説明

原子炉格納容器内の調査方法及び加工装置ユニット

【課題】非常事態の発生により計装系統が使用できない状態になった場合でも、原子炉格納容器内の環境状況を容易に把握できる原子炉格納容器内の調査方法を提供する。
【解決手段】原子炉格納容器および原子炉格納容器を取り囲む生体遮へい体を貫通して設けられ、生体遮へい体の外側で封止板により封鎖された予備のペネトレーションに、円筒状のアタッチメントを取り付ける(S1)。アタッチメントにバルブを取り付け、このバルブに加工機ユニットを取り付ける(S2)。加工機ユニットの加工機を用いて、上記の封止板に開口部を形成する(S4)。バルブを全開状態にして加工機ユニットを取り外し(S5)、計測器ユニットをバルブに取り付ける(S6)。計測器ユニットの計測器をバルブ、アタッチメント及びペネトレーション内を通して原子炉格納容器内に挿入する。計測器により原子炉格納容器内の情報を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉格納容器内の調査方法及び加工装置ユニットに係り、特に、沸騰水型原子力プラントの原子炉格納容器内の調査に適用するのに好適な原子炉格納容器内の調査方法及び加工装置ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントでは、炉心を内部に有する原子炉が原子炉格納容器内に配置されている。原子炉格納容器は、放射性物質が外部の環境に飛散するのを防止する防護壁の機能を有する。万が一、異常事象が発生したときには、原子炉格納容器内のガスをサンプリングし、原子炉格納容器内の状況を把握する方法が考えられる。
【0003】
事故発生時における原子炉格納容器内のガスを採取する試料採取装置の一例が、特表2008−522137号公報に記載されている。この試料採取装置は、原子炉格納容器内の雰囲気から試料であるガスを採取するための複数の試料採取管、及び分析装置を有する。分析装置はハウジング内に配置された弁装置及びガス分析器を有する。それぞれの試料採取管は原子炉格納容器を貫通して原子炉格納容器内に達し、各試料採取管のそれぞれの採取口が原子炉格納容器内の所定の位置に配置されている。各試料採取管は弁装置に接続され、弁装置で選択された任意の1本の試料採取管で採取された原子炉格納容器内の試料ガスが、ガス分析器に供給されて分析される。
【0004】
特開昭62−138792号公報は、原子力プラントに事故が発生したときに、原子炉格納容器内のガスを採取する事故後サンプリング装置を記載している。原子炉格納容器を貫通して原子炉格納容器内から原子炉格納容器外に達するガス採取配管が設けられ、このガス採取管は、原子炉格納容器を取り囲んでいる原子炉建屋の外まで伸びている。弁が原子炉建屋の内外でガス採取管にそれぞれ設けられる。接続器が、ガス採取管の、原子炉建屋外の端部に取り付けられている。原子力プラントにおいて冷却材喪失事故等の異常事象が発生したとき、可搬式事故後サンプリング装置が上記の接続器に接続され、ガス採取管に設けられた弁が開いて原子炉格納容器内のガスが可搬式事故後サンプリング装置により採取される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−522137号公報
【特許文献2】特開昭62−138792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
冷却材喪失事故が発生しても、試料採取装置により、原子炉格納容器内のガスを採取して分析することにより、原子炉格納容器内の状況を把握することができる。しかしながら、万が一、原子炉建屋内の全体的な機能が喪失するような非常事態が生じた場合には、既設の計測系統が使用不可能になり、既設のシステムを用いて原子炉格納容器内の環境状況を把握する手立てがなくなる可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、非常事態の発生により計装系統が使用できない状態になった場合においても、原子炉格納容器内の環境状況を容易に把握することができる原子炉格納容器内の調査方法及び加工装置ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、原子炉格納容器に設けられた予備のペネトレーションに取り付けられたバルブに、密閉容器、及び密閉容器内に配置された計測装置を有する計測器ユニットのその密閉容器を取り付け、そのバルブを開いて密閉容器内の計測装置を、バルブ及びペネトレーション内を通して格納容器内に挿入し、原子炉格納容器内に挿入された計測装置により、原子炉格納容器内の環境情報を取得することにある。
