原子炉格納容器の冠水方法
【課題】サプレッションチェンバ及びベント管の少なくともいずれかに破損箇所が存在する可能性が高い原子炉格納容器の冠水方法であって、原子炉格納容器の冠水に必要となる止水材や水の量を出来る限り抑えつつ原子炉格納容器を冠水させる。
【解決手段】ベント管に止水材を供給する止水材供給経路を確保できるかを判断する経路判断工程と、経路判断工程にて止水材供給経路を確保できると判断した場合に、ベント管内に止水材を充填するベント管閉塞工程とを有し、ベント管閉塞工程の後に、原子炉格納容器に水を供給する水供給工程を行う。
【解決手段】ベント管に止水材を供給する止水材供給経路を確保できるかを判断する経路判断工程と、経路判断工程にて止水材供給経路を確保できると判断した場合に、ベント管内に止水材を充填するベント管閉塞工程とを有し、ベント管閉塞工程の後に、原子炉格納容器に水を供給する水供給工程を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉格納容器の冠水方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子炉圧力容器やその中の核燃料が損傷または溶融する過酷事故が生じた際、これらを補修したり、除去したりする作業が必要となる。このような状態のとき、原子炉格納容器の内部は極めて高い放射線量となっている。つまり、原子炉圧力容器や原子炉格納容器へ接近する作業は容易でない。このため、原子炉格納容器を冠水させ、放射線量を低減させた上で作業を行うことが想定される。
【0003】
MARK−IやMARK−I改良型と呼ばれる沸騰水型原子炉(例えば特許文献1参照)では、原子炉格納容器が、原子炉圧力容器を収納するドライウェルと、内部にプールが形成されるサプレッションチェンバと、ドライウェルとサプレッションチェンバとを接続するベント管とを備えている。このような沸騰水型原子炉で、上述のような過酷事故が生じた場合には、原子炉格納容器を冠水させて作業を行うことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−348299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、サプレッションチェンバやベント管の一部が破損している場合には、ドライウェルに注水を行っても、供給された水がサプレッションチェンバやベント管の破損箇所を介して原子炉格納容器の外部に漏出する。このため、原子炉格納容器を冠水させることが難しい場合がある。
【0006】
破損箇所の状態を詳しく分析、特定することができれば、破損箇所のみを補修することで漏水を防止することができる。しかしながら、放射線量が高いなかで、このような破損部分の状態を広範囲に亘って詳しく分析、特定することは難しい。
また、サプレッションチェンバが収納されているトーラス室を全てコンクリート等の止水材で塞ぐことによって、破損箇所を特定することなく、水の漏出を防ぐことも考えられる。しかしながら、このような場合には、大量のコンクリートが必要となる。これらのコンクリートは、放射性物質に汚染されるため、原子炉格納容器の冠水中から補修、核燃料の除去作業が完了した後まで、適切な処理を行う必要がある。つまり、トーラス室を全てコンクリート等の止水材で塞いだ場合には、大量の放射性廃棄物が生じることになる。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、サプレッションチェンバ及びベント管の少なくともいずれかに破損箇所が存在する可能性が高い原子炉格納容器の冠水方法であって、原子炉格納容器の冠水に必要となる止水材や水の量を出来る限り抑えつつ原子炉格納容器を冠水させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0009】
第1の発明は、原子炉圧力容器を収納するドライウェルと、当該ドライウェルの周囲に設けられるサプレッションチェンバと、上記ドライウェルと上記サプレッションチェンバとを接続するベント管とを有し、上記サプレッションチェンバまたは上記ベント管のいずれかに漏水の原因となる破損箇所を有する原子炉格納容器の冠水方法であって、上記ベント管に止水材を供給する止水材供給経路を確保できるかを判断する経路判断工程と、上記経路判断工程にて上記止水材供給経路を確保できると判断した場合に、上記ベント管内に上記止水材を充填するベント管閉塞工程とを有し、上記ベント管閉塞工程の後に、上記原子炉格納容器に水を供給する水供給工程を行うという構成を採用する。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記ベント管の下方に上記サプレッションチェンバの内部空間と上記ベント管とを接続するダウンカマが設けられており、上記経路判断工程にて上記止水材供給経路を確保できないと判断した場合に、上記サプレッションチェンバ内に上記止水材を充填できるかの判断を行う充填確認工程と、上記充填確認工程にて上記サプレッションチェンバ内に上記止水材を充填できると判断した場合に、上記ダウンカマの開口が閉塞されるまで上記止水材を上記サプレッションチェンバに充填するダウンカマ閉塞工程とを有し、上記ダウンカマ閉塞工程の後に上記水供給工程を行うという構成を採用する。
【0011】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記サプレッションチェンバが設置されるトーラス室が設けられており、上記充填確認工程にて上記サプレッションチェンバ内に上記止水材を充填できないと判断した場合に、上記トーラス室に上記サプレッションチェンバと上記ベント管との接続部位の高さまで上記止水材を充填するトーラス室閉鎖工程を有し、上記トーラス室閉鎖工程の後に上記水供給工程を行うという構成を採用する。
【0012】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記サプレッションチェンバと上記ベント管とを接続する真空破壊装置とが設けられており、上記真空破壊装置に破損箇所が確認された場合に、上記トーラス室閉鎖工程にて上記真空破壊装置の破損箇所の高さまで上記止水材を充填するという構成を採用する。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、ベント管に止水材を供給する止水材供給経路を確保できる場合に、ベント管に止水材を充填することによってベント管を閉塞する。このように全て(8本)のベント管が止水材により閉塞することによって、原子炉格納容器を冠水させるときにベント管を介して水が流れ出ることを防止することができる。このような第1の発明によれば、止水材の量は、ベント管内に供給される分のみとなり、トーラス室の全てに止水材を充填する場合と比較して極めて少なくすることができる。また、第1の発明によれば、ベント管が閉塞されていることから、サプレッションチェンバに水を溜めることなくドライウェルを冠水させることができ、原子炉格納容器を全て水で満たす場合よりも水の量を低減させることができる。
したがって、第1の発明によれば、サプレッションチェンバまたはベント管のいずれかに破損箇所が存在する可能性が高い原子炉格納容器の冠水方法であって、原子炉格納容器の冠水に必要となる止水材や水の量を出来る限り抑えつつ原子炉格納容器を冠水させることができる。
【0014】
また、第2の発明によれば、上記止水材供給経路を確保できないが、サプレッションチェンバ内に止水材を充填できる場合に、ベント管の下方に接続されるダウンカマの開口が閉塞されるまでサプレッションチェンバ内に止水材を供給してダウンカマの開口を閉塞する。このように、サプレッションチェンバの内部空間とベント管とを接続するダウンカマの開口が閉塞されることによって、原子炉格納容器を冠水させるときにベント管を介してサプレッションチェンバ内に水が流れ込むことを防止することができる。このような第2の発明によれば、止水材の量は、サプレッションチェンバの底部からダウンカマの開口が閉塞される高さとなるまでの分となり、トーラス室を止水材で塞ぐ場合と比較して少なくすることができる。また、第2の発明によれば、ダウンカマの開口が閉塞されていることからサプレッションチェンバに水を溜めることなくドライウェルを冠水させることができ、原子炉格納容器を全て水で満たす場合よりも水の量を低減させることができる。
したがって、第2の発明によれば、サプレッションチェンバに破損箇所が存在する場合であって、その場所を特定し、補修せずとも原子炉格納容器を冠水させることができる方法であって、原子炉格納容器の冠水に必要となる止水材や水の量を出来る限り抑えつつ原子炉格納容器を冠水させることができる。
【0015】
また、第3の発明によれば、上記止水材供給経路を確保できず、さらにサプレッションチェンバ内に止水材を充填できない場合に、サプレッションチェンバが設置されるトーラス室に止水材を充填してトーラス室を閉鎖する。このようにトーラス室が閉鎖されることによって、ベント管に破損があった場合も、原子炉格納容器を冠水させるときに水がサプレッションチェンバ外部に漏れだすことを防止することができる。このような第3の発明によれば、止水材の量は、ベント管とサプレッションチェンバとの接続部位を埋設する高さまでの分となり、トーラス室の全てを止水材で塞ぐ場合と比較して少なくすることができる。
【0016】
