説明

原子炉の炉心および原子炉

【課題】径方向の周辺部の出力密度を中央部と同じように十分に高くすることができる原子炉の炉心を提供する。
【解決手段】ウランを含む新燃料部と、新燃料部の一方の側に配置されている燃焼部とを備え、燃焼サイクルの初期から末期にかけて、燃焼部が新燃料部に向かう方向に移動する原子炉の炉心であって、炉心を平面視したときに中央部に第1領域41が画定され、炉心の外周部に第3領域43が画定され、第1領域41と第3領域43との間に第2領域42が画定されている。第1領域41の新燃料部は、組成が略一定になるように形成されている。第3領域43の新燃料部は、第1領域41の新燃料部よりも無限中性子増倍率が大きく、組成が略一定になるように形成されている。第2領域42の新燃料部は、炉心の径方向の外側に向かって、無限中性子増倍率が徐々に大きくなるように組成が変化している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉の炉心および原子炉に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉は、発電設備等に用いられている。原子炉は、高速中性子炉を含む。高速中性子炉は、主に高速中性子により核分裂性核種を核分裂させて出力を発生する原子炉であり、ナトリウム、鉛ビスマス合金等の重金属、またはガス等により炉心が冷却される。従来の技術の原子炉では、炉心全体で核分裂が生じるとともに出力が発生する。
【0003】
原子炉の炉心の臨界の維持および出力の調整は、例えば制御棒によって行われる。制御棒は、中性子を吸収しやすい物質で形成されている。燃焼サイクルの初期には制御棒を炉心に挿入しておき、燃焼が進むとともに徐々に制御棒を引き抜くことにより、出力を維持しながら臨界状態を保っている。このように、原子炉の運転においては、原子炉の臨界を維持するための制御が必要である。燃焼サイクル初期から燃焼サイクル末期まで継続的に臨界の維持のための制御を行っている。
【0004】
特許第3463100号公報においては、燃焼サイクルで臨界を維持するための制御が不要な原子炉が開示されている。この原子炉は、CANDLE(Constant Axial Shape of Neutron Flux, Nuclide Densities and Power Shape During Life of Energy Production)燃焼法と呼ばれる燃焼法を採用している。CANDLE燃焼法では、炉心をおおよそ新燃料部、燃焼部、燃焼が進んだ部分に分けることができる。燃焼部は、燃焼とともに、出力に比例した速さで新燃料部に向かって移動する。CANDLE燃焼では、一つの燃焼サイクルが終了した後、次の燃焼サイクルを行なうために燃料を交換する。燃料を交換するときには、炉心軸の方向において燃焼の進んだ燃料を取り出し、取り出した側の端部と反対側の端部に新燃料を装荷することができる。
【0005】
CANDLE燃焼法では、臨界調整を行なわなくてもよく、また、出力分布の調整をしなくても出力分布が、ほぼ一定に保たれる。このため、燃焼サイクルの初期から末期にわたって、制御棒の操作等のような炉心の反応度制御は行わなくても良いという特徴を有する。また反応度係数も変化せずに、燃焼とともに運転方法を変化させなくても良いという特徴を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3463100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
原子炉の燃料の燃焼法としてCANDLE燃焼法を採用することにより、燃焼が進行しても炉心特性をほぼ一定にすることができて運転制御が簡単になり、事故の発生確率が低い原子炉を提供することができる。また、炉心に制御棒を配置しなくても良いために、運転期間中に制御棒が誤って引き抜かれるような事故の可能性が全くなくなる。また、燃料を取り出すときの燃焼度が高いことから、廃棄物の量を低減できる。
【0008】
CANDLE燃焼法では、第2サイクル以降の新燃料として、天然ウランまたは劣化ウランだけを用いて運転を行なうことができる。これらの燃料は、未臨界であることから輸送や貯蔵が容易になる。また、濃縮や再処理を行なわずに、ウランのおよそ40%をエネルギーとして利用できることから、資源の有効利用ができる。また、第2サイクル以降の新燃料は、濃縮や再処理等が不要となることから、核拡散抵抗性が高いなどの特徴を有する。
【0009】
ところで、CANDLE燃焼法では、一般的に炉心の径方向のほぼ全体にわたって出力が生じる。このときに、従来のCANDLE燃焼法では、径方向の中央部では出力密度が高くなり、周辺部に向かうほど出力密度が低くなる。このため、周辺部では冷却能力に対して出力密度が小さくなり、冷却能力に応じた大きな出力密度を達成することができないという問題があった。
【0010】
従来のCANDLE燃焼法では、出力密度の高い径方向の中央部では燃焼の進み方が速くなる。燃料の取り出し量および新燃料の装荷量を径方向において一定にしているため、燃焼部は、周辺部よりも中央部が新燃料部の側にシフトした形状になる。このため、燃焼部を十分に炉心内に含めるためには炉心の軸方向の長さを長くしなければならないという問題があった。