【0009】
原子炉格納容器に設けられた予備のペネトレーションを利用して原子炉格納容器内に計測装置を挿入し、この計測装置により原子炉格納容器内をモニタリングするので、万が一、原子炉建屋内の全体的な機能が喪失するような非常事態が生じて既設の計測系統が使用不可能になった場合でも、原子炉格納容器内の環境状況を容易に把握することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、非常事態の発生により計装系統が使用できない状態になった場合においても、原子炉格納容器内の環境状況を容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の原子炉格納容器内の調査方法の手順を示すフローチャートである。
【図2】図1に示す原子炉格納容器内の調査方法を適用する沸騰水型原子力プラントの原子力格納容器の縦断面図である。
【図3】図2に示す、原子炉格納容器に設けられた予備のペネトレーションの一例の縦断面図である。
【図4】図1に示すステップS1においてアタッチメントをペネトレーションに取り付けた状態を示す説明図である。
【図5】図1に示すステップS2においてバルブ及び加工機ユニットを取り付けた状態を示す説明図である。
【図6】図1に示すステップS3において加工機ユニットの密閉容器内を加圧した状態を示す説明図である。
【図7】図1に示すステップS4においてペネトレーションの封止板に孔をあけた状態を示す説明図である。
【図8】図1に示すステップS5において加工機ユニットを取り外す前の状態を示す説明図である。
【図9】図1に示すステップS6において計測器ユニットを取り付けた状態を示す説明図である。
【図10】図9に示す計測ユニットの密閉容器内で連結管を接続する状態を示す説明図である。
【図11】図1に示すステップS7において原子炉格納容器内をモニタリングしている状態を示す説明図である。
【図12】図1に示すステップS8において計測器ユニットを取り外す前の状態を示す説明図である。
【図13】図1に示すステップS9においてバルブを封止板により封止した状態を示す説明図である。
【図14】本発明の他の実施例である実施例2の原子炉格納容器内の調査方法において原子炉格納容器に設けられた予備のペネトレーションのバルブに計測器ユニットを取り付けた状態を示す説明図である。
【図15】実施例2の原子炉格納容器内の調査方法において原子炉格納容器内をモニタリングしている状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明の好適な一実施例である実施例1の原子炉格納容器内の調査方法を、図1を用いて説明する。
【0014】
本実施例の原子炉格納容器内の調査方法を説明する前に、図2を用いて、本実施例の調査方法を適用する、沸騰水型原子力プラントの原子炉格納容器の構造を以下に説明する。原子炉格納容器2は、原子炉建屋7内に設置される。原子炉格納容器2内にはドライウェル3が形成され、原子炉格納容器2の下部には環状の圧力抑制室4が設けられている。原子炉建屋7の一部であるコンクリート製の生体遮へい壁8が、原子炉格納容器2の周囲を取り囲んで配置されている。炉心を内蔵する原子炉圧力容器1が、原子炉格納容器2によって取り囲まれており、ドライウェル3内に配置される。原子炉圧力容器1は原子炉格納容器2内に設置された円筒状のペデスタル3の上端部に据え付けられる。
【0015】
原子炉圧力容器に接続された配管、及び電線管等が貫通する複数のペネトレーションが、原子炉格納容器2及び生体遮へい体8に形成されている。また、複数の予備のペネトレーションも原子炉格納容器2及び生体遮へい体8に形成されている。予備のペネトレーションとして、生体遮へい体8の外側の端部が封止板で封鎖されているペネトレーション5、及び生体遮へい体8の外側の端部に全閉状態のバルブ15Aを取り付けたペネトレーション5Aが存在する。ペネトレーション5,5Aは構成のチューブである。
【0016】
本実施例の原子炉格納容器内の調査方法は、封止板で封鎖されているペネトレーション5を利用した原子炉格納容器内の調査方法である。ペネトレーション5は、図3に示すように、原子炉格納容器2及び生体遮へい体8を貫通しており、原子炉格納容器2に気密性を保つように取り付けられている。封止板9は、ペネトレーション5の生体遮へい体8の外側の端部に溶接されており、ペネトレーション5を封鎖している。
【0017】
本実施例の原子炉格納容器内の調査方法を、図1に示す手順に沿って具体的に説明する。原子炉建屋内の全体的な機能が喪失するような非常事態が生じて既設の計測系統に不具合が生じたときに、本実施例の原子炉格納容器内の調査方法が実施される。