また、第4の発明によれば、ベント管とサプレッションチェンバとの接続部位よりも上方に配置される真空破壊装置に破損がある場合であっても、原子炉格納容器を冠水させるときに水がサプレッションチェンバ外部に漏れだすことを防止することができる。このような第4の発明によれば、止水材の量は、真空破壊装置の破損箇所を埋設する高さまでの分となり、トーラス室の全てを止水材で塞ぐ場合と比較して少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態である原子炉格納容器の冠水方法にて冠水される原子炉格納容器を備える沸騰水型原子炉の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の一実施形態である原子炉格納容器の冠水方法を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の第1実施形態である原子炉格納容器の冠水方法において、サプレッションチェンバに充填材を供給する工程を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の第1実施形態である原子炉格納容器の冠水方法を説明するための模式図である。
【図6】本発明の第1実施形態である原子炉格納容器の冠水方法を説明するための模式図である。
【図7】本発明の第1実施形態である原子炉格納容器の冠水方法を説明するための模式図である。
【図8】本発明の第1実施形態である原子炉格納容器の冠水方法を説明するための模式図である。
【図9】本発明の第1実施形態である原子炉格納容器の冠水方法を説明するための模式図である。
【図10】本発明の第1実施形態である原子炉格納容器の冠水方法を説明するための模式図である。
【図11】本発明の第2実施形態である原子炉格納容器の冠水方法において、サプレッションチェンバに充填材を供給する工程を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る原子炉格納容器の冠水方法の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。また、以下の説明においては、本発明を沸騰水型原子炉の1つであるMARK−I型の原子炉格納容器を冠水させる方法に適用した例について説明する。なお、本発明は、MARK−I型に限られず、MARK−I改良型の原子炉格納容器を冠水させる方法に適用することも可能である。
【0019】
(第1実施形態)
まず先に、MARK−I型の沸騰水型原子炉1について説明する。図1は、MARK−I型の沸騰水型原子炉1の概略構成を示す縦断面図である。また、図2は、図1のA−A断面図である。なお、図2においては、後述の原子炉建屋2は省略されている。図1に示すように、MARK−I型の沸騰水型原子炉1は、原子炉建屋2と、原子炉格納容器3と、ベントヘッダ4と、ダウンカマ5と、支持部6と、原子炉圧力容器7と、不図示の炉心を備えている。
【0020】
原子炉建屋2は、原子炉格納容器3と、ベントヘッダ4と、ダウンカマ5と、支持部6と、原子炉圧力容器7と、不図示の炉心とを収納する建屋であり、鉄筋コンクリートにより形成されている。この原子炉建屋2の下部には、後述する原子炉格納容器3のサプレッションチェンバ3bを設置するためのトーラス室2aが設けられている。なお、図示していないが、原子炉建屋2には、他に非常用炉心冷却系ポンプ、浄化設備、燃料プール、機器仮置きプール、非常用ガス処理系設備等が収納されている。
【0021】
原子炉格納容器3は、原子炉圧力容器を収容するドライウェル3aと、ドライウェル3aの周囲に設けられるサプレッションチェンバ3bと、ドライウェル3aとサプレッションチェンバ3bとを接続するベント管3cとから構成されている。
【0022】
ドライウェル3aは、丸底フラスコ形状とされた鋼鉄製の容器であり、原子炉建屋2の内壁内に設置されている。サプレッションチェンバ3bは、断面形状が図1に示すように円形であり、平面視形状が図2に示すように多角形の環状形状とされた鋼鉄製の容器である。なお、過酷事故によりサプレッションチェンバ3bに破損が生じていなければ、このサプレッションチェンバ3bの内部には水が貯留されてプールが形成されている。ベント管3cは、ドライウェル3aとサプレッションチェンバ3bとの間に設けられており、ドライウェル3aに蒸気が漏れ出したときに蒸気をサプレッションチェンバ3bに導く鋼鉄製の管である。このベント管3cは、図2に示すように、8本設けられている。各ベント管3cは、等間隔で配列されている。
【0023】
ベントヘッダ4は、サプレッションチェンバ3bの内部にサプレッションチェンバ3bと同心円状に配置される環状の管である。このベントヘッダ4は、全てのベント管3cの先端に接続されている。
【0024】
ダウンカマ5は、ベント管3cに接続されたベントヘッダ4に取り付けられている。このダウンカマ5は、逆U字形状の管部材であり、下方に向く両端に開口5aが設けられ、頂部がベントヘッダ4と接続されている。なお、サプレッションチェンバ3bの内部にプールが形成されている場合には、このプールの水面下にダウンカマ5の開口5aが配置される。このダウンカマ5を介して、サプレッションチェンバ3bの内部空間とベント管3cとが接続されている。このようなダウンカマ5は、図2に示すように、ベントヘッダ4に沿って等間隔で複数設けられている。
【0025】
支持部6は、ドライウェル3aの底部に設けられた鉄筋コンクリート部材であり、原子炉圧力容器7を支持する。原子炉圧力容器7は、支持部6上に固定されてドライウェル3aの内部に配置されている。この原子炉圧力容器7は、鋼鉄製の容器であり、内部に炉心を収納している。不図示の炉心は、核燃料や制御棒によって構成されており、原子炉圧力容器7の内部で支持されている。
【0026】
次に、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法について図3のフローチャートを参照しながら、説明する。なお、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法は、過酷事故が生じたことによってベント管3cまたはサプレッションチェンバ3bに破損が生じている状態から、ドライウェル3aの内部を水で満たすために行う。また、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法を開始する時点で、原子炉圧力容器7に対して冷却水が連続的に供給されており、供給した冷却水の一部が少なくともドライウェル3a及びサプレッションチェンバ3bに溜まっているものとする。また、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法を開始する時点では、原子炉圧力容器7に対する冷却水の供給が継続されているものとする。また、原子炉圧力容器7からは冷却水が漏れる状態であるものとする。
【0027】
まず、図3に示すように、ベント管内充填材注入工法が可能であるかの判断を行う(ステップS1)。上述のように原子炉建屋2の内部には、非常用炉心冷却系ポンプ、浄化設備、燃料プール、機器仮置きプール、非常用ガス処理系設備等の様々な機器が設置されている。このため、ベント管内充填材注入工法が可能であるかの判断を行うときには、これらの機器を避けて、全てのベント管3cに対して充填材(止水材)を供給するための充填材供給経路(図5(b)に示す供給配管21)が確保できるかを判断する。そして、充填材供給経路が確保できる場合にはベント管内充填材注入工法が可能であると判断する。なお、このようなステップS1は、ベント管3cに図5(b)に示すような充填材11(止水材)を供給する充填材供給経路(止水材供給経路)を確保できるかを判断する工程であり、本発明における経路判断工程に相当する。
【0028】
ステップS1にて、ベント管内充填材注入工法が可能であると判断した場合には、ベント管3cに充填材11を注入する(ステップS2)。このステップS2では、例えば、図5(a)の模式図に示すように、原子炉建屋2の内部に設けられると共にトーラス室2aの上階に位置する部屋(以下、上階室2bと称する)から、各ベント管3cに対して、バックアップ材10の供給配管20を通し、ベント管3cにバックアップ材10を配置する。このバックアップ材10は、充填材11が流れ出ることを防止するためのものである。続いて、図5(b)に示すように、上階室2bから、各ベント管3cに対して、充填材11の供給配管21(充填材供給経路)を通し、バックアップ材10よりもドライウェル3a側に充填材11を注入する。この充填材11としては、例えば、コンクリート等の一定時間経過後に固化する止水材や、高分子ゲルや水ガラス等からなる止水材を用いることができる。
【0029】
そして、全てのベント管3c内に充填材11が充填されることによって、ベント管3cが閉塞する。なお、このようなステップS2は、ステップS1で充填材供給経路(供給配管21)を確保できると判断した場合に、ベント管3c内に充填材11を充填する工程であり、本発明におけるベント管閉塞工程に相当する。このように全てのベント管3cが閉塞されることによって、原子炉格納容器3を水で満たす(ステップS8)を行うことができる。
【0030】
また、ステップS1にて、ベント管充填材注入工法ができないと判断した場合には、サプレッションチェンバ3b内に、ダウンカマ5の下端(すなわち開口5a)まで充填材11が可能であるかの判断を行う(ステップS3)。このステップS3では、例えば、図6(a)に示すように、ドライウェル3aとサプレッションチェンバ3bに対して水位計31,32を設置する。その後、図6(b)に示すように、上階室2bからトーラス室2aを介してベント管3c近傍に穿孔を形成し、この穿孔からベント管3cの外部を遠隔操作が可能なCCDカメラ等で撮影し、ベント管3cあるいはベント管3cとドライウェル3aとの接続部に破損箇所があるかの確認を行う。なお、必要に応じて、トーラス室2aの排水経路23を形成する。
【0031】
