説明

原子炉格納容器の基礎構造

【課題】原子炉格納容器の基礎構造において、構造の簡素化及び建設コストの低減を可能とする。
【解決手段】地盤31上に設けられる下部基礎版33と、下部基礎版33の上方に設けられる上部基礎版34と、上部基礎版34と下部基礎版33との間に介装される免震装置35と、上部基礎版34上に設けられる原子炉格納容器11とを設け、原子炉格納容器11の下部構造体としての逆Uテンドン48の端部を上部基礎版34を貫通してその下面に定着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉格納容器を地盤上の基礎版に立設するための原子炉格納容器の基礎構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントの一つとして、加圧水型原子炉があり、この加圧水型原子炉では、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、一次系全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電している。
【0003】
このような加圧水型原子炉を有する原子力発電プラントでは、地盤に敷設された基礎版上に、この原子炉格納容器が立設されており、この基礎版は免震構造となっている。このような免震構造を有する基礎版としては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された原子力施設の建屋の基礎版では、地盤上に設けられた下部基礎版と原子炉格納容器が立設された上部基礎版との間に免震装置を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−163927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の原子力発電プラントでは、原子炉格納容器が厚肉な耐震壁により構成されており、この耐震壁は、多数のアンカボルトなどの鋼棒や鋼線を用いて基礎版に定着されている。上述した従来の原子力施設の建屋の基礎版では、上部基礎版と下部基礎版との間に免震装置を設けていることから、耐震壁は、上部基礎版に定着することとなる。そのため、上部基礎版は、アンカボルトなどを定着するための空間部を設けなければならず、構造形式によっては基礎版内部に作業者が入って定着作業を行うことを要するため、分厚い構造となる。このように上部基礎版が分厚いものになると、構造が複雑になるだけでなく、建設期間や物量が増えるために建設コストが増加してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上述した課題を解決するものであり、構造の簡素化及び建設コストの低減を可能とする原子炉格納容器の基礎構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明の原子炉格納容器の基礎構造は、地盤上に設けられる下部基礎版と、前記下部基礎版の上方に設けられる上部基礎版と、前記上部基礎版と前記下部基礎版との間に介装される免震装置と、前記上部基礎版上に設けられる原子炉格納容器と、を備え、前記原子炉格納容器の下部構造体が前記上部基礎版を貫通して下面に定着される、ことを特徴とするものである。
【0008】
従って、上部基礎版と下部基礎版との間に免震装置を介装し、原子炉格納容器の下部構造体が上部基礎版を貫通して下面に定着されることで、上部基礎版の内部に原子炉格納容器の下部構造体を定着するための空間部を設ける必要はなく、上部基礎版の薄型化が可能となり、構造を簡素化することができると共に、建設期間や物量を減少することで建設コストを低減することができる。
【0009】
本発明の原子炉格納容器の基礎構造では、前記免震装置は、前記上部基礎版と前記下部基礎版との間に水平方向に複数の免震部材が所定間隔をもって配置されて構成され、前記原子炉格納容器の下部構造体は、前記上部基礎版を前記各免震部材の間の空間部へ貫通して定着されることを特徴としている。
【0010】
従って、複数の免震部材を上部基礎版と下部基礎版との間に水平方向に所定間隔をもって配置し、原子炉格納容器の下部構造体を各免震部材の間の空間部へ貫通して定着することで、上部基礎版の内部に原子炉格納容器の下部構造体を定着するための作業空間を設ける必要はなく、上部基礎版の薄型化を可能とすることができる。
【0011】
本発明の原子炉格納容器の基礎構造では、前記原子炉格納容器の下部構造体は、前記上部基礎版の下面に支圧板と固定具により定着されることを特徴としている。
【0012】