【0018】
ペネトレーションにアタッチメントを取り付ける(ステップS1)。原子炉格納容器2内をモニタリングする計測器を挿入する孔を、ペネトレーション5を封鎖している封止板8に直ちに開けると、原子炉格納容器2内のガスがペネトレーション5を通して原子炉格納容器2外に放出される恐れがある。このガスには放射性物質が含まれている可能性もあり、原子炉格納容器2内のガスの外部への放出を避ける必要がある。このため、ペネトレーション5にバルブを取り付けるためのアタッチメント10(図4参照)を、ペネトレーション5の封止板(封止部材)9で封鎖されている端部に取り付ける。
【0019】
アタッチメント10は、円筒10Aを有し、円筒状の連結部材13を円筒10Aの一端部の外面に取り付け、フランジ11を円筒10Aの他端に取り付けて構成される。切屑収納部12が円筒10Aの連結部材13側に設けられる。ペネトレーション5の封止板9側の端部が連結部材13内に挿入され、連結部材13がペネトレーション5に溶接により取り付けられる。図4に示された14は、ペネトレーション5と連結部材13の溶接部である。連結部材13のペネトレーション5への溶接により、アタッチメント10がペネトレーション5の端部に取り付けられる。ペネトレーション5を封鎖している封止板9は連結部材13内に存在する。
【0020】
バルブ及び加工機ユニットを取り付ける(ステップS2)。バルブ(例えば、仕切弁)15及び加工機ユニット(加工装置ユニット)20の取り付けを、図5を用いて説明する。バルブ15をアタッチメント10に取り付ける。バルブ15のアタッチメント10への取り付けは、バルブ15のフランジ17をアタッチメント10のフランジ11にボルトで取り付けることにより行われる。取り付けられたバルブ15は、例えば、全開状態になっている。その後、加工機ユニット20をバルブ15に取り付ける。アタッチメント10に取り付けられたバルブ15は、全閉状態または一部開いた状態になっていても良い。
【0021】
加工機ユニット20は、図5に示すように、密閉容器21、加工機24及び放射性物質除去装置30を有する。円筒部22が密閉容器21の一側面に設けられ、円筒部22の端部にフランジ23が取り付けられている。円筒部22は密閉容器21の一部である。開閉弁29が設けられた加圧ガス供給管38が密閉容器21に接続される。また、温度計26及び圧力計27が密閉容器21に取り付けられる。孔あけ工具25を有する加工機24が密閉容器21の内部に設けられる。コンセントを有する配線28が加工機24に接続される。放射性物質除去装置30が密閉容器21に取り付けられている。放射性物質除去装置30は、放射性物質除去フィルタ31、ブロワ32及び循環配管33を有する。循環配管33の両端が密閉容器21にそれぞれ接続される。放射性物質除去フィルタ31及びブロワ32が循環配管33に設けられる。開閉弁34が密閉容器21と放射性物質除去フィルタ31の間で循環配管33に取り付けられる。開閉弁37を有するサンプリング配管36がブロワ32の下流で循環配管33に接続される。開閉弁35が循環配管33とサンプリング配管36の接続部と密閉容器21の間で循環配管33に取り付けられる。
【0022】
密閉容器21に設けられた円筒部22のフランジ23をバルブ15のフランジ18にボルトで取り付けることによって、密閉容器21、すなわち、加工機ユニット20がバルブ15に結合される。このとき、開閉弁29,34,35,37は全閉状態になっている。
【0023】
加工機ユニットの密閉容器内を加圧する(ステップS3)。開閉弁29を開いて加圧ガス供給管38から密閉容器21内に加圧空気を供給する。密閉容器21内に供給された加圧空気は、円筒部22及びアタッチメント10内にも充填される。この加圧空気の供給は、圧力計27で測定される密閉容器21内の圧力が設定圧力になるまで行われる。可能であれば、後述する封止板9の孔あけ後に原子炉格納容器2内のガスが密閉容器21内に流入することを防ぐために、密閉容器21内の圧力は、原子炉格納容器2内の圧力よりも高くすることが望ましい。
【0024】
開閉弁34,35を開いてブロワ32を駆動する。密封容器21内の空気が循環配管33を通して放射性物質除去フィルタ31を通り循環する。加工機24を駆動して孔あけ工具25を回転させる。回転している孔あけ工具25を、全開状態のバルブ15を通してアタッチメント10の円筒10A内に挿入し、封止板9の近くまで前進させる(図6参照)。バルブ15が仕切弁またはボール弁であれば、バルブ15を全開状態にしたとき、孔あけ工具25はバルブ15内を容易に通過することができる。アタッチメント10に取り付けたバルブ15が、前述のように、全閉状態または一部開いた状態になっている場合には、バルブ15を全開状態にした後で孔あけ工具25をバルブ15内に挿入する。
