説明

原子炉リストレーナブラケットの調整可能ハードストップ及びその使用方法

【課題】新たな構造のリストレーナブラケットを提供する。
【解決手段】ハードストップ200は、原子炉内で、リストレーナブラケットとインレットミキサとを分離して押圧し、リストレーナブラケットを把持するリップクランプ250と、インレットミキサを押圧するウェッジ部材とを含む。ウェッジ部材及びリップクランプ250は互いに摺動して、リストレーナブラケット及びインレットミキサを押圧できる方式で係合される。リップクランプは、リストレーナブラケットの面を把持するクランプアーム251及び係合部材252を含む。ラチェットアセンブリは、ハードストップの各種の部品の選択的位置決め状態を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、原子炉リストレーナブラケットの調整可能ハードストップ及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の沸騰水型原子炉は、炉心シュラウドを取り囲む原子炉圧力容器(RPV:Reactor Pressure Vessel)を含む。この炉心シュラウドは、更に、原子炉芯を取り囲んでいる。一般に、炉心シュラウド及び原子炉圧力容器は円筒状に形成され、炉心シュラウドの外径は、原子炉圧力容器の内径よりも小さい。原子炉圧力容器の壁面と炉心シュラウドの壁面の間には環状の空間が存在し、この空間には、通常、ジェットポンプアセンブリが配置される。
【0003】
図1に、前述した環状部(アニュラス)内に配置された従来のジェットポンプアセンブリ25を示す。図1に示すように、RPV20の側壁15を通って延びるインレットノズル10は、ジェットポンプアセンブリ25に連結される。ジェットポンプアセンブリ25は、シュラウド35とRPV20の側壁15の間に延びるライザ管30を含む。ライザ管30は、遷移アセンブリ40によって2つのジェットポンプ35A及び35Bに連結される。各ジェットポンプ35A、35Bは、ジェットポンプノズル42、吸込みインレット45、インレットミキサ50、及びディフューザ55を含む。例えば、第1ジェットポンプ35Aは第1インレットミキサ50Aを含み、第2ジェットポンプ35Bは第2インレットミキサ50Bを含む。ジェットポンプノズル42は、インレットミキサ50A、50Bの第1端部に設けられた吸込みインレット45の中に配置される。ディフューザ55は、スリップジョイント65によって、インレットミキサ50A、50Bの第2端部に連結される。一般に、インレットミキサ50A、50B、及びディフューザ55は、いずれも複数の円筒区画から構成される。円周溶接部70がこれらの円筒区画を結合する。支持部材(ライザブレース)75は、通常、ライザ管30を取り囲み、溶接部80を介してライザ管30に連結される。この溶接部80は、約180度に亘ってライザ管30の円周を取り巻くことができる。インレットミキサ50A及び50Bは、リストレーナブラケット105を介してライザ管30に固定される。
【0004】
図2に示すように、従来のリストレーナブラケット105は、インレットミキサ50Aの胴体帯部195においてインレットミキサ50Aを囲繞するヨーク状部材である。図示してないが、同様のヨーク状リストレーナブラケットがミキサ50Bを取り囲んでいる。リストレーナブラケット105を貫いて、少なくとも2つの止めネジ110が存在し、これらの止めネジは、インレットミキサ胴体帯部195に押し当てられる。図2には、一つの止めネジ110のみが図示されている。インレットミキサ50Aは、リストレーナブラケット105の外側端部から延伸してその周りに配置される複数の案内耳190を更に含む。リストレーナブラケット105に対する堅牢な支持を提供するために、リストレーナブラケット105のエッジとリップの間に補強リブ191が存在する。主要ウェッジ115は、一般に、リストレーナブラケット105のリストレーナブラケットパッド145とインレットミキサ胴体帯部195の間に設けられる。主要ウェッジ115は、ウェッジロッド130が通る円形の穴を含む。ウェッジロッド130は、リストレーナブラケット105の上方に設けられた上部支持成形体120に連結されるねじ切り上端部131と、リストレーナブラケット105の下方の下部支持成形体125に連結されるねじ切り下端部とを有する。インレットミキサ50Aは垂直方向又は水平方向に移動するため、ウェッジ115はウェッジロッド130上で摺動でき、リストレーナブラケットパッド145と、ウェッジ115と、リストレーナブラケット胴体帯部195との間の接触により、前述したインレットミキサ50Aの動作に非破壊的に逆らってその動作を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7627074号
【0006】