そして、ベント管3cあるいはベント管3cとドライウェル3aとの接続部に破損箇所がない場合には、ダウンカマ5の下端まで充填材11が充填可能であると判断する。また、ベント管3cあるいはベント管3cとドライウェル3aとの接続部に破損箇所がある場合には、ダウンカマ5の下端まで充填材11が充填できないと判断する。
【0032】
ステップS3で、サプレッションチェンバ3b内に、ダウンカマ5の下端まで充填材11が充填可能であると判断した場合には、サプレッションチェンバ3bの下部に充填材11がリークする箇所があるかの確認を行う(ステップS4)。この確認は、例えば、上述の遠隔操作が可能なCCDカメラ等で撮影することによって行う。サプレッションチェンバ3bの下部にリーク箇所があると確認された場合には、この場合であっても充填材11を継続して充填し続けることでダウンカマ5の下端まで充填材11が充填可能であるかを判断する(ステップS5)。破損箇所の高さまでトーラス室2aにおける密閉性が確保されているのであれば、サプレッションチェンバ3bの下部に破損がある場合であっても、ダウンカマ5の下端まで充填材11が充填可能となる。このため、例えば、トーラス室2aにおける密閉性を確認することによって充填材11を継続して充填可能であるかを判断する。
【0033】
これらのステップS3〜ステップS5によって、最終的にサプレッションチェンバ3b内に充填材11を充填できるかの判断を行う。つまり、このようなステップS3〜ステップS5は、ステップS1でベント管充填材注入工法ができないと判断した場合、サプレッションチェンバ3b内に充填材11を充填できるかの判断を行う工程であり、本発明の充填確認工程に相当する。
【0034】
サプレッションチェンバ3b内に充填材11を充填できると判断した場合(すなわち、ステップS3でダウンカマ5の下端まで充填材11を充填可能と判断した場合、ステップS4でサプレッションチェンバ3bの下部に充填材11がリークする箇所がないと判断した場合、あるいはステップS5で継続して充填材11を充填することが可能であると判断した場合)には、ダウンカマ5の下端を越える高さまで充填材11を充填する(ステップS6)。
【0035】
ここで、ダウンカマ5の下端まで充填材11を充填する手順について、図4のフローチャート及び図7,8を参照して説明する。なお、ここでは、ステップS3でダウンカマ5の下端まで充填材11を充填可能と判断した場合を例にして説明する。
【0036】
まず、図7(a)に示すように、サプレッションチェンバ3bと原子炉圧力容器7とを含む水の循環経路24を形成する(ステップS11)。この循環経路24途中には、放射性物質を除去する浄化装置25と、水を冷却する熱交換器26とを設置する。また、上述の水位計31,32も設置する。
続いて、サプレッションチェンバ3bとトーラス室2aの除染が必要かを判断する(ステップS12)。ここで除染が必要と判断した場合には、トーラス室2a内及びサプレッションチェンバ3bから水を排出するための排水経路27と、トーラス室2a内及びサプレッションチェンバ3b内の除染を行うための除染経路28を形成する(図7(b)及び図8(a)参照)。
そして、図7(b)に示すように、循環経路24での水の循環を停止した状態で排水経路27を用いてサプレッションチェンバ3b内の水を排水する(ステップS13)。このとき、外部浄化系から原子炉圧力容器7へ注水できる循環経路を形成して注水し、ドライウェル3a内の水位を冷却水がベント管3cに流れ込まない水位とする。さらに、図8(a)に示すように、除染経路28を用いて、例えば高圧スプレイによってトーラス室2a及びサプレッションチェンバ3b内の除染を行う(ステップS14)。このとき、循環経路24をサプレッションチェンバ3bからドライウェル30の下部に接続しなおして水の循環を再開すると共に、より高い位置の水位が計測できるように水位計31の接続状態を変更する。なお、トーラス室2a及びサプレッションチェンバ3b内の除染によって生じた排水は、排水経路27を介して外部に排水される。
【0037】
続いて、サプレッションチェンバ3b内に充填材11を充填する(ステップS15)。ここでは、図8(b)に示すように、除染経路28に換えて充填材供給経路29を形成し、充填材供給経路29から充填材11をサプレッションチェンバ3b内に供給する。そして、ダウンカマ5の開口5aを超えるまで充填材11の供給を継続する。なお、サプレッションチェンバ3b内に水が残存する可能性があるため、排水経路27を用いた排水を継続する。これによって、ダウンカマ5の開口5aが閉塞される。
【0038】
なお、ステップS12において、除染が必要ないと判断した場合には、充填材11が水中で使用可能であるかについて判断する(ステップS16)。ここで、水中で使用可能とは、水中に充填材11を供給することによって止水が可能であるということを意味する。そして、充填材11が水中で使用できないと判断した場合には、サプレッションチェンバ3b(必要に応じてトーラス室2a)の排水(ステップS17)を行った後、ステップ15を行って充填材11を充填する。
【0039】
また、ステップS16で充填材11が水中で使用できると判断した場合には、サプレッションチェンバ3bの排水を行うことなくサプレッションチェンバ3bにおいて充填材11の充填を行う(ステップS19)。その後、サプレッションチェンバ3b内の水がなくなるまで排水を繰り返す(ステップS19及びステップS20)。
【0040】
図3に戻り、サプレッションチェンバ3b内に充填材11を充填できないと判断した場合(すなわち、ステップS3でダウンカマ5の下端まで充填材11を充填できないと判断した場合、あるいはステップS5で継続して充填材11を充填することができないと判断した場合)には、トーラス室2aに対して充填材11を充填する(ステップS7)。ここでは、図9(a)に示すように、少なくともベント管3cとサプレッションチェンバ3bとの接続部が埋設されるまで(本実施形態ではサプレッションチェンバ3bが全て埋設されるまで)充填材11を充填する。ここでは、充填材11の充填量は、トーラス室2aの天井に到達しない量としている。なお、このようなステップS7は、サプレッションチェンバ3b内に充填材11を充填できないと判断した場合に、トーラス室2aにサプレッションチェンバ3bとベント管3cとの接続部位の高さまで充填材11を充填する工程であり、本発明のトーラス室閉鎖工程に相当する。
【0041】
なお、図9(b)に示すように、サプレッションチェンバ3bとベント管3cとを接続する真空破壊装置8が、サプレッションチェンバ3bとベント管3cとの接続部位よりも上方に配置されている場合には、真空破壊装置8に破損があるか否かの確認を行う。そして、真空破壊装置8に破損があると判断した場合には、真空破壊装置8の破損箇所が埋設される高さまで充填材11をトーラス室2aに充填する。ここでも、充填材11の充填量は、トーラス室2aの天井に到達しない量とする。
【0042】
そして、ステップS2(ベント管内3cへの充填材11の充填)、ステップS6(ダウンカマ5の下端を越える高さまでの充填材11の充填)あるいはステップS7(トーラス室2aへの充填材11の充填)が完了すると、原子炉格納容器3のドライウェル3aを水で満たす(ステップS8)。例えば、図8(b)に示す状態からドライウェル3aの内部を水で満たす場合には、図10(a)に示すように外部から原子炉圧力容器7への冷却水の供給量を継続し、ドライウェル3aが冠水したら外部から原子炉圧力容器7への冷却水の供給を停止して循環経路24にて水を循環させる。このようなステップS8は、原子炉格納容器3を冠水させるために当該原子炉格納容器3に水を供給する工程であり、本発明の水供給工程に相当する。
【0043】
以上のような本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法によれば、ベント管3cに充填材11を供給する充填材供給経路(供給配管21)を確保できる場合に、ベント管3cに充填材11を充填することによってベント管3cを閉塞する。このようにベント管3cが充填材11により閉塞することによって、原子炉格納容器3を冠水させるときにベント管3cを介して水が流れ出ることを防止することができる。このような本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法によれば、充填材11の量は、ベント管3c内に供給される分のみとなり、トーラス室2aを全て充填材11で充填する場合と比較して極めて少なくすることができる。また、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法によれば、ベント管3cが閉塞されていることから、サプレッションチェンバ3bに水を溜めることなくドライウェル3aを冠水させることができ、原子炉格納容器3を全て水で満たす場合よりも水の量を低減させることができる。
したがって、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法によれば、原子炉格納容器3の冠水に必要となる充填材11や水の量を出来る限り抑えつつ原子炉格納容器3を冠水させることができる。
【0044】