【0011】
本発明は、径方向の周辺部の出力密度を中央部と同じように十分に高くすることができ、炉心の平均出力密度を高くすることができ、かつ径方向の中央部の燃料に加えて周辺部の燃料を十分に燃焼させることができ、かつ炉心の軸方向長さを短くできる原子炉の炉心およびこの炉心を備える原子炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の原子炉の炉心は、新燃料が装荷されている新燃料部と、新燃料部の一方の側に配置され、中性子を発生して燃料が燃焼する燃焼部とを備え、新燃料は天然ウランおよび劣化ウランのうち少なくとも一方のウランを含み、ウランが中性子を吸収して生成されたプルトニウムが核分裂することにより出力を発生し、燃焼サイクルの初期から末期にかけて、燃焼部がほぼ一定の形状を保ちながら新燃料部に向かう方向に移動する原子炉の炉心である。原子炉の炉心は、炉心を平面視したときに中央部に第1領域が画定され、炉心の外周部に第3領域が画定され、第1領域と第3領域との間に第2領域が画定されている。第1領域の新燃料部は、組成が略一定になるように形成されている。第3領域の新燃料部は、第1領域の新燃料部よりも無限中性子増倍率が大きく、組成が略一定になるように形成されている。第2領域の新燃料部は、炉心の径方向の外側に向かって、無限中性子増倍率が徐々に大きくなるように組成が変化している。
【0013】
上記発明においては、第1領域と第2領域との境界部分において、第1領域の新燃料部の組成と第2領域の新燃料部の組成とが連続的に変化し、第2領域と第3領域との境界部分において、第2領域の新燃料部の組成と第3領域の新燃料部の組成とが連続的に変化していることが好ましい。
【0014】
上記発明においては、第1領域の新燃料部は、天然ウランおよび劣化ウランのうち少なくとも一方とトリウムとの混合物を含み、第3領域の新燃料部は、天然ウランおよび劣化ウランのうち少なくとも一方を含み、第2領域の新燃料部は、天然ウランおよび劣化ウランのうち少なくとも一方とトリウムとの混合物を含み、炉心の径方向の外側に向かってトリウムの含有率が徐々に小さくなるように形成されることができる。
【0015】
上記発明においては、複数の燃料棒を含む燃料集合体を備え、第2領域には径方向において複数の燃料集合体が装荷されており、第2領域に装荷される1本の燃料集合体に含まれる複数の燃料棒の新燃料部の組成はほぼ同一であり、第2領域の新燃料部は、径方向において燃料集合体ごとに組成が徐々に変化していることができる。
【0016】
本発明の原子炉は、上述の原子炉の炉心と、炉心が内部に配置されている原子炉容器とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、径方向の周辺部の出力密度を中央部と同じように十分に高くすることができ、炉心の平均出力密度を高くすることができ、かつ径方向の中央部の燃料に加えて周辺部の燃料を十分に燃焼させることができ、かつ炉心の軸方向長さを短くできる原子炉の炉心およびこの炉心を備える原子炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態における原子炉の概略図である。
【図2】実施の形態における原子炉の炉心の概略平面図である。
【図3】実施の形態における原子炉の炉心の4分の1の拡大概略平面図である。
【図4】実施の形態における燃料集合体の概略斜視図である。
【図5】実施の形態における燃料棒の概略斜視図である。
【図6】実施の形態における炉心の構成と燃料の燃焼状態とを説明する概略図である。
【図7】CANDLE燃焼を行なうときの燃料の中性子フルエンスに対する無限中性子増倍率の変化を説明するグラフである。
【図8】炉心高さと燃料の無限中性子増倍率との関係を説明するグラフである。
【図9】実施の形態における炉心の出力密度の変化および燃料の取換えを説明する図である。
【図10】実施の形態における炉心の新燃料部の径方向の組成を説明するグラフである。
【図11】実施の形態の炉心の燃焼部における出力密度の説明図である。
【図12】実施の形態における炉心の径方向の軸方向積分出力を説明するグラフである。
【図13】比較例の炉心の燃焼部における出力密度の説明図である。
【図14】比較例の炉心の構成と燃料の燃焼状態とを説明する概略図である。
【図15】炉心の出力密度と炉心出口の冷却材温度とを説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1から図15を参照して、実施の形態における原子炉の炉心およびこの炉心を備える原子炉について説明する。本実施の形態における原子炉は、主に高速中性子によりプルトニウムの核分裂を発生させる高速中性子炉である。本実施の形態における原子炉は、発電設備の原子炉であり、原子炉から流出する冷却材の熱を用いて発電を行なっている。
【0020】