実施例は、リストレーナブラケット及びインレットミキサ等の関連部品を分離して押圧する、稼働している原子炉内で利用できるハードストップを含む。実施例のハードストップは、ジェットポンプアセンブリ内のリストレーナブラケットを把持するリップクランプと、リストレーナブラケットにおいてインレットミキサを押圧するウェッジ部材とを含む。ウェッジ部材及びリップクランプは、これら2つの部品が単一の方向において互いに摺動できるように、移動可能に係合される。リップクランプは、リストレーナブラケットの面をそれぞれ反対側から把持するクランプアーム及び係合部材を含む。リップクランプは、ラチェットアセンブリを更に含み、このラチェットアセンブリは、ラチェット動作によって、係合部材に対するクランプアームの選択的位置決めを実行し、その位置決め状態を維持する。
【0007】
リップクランプは、更に、ウェッジ部材の溝に収容された係合延長部を介して、単一方向に移動可能にウェッジ部材に係合される。この境界面に沿った相対動作は、ロッドを介して実現でき、ロッドは、ウェッジ部材によって画定されるフランジに回転可能に嵌め込まれる一方で、ねじ切り表面及びねじ穴を介して係合延長部に連結される。更に他のラチェットアセンブリを、対応するラチェット保持部を有するロッドに取り付けて、ウェッジ部材に対するリップクランプの選択的位置決め状態を単一の接触方向に維持する。ハードストップを跨いだ、インレットミキサとリストレーナブラケットの間の直線距離に対して傾斜した面として単一の接触方向を構成することによって、インレットミキサ及びリストレーナブラケットは、ウェッジ部材に対してリップクランプを単一方向に移動することで、互いに離れるように仕向ける。実施例のハードストップは、ステンレス鋼、ニッケル合金、及びジルコニウム合金を含め、反応炉に適合する材料から作製される。
【0008】
実施例のハードストップは、各種の異なる個数、異なる位置、及び異なる構成で利用される。例えば、実施例の2つのハードストップは、リストレーナブラケットの案内耳又は補強リブにおいて、リストレーナブラケットに固定される。原子炉にハードストップを用いる方法の例は、インレットミキサがジェットポンプアセンブリから外側に湾曲することを防止する方向でインレットミキサを押圧するように、ハードストップを設置する位置を決定し、該決定した位置に少なくとも一つのハードストップを固定し、及び/又は、該決定した位置において、第1部品と第2部品の間でハードストップを押圧することを含む。例えば、該位置は、原子炉内のジェットポンプアセンブリのリストレーナブラケットにおいて、そのリストレーナブラケットと、リストレーナブラケットによって囲まれたインレットミキサとの間である。
【0009】
本発明の実施例は、添付の図面と組み合わせて提示する下記の詳細な説明からより明瞭に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来のジェットポンプアセンブリを示す図である。
【図2】ジェットポンプアセンブリの従来のリストレーナブラケットを示す図である。
【図3】実施例のハードストップを利用する実施例のシステムを示す図である。
【図4】実施例のハードストップを示す図である。
【図5】実施例のハードストップに利用できるリップクランプの詳細図である。
【図6】実施例のハードストップに利用できるウェッジ部材の詳細図である。
【図7】原子炉にハードストップを使用する方法の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について、実施例を図示した添付の図面を参照しながらより詳細に説明する。ただし、本発明は、異なる形式で実施され、本明細書に記載した実施形態に限定されると解釈されるべきではない。例えば、実施例は、沸騰水型反応炉(BWR:Boilin Water Reactor)を参照して記載されるが、実施例は、他のタイプの原子炉設備にも利用できることは理解されよう。実施例は、本開示が詳細かつ完全に理解され、本発明の範囲を当業者に十分に伝えることを目的として提供される。図面において、部品の大きさは、判りやすくするために誇張される場合がある。
【0012】
要素又は層が他の要素や層に「載置」、「接続」、又は「結合」されると記載される場合、その要素又は層は、他の要素や層に、直接、載置、接続、若しくは結合されても、又は、存在する介在要素や層に、載置、接続、若しくは結合されてもよいことは理解されるであろう。逆に、要素が、他の要素や層に、「直接載置」、「直接接続」、若しくは「直接結合」されると記載される場合は、介在する要素や層は存在しない。本明細書において、「及び/又は」の用語は、関連して列挙した一つ以上の項目の一部の組み合わせ、及び全ての組み合わせを含む。
【0013】
第1、第2等の用語は、本明細書において、各種の要素、部品、領域、層、及び/又は区画を記述するために用いられるものであるが、これらの要素、部品、領域、層、及び/又は区画は、第1、第2等の上記の用語に限定されないことは理解されよう。これらの用語は、一つの要素、部品、領域、層、及び/又は区画を別の要素、部品、領域、層、及び/又は区画と区別するためにのみ用いられる。従って、下記に記載する第1の要素、部品、領域、層、又は区画は、実施例の教示から逸脱することなく、第2の要素、部品、領域、層、又は区画と表現される。