【0025】
封止板に対して孔あけ加工を行う(ステップS4)。アタッチメント10内に挿入されて回転している孔あけ工具25をさらに前進させ、この孔あけ工具25によって、ペネトレーション5に取り付けられている封止板9に孔をあける(図7参照)。この孔あけ加工によって生じる封止板9の切屑は、切屑収納部12内に落下し切屑収納部12内に溜められる。封止板9の孔あけ加工時においても、加圧ガス供給管38から密閉容器21内に加圧空気が供給される。加圧空気の密閉容器21内への供給により、密閉容器21内の圧力が原子炉格納容器2内の圧力よりも高いときには、原子炉格納容器2内のガスが密閉容器21内に流入することはない。しかしながら、加圧空気の密閉容器21内への供給によっても、密封容器21内の圧力が原子炉格納容器2内の圧力よりも低い場合には、原子炉格納容器2内の放射性物質を含むガスが密閉容器21内に流入する。
【0026】
ブロワ32が駆動しているため、密閉容器21内に流入した放射性物質を含むガスは、循環配管33により放射性物質除去フィルタ31に供給され、放射性物質除去フィルタ31によって除去される。放射性物質除去フィルタ31から排気された、放射性物質が除去されたガスは、循環配管33によって密封容器21内に戻される。
【0027】
加工機ユニットを取り外す(ステップS5)。加工機21の孔あけ工具25を、アタッチメント10及びバルブ15から引き抜き、図8に示すように、円筒部22内まで戻す。その後、バルブ15の弁体19を操作してバルブ15を全閉状態にし、開閉弁29も全閉にする。バルブ15が全閉状態になった後においても、ブロワ32が駆動されているので、密封容器21内のガスが放射性物質除去フィルタ31に供給され、そのガスに含まれた放射性物質が放射性物質除去フィルタ31によって除去される。開閉弁37を開いてサンプリング配管36によって密閉容器21内のガスをサンプリングし、サンプリングしたガスの成分分析を行う。密閉容器21内のガスに含まれる放射性物質が除去されたことを成分分析により確認した後に、ブロワ32を停止する。そして、フランジ23とフランジ18を結合しているボルトを取り外し、加工機ユニット20をバルブ15から取り外す。
【0028】
計測器ユニットを取り付ける(ステップS6)。次に、計測器ユニット39をバルブ15に取り付ける。
【0029】
計測器ユニット(計測装置ユニット)39は、図9に示すように、密閉容器40、連結管44、データ収集装置42、計測器43及び放射性物質除去装置30を有する。円筒部41が密閉容器40の一側面に設けられ、円筒部41の端部にフランジ23Aが取り付けられている。円筒部41は密閉容器40の一部である。開閉弁50が設けられた加圧ガス供給管49が密閉容器40に接続される。また、温度計46及び圧力計47が密閉容器40に取り付けられる。コンセントを有する配線48が接続されるデータ収集装置42が、密閉容器40内に配置されて密閉容器40に設置される。計測器43及び分離された複数の連結管44が密閉容器40内に配置される。計測器43は、複数の連結管44が接続されたときに最も先端に位置する連結管44の先端に設けられる。データ収集装置42に接続された配線45が、図9には図示されていないが、分離された複数の連結管44内を通って計測器43に接続されている。
【0030】
バルブ15は全閉状態になっている。密閉容器40に設けられた円筒部41のフランジ23Aをバルブ15のフランジ18にボルトで取り付けることによって、密閉容器40、すなわち、計測器ユニット39がバルブ15に結合される。計測器ユニット39がバルブ15に取り付けられたとき、開閉弁34,35,37,50は全閉状態になっている。開閉弁50を開いて加圧ガス供給管49から密閉容器40内に加圧空気を供給して、加工機ユニット20がバルブ15に取り付けられている時と同様に、密閉容器40内を加圧する。
【0031】
原子炉格納容器内をモニタリングする(ステップS7)。放射性物質除去装置30において開閉弁34,35を開いてブロワ32を駆動する。バルブ15を開けることによって原子炉格納容器2内から密閉容器40内に流入した放射性物質を含むガスが、放射性物質除去フィルタ31に導かれ、その放射性物質が放射性物質除去フィルタ31によって除去される。
【0032】