従って、原子炉格納容器の下部構造体を上部基礎版の下面に支圧板と固定具により定着することで、下部構造体を上部基礎版に強固に定着することができる。
【0013】
本発明の原子炉格納容器の基礎構造では、前記原子炉格納容器は、プレストレスコンクリート製原子炉格納容器であり、前記下部構造体としてのテンドンの端部が前記上部基礎版を貫通して下面に定着されることを特徴としている。
【0014】
従って、プレストレスコンクリート製原子炉格納容器とし、テンドンの端部を上部基礎版の下面に定着することで、原子炉格納容器の強度の向上を可能とすることができると共に、上部基礎版の薄型化を可能とすることができる。
【0015】
本発明の原子炉格納容器の基礎構造では、前記原子炉格納容器は、鋼板コンクリート製格納容器であり、前記下部構造体としてのアンカーが前記上部基礎版を貫通して下面に定着されることを特徴としている。
【0016】
従って、鋼板コンクリート製格納容器とし、アンカーを上部基礎版の下面に定着することで、容易に上部基礎版の薄型化を可能とすることができる。
【0017】
本発明の原子炉格納容器の基礎構造では、前記原子炉格納容器は、鉄筋コンクリート製原子炉格納容器であり、前記下部構造体としての鉄筋の端部が前記上部基礎版を貫通して下面に定着されることを特徴としている。
【0018】
従って、鉄筋コンクリート製原子炉格納容器とし、鉄筋の端部を上部基礎版の下面に定着することで、容易に上部基礎版の薄型化を可能とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の原子炉格納容器の基礎構造によれば、上部基礎版と下部基礎版との間に免震装置を介装し、原子炉格納容器の下部構造体が上部基礎版を貫通して下面に定着されるので、上部基礎版の内部に原子炉格納容器の下部構造体を定着するための空間部を設ける必要はなく、上部基礎版の薄型化が可能となり、構造を簡素化することができると共に、建設期間や物量を減少することで建設コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係る原子炉格納容器の基礎構造が適用される原子力発電プラントを表す概略構成図である。
【図2】図2は、実施例1の原子炉格納容器の基礎構造を表す概略構成図である。
【図3】図3は、実施例1のプレストレスコンクリート製原子炉格納容器の壁部構造を表す概略図である。
【図4】図4は、実施例1の原子炉格納容器の基礎構造におけるテンドン定着部を表す断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施例2に係る原子炉格納容器の基礎構造におけるアンカー定着部を表す断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施例3に係る原子炉格納容器の基礎構造における鉄筋定着部を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る原子炉格納容器の基礎構造の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の実施例1に係る原子炉格納容器の基礎構造が適用される原子力発電プラントを表す概略構成図、図2は、実施例1の原子炉格納容器の基礎構造を表す概略構成図、図3は、実施例1のプレストレスコンクリート製原子炉格納容器の壁部構造を表す概略図、図4は、実施例1の原子炉格納容器の基礎構造におけるテンドン定着部を表す断面図である。
【0023】
実施例1の原子力発電プラントに適用された原子炉は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、一次系全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電する加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。
【0024】
即ち、この加圧水型原子炉を有する原子力発電プラントにおいて、図1に示すように、原子炉格納容器11内には、加圧水型原子炉12及び蒸気発生器13が格納されており、この加圧水型原子炉12と蒸気発生器13とは冷却水配管14,15を介して連結されており、冷却水配管14に加圧器16が設けられ、冷却水配管15に冷却水ポンプ17が設けられている。この場合、減速材及び一次冷却水として軽水を用い、炉心部における一次冷却水の沸騰を抑制するために、一次冷却系統は加圧器16により160気圧程度の高圧状態を維持するように制御している。従って、加圧水型原子炉12にて、燃料として低濃縮ウランまたはMOXにより一次冷却水として軽水が加熱され、高温の一次冷却水が加圧器16により所定の高圧に維持した状態で冷却水配管14を通して蒸気発生器13に送られる。この蒸気発生器13では、高圧高温の一次冷却水と二次冷却水との間で熱交換が行われ、冷やされた一次冷却水は冷却水配管15を通して加圧水型原子炉12に戻される。