【0014】
「下」、「下方」、「下部」、「上方」、「上部」等の空間的関係を表す用語は、本明細書において、説明を簡単にするため、図面に記載されるような一つの要素や特徴と、他の要素や特徴との関係を記述するために用いられるものである。空間的関係を表す用語は、図面に記載した向きの他に、使用時又は動作時の装置の異なる向きを包含することが意図される。例えば、図中の装置を回転させた場合、他の要素や特徴物の「下方」又は「下」と記載された要素は、その他の要素や特徴物の「上方」にその位置が代わることになる。従って、例えば、「下方」という用語は、上方と下方の位置の両方を包含する。装置は他の向き(90度回転されるか、又は他の位置)であってもよく、本明細書に用いる空間的関係の記載も同様に解釈される。
【0015】
本明細書に記載する実施形態には、理想的な模式図を用いた平面図及び断面図の少なくとも一方が参照される。従って、これらの図は、製造技術及び製造交差の少なくとも一方に応じて変化する。従って、実施例は、図示したものに限定されるのではなく、製造工程に基づいて形成される構成の変更を包含する。このため、図面に例示した領域は、模式的特性を有し、図面に示した領域の形状は、要素の特定の形状や領域を例示するものであり、実施例を規定するものではない。
【0016】
前述したように、ジェットポンプアセンブリ25の従来のライザ管30は、リストレーナブラケット105を介してインレットミキサ50A及び50Bに連結される。本願の発明者らは、インレットミキサ50A及び50Bにおける垂直及び径方向の移動が、ウェッジ115に加え、リストレーナブラケット105と相互作用する他の各種の要素に摩耗及び他の動作上の不具合を引き起こし、その結果、リストレーナブラケット105が、水平方向/径方向と垂直方向の両方においてインレットミキサ50A及び50Bを安定させる能力を失うことを突き止めた。このため、インレットミキサ50A及び50Bの垂直方向の移動は、従来のリストレーナブラケットによって、熱膨張、振動等について許容されているが、この垂直方向の移動により、インレットミキサ50A及び50Bの少なくとも一方が、止めネジ110から水平に離れる方向に変位して、ライザ管30から離れて湾曲し、更なる振動、損傷、及びジェットポンプ50A及び/又は50Bを通る流動効率の低下の少なくともいずれかを引き起こす。
【0017】
後述する実施例及び方法の例は、従来のリストレーナブラケット105の利用における前述の作用に独創的に対処し、既存のリストレーナブラケットの構造を大幅に改造することなく、インレットミキサの水平方向の湾曲を低減することを含むいくつかの利点、及び/又は、原子力発電所における下記で説明する、もしくは説明しない他の利点を実現する。
(実施例)
図3に、インレットミキサ50の長さに沿ったインレットミキサ50の垂直方向の上方若しくは下方への移動によって生じる、又はこの移動と共に生じる、中央ライザ管30から離れてリストレーナブラケット105に向かう、インレットミキサ50の水平/径方向の湾曲を防止又は低減する実施例のハードストップ200を用いる実施例のシステムを示す。図3に示すように、実施例の一つ以上のハードストップ200は、リストレーナブラケット105とインレットミキサ50の間に取り付けられ、これにより、リストレーナブラケット105とインレットミキサ50の間の移動を安定化すると共に、リストレーナブラケット105の外側に向かうインレットミキサ50の更なる移動を防止又は抑制できる。例えば、実施例の2つのハードストップは、リストレーナブラケット105とインレットミキサ50の間で、リストレーナブラケット105の案内耳190のところ、及びリストレーナブラケット105の補強リブ191のところに配置される。これにより、インレットミキサ50の反対側(図1のライザ管30の方向と反対の側)に押圧構造又は押圧力が付与される場合に、等間隔の三点支持が、実施例のハードストップ200により、リストレーナブラケット105の中心点のいずれの側においても逆方向の押圧力から等距離で提供される。
【0018】
案内耳190及び補強リブ191の少なくとも一方に取り付けることによって、リストレーナブラケット105の周りでの実施例のハードストップ200の周方向移動を低減又は防止できるため、インレットミキサ50とハードストップ200の間の均衡のとれた接触が維持される。また、インレットミキサ50からの力が、実施例の一つ以上のハードストップ200に向かうように仕向けることによって、止めネジ110、ウェッジ115、及び関連構造体への直接的な力、ひいてはその結果生じる摩耗を抑制又は防止できる。図3には、実施例のハードストップ200を、案内耳190、補強リブ191にペアで図示したが、他の個数及び他の位置でも実施例のハードストップ200を同様に利用できることは理解されよう。