図1は、本実施の形態における原子炉の概略図である。本実施の形態における発電設備は、原子炉1を備える。原子炉1は、原子炉容器9を含む。原子炉1は、原子炉容器9の内部に配置されている炉心10を含む。本発明における炉心とは、ウランおよびトリウムのうち少なくとも一方が配置されている部分をいう。炉心には、ウランおよびトリウムから生成された生成物が含まれる場合がある。原子炉容器9の内部には、冷却材が流れている。本実施の形態における炉心10の周りには、反射体が配置されていないが、この形態に限られず、炉心10の周りに反射体が配置されていても構わない。
【0021】
冷却材は、矢印112に示すように、原子炉容器9に流入して、炉心10の内部を通過する。炉心10の熱は、冷却材に伝達される。本実施の形態における原子炉1は、冷却材が炉心10の下側から上側に向かって流れる。炉心10から流出した冷却材は、矢印111に示すように原子炉容器9から流出する。
【0022】
冷却材は、中性子の減速能力や中性子の吸収能力が小さな材料を用いることができる。本実施の形態においては、鉛−ビスマス冷却材が用いられている。本実施の形態においては、冷却材が反射体の機能を有する。原子炉の冷却材としては、鉛系冷却材(液体金属)の他に、ナトリウムを使用することができる。または、ヘリウム等のガス冷却材を用いることができる。また、鉛系冷却材としては、鉛−ビスマスの他に鉛のみや、同位体分離された鉛208を採用することができる。
【0023】
図2に、本実施の形態における原子炉の炉心の概略平面図を示す。図2は、炉心の領域を説明する概略図である。図3に、本実施の形態における原子炉の炉心の拡大概略平面図を示す。図3は、炉心の4分の1の部分の平面図である。本実施の形態における炉心10は、平面形状がほぼ円形に形成されている。原子炉の炉心は、この形態に限られず、平面形状を任意の幾何学形状に形成することができる。
【0024】
本実施の形態における炉心10は、平面視したときに中央部に第1領域41が画定され、炉心の外周部に第3領域43が画定され、第1領域41と第3領域43との間に第2領域42が画定されている。
【0025】
本実施の形態における炉心10は、燃料集合体を含む。本実施の形態における原子炉の炉心は、燃料集合体が規則的に配列されている。第1領域41には、第1の燃料集合体21aが装荷さている。第2領域42には、第2の燃料集合体21bが装荷されている。第3領域43には、第3の燃料集合体21cが装荷さている。第1の燃料集合体21aは、第1燃料を含む。第2の燃料集合体21bは、第2燃料を含む。第3の燃料集合体21cは、第3燃料を含む。
【0026】
図4に、本実施の形態における燃料集合体の概略斜視図を示す。以下においては、第1の燃料集合体21aについて説明するが、第2の燃料集合体21bおよび第3の燃料集合体21cについても、燃料の成分以外は同様の構成を有する。
【0027】
第1の燃料集合体21aは、複数の燃料棒22aを含む。燃料棒22aは、長手方向の端部がノズル27により支持されている。燃料棒22aは、複数の支持格子25により支持されている。ノズル27および支持格子25は、燃料棒22a同士を互いに離して支持している。本実施の形態では支持格子により燃料棒間の距離を維持しているが、この形態に限られず、支持格子の代わりにワイヤースペーサー等を用いることができる。冷却材は、燃料棒22a同士の間を流れて、燃料棒22aを冷却する。
【0028】
図5に、本実施の形態における燃料棒の概略斜視図を示す。図5では、燃料の燃焼が上側から下側に向かって移動する燃料棒を示しており、被覆材の一部を破断して示している。本実施の形態における燃料棒22aは、被覆材23aを含む。被覆材23aは、筒状に形成されている。被覆材23aは、たとえばステンレス鋼で形成されている。燃料棒22aは、第1燃料としての燃料ペレット24aa,24ab,24acを含む。燃料ペレット24aa,24ab,24acは、被覆材23aの内部に配置されている。燃料棒22aは、栓29により封止されている。燃料ペレット24aa,24ab,24acは、コイルスプリング28により押圧されている。
【0029】
図5に示す燃料棒は、燃焼サイクル初期の状態を示している。複数の燃料ペレット24aa,24ab,24acは、新燃料を含む燃料ペレット24aa、燃焼途中の燃料ペレット24ab、および燃焼が十分に進んだ燃料ペレット24acの順に配置されている。新燃料を含む燃料ペレット24aaの部分により、炉心の新燃料部が画定される。燃焼途中の燃料ペレット24abの部分により、炉心の燃焼部が画定される。燃焼が進んだ燃料ペレット24acの部分により、炉心の燃焼が進んだ部分が画定される。
【0030】
このように、本実施の形態における燃料棒22aには、燃焼度が互いに異なる燃料ペレット24aa,24ab,24acが配置されている。一つの燃焼サイクルが終了した後には、たとえば、被覆材23aを剥ぎ取り、燃焼が進んだ部分の燃料ペレットとそれ以外の燃料ペレットとを分離する。次に、新たな被覆材の内部に、新燃料を含む燃料ペレットおよび回収された燃料ペレット等を配置することにより、次の燃焼サイクルのための燃料棒を形成することができる。
【0031】
または、燃料ペレットの回収方法としては、それぞれの部分ごとに燃料棒を切断した後に、被覆材23aを剥ぎ取っても構わない。この方法によっても、燃焼部および燃焼が進んだ部分に配置されていた燃料ペレットを回収することができる。