また、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法によれば、ダウンカマ5を含むベント系に対して上記充填材供給経路(供給配管21)を確保できないが、漏水の原因となる破損箇所がサプレッションチェンバ3bと限定され、さらにサプレッションチェンバ3b内に充填材11を充填できる場合に、ベント管3cの下方に接続されるダウンカマ5の開口5aが閉塞されるまでサプレッションチェンバ3b内に充填材11を供給してダウンカマ5の開口5aを閉塞する。このように、サプレッションチェンバ3bの内部空間とベント管3cとを接続するダウンカマ5の開口5aが閉塞されることによって、原子炉格納容器3を冠水させるときにベント管3cを介してサプレッションチェンバ3b内に水が流れ込むことを防止することができる。このような本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法によれば、充填材11の量は、サプレッションチェンバ3bの底部からダウンカマ5の開口5aが閉塞される高さとなるまでの分となり、トーラス室2aを全て充填材11で充填する場合と比較して極めて少なくすることができる。また、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法によれば、ダウンカマ5の開口5aが閉塞されていることからサプレッションチェンバ3bに水を溜めることなくドライウェル3aを冠水させることができ、原子炉格納容器3を全て水で満たす場合よりも水の量を低減させることができる。
したがって、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法によれば、原子炉格納容器の冠水に必要となる充填材11や水の量を出来る限り抑えつつ原子炉格納容器3を冠水させることができる。また、サプレッションチェンバ3bに破損箇所が存在する場合であっても、その場所を特定し、補修せずとも原子炉格納容器3を冠水させることができる。
【0045】
また、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法によれば、充填材供給経路(供給配管21)を確保できず、さらにサプレッションチェンバ3b内に充填材11を充填できない場合に、サプレッションチェンバ3bが設置されるトーラス室2aに充填材11を充填してトーラス室2aを閉鎖する。このようにトーラス室2aが閉鎖されることによって、ベント管3cに破損があった場合も、原子炉格納容器3を冠水させるときに水がサプレッションチェンバ3bの外部に漏れだすことを防止することができる。このような本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法によれば、充填材11の量は、ベント管3cとサプレッションチェンバ3bとの接続部位を埋設する高さまでの分となり、トーラス室2aの全てを充填材11で塞ぐ場合と比較して極めて少なくすることができる。
【0046】
また、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法によれば、ベント管3cとサプレッションチェンバ3bとの接続部位よりも上方に配置される真空破壊装置8に破損がある場合であっても、原子炉格納容器3を冠水させるときに水がサプレッションチェンバ3b外部に漏れだすことを防止することができる。このような本実施形態の原子炉各の容器3の冠水方法によれば、充填材11の量は、真空破壊装置8の破損箇所を埋設する高さまでの分となり、トーラス室2aの全てを充填材11で塞ぐ場合と比較して極めて少なくすることができる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0048】
図11は、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法を説明するためのフローチャートである。この図に示すように、ステップS1〜ステップS3、ステップS7及びステップS8は、上記第1実施形態と同様である。
【0049】
本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法では、ステップS3において、ダウンカマ5の下端まで充填材11を充填可能と判断した場合に、サプレッションチェンバ3bの容積に基づいて算出した量の充填材11をサプレッションチェンバ3b内に供給する(ステップS30)。つまり、サプレッションチェンバ3bの下部に破損がないことを前提として、充填材11がダウンカマ5の下端を越える供給量を算出し、この算出した供給量の充填材11をサプレッションチェンバ3bに供給する。
【0050】
続いて、ダウンカマ5の下端まで充填材11が到達しているかを確認する(ステップS31)。ここでは、例えば、遠隔操作が可能なCCDカメラによって確認を行う。なお、充填材11が均一に拡がっていない可能性を考慮し、複数の箇所にてCCDカメラにて確認を行うことが望ましい。その結果、ダウンカマ5の下端に充填材11が到達していれば、ステップS8に移行して原子炉格納容器3内を水で満たす。
【0051】
一方、ステップS21において、ダウンカマ5の下端に充填材11が到達していなければ、サプレッションチェンバ3bの下部に破損があると推定される。このため、サプレッションチェンバ3bの容積とトーラス室2aの容積とに基づいてダウンカマ5の下端に到達する供給量を算出し、この算出した供給量の充填材11をサプレッションチェンバ3b(トーラス室2aも含む)に供給する(ステップS32)。なお、ステップS32での実際の供給量は、ステップS30で算出した量との差分となる。
【0052】
続いて、ダウンカマ5の下端まで充填材11が到達しているかを確認する(ステップS33)。ここでは、例えば、遠隔操作が可能なCCDカメラによって確認を行う。なお、充填材11が均一に拡がっていない可能性を考慮し、複数の箇所にてCCDカメラにて確認を行うことが望ましい。その結果、ダウンカマ5の下端に充填材11が到達していれば、ステップS8に移行して原子炉格納容器3内を水で満たす。
【0053】
一方、ステップS23において、ダウンカマ5の下端に充填材11が到達していなければ、何らかの原因によって、ダウンカマ5の下端まで充填材11が充填可能な状態ではないと判断し、ステップS7に移行してトーラス室2aに充填材11を充填する。つまり、ステップS23において、ダウンカマ5の下端に充填材11が到達していなければ、ステップS3の判断を否定してステップS7に移行する。
【0054】
このような本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法によれば、ステップS30〜ステップS33において実際にサプレッションチェンバ3bに充填材11を供給して、サプレッションチェンバ3bに充填材11を溜められるかを判断している。このため、事前にサプレッションチェンバ3bの下部が破損しているか否かの確認(上記第1実施形態のステップS4)を行う必要がなくなる。
【0055】
なお、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法では、ステップS3、ステップ30〜ステップS33によって、サプレッションチェンバ3b内に充填材11を充填できるか判断とすると共に、条件によってダウンカマ5の開口5aの閉塞が行われる。つまり、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法では、ステップS3、ステップ30〜ステップS33が、本発明の充填確認工程とダウンカマ閉塞工程とに相当する。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0057】
1……MARK−I型の沸騰水型原子炉、2……原子炉建屋、2a……トーラス室、2b……上階室、3……原子炉格納容器、3a……ドライウェル、3b……サプレッションチェンバ、3c……ベント管、4……ベントヘッダ、5……ダウンカマ、6……支持部、7……原子炉圧力容器、10……バックアップ材、11……充填材、21……供給配管(充填材供給経路)
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉格納容器の冠水方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子炉圧力容器やその中の核燃料が損傷または溶融する過酷事故が生じた際、これらを補修したり、除去したりする作業が必要となる。このような状態のとき、原子炉格納容器の内部は極めて高い放射線量となっている。つまり、原子炉圧力容器や原子炉格納容器へ接近する作業は容易でない。このため、原子炉格納容器を冠水させ、放射線量を低減させた上で作業を行うことが想定される。
【0003】
MARK−IやMARK−I改良型と呼ばれる沸騰水型原子炉(例えば特許文献1参照)では、原子炉格納容器が、原子炉圧力容器を収納するドライウェルと、内部にプールが形成されるサプレッションチェンバと、ドライウェルとサプレッションチェンバとを接続するベント管とを備えている。このような沸騰水型原子炉で、上述のような過酷事故が生じた場合には、原子炉格納容器を冠水させて作業を行うことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−348299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、サプレッションチェンバやベント管の一部が破損している場合には、ドライウェルに注水を行っても、供給された水がサプレッションチェンバやベント管の破損箇所を介して原子炉格納容器の外部に漏出する。このため、原子炉格納容器を冠水させることが難しい場合がある。
【0006】
破損箇所の状態を詳しく分析、特定することができれば、破損箇所のみを補修することで漏水を防止することができる。しかしながら、放射線量が高いなかで、このような破損部分の状態を広範囲に亘って詳しく分析、特定することは難しい。