【0025】
蒸気発生器13は、原子炉格納容器11の外部に設けられたタービン18及び復水器19と冷却水配管20,21を介して連結されており、冷却水配管21に給水ポンプ22が設けられている。また、タービン18には発電機23が接続され、復水器19には冷却水(例えば、海水)を給排する取水管24及び排水管25が連結されている。従って、蒸気発生器13にて、高圧高温の一次冷却水と熱交換を行って生成された蒸気は、冷却水配管20を通してタービン18に送られ、この蒸気によりタービン18を駆動して発電機23により発電を行う。タービン18を駆動した蒸気は、復水器19で冷却された後、冷却水配管21を通して蒸気発生器13に戻される。
【0026】
このように構成された原子力発電プラントの原子炉格納容器11は、図2に示すように、岩盤等の堅固な地盤31上に敷設された基礎版32上に立設されている。そして、この原子炉格納容器11は、内部に上述した加圧水型原子炉12、蒸気発生器13、加圧器16などが収容されている。
【0027】
この原子炉格納容器11は、プレストレスを導入した鋼線(テンドンと称する)を用いた鉄筋コンクリート製原子炉格納容器(PCCV:Prestressed Concrete Containment Vessel)である。即ち、原子炉格納容器11は、図3に示すように、内側から、ライナプレート41、縦方向スチフナー42、水平方向スチフナー43、鉄筋44,45、コンクリート46、フープテンドン47、逆Uテンドン48などから構成されている。即ち、原子炉格納容器11は、フープテンドン47と逆Uテンドン48により内部側の圧力に抗して圧縮力を常時作用させるテンドン機構が構成される。
【0028】
この場合、フープテンドン47は、原子炉格納容器11の壁体内部において周方向に巻かれ、逆Uテンドン48は、原子炉格納容器11の壁体内部において軸方向に巻かれている。各フープテンドン47は、PC鋼線またはPC鋼が束ねられて構成されており、予め原子炉格納容器11の壁体内部に周方向に沿って埋設したシース管内に挿通されている。そして、原子炉格納容器11は、周方向において1箇所または複数箇所バットレス部が形成され、各フープテンドン47は、各端部がこのバットレス部に固定されている。
【0029】
各逆Uテンドン48は、各フープテンドン47と同様に、PC鋼線またはPC鋼が束ねられて構成されており、予め原子炉格納容器11の壁体内部に軸方向に沿って埋設したシース管内に挿通されている。この各逆Uテンドン48は、原子炉格納容器11の上方から見て、網目状にクロスさせて配設されている。そして、各逆Uテンドン48は、各端部が基礎版32に固定されている。
【0030】
従って、フープテンドン47及び逆Uテンドン48は、原子炉格納容器11の壁体を縦横方向に収縮させることができる。このため、原子炉格納容器11の内部の圧力が上昇して原子炉格納容器11が膨張しようとしても、この膨張に抗することができ、原子炉格納容器11は、内部圧力の変動に耐え得ることができる。
【0031】
また、図2に示すように、基礎版32は、周囲に擁壁を有し、地盤31上に配設される下部基礎版33と、下部基礎版33の鉛直方向の上方側に所定間隔を空けて配設される上部基礎版34と、下部基礎版33と上部基礎版34との間に介設される免震装置35とから構成されている。
【0032】
下部基礎版33は、例えば、内部に鉄筋を組み込んだ鉄筋コンクリート構造(RC構造)となっており、平坦に造成した地盤31上に敷設され、その表面(上面)が平坦となるように正方体状または長方体状に建造される。上部基礎版34は、下部基礎版33と同様に、例えば、内部に鉄筋を組み込んだ鉄筋コンクリート構造(RC構造)となっており、その表面(上面)及び裏面(下面)が平坦となるように正方体状または長方体状に建造される。
【0033】
免震装置35は、下部基礎版33の上面と上部基礎版34の下面との間に設けられている。この免震装置35は、例えば、円盤状のゴム材と円盤状の鋼板とを交互に積層した多層免震構造を有する免震部材36が水平方向に所定間隔(好ましくは、均等間隔)で複数配置されて構成されている。そして、この各免震部材36は、その下側が下部基礎版33の上面に固定され、その上側が上部基礎版34の下面に固定されている。
【0034】
