説明

原子炉建屋構造

【課題】エアバッフル板に熱遮蔽層を形成したことを特徴とする原子炉建屋構造を提供する。
【解決手段】頂部に排気口7を有すると共に、側壁2a上方に冷却空気導入口5を有する原子炉建屋2内に、所定の間隔を隔てて、原子炉格納容器1を設けると共に、この原子炉格納容器1と原子炉建屋2との間に、冷却空気導入口5から冷却空気を、原子炉格納容器1の下方部に案内すると共に、原子炉格納容器1に沿って上昇させて、排気口7に案内するエアバッフル板6を設けた原子炉建屋構造において、エアバッフル板6に熱遮蔽層8を形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な加圧水型軽水炉に用いられる原子炉建屋構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、加圧水型軽水炉は、図2に示すように、原子炉格納容器1と、この原子炉格納容器1に所定の間隔を隔てて覆う原子炉建屋2とを備えている。また、原子炉格納容器1内には、原子炉圧力容器3や蒸気発生器4等が内蔵されている。
【0003】
この原子炉建屋2には、原子炉格納容器1から発生する放熱を冷却するための冷却手段が設けられている。
【0004】
この冷却手段は、図示するように、原子炉建屋2の側壁2a上方に設けられ、外部の冷却空気を導入するための冷却空気導入口5と、冷却空気導入口5から導かれた冷却空気を原子炉格納容器1の下方部から上方に案内するためのエアバッフル板6と、原子炉建屋2の頂部に開放されて設けられた排気口7とから主に構成されている。
【0005】
つまり、冷却空気導入口5から導入された冷却空気は、エアバッフル板6と原子炉建屋2の側壁2aとによって、原子炉格納容器1の下方部に案内され、次いで、冷却空気はエアバッフル板6に沿って折り返され、エアバッフル板6と原子炉格納容器1の外壁1aに沿って上昇し、排気口7より排気されることになる。
【0006】
冷却空気は、エアバッフル板6によって、原子炉格納容器1の下方部から上昇して、排気口7より排気される間に、原子炉格納容器1を所望の温度に冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−11592号公報
【特許文献2】特開平5−87967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、原子炉建屋2内に設けられるエアバッフル板6は、原子炉格納容器1と原子炉建屋2との間に設けられ、比較的薄いステンレス鋼板によって成形されている。また、このエアバッフル板6は原子炉格容器1と原子炉建屋2との狭隘な間隙に、その上端部が原子炉建屋2の頂部に取り付けられ、下端部が原子炉格納容器1の下方部に至って自由端となる筒体状に構成されている。特に、エアバッフル板6は、原子炉建屋2の上部より吊り下げられていることから、軽量化が求められている。
【0009】
そのため、冷却空気導入口5から導入される冷却空気は、エアバッフル板6と原子炉建屋2の側壁2aとの間に導かれ、エアバッフル板6の下端部即ち自由端部より冷却空気は折り返されて、エアバッフル板6と原子炉格納容器1との間隙を上昇して、原子炉格納容器1を冷却することになる。
【0010】
ところが、原子炉の運転状況により、原子炉格納容器1からの放熱が高温になると、エアバッフル板6を加熱し、エアバッフル板6と、原子炉建屋2とによって形成される冷却空気導入通路5aを加熱し、冷却空気導入口5から導入される冷却空気が高温になることにより、原子炉格納容器1の冷却効率を低下させる問題が想定される。
【0011】
特に、エアバッフル板6を介して導入される冷却空気が所定温度以上に上昇されると、排気口7に設けられる放熱ファンの駆動力等を高める必要があり、更に原子炉格納容器1の冷却に多くの時間を費やす必要がある。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決するために、エアバッフル板に熱遮蔽層を形成し、原子炉格納容器からの放熱が、エアバッフル板と原子炉建屋との間隙に形成される冷却空気導入通路に導入される冷却空気の加熱乃至昇温を、未然に防止することができる原子炉建屋構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、頂部に排気口を有すると共に、側壁上方に冷却空気導入口を有する原子炉建屋内に、所定の間隔を隔てて、原子炉格納容器を設けると共に、この原子炉格納容器と前記原子炉建屋との間に、前記冷却空気導入口から冷却空気を、前記原子炉格納容器の下方部に案内すると共に、原子炉格納容器に沿って上昇させて、前記排気口に案内するエアバッフル板を設けた原子炉建屋構造において、前記エアバッフル板の内側面に熱遮蔽層を形成した原子炉建屋構造である。
【0014】
前記熱遮蔽層が、シート状のウレタンもしくは発泡樹脂材からなる断熱材、又は、アルミ板もしくはアルミ箔からなる熱反射シートで構成されるとよい。
【0015】
前記熱遮蔽層が、前記断熱材と前記熱反射シートを積層して構成されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、エアバッフル板の原子炉格納容器側に、熱遮蔽層を形成し、エアバッフル板に断熱の役割を持たせ、エアバッフル板と原子炉建屋とに導かれる冷却空気の温度を上昇させることなく、原子炉格納容器の下方部から上方に導くことができ、原子炉格納容器を効率的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態を示す、概略断面図である。