密閉容器40内に存在する、配線45が通された各連結管44が密閉容器40内で連結される。これらの連結管44の連結を、図10を用いて具体的に説明する。作業員が、密閉容器40の内面に気密性を保って取り付けられた一対のグローブ55内に両手を入れ、グローブ55内に入れた一方の手で計測器43が取り付けられた連結管44を掴み、この連結管44を、計測器43を原子炉格納容器2側に向けた状態で、バルブ15、アタッチメント10及びペネトレーション5内に挿入する。作業員は、他のグローブ55内に入れたもう一方の手で配線45が通された他の連結管44を掴み、計測器43が取り付けられた連結管44の端部に形成された雄ネジ44Aと他の連結管44の対向する端部に形成された雌ねじ(図示せず)を噛み合わせてこれら2本の連結管44を連結する。連結された2本の連結管44が、さらに、原子炉格納容器2に向かってペネトレーション5内に挿入される。2本の連結管44を連結した場合においても計測器43が原子炉格納容器2内に達しない場合には、計測器43が原子炉格納容器2内に到達するまで、複数本の連結管44を、上記したようにネジにより順次結合してペネトレーション5内に挿入する。図11に示すように計測器43が原子炉格納容器2内に達したとき、連結管44の連結が終了する。
【0033】
上記したように、複数本の連結管44を連結してペネトレーション5に向かって挿入することによって、計測器43がバルブ15、アタッチメント10及びペネトレーション5内を通って原子炉格納容器2内に達する(図11参照)。ここで、計測器43には放射線検出器が用いられる。データ収集装置42に接続された配線48のコンセントが電源ケーブルに接続される。
【0034】
原子炉格納容器2内に挿入された放射線検出器は、原子炉格納容器2内の放射線量を測定する。放射線を入射することにより放射線量を測定した放射線検出器は放射線検出信号を出力する。この放射線検出信号は配線45によってデータ収集装置42に伝えられ、データ収集装置42は放射線検出信号に基づいて放射線量(線量率)を求める。求められた放射線量は、データ収集装置42から無線により原子炉建屋7の内部(または外部)に置かれたモニタ51に表示される。オペレータは、モニタ51に表示された放射線量を見ることによって、原子炉格納容器2内の放射線量を知ることができる。
【0035】
放射線検出器による原子炉格納容器2内の放射線が検出されている間、放射性物質除去装置30のブロワ32が駆動され、原子炉格納容器2から密閉容器40内に入り込んだ放射性物質が放射性物質除去フィルタ31によって除去される。
【0036】
計測器ユニットを取り外す(ステップS8)。計測器43である放射線検出器による原子炉格納容器2内の放射線量の測定が終了した後、作業員は、密閉容器40の各グローブ55内に両手を挿入して連結された各連結管44を密閉容器40内に引き戻しながら、隣の連結管44とのネジ結合を解除し、各連結管44を分離する。分離された全ての連結管44が密閉容器40内に収納されたとき、計測器43である放射線検出器も密閉容器40内に戻される。放射線検出器が円筒部41内に戻されたとき、バルブ15が全閉される(図12参照)。密封状態になった密閉容器40及び円筒部41内の放射性物質が放射性物質除去フィルタ31によって除去される。サンプリング配管36により密閉容器21からサンプリングしたガスの成分分析により、密閉容器21内のガスに含まれる放射性物質が除去されたことを確認したとき、ブロワ32を停止する。そして、フランジ23Aとフランジ18のボルト結合が解除され、放射線検出器を内蔵する計測器ユニット39がバルブ15から取り外される。
【0037】
原子炉格納容器2内の放射線量を測定した後、原子炉格納容器2内の温度を測定する場合には、ステップS6〜S8の各作業が繰り返される。計測器43として温度計を内蔵する別の計測器ユニット39がバルブ15に取り付けられる(ステップS6,図9)。最も先端に配置される連結管44の先端に、計測器43である温度計が取り付けられている。バルブ15を全開状態にして、密閉容器40内の複数の連結管44が、前述したように、連結されてペネトレーション5内に挿入される。これにより、温度計がペネトレーション5を通って原子炉格納容器2内に達する(ステップS7,図11)。この温度計によって原子炉格納容器2内の温度が測定される。温度計で測定されたその温度は、配線45によってデータ収集装置42に伝えられ、データ収集装置42から無線によりモニタ51に伝えられて表示される。伸縮管44に取り付けられた温度計による原子炉格納容器2内の温度測定が終了した後、前述したように、連結された各連結管44の連結状態が密閉容器40内で解除され、各連結管44が密閉容器40内に回収される。この連結管44の回収により、温度計も密閉容器40内に戻される。その後、バルブ15を全閉状態にする。そして、温度計を収納した計測器ユニット39を、バルブ15から取り外す(ステップS8、図12)。
