説明

原子層蒸着による銅フィルムの蒸着のための銅(II)錯体

本発明は、新規な1,3−ジイミン銅錯体および原子層蒸着法における基材上または多孔性固体中もしくは多孔性固体上での銅の蒸着のための1,3−ジイミン銅錯体の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な1,3−ジイミン銅錯体に関する。本発明はまた、該1,3−ジイミン銅錯体を使用する、基材上または多孔性固体中もしくは多孔性固体上に銅蒸着物を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子層蒸着(ALD)法は、(非特許文献1)に記載されているように、薄膜の作製に有用である。かかるフィルム、特に金属および金属酸化物フィルムは、電子回路およびデバイスの製造で決定的に重要な構成部品である。
【0003】
銅フィルムを蒸着させるためのALD法では、銅前駆体および還元剤が交互に反応チャンバーへ導入される。銅前駆体が反応チャンバーへ導入され、そして基材上へ吸着するに任せられた後、過剰の(非吸着の)前駆体蒸気はチャンバーからポンプ排出されるまたはパージされる。この工程に、基材表面上の銅前駆体と反応する還元剤の導入が続いて銅金属および配位子の遊離形を形成する。このサイクルを、所望のフィルム厚さを達成するために必要ならば繰り返すことができる。
【0004】
この方法は、金属錯体の分解化学において化学蒸着(CVD)とは異なる。CVD法では、錯体は表面との接触時に熱分解を受けて所望のフィルムを与える。ALD法では、錯体は表面との接触時に金属へ完全に分解しない。むしろ、金属フィルムの形成は、蒸着した金属錯体と反応する第2試薬の導入時に起こる。銅(I)錯体からの銅フィルムの製造において、第2試薬は還元剤である。ALD法の利点には、本方法の第1工程での基材表面への前駆体の自己限定吸着のために、フィルム厚さを制御する能力、および被覆率の改善された順応性が含まれる。
【0005】
ALD法で使用される配位子はまた、分解に対して安定であり、かつ、金属なしの形で錯体から脱着することができなければならない。銅の還元後に、配位子は遊離し、形成中の金属層中へのその組み込みを防ぐために表面から除去されなければならない。
【0006】
(非特許文献2)は、1,3−ジイミンおよび、式MLのビスキレートまたはホモレプティック錯体をはじめとする、これら配位子の金属錯体の合成を記載している。
【0007】
(特許文献1)は、酸化銅を形成するために酸素およびフッ素の両方を含有する銅前駆体の酸化剤での処理、引き続く還元剤での表面の処理を必要とするCu原子層CVD法を開示している。
【0008】
(特許文献2)は、基材上の非フッ素含有銅前駆体から酸化銅を形成する工程と、酸化銅層を還元して基材上に銅層を形成する工程とを含んでなる、銅層を形成するための2工程ALD法を記載している。銅アルコキシド、銅β−ジケトナートおよび銅ジアルキルアミドが好ましい銅前駆体である。還元剤は水素(H)含有ガスである。
【0009】
(特許文献3)は、ALDまたはCVD条件下に基材上に金属または金属含有フィルムを蒸着させるために使用することができる二量体銅(I)前駆体を開示している。
【0010】
(特許文献4)は、ALD法での使用のためのアミジナート配位子を含んでなる二量体銅(I)錯体の使用を記載している。
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,464,779号明細書
【特許文献2】国際公開第2004/036624号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0135061号明細書
【特許文献4】国際公開第2004/046417号パンフレット
【非特許文献1】H.S.ナルワ(H.S.Nalwa)編、薄膜材料ハンドブック(Handbook of Thin Film Materials)中のM.リタラ(M.Ritala)、M.レスケラ(M.Leskela)著、「原子層蒸着(Atomic Layer Deposition)」、サンディエゴ(San Diego)、Academic Press、2001年、第1巻、第2章
【非特許文献2】S.G.マックギーチン(S.G.McGeachin)著、Canadian Journal of Chemistry、46(1968)、1903−1912ページ
