説明

原子炉格納容器

【課題】原子炉格納容器内部構造体の耐震性能を高めることができる原子炉格納容器を提供する。
【解決手段】原子炉格納容器は、原子炉を固定し、かつ原子炉よりも上方に床を含む原子炉格納容器内部構造体と、原子炉の冷却材を循環させる一次系循環経路に連結される一次系機器の周囲の壁であって、原子炉格納容器内部構造体の床上に立設する複数の機器室壁と、振動が加わった場合、複数の機器室壁が水平方向に振れることを抑制する振れ抑制部材と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力施設の原子炉格納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力施設の建屋には、原子炉格納容器が備えられている。特許文献1には、原子炉格納容器内の蒸気発生器室壁の施工方法が記載されている。この蒸気発生器室壁の施工方法は、予め組み立てられた蒸気発生器壁架構に鉄筋、型枠及び埋設構造物を附設してなるプレハブ壁ユニットを据付の完了した蒸気発生器本体の外周に吊込んだのち、前記ユニットに壁体コンクリートを打設一体化することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−205288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蒸気発生器室壁は、原子炉格納容器内部構造体に打設されているため、原子炉格納容器内部構造体の床よりも上方に突出する。また通常、複数の蒸気発生器が原子炉格納容器内に備えられているので、原子炉格納容器内部構造体に設けられた原子炉キャビティの周囲に複数の蒸気発生器室壁が突出している。
【0005】
蒸気発生器室壁の重心位置が高いため、例えば、地震等の振動に対して原子炉格納容器内部構造体よりも振れが大きくなりやすい。また、地震等の振動に対して複数の蒸気発生器室壁の振れが個々に応答する。このため、複数の蒸気発生器室壁の水平方向の振れは、原子炉格納容器内部構造体に個別に伝達される。蒸気発生器室壁の振れが原子炉格納容器内部構造体に伝達されると、原子炉格納容器内部構造体の水平方向の振れを増幅するおそれがある。原子炉格納容器内部構造体の振れの増加は、原子炉格納容器内部構造体に設置される機器又は配管の損傷を引き起こすおそれがある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、原子炉格納容器内部構造体の耐震性能を高めることができる原子炉格納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために原子炉格納容器は、原子炉を固定し、かつ前記原子炉よりも上方に床を含む原子炉格納容器内部構造体と、前記原子炉の冷却材を循環させる一次系循環経路に連結される一次系機器の周囲の壁であって、前記原子炉格納容器内部構造体の前記床上に立設する複数の機器室壁と、振動が加わった場合、前記複数の機器室壁が水平方向に振れることを抑制する振れ抑制部材と、を含むことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、地震等の振動に対して、複数の機器室壁の水平方向の振れが個々に応答することが抑制できる。このため、複数の機器室壁の水平方向の振れが小さくなり、原子炉格納容器内部構造体に伝達した場合でも水平方向の振れを抑制することができる。その結果、原子炉格納容器内部構造体に設置される機器又は配管の損傷を引き起こすおそれを低減でき、原子炉格納容器内部構造体の耐震性能を確保することができる。
【0009】
本発明の望ましい態様として、前記振れ抑制部材は、前記複数の前記機器室壁の間を連結し、前記床上に備えられる壁であることが好ましい。
【0010】
この構成により、複数の機器室壁にかかる振れの方向が規制され、振れの方向が揃うようになり、地震等の振動に対して、複数の機器室壁の振れが個々に応答することが抑制できる。また、振れ抑制部材は、複数の機器室壁と一体となり、振動が加わった場合に、機器室壁自体の振れを抑制することができる。
【0011】
本発明の望ましい態様として、前記振れ抑制部材は、前記機器室壁の間を連結する梁であることが好ましい。
【0012】
この構成により、複数の機器室壁にかかる振れの方向が規制され、振れの方向が揃うようになり、地震等の振動に対して、複数の機器室壁が個々に応答することが抑制できる。
【0013】
本発明の望ましい態様として、前記振れ抑制部材は、前記複数の機器室壁が一体となるように拘束することが好ましい。
