを0.2gそれぞれ添加した模擬廃水を作り、これらの模擬廃水をそれぞれ室温で24時間撹拌した。
【0031】
次に、Pd/アルミナまたはAg/ゼオライトまたはPd-Ag/アルミナを含んだ模擬廃水をそれぞれ0.45μmフィルターにより濾過し、濾液中のヨウ素イオン(I)およびヨウ素酸イオン(IO)濃度をそれぞれ測定した。
【0032】
各種捕捉材3A〜3Cを用いたときの模擬廃水中のヨウ素イオン及びヨウ素酸イオン濃度を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】

ヨウ素イオン捕捉材3AとしてAg/ゼオライトの場合、模擬廃水中のヨウ素イオン濃度はほぼ0mg/ml、ヨウ素酸イオン濃度は0.026mg/ml程度であった。即ち、Ag/ゼオライトの場合、模擬廃水中のヨウ素イオンの全量(0.06mg/ml)を捕捉するが、ヨウ素酸イオンの捕捉量は0.01mg/ml程度に留まった。
【0035】
ヨウ素酸イオン捕捉材3BとしてPd/アルミナの場合、模擬廃水中のヨウ素イオン濃度は0.045mg/ml、ヨウ素酸イオン濃度はほぼ0mg/ml程度であった。即ち、Pd/ゼオライトの場合、模擬廃水中のヨウ素イオンは全量の25%程度(0.015mg/ml)を捕捉に留まるが、ヨウ素酸イオンはほぼ全量捕捉量した。
【0036】
ヨウ素イオン及びヨウ素酸イオン捕捉材3CとしてPd-Ag/アルミナの場合、模擬廃水中のヨウ素イオンとヨウ素酸イオンのほぼ全量を捕捉することができた。
【0037】
以上のことから、Ag/ゼオライトはヨウ素イオン捕捉に優れており、Pd/アルミナはヨウ素酸イオン捕捉に優れている。また、Pd-Ag/アルミナはヨウ素イオンとヨウ素酸イオンの捕捉性に優れている。
【0038】
ヨウ素イオン及びヨウ素酸イオン捕捉材3CであるPd-Ag/アルミナにおいて、Pd/Agの重量比は、1/10〜10/1が望ましい。1/10より小さくなると、ヨウ素酸イオンの捕捉性能が低下し、10/1より大きくなるとヨウ素イオンの捕捉性能が低下するためである。
【0039】
また、上記試験結果より、Ag/ゼオライトとPd/アルミナを物理的に混合した捕捉材を用いることでヨウ素イオンとヨウ素酸イオンの何れも捕捉することができることは明らかである。Ag/ゼオライトとPd/アルミナの混合比は、任意であるが、Ag/ゼオライト:Pd/アルミナの重量比で10:1〜1:10の場合にヨウ素イオンとヨウ素酸イオンの捕捉性に優れている。10:1よりAg/ゼオライトの割合が大きくなるとヨウ素酸イオンの捕捉性能が低下し、1:10よりPd/アルミナの割合が大きくなるとヨウ素イオンの捕捉性能が低下する。
【0040】
以上の実施の形態から明らかなように、廃水処理装置1において、放射性捕捉手段3としてPd/アルミナ、又はPd-Ag/アルミナを用いることにより、廃水中に還元剤(例えば亜硫酸ナトリウム)を添加することなく、廃水中からヨウ素酸イオンを効果的に除去することができる。
【0041】
上述した本発明の原子力設備の廃水処理装置及び廃水処理方法の第1の実施の形態によれば、廃水処理装置1に放射性物質捕捉材3としてヨウ素酸イオン捕捉材3Bを備えたので、還元剤の添加無しに廃水から放射性ヨウ素イオン及び放射性ヨウ素化合物(ヨウ素酸イオン)を除去し、周辺環境への汚染拡散を回避することができる。
【0042】
また、上述した本発明の原子力設備の廃水処理装置及び廃水処理方法の第1の実施の形態によれば、放射性物質捕捉材3の上部に放射性物質が除去された廃水が存在するので、放射性物質捕捉材3に蓄積された放射性ヨウ素イオンまたは放射性ヨウ素酸イオンの外気への放出を遮蔽する効果がある。
【実施例2】
【0043】
図2は本発明の原子力設備の廃水処理装置及び廃水処理方法の第2の実施の形態を示す断面図である。図2において、図1に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
本実施の形態においては、放射性物質捕捉材3としてヨウ素イオン捕捉材3Aを備えたヨウ素イオン捕捉材充填廃水処理装置1Aを上流側に配置し、下流側に放射性物質捕捉材3としてヨウ素酸イオン捕捉材3Bを備えたヨウ素酸イオン捕捉材充填廃水処理装置1Bを配置している。ヨウ素イオン捕捉材充填廃水処理装置1Aの排出口6には、廃水取り出し配管7の一端側が接続され、廃水取り出し配管7の他端側は、廃水移送ポンプ8の入口側に接続されている。廃水移送ポンプ8の出口側には、廃水供給配管9の一端側が接続され、廃水供給配管9の他端側は、ヨウ素酸イオン捕捉材充填廃水処理装置1Bの隔壁4に接続されている。
【0044】
ヨウ素イオン捕捉材充填廃水処理装置1Aには、Agを含む多孔質無機酸化物からなるヨウ素イオン捕捉材3A(例えば、Ag/ゼオライト)が充填され、ヨウ素酸イオン捕捉材充填廃水処理装置1Bには、(Pd,Pt,Rh)の内少なくとも一つの選択された貴金属を含む多孔質無機酸化物からなるヨウ素酸イオン捕捉材3B(例えば、Pd/アルミナ)が充填されている。
【0045】
例えば、ヨウ素イオン捕捉材充填廃水処理装置1Aの隔壁4に、図示しない廃水タンクから廃水が供給されると、この廃水は、ヨウ素イオン捕捉材3Aによりヨウ素イオンが除去された廃水となって、ヨウ素イオン捕捉材3A及び邪魔板5の上部に滞留する。
【0046】
次に、滞留した廃水の水位が排出口6の高さ以上になれば、廃水は排出口6から廃水取り出し配管7を介して廃水移送ポンプ8により排出される。廃水移送ポンプ8は、この排出した廃水を廃水供給配管9を介して、ヨウ素酸イオン捕捉材充填廃水処理装置1Bの隔壁4へ移送する。
【0047】
ヨウ素酸イオン捕捉材充填廃水処理装置1Bの隔壁4に移送された廃水は、ヨウ素酸イオン捕捉材3Bによりヨウ素酸イオンが除去された廃水となって、ヨウ素酸イオン捕捉材3B及び邪魔板5の上部に滞留する。滞留した廃水の水位が排出口6の高さ以上になれば、廃水は排出口6から排出される。
【0048】
上述した本発明の原子力設備の廃水処理装置及び廃水処理方法の第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0049】
なお、本実施の形態において、廃水から放射性ヨウ素イオン及び放射性ヨウ素化合物(ヨウ素酸イオン)を除去するために、ヨウ素イオン捕捉材3Aを備えたヨウ素イオン捕捉材充填廃水処理装置1Aを上流側に配置し、下流側にヨウ素酸イオン捕捉材3Bを備えたヨウ素酸イオン捕捉材充填廃水処理装置1Bを配置した例を示したが、これに限るものではない。例えば、単独の廃水処理装置1の放射性物質捕捉材3として、貴金属(Pd,Pt,Rh)の内少なくとも一つの選択された貴金属とAgとを含む多孔質無機酸化物からなるヨウ素イオン及びヨウ素酸イオン捕捉材3C(例えば、Pd-Ag/アルミナ)を用いても良いし、Agを含む多孔質無機酸化物からなるヨウ素イオン捕捉材3A(例えば、Ag/ゼオライト)と、貴金属(Pd,Pt,Rh)の内少なくとも一つの選択された貴金属を含む多孔質無機酸化物からなるヨウ素酸イオン捕捉材3B(例えば、Pd/アルミナ)とを接合したものを用いても良い。
【0050】
また、本実施の形態においては、上流側にヨウ素イオン捕捉材充填廃水処理装置1Aを配置し、下流側にヨウ素酸イオン捕捉材充填廃水処理装置1Bを配置した例を示したが、これに限らない。例えば、上流側にヨウ素酸イオン捕捉材充填廃水処理装置1Bを配置し、下流側にヨウ素イオン捕捉材充填廃水処理装置1Aを配置しても良い。
【符号の説明】
【0051】
1 廃水処理装置
2 水槽
3 放射性物質捕捉材
3A ヨウ素イオン捕捉材
3B ヨウ素酸イオン捕捉材
4 隔壁(導入手段)
5 邪魔板
6 排出口
7 廃水取り出し配管
8 廃水移送ポンプ
9 廃水供給配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力設備からの放射性ヨウ素酸イオンを含む廃水から放射性ヨウ素酸イオンを除去する原子力設備の廃水処理装置であって、
水槽と、前記水槽内の底部に充填配置されたヨウ素酸イオン捕捉材と、前記廃水を前記ヨウ素酸イオン捕捉材に導入する導入手段と、前記水槽の側部に設けられ、前記ヨウ素酸イオン捕捉材を通過した後の廃水を排出する排出口とを備えた
ことを特徴とする原子力設備の廃水処理装置。
【請求項2】
原子力設備からの放射性ヨウ素イオンと放射性ヨウ素酸イオンとを含む廃水から放射性ヨウ素イオンと放射性ヨウ素酸イオンとを除去する原子力設備の廃水処理装置であって、
第1の水槽と、前記第1の水槽内の底部に充填配置されたヨウ素イオン捕捉材と、前記廃水を前記ヨウ素イオン捕捉材に導入する第1の導入手段と、前記第1の水槽の側部に設けられ、前記ヨウ素イオン捕捉材を通過した後の廃水を排出する第1の排出口とを有する第1の廃水処理装置と、
第2の水槽と、前記第2の水槽内の底部に充填配置されたヨウ素酸イオン捕捉材と、前記第1の処理装置の前記第1の排出口から排出された廃水を前記ヨウ素酸イオン捕捉材に導入する第2の導入手段と、前記第2の水槽の側部に設けられ、前記ヨウ素酸イオン捕捉材を通過した後の廃水を排出する第2の排出口とを有する第2の廃水処理装置とを備えた
ことを特徴とする原子力設備の廃水処理装置。
【請求項3】
原子力設備からの放射性ヨウ素イオンと放射性ヨウ素酸イオンとを含む廃水から放射性ヨウ素イオンと放射性ヨウ素酸イオンとを除去する原子力設備の廃水処理装置であって、
水槽と、前記水槽内の底部に充填配置されたヨウ素イオン及びヨウ素酸イオン捕捉材と、前記廃水を前記ヨウ素イオン及びヨウ素酸イオン捕捉材に導入する導入手段と、前記水槽の側部に設けられ、前記ヨウ素イオン及びヨウ素酸イオン捕捉材を通過した後の廃水を排出する排出口とを備えた
ことを特徴とする原子力設備の廃水処理装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の原子力設備の廃水処理装置において、
前記ヨウ素酸イオン捕捉材は、貴金属であるPd,Pt,Rhの内少なくとも一つの貴金属を含む多孔質無機酸化物である
ことを特徴とする原子力設備の廃水処理装置。
【請求項5】
請求項2に記載の原子力設備の廃水処理装置において、
前記ヨウ素イオン捕捉材は、Agを含む多孔質無機酸化物である
ことを特徴とする原子力設備の廃水処理装置。
【請求項6】
請求項3に記載の原子力設備の廃水処理装置において、
前記ヨウ素イオン及びヨウ素酸イオン捕捉材は、貴金属であるPd,Pt,Rhの内少なくとも一つの貴金属とAgとを含む多孔質無機酸化物である
ことを特徴とする原子力設備の廃水処理装置。
【請求項7】
請求項3に記載の原子力設備の廃水処理装置において、
前記ヨウ素イオン及びヨウ素酸イオン捕捉材は、貴金属であるPd,Pt,Rhの内少なくとも一つの貴金属を含む多孔質無機酸化物と、Agを含む多孔質無機酸化物とを接合したものである
ことを特徴とする原子力設備の廃水処理装置。
【請求項8】
原子力設備からの放射性ヨウ素酸イオンを含む廃水から放射性ヨウ素酸イオンを除去する原子力設備の廃水処理方法であって、
廃水処理装置を構成する水槽内に設けた導入手段によって、前記廃水を水槽内に導入し、
前記導入手段によって水槽内に導入された前記廃水を、前記水槽の底部に充填配置したヨウ素酸イオン捕捉材に通過させ、
前記ヨウ素酸イオン捕捉材を通過した処理後の廃水を前記水槽の側部から前記水槽外に排出する
ことを特徴とする原子力設備の廃水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−104727(P2013−104727A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247570(P2011−247570)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)