【0032】
図2から図5を参照して、第1の燃料集合体21aおよび第2の燃料集合体21bの新燃料部に配置される燃料ペレットは、劣化ウランおよびトリウムの混合物を含む。第3の燃料集合体21cの新燃料部に配置される燃料ペレットは、トリウムを含まずに劣化ウランを含む。本実施の形態における燃料は、金属燃料であるが、この形態に限られず、例えば、窒化物燃料等を用いることができる。
【0033】
本実施の形態における第3の燃料集合体21cは、炉心10の外周部に配置されている。第3の燃料集合体21cが配置されている環状の領域の内側には、第2の燃料集合体21bが配置されている。第2の燃料集合体21bが配置されている環状の領域の内側には、第1の燃料集合体21aが配置されている。炉心10の軸上には、第1の燃料集合体21aが配置されている。このように本実施の形態の炉心は、装荷される燃料集合体により、環状の領域が形成されている。
【0034】
第1領域41および第3領域43の新燃料部は、燃料の組成が略一定になるように形成されている。また、第3領域43の新燃料部は、第1領域41の新燃料部よりも無限中性子増倍率が大きくなるように形成されている。第2領域42の新燃料部は、炉心の径方向の外側に向かって、無限中性子増倍率が徐々に大きくなるように燃料の組成が変化している。本実施の形態における第2領域42の新燃料部は、径方向の外側に向かってトリウムの含有率が徐々に小さくなるように形成されている。
【0035】
それぞれの燃料集合体は、新燃料のウラン重量が異なる。本実施の形態における第1の燃料集合体21a、第2の燃料集合体21bおよび第3の燃料集合体21cの燃料は、この順に、新燃料の単位体積あたりのウラン重量が大きくなるように形成されている。更に、複数の第2の燃料集合体21bは、炉心の中央部から外周部に向かって新燃料の単位体積あたりのウラン重量が徐々に大きくなるように形成されている。ここで、炉心の単位体積とは、燃料の他に被覆材や冷却材等の炉心を構成する物を含んだ単位体積である。
【0036】
図6に、本実施の形態における炉心の燃焼の進行状況を説明する模式図を示す。図6は、炉心を軸方向に沿って切断したときの概略断面図である。図6は、複数回の燃焼サイクルを行なった後の第nサイクルの初期(BOC)の炉心と、第nサイクルの末期(EOC)の炉心とを示している。また、同一のサイクル長さおよび同一の燃料取替え方法で複数サイクル運転を行なった炉心を示している。径方向の位置rが零の軸が炉心軸である。
【0037】
本実施の形態における原子炉の炉心10は、燃焼サイクルの初期から末期にかけて燃焼部12が、新燃料部11に向けて移動する。すなわち、本実施の形態における炉心は、CANDLE燃焼を行なう。燃焼部12の移動する速度は、凡そ出力密度に比例し、燃料原子数密度に反比例する。
【0038】
本実施の形態における炉心10は、新燃料部11、燃焼部12および燃焼が進んだ部分13を含む。新燃料部11は、新燃料が配置されている部分である。燃焼部12は、自発的に中性子が発生し、燃料の燃焼が生じる部分である。燃焼部12では、核分裂が発生することにより実質に出力が生じている。燃焼が進んだ部分13は、燃焼が進んで、ほとんど出力を発生していない部分である。第nサイクルの初期の炉心において、新燃料部11は、炉心10の下部に配置されている。燃焼部12は、新燃料部11の上側に配置されている。燃焼部12には、前サイクルで既に燃焼が始まっていた燃料が配置されている。本実施の形態においては、サイクル初期において炉心10に燃焼が進んだ部分13が配置されているが、この形態に限られず、燃焼が進んだ部分13が配置されていなくても構わない。
【0039】
本実施の形態においては、サイクル初期に配置された燃焼部12は、燃焼を開始する部分になる。燃焼部12から燃料の燃焼が開始され、矢印101に示すように、新燃料部11に向かう方向に燃焼が進行する。第nサイクルの燃焼が進行してサイクル末期になった場合には、燃焼部12が炉心10の下端まで進行する。本実施の形態においては、新燃料部11がなくなるまで燃焼を継続している。燃焼サイクル末期では、新燃料部11が残っていても構わない。
【0040】
図7に、本実施の形態における燃料の中性子フルエンスと無限中性子増倍率との関係を説明するグラフを示す。横軸が、中性子束を時間で積分した中性子フルエンスであり、縦軸が無限中性子増倍率kinfである。中性子フルエンスは、たとえば燃料の燃焼度に対応する量である。本実施の形態においては劣化ウランを燃料としている。劣化ウランは、たとえば、約99.8%のウラン238と、約0.2%のウラン235とを含む。ウラン238は、中性子を吸収することにより次の数1のように核変換する。ウラン238は、プルトニウム239に変換される。
【数1】

【0041】
中性子フルエンスが零の近傍では、ウラン238が中性子を吸収してプルトニウム239が生成されることにより、無限中性子増倍率が上昇する。所定の中性子フルエンスに達すると、プルトニウム239等の存在量のウラン238の存在量に対する比が一定に近づき、更に核分裂生成物(FP)が蓄積して、無限中性子増倍率が徐々に減少する。このように、本実施の形態における燃料は、燃焼の初期において無限中性子増倍率が増加し、その後に徐々に無限中性子増倍率が減少する特性を有する。