【0014】
この構成により、複数の機器室壁の振れの方向が揃うようになり、地震等の振動に対して、複数の機器室壁の振れが個々に応答することが抑制できる。
【0015】
本発明の望ましい態様として、前記振れ抑制部材は、前記複数の機器室壁の周囲を囲むことが好ましい。
【0016】
この構成により、振れ抑制部材は、振動が加わった場合、複数の機器室壁の振れを規制することができる。
【0017】
本発明の望ましい態様として、前記振れ抑制部材は、上面視で前記原子炉の位置と重なりあわない位置に設けられることが好ましい。
【0018】
この構成により、ポーラクレーン等の搬送機器が原子炉に対して行う操作を妨害するおそれを低減できる。
【0019】
本発明の望ましい態様として、前記振れ抑制部材は、複数の部材と、前記複数の部材を結合する結合部と、を含むことが好ましい。
【0020】
この構成により、一次系機器の取替工事をする場合、振れ抑制部材を結合部で一旦解体することができる。このため、一次系機器の取替工事を容易に行うことができる。また、振れ抑制部材を複数の部材から組み立てることで、長い振れ抑制部材も容易に作製することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、原子炉格納容器内部構造体の耐震性能を高めることができる原子炉格納容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、実施形態1に係る原子炉格納容器の内部を模式的に示す模式図である。
【図2】図2は、図1に示すA−A線で切断したときの原子炉格納容器内部の断面図である。
【図3】図3は、図2に示す遮蔽壁外側周辺区画の部分拡大断面図である。
【図4】図4は、図1の矢印B方向からみた振れ抑制部材の一例を説明する説明図である。
【図5】図5は、図1の矢印C方向からみた振れ抑制部材の一例を説明する説明図である。
【図6】図6は、図1の矢印B方向からみた振れ抑制部材の他の例を説明する説明図である。
【図7】図7は、図1の矢印C方向からみた振れ抑制部材の他の例を説明する説明図である。
【図8】図8は、実施形態2に係る原子炉格納容器の内部を模式的に示す模式図である。
【図9】図9は、振れ抑制部材の結合部の一例を説明する説明図である。
【図10】図10は、図8の矢印B方向からみた振れ抑制部材の一例を説明する説明図である。
【図11】図11は、実施形態3に係る原子炉格納容器の内部を模式的に示す模式図である。
【図12】図12は、実施形態3の変形例に係る原子炉格納容器の内部を模式的に示す模式図である。
【図13】図13は、実施形態4に係る原子炉格納容器の内部を模式的に示す模式図である。
【図14】図14は、図13に示すA’−A’線で切断したときの原子炉格納容器内部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0024】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る原子炉格納容器の内部を模式的に示す模式図である。図2は、図1に示すA−A線で切断したときの原子炉格納容器内部の断面図である。図1及び図2に示すように、原子力プラント1は、原子炉格納容器2と、補助建屋3とを含む。補助建屋3は、原子炉格納容器2に隣接して設けられ、燃料取扱設備等を収容している。
【0025】
原子炉格納容器2は、基礎版20上に設置された円筒形状に形成されており、基礎版20側から上方へ向かってストレートに形成され、頂部が半球状に形成されている。原子炉格納容器2の内部には、原子炉4と、加圧器51と、蒸気発生器61、62、63、64と、を含む。
【0026】
原子力プラント1は、原子炉4、加圧器51及び蒸気発生器61、62、63、64がポンプ及び一次冷却材管により順次連結されて、一次冷却材の循環経路(一次系循環経路)が構成される。また、蒸気発生器61、62、63、64とタービン(不図示)との間に二次冷却材の循環経路(二次系循環経路)が構成される。原子炉格納容器2には、原子炉4を含む一次冷却系統が収容されている。本実施形態の一次冷却系統は、4つの蒸気発生器61、62、63、64を含む4ループと呼ばれる冷却系統で説明しているが、2つ又は3つの蒸気発生器に循環経路を構成する2ループ又は3ループと呼ばれる冷却系統であってもよい。
【0027】
一次系循環経路内の一次冷却材は、加圧器51で加圧されて圧力が所定の大きさに維持される。原子力プラント1は、先ず、一次冷却材が原子炉4で加熱された後、蒸気発生器61、62、63、64に供給される。次に、蒸気発生器61、62、63、64で一次冷却材と二次冷却材との熱交換が行なわれることにより、二次冷却材が蒸発して蒸気となる。そして、この蒸気となった二次冷却材がタービンに供給されることにより、タービンが駆動されて発電機に動力が供給される。なお、蒸気発生器61、62、63、64を通過した一次冷却材は、一次冷却材管を介して回収されて原子炉4側に供給される。
【0028】
また、原子炉4は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器61、62、63、64に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電するいわゆる加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。また、蒸気発生器61、62、63、64及び加圧器51は、原子炉4の冷却材を循環させる一次系循環経路に連結される一次系機器である。
【0029】
図1及び図2に示すように、原子炉4は、原子炉格納容器2の中央近傍で原子炉格納容器内部構造体25に固定されている。原子炉格納容器内部構造体25は、例えば、コンクリートと鋼材とを含むコンクリート構造体である。また、原子炉格納容器内部構造体25には、原子炉4に収容する核燃料を取り替える際に使用される冷却水(冷却材)を貯留可能な原子炉キャビティ41が設けられている。また、原子炉キャビティ41は、原子炉4の原子炉容器蓋部4a周囲を取り囲むように設けられている。このため、原子炉キャビティ41は、原子炉4の上方を冷却水で覆うことができる。
【0030】
原子炉キャビティ41上方には、原子炉格納容器2の内壁に設けられたポーラクレーン駆動機構91aを介して、ポーラクレーン91が備えられている。ポーラクレーン91は、原子炉格納容器2内の構造物、例えば、原子炉容器蓋部4a又は原子炉4内の炉心構造物の吊り上げ作業を行うことができる。
【0031】
原子炉格納容器内部構造体25は、原子炉キャビティ41の冷却水の水面の基準となる基準面GLよりも上に、平板状のフロア部(床部)21を備えている。つまり、フロア部21は、原子炉4よりも上方にある。図1に示すように、原子炉格納容器内部構造体25のフロア部21上には、加圧器構造体5と、複数の蒸気発生器構造体6A、6Bとが、原子炉キャビティ41の周囲に配置されている。加圧器構造体5と、複数の蒸気発生器構造体6A、6Bとは、フロア部21上に突出して設けられている。
【0032】
加圧器構造体5は、加圧器51と、加圧器51の周囲をコンクリートと鋼材とを含むコンクリート構造体の壁で囲む加圧器室壁55とを含む。加圧器室壁55は、内壁に加圧器51を鋼材等で位置決めしている。加圧器室壁55は、一次系機器である加圧器51の周囲の壁である機器室壁である。また、加圧器室壁55は、加圧器51からの放射線を遮蔽することができるので、フロア部21又は後述する遮蔽壁外側周辺区画25A、25Bでの放射線量を低減することができる。
【0033】
蒸気発生器構造体6Aは、蒸気発生器61、62と、蒸気発生器61、62の周囲をコンクリートと鋼材とを含むコンクリート構造体の壁で囲む蒸気発生器室壁65、コンクリート構造体の壁でありかつ蒸気発生器61、62の仕切りとなる蒸気発生器仕切壁65aとを含む。蒸気発生器室壁65は、内壁に蒸気発生器61及び蒸気発生器62を鋼材等で位置決めしている。蒸気発生器室壁65は、一次系機器である蒸気発生器61、62の周囲の壁である機器室壁である。
【0034】
蒸気発生器構造体6Bは、蒸気発生器63、64と、蒸気発生器63、64の周囲をコンクリートと鋼材とを含むコンクリート構造体の壁で囲む蒸気発生器室壁66、コンクリート構造体の壁でありかつ蒸気発生器63、64の仕切りとなる蒸気発生器仕切壁66aとを含む。蒸気発生器室壁66は、内壁に蒸気発生器63及び蒸気発生器64を鋼材等で位置決めしている。蒸気発生器室壁66は、一次系機器である蒸気発生器63、64の周囲の壁である機器室壁である。
【0035】
蒸気発生器室壁65、66は、蒸気発生器61、62、63、64からの放射線を遮蔽することができるので、フロア部21又は後述する遮蔽壁外側周辺区画25A、25Bでの放射線量を低減することができる。なお、蒸気発生器構造体6A、6Bは、蒸気発生器仕切壁65a、66aを含まなくてもよいが、蒸気発生器仕切壁65a、66aを設ける場合、蒸気発生器室壁65、66の剛性を高めることができる。
【0036】
原子炉格納容器内部構造体25は、図2に示すように、遮蔽壁外側周辺区画25A、25Bを設けている。遮蔽壁外側周辺区画25A、25Bは、機器又は配管を設置し、オペレータが作業可能な区画である。図3は、図2に示す遮蔽壁外側周辺区画の部分拡大断面図である。
【0037】
図3に示すように、遮蔽壁外側周辺区画25A、25Bは、原子炉格納容器2と空隙wを介して配置されている。このため、地震等の外部からの振動を受けた場合、遮蔽壁外側周辺区画25A、25Bと、原子炉格納容器2とは、個別に振動応答する。
【0038】
上述したように加圧器構造体5と、複数の蒸気発生器構造体6A、6Bとは、フロア部21上に突出して設けられている。また、図1に示すように、複数の機器室壁である蒸気発生器室壁65、66及び加圧器室壁55は、互いに異なる位置であって、フロア部21上に立設している。このため、原子炉格納容器内部構造体25の重心よりも蒸気発生器室壁65、66又は加圧器室壁55の重心位置は高くなる。蒸気発生器室壁65と蒸気発生器室壁66と加圧器室壁55とが応答する水平方向の振れは、地震等の振動に対して原子炉格納容器内部構造体25よりも振れが大きくなりやすい。また、地震等の振動に対して、異なる位置に立設している蒸気発生器室壁65と蒸気発生器室壁66とが応答する振れは個々に生じる。
【0039】
蒸気発生器室壁65、66又は加圧器室壁55が応答する振れは、原子炉格納容器内部構造体25に伝達され、原子炉格納容器内部構造体25の水平方向の振れを増幅するおそれがある。例えば、原子炉格納容器内部構造体25の水平方向(図3に示す矢印S方向)の振れは、遮蔽壁外側周辺区画25A、25Bに設置される機器又は配管の損傷を引き起こすおそれがある。
【0040】
なお、原子炉格納容器内部構造体25は、冷却水を貯留する原子炉キャビティ41が含まれており、コンクリート構造体の中に冷却水で満たされた空間を有する構造体である。このような構造体に生じる振れは、個別に伝達されてくる振れの応答により、大きくなることがある。例えば、蒸気発生器室壁65と蒸気発生器室壁66とが互いに原子炉キャビティ41から離れる方向へ傾くように振れた場合、原子炉格納容器内部構造体25の振れを増幅するおそれがある。
【0041】
そこで、本実施形態の原子炉格納容器2は、蒸気発生器室壁65、66又は加圧器室壁55が水平方向に振れることを抑制する振れ抑制部材7を含む。本実施形態の振れ抑制部材7は、鋼板コンクリートの壁体71である。このため、鋼板を型枠として使用し、壁体71をフロア部21上に打設することができる。これにより、地震等の振動に対して耐震性能が向上するとともに、工期を短くすることができる。壁体71は、鉄筋コンクリートで構成してもよいが、鋼板コンクリートに比べ型枠等の廃棄物が多くなるおそれがある。
【0042】
壁体71は、原子炉キャビティ41から遠い側の蒸気発生器室壁65、66に接するように設けられている。また、壁体71は、原子炉キャビティ41から遠い側の加圧器室壁55に接するように設けられている。図1に示すように、壁体71は、環状に連結されており、蒸気発生器室壁65、66及び加圧器室壁55を囲んでいる。また、壁体71は、上面視で原子炉4の位置と重なりあわない位置に設けられることが好ましい。これにより、ポーラクレーン91が原子炉4に対して行う操作を妨害するおそれを低減できる。
【0043】
壁体71は、環状に連結されていることから、剛性を高めることができる。また、壁体71は、蒸気発生器室壁65、蒸気発生器室壁66及び加圧器室壁55を囲うことで、蒸気発生器室壁65、蒸気発生器室壁66及び加圧器室壁55の個々の振れを抑制することができる。その結果、蒸気発生器室壁65と蒸気発生器室壁66とが応答する振れの方向が揃うようになり、原子炉格納容器内部構造体25における振れの増幅を抑制することができる。
【0044】
図4は、図1の矢印B方向からみた振れ抑制部材の一例を説明する説明図である。図5は、図1の矢印C方向からみた振れ抑制部材の一例を説明する説明図である。振れ抑制部材7である壁体71は、図4に示すように、蒸気発生器室壁65と加圧器室壁55との間及び加圧器室壁55と蒸気発生器室壁66との間を繋ぐ連結部材である。また、壁体71は、図5に示すように、蒸気発生器室壁65と蒸気発生器室壁66との間を繋ぐ連結部材である。
【0045】
また図1に示すように、振れ抑制部材7は、蒸気発生器室壁65、蒸気発生器室壁66及び加圧器室壁55の原子炉格納容器2の内壁側に沿って平行に立設している。このため、蒸気発生器室壁65、蒸気発生器室壁66及び加圧器室壁55の壁が厚くなった状態となり、蒸気発生器室壁65、蒸気発生器室壁66及び加圧器室壁55の振れ自体も低減させることができる。