また、サプレッションチェンバが収納されているトーラス室を全てコンクリート等の止水材で塞ぐことによって、破損箇所を特定することなく、水の漏出を防ぐことも考えられる。しかしながら、このような場合には、大量のコンクリートが必要となる。これらのコンクリートは、放射性物質に汚染されるため、原子炉格納容器の冠水中から補修、核燃料の除去作業が完了した後まで、適切な処理を行う必要がある。つまり、トーラス室を全てコンクリート等の止水材で塞いだ場合には、大量の放射性廃棄物が生じることになる。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、サプレッションチェンバ及びベント管の少なくともいずれかに破損箇所が存在する可能性が高い原子炉格納容器の冠水方法であって、原子炉格納容器の冠水に必要となる止水材や水の量を出来る限り抑えつつ原子炉格納容器を冠水させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0009】
第1の発明は、原子炉圧力容器を収納するドライウェルと、当該ドライウェルの周囲に設けられるサプレッションチェンバと、上記ドライウェルと上記サプレッションチェンバとを接続するベント管とを有し、上記サプレッションチェンバまたは上記ベント管のいずれかに漏水の原因となる破損箇所を有する原子炉格納容器の冠水方法であって、上記ベント管に止水材を供給する止水材供給経路を確保できるかを判断する経路判断工程と、上記経路判断工程にて上記止水材供給経路を確保できると判断した場合に、上記ベント管内に上記止水材を充填するベント管閉塞工程とを有し、上記ベント管閉塞工程の後に、上記原子炉格納容器に水を供給する水供給工程を行うという構成を採用する。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記ベント管の下方に上記サプレッションチェンバの内部空間と上記ベント管とを接続するダウンカマが設けられており、上記経路判断工程にて上記止水材供給経路を確保できないと判断した場合に、上記サプレッションチェンバ内に上記止水材を充填できるかの判断を行う充填確認工程と、上記充填確認工程にて上記サプレッションチェンバ内に上記止水材を充填できると判断した場合に、上記ダウンカマの開口が閉塞されるまで上記止水材を上記サプレッションチェンバに充填するダウンカマ閉塞工程とを有し、上記ダウンカマ閉塞工程の後に上記水供給工程を行うという構成を採用する。
【0011】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記サプレッションチェンバが設置されるトーラス室が設けられており、上記充填確認工程にて上記サプレッションチェンバ内に上記止水材を充填できないと判断した場合に、上記トーラス室に上記サプレッションチェンバと上記ベント管との接続部位の高さまで上記止水材を充填するトーラス室閉鎖工程を有し、上記トーラス室閉鎖工程の後に上記水供給工程を行うという構成を採用する。
【0012】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記サプレッションチェンバと上記ベント管とを接続する真空破壊装置とが設けられており、上記真空破壊装置に破損箇所が確認された場合に、上記トーラス室閉鎖工程にて上記真空破壊装置の破損箇所の高さまで上記止水材を充填するという構成を採用する。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、ベント管に止水材を供給する止水材供給経路を確保できる場合に、ベント管に止水材を充填することによってベント管を閉塞する。このように全て(8本)のベント管が止水材により閉塞することによって、原子炉格納容器を冠水させるときにベント管を介して水が流れ出ることを防止することができる。このような第1の発明によれば、止水材の量は、ベント管内に供給される分のみとなり、トーラス室の全てに止水材を充填する場合と比較して極めて少なくすることができる。また、第1の発明によれば、ベント管が閉塞されていることから、サプレッションチェンバに水を溜めることなくドライウェルを冠水させることができ、原子炉格納容器を全て水で満たす場合よりも水の量を低減させることができる。
したがって、第1の発明によれば、サプレッションチェンバまたはベント管のいずれかに破損箇所が存在する可能性が高い原子炉格納容器の冠水方法であって、原子炉格納容器の冠水に必要となる止水材や水の量を出来る限り抑えつつ原子炉格納容器を冠水させることができる。
【0014】
また、第2の発明によれば、上記止水材供給経路を確保できないが、サプレッションチェンバ内に止水材を充填できる場合に、ベント管の下方に接続されるダウンカマの開口が閉塞されるまでサプレッションチェンバ内に止水材を供給してダウンカマの開口を閉塞する。このように、サプレッションチェンバの内部空間とベント管とを接続するダウンカマの開口が閉塞されることによって、原子炉格納容器を冠水させるときにベント管を介してサプレッションチェンバ内に水が流れ込むことを防止することができる。このような第2の発明によれば、止水材の量は、サプレッションチェンバの底部からダウンカマの開口が閉塞される高さとなるまでの分となり、トーラス室を止水材で塞ぐ場合と比較して少なくすることができる。また、第2の発明によれば、ダウンカマの開口が閉塞されていることからサプレッションチェンバに水を溜めることなくドライウェルを冠水させることができ、原子炉格納容器を全て水で満たす場合よりも水の量を低減させることができる。
したがって、第2の発明によれば、サプレッションチェンバに破損箇所が存在する場合であって、その場所を特定し、補修せずとも原子炉格納容器を冠水させることができる方法であって、原子炉格納容器の冠水に必要となる止水材や水の量を出来る限り抑えつつ原子炉格納容器を冠水させることができる。
【0015】
また、第3の発明によれば、上記止水材供給経路を確保できず、さらにサプレッションチェンバ内に止水材を充填できない場合に、サプレッションチェンバが設置されるトーラス室に止水材を充填してトーラス室を閉鎖する。このようにトーラス室が閉鎖されることによって、ベント管に破損があった場合も、原子炉格納容器を冠水させるときに水がサプレッションチェンバ外部に漏れだすことを防止することができる。このような第3の発明によれば、止水材の量は、ベント管とサプレッションチェンバとの接続部位を埋設する高さまでの分となり、トーラス室の全てを止水材で塞ぐ場合と比較して少なくすることができる。
【0016】
また、第4の発明によれば、ベント管とサプレッションチェンバとの接続部位よりも上方に配置される真空破壊装置に破損がある場合であっても、原子炉格納容器を冠水させるときに水がサプレッションチェンバ外部に漏れだすことを防止することができる。このような第4の発明によれば、止水材の量は、真空破壊装置の破損箇所を埋設する高さまでの分となり、トーラス室の全てを止水材で塞ぐ場合と比較して少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態である原子炉格納容器の冠水方法にて冠水される原子炉格納容器を備える沸騰水型原子炉の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の一実施形態である原子炉格納容器の冠水方法を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の第1実施形態である原子炉格納容器の冠水方法において、サプレッションチェンバに充填材を供給する工程を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の第1実施形態である原子炉格納容器の冠水方法を説明するための模式図である。
【図6】本発明の第1実施形態である原子炉格納容器の冠水方法を説明するための模式図である。
【図7】本発明の第1実施形態である原子炉格納容器の冠水方法を説明するための模式図である。
【図8】本発明の第1実施形態である原子炉格納容器の冠水方法を説明するための模式図である。
【図9】本発明の第1実施形態である原子炉格納容器の冠水方法を説明するための模式図である。
【図10】本発明の第1実施形態である原子炉格納容器の冠水方法を説明するための模式図である。
【図11】本発明の第2実施形態である原子炉格納容器の冠水方法において、サプレッションチェンバに充填材を供給する工程を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る原子炉格納容器の冠水方法の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。また、以下の説明においては、本発明を沸騰水型原子炉の1つであるMARK−I型の原子炉格納容器を冠水させる方法に適用した例について説明する。なお、本発明は、MARK−I型に限られず、MARK−I改良型の原子炉格納容器を冠水させる方法に適用することも可能である。
【0019】
(第1実施形態)
まず先に、MARK−I型の沸騰水型原子炉1について説明する。図1は、MARK−I型の沸騰水型原子炉1の概略構成を示す縦断面図である。また、図2は、図1のA−A断面図である。なお、図2においては、後述の原子炉建屋2は省略されている。図1に示すように、MARK−I型の沸騰水型原子炉1は、原子炉建屋2と、原子炉格納容器3と、ベントヘッダ4と、ダウンカマ5と、支持部6と、原子炉圧力容器7と、不図示の炉心を備えている。
【0020】
原子炉建屋2は、原子炉格納容器3と、ベントヘッダ4と、ダウンカマ5と、支持部6と、原子炉圧力容器7と、不図示の炉心とを収納する建屋であり、鉄筋コンクリートにより形成されている。この原子炉建屋2の下部には、後述する原子炉格納容器3のサプレッションチェンバ3bを設置するためのトーラス室2aが設けられている。なお、図示していないが、原子炉建屋2には、他に非常用炉心冷却系ポンプ、浄化設備、燃料プール、機器仮置きプール、非常用ガス処理系設備等が収納されている。