【0042】
また、劣化ウランの未臨界度は大きいために、炉心の一部分を臨界以上にするためには、多くの中性子をウラン238に吸収させる必要がある。本実施の形態においては、このような条件を満たすように炉心の大きさを選定するとともに燃料集合体や燃料棒を設計している。
【0043】
上記のような炉心の構成を採用することにより、CANDLE燃焼を実施することができる。すなわち、炉心の径方向の全体にわたって出力が生じ、炉心の軸方向の一部の領域において燃焼部が生成される炉心を形成することができる。
【0044】
図8に、炉心高さを無限大にして燃焼を行なっているときの無限中性子増倍率のグラフを示す。横軸が炉心高さであり、縦軸が燃料の無限中性子増倍率を示している。本実施の形態においては、矢印101に示すように、燃焼部が新燃料部に向かって移動する。燃焼部は、無限中性子増倍率が1を超える領域を含む。実際の原子炉の炉心の高さは有限であり、この場合には、炉心の端部での無限中性子増倍率は、図8に示すグラフから僅かにずれる場合がある。
【0045】
図9に、本実施の形態における炉心の燃焼が進行する状態および燃料取り換えを説明するグラフを示す。図9には、第nサイクルの炉心の初期および末期のグラフと、第(n+1)サイクルの炉心の初期および末期のグラフが示されている。それぞれのグラフにおいては、炉心軸における出力密度、ウラン238の数密度および核分裂生成物の数密度が示されている。
【0046】
図6および図9を参照して、出力密度の最大点は、矢印101に示すように、新燃料部11が配置されている炉心下部に向けて移動する。本実施の形態における燃焼は、炉心の上端から下端に向かう方向に移動する。燃焼部が移動していく速度、すなわち、出力密度の最大点が移動する速度は、例えば、1年間に数cmである。このように、ゆっくりと燃焼部が移動する。ウラン238の数密度は、核変換されることにより燃焼部の下流側で小さくなる。また、核分裂生成物の数密度は、核分裂が生じることにより燃焼部の下流側で大きくなる。本実施の形態においては、燃焼部が、炉心のほぼ下端に達したときに燃焼を終了している。
【0047】
第(n+1)サイクルの初期の炉心では、矢印117に示すように、第nサイクルにおいて炉心の下部に配置されている燃焼部を炉心の上部に配置して、燃焼を開始する部分として使用する。第(n+1)サイクルの炉心においては、炉心の下部に新たな新燃料部11を配置する。このような燃料交換を行なうことにより、第(n+1)サイクルの炉心においても、第nサイクルの炉心と同様の燃焼を行なうことができる。
【0048】
本実施の形態における炉心には、トリウムを含む燃料が装荷されている。トリウムの核反応を次の数2に示す。
【数2】

【0049】
トリウム232は、中性子を吸収しβ崩壊を繰り返すことにより、ウラン233に変換される。ウラン233は、核分裂性核種である。
【0050】
図7を参照して、一部のウランの代わりにトリウムを含む燃料集合体の無限中性子増倍率は、ウランを含む燃料集合体の無限中性子増倍率よりも小さくなる。新燃料に含まれるトリウムの割合が多くなるほど、無限中性子増倍率は小さくなる。トリウムの割合を調整することにより、燃料集合体の無限中性子増倍率の調整を行なうことができる。また、無限中性子増倍率の最大値は、ウランにトリウムを混合することにより小さくなる。ここで無限中性子増倍率の最大値とは、燃焼に伴って無限中性子増倍率は変化するが、その間に最大となる値である。
【0051】
図10に、本実施の形態における炉心の新燃料部に含まれる核種の密度のグラフを示す。横軸が径方向の位置であり、縦軸が新燃料部に含まれる核種の密度を示す。第1領域41の新燃料部は、燃料の組成が径方向にわたって略一定になるように形成されている。複数の第1の燃料集合体21aの新燃料部の組成は、互いにほぼ同じである。また、第3領域43の新燃料部は、燃料の組成が径方向にわたって略一定になるように形成されている。複数の第3の燃料集合体21cの新燃料部の組成は、互いにほぼ同じである。また、第3領域43の新燃料部は、第1領域41の新燃料部よりもウラン密度が大きく、トリウム密度が小さくなるように形成されている。本実施の形態においては、燃料に含まれるトリウム密度を小さくすることにより、第3領域43の新燃料部の無限中性子増倍率が大きくなるように形成されている。
【0052】
第2領域42の新燃料部は、炉心の径方向の外側に向かって、無限中性子増倍率が徐々に大きくなるように燃料の組成が変化している。本実施の形態における第2の燃料集合体21bは、1本の第2の燃料集合体21bの複数の燃料棒に含まれる新燃料の組成は互いにほぼ同じである。第2領域42の新燃料部は、径方向において第2の燃料集合体21bごとに組成が徐々に変化している。たとえば、炉心を平面視したときのほぼ円形の中心に近い列から遠い列に向かって、燃料集合体の列ごとにトリウムの密度を徐々に小さくすることができる。このように、第2領域42の新燃料部は、炉心の径方向の外側に向かってトリウムの密度が徐々に小さくなり、劣化ウランの密度が徐々に大きくなるように形成されている。