【0046】
また、振れ抑制部材7は、蒸気発生器室壁65、66又は加圧器室壁55を支えて、蒸気発生器室壁65、蒸気発生器室壁66及び加圧器室壁55の振れを図1に示す矢印B、C、D及びE方向に規制している。その結果、振れ抑制部材7は、蒸気発生器室壁65、蒸気発生器室壁66及び加圧器室壁55に地震等による振動が加わった場合でも、蒸気発生器室壁65、蒸気発生器室壁66及び加圧器室壁55のそれぞれが水平方向へ振れることを抑制する。
【0047】
また、本実施形態の振れ抑制部材7は、コンクリートと鋼材とを含むコンクリート構造体の壁であるので、放射線の遮蔽体となる。このため、振れ抑制部材7は、蒸気発生器61、62、63、64又は加圧器51から遮蔽壁外側周辺区画25A、25Bに到達する放射線を低減することができる。
【0048】
上述したように本実施形態の原子炉格納容器2は、一次系循環経路内の一次冷却材を加圧する加圧器51と、この一次冷却材を加熱する原子炉4と、原子炉4で加熱された一次冷却材を利用して熱交換を行う複数の蒸気発生器61、62、63、64とを含む。また、原子炉格納容器2の原子炉格納容器内部構造体25は、原子炉4を固定し、かつ原子炉4の上方を冷却材で覆うための原子炉キャビティ41を含む。蒸気発生器61、62、63、64の周囲の壁である複数の蒸気発生器室壁65、66は、原子炉格納容器内部構造体25のフロア部21上に突出して設けられている。また、加圧器51の周囲の壁である加圧器室壁55は、蒸気発生器室壁65,66と異なる位置のフロア部21上に突出して設けられている。
【0049】
振れ抑制部材7は、蒸気発生器室壁65と蒸気発生器室壁66との間又は蒸気発生器室壁65及び66と加圧器室壁55との間を連結し、フロア部21上に備えられる壁体71である。
【0050】
振れ抑制部材7は、蒸気発生器室壁65と蒸気発生器室壁66と加圧器室壁55との間を連結している。このため、蒸気発生器室壁65と蒸気発生器室壁66と加圧器室壁55とは一体となるように拘束されている。これにより、地震等による振動が加わった場合でも、蒸気発生器室壁65、66及び加圧器室壁55にかかる振れの方向が揃うようになる。このため、地震等の振動に対して、複数の蒸気発生器室壁65、66又は加圧器室壁55の振れが個々に応答することを抑制できる。
【0051】
また、振れ抑制部材7は、蒸気発生器室壁65、66又は加圧器室壁55と一体となり、振動が加わった場合に、蒸気発生器室壁65、66又は加圧器室壁55を支えて、水平方向へ振れることを抑制することができる。
【0052】
また、振れ抑制部材7は、複数の蒸気発生器室壁65、66と加圧器室壁55との周囲を環状に囲む部材である。このため、振れ抑制部材7は、地震等の振動が加わった場合、蒸気発生器室壁65、66又は加圧器室壁55が原子炉キャビティ41から離れる方向へ傾く力に対して対抗することが容易となる。その結果、振れ抑制部材7に使用する鋼材を低減することができる。
【0053】
振れ抑制部材7は、原子炉格納容器2の内壁から原子炉キャビティ41へ向かう方向に、複数の蒸気発生器室壁65、66と加圧器室壁55とを周囲から押しつける応力を付与しておくことがより好ましい。例えば、振れ抑制部材7を構成する鋼材に予め引っ張り応力を付与しておいた状態のまま、コンクリートで固め、壁体71を製造してもよい。
【0054】
次に、本実施形態の振れ抑制部材7の変形例について、図6及び図7を用いて説明する。図6は、図1の矢印B方向からみた振れ抑制部材の他の例を説明する説明図である。図7は、図1の矢印C方向からみた振れ抑制部材の他の例を説明する説明図である。
【0055】
変形例に係る振れ抑制部材7は、鋼板の梁71aである。梁71aは、原子炉キャビティ41から遠い側の蒸気発生器室壁65、66に接するように設けられている。また、梁71aは、原子炉キャビティ41から遠い側の加圧器室壁55に接するように設けられている。梁71aは、図1に示す振れ抑制部材7と同様に、環状に連結されており、蒸気発生器室壁65、66及び加圧器室壁55を囲んでいる。また、梁71aは、上面視で原子炉4の位置と重なりあわない位置に設けられることが好ましい。これにより、ポーラクレーン91が原子炉4に対して行う操作を妨害するおそれを低減できる。
【0056】
また、梁71aは、図6に示すように、蒸気発生器室壁65と加圧器室壁55との間及び加圧器室壁55と蒸気発生器室壁66との間を繋ぐ連結部材である。また、梁71aは、図7に示すように、蒸気発生器室壁65と蒸気発生器室壁66との間を繋ぐ連結部材である。
【0057】
梁71aは、図6及び図7に示すように、フロア部21からの蒸気発生器室壁65又は蒸気発生器室壁66の高さの中間の位置を示すMよりも高い位置で、蒸気発生器室壁65及び蒸気発生器室壁66と接していることが好ましい。これにより、梁71aは、蒸気発生器室壁65及び蒸気発生器室壁66において水平方向に振れる振れ幅の大きい、壁の上方部分の動きを拘束することができる。
【0058】
変形例に係る振れ抑制部材7は、図1に示す矢印B、C、D及びEの方向(原子炉格納容器2の内壁から原子炉キャビティ41へ向かう方向)に応力がかかるように、蒸気発生器室壁65、蒸気発生器室壁66及び加圧器室壁55を拘束していることがより好ましい。その結果、振れ抑制部材7は、蒸気発生器室壁65、蒸気発生器室壁66及び加圧器室壁55に地震等による振動が加わった場合でも、蒸気発生器室壁65、蒸気発生器室壁66及び加圧器室壁55の水平方向の振れを抑制することができる。
【0059】
変形例に係る振れ抑制部材7は、蒸気発生器室壁65と蒸気発生器室壁66と加圧器室壁55との間を連結している。このため、蒸気発生器室壁65と蒸気発生器室壁66と加圧器室壁55とは一体となるように拘束されている。これにより、地震等による振動が加わった場合でも、蒸気発生器室壁65、66及び加圧器室壁55にかかる振れの方向が揃うようになる。このため、地震等の振動に対して、複数の蒸気発生器室壁65、66又は加圧器室壁55の振れが個々に応答することを抑制できる。
【0060】
また、変形例に係る振れ抑制部材7は、複数の蒸気発生器室壁65、66と加圧器室壁55との周囲を環状に囲む梁71aである。このため、振れ抑制部材7は、地震等の振動が加わった場合、蒸気発生器室壁65、66又は加圧器室壁55が原子炉キャビティ41から離れる方向へ傾く力に対して対抗することが容易となる。
【0061】
(実施形態2)
図8は、実施形態2に係る原子炉格納容器の内部を模式的に示す模式図である。図9は、振れ抑制部材の結合部の一例を説明する説明図である。図10は、図8の矢印B方向からみた振れ抑制部材の一例を説明する説明図である。本実施形態の原子炉格納容器2は、振れ抑制部材7が分割可能なことに特徴がある。次の説明においては、実施形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0062】
例えば、蒸気発生器61、62、63又は64が、蒸気発生器取り替え工事の対象となることがある。この場合、壁体71が作業の邪魔となるおそれがある。このため、本実施形態の振れ抑制部材7は、壁体71を図9及び図10に示すように複数の壁部材71、71に分け、結合部75で連結している。
【0063】
結合部75は、例えば、接合する壁部材71及び壁部材71の端部同士を嵌め合い構造とし、ボルト76が壁部材71及び壁部材71を貫通すると共に壁部材71及び壁部材71を固定する。ボルト76は、図10に示すように複数設けて壁部材71及び壁部材71を貫通することが好ましい。これにより、結合部75の強度を高めることができる。
【0064】
本実施形態の原子炉格納容器2は、蒸気発生器取り替え工事を行う場合、結合部75での壁部材71及び壁部材71の固定を解除し、振れ抑制部材7を分割する。蒸気発生器取り替え工事が完了した後、結合部75での壁部材71及び壁部材71の固定を行い、振れ抑制部材7を図8に示すように元に戻す。
【0065】
以上説明したように、本実施形態の振れ抑制部材7は、複数の部材である壁部材71、71と、壁部材71、71を結合する結合部75とを含む。この構成により、蒸気発生器61、62、63又は64の取替工事をする場合、振れ抑制部材7を結合部75で一旦解体することができる。このため、蒸気発生器61、62、63又は64の取替工事を容易に行うことができる。また、振れ抑制部材7を複数の壁部材71、71から組み立てることで、長い振れ抑制部材7も容易に作製することができる。
【0066】
(実施形態3)
図11は、実施形態3に係る原子炉格納容器の内部を模式的に示す模式図である。本実施形態の原子炉格納容器2は、振れ抑制部材7Aが、蒸気発生器室壁65及び蒸気発生器室壁66の間を連結していることに特徴がある。次の説明においては、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0067】
本実施形態の原子炉格納容器2は、蒸気発生器室壁65及び蒸気発生器室壁66の間を連結する複数の振れ抑制部材7Aを含む。振れ抑制部材7Aは、原子炉キャビティ41から近い側の蒸気発生器室壁65、66と接合しており、蒸気発生器室壁65及び蒸気発生器室壁66を引き合うように連結している。振れ抑制部材7Aは、図11に示すように、上面視で原子炉4の位置と重なりあわない位置に設けられることが好ましい。これにより、ポーラクレーン91が原子炉4に対して行う操作を妨害するおそれを低減できる。
【0068】
振れ抑制部材7Aは、上述した壁体71と同じように、コンクリートと鋼材とを含むコンクリート構造体の壁としても、上述した梁71aのように鋼板の梁としてもよい。例えば、振れ抑制部材7Aは、図11に示す壁体72aがフロア部21上に立設する、コンクリートと鋼材とを含むコンクリート構造体の壁である。また、梁72bは、原子炉キャビティ41上を通過する鋼板の梁である。
【0069】
振れ抑制部材7Aは、蒸気発生器室壁65と蒸気発生器室壁66との間を連結している。このため、蒸気発生器室壁65と蒸気発生器室壁66とは一体となるように拘束されている。これにより、地震等による振動が加わった場合でも、蒸気発生器室壁65と蒸気発生器室壁66とにかかる振れの方向が揃うようになる。このため、地震等の振動に対して、蒸気発生器室壁65と蒸気発生器室壁66との振れが個々に応答することを抑制できる。
【0070】
また、振れ抑制部材7Aは、振動が加わった場合に、蒸気発生器室壁65と蒸気発生器室壁66との間隔のずれを抑制し、蒸気発生器室壁65と蒸気発生器室壁66とが水平方向に振れることを抑制することができる。その結果、伝達される振れが低減され、原子炉格納容器内部構造体25の振れを抑制することができる。
【0071】
次に、本実施形態の振れ抑制部材7Aの変形例について、図12を用いて説明する。図12は、実施形態3の変形例に係る原子炉格納容器の内部を模式的に示す模式図である。振れ抑制部材7Bは、蒸気発生器室壁66及び加圧器室壁55を引き合うように連結している壁体73aと、が蒸気発生器室壁65及び加圧器室壁55を引き合うように連結している壁体73bとを含む。例えば、図12に示す壁体73a、73bがフロア部21上に立設する、コンクリートと鋼材とを含むコンクリート構造体の壁である。
【0072】
このため、蒸気発生器室壁65と蒸気発生器室壁66と加圧器室壁55とは一体となるように拘束されている。これにより、地震等による振動が加わった場合でも、蒸気発生器室壁65と蒸気発生器室壁66と加圧器室壁55にかかる振れの方向が揃うようになる。このため、地震等の振動に対して、蒸気発生器室壁65と蒸気発生器室壁66と加圧器室壁55との振れが個々に応答することを抑制できる。
【0073】
また、振れ抑制部材7Bは、振動が加わった場合に、蒸気発生器室壁65と加圧器室壁55との間隔及び蒸気発生器室壁66と加圧器室壁55との間隔のずれを抑制し、蒸気発生器室壁65と蒸気発生器室壁66と加圧器室壁55とが水平方向に振れることを抑制することができる。その結果、伝達される振れが低減され、原子炉格納容器内部構造体25の振れを抑制することができる。
【0074】
(実施形態4)
図13は、実施形態4に係る原子炉格納容器の内部を模式的に示す模式図である。図14は、図13に示すA’−A’線で切断したときの原子炉格納容器内部の断面図である。本実施形態の原子炉格納容器2は、燃料取替クレーンの進路を阻害しないように振れ抑制部材7Cが配置されていることに特徴がある。次の説明においては、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0075】
図13に示すように、実施形態4に係る原子炉格納容器2には、フロア部21上に燃料取替クレーン92と、燃料取替クレーン駆動機構92aとが備えられている。燃料取替クレーン駆動機構92aは、原子炉キャビティ41に沿って敷設されている。燃料取替クレーン92は、燃料取替クレーン駆動機構92aに沿って駆動し、原子炉4内の燃料を搬送することができる。
【0076】
このため、本実施形態の振れ抑制部材7Cは、燃料取替クレーン92の進路を阻害しないように、設置している。例えば、振れ抑制部材7Cは、鋼製又は鉄筋コンクリート製の支柱79、79をフロア部21上に立設する。支柱79、79は、原子炉キャビティ41から遠い側の蒸気発生器室壁65、66に接するように設けられて、蒸気発生器室壁65、加圧器室壁55及び蒸気発生器室壁66に渡って外側から囲むように設けられた梁74と接続している。
【0077】
このため、蒸気発生器室壁65と蒸気発生器室壁66と加圧器室壁55とは一体となるように拘束されている。これにより、地震等による振動が加わった場合でも、蒸気発生器室壁65と蒸気発生器室壁66と加圧器室壁55にかかる振れの方向が揃うようになる。このため、地震等の振動に対して、蒸気発生器室壁65と蒸気発生器室壁66と加圧器室壁55との振れが個々に応答することを抑制できる。
【0078】
また、振れ抑制部材7Cは、上面視で原子炉4の位置と重なりあわない位置に設けられている。これにより、ポーラクレーン91又は燃料取替クレーン92が原子炉4に対して行う操作を妨害するおそれを低減できる。
【0079】
梁74は、上述した梁71aと同様、フロア部21からの蒸気発生器室壁65又は蒸気発生器室壁66の高さの中間の位置を示すM(図6参照)よりも高い位置で、蒸気発生器室壁65及び蒸気発生器室壁66と接していることが好ましい。
【0080】
振れ抑制部材7Cは、図13に示す矢印C、D及びEの方向に応力がかかるように、蒸気発生器室壁65、蒸気発生器室壁66及び加圧器室壁55を拘束していることがより好ましい。このため、振れ抑制部材7Cは、蒸気発生器室壁65、蒸気発生器室壁66及び加圧器室壁55に地震等による振動が加わった場合でも、蒸気発生器室壁65、蒸気発生器室壁66及び加圧器室壁55のそれぞれが水平方向に振れることを抑制する。また、蒸気発生器室壁65、蒸気発生器室壁66及び加圧器室壁55の振れ自体も低減させることができる。その結果、伝達される振れが低減され、原子炉格納容器内部構造体25の振れを抑制することができる。なお、振れ抑制部材7Cは、支柱79、79を設けず、上述した壁体71のようにコンクリートと鋼材とを含むコンクリート構造体の壁として構成してもよい。
【0081】
上述した実施形態は加圧水型原子力プラントの原子炉格納容器を例にして説明してきたが、本実施形態の原子炉格納容器は高速炉型原子力プラントにも適用可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 原子力プラント
2 原子炉格納容器
3 補助建屋
4 原子炉
5 加圧器構造体
6A、6B 蒸気発生器構造体
7、7A、7B、7C 振れ抑制部材
20 基礎版
21 フロア部
25 原子炉格納容器内部構造体
25A、25B 遮蔽壁外側周辺区画
41 原子炉キャビティ
51 加圧器
55 加圧器室壁
61、62、63、64 蒸気発生器
65、66 蒸気発生器室壁
71、72a、73a、73b 壁体
71a、72b、74 梁
71、71 壁部材
75 結合部
91 ポーラクレーン
91a ポーラクレーン駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉を固定し、かつ前記原子炉よりも上方に床を含む原子炉格納容器内部構造体と、
前記原子炉の冷却材を循環させる一次系循環経路に連結される一次系機器の周囲の壁であって、前記原子炉格納容器内部構造体の前記床上に立設する複数の機器室壁と、
振動が加わった場合、前記複数の機器室壁が水平方向に振れることを抑制する振れ抑制部材と、
を含むことを特徴とする原子炉格納容器。
【請求項2】
前記振れ抑制部材は、前記複数の前記機器室壁の間を連結し、前記床上に備えられる壁である請求項1に記載の原子炉格納容器。
【請求項3】
前記振れ抑制部材は、前記機器室壁の間を連結する梁である請求項1に記載の原子炉格納容器。
【請求項4】
前記振れ抑制部材は、前記複数の機器室壁が一体となるように拘束する請求項1から3のいずれか1項に記載の原子炉格納容器。
【請求項5】
前記振れ抑制部材は、前記複数の機器室壁の周囲を囲む請求項1から4のいずれか1項に記載の原子炉格納容器。
【請求項6】
前記振れ抑制部材は、上面視で前記原子炉の位置と重なりあわない位置に設けられる請求項1から5のいずれか1項に記載の原子炉格納容器。
【請求項7】
前記振れ抑制部材は、複数の部材と、前記複数の部材を結合する結合部と、を含む請求項1から6のいずれか1項に記載の原子炉格納容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2013−57566(P2013−57566A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195360(P2011−195360)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)