【0021】
原子炉格納容器3は、原子炉圧力容器を収容するドライウェル3aと、ドライウェル3aの周囲に設けられるサプレッションチェンバ3bと、ドライウェル3aとサプレッションチェンバ3bとを接続するベント管3cとから構成されている。
【0022】
ドライウェル3aは、丸底フラスコ形状とされた鋼鉄製の容器であり、原子炉建屋2の内壁内に設置されている。サプレッションチェンバ3bは、断面形状が図1に示すように円形であり、平面視形状が図2に示すように多角形の環状形状とされた鋼鉄製の容器である。なお、過酷事故によりサプレッションチェンバ3bに破損が生じていなければ、このサプレッションチェンバ3bの内部には水が貯留されてプールが形成されている。ベント管3cは、ドライウェル3aとサプレッションチェンバ3bとの間に設けられており、ドライウェル3aに蒸気が漏れ出したときに蒸気をサプレッションチェンバ3bに導く鋼鉄製の管である。このベント管3cは、図2に示すように、8本設けられている。各ベント管3cは、等間隔で配列されている。
【0023】
ベントヘッダ4は、サプレッションチェンバ3bの内部にサプレッションチェンバ3bと同心円状に配置される環状の管である。このベントヘッダ4は、全てのベント管3cの先端に接続されている。
【0024】
ダウンカマ5は、ベント管3cに接続されたベントヘッダ4に取り付けられている。このダウンカマ5は、逆U字形状の管部材であり、下方に向く両端に開口5aが設けられ、頂部がベントヘッダ4と接続されている。なお、サプレッションチェンバ3bの内部にプールが形成されている場合には、このプールの水面下にダウンカマ5の開口5aが配置される。このダウンカマ5を介して、サプレッションチェンバ3bの内部空間とベント管3cとが接続されている。このようなダウンカマ5は、図2に示すように、ベントヘッダ4に沿って等間隔で複数設けられている。
【0025】
支持部6は、ドライウェル3aの底部に設けられた鉄筋コンクリート部材であり、原子炉圧力容器7を支持する。原子炉圧力容器7は、支持部6上に固定されてドライウェル3aの内部に配置されている。この原子炉圧力容器7は、鋼鉄製の容器であり、内部に炉心を収納している。不図示の炉心は、核燃料や制御棒によって構成されており、原子炉圧力容器7の内部で支持されている。
【0026】
次に、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法について図3のフローチャートを参照しながら、説明する。なお、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法は、過酷事故が生じたことによってベント管3cまたはサプレッションチェンバ3bに破損が生じている状態から、ドライウェル3aの内部を水で満たすために行う。また、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法を開始する時点で、原子炉圧力容器7に対して冷却水が連続的に供給されており、供給した冷却水の一部が少なくともドライウェル3a及びサプレッションチェンバ3bに溜まっているものとする。また、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法を開始する時点では、原子炉圧力容器7に対する冷却水の供給が継続されているものとする。また、原子炉圧力容器7からは冷却水が漏れる状態であるものとする。
【0027】
まず、図3に示すように、ベント管内充填材注入工法が可能であるかの判断を行う(ステップS1)。上述のように原子炉建屋2の内部には、非常用炉心冷却系ポンプ、浄化設備、燃料プール、機器仮置きプール、非常用ガス処理系設備等の様々な機器が設置されている。このため、ベント管内充填材注入工法が可能であるかの判断を行うときには、これらの機器を避けて、全てのベント管3cに対して充填材(止水材)を供給するための充填材供給経路(図5(b)に示す供給配管21)が確保できるかを判断する。そして、充填材供給経路が確保できる場合にはベント管内充填材注入工法が可能であると判断する。なお、このようなステップS1は、ベント管3cに図5(b)に示すような充填材11(止水材)を供給する充填材供給経路(止水材供給経路)を確保できるかを判断する工程であり、本発明における経路判断工程に相当する。
【0028】
ステップS1にて、ベント管内充填材注入工法が可能であると判断した場合には、ベント管3cに充填材11を注入する(ステップS2)。このステップS2では、例えば、図5(a)の模式図に示すように、原子炉建屋2の内部に設けられると共にトーラス室2aの上階に位置する部屋(以下、上階室2bと称する)から、各ベント管3cに対して、バックアップ材10の供給配管20を通し、ベント管3cにバックアップ材10を配置する。このバックアップ材10は、充填材11が流れ出ることを防止するためのものである。続いて、図5(b)に示すように、上階室2bから、各ベント管3cに対して、充填材11の供給配管21(充填材供給経路)を通し、バックアップ材10よりもドライウェル3a側に充填材11を注入する。この充填材11としては、例えば、コンクリート等の一定時間経過後に固化する止水材や、高分子ゲルや水ガラス等からなる止水材を用いることができる。
【0029】
そして、全てのベント管3c内に充填材11が充填されることによって、ベント管3cが閉塞する。なお、このようなステップS2は、ステップS1で充填材供給経路(供給配管21)を確保できると判断した場合に、ベント管3c内に充填材11を充填する工程であり、本発明におけるベント管閉塞工程に相当する。このように全てのベント管3cが閉塞されることによって、原子炉格納容器3を水で満たす(ステップS8)を行うことができる。
【0030】
また、ステップS1にて、ベント管充填材注入工法ができないと判断した場合には、サプレッションチェンバ3b内に、ダウンカマ5の下端(すなわち開口5a)まで充填材11が可能であるかの判断を行う(ステップS3)。このステップS3では、例えば、図6(a)に示すように、ドライウェル3aとサプレッションチェンバ3bに対して水位計31,32を設置する。その後、図6(b)に示すように、上階室2bからトーラス室2aを介してベント管3c近傍に穿孔を形成し、この穿孔からベント管3cの外部を遠隔操作が可能なCCDカメラ等で撮影し、ベント管3cあるいはベント管3cとドライウェル3aとの接続部に破損箇所があるかの確認を行う。なお、必要に応じて、トーラス室2aの排水経路23を形成する。
【0031】
そして、ベント管3cあるいはベント管3cとドライウェル3aとの接続部に破損箇所がない場合には、ダウンカマ5の下端まで充填材11が充填可能であると判断する。また、ベント管3cあるいはベント管3cとドライウェル3aとの接続部に破損箇所がある場合には、ダウンカマ5の下端まで充填材11が充填できないと判断する。
【0032】
ステップS3で、サプレッションチェンバ3b内に、ダウンカマ5の下端まで充填材11が充填可能であると判断した場合には、サプレッションチェンバ3bの下部に充填材11がリークする箇所があるかの確認を行う(ステップS4)。この確認は、例えば、上述の遠隔操作が可能なCCDカメラ等で撮影することによって行う。サプレッションチェンバ3bの下部にリーク箇所があると確認された場合には、この場合であっても充填材11を継続して充填し続けることでダウンカマ5の下端まで充填材11が充填可能であるかを判断する(ステップS5)。破損箇所の高さまでトーラス室2aにおける密閉性が確保されているのであれば、サプレッションチェンバ3bの下部に破損がある場合であっても、ダウンカマ5の下端まで充填材11が充填可能となる。このため、例えば、トーラス室2aにおける密閉性を確認することによって充填材11を継続して充填可能であるかを判断する。
【0033】
これらのステップS3〜ステップS5によって、最終的にサプレッションチェンバ3b内に充填材11を充填できるかの判断を行う。つまり、このようなステップS3〜ステップS5は、ステップS1でベント管充填材注入工法ができないと判断した場合、サプレッションチェンバ3b内に充填材11を充填できるかの判断を行う工程であり、本発明の充填確認工程に相当する。
【0034】
サプレッションチェンバ3b内に充填材11を充填できると判断した場合(すなわち、ステップS3でダウンカマ5の下端まで充填材11を充填可能と判断した場合、ステップS4でサプレッションチェンバ3bの下部に充填材11がリークする箇所がないと判断した場合、あるいはステップS5で継続して充填材11を充填することが可能であると判断した場合)には、ダウンカマ5の下端を越える高さまで充填材11を充填する(ステップS6)。
【0035】
ここで、ダウンカマ5の下端まで充填材11を充填する手順について、図4のフローチャート及び図7,8を参照して説明する。なお、ここでは、ステップS3でダウンカマ5の下端まで充填材11を充填可能と判断した場合を例にして説明する。
【0036】
まず、図7(a)に示すように、サプレッションチェンバ3bと原子炉圧力容器7とを含む水の循環経路24を形成する(ステップS11)。この循環経路24途中には、放射性物質を除去する浄化装置25と、水を冷却する熱交換器26とを設置する。また、上述の水位計31,32も設置する。
続いて、サプレッションチェンバ3bとトーラス室2aの除染が必要かを判断する(ステップS12)。ここで除染が必要と判断した場合には、トーラス室2a内及びサプレッションチェンバ3bから水を排出するための排水経路27と、トーラス室2a内及びサプレッションチェンバ3b内の除染を行うための除染経路28を形成する(図7(b)及び図8(a)参照)。