【0038】
原子炉格納容器2内を撮影する場合には、最も先端に配置される連結管44の先端に取り付けられた計測器43であるカメラを内蔵する別の計測器ユニット39をバルブ15に取り付ける(ステップS6)。バルブ15を全開状態にして、密閉容器40内の複数の連結管44が、前述したように、連結されてペネトレーション5内に挿入される。これにより、カメラが開口部16及びペネトレーション5内を通して原子炉格納容器2内に挿入される。カメラにより撮影された原子炉格納容器2内の映像は、配線45及びデータ収集装置42を経て無線によりモニタ51に伝えられて表示される(ステップS7)。カメラによる原子炉格納容器2内の撮影が終了した後、前述したように、連結された各連結管44の連結状態が密閉容器40内で解除され、各連結管44が密閉容器40内に回収される。この連結管44の回収により、温度計も密閉容器40内に戻される。その後、バルブ15を全閉状態にする。そして、カメラを収納した計測器ユニット39を、バルブ15から取り外す(ステップS8)。
【0039】
封止板によりバルブを封鎖する(ステップS9)。上記したように、種々の計測器43を用いた原子炉格納容器2内のモニタリングが終了した後、最後に用いた計測器ユニット39を全閉状態のバルブ15から取り外す。封止板(封止部材)53を、計測器ユニット39が取り外されたバルブ15のフランジ18にボルトにより取り付け、バルブ15を封鎖する。
【0040】
以上の作業により、本実施例の原子炉格納容器内の調査方法が終了する。
【0041】
本実施例では、原子炉格納容器2に設けられた予備のペネトレーション5を利用して原子炉格納容器2内に計測器43を挿入し、この計測器43により原子炉格納容器2内をモニタリングするので、万が一、原子炉建屋7内の全体的な機能が喪失するような非常事態の発生により既設の計測系統に不具合が生じた場合でも、原子炉格納容器2内の環境状況を容易に把握することができる。
【0042】
本実施例によれば、バルブ15を取り付けるための円筒状のアタッチメント10を、封止板9によって端部が封鎖されているペネトレーション5に取り付けるため、バルブ15を容易にそのペネトレーション5に容易に取り付けることができる。バルブ15のペネトレーション5への取り付けは、密閉容器21内に加工機24を設けた加工機ユニット20をバルブ15に取り付けることができ、原子炉格納容器2内のガスの外部環境への放出を避けながら、加工機24による封止板9への開口部16の形成を行うことができる。また、封止板9への開口部16の形成によって原子炉格納容器2から密閉容器21内に流出した放射性物質は、密封容器21に設けられた放射性物質除去装置30によって除去することができ、原子炉格納容器2の外部環境に流出することはない。
【0043】
封止板9に開口部16を形成するので、この開口部16を通して計測器43を予備のペネトレーション5内に容易に挿入することができ、この計測器43により原子炉格納容器2内の環境状況を容易に計測することができる。これを具体的に説明する。封止板9への開口部16の形成後、加工機ユニット20をバルブ15から取り外して、計測器43及び複数の連結管44を内蔵した密閉容器40、及び放射性物質除去装置30を備えた計測器ユニット39をバルブ15に取り付けるため、計測器43を、連結した連結管44により、密閉容器40から、バルブ15、開口部16、アタッチメント10及び予備のペネトレーション5内を通して原子炉格納容器2内に容易に挿入することができる。このため、計測器43により、原子炉格納容器2内の環境状況を容易に計測することができる。
【0044】
また、予備のペネトレーション5に取り付けられたアタッチメント10、バルブ15および密閉容器40によって密封された空間が形成されるため、原子炉格納容器2内に挿入された計測器43による計測時において、原子炉格納容器2からペネトレーション5を通して密閉容器40内に流出した放射性物質は、外部環境に流出しない。密閉容器40内に流出した放射性物質は、密閉容器40に取り付けられた放射性物質除去装置30によって除去することができる。
【0045】
計測器ユニット39をバルブ15から取り外した後で、封止板53をバルブ15のフランジ18に取り付けてバルブ15の開口を封鎖するので、万が一、原子炉格納容器2内の放射性物質を含むガスが、全閉状態にあるバルブ15の弁体19とバルブ15の弁座の間から漏洩したとしてもその封止板53によって外部環境への漏洩を防止することができる。
【0046】