【0019】
実施例のハードストップ200は、インレットミキサ50と、案内耳190/補強リブ191とに取り付けられる形状であることに加え、実施例のハードストップ200は、更に、リストレーナブラケット105と結合するように形成される。例えば、実施例のハードストップ200は、リストレーナブラケット105のリップの周りに延びて、そのリップを把持し、垂直方向、及び水平/周方向においてリストレーナブラケット105に堅固に結合させる。実施例のハードストップ200は、更に、例えば胴体帯部195において案内耳190及び/又はインレットミキサ50に当接して、これらの構造体を押圧する。実施例のハードストップに複数の異なる固定機構及び固定構成を利用でき、所望の方向に規定の調整可能な押圧を提供しながら、リストレーナブラケット105とインレットミキサ50の間の所望の分離状態を維持して、前述した外側への湾曲及び摩耗を防止する。例えば、ハードストップは、ボルト及びネジを含む機械的締結具によって、又は溶接によって、リストレーナブラケット105に取り付けられる。同様に、リストレーナブラケットに結合されて、インレットミキサを押圧する実施例を説明したが、実施例のハードストップを他の構造体に設けて、所望の分離状態及び/又は押圧状態を実現してもよい。
【0020】
図4は、図3のシステム例で用いる場合に焦点を当てて示した、実施例のハードストップ200の等角図である。図4に示すように、実施例のハードストップ200は、径方向においてリストレーナブラケット105と接触して、そのリストレーナブラケット105からの直角力L2を受け取る。実施例のハードストップ200は、更に、周方向において案内耳190又は補強リブ191と接触して、そこからの直角力L1を受け取る。L1及びL2の力の和は、インレットミキサ50と実施例のハードストップ200とが接触するいずれの垂直位置においても、インレットミキサ50の面に垂直な方向で、インレットミキサ50に直角方向の合力LRを提供する。図4に示すように、合力LRは、実施例のハードストップ200からインレットミキサ50に均等に分配される。もちろん、実施例のハードストップ200と相互作用する他の部品からの他の力が、所望の合力を提供してもよい。
【0021】
次に、前述した配置及び構成を独創的に実現する、実施例のハードストップ200の具体的な特徴について説明する。下記で説明するものとは別の構造及び機能を実施例のハードストップに利用して、リストレーナブラケットとインレットミキサ又は他の構造体との間の所望の結合及び力分布を提供できることは理解されよう。図4に示すように、実施例のハードストップ200は、調整可能なリップクランプ250を含み、このリップクランプ250は、リストレーナブラケット105に固定されて、本実施例において、ハードストップ200とリストレーナブラケット105とを垂直方向、水平/周方向、及び水平/径方向に堅固に結合できる。実施例のハードストップ200は、ウェッジ部材210を更に含み、このウェッジ部材210は、リップクランプ250に移動可能に結合されて、各種の垂直方向のポイントにおいて、導体帯部195又は他の場所でリストレーナブラケット105に当接するように構成される。リップクランプ250とウェッジ部材210とは、斜めの、又は傾斜した境界面259において移動可能に係合する。
【0022】
リップクランプ250について、図4及び図5との関連で説明する。リップクランプ250は、前述したリストレーナブラケット105と実施例のハードストップ200との間の堅固な固定を提供する。図4及び図5に示すように、リップクランプ250は、2つの可動式係合部品、クランプアーム251とリップ係合部材252とを含む。クランプアーム251は、リストレーナブラケット105(図3)の底面に到達する十分な長さで垂直方向下方に延びるブレース255を含む。ブレース255は、リストレーナブラケット105の底面を取り巻いて延びる棚状突起を含む。ブレース255は、リストレーナブラケット105と直接結合する形状及び寸法に形成されることに加え、又はこれに代えて、ブレース255は、リストレーナブラケットと、若しくは実施例のハードストップ200の所望の位置決め/機能を提供する他の特徴物と間接的に係合するように構成される。
【0023】
クランプアーム251は、リップ係合部材252内で移動可能であるため、例えば、所望の把持機能及び/又は取り外し及び取り付けのための物理的構成を提供する。図4及び図5に示すように、クランプアーム251は、ウェッジ部材210に近づく方向で水平/径方向に摺動して移動する。クランプアーム251は、クランプアーム251の延長部を収容して、クランプアーム251とリップ係合部材252の他の方向への相対移動を防止するクランプ溝254内で摺動する。リップ係合部材252は、リップ受け面256を含み、このリップ受け面256には、ブレース255を有するクランプアーム252が、リストレーナブラケット105(図3)の反対側の表面の方に押されたときに、リストレーナブラケット105(図3)のリップ又は延長部が押しつけられる。これにより、ブレース255及びリップ受け面256は、リストレーナブラケット105の面の反対側にそれぞれ対応して、クランプアーム251とリップ係合部材252の間にリストレーナブラケット105を把持する。