そして、図7(b)に示すように、循環経路24での水の循環を停止した状態で排水経路27を用いてサプレッションチェンバ3b内の水を排水する(ステップS13)。このとき、外部浄化系から原子炉圧力容器7へ注水できる循環経路を形成して注水し、ドライウェル3a内の水位を冷却水がベント管3cに流れ込まない水位とする。さらに、図8(a)に示すように、除染経路28を用いて、例えば高圧スプレイによってトーラス室2a及びサプレッションチェンバ3b内の除染を行う(ステップS14)。このとき、循環経路24をサプレッションチェンバ3bからドライウェル30の下部に接続しなおして水の循環を再開すると共に、より高い位置の水位が計測できるように水位計31の接続状態を変更する。なお、トーラス室2a及びサプレッションチェンバ3b内の除染によって生じた排水は、排水経路27を介して外部に排水される。
【0037】
続いて、サプレッションチェンバ3b内に充填材11を充填する(ステップS15)。ここでは、図8(b)に示すように、除染経路28に換えて充填材供給経路29を形成し、充填材供給経路29から充填材11をサプレッションチェンバ3b内に供給する。そして、ダウンカマ5の開口5aを超えるまで充填材11の供給を継続する。なお、サプレッションチェンバ3b内に水が残存する可能性があるため、排水経路27を用いた排水を継続する。これによって、ダウンカマ5の開口5aが閉塞される。
【0038】
なお、ステップS12において、除染が必要ないと判断した場合には、充填材11が水中で使用可能であるかについて判断する(ステップS16)。ここで、水中で使用可能とは、水中に充填材11を供給することによって止水が可能であるということを意味する。そして、充填材11が水中で使用できないと判断した場合には、サプレッションチェンバ3b(必要に応じてトーラス室2a)の排水(ステップS17)を行った後、ステップ15を行って充填材11を充填する。
【0039】
また、ステップS16で充填材11が水中で使用できると判断した場合には、サプレッションチェンバ3bの排水を行うことなくサプレッションチェンバ3bにおいて充填材11の充填を行う(ステップS19)。その後、サプレッションチェンバ3b内の水がなくなるまで排水を繰り返す(ステップS19及びステップS20)。
【0040】
図3に戻り、サプレッションチェンバ3b内に充填材11を充填できないと判断した場合(すなわち、ステップS3でダウンカマ5の下端まで充填材11を充填できないと判断した場合、あるいはステップS5で継続して充填材11を充填することができないと判断した場合)には、トーラス室2aに対して充填材11を充填する(ステップS7)。ここでは、図9(a)に示すように、少なくともベント管3cとサプレッションチェンバ3bとの接続部が埋設されるまで(本実施形態ではサプレッションチェンバ3bが全て埋設されるまで)充填材11を充填する。ここでは、充填材11の充填量は、トーラス室2aの天井に到達しない量としている。なお、このようなステップS7は、サプレッションチェンバ3b内に充填材11を充填できないと判断した場合に、トーラス室2aにサプレッションチェンバ3bとベント管3cとの接続部位の高さまで充填材11を充填する工程であり、本発明のトーラス室閉鎖工程に相当する。
【0041】
なお、図9(b)に示すように、サプレッションチェンバ3bとベント管3cとを接続する真空破壊装置8が、サプレッションチェンバ3bとベント管3cとの接続部位よりも上方に配置されている場合には、真空破壊装置8に破損があるか否かの確認を行う。そして、真空破壊装置8に破損があると判断した場合には、真空破壊装置8の破損箇所が埋設される高さまで充填材11をトーラス室2aに充填する。ここでも、充填材11の充填量は、トーラス室2aの天井に到達しない量とする。
【0042】
そして、ステップS2(ベント管内3cへの充填材11の充填)、ステップS6(ダウンカマ5の下端を越える高さまでの充填材11の充填)あるいはステップS7(トーラス室2aへの充填材11の充填)が完了すると、原子炉格納容器3のドライウェル3aを水で満たす(ステップS8)。例えば、図8(b)に示す状態からドライウェル3aの内部を水で満たす場合には、図10(a)に示すように外部から原子炉圧力容器7への冷却水の供給量を継続し、ドライウェル3aが冠水したら外部から原子炉圧力容器7への冷却水の供給を停止して循環経路24にて水を循環させる。このようなステップS8は、原子炉格納容器3を冠水させるために当該原子炉格納容器3に水を供給する工程であり、本発明の水供給工程に相当する。
【0043】
以上のような本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法によれば、ベント管3cに充填材11を供給する充填材供給経路(供給配管21)を確保できる場合に、ベント管3cに充填材11を充填することによってベント管3cを閉塞する。このようにベント管3cが充填材11により閉塞することによって、原子炉格納容器3を冠水させるときにベント管3cを介して水が流れ出ることを防止することができる。このような本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法によれば、充填材11の量は、ベント管3c内に供給される分のみとなり、トーラス室2aを全て充填材11で充填する場合と比較して極めて少なくすることができる。また、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法によれば、ベント管3cが閉塞されていることから、サプレッションチェンバ3bに水を溜めることなくドライウェル3aを冠水させることができ、原子炉格納容器3を全て水で満たす場合よりも水の量を低減させることができる。
したがって、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法によれば、原子炉格納容器3の冠水に必要となる充填材11や水の量を出来る限り抑えつつ原子炉格納容器3を冠水させることができる。
【0044】
また、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法によれば、ダウンカマ5を含むベント系に対して上記充填材供給経路(供給配管21)を確保できないが、漏水の原因となる破損箇所がサプレッションチェンバ3bと限定され、さらにサプレッションチェンバ3b内に充填材11を充填できる場合に、ベント管3cの下方に接続されるダウンカマ5の開口5aが閉塞されるまでサプレッションチェンバ3b内に充填材11を供給してダウンカマ5の開口5aを閉塞する。このように、サプレッションチェンバ3bの内部空間とベント管3cとを接続するダウンカマ5の開口5aが閉塞されることによって、原子炉格納容器3を冠水させるときにベント管3cを介してサプレッションチェンバ3b内に水が流れ込むことを防止することができる。このような本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法によれば、充填材11の量は、サプレッションチェンバ3bの底部からダウンカマ5の開口5aが閉塞される高さとなるまでの分となり、トーラス室2aを全て充填材11で充填する場合と比較して極めて少なくすることができる。また、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法によれば、ダウンカマ5の開口5aが閉塞されていることからサプレッションチェンバ3bに水を溜めることなくドライウェル3aを冠水させることができ、原子炉格納容器3を全て水で満たす場合よりも水の量を低減させることができる。
したがって、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法によれば、原子炉格納容器の冠水に必要となる充填材11や水の量を出来る限り抑えつつ原子炉格納容器3を冠水させることができる。また、サプレッションチェンバ3bに破損箇所が存在する場合であっても、その場所を特定し、補修せずとも原子炉格納容器3を冠水させることができる。
【0045】
また、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法によれば、充填材供給経路(供給配管21)を確保できず、さらにサプレッションチェンバ3b内に充填材11を充填できない場合に、サプレッションチェンバ3bが設置されるトーラス室2aに充填材11を充填してトーラス室2aを閉鎖する。このようにトーラス室2aが閉鎖されることによって、ベント管3cに破損があった場合も、原子炉格納容器3を冠水させるときに水がサプレッションチェンバ3bの外部に漏れだすことを防止することができる。このような本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法によれば、充填材11の量は、ベント管3cとサプレッションチェンバ3bとの接続部位を埋設する高さまでの分となり、トーラス室2aの全てを充填材11で塞ぐ場合と比較して極めて少なくすることができる。
【0046】
また、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法によれば、ベント管3cとサプレッションチェンバ3bとの接続部位よりも上方に配置される真空破壊装置8に破損がある場合であっても、原子炉格納容器3を冠水させるときに水がサプレッションチェンバ3b外部に漏れだすことを防止することができる。このような本実施形態の原子炉各の容器3の冠水方法によれば、充填材11の量は、真空破壊装置8の破損箇所を埋設する高さまでの分となり、トーラス室2aの全てを充填材11で塞ぐ場合と比較して極めて少なくすることができる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0048】