本実施例において、必要であれば、計測器43として放射線検出器、温度計及びカメラ以外の計測器を原子炉格納容器2内に挿入して、この計測器により原子炉格納容器2内の他の環境状況の情報を得ることができる。放射線検出器、温度計及びカメラ等の計測器43の原子炉格納容器2内への挿入は、放射線検出器、温度計及びカメラの順番以外であっても良い。
【0047】
本実施例は、生体遮へい体8の外側の端部が封止板9で封鎖されているペネトレーション5だけでなく、原子炉格納容器2内の端部が封止板9で封鎖されているペネトレーション、及び両端部が封止板9でそれぞれ封鎖されているペネトレーションのいずれかを用いて、原子炉格納容器2内の調査を行う場合にも適用することができる。
【実施例2】
【0048】
本発明の他の実施例である実施例2の原子炉格納容器内の調査方法を、図14及び図15を用いて説明する。
【0049】
実施例1では封止板9で封鎖された予備のペネトレーション5を利用したが、本実施例の原子炉格納容器内の調査方法では、バルブ(例えば、仕切弁)15Aによって封鎖されている予備のペネトレーション5Aを利用する。このバルブ15Aは生体遮へい体8の外側で原子炉建屋7内に配置されている。
【0050】
実施例1で用いた計測器ユニット39を全閉状態になっているバルブ15Aに取り付ける(図14参照)。具体的には、計測器ユニット39の密閉容器40に設けられた円筒部41の先端部のフランジ23Aを、バルブ15Aのフランジ18Aにボルトにより取り付ける。開閉弁50を開いて加圧ガス供給管49から密閉容器40内に加圧空気を供給して、実施例1と同様に、密閉容器40内を加圧する。計測器ユニット39のバルブ15Aへの取り付け後に、バルブ15Aを全開状態にする。実施例1のステップS7と同様に、密閉容器40内の複数の連結管44が連結されてペネトレーション5内に挿入される。これにより、計測器43が、バルブ15A及びペネトレーション5A内を通して原子炉格納容器2内に挿入される。この計測器43により、実施例1と同様に、原子炉格納容器2内の環境状態が計測される。
【0051】
バルブ15Aを開けることによって原子炉格納容器2内から密閉容器40内に流入した放射性物質を含むガスが、放射性物質除去フィルタ31に導かれ、その放射性物質が放射性物質除去フィルタ31によって除去される。サンプリング配管36により密閉容器40からサンプリングしたガスの成分分析により、密閉容器21内のガスに含まれる放射性物質が除去されたことを確認したとき、ブロワ32を停止する。そして、フランジ23Aとフランジ18のボルト結合が解除され、放射線検出器を内蔵する計測器ユニット39がバルブ15Aから取り外される。
【0052】
本実施例においても、バルブ15Aに取り付けられた計測器ユニット39を実施例1のように計測器43ごとに取り替えることによって、原子炉格納容器2内の放射線量、温度及び映像を得ることができる。
【0053】
本実施例においても、原子炉格納容器2に設けられた予備のペネトレーション5Aを利用して原子炉格納容器2内に計測器43を挿入し、この計測器43により原子炉格納容器2内をモニタリングするので、万が一、原子炉建屋7内の全体的な機能が喪失するような非常事態が生じて既設の計測系統が使用不可能になった場合でも、原子炉格納容器2内の環境状況を容易に把握することができる。
【0054】
本実施例では、バルブ15Aが取り付けられてバルブ15Aで封鎖されている予備のペネトレーション5Aを、原子炉格納容器内の調査方法に利用するので、実施例1に比べて、アタッチメント10の接続、バルブ15の取り付け、ペネトレーション5を塞いでいる封止板9への開口部16の形成を行う必要がない。このため、本実施例における原子炉格納容器内の調査は、実施例1よりもさらに容易に行うことができる。
【0055】
沸騰水型原子力プラントにおいては、圧力抑制室4が配置されるトーラス室54内に配置された配管6が、原子炉格納容器2を貫通して原子炉格納容器2に取り付けられ、原子炉格納容器2内に達している。この配管6は、トーラス室54の天井を貫通して上の階の部屋内に達している。トーラス室54の上の階の部屋内において、バルブ52が配管6に取り付けられている。配管6の、このバルブよりも上方に位置する部分をバルブ52から取り外し、計測器ユニット39をバルブ52に取り付ける。その後、計測器ユニット39の密閉容器40内の計測器43を配管6内を通して原子炉格納容器2内に挿入し、実施例1及び2と同様に、原子炉格納容器2内の環境状況の情報(放射線量、温度及び映像)を計測器43によって得ることができる。
【0056】
本実施例において、必要であれば、計測器43として放射線検出器、温度計及びカメラ以外の計測器を原子炉格納容器2内に挿入して、この計測器により原子炉格納容器2内の他の環境状況の情報を得ることができる。