【0024】
クランプアーム251は、クランプアーム251とリップ係合部材252の間の選択的な移動及び引張状態を提供するラチェットアセンブリ260又は他の装置を更に含む。図5に示すように、ラチェットアセンブリ260は、調整式ラチェットボルト263、ラチェット面262、対応するラチェット保持部261、及び/又は解除器264を含む、複数のラチェット部品を含む。ラチェットボルト263は、クランプアーム251を通って延びて、クランプ溝254の面と相互作用し、回転されたときに、クランプ溝254内でクランプアーム251を移動させる、又は固定する。ラチェット面262は、ラチェットボルト263と一緒に回転し、固定された対応するラチェット保持部261に対するラチェット移動を行って、ラチェットボルト263、ひいてはクランプアーム251の単方向移動を提供する。例えば、ラチェットアセンブリ260は、リップ係合部材252の側にクランプアーム251を動かす方向でのボルト263の単方向移動を許可して、クランプアーム251とリップ係合部材252の間におけるリストレーナブラケット105(図3)への押圧把持を提供する。ばね荷重式解除器264は、ラチェットボルト263の双方向移動を許可して、例えば、リストレーナブラケット105から実施例のハードストップ200を緩める、又は解放できるようにする。もちろん、他の機構及び構造が、クランプアーム251とリップ係合部材252の間の選択的押圧を提供してもよく、このような機構及び構造としては、既に存在しているリストレーナブラケットにリップクランプ250を確実に結合できる各種のばね、弾性部材、ねじとねじ穴、磁石、接着剤等が挙げられる。
【0025】
図4に示すように、リップクランプ250及びウェッジ部材210は、傾斜した境界面259を中心として摺動可能に係合するため、ウェッジ部材210及びリップクランプ250それぞれの表面259aと表面259bの間の傾斜した境界面259に沿った、リップクランプ250とウェッジ部材210の相対移動を実現できる。このような係合は、リップクランプ250内の嵌合延長部253(図5)をウェッジ部材210の対応する嵌合溝213(図6)に挿入することを含むいくつかの方式で実現できる。これ以外において、表面259a及び259b、並びに嵌合延長部253と対応する嵌合溝213との間の接触は、2つの表面が互いに摺動可能に移動することを許容する滑らかさである。リップクランプ250とウェッジ部材210の相対移動は、他のいずれの方向においても防止される。
【0026】
ウェッジ部材210とリップクランプ250の特定の相対位置は、複数の方式で実現されて保持される。例えば、図5に示すように、嵌合延長部253は、傾斜した境界面259の方向に、嵌合延長部253が貫通するねじ穴258を更に含む。ねじ込みロッド257は、対応するねじを含み、ねじ穴258にねじ込む。ねじ込みロッド257と、嵌合延長部253、ひいてはリップクランプ250との間の相対位置は、ねじ穴258内のねじ込みロッド257を廻すことによって調整される。
【0027】
ねじ込みロッド257に、境界面ラチェットアセンブリ270を設け、リップクランプ250とウェッジ部材210の相対位置を保持し、ねじ込みロッド257の単方向回転、ひいてはウェッジ部材210とリップクランプ250の単方向相対移動を可能にすると共に、又はこれに代えて、相対位置を維持することによって実施例のハードストップ200の押圧を可能にする。図5及び図6に示すように、ねじ込みロッド257は、ウェッジ部材210内の対応するフランジ214と係合するように形成されて、そのフランジ内に回転可能に収容されるブッシング273を含む。ねじ穴258に対してねじ込みロッド257を回転させると、リップクランプ250は、境界面259に沿った方向で押されるが、これは、ねじ込みロッド257が、対応するフランジ214に取り付けられたブッシング273を介してウェッジ部材210に固定されているためである。ロッドボルト271及びラチェット面272は、ラチェットアセンブリ260と同様の方式で、ウェッジラチェット保持部212を有するラチェットとして機能する。例えば、ラチェット面272は、ウェッジラチェット保持部212と相互作用して、ロッドボルト271、ひいてはねじ込みロッド257が単一の方向にのみ回転するようにし、境界面259に沿って下方にリップクランプ250を押す。解放機構は、境界面ラチェットアセンブリ270に双方向移動を解放して、双方向に移動できるようにする。
【0028】