【図2】原子炉建屋の従来例を示す、概略側断面図である。
【図3】熱遮蔽層の変形実施例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0019】
図1に示すように、従来例同様、加圧水型軽水炉の原子炉建屋構造は、原子炉格納容器1と、この原子炉格納容器1に所定の間隙を隔てて覆う原子炉建屋2とを備えている。また、原子炉格納容器1内には、原子炉圧力容器3や蒸気発生器4等が内蔵されている。原子炉建屋2には、原子炉格納容器1から発生する放熱を冷却するための冷却手段が設けられている。
【0020】
この冷却手段は、原子炉建屋2の側壁2a上方に設けられ、外部の冷却空気を導入するため冷却空気導入口5と、冷却空気導入口5から導かれた冷却空気を原子炉格納容器1の下方部から上方に案内するためのエアバッフル板6と、原子炉建屋2の頂部に開放されて設けられた排気口7とで構成される。
【0021】
エアバッフル板6は、従来例同様に、原子炉格納容器1と原子炉建屋2との間に設けられ、比較的薄いステンレス鋼板によって成形されている。このエアバッフル板6は、原子炉格納容器1と原子炉建屋2との狭隘な間隙に、その上端部が原子炉建屋2の頂部に取り付けられ、下端部が原子炉格納容器1の下方部に至って自由端となる筒体状に構成されている。
【0022】
特に、本発明の原子炉建屋構造にあっては、原子炉格納容器1に臨むエアバッフル板6の内側面に、これに沿って熱遮蔽層8を形成した点に特徴がある。
【0023】
この熱遮蔽層8は、エアバッフル板6の重量を増すことのない軽量なシート状のウレタンもしくは発泡樹脂等からなる断熱材、又は、アルミ板もしくはアルミ箔からなる熱反射シートによって構成される。
【0024】
また、熱遮蔽層8は、これら断熱材及び熱放射シートを積層して構成するようにしても良い。
【0025】
この場合、熱遮蔽層8は、図3に示すように、原子炉格納容器1に臨むエアバッフル板6の内側面に、断熱材8aを配置すると共に、その断熱材8aの内側面(原子炉格納容器1に臨む面)に、熱放射シート8bを重ね合わせた多重構造としても良い。また、逆に原子炉格納容器1に臨むエアバッフル板6の内側面に、熱放射シート8bを配置すると共に、その熱放射シート8bの内側面(原子炉格納容器1に臨む面)に、断熱材8aを重ね合わせた多重構造としても良い。
【0026】
本発明の実施形態における作用を説明する。
【0027】
原子炉建屋2の冷却空気導入口5から導入される冷却空気は、先ず、原子炉建屋2の側壁2aと、エアバッフル板6との間隙に形成された冷却空気導入通路5aに導かれて、原子炉格納容器1の下方に案内された後、熱遮蔽層8が形成されたエアバッフル板6と原子炉格納容器1との間に、折り返されて上昇し、次いで、排気口7から外部へ放出乃至排気される。
【0028】
このとき、原子炉格納容器1の外側面を冷却空気が上昇することにより、原子炉格納容器1は冷却され、原子炉格納容器1は所定の温度に保持されることとなる。特に、本発明にあっては、原子炉格納容器1に臨むエアバッフル板6の内側面に、これに沿って熱遮蔽層8を形成しているため、エアバッフル板6と原子炉建屋2との間に形成される冷却空気を導入するための冷却空気導入通路5aが加熱されることがない。
【0029】
従って、冷却空気導入口5から原子炉建屋2内に導入される冷却空気は、加熱あるいは昇温されることなく、原子炉格納容器1の下方よりその外側面を上昇される。また、原子炉格納容器1を冷却するにあたって、原子炉建屋2内の排気性を高めるために放熱ファンの駆動力を上げる必要性を少なくすることができる。また、本発明は構造が簡単であり、従来の原子炉建屋2にも採用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 原子炉格納容器
2 原子炉建屋
2a 側壁
5 冷却空気導入口
5a 冷却空気導入通路
6 エアバッフル板
8 熱遮蔽層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂部に排気口を有すると共に、側壁上方に冷却空気導入口を有する原子炉建屋内に、所定の間隔を隔てて、原子炉格納容器を設けると共に、この原子炉格納容器と前記原子炉建屋との間に、前記冷却空気導入口から冷却空気を、前記原子炉格納容器の下方部に案内すると共に、原子炉格納容器に沿って上昇させて、前記排気口に案内するエアバッフル板を設けた原子炉建屋構造において、前記エアバッフル板の内側面に熱遮蔽層を形成したことを特徴とする原子炉建屋構造。
【請求項2】
前記熱遮蔽層が、シート状のウレタンもしくは発泡樹脂材からなる断熱材、又は、アルミ板もしくはアルミ箔からなる熱反射シートで構成されることを特徴とする請求項1記載の原子炉建屋構造。
【請求項3】
前記熱遮蔽層が、断熱材と熱反射シートを積層して構成されることを特徴とする請求項1記載の原子炉建屋構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−21895(P2011−21895A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164472(P2009−164472)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)