【0053】
図11に、本実施の形態の炉心における燃焼部の出力密度のグラフを示す。図11は、炉心の軸方向に沿って切断したときの概略断面図であり、出力密度が同じ線(等高線)を示している。本実施の形態における炉心の出力密度は、径方向においてほぼ一定になっている。すなわち、径方向の出力分布をほぼ一定にすることができる。また、燃料に対する中性子の照射量は、径方向にわたってほぼ一定になる。また、単位時間当たりの燃料の燃焼度は、径方向にわたってほぼ一定になる。
【0054】
図12に、炉心の軸方向の出力密度の積分値のグラフを示す。横軸は径方向の位置であり、縦軸は、それぞれの位置において出力密度を軸方向に積分したときの値(以下、「軸方向積分出力」という。)を示している。本実施の形態における炉心は、第1領域41における軸方向積分出力が略一定になっている。また、第2領域42における軸方向積分出力が略一定になっている。第3領域43においては、炉心外端の近傍まで、軸方向積分出力が略一定になっている。このように、本実施の形態における炉心は、径方向において出力密度をほぼ一定にすることができるために、軸方向積分出力を平坦化することができる。
【0055】
ところで、CANDLE燃焼法においては、炉心に装荷される新燃料を全て同じ組成にすることができる。例えば、トリウムを含まずに、一定量の劣化ウランを含む燃料集合体のみを用いて炉心を構成することができる。ここで、比較例として、トリウムを含まずに劣化ウランを含む燃料集合体のみで構成されている炉心を取り上げて説明する。
【0056】
図13に、比較例の炉心における燃焼部の出力密度のグラフを示す。比較例の炉心の出力密度は、炉心の中央部において高くなる。炉心の周辺部においては、中性子の漏れが多くなるために、径方向の外側に向かうほど出力密度が小さくなる。このため、燃焼部の軸方向の位置は、径方向の外側に向かうほど遅れた位置に配置される。
【0057】
図12を参照して、比較例の炉心においては、外周部に向かうにつれて徐々に軸方向積分出力が小さくなる。特に、本実施の形態における炉心の周辺部を構成する第2領域および第3領域に相当する領域において、中性子の漏れの影響が大きくなり、炉心外端に近づくほど軸方向積分出力が小さくなる。
【0058】
図14に、比較例の炉心の概略図を示す。比較例の炉心においては、燃焼部12が進む方向に向かって凸の形状になる。このために、径方向の周辺部に配置された燃料は、十分に燃焼していないにも関わらずに取り出される。炉心の周辺部に配置された燃料の取り出し燃焼度が小さくなる。特に、炉心の高さが小さい場合には、燃料の取り出し燃焼度が小さくなってしまう。
【0059】
図11および図12を参照して、本実施の形態における炉心では、中央部に形成されている第1領域では、新燃料部の組成を略一定にすることにより、軸方向積分出力を略一定にすることができる。また、炉心の外周部に形成されている第3領域では、中性子が炉心の外側に漏れる影響により外周部の軸方向積分出力が低くなることを抑制できる。また、炉心の外周部に無限中性子増倍率の大きな新燃料を配置することにより、炉心の臨界を達成することができる。第3領域に装荷する新燃料は、径方向の長さ(厚さ)を小さくするために、無限中性子増倍率の大きな燃料を装荷することが好ましい。このために、第3領域では、無限中性子増倍率が大きな組成の燃料が一様に装荷されていることが好ましい。この構成により、炉心を小さくすることができる。
【0060】
ところで、本実施の形態における第1領域と第3領域とが互いに隣り合うと、新燃料の組成の差異、すなわち燃料の無限中性子増倍率の差に起因して、領域の境界部分において軸方向積分出力を一様にすることが困難になる。本実施の形態の炉心のように、第1領域と第3領域との間に、無限中性子増倍率が変化する第2領域を介在させることにより、軸方向積分出力をほぼ一定にすることができる。このように、本実施の形態における炉心は、炉心を小型にするとともに、軸方向積分出力がほぼ一定の領域を大きくすることができる。
【0061】
図6を参照して、本実施の形態の炉心では、軸方向積分出力が炉心の中央(炉心軸)から外端近傍まで、ほぼ一定であるために、炉心の中央部から外周部にかけて、ほぼ一様に燃料が燃焼する。このため、炉心の外周部に配置されている燃料も、短い炉心高さで十分に燃焼させることができる。この結果、取り出し燃焼度を高くすることができる。
【0062】
図15に、炉心の出力密度と炉心の出口における冷却材温度のグラフを示す。図15では、本実施の形態における炉心と比較例の炉心とのグラフを示している。炉心は、所定の部分の最高温度が制限される場合がある。たとえば、燃料の最高温度が制限される場合がある。このような場合には、複数の燃料集合体のうち、最も温度が高くなる燃料の温度が許容温度を超えないように、設計されたり制御されたりする。燃料が許容温度を越えないように、たとえば、炉心出口の冷却材温度が制限される場合がある。
【0063】