そして、実施例1の原子炉格納容器の基礎構造では、原子炉格納容器11の下部構造体が上部基礎版34を貫通してその下面に定着されている。即ち、下部基礎版33と上部基礎版34との間に設けられる免震装置35は、複数の免震部材36が所定間隔をあけて配置されており、各免震部材36の間には空間部が確保されている。そのため、各免震部材36の間に設けられた空間部を、原子炉格納容器11の下部構造体を上部基礎版34に定着するための作業空間として利用する。具体的には、原子炉格納容器11の下部構造体は、上部基礎版34を貫通して各免震部材36の間の空間部(作業空間)へ貫通し、その下面に定着される。
【0035】
詳細に説明すると、図4に示すように、基礎版32は、下部基礎版33と上部基礎版34との間に免震装置35としての複数の免震部材36が所定間隔をあけて配置されて構成されており、各免震部材36の間に空間部(作業空間)Sが確保されている。前述したように、原子炉格納容器11は、コンクリート製原子炉格納容器であることから、下部構造体として逆Uテンドン48が適用されている。この逆Uテンドン48は、PC鋼線またはPC鋼が束ねられて構成されており、原子炉格納容器11の壁体11aの内部に埋設されたシース管51内に挿通されている。
【0036】
上部基礎版34は、所定の位置に鉛直方法に沿って貫通孔34aが形成されている。逆Uテンドン48及びシース管51は、端部がこの貫通孔34a内に挿通され、空間部(作業空間)Sまで延出されている。また、上部基礎版34は、その下面に貫通孔34aの周囲に位置して支圧板52が固定されており、逆Uテンドン48は、端部に固定具としてのアンカーヘッド53が固定されており、支圧板52とアンカーヘッド53との間に複数のシムプレート54が挿入されている。そして、逆Uテンドン48の端部、アンカーヘッド53、シムプレート54を被覆するように、エンドキャップ55が支圧板52に固定されることで、免震装置35の空間部Sに対する防火、耐火性能を確保する。
【0037】
この場合、作業者は、空間部Sから図示しないジャッキを用いて逆Uテンドン48の端部に固定されたアンカーヘッド53を下方に牽引することで、逆Uテンドン48に対して原子炉格納容器11の軸方向に圧力を作用させる。そして、所定の圧力で逆Uテンドン48を牽引した状態で、支圧板52とアンカーヘッド53との間にシムプレート54を所定枚数挿入して固定する。その後、空間部Sから注入管56により逆Uテンドン48に対して防錆材を注入する。なお、この定着作業は、原子炉格納容器11内にある全ての逆Uテンドン48に対してこの定着構造が適用される。
【0038】
なお、この実施例1では、上部基礎版34の貫通孔34a及びシース管51を、端部の途中からテーパ部をもって太くなる形状とし、シース管51を楔状に固定するようにしたが、この形状に限定されるものではなく、上部基礎版34の貫通孔34aやシース管51を長手方向に沿って同径としてもよい。
【0039】
このように実施例1の原子炉格納容器の基礎構造にあっては、地盤31上に設けられる下部基礎版33と、下部基礎版33の上方に設けられる上部基礎版34と、上部基礎版34と下部基礎版33との間に介装される免震装置35と、上部基礎版34上に設けられる原子炉格納容器11とを設け、原子炉格納容器11の下部構造体を上部基礎版34を貫通してその下面に定着している。
【0040】
従って、上部基礎版34と下部基礎版33との間に免震装置35を介装し、原子炉格納容器11の下部構造体が上部基礎版34を貫通して下面に定着されることで、上部基礎版34の内部に原子炉格納容器11の下部構造体を定着するための空間部Sを設ける必要はなく、この上部基礎版34の薄型化が可能となり、構造を簡素化することができると共に、建設期間や物量を減少することで建設コストを低減することができる。
【0041】
また、実施例1の原子炉格納容器の基礎構造では、免震装置35として、上部基礎版34と下部基礎版33との間に水平方向に複数の免震部材36を所定間隔をもって配置して構成し、原子炉格納容器11の下部構造体を上部基礎版34から各免震部材36の間の空間部Sへ貫通して定着している。従って、原子炉格納容器11の下部構造体を各免震部材36の間の空間部Sへ貫通して定着することで、作業者はこの空間部Sに入って定着作業を行うことが可能となり、上部基礎版34の内部に原子炉格納容器11の下部構造体を定着するための空間部Sを設ける必要はなくなり、この上部基礎版34を薄型化することができる。
【0042】
また、実施例1の原子炉格納容器の基礎構造では、原子炉格納容器11をコンクリート製原子炉格納容器とし、下部構造体としての逆Uテンドン48の端部を、上部基礎版34を貫通してその下面に定着している。この場合、逆Uテンドン48の端部を支圧板52とアンカーヘッド53により定着している。原子炉格納容器11をコンクリート製原子炉格納容器とし、逆Uテンドン48を用いることで、原子炉格納容器11の強度の向上を可能とすることができ、また、逆Uテンドン48の端部を支圧板52とアンカーヘッド53により強固に定着することができる。