もちろん、リップクランプ250とウェッジ部材210の間に、境界面259を中心とした所望の相対移動、位置決め、及び押圧を提供する他の構造及び機能も、実施例のハードストップ200に同様に利用できる。例えば、ねじ込みロッド257は、ねじ切りされるのではなく、嵌合延長部253と滑らかに一体化される。ねじ込みロッド257については、ロッドボルト271を回転して、リップクランプ250とウェッジ部材210を互いに相対移動させたときに、そのロッド257自体が伸縮式に伸長する。これに代えて、リップクランプ250とウェッジ部材210の間の歯車機構、ピンと止め穴、ばね、弾性部材、ねじとねじ穴、磁石、接着剤等、又は他の可撓性移動構造が、実施例のハードストップ200の選択的相対移動及び伸長を実現してもよい。
【0029】
図6に示すように、ウェッジ部材210は、導体帯部195等において、インレットミキサ50と実質的に面一方式で接触する接触面215を含む。ウェッジ部材210及び接触面215は、比較的長い垂直長さを有するため、インレットミキサ50が動作中に上下いずれかの垂直方向、又は径方向に変位した場合にも、インレットミキサ50と接触している。実施例のハードストップ200内のウェッジ部材210及びリップクランプ250の少なくともいずれかは、案内耳195や補強リブ191等の外部の横方向構造物に支承されるように構成される水平幅及び側面を更に備える。前述した方式で選択的に押圧された後で剛体として機能することによって、実施例のハードストップ200は、インレットミキサ50及びリストレーナブラケット105等の所望の部品の中で力L1、L2、LRを変換する。図4〜6に示すように、実施例のハードストップは、ウェッジ部材210が境界面259に沿ってリップクランプ250に対して下方に移動したときに、径方向に伸長することに加え、又はこれに代えて、L2方向の追加の押圧力を提供する。例えば、リップクランプがリストレーナブラケット105に固定された状態でロッドボルト271を回転させることによって、ウェッジ部材210は、傾斜した境界面259に沿って下方に移動するため、接触面215は、垂直方向下方と、水平/径方向内側の両方向に移動する。すなわち、接触面215と、リストレーナブラケット105に載置されたリップ受け面256の間の全距離は、実施例のハードストップ200内でウェッジ部材210が下方に押し下げられたときに増大する。この増大した距離は、インレットミキサ50への追加の押圧の提供、及び/又はリストレーナブラケット105とインレットミキサ50の間の所望の離隔度合いの実現をもたらす。境界面ラチェットアセンブリ270のラチェット動作は、実施例のハードストップ200を押圧された構成に固定でき、実施例のハードストップ200から一定の分離と力を提供できる。
【0030】
実施例のハードストップは、原子炉内の動作状況に耐え、材料の適合性を提供し、かつ、接触する部品のファウリングを回避するように設計された材料から作製される。例えば、ウェッジ部材210、クランプアーム251、リップ係合部材252、ラチェットボルト263、及びねじ込みロッド275のうちの少なくともいずれかは、304型ステンレス鋼等のステンレス鋼で作製される。各種のラチェット保持部261及び212は、インコネルX−750等のニッケルクロム合金で作製されると、これらの保持部261及び212と常に材料接触する他のハードストップ要素との材料適合性を維持できる。これに代えて、例えば、ねじ込みロッド275及びラチェットボルト263のいずれかが、304型、316型、又はXM−19型等、他のタイプのステンレス鋼から作製される。また、実施例のハードストップの全ての部品は、実施例のハードストップと相互作用する原子炉の構成要素における所望の材料特性及び材料の適合性によって異なるが、ジルカロイ、オーステナイト系ステンレス鋼、ニッケル合金等、放射能のレベル及びタイプが増大している高圧/高温の水溶性環境において自身の物性をほぼ維持する材料から作製される。
【0031】
従って、実施例のハードストップ200は、稼働している原子力発電反応炉等、いくつかの過酷な環境において利用できる。実施例と関連させて上記で説明したいくつかの特徴は、具体的な適用先、及び実施例のハードストップの所望の動作特性の少なくともいずれかに基づいて再構成されても、又は省略されてもよいことは理解されよう。実施例のハードストップ200は、後述する方法例に従って設置及び利用できるが、他の利用方式及び設置場所も実施例のハードストップに適用可能であることは理解されよう。
(方法例)
方法の例は、原子炉のジェットポンプに、実施例のハードストップ200のような一つ以上のハードストップを取り付けることを含む。図7に示すように、方法例は、原子力発電所内にハードストップ(一つ又は複数)を設置する一つ以上の位置を決定するステップ100を含む。例えば、ステップ100において、リストレーナブラケット105(図2)についての特定の径方向位置を選択して、ハードストップを取り付けられ、これにより、ライザ管30から最も遠いインレットミキサ50側のリストレーナブラケット105とインレットミキサ50の間等、リストレーナブラケット105とインレットミキサ50の間の所望の分離、及び/又は押圧を実現できる。