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、
a.基材を銅錯体(I)
【0013】
【化1】

【0014】
と接触させて基材上に銅錯体の蒸着物を形成する工程と、
b.蒸着銅錯体を還元剤と接触させる工程と
を含んでなる基材上に銅蒸着物を形成する方法であって、
上記式中、
LはC〜C15オレフィン、C〜C15アルキン、ニトリル、芳香族複素環、およびホスフィンから選択され、
およびRは独立して水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、ネオペンチル、およびC〜Cアルキレンから選択され、
、RおよびRは独立して水素、フッ素、トリフルオロメチル、フェニル、C〜C10アルキルおよびC〜Cアルキレンから選択され、ただし、(R、R)および(R、R)の少なくとも1つは一緒になって−(CR−(ここで、RおよびRは独立して水素、フッ素、トリフルオロメチル、C〜Cアルキル、およびC〜Cアルキルエステルから選択され、nは3、4または5である)であり、そして
還元剤が、9−BBN(9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン)、ジボラン、式BR3−x(ここで、x=0、1または2であり、Rは独立してフェニルおよびC〜C10アルキル基から選択される)のボラン、ジヒドロベンゾフラン、ピラゾリン、ジシラン、式SiR’4−y(ここで、y=0、1、2または3であり、R’は独立してフェニルおよびC〜C10アルキル基から選択される)のシラン、ならびに式GeR”4−z(ここで、z=0、1、2または3であり、R”は独立してフェニルおよびC〜C10アルキル基から選択される)のゲルマンから選択される方法である。
【0015】
本発明の別の態様は、基材上に蒸着された1,3−ジイミン銅錯体(I)を含んでなる物品である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
出願者らは、集積回路での銅相互接続の形成でのシード層としての使用のための、または装飾もしくは触媒用途での使用のための銅フィルムの作製に好適な原子層蒸着(ALD)法を発見した。本方法は、揮発性であり、熱安定性であり、そしてC、H、およびNを含有するが、これらの元素に限定されない配位子から誘導される銅(I)錯体を使用する。配位子は、適切な温度範囲で揮発性であるが、この温度範囲では銅金属へ分解しない銅(I)錯体を形成するように選ばれる。むしろ、錯体は好適な還元剤の添加時に金属へ分解する。配位子はさらに、還元剤への銅錯体の暴露時に分解なしに脱着するように選ばれる。容易に入手可能な還元剤によるこれらの銅錯体の銅金属への還元は、適度な温度できれいに進行することが実証された。
【0017】
本発明の方法では、銅は
(a)基材を銅錯体(I)
【0018】
【化2】

【0019】
と接触させて基材上に銅錯体の蒸着物を形成する工程と、
(b)蒸着銅錯体を還元剤と接触させる工程と
を用いて基材上に蒸着され、
上記式中、
LはC〜C15オレフィン、C〜C15アルキン、ニトリル、芳香族複素環、およびホスフィンから選択され、
およびRは独立して水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、ネオペンチル、およびC〜Cアルキレンから選択され、
、RおよびRは独立して水素、フッ素、トリフルオロメチル、フェニル、C〜C10アルキルおよびC〜Cアルキレンから選択され、ただし、(R、R)および(R、R)の少なくとも1つは一緒になって−(CR−(ここで、RおよびRは独立して水素、フッ素、トリフルオロメチル、C〜Cアルキル、およびC〜Cアルキルエステルから選択され、nは3、4または5である)であり、そして
還元剤は、9−BBN(9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン)、ジボラン、式BR3−x(ここで、x=0、1または2であり、Rは独立してフェニルおよびC〜C10アルキル基から選択される)のボラン、ジヒドロベンゾフラン、ピラゾリン、ジシラン、式SiR’4−y(ここで、y=0、1、2または3であり、R’は独立してフェニルおよびC〜C10アルキル基から選択される)のシラン、ならびに式GeR”4−z(ここで、z=0、1、2または3であり、R”は独立してフェニルおよびC〜C10アルキル基から選択される)のゲルマンから選択される。
【0020】
本蒸着法は、より低い温度の使用を可能にし、そしてより高い品質、より一様なフィルムを生み出すことによって当該技術で記載された方法を改良する。本発明の方法はまた、中間体酸化物フィルムの形成を回避するので、銅フィルムへのより直接的なルートを提供する。
【0021】
本発明の銅蒸着法では、銅は、基材の表面上に、またはその孔の中もしくは孔の上に蒸着させることができる。好適な基材には、銅、シリコンウェーハ、超大規模集積回路の製造に使用されるウェーハ、二酸化ケイ素より低い誘電率を有する誘電体で製造されたウェーハ、ならびにバリア層でコートされた二酸化ケイ素および低k基材をはじめとする、導電性、半導性および絶縁性基材が含まれる。銅の移行を防ぐためのバリア層には、タンタル、窒化タンタル、チタン、窒化チタン、窒化タンタル・シリコン、窒化チタン・シリコン、窒化タンタル・カーボン、および窒化ニオブが含まれる。
【0022】
本発明の方法は、溶液で、すなわち、銅錯体の溶液を還元剤と接触させることによって行うことができる。しかしながら、基材を銅錯体の蒸気に暴露し、次にいかなる過剰の銅錯体(すなわち、非蒸着の錯体)も蒸着錯体を還元剤の蒸気に暴露する前に真空またはパージングによって除去することが好ましい。銅錯体の還元後に、遊離形の配位子は、真空、パージング、加熱、好適な溶媒でのリンス、またはかかる工程の組み合わせによって除去することができる。
【0023】
本方法は、銅のより厚い層を構築するために、またはピンホールを排除するために繰り返すことができる。
【0024】
銅錯体の蒸着は典型的には0〜200℃で行われる。銅錯体の還元は典型的には同様な温度、0〜200℃、より好ましくは50〜150℃で実施される。
【0025】
本発明の方法では、基材上に蒸着されるものは最初は銅錯体である。金属銅フィルムの形成は、銅錯体が還元剤に暴露されるまで起こらない。
【0026】
攻撃的な還元剤が、銅錯体を速く、そして完全に還元するために使用される。好適な還元剤は揮発性であり、加熱時に分解しない。それらはまた、基材表面上に蒸着された銅錯体との接触時に速く反応するために十分な還元力のものである。好適な還元剤は、ALD法で銅(I)還元のために使用されてきたものと特定された。これらの試薬の一特徴はプロトン供与体の存在である。還元剤は望ましくは、錯体の銅イオンを還元するための少なくとも1つの電子と配位子をプロトン化するための少なくとも1つのプロトンとを移動させることができる。酸化された還元剤およびプロトン化された配位子は新たに形成された銅蒸着物の表面から容易に除去できることがまた望ましい。好ましくは、プロトン化された配位子は、真空によって、パージングによってまたは好適な溶媒での表面のフラッシングによって除去される。
【0027】
本発明の銅蒸着法に好適な還元剤には、9−BBN、ボラン、ジボラン、ジヒドロベンゾフラン、ピラゾリン、ゲルマン、ジエチルシラン、ジメチルシラン、エチルシラン、フェニルシラン、シランおよびジシランが含まれる。ジエチルシランおよびシランが好ましい。
【0028】
銅蒸着法の一実施形態では、銅錯体は、基材の表面への錯体の好適な流束量を達成するための温度、時間および圧力の条件下に基材を含有する反応チャンバーへ入れられる。これらの変数(時間、T、P)の選択は、個々のチャンバーおよびシステムデザイン、ならびに所望のプロセス速度に依存するであろう。銅錯体の少なくとも一部が基材上に蒸着された後、非蒸着の錯体蒸気は、チャンバーからポンプ排出されまたはパージされ、そして還元剤が吸着銅錯体を還元するためにおおよそ50〜760ミリトルの圧力のチャンバー中へ導入される。基材は、還元の間ずっとおおよそ0〜200℃の温度に保持される。銅錯体と還元剤との好適な組み合わせで、この還元は速く、実質的に完全である。望ましくは、反応は、秒未満〜数分の暴露時間内に少なくとも95%完結する。この反応からの生成物は還元条件下に基材の表面から容易に除去されることが望ましい。
【0029】
本発明の方法の一実施形態では、銅錯体は銅1,3−ジイミン錯体(I)であり、ここでRおよびRは水素基であり、Rはメチル基であり、R、Rは一緒になって−(CH−を形成し、n=3であり、L=ビニルトリメチルシランであり、そして還元剤はジエチルシランである。
【0030】
本発明はまた、新規な1,3−ジイミン銅錯体(I)
【0031】
【化3】

【0032】
[式中、
LはC〜C15オレフィン、C〜C15アルキン、ニトリル、芳香族複素環、およびホスフィンから選択され、
およびRは独立して水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、ネオペンチルおよびC〜Cアルキレンから選択され、
、RおよびRは独立して水素、フッ素、トリフルオロメチル、フェニル、C〜C10アルキルおよびC〜Cアルキレンから選択され、ただし、(R、R)および(R、R)の少なくとも1つは一緒になって−(CR−(ここで、RおよびRは独立して水素、フッ素、トリフルオロメチル、C〜Cアルキル、およびC〜Cアルキルエステルから選択され、nは3、4または5である)である]
を提供する。
【0033】
一実施形態では、Lは線状の末端オレフィンである。4〜15個の炭素のオレフィンについては、Lはまた、シス−またはトランス−立体配置の内部オレフィンであることができ、シス−立体配置が好ましい。Lは環式または二環式オレフィンであることができる。Lはまた、例えばフッ素またはシリル基で置換されることができる。好適なオレフィンには、ビニルトリメチルシラン、アリルトリメチルシラン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、およびノルボルネンが含まれるが、それらに限定されない。Lはまたアルキン、ニトリル、またはピリジン、ピラジン、トリアジン、もしくはN−置換イミダゾール、ピラゾール、もしくはトリアゾールのような芳香族窒素複素環であることができる。Lはまたホスフィンであることができる。
【0034】
本発明の銅錯体を製造するために有用な一配位子の合成は下の実施例1に与えられる。このように、環式ケチミンは、強塩基によって脱プロトン化し、次にエステルまたは酸ハロゲン化物誘導体のような求電子試薬で処理して中間体として相当するケト環式エナミンを提供することができる。硫酸ジメチルのようなアルキル化剤でのこの中間体の処理、引き続く第一級アミンの添加は、所望の環式ジケチミンを与える。あるいはまた、環式ケチミンは、強塩基による脱プロトン化後に、イミドイル誘導体と直接結合して所望の環式ジケチミンを提供することができる。他の配位子も同様に製造することができる。
【0035】
別の実施形態では、本発明は、基材上に蒸着された、構造(I)の1,3−ジイミン銅錯体を含んでなる物品を提供する。好適な基材には、銅、シリコンウェーハ、超大規模集積回路の製造に使用されるウェーハ、二酸化ケイ素より低い誘電率を有する誘電体で製造されたウェーハ、ならびにバリア層でコートされた二酸化ケイ素および低k基材が含まれる。バリア層を、基材中への銅の移行を防ぐため使用することができる。好適なバリア層には、タンタル、窒化タンタル、チタン、窒化チタン、窒化タンタル・シリコン、窒化チタン・シリコン、窒化タンタル・カーボン、および窒化ニオブが含まれる。
【実施例】
【0036】
特に明記しない限り、すべての有機試薬は、シグマ−アルドリッチ・コーポレーション(Sigma−Aldrich Corporation)(米国ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,WI,USA))から入手可能である。[Cu(CHCN)]SOCFは、T.オグラ(T.Ogura)著、Transition Metal Chemistry、1(1976)、179−182ページに記載されている方法に従って製造することができる。
【0037】
実施例1
[2−(4,5−ジヒドロ−3H−ピロール−2−イル)−1−メチル−ビニル]−メチルアミンの製造
THF(200mL)中のジイソプロピルアミン(22.2g、219.3ミリモル)の溶液にn−BuLi(2.89M、75.9mL、219.3ミリモル)を窒素下に−78℃で滴加した。いったんn−BuLiをすべて加えたら、温度を−5℃に調節し、反応混合物を30分間撹拌した。次にTHF(15mL)中の2−メチル−1−ピロリン(11.3g、135.7ミリモル)の溶液を−5℃で反応混合物に滴加し、次に撹拌した。30分後に、酢酸エチル(9.20g、104.4ミリモル)を30分にわたって滴加した。反応混合物を、温度を徐々に室温まで上がるに任せながら撹拌し、室温で一晩連続して撹拌した。THF溶媒を減圧下に除去し、次に80mLのメタノールを残渣に滴加した。揮発性溶媒のすべてを除去した後、エーテル(100mL)を残渣に加え、混合物を濾過した。減圧下での濾液の濃縮、引き続くカラムクロマトグラフィーは、11gの生成物、β−ケトエナミン(1−ピロリジン−2−イリデン−プロパン−2−オン、84%)を生み出した。