【0057】
実施例1及び2は、沸騰水型原子力プラントの原子炉格納容器内の調査だけでなく、加圧水型原子力プラントの原子炉格納容器内の調査に対しても適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1…原子炉圧力容器、2…原子炉格納容器、5,5A…ペネトレーション、6…配管、9,53…封止板、10…アタッチメント、15,15A,52…バルブ、20…加工機ユニット、21,40…密閉容器、24…加工機、25…孔あけ工具、30…放射性物質除去装置、31…放射性物質除去フィルタ、33…循環配管、36…サンプリング配管、38,49…加圧ガス供給管、39…計測器ユニット、42…データ収集装置、43…計測器、44…伸縮管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉格納容器に設けられた予備のペネトレーションに取り付けられたバルブに、第1密閉容器、及び前記第1密閉容器内に配置された計測装置を有する計測装置ユニットの前記第1密閉容器を取り付け、前記バルブを開いて前記密閉容器内の前記計測装置を、前記バルブ及び前記ペネトレーション内を通して前記格納容器内に挿入し、前記原子炉格納容器内に挿入された前記計測装置により、前記原子炉格納容器内の環境情報を取得することを特徴とする原子炉格納容器内の調査方法。
【請求項2】
前記ペネトレーションとして、前記原子炉格納容器外に位置する端部に前記バルブが取り付けられているペネトレーションを利用する請求項1に記載の原子炉格納容器内の調査方法。
【請求項3】
前記ペネトレーションとして、封止部材で封鎖されているペネトレーションを利用し、前記ペネトレーションの、前記原子炉格納容器の外側に位置する端部に筒状のアタッチメントを取り付け、前記アタッチメントに前記バルブを取り付け、第2密閉容器、及び前記第2密閉容器内に配置された加工装置を有する加工装置ユニットの前記第2密閉容器を前記バルブに取り付け、前記バルブが開いている状態で前記第2密閉容器内の前記加工装置により前記封止部材に開口部を形成し、前記バルブを全閉状態にして前記加工装置ユニットを前記バルブから取り外し、前記計測装置ユニットの前記第1密閉容器の前記バルブへの前記取り付けが行われ、前記計測装置の前記ペネトレーション内への挿入は、前記開口部を通して行われる請求項1に記載の原子炉格納容器内の調査方法。
【請求項4】
前記加工装置により前記封止部材に前記開口を形成したときに前記原子炉格納容器内から前記第2密封容器内に入り込んだ放射性物質を、前記第2密封容器に設けられた放射性物質除去装置で除去する請求項3に記載の原子炉格納容器内の調査方法。
【請求項5】
前記計測装置による前記原子炉格納容器内の環境情報の取得が終了したとき、前記計測装置を前記第1密封容器内に戻し、前記バルブを全閉状態にして前記計測装置ユニットを前記バルブから取り外す請求項1ないし4のいずれか1項に記載の原子炉格納容器内の調査方法。
【請求項6】
前記計測装置による前記原子炉格納容器内の環境情報の取得が終了して前記計測装置が前記第1密封容器内に戻され、前記バルブを全閉状態にして前記計測装置ユニットを前記バルブから取り外した後、前記バルブを別の封止部材で封鎖する請求項3または4に記載の原子炉格納容器内の調査方法。
【請求項7】
前記計測装置が前記原子炉格納容器内に挿入されているときに前記原子炉格納容器内から前記第1密封容器内に入り込んだ放射性物質を、前記第1密封容器に設けられた放射性物質除去装置で除去する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の原子炉格納容器内の調査方法。
【請求項8】
前記計測装置で得られた前記環境情報が、前記第1密封容器内に配置されたデータ収集装置を介して前記第1密封容器の外部に伝えられる請求項1ないし7のいずれか1項に記載の原子炉格納容器内の調査方法。
【請求項9】
密閉容器と、前記密閉容器内に設置された加工装置と、前記密閉容器に設置された放射性物質除去装置とを有することを特徴とする加工装置ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−113596(P2013−113596A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257172(P2011−257172)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】