【0032】
方法例は、決定した一つ以上の位置にハードストップを固定するステップ200を更に含む。例えば、実施例のハードストップ200を利用する場合、ラチェットアセンブリ260を用いてリップクランプ250を緩めて、クランプアーム251とリップ係合部材252とを、リストレーナブラケット105に嵌め込む。次に、ラチェットアセンブリ260を選択的に締め付けることで、面256及び255を、リストレーナブラケット105の、それぞれ反対側の対応する面に押し付けて、所望の位置でリストレーナブラケット105に実施例のハードストップ200を固定する。固定するステップ200は、プラントの組み立て中、又は、燃料交換による休止等のメンテナンス休止中を含め、選択された位置を利用できる任意の時点で実行される。
【0033】
方法例は、固定されたハードストップを押圧して、選択された位置における2つの部品間の所望のレベルの圧力又は分離状態を実現するステップ300を更に含む。例えば、実施例のハードストップ200を用いる場合、境界面ラチェットアセンブリ270によってねじ込みロッド257をラチェット移動して、リップクランプ250及びウェッジ部材210を所望の相対位置に移動することを含み、該所望の位置は、実施例のハードストップ200に取り付けた構造体間の所望の径方向分離状態を有する位置であり、及び/又は、これらの構造体間に所望の押圧レベルを提供する位置である。ステップ300における押圧は、ハードストップ200が設置されるインレットミキサ50等の外部構造を移動することを含み、この移動は、インレットミキサ50とライザ管30の間に配置されて、リストレーナブラケット105の反対側の位置に設定されたハードストップ200に向かってインレットミキサを外側に押しつける構造等を用いて行われる。押圧するステップ300は、例えば、プラントの組み立て中、燃料交換による休止等のメンテナンス休止中、遠隔制御される機構による動作中を始めとする、任意の時点で実行される。
【0034】
前述の説明は、実施例を例示するものであり、限定するものと見なされるものではない。当業者であれば、本発明の概念の斬新な教示及び利点から本質的に逸脱することなく、実施例に多くの変更を行えることを容易に理解されるであろう。従って、このような全ての変更は、請求項に記載される本発明の概念の範囲に含まれることが意図されている。従って、前述したものは、各種の実施例を例示するものであり、記載した特定の実施例に限定されるものと解釈されるべきではなく、開示した実施例に対する変更は、他の実施例と共に、添付の請求項の範囲に包含されるものである。
【符号の説明】
【0035】
S100 位置を決定するステップ
S200 ハードストップを固定するステップ
S300 ハードストップを押圧するステップ
10 インレットノズル
15 RPVの側壁
20 原子炉圧力容器(RPV)
25 ジェットポンプアセンブリ
30 ライザ管
40 遷移アセンブリ
42 ジェットポンプノズル
45 吸込みインレット
50 インレットミキサ
55 ディフューザ
65 スリップジョイント
80 溶接部
35、35A、35B ジェットポンプ
105 リストレーナブラケット
110 止めネジ
115 主要ウェッジ
120 上部支持成形体
125 下部支持成形体
130 ウェッジロッド
145 リストレーナブラケットパッド
190 案内耳
191 補強リブ
195 インレットミキサ胴体帯部
200 ハードストップ
210 ウェッジ部材
212 ラチェット保持部
213 嵌合溝
214 フランジ
215 接触面
250 リップクランプ
251 クランプアーム
252 リップ係合部材
253 嵌合延長部
254 クランプ溝
255 ブレース
256 リップ受け面
257 ねじ込みロッド
258 ねじ穴
259 傾斜した境界面
259a ウェッジ部材の傾斜した表面
259b リップクランプの傾斜した表面
260 ラチェットアセンブリ
261 ラチェット保持部
262 ラチェット面
263 ラチェットボルト
264 解除器
270 境界面ラチェットアセンブリ
271 ロッドボルト
272 ラチェット面
273 ブッシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェットポンプアセンブリ(25)内のリストレーナブラケット(105)を把持するように構成されるリップクランプ(250)と、
前記リストレーナブラケット(105)において、インレットミキサ(50)を押圧するように構成されるウェッジ部材(210)であって、前記リップクランプ(250)に移動可能に係合されるウェッジ部材(210)とを含む、稼働している原子炉に利用できるハードストップ(200)。