比較例の炉心においては、出力密度の分布が凸状になるために、冷却材流量が径方向に一定の場合、炉心軸上(r=0)において燃料温度が最も高くなる。炉心の出口における冷却材温度は、冷却材流量が径方向に一定の場合、炉心軸上で最も高くなる。比較例の炉心は、炉心軸上の冷却材の温度が許容温度を超えないように設計されたり、制御されたりする。このときに、炉心の周辺部の出力密度は、炉心軸上の出力密度よりも小さくなり、炉心全体の出力が小さくなっていた。また、炉心の周辺部の炉心の出口における冷却材温度は、冷却材流量が径方向に一定の場合、炉心軸上の炉心の出口における冷却材温度よりも低くなり、炉心全体の炉心の出口における冷却材温度(原子炉容器の出口における冷却材温度)が低くなり、発電の熱効率が低くなっていた。
【0064】
なお、冷却材流量を径方向に変化させることにより、炉心の出口における冷却材温度を径方向の全ての位置において最高許容温度にすることができる。炉心全体にわたって炉心の出口における冷却材温度を高くすることができて、発電の熱効率を高くできる。しかし、この場合でも、比較例の炉心では炉心全体の出力が小さいままである。
【0065】
これに対して、本実施の形態における炉心では、軸方向積分出力を径方向にわたって、ほぼ一定にすることができるため、比較例の炉心と同じ燃料温度等の所定の制限を有していても、炉心の周辺部の出力を大きくすることができる。炉心全体の出力を大きくすることができる。この結果、炉心の単位体積あたりの出力を大きくすることができる。または、炉心の平均出力密度を高くすることができる。また、本実施の形態における炉心では、炉心の出口における冷却材温度を径方向の全ての位置において最高許容温度にすることができる。この結果、炉心全体にわたって炉心の出口における冷却材温度(原子炉容器の出口における冷却材温度)を高くすることができる。本実施の形態における原子炉が熱交換器を備える発電設備に配置されている場合には、発電の熱効率を高くできる。
【0066】
図10を参照して、第1領域と第2領域との境界部分においては、第1領域の新燃料部の組成と第2領域の新燃料部の組成とが連続的に変化していることが好ましい。例えば、第1領域と第2領域との境界部分において、第2領域の新燃料部の組成と第1領域の新燃料部の組成とが一致していることが好ましい。また、第2領域と第3領域との境界部分において、第2領域の新燃料部の組成と第3領域の新燃料部の組成とが連続的に変化していることが好ましい。例えば、第2領域と第3領域との境界部分において、第2領域の新燃料部の組成と第3領域の新燃料部の組成とが一致していることが好ましい。この構成を採用することにより、それぞれの領域の境界部分において、軸方向積分出力が不連続になることを抑制することができる。
【0067】
第2領域においては、径方向の長さを調整して、それぞれの境界における領域同士の間を往来する中性子量をほぼ同じにして、第2領域の軸方向積分出力をほぼ一定にすることが好ましい。また、第3領域の径方向の長さは、第2領域との境界において、軸方向積分出力が連続になり、更に軸方向積分出力が略一定になるように定めることが好ましい。この構成により、炉心の中央から外端まで軸方向積分出力をより一定にすることができる。
【0068】
本実施の形態における炉心では、劣化ウランにトリウムを混合することにより、無限中性子増倍率を変化させているが、この形態に限られず、燃料の組成を変える任意の方法により、無限中性子増倍率を変化させることができる。例えば、ウランのみを含む燃料よりも無限中性子増倍率を小さくするために、金属燃料において、金属ウランと混合金属との割合を変化させることができる。例えば、燃料は金属ウランとジルコニウムとから形成することができる。燃料に含まれるジルコニウムの含有率を増やし、ウランの含有率を減らすことにより、無限中性子増倍率を小さくすることができる。更に、ウラン以外の金属を2種類以上含む燃料を採用することができる。たとえば、ジルコニウムの一部をモリブデン等の他の金属に置き換えた燃料を採用することができる。ウラン以外の金属の含有率を変化させることにより、中性子吸収の効果を変化させることができる。
【0069】
本実施の形態における炉心の第2領域の新燃料部は、径方向において第2の燃料集合体ごとに組成が徐々に変化しているが、この形態に限られず、1本の燃料集合体において、燃料棒ごとに燃料の組成を変化させても構わない。たとえば、燃料集合体を装荷する向きを予め定めておいて、炉心の外側に配置される燃料棒の新燃料部のトリウム等の含有率を低くしても構わない。また、本実施の形態における炉心の第3領域の新燃料部にはトリウムが含まれていないが、この形態に限られず、第3領域の新燃料部にトリウム等が含まれていても構わない。
【0070】
本実施の形態における燃料は、炉心に装荷するウランとして劣化ウランを例に取り上げて説明したが、この形態に限られず、天然ウランおよび劣化ウランのうち少なくとも一方を用いて、CANDLE燃焼を達成することができる。また、CANDLE燃焼を行なうことができる任意の高速中性子炉に、本発明を適用することができる。
【0071】
本実施の形態においては、燃焼サイクル初期において前サイクルの燃焼部を新燃料部の上側に配置したが、この形態に限られず、新燃料部は、炉心の軸方向のうち、燃焼部のいずれか一方の端部に配置することができる。さらには、燃焼部の両側に新燃料部が配置されていても構わない。
【0072】