【0038】
単離した物質、1−ピロリジン−2−イリデン−プロパン−2−オン(5g、39.94ミリモル)を硫酸ジメチル(5.04g、39.94ミリモル)と室温で一晩撹拌することによって反応させた。THF(50mL)を得られた混合物に加え、引き続きメチルアミン溶液(25.9mL、THF中2.0M)を加えた。室温で一晩の反応後に、溶媒を減圧下に除去し、引き続きナトリウムメトキシド(39.94ミリモル)溶液(10mLのMeOH中2.16gのMeONa)を加えた。混合物を室温で30分間撹拌した後、反応混合物を減圧下に濃縮した。ペンタン(100mL)を残渣に加え、次に不溶性物質を濾過した。減圧下での濾液の濃縮、引き続く真空蒸留(31℃、46ミリトル)は4.2g(76%収率)の生成物を液体として与えた。
【0039】
実施例2
ビニルトリメチルシラン[[2−(4,5−ジヒドロ−3H−ピロール−2−イル)−1−メチル−ビニル]−メチルアミナート(aminate)]銅の製造および還元
製造:ドライボックス中で、Cu[(CHCN)]SOCF(0.818g、2.17ミリモル)およびビニルトリメチルシラン(1.09g)をエーテル(15mL)中で一緒に混合し、混合物を室温で20分間撹拌した。同時に、エーテル(15mL)中のジケチミン、[2−(4,5−ジヒドロ−3H−ピロール−2−イル)−1−メチル−ビニル]−メチルアミン(0.3g、2.17ミリモル、実施例1でのように製造した)の溶液を、t−BuLi(1.28mL、1.7M)で処理し、得られた溶液を室温で20分間撹拌した。ブチルリチウム溶液を銅混合物に加え、得られた混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を真空下に濃縮し、引き続きペンタン(2×20mL)を残渣に加えた。濾過、引き続く濾液の濃縮は、粘稠オイルとして所望の生成物を与えた(0.63g、92%収率)。
【0040】
還元:この物質は500ミリトル下に55℃で揮発性であり、還元剤としてのジエチルシランへの暴露によって100℃で銅金属に還元された。
【0041】
基質上での還元:粘稠オイル(上記のように製造した、ビニルトリメチルシラン[[2−(4,5−ジヒドロ−3H−ピロール−2−イル)−1−メチル−ビニル]−メチルアミナート]銅)を、基材上に銅フィルムを作製するための銅前駆体として使用した。基材は、二酸化ケイ素上にタンタルの250オングストローム層およびタンタル上に銅の100オングストローム層付きの二酸化ケイ素ウェーハよりなった。
【0042】
おおよそ0.030gの銅前駆体をドライボックス中で磁器製ボート中へ装着した。ボートおよびウェーハ(約1cm)をおおよそ3.5インチ離してガラス管中に置いた。ガラス管をドライボックスから取り出し、真空ラインに取り付けた。加熱コイルをガラス管に取り付け、そして磁器製ボート周りの区域およびウェーハチップ周りの区域の両方を取り囲んだ。この立体配置は、2つの区域が異なる温度に維持されることを可能にする。システムの排気の後、アルゴンガス流れを、管を通して生み出し、先ずボート中のサンプルの上方を、次にウェーハの上方を通過させた。管内側の圧力を120〜200ミリトルに維持した。ウェーハ周りの領域を120℃に暖めた。おおよそ1時間後に、サンプルボート周りの領域の温度を50℃に上げた。これらの温度およびガス流れをおおよそ2時間維持した。サンプルボート周りの区域を次に室温まで冷却した。管を約10ミリトルの圧力まで排気し、ジエチルシランで満たし戻した。110℃の管の区域は直ぐに銅色になった。装置を冷却し、ドライボックスへ戻した。銅色は見る見るうちにより暗くなった。本プロセスを、平滑な銅フィルムのウェーハをもたらすために繰り返した。
【0043】
実施例3
ビニルトリメチルシラン[[2−(ピロリジン−2−イリデンメチル)−1−ピロリナート(pyrrolinate)]銅の製造