【請求項2】
前記リップクランプ(250)は、クランプアーム(251)と、前記リストレーナブラケット(105)の面のそれぞれ反対側に係合するように構成される係合部材(252)とを含み、前記クランプアーム(251)及び前記係合部材は、前記リストレーナブラケット(105)が、前記クランプアーム(251)と前記係合部材(252)の間に把持されるように、移動可能に係合される、請求項1に記載のハードストップ(200)。
【請求項3】
前記リップクランプ(250)は、係合延長部(253)を更に含み、前記ウェッジ部材(210)には、前記係合延長部(253)を収容して、前記係合延長部(253)及びリップクランプ(250)の単方向の移動を許容する係合溝(213)が画定される、請求項1に記載のハードストップ(200)。
【請求項4】
前記ウェッジ部材(210)によって画定されるフランジ(214)内に回転可能に嵌め込まれるように構成され、かつ、前記係合延長部(253)と係合するように構成されるロッド(257)を更に含み、前記ロッド(257)は、ねじ面を含み、前記係合延長部(253)には、前記ロッド(257)を収容するように構成される対応するねじ穴(258)が画定され、前記ロッド(257)の回転によって、前記係合延長部(253)及びリップクランプ(250)が、前記ウェッジ部材(210)に対して単一方向に移動する、請求項3に記載のハードストップ(200)。
【請求項5】
前記単一方向は、前記インレットミキサ(50)と前記リストレーナブラケット(105)の間の最短直線に対して傾斜し、この傾斜により、前記ハードストップ(200)によって広げられた前記インレットミキサ(50)と前記リストレーナブラケット(105)の間の距離が、前記係合延長部とリップクランプ(250)の前記単一方向の移動によって変化する、請求項3に記載のハードストップ(200)。
【請求項6】
前記リップクランプ(250)及び前記ウェッジ部材(210)の少なくとも一方は、前記リストレーナブラケット(105)の案内耳(190)及び補強リブ(191)の少なくとも一方に取り付けられるように更に構成される、請求項1に記載のハードストップ(200)。
【請求項7】
ライザ管の側のインレットミキサ(50)と、
前記インレットミキサ(50)を取り巻くリストレーナブラケット(105)と、
前記インレットミキサ(50)と前記リストレーナブラケット(105)の間で前記リストレーナブラケット(105)に固定されて、前記ライザ管に向かって前記インレットミキサ(50)を押圧する少なくとも一つのハードストップ(200)とを含む、ジェットポンプアセンブリ(25)を改造するシステム。
【請求項8】
前記少なくとも一つのハードストップ(200)は、第1ハードストップ(200)と第2ハードストップ(200)とを含み、前記第1ハードストップ(200)及び前記第2ハードストップ(200)は、前記リストレーナブラケット(105)の案内耳(190)及び補強リブ(191)の一方に配置される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
ハードストップ(200)がライザ管の方向にインレットミキサ(50)を押圧するように前記ハードストップ(200)を取り付ける、原子炉内の少なくとも一つの位置を決定するステップ(100)と、
前記決定した位置に少なくとも一つのハードストップ(200)を固定するステップ(200)であって、前記ハードストップ(200)は、前記決定した位置において第1部品を把持するように構成されるクランプを含み、前記ハードストップ(200)は、前記インレットミキサ(50)を押圧するように構成されるウェッジ部材(210)を含み、前記ウェッジ部材(210)は、前記リップクランプ(250)と移動可能に係合されるステップ(200)と、
前記決定した位置において、前記インレットミキサ(50)にハードストップ(200)を押圧するステップ(300)とを含む、原子炉環境内の部品を安定させる方法。
【請求項10】
前記第1部品は、前記原子炉内のジェットポンプアセンブリ(25)のリストレーナブラケット(105)である、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−141303(P2012−141303A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−281134(P2011−281134)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【出願人】(508177046)ジーイー−ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシー (101)
【氏名又は名称原語表記】GE−HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC