説明

原子炉格納容器

【課題】定期検査時における原子炉圧力容器内の作業をより早く開始することができ、異常事象時におけるドライウェルヘッド内の可燃性ガスを排出できる原子炉格納容器を提供する。
【解決手段】原子炉格納容器2は、原子炉格納本体容器3の上端にドライウェルヘッド4を着脱可能に取り付けている。水素ガス排出通路13が、ドライウェルヘッド4の内面に設置され、ドライウェルヘッド4内側の領域6の頂部に配置されるガス流入口15を有する。水素ガス排出通路14が、原子炉格納本体容器3の上端部の内面に設置され、原子炉格納本体容器3の外面に取り付けられる水素ガス排出管16に接続される。分離された水素ガス排出通路13及び水素ガス排出通路14は、ドライウェルヘッド4を原子炉格納本体容器3に取り付けたときに互いに接触し、水素ガス排出通路13が水素ガス排出通路14に連絡される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉格納容器に係り、特に、沸騰水型原子炉に適用するのに好適な原子炉格納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉では、原子炉格納容器が炉心を内蔵した原子炉圧力容器を取り囲んでおり、冷却水が原子炉圧力容器内に充填されている。冷却水が炉心に装荷された複数の燃料集合体内に供給されて燃料集合体に含まれる核燃料物質の核分裂で発生する熱によって加熱され、その冷却水の一部が蒸気になる。炉心で発生した蒸気は、原子炉圧力容器から、原子炉圧力容器に接続された主蒸気配管に吐出され、主蒸気配管を通ってタービンに導かれる。
【0003】
この沸騰水型原子炉において、例えば、原子炉格納容器内で主蒸気配管に貫通するき裂が生じて異常事象である冷却材喪失事故が発生したことを想定する。原子炉圧力容器内の高温の冷却水が、主蒸気配管のき裂から高温の蒸気となって原子炉格納容器内のドライウェルに放出される。冷却材喪失事故発生時における原子炉圧力容器内の水位の低下を避けるために、非常用炉心冷却系が作動して原子炉圧力容器内に冷却水が注入される。
【0004】
また、蒸気の放出によるドライウェル内の圧力上昇を抑制するために、原子炉格納容器内に圧力抑制室が設けられており、冷却水が充填された圧力抑制プールが圧力抑制室内に形成されている。ドライウェル内に放出された蒸気は、ベント通路を通って圧力抑制室の冷却水中に放出され、凝縮される。
【0005】
ドライウェルに放出される蒸気は、原子炉圧力容器内で冷却水の放射線分解により発生する水素ガス及び酸素ガスを含んでいる。このため、原子炉格納容器内の水素ガスの濃度が上昇する。水素ガス濃度の上昇を放置することにより原子炉格納容器内で水素ガスの濃度が4vol%以上、酸素ガスの濃度が5vol%以上になると、水素ガスが爆発する危険性がある。
【0006】
特開平6−130170号公報は、沸騰水型原子炉において、水素ガスを処理する静的可燃性ガス処理装置(再結合器)を、原子炉格納容器内に、具体的には、ドライウェル内及び圧力抑制室の気層部内に配置することを記載している。水素とガスの結合反応を促進する触媒(例えば、白金及びパラジウム等)を含む触媒層が、静的可燃性ガス処理装置内に設けられる。主蒸気配管に生じたき裂から放出される蒸気に含まれる水素ガスは、その蒸気、及び原子炉格納容器内に封入された窒素ガスとともに静的可燃性ガス処理装置内に流入し、静的可燃性ガス処理装置内の触媒の作用により酸素と結合されて水になる。水素と酸素の結合反応は、発熱反応であるため、生成された水は蒸気となり、静的可燃性ガス処理装置から排出される。
【0007】
また、何らかの原因で原子炉格納容器から原子炉格納容器の外側の原子炉建屋内に漏洩した水素ガスを処理するために、静的可燃性ガス処理装置を原子炉格納容器の外側の原子炉建屋内に配置することが提案されている(特開2009−69121号公報参照)。
【0008】
軽い水素ガスは、原子炉格納容器のドライウェルヘッド内に溜まりやすい。このため、ドライウェルヘッド内の頂部付近に開口する水素ガス排出管をドライウェルヘッド内に設置し、この配管を、静的格納容器冷却系プール内に設置された冷却器に接続される蒸気導入ラインに接続することが、特開平10−221477号公報に記載されている。水素ガス濃度を低減するために、白金またはパラジウムが蒸気導入ラインの内面にコーティングされている。冷却材喪失事故が発生したときに、ドライウェルヘッド内に溜まった水素ガスは、蒸気及び原子炉格納容器内に充填された窒素ガスとともにその水素ガス排出管内に吸引され、蒸気導入ライン内に導かれる。水素ガスは、蒸気導入ライン内面の白金またはパラジウムの作用により酸素と結合されて処理される。蒸気導入ラインに流入した蒸気は冷却器で凝縮されて水になり、この水は原子炉格納容器内に設けられた重力落下式非常用炉心冷却系のプールに集められる。蒸気導入ラインに流入した窒素ガス等の非凝縮性ガスは圧力抑制室に導かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−130170号公報
【特許文献2】特開2009−69121号公報
【特許文献3】特開平10−221477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特開平10−221477号公報に記載されたように、ドライウェルヘッドの頂部付近に開口する水素ガス排出管をドライウェルヘッド内に設置することは、ドライウェルヘッド内に溜まった水素ガスを排出できるという観点に着目すれば、良い構造である。しかしながら、特開平10−221477号公報に記載された、水素ガス排出管をドライウェルヘッド内に設置する構造は、沸騰水型原子炉の定期検査において、原子炉圧力容器内の炉心に装荷された燃料集合体の交換、原子炉圧力容器内に設置された制御棒の交換、及び原子炉圧力容器内に設置された炉内構造物の保守点検等の原子炉圧力容器内における各作業の開始を遅らせる要因になる。原子炉圧力容器内におけるこれらの作業を行う場合には、ドライウェルヘッドを取り外し、さらに、原子炉圧力容器の上蓋、及び原子炉圧力容器内に設置された蒸気乾燥器及び気水分離器をそれぞれ取り外して原子炉格納容器の外へ搬出する必要がある。特開平10−221477号公報では、ドライウェルヘッドを取り外しても、ドライウェルヘッド内に配置された水素ガス排出管を取り外さなければ、原子炉圧力容器の上蓋、蒸気乾燥器及び気水分離器を原子炉格納容器の外へ搬出することができない。
【0011】
水素ガス排出管の取り外しを、原子炉圧力容器の上蓋、蒸気乾燥器及び気水分離器の原子炉格納容器外への搬出の前に行う必要があり、水素ガス排出管の取り外しに要する時間だけ原子炉圧力容器の上蓋、蒸気乾燥器及び気水分離器の原子炉格納容器外への搬出開始が遅くなり、燃料集合体及び制御棒の交換、及び原子炉圧力容器内に設置された炉内構造物の保守点検等の原子炉圧力容器内における各作業の開始が遅くなるという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、原子炉の定期検査時における原子炉圧力容器内の作業をより早く開始することができ、異常事象時におけるドライウェルヘッド内の可燃性ガスを排出することができる原子炉格納容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成する本発明の特徴は,原子炉圧力容器を取り囲んでいる原子炉格納本体容器と、原子炉格納本体容器の上端に取り外し可能に取り付けられるドライウェルヘッドとを備え、
第1ガス排出通路がドライウェルヘッドに設けられ、第1ガス排出通路のガス流入口がドライウェルヘッド内の領域に連絡され、第1ガス排出通路と分離されている第2ガス排出通路が原子炉格納本体容器に設けられ、ドライウェルヘッドが原子炉格納本体容器に取り付けられているとき、第2ガス排出通路の上端が第1ガス排出通路の下端に対向して配置されて第2ガス排出通路が第1ガス排出通路に連絡され、原子炉格納本体容器の外部に配置されたガス排出管が第2ガス排出通路に接続されることにある。
【0014】
第1ガス排出通路がドライウェルヘッドに設けられ、第1ガス排出通路のガス流入口がドライウェルヘッド内の領域に連絡され、第1ガス排出通路と分離されている第2ガス排出通路が原子炉格納本体容器に設けられ、第2ガス排出通路の上端が第1ガス排出通路の下端に対向して配置されて第2ガス排出通路が第1ガス排出通路に連絡されるので、異常事象発生時にドライウェルヘッドに溜まる可燃性ガスを原子炉格納容器内に排出することができる。さらに、第2ガス排出通路と分離された第1ガス排出通路がドライウェルヘッドに設けられているので、原子炉圧力容器内での作業を行う前にドライウェルヘッドを原子炉格納本体容器から取り外すとき、第1ガス排出通路もドライウェルヘッドと一緒に原子炉格納本体容器から取り外される。このため、原子炉の定期検査時における原子炉圧力容器内の作業をより早く開始することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、原子炉の定期検査時における原子炉圧力容器内の作業をより早く開始することができ、異常事象時における原子炉格納容器のドライウェルヘッド内の可燃性ガスを排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の原子炉格納容器の構成図である。
【図2】図1に示す可燃性ガス排出通路の詳細構造の拡大図である。
【図3】本発明の他の実施例である実施例3の原子炉格納容器に設けられた可燃性ガス排出通路の詳細構造を示す拡大図である。
【図4】本発明の他の実施例である実施例4の原子炉格納容器に設けられた可燃性ガス排出通路の詳細構造を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の好適な一実施例である実施例1の原子炉格納容器を、図1及び図2を用いて説明する。本実施例の原子炉格納容器は、沸騰水型原子炉に用いられる原子炉格納容器である。
【0019】
本実施例の原子炉格納容器2は、原子炉格納本体容器3、上蓋であるドライウェルヘッド4、可燃性ガス処理装置7及び格納容器ベント配管18を有する。ドライウェルヘッド4は原子炉格納本体容器3の上端に取り外し可能に取り付けられる。ドライウェル20及び圧力抑制室21が原子炉格納本体容器3内に形成される。ドライウェル20及び圧力抑制室21は互いに隔離されている。ドライウェルヘッド4が、後述するように、原子炉格納本体容器3の上端にボルトで結合された状態において、ドライウェルヘッド4の内側に形成される領域6も、ドライウェル20の一部である。圧力抑制室21内には、冷却水が充填された圧力抑制プール22が形成される。複数のベント通路(図示せず)が原子炉格納本体容器3内に形成される。これらのベント通路のそれぞれの一端がドライウェル20に開口し、それぞれのベント通路の他端が圧力抑制プール22の冷却水中に開口している。
【0020】
炉心を内蔵する原子炉圧力容器1が、原子炉格納本体容器3内のドライウェル20に配置される。可燃性ガス処理装置7は、触媒である白金またはパラジウムを充填した再結合器8、ガス供給管9A及びガス戻り管9Bを有する。ガス供給管9Aは、原子炉格納本体容器3を貫通して設けられ、再結合器8のガス入口と原子炉格納本体容器3内のドライウェル20を連絡する。ガス戻り管9Bは原子炉格納本体容器3を貫通して設けられる。ガス戻り管9Bの一端は再結合器8のガス出口に接続され、その他端は圧力抑制プール22の冷却水中に開口している。開閉弁10Aがガス供給管9Aに設けられ、開閉弁10Bがガス戻り管9Bに設けられる。ドライウェル20内に開口する格納容器ベント配管(ガス排出管)18が、原子炉格納本体容器3を貫通して設けられる。開閉弁19が、原子炉格納本体容器3の外で格納容器ベント配管18に設けられる。なお、原子炉格納容器2は、原子炉建屋(図示せず)内に設置される。
【0021】
水素ガス排出通路(第1ガス排出通路)13がドライウェルヘッド4の内面に設置される。この水素ガス排出通路13は、ドライウェルヘッド4内側の領域6で領域6の頂部に配置されるガス流入口15を有する(図2参照)。水素ガス排出通路(第2ガス排出通路)14が原子炉格納本体容器3の上端部の内面に設置される。この水素ガス排出通路14は、開閉弁17を有して原子炉格納本体容器3の外面に取り付けられる水素ガス排出管(ガス排出管)16に接続される。ドライウェルヘッド4と原子炉格納本体容器3は取り外し可能にフランジ5で結合される。具体的には、図2に示すように、ドライウェルヘッド4の下端に設けられたフランジ5Aが、原子炉格納本体容器3の上端に設けられたフランジ5Bの上に置かれ、フランジ5Aがフランジ5Bにボルトにより取り外し可能に取り付けられる。フランジ5Aとフランジ5Bをボルトで結合する前に、水素ガス排出通路13の下端が水素ガス排出通路14の上端に位置するように、フランジ5Aとフランジ5Bが複数のピンにより周方向に位置決めされる。このため、フランジ5Aとフランジ5Bがボルトで結合された後では、水素ガス排出通路13と水素ガス排出通路14は分離されているが、水素ガス排出通路14の上端が水素ガス排出通路13の下端に対向して配置され、水素ガス排出通路14が水素ガス排出通路13に連絡される。水素ガス排出通路13及び14は、配管を半割りにした形状を有する。水素ガス排出通路13及び14は、それぞれ配管であっても良い。
【0022】
開閉弁12A,12Bが設けられたガス排出管11が、開閉弁10Aと再結合器8の間でガス供給管9Aに接続される。水素ガス排出管16が開閉弁12Aと開閉弁12Bの間でガス排出管11に接続される。
【0023】
この沸騰水型原子炉において、例えば、原子炉格納容器2内で原子炉圧力容器1に接続された主蒸気配管に貫通するき裂が生じて異常事象である冷却材喪失事故が発生したことを想定する。原子炉圧力容器1内の高温の冷却水が、主蒸気配管のき裂から高温の蒸気となって原子炉格納容器2内のドライウェル20に放出される。放出される蒸気は、原子炉圧力容器内で冷却水の放射線分解により発生する水素ガス及び酸素ガスを含んでいる。沸騰水型原子炉の運転時には、窒素ガスが原子炉格納容器2内に充填されている。
【0024】
冷却材喪失事故発生時にドライウェル20内に放出された蒸気は、各ベント通路を通って圧力抑制プール22の冷却水中に放出され、凝縮される。このため、冷却材喪失事故が発生したときにおける原子炉格納容器2内の圧力上昇を抑制することができる。
【0025】
冷却材喪失事故時において所内電源(または外部電源)から電流が供給されるとき、この電流によって開閉弁10A,10B,12A及び17が開き、ガス供給管9Aに設けられたブロア(図示せず、)が駆動される。このブロアは、ガス供給管9Aとガス排出管11の接続点と再結合器8の間でガス供給管9Aに設置される。ブロアの駆動によってドライウェル20内の水素ガス及び蒸気を含む窒素ガスが、ガス供給管9Aを通って再結合器8に供給される。再結合器8内の触媒の作用により、水素ガスが酸素ガスと結合され、水素ガスが処理される。水素ガスは、窒素ガス及び蒸気よりも軽いため、ドライウェルヘッド4内の領域6内に集まりやすい。この領域6に集まった水素ガスは、ガス流入口15から水素ガス排出通路13,14を通り、さらに、ガス排出管11及びガス供給管9Aを経て再結合器8に流入し、再結合器8で処理される。水素ガスが処理されて再結合器8から排出された窒素ガスは、ガス戻り管9Bにより圧力抑制プール22の冷却水中に放出される。この窒素ガスは、圧力抑制室21内で圧力抑制プール22の冷却水の液面よりも上方に形成されるウェットウェル(気層部)に蓄えられる。
【0026】
冷却材喪失事故発生時において全電源が喪失した場合において、ドライウェル20内の水素ガス濃度が極度に上昇し、ドライウェル20内の水素ガスを原子炉建屋外に排出する必要性が生じた場合には、ドライウェル20内の水素ガスを含む窒素ガスが、格納容器ベント配管18を通して、さらに、水素ガス排出通路13,14、水素ガス排出管16及びガス排出管11を通して原子炉建屋外に放出される。全電源が喪失しているため、例えば、電源車に搭載した発電装置で発生した電力を開閉弁12B,17及び19に供給することにより、開閉弁12B,17及び19が開き、ドライウェル20内の水素ガスの外部への放出が可能になる。ドライウェルヘッド4内の領域6に溜まっている水素ガスも、全電源喪失時において、水素ガス排出通路13,14、水素ガス排出管16及びガス排出管11を通して外部に排出することができる。
【0027】
ガス排出管11の、開閉弁12Bよりも下流、及び格納容器ベント配管18の、開閉弁19よりも下流に、放射性物質除去装置をそれぞれ設置し、ガス排出管11及び格納容器ベント配管18内をそれぞれ流れて外部に排出されるガスに含まれる放射性物質がそれぞれの放射性物質除去装置で除去される。
【0028】
本実施例では、原子炉格納本体容器3の内面に水素ガス排出通路14を設置し、その水素ガス排出通路14に連絡されて水素ガス排出通路14と分離された水素ガス排出通路13をドライウェルヘッド4の内面に設置しており、水素ガス排出通路13の下端面と水素ガス排出通路14の上端面は接触しているだけである。このため、フランジ5Aとフランジ5Bを結合しているボルトを外してドライウェルヘッド4を原子炉格納本体容器3から取り外すとき、ドライウェルヘッド4と一体になっている水素ガス排出通路13も、原子炉格納本体容器3から取り外すことができる。この水素ガス排出通路13の取り外しにおいて、水素ガス排出通路13を水素ガス排出通路14から取り外す必要もなく、ドライウェルヘッド4及び水素ガス排出通路13を原子炉格納本体容器3から容易に取り外すことができる。
【0029】
したがって、沸騰水型原子炉の運転が停止されている沸騰水型原子炉の定期検査期間において、原子炉圧力容器1の取り外された上蓋の原子炉格納本体容器3内からの搬出、及び原子炉圧力容器1内に設置された蒸気乾燥器及び気水分離器の原子炉圧力容器1及び原子炉格納本体容器3内からの搬出をより早く着手することができ、燃料集合体及び制御棒の交換、及び原子炉圧力容器1内に設置された炉内構造物の保守点検等の原子炉圧力容器1内における各種作業の開始を早めることができる。
【0030】
また、本実施例では、ドライウェルヘッド4の内面に設けられた水素ガス排出通路13のガス流入口15を、ドライウェル4の内側に形成される領域6の頂部に配置している。このため、冷却材喪失事故等の異常事象発生時において、ドライウェル20の、フランジ5Bよりも上方の領域6内に溜まる水素ガスを、ガス流入口15から水素ガス排出通路13内に流入させることができ、原子炉建屋外に排出することができる。
【0031】
本実施例は、水素ガス排出通路13,14、水素ガス排出管16及びガス排出管11を通しての、原子炉格納容器2内の水素ガスの排出だけでなく、格納容器ベント配管18を通しての水素ガスの排出も行われるので、異常事象発生時に全電源喪失が生じた場合においても、原子炉格納容器2内の水素ガスをより早く外部の環境に排出することができるため、原子炉格納容器2内での水素爆発の危険性を著しく軽減することができる。
【0032】
ガス流入口15は、フランジ5Aよりも上方でドライウェルヘッド4内の領域6に配置することによってその領域6内に溜まる水素ガスを原子炉格納容器2外に排出することができる。ガス流入口15を、領域6内で領域6の頂部に配置することによって、領域6内に溜まる水素ガスを効率良く原子炉格納容器2外に排出することができる。
【0033】
燃料集合体及び制御棒の交換作業、及び炉内構造物の保守点検等の作業が終了した後、蒸気乾燥器及び気水分離器が原子炉格納本体容器3内に搬入されて原子炉圧力容器1内の所定の位置に設置される。そして、原子炉圧力容器1の上蓋が原子炉圧力容器1に取り付けられ、ドライウェルヘッド4が原子炉格納本体容器3の上端に取り付けられる。ドライウェルヘッド4が原子炉格納本体容器3に取り付けられるとき、水素ガス排出通路13も原子炉格納本体容器3に取り付けられる。このため、水素ガス排出通路13の原子炉格納本体容器3への取り付けも容易に行われる。水素ガス排出通路13の、原子炉格納本体容器3の内面に取り付けられた水素ガス排出通路14の位置合せは、フランジ5Aとフランジ5Bを前述したように複数のピンによって位置決めすることによって容易に行うことができる。
【実施例2】
【0034】
本発明の他の実施例である実施例2の原子炉格納容器を説明する。本実施例の原子炉格納容器は、沸騰水型原子炉に用いられる原子炉格納容器である。
【0035】
本実施例の原子炉格納容器は、実施例1の原子炉格納容器2において水素ガス排出通路13及び14の替りに、ドライウェルヘッド4の内面にドライウェルヘッド4の直径を小さくして小型化して構成された第1内壁をドライウェルヘッド4の内側に配置し、円筒状の原子炉格納本体容器3の内径よりも小さい外径を有する円筒状の第2内壁を原子炉格納本体容器3の内側に配置した構成を有する。円筒状の第2内壁は、原子炉格納本体容器3の上端部に配置される。本実施例の原子炉格納容器の他の構成は実施例1の原子炉格納容器2と同じである。
【0036】
第1内壁の配置により、ドライウェルヘッド4が二重化された構成になる。ドライウェルヘッド4の内面と第1内壁の外面の間には、間隙が形成され、ドライウェルヘッド4と第1内壁は、その間隙内において第1内壁の外面の頂部から第1内壁の下端に向かって放射状に配置された複数の第1リブによって結合される。本実施例では、領域6が第1内壁の内側に形成される。第1内壁を貫通して領域6に連通されるガス流入口(実施例1におけるガス流入口15に相当)が第1内壁の頂部に形成される。このガス流入口は、領域6の頂部に面している。ドライウェルヘッド4の周方向において隣り合うそれぞれの第1リブ間でドライウェルヘッド4の内面と第1内壁の外面の間に形成される空間が、実施例1に設けられた、領域6内の水素ガスを導く水素ガス排出通路13に相当する。
【0037】
原子炉格納本体容器3の内面と円筒状の第2内壁の外面との間に、環状の間隙が形成され、この間隙の下端は、原子炉格納本体容器3と第2内壁の下端に取り付けられた環状板によって塞がれる。原子炉格納本体容器3の軸方向に伸びる複数の第2リブが、その環状間隙内で周方向に配置されて、周方向でその環状間隙を複数の領域に分割する。原子炉格納本体容器3と第2内壁が、環状間隙に配置されたこれらの第2リブによって結合される。これらの第2リブ間で原子炉格納本体容器3と第2内壁の間に形成される各領域が、実施例1に設けられた、領域6内の水素ガスを導く水素ガス排出通路14に相当する。
【0038】
複数の第2リブによって分割されて原子炉格納本体容器3と第2内壁の間に形成されたそれぞれの領域の下端部に連通する貫通孔が、原子炉格納本体容器3に形成される。原子炉格納本体容器3の外側で水素ガス排出管16から分岐された複数の分岐管が、別々にそれらの貫通孔に連絡されて原子炉格納本体容器3の外面に取り付けられる。
【0039】
ドライウェルヘッド4に設けられたフランジ5Aが原子炉格納本体容器3に設けられたフランジ5Bにボルトで取り付けられたとき、ドライウェルヘッド4が原子炉格納本体容器3に設置される。この状態では、第1内壁の下端面が第2内壁の上端面に接触しており、ドライウェルヘッド4と第1内壁の間で第1リブ間に形成された、水素ガス排出通路13に相当する空間が、原子炉格納本体容器3と第2内壁の間で第2リブ間に形成された、水素ガス排出通路14に相当する領域に連絡される。
【0040】
冷却材喪失事故が発生してドライウェル20内に蒸気及び水素ガスが放出されたとき、領域6内に存在する水素ガス及び蒸気を含む窒素ガスが、ドライウェルヘッド4と第1内壁の間に形成される間隙、及び原子炉格納本体容器3と第2内壁の間に形成される間隙を通って水素ガス排出管16に流入する。全電源喪失が生じていないときには、水素ガス排出管16に流入したその窒素ガスが、再結合器8に導かれて水素が処理される。全電源喪失が生じているときには、水素ガス排出管16に流入した水素ガス等を含む窒素ガスが、ガス排出管11を通して原子炉建屋外に放出される。
【0041】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。本実施例は、第1リブにより第1内壁をドライウェルヘッド4に取り付けているので、ドライウェルヘッド4が第1リブによって補強され、ドライウェルヘッド43の内外圧に対する強度が向上する。また、ドライウェルヘッド4の内側に間隙を形成して第1内壁を配置しているので、冷却材喪失事故等の異常事象の発生により、ドライウェル20内に高温の蒸気が放出されたときに、急速な昇温及び噴出する蒸気流などの圧力に対して、その間隙がバッファーとなり,ドライウェルヘッド4の損傷を防ぐことができる。
【実施例3】
【0042】
本発明の他の実施例である実施例3の原子炉格納容器を、図3を用いて説明する。本実施例の原子炉格納容器は、沸騰水型原子炉に用いられる原子炉格納容器である。
【0043】
本実施例の原子炉格納容器は、実施例1の原子炉格納容器2において、水素ガス排出管16を削除し、原子炉格納本体容器3の内面に設置した水素ガス排出通路14を、水素ガス排出管16ではなく格納容器ベント配管18に連絡した構成を有する。本実施例の原子炉格納容器の他の構成は実施例1の原子炉格納容器1と同じである。
【0044】
本実施例の原子炉格納容器2に用いられるドライウェルヘッド4の構成は、実施例1の原子炉格納容器2に用いられるドライウェルヘッド4の構成と同じである。水素ガス排出管14Aが原子炉格納本体容器3の上端部の内面に設置される。この水素ガス排出管14Aは、原子炉格納本体容器3を貫通して、図1に示す格納容器ベント配管18に接続される。水素ガス排出管14Aの原子炉格納本体容器3の貫通部では、水素ガス排出管14Aが原子炉格納本体容器3に溶接され、原子炉格納本体容器3の気密性が保たれる。
【0045】
フランジ5Aがフランジ5Bにボルトで結合されてドライウェルヘッド4が原子炉格納本体容器3に取り付けられたとき、水素ガス排出通路13の下端面が水素ガス排出管14Aの上端面に接触し、水素ガス排出通路13が水素ガス排出管14Aに連絡される。
【0046】
冷却材喪失事故等の異常事象が発生して全電源喪失が生じた場合において、原子炉圧力容器1内からドライウェル20内に放出されて領域6内に存在する水素ガスを含む蒸気が、窒素ガスと共に、水素ガス排出通路13、水素ガス排出管14A及び格納容器ベント配管18を通って原子炉建屋外に放出される。
【0047】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
【実施例4】
【0048】
本発明の他の実施例である実施例4の原子炉格納容器を、図4を用いて説明する。本実施例の原子炉格納容器は、沸騰水型原子炉に用いられる原子炉格納容器である。
【0049】
本実施例の原子炉格納容器2Aは、実施例1の原子炉格納容器2において、水素ガス排出通路13をドライウェルヘッド4の外面に設置し、水素ガス排出通路14を原子炉格納本体容器3の外面に設置した構成を有する。本実施例の原子炉格納容器2Aの他の構成は実施例1の原子炉格納容器2と同じである。
【0050】
本実施例の原子炉格納容器2Aに用いられるドライウェルヘッド4Aは、水素ガス排出通路13Aをドライウェルヘッド4Aの外面に設けており、水素ガス排出通路13Aに連通するガス流入口15Aが、ドライウェルヘッド4Aの頂部でドライウェルヘッド4Aを貫通して形成されている。ガス流入口15Aは、領域6の頂部に面しており、領域6と水素ガス排出通路13Aを連絡する。水素ガス排出通路13Aの下端部がフランジ5Aを貫通し、水素ガス排出通路13Aの下端面がフランジ5Aの下面に位置している。
【0051】
水素ガス排出通路14Aが原子炉格納本体容器3の上端部で原子炉格納本体容器3の外面に設置される。水素ガス排出通路14Aの上端部がフランジ5Bを貫通し、水素ガス排出通路14Aの上端面がフランジ5Bの上面に位置している。水素ガス排出管16が水素ガス排出通路14Aの下端部に接続される。
【0052】
冷却材喪失事故等の異常事象が発生して全電源喪失が生じていない場合、及び冷却材喪失事故等の異常事象が発生して全電源喪失が生じている場合に、ドライウェルヘッド4A内の領域6に存在する水素ガス及び蒸気を含む窒素ガスが、ガス流入口15Aより水素ガス排出通路13A内に流入し、さらに、水素ガス排出通路14Aを経て水素ガス排出管16内に導かれる。全電源喪失が生じていないときには、水素ガス排出管16に流入したその窒素ガスが、再結合器8に導かれて水素が処理される。全電源喪失が生じているときには、水素ガス排出管16に流入した水素ガス等を含む窒素ガスが、ガス排出管11を通して原子炉建屋外に放出される。
【0053】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。本実施例は、ドライウェルヘッド4の内側に水素ガス排出通路13を設置することが困難な沸騰水型原子炉にも適用することができる。
【0054】
実施例1〜4のそれぞれは、加圧水型原子炉の原子炉格納容器に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…原子炉圧力容器、2,2A…原子炉格納容器、3…原子炉格納本体容器、4,4A…ドライウェルヘッド、6…領域、8…再結合器、9A…ガス供給管、9B…ガス戻り管、11…ガス排出管、13,13A,14,14A…水素ガス排出通路、15,15A…ガス流入口、16…水素ガス排出管、18…格納容器ベント配管、20…ドライウェル、21…圧力抑制室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器を取り囲んでいる原子炉格納本体容器と、前記原子炉格納本体容器の上端に取り外し可能に取り付けられるドライウェルヘッドとを備え、
第1ガス排出通路が前記ドライウェルヘッドに設けられ、前記第1ガス排出通路のガス流入口がドライウェルヘッド内の領域に連絡され、前記第1ガス排出通路と分離されている第2ガス排出通路が前記原子炉格納本体容器に設けられ、前記ドライウェルヘッドが前記原子炉格納本体容器に取り付けられているとき、前記第2ガス排出通路の上端が前記第1ガス排出通路の下端に対向して配置されて前記第2ガス排出通路が前記第1ガス排出通路に連絡され、前記原子炉格納本体容器の外部に配置されたガス排出管が前記第2ガス排出通路に接続されることを特徴とする原子炉格納容器。
【請求項2】
前記ガス流入口が前記ドライウェルヘッド内の前記領域の頂部に位置している請求項1に記載の原子炉格納容器。
【請求項3】
前記第1ガス排出通路が前記ドライウェルヘッドの内面に設けられ、前記第2ガス排出通路が前記原子炉格納本体容器の内面に設けられた請求項1または2に記載の原子炉格納容器。
【請求項4】
前記第1ガス排出通路が前記ドライウェルヘッドの外面に設けられて前記ガス流入口が前記ドライウェルヘッドに形成され、前記第2ガス排出通路が前記原子炉格納本体容器の外面に設けられた請求項1または2に記載の原子炉格納容器。
【請求項5】
前記ガス排出管が格納容器ベント配管である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の原子炉格納容器。
【請求項6】
可燃性ガス処理装置が前記原子炉格納本体容器内に連絡され、前記ガス排出管が前記可燃性ガス処理装置に接続される請求項1ないし4のいずれか1項に記載の原子炉格納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−101012(P2013−101012A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244136(P2011−244136)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】