また、本実施の形態においては、サイクル初期の燃焼を開始する部分は、前サイクルのサイクル末期において、炉心の下部に配置されている燃料を使用しているが、この形態に限られず、サイクル初期における燃焼を開始する部分は、中性子を自発的に発生するように形成されていれば構わない。たとえば、所定の濃度のプルトニウムや濃縮ウランなどを含む燃料が配置されていても構わない。更には、外部から中性子が供給されることにより、燃焼が開始されても構わない。
【0073】
また、本実施の形態における炉心は、炉心の軸方向が鉛直方向と平行になっているが、この形態に限られず、炉心の軸方向は水平方向と平行になっていても構わない。すなわち、本実施の形態における炉心を横置きにしても構わない。
【0074】
本実施の形態においては、燃料の燃焼が定常になっている時に、炉心に対して反応度の制御を行わない運転方法を例に取り上げて説明したが、この形態に限られず、反応度制御を行っても構わない。たとえば、制御棒を配置して、反応度制御を行うことにより、炉出力の調整を行なっても構わない。または、冷却材の流量を変更することにより反応度制御を行っても構わない。また、燃焼サイクルの起動時および停止時には、反応度制御を行うことが好ましい。
【0075】
本実施の形態においては、発電設備に用いられる原子炉の炉心を例に取り上げて説明したが、この形態に限られず、任意の設備の原子炉に本発明を適用することができる。たとえば、船舶等の動力源として本発明の原子炉の炉心を用いることができる。
【0076】
上述のそれぞれの図において、同一または相当する部分には同一の符号を付している。なお、上記の実施の形態は例示であり発明を限定するものではない。また、実施の形態においては、特許請求の範囲に示される変更が含まれている。
【符号の説明】
【0077】
1 原子炉
9 原子炉容器
10 炉心
11 新燃料部
12 燃焼部
21a 第1の燃料集合体
21b 第2の燃料集合体
21c 第3の燃料集合体
22a 燃料棒
24aa,24ab,24ac 燃料ペレット
41 第1領域
42 第2領域
43 第3領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新燃料が装荷されている新燃料部と、新燃料部の一方の側に配置され、中性子を発生して燃料が燃焼する燃焼部とを備え、新燃料は天然ウランおよび劣化ウランのうち少なくとも一方のウランを含み、ウランが中性子を吸収して生成されたプルトニウムが核分裂することにより出力を発生し、燃焼サイクルの初期から末期にかけて、燃焼部がほぼ一定の形状を保ちながら新燃料部に向かう方向に移動する原子炉の炉心であって、
炉心を平面視したときに中央部に第1領域が画定され、炉心の外周部に第3領域が画定され、第1領域と第3領域との間に第2領域が画定されており、
第1領域の新燃料部は、組成が略一定になるように形成されており、
第3領域の新燃料部は、第1領域の新燃料部よりも無限中性子増倍率が大きく、組成が略一定になるように形成されており、
第2領域の新燃料部は、炉心の径方向の外側に向かって、無限中性子増倍率が徐々に大きくなるように組成が変化していることを特徴とする、原子炉の炉心。
【請求項2】
第1領域と第2領域との境界部分において、第1領域の新燃料部の組成と第2領域の新燃料部の組成とが連続的に変化し、
第2領域と第3領域との境界部分において、第2領域の新燃料部の組成と第3領域の新燃料部の組成とが連続的に変化していることを特徴とする、請求項1に記載の原子炉の炉心。
【請求項3】
第1領域の新燃料部は、天然ウランおよび劣化ウランのうち少なくとも一方とトリウムとの混合物を含み、
第3領域の新燃料部は、天然ウランおよび劣化ウランのうち少なくとも一方を含み、
第2領域の新燃料部は、天然ウランおよび劣化ウランのうち少なくとも一方とトリウムとの混合物を含み、炉心の径方向の外側に向かってトリウムの含有率が徐々に小さくなるように形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の原子炉の炉心。
【請求項4】
複数の燃料棒を含む燃料集合体を備え、
第2領域には径方向において複数の燃料集合体が装荷されており、第2領域に装荷される1本の燃料集合体に含まれる複数の燃料棒の新燃料部の組成はほぼ同一であり、
第2領域の新燃料部は、径方向において燃料集合体ごとに組成が徐々に変化していることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の原子炉の炉心。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の原子炉の炉心と、
前記炉心が内部に配置されている原子炉容器とを備える、原子炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−145552(P2012−145552A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6309(P2011−6309)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)