図11は、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法を説明するためのフローチャートである。この図に示すように、ステップS1〜ステップS3、ステップS7及びステップS8は、上記第1実施形態と同様である。
【0049】
本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法では、ステップS3において、ダウンカマ5の下端まで充填材11を充填可能と判断した場合に、サプレッションチェンバ3bの容積に基づいて算出した量の充填材11をサプレッションチェンバ3b内に供給する(ステップS30)。つまり、サプレッションチェンバ3bの下部に破損がないことを前提として、充填材11がダウンカマ5の下端を越える供給量を算出し、この算出した供給量の充填材11をサプレッションチェンバ3bに供給する。
【0050】
続いて、ダウンカマ5の下端まで充填材11が到達しているかを確認する(ステップS31)。ここでは、例えば、遠隔操作が可能なCCDカメラによって確認を行う。なお、充填材11が均一に拡がっていない可能性を考慮し、複数の箇所にてCCDカメラにて確認を行うことが望ましい。その結果、ダウンカマ5の下端に充填材11が到達していれば、ステップS8に移行して原子炉格納容器3内を水で満たす。
【0051】
一方、ステップS21において、ダウンカマ5の下端に充填材11が到達していなければ、サプレッションチェンバ3bの下部に破損があると推定される。このため、サプレッションチェンバ3bの容積とトーラス室2aの容積とに基づいてダウンカマ5の下端に到達する供給量を算出し、この算出した供給量の充填材11をサプレッションチェンバ3b(トーラス室2aも含む)に供給する(ステップS32)。なお、ステップS32での実際の供給量は、ステップS30で算出した量との差分となる。
【0052】
続いて、ダウンカマ5の下端まで充填材11が到達しているかを確認する(ステップS33)。ここでは、例えば、遠隔操作が可能なCCDカメラによって確認を行う。なお、充填材11が均一に拡がっていない可能性を考慮し、複数の箇所にてCCDカメラにて確認を行うことが望ましい。その結果、ダウンカマ5の下端に充填材11が到達していれば、ステップS8に移行して原子炉格納容器3内を水で満たす。
【0053】
一方、ステップS23において、ダウンカマ5の下端に充填材11が到達していなければ、何らかの原因によって、ダウンカマ5の下端まで充填材11が充填可能な状態ではないと判断し、ステップS7に移行してトーラス室2aに充填材11を充填する。つまり、ステップS23において、ダウンカマ5の下端に充填材11が到達していなければ、ステップS3の判断を否定してステップS7に移行する。
【0054】
このような本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法によれば、ステップS30〜ステップS33において実際にサプレッションチェンバ3bに充填材11を供給して、サプレッションチェンバ3bに充填材11を溜められるかを判断している。このため、事前にサプレッションチェンバ3bの下部が破損しているか否かの確認(上記第1実施形態のステップS4)を行う必要がなくなる。
【0055】
なお、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法では、ステップS3、ステップ30〜ステップS33によって、サプレッションチェンバ3b内に充填材11を充填できるか判断とすると共に、条件によってダウンカマ5の開口5aの閉塞が行われる。つまり、本実施形態の原子炉格納容器3の冠水方法では、ステップS3、ステップ30〜ステップS33が、本発明の充填確認工程とダウンカマ閉塞工程とに相当する。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0057】
1……MARK−I型の沸騰水型原子炉、2……原子炉建屋、2a……トーラス室、2b……上階室、3……原子炉格納容器、3a……ドライウェル、3b……サプレッションチェンバ、3c……ベント管、4……ベントヘッダ、5……ダウンカマ、6……支持部、7……原子炉圧力容器、10……バックアップ材、11……充填材、21……供給配管(充填材供給経路)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器を収納するドライウェルと、当該ドライウェルの周囲に設けられるサプレッションチェンバと、前記ドライウェルと前記サプレッションチェンバとを接続するベント管とを有し、前記サプレッションチェンバ及び前記ベント管の少なくともいずれかに漏水の原因となる破損箇所を有する原子炉格納容器の冠水方法であって、
前記ベント管に止水材を供給する止水材供給経路を確保できるかを判断する経路判断工程と、
前記経路判断工程にて前記止水材供給経路を確保できると判断した場合に、前記ベント管内に前記止水材を充填するベント管閉塞工程とを有し、
前記ベント管閉塞工程の後に、前記原子炉格納容器に水を供給する水供給工程を行う
ことを特徴とする原子炉格納容器の冠水方法。
【請求項2】
前記ベント管の下方に接続されると共に前記サプレッションチェンバの内部空間と前記ベント管とを接続するダウンカマが設けられており、
前記経路判断工程にて前記止水材供給経路を確保できないと判断した場合に、前記サプレッションチェンバ内に前記止水材を充填できるかの判断を行う充填確認工程と、
前記充填確認工程にて前記サプレッションチェンバ内に前記止水材を充填できると判断した場合に、前記ダウンカマの開口が閉塞されるまで前記止水材を前記サプレッションチェンバに充填するダウンカマ閉塞工程と
を有し、
前記ダウンカマ閉塞工程の後に前記水供給工程を行う
ことを特徴とする請求項1記載の原子炉格納容器の冠水方法。
【請求項3】
前記サプレッションチェンバが設置されるトーラス室が設けられており、
前記充填確認工程にて前記サプレッションチェンバ内に前記止水材を充填できないと判断した場合に、前記トーラス室に前記サプレッションチェンバと前記ベント管との接続部位の高さまで前記止水材を充填するトーラス室閉鎖工程を有し、
前記トーラス室閉鎖工程の後に前記水供給工程を行う
ことを特徴とする請求項2記載の原子炉格納容器の冠水方法。
【請求項4】
前記サプレッションチェンバと前記ベント管とを接続する真空破壊装置とが設けられており、
前記真空破壊装置に破損箇所が確認された場合に、前記トーラス室閉鎖工程にて前記真空破壊装置の破損箇所の高さまで前記止水材を充填する
ことを特徴とする請求項3記載の原子炉格納容器の冠水方法。
【請求項1】
原子炉圧力容器を収納するドライウェルと、当該ドライウェルの周囲に設けられるサプレッションチェンバと、前記ドライウェルと前記サプレッションチェンバとを接続するベント管とを有し、前記サプレッションチェンバ及び前記ベント管の少なくともいずれかに漏水の原因となる破損箇所を有する原子炉格納容器の冠水方法であって、
前記ベント管に止水材を供給する止水材供給経路を確保できるかを判断する経路判断工程と、
前記経路判断工程にて前記止水材供給経路を確保できると判断した場合に、前記ベント管内に前記止水材を充填するベント管閉塞工程とを有し、
前記ベント管閉塞工程の後に、前記原子炉格納容器に水を供給する水供給工程を行う
ことを特徴とする原子炉格納容器の冠水方法。
【請求項2】
前記ベント管の下方に接続されると共に前記サプレッションチェンバの内部空間と前記ベント管とを接続するダウンカマが設けられており、
前記経路判断工程にて前記止水材供給経路を確保できないと判断した場合に、前記サプレッションチェンバ内に前記止水材を充填できるかの判断を行う充填確認工程と、
前記充填確認工程にて前記サプレッションチェンバ内に前記止水材を充填できると判断した場合に、前記ダウンカマの開口が閉塞されるまで前記止水材を前記サプレッションチェンバに充填するダウンカマ閉塞工程と
を有し、
前記ダウンカマ閉塞工程の後に前記水供給工程を行う
ことを特徴とする請求項1記載の原子炉格納容器の冠水方法。
【請求項3】
前記サプレッションチェンバが設置されるトーラス室が設けられており、
前記充填確認工程にて前記サプレッションチェンバ内に前記止水材を充填できないと判断した場合に、前記トーラス室に前記サプレッションチェンバと前記ベント管との接続部位の高さまで前記止水材を充填するトーラス室閉鎖工程を有し、
前記トーラス室閉鎖工程の後に前記水供給工程を行う
ことを特徴とする請求項2記載の原子炉格納容器の冠水方法。
【請求項4】
前記サプレッションチェンバと前記ベント管とを接続する真空破壊装置とが設けられており、
前記真空破壊装置に破損箇所が確認された場合に、前記トーラス室閉鎖工程にて前記真空破壊装置の破損箇所の高さまで前記止水材を充填する
ことを特徴とする請求項3記載の原子炉格納容器の冠水方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−108956(P2013−108956A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256580(P2011−256580)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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