THF(200mL)中のジイソプロピルアミン(11.1g、109.7ミリモル)の溶液にn−BuLi(2.89M、37.97mL、109.7ミリモル)を窒素下に−78℃で滴加した。いったんn−BuLiをすべて加えたら、温度を−5℃に調節し、反応混合物を30分間撹拌した。次にTHF(15mL)中の2−メチル−1−ピロリン(5.65g、67.9ミリモル)の溶液を−5℃で反応混合物に滴加し、次に撹拌した。30分後に、2−メチルチオ−1−ピロリン(6.02g、52.3ミリモル)を−78℃で30分にわたって滴加した。反応混合物を、温度を徐々に室温まで上がるに任せながら撹拌し、室温で一晩連続して撹拌した。THF溶媒を減圧下に除去し、次に50mLのメタノールを残渣に滴加した。揮発性溶媒のすべてを除去した後、ペンタン(2×100mL)を残渣に加え、混合物を濾過した。減圧下での濾液の濃縮、引き続く真空蒸留(110ミリトルで65℃)は、6.2gの2−(ピロリジン−2−イリデンメチル)−1−ピロリン(79%)を生み出した。
【0044】
ドライボックス中で、2−(ピロリジン−2−イリデンメチル)−1−ピロリン(0.3g、2ミリモル)をエーテル(15mL)中でt−BuLi(1.7M、1.17mL、2ミリモル)で処理し、混合物を室温で20分間撹拌した。同時にCu[(CHCN)]SOCF(0.75g、2ミリモル)およびビニルトリメチルシラン(1g、10ミリモル)をエーテル(15mL)中で一緒に混合し、得られた混合物を室温で20分間撹拌した。ピロリナート溶液を銅溶液に加え、得られた混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を減圧下に濃縮し、引き続きペンタン(2×15mL)を加えた。濾過、引き続く濾液の濃縮は、粘稠液体として、所望の生成物、ビニルトリメチルシラン[[2−(ピロリジン−2−イリデンメチル)−1−ピロリナート]銅を与えた(0.59g、90%収率)。
【0045】
実施例4
ビニルトリメチルシラン[[2−(1−ピロリン−2−イルメチレン)ピペリジナート]銅の製造
THF(100mL)中のジイソプロピルアミン(6.32g、62.52ミリモル)の溶液にn−BuLi(2.89M、21.63mL、62.52ミリモル)を窒素下に−78℃で滴加した。いったんn−BuLiをすべて加えたら、温度を−5℃に調節し、反応混合物を30分間撹拌した。次にTHF(15mL)中の2−メチル−3,4,5,6−テトラヒドロピリジン(3.76g、38.70ミリモル)の溶液を−5℃で反応混合物に滴加し、次に撹拌した。30分後に、2−メチルチオ−1−ピロリン(3.43g、29.77ミリモル)を−78℃で30分にわたって滴加した。反応混合物を、温度を徐々に室温まで上がるに任せながら撹拌し、室温で一晩連続して撹拌した。THF溶媒を減圧下に除去し、次に30mLのメタノールを残渣に滴加した。揮発性溶媒のすべてを除去した後、ペンタン(2×50mL)を残渣に加え、混合物を濾過した。減圧下での濾液の濃縮、引き続く真空蒸留(185ミリトルで75℃)は、4.1gの2−(1−ピロリン−2−イルメチレン)ピペリジン(84%)を生み出した。
【0046】
ドライボックス中で、2−(1−ピロリン−2−イルメチレン)ピペリジン(0.328g、2ミリモル)をエーテル(15mL)中でt−BuLi(1.7M、1.17mL、2ミリモル)で処理し、混合物を室温で20分間撹拌した。同時に、Cu[(CHCN)]SOCF(0.75g、2ミリモル)およびビニルトリメチルシラン(1g、10ミリモル)をエーテル(15mL)中で一緒に混合し、得られた混合物を室温で20分間撹拌した。ピペリジン溶液を銅溶液に加え、得られた混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を減圧下に濃縮し、引き続きペンタン(2×15mL)を加えた。濾過、引き続く濾液の濃縮は、粘稠液体として、所望の生成物、ビニルトリメチルシラン[[2−(1−ピロリン−2−イルメチレン)ピペリジナート]銅を与えた(0.62g、91%収率)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.基材を銅錯体(I)
【化1】


と接触させて基材上に銅錯体の蒸着物を形成する工程と、
b.該蒸着銅錯体を還元剤と接触させる工程と
を含んでなる基材上に銅蒸着物を形成する方法であって、
上記式中、
LはC〜C15オレフィン、C〜C15アルキン、ニトリル、芳香族複素環、およびホスフィンから選択され、
およびRは独立して水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、ネオペンチル、およびC〜Cアルキレンから選択され、
、RおよびRは独立して水素、フッ素、トリフルオロメチル、フェニル、C〜C10アルキルおよびC〜Cアルキレンから選択され、ただし、(R、R)および(R、R)の少なくとも1つは一緒になって−(CR−(ここで、RおよびRは独立して水素、フッ素、トリフルオロメチル、C〜Cアルキル、およびC〜Cアルキルエステルから選択され、nは3、4または5である)であり、
該還元剤は、9−BBN(9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン)、ジボラン、式BR3−x(ここで、x=0、1または2であり、Rは独立してフェニルおよびC〜C10アルキル基から選択される)のボラン、ジヒドロベンゾフラン、ピラゾリン、ジシラン、式SiR’4−y(ここで、y=0、1、2または3であり、R’は独立してフェニルおよびC〜C10アルキル基から選択される)のシラン、ならびに式GeR”4−z(ここで、z=0、1、2または3であり、R”は独立してフェニルおよびC〜C10アルキル基から選択される)のゲルマンから選択される方法。
【請求項2】
が水素である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
およびRが一緒になって−(CH−(ここで、nは3、4、または5である)である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
およびRが一緒になって−(CH−(ここで、nは3、4、または5である)である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
がメチルであり、そしてRがHである請求項3に記載の方法。
【請求項6】
Lがビニルトリメチルシランである請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記基材が銅、シリコンウェーハおよびバリア層でコートされた二酸化ケイ素から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記基材が前記銅錯体の蒸気に暴露される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記蒸着が0〜200℃の温度で実施される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記還元剤がシランまたはジエチルシランである請求項1に記載の方法。
【請求項11】
【化2】


[式中、
LはC〜C15オレフィン、C〜C15アルキン、ニトリル、芳香族複素環、およびホスフィンから選択され、
およびRは独立して水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、ネオペンチル、およびC〜Cアルキレンから選択され、
、RおよびRは独立して水素、フッ素、トリフルオロメチル、フェニル、C〜C10アルキルおよびC〜Cアルキレンから選択され、ただし、(R、R)および(R、R)の少なくとも1つは一緒になって−(CR−(ここで、RおよびRは独立して水素、フッ素、トリフルオロメチル、C〜Cアルキル、およびC〜Cアルキルエステルから選択され、nは3、4または5である)である]
の銅錯体(I)。
【請求項12】
Lがビニルトリメチルシランであり、RおよびRが水素であり、Rがメチルであり、(R、R)が一緒になって−(CH−であり、nが3である請求項11に記載の銅錯体(I)。
【請求項13】
基材を請求項11に記載の銅錯体と接触させることによって製造された物品。
【請求項14】
前記基材が銅、シリコンウェーハ、およびバリア層でコートされた二酸化ケイ素から選択される請求項13に記載の物品。
【請求項15】
前記バリア層がタンタル、窒化タンタル、チタン、窒化チタン、窒化タンタル・シリコン、窒化チタン・シリコン、窒化タンタル・カーボン、および窒化ニオブから選択される請求項14に記載の物品。

【公表番号】特表2008−508427(P2008−508427A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523850(P2007−523850)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/027019
【国際公開番号】WO2006/015225
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】