【実施例2】
【0043】
図5は、本発明の実施例2に係る原子炉格納容器の基礎構造におけるアンカー定着部を表す断面図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0044】
実施例2の原子炉格納容器11は、鋼板コンクリート製格納容器(SCCV:Steal Concrete Containment Vessel)である。即ち、原子炉格納容器11は、図5に示すように、壁体11bが、鋼板61、スタッド62、タイバー63、コンクリート64などから構成されており、下部に固定されたベースプレート65がアンカー66により基礎版32に固定されている。
【0045】
そして、基礎版32は、地盤31上に配設される下部基礎版33と、下部基礎版33の鉛直方向の上方側に所定間隔を空けて配設される上部基礎版34と、下部基礎版33と上部基礎版34との間に介設される免震装置35とから構成され、複数の免震部材36が水平方向に所定間隔で配置されて構成されている。
【0046】
即ち、基礎版32は、下部基礎版33と上部基礎版34との間に免震装置35としての複数の免震部材36が所定間隔をあけて配置されて構成されており、各免震部材36の間に空間部(作業空間)Sが確保されている。原子炉格納容器11は、鋼板コンクリート製格納容器であることから、下部構造体としてアンカー66が適用されている。このアンカー66は、上端部がベースプレート65に固定されており、下端部が上部基礎版34を貫通して空間部(作業空間)Sまで延出されている。また、上部基礎版34は、その下面に支圧板67が固定されており、アンカー66は、下端部がこの支圧板67に固定具としての溶接により固定されている。
【0047】
この場合、作業者は、空間部Sからアンカー66の下端部と支圧板67との溶接作業を行う。なお、この溶接作業は、原子炉格納容器11の下端部にて、周方向に所定間隔をあけた複数位置で行われる。
【0048】
このように実施例2の原子炉格納容器の基礎構造にあっては、地盤31上に設けられる下部基礎版33と、下部基礎版33の上方に設けられる上部基礎版34と、上部基礎版34と下部基礎版33との間に介装される免震装置35と、上部基礎版34上に設けられる原子炉格納容器11とを設け、原子炉格納容器11を鋼板コンクリート製格納容器とし、下部構造体としてアンカー66を上部基礎版34を貫通して空間部(作業空間)Sまで延出し、支圧板67に固定している。
【0049】
従って、上部基礎版34と下部基礎版33との間に免震装置35を介装し、原子炉格納容器11のアンカー66が上部基礎版34を貫通して下面に定着されることで、上部基礎版34の内部に原子炉格納容器11の下部構造体を定着するための空間部Sを設ける必要はなく、この上部基礎版34の薄型化が可能となり、構造を簡素化することができると共に、建設期間や物量を減少することで建設コストを低減することができる。
【実施例3】
【0050】
図6は、本発明の実施例3に係る原子炉格納容器の基礎構造における鉄筋定着部を表す断面図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0051】
実施例3の原子炉格納容器11は、鉄筋コンクリート製原子炉格納容器(RCCV:Reinforced Concrete Containment Vessel)である。即ち、原子炉格納容器11は、図6に示すように、壁体11cが、鋼板71、スタッド72、連結材73、タイバー74、コンクリート75などから構成されており、上端部がコンクリート75に埋設された鉄筋76の下端部が基礎版32に固定されている。
【0052】
そして、基礎版32は、地盤31上に配設される下部基礎版33と、下部基礎版33の鉛直方向の上方側に所定間隔を空けて配設される上部基礎版34と、下部基礎版33と上部基礎版34との間に介設される免震装置35とから構成され、複数の免震部材36が水平方向に所定間隔で配置されて構成されている。
【0053】
即ち、基礎版32は、下部基礎版33と上部基礎版34との間に免震装置35としての複数の免震部材36が所定間隔をあけて配置されて構成されており、各免震部材36の間に空間部(作業空間)Sが確保されている。原子炉格納容器11は、鉄筋コンクリート製原子炉格納容器であることから、下部構造体として鉄筋76が適用されている。この鉄筋76は、上端部がコンクリート75に埋設されて固定されており、下端部が上部基礎版34を貫通して空間部(作業空間)Sまで延出されている。また、上部基礎版34は、その下面に支圧板77が固定されており、鉄筋76は、下端部がこの支圧板77に固定具としての溶接により固定されている。
【0054】
この場合、作業者は、空間部Sから鉄筋76の下端部と支圧板77との溶接作業を行う。なお、この溶接作業は、原子炉格納容器11の下端部にて、周方向に所定間隔をあけた複数位置で行われる。
【0055】
このように実施例3の原子炉格納容器の基礎構造にあっては、地盤31上に設けられる下部基礎版33と、下部基礎版33の上方に設けられる上部基礎版34と、上部基礎版34と下部基礎版33との間に介装される免震装置35と、上部基礎版34上に設けられる原子炉格納容器11とを設け、原子炉格納容器11を鉄筋コンクリート製原子炉格納容器とし、下部構造体として鉄筋76を上部基礎版34を貫通して空間部(作業空間)Sまで延出し、支圧板77に固定している。
【0056】
従って、上部基礎版34と下部基礎版33との間に免震装置35を介装し、原子炉格納容器11の鉄筋76が上部基礎版34を貫通して下面に定着されることで、上部基礎版34の内部に原子炉格納容器11の下部構造体を定着するための空間部Sを設ける必要はなく、この上部基礎版34の薄型化が可能となり、構造を簡素化することができると共に、建設期間や物量を減少することで建設コストを低減することができる。
【0057】
なお、上述した各実施例では、本発明の原子炉格納容器の基礎構造を加圧水型原子炉に適用して説明したが、沸騰型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)に適用することもでき、軽水炉であれば、いずれの原子炉に適用してもよい。
【符号の説明】
【0058】
11 原子炉格納容器
12 加圧水型原子炉
13 蒸気発生器
31 地盤
32 基礎版
33 下部基礎版
34 上部基礎版
35 免震装置
36 免震部材
47 フープテンドン
48 逆Uテンドン(下部構造体)
51 シース管
52,67,77 支圧板
53 アンカーヘッド(固定具)
54 シムプレート
66 アンカー(下部構造体)
76 鉄筋(下部構造体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤上に設けられる下部基礎版と、
前記下部基礎版の上方に設けられる上部基礎版と、
前記上部基礎版と前記下部基礎版との間に介装される免震装置と、
前記上部基礎版上に設けられる原子炉格納容器と、
を備え、
前記原子炉格納容器の下部構造体が前記上部基礎版を貫通して下面に定着される、
ことを特徴とする原子炉格納容器の基礎構造。
【請求項2】
前記免震装置は、前記上部基礎版と前記下部基礎版との間に水平方向に複数の免震部材が所定間隔をもって配置されて構成され、前記原子炉格納容器の下部構造体は、前記上部基礎版を前記各免震部材の間の空間部へ貫通して定着されることを特徴とする請求項1に記載の原子炉格納容器の基礎構造。
【請求項3】
前記原子炉格納容器の下部構造体は、前記上部基礎版の下面に支圧板と固定具により定着されることを特徴とする請求項1または2に記載の原子炉格納容器の基礎構造。
【請求項4】
前記原子炉格納容器は、プレストレスコンクリート製原子炉格納容器であり、前記下部構造体としてのテンドンの端部が前記上部基礎版を貫通して下面に定着されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の原子炉格納容器の基礎構造。
【請求項5】
前記原子炉格納容器は、鋼板コンクリート製格納容器であり、前記下部構造体としてのアンカーが前記上部基礎版を貫通して下面に定着されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の原子炉格納容器の基礎構造。
【請求項6】
前記原子炉格納容器は、鉄筋コンクリート製原子炉格納容器であり、前記下部構造体としての鉄筋の端部が前記上部基礎版を貫通して下面に定着されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の原子炉格納容器の基礎構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−88363(P2013−88363A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231118(P2011−231118)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】