説明

原子炉構成部材の除染方法

【課題】溶融した核燃料物質を効率良く除去することができる原子炉構成部材の除染方法を提供する。
【解決手段】原子炉圧力容器(RPV)の配管及び貫通部を閉止する(S1)。除染装置の循環配管の両端をRPVに接続された再循環系配管に接続する(S2)。除染装置から無機酸(例えば硝酸)を含む除染液をRPV内に供給し、RPV内で炉底部の核燃料物質及び炉内構造物に付着した放射性核種を溶解させる(S3)。RPVから除染装置の循環配管に戻された、溶解された核燃料物質を含む除染液に希釈液を添加し、除染液に含まれる無機酸の濃度を低下させる。低濃度の無機酸を含む除染液を混床樹脂塔に供給する。除染液に含まれる溶解された核燃料物質が混床樹脂塔内のイオン交換樹脂によって吸着除去される。その後、除染液に無機酸を添加して無機酸の濃度が増加した除染液をRPVに供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉構成部材の除染方法に係り、特に、沸騰水型原子炉に適用するのに好適な原子炉構成部材の除染方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントとして、例えば、沸騰水型原子力発電プラント(以下、BWRプラントという)及び加圧水型原子力発電プラント(以下、PWRプラントという)が知られている。例えば、BWRプラントは、原子炉圧力容器(RPVという)内に炉心を内蔵した原子炉を有する。再循環ポンプ(またはインターナルポンプ)によって炉心に供給された冷却水は、炉心に装荷された複数の燃料集合体内の核燃料物質の核分裂で発生する熱によって加熱される。そして、加熱された冷却水の一部が蒸気になる。この蒸気は、原子炉からタービンに導かれ、タービンを回転させる。タービンから排気された蒸気は、復水器で凝縮されて水になる。この水は、給水として、原子炉に供給される。原子炉内での放射性腐食生成物の発生を抑制するために、給水に含まれる金属不純物が給水配管に設けられたろ過脱塩装置で除去される。
【0003】
BWRプラント及びPWRプラント等の発電プラントでは、原子炉圧力容器などの主要な構成部材は、腐食を抑制するために、水が接触する接水部にステンレス鋼及びニッケル基合金などを用いている。また、原子炉冷却材浄化系、余熱除去系、原子炉隔離時冷却系、炉心スプレイ系、給水系及び復水系などの構成部材は、プラントの製造所要コストを低減する観点、あるいは給水系及び復水系を流れる高温水に起因するステンレス鋼の応力腐食割れを避ける観点などから、主として炭素鋼部材が用いられる。
【0004】
また、放射性腐食生成物の元となる腐食生成物は、RPV及び再循環系配管等の接水部からも発生することから、主要な一次系の構成部材には腐食の少ないステンレス鋼、ニッケル基合金などの不銹鋼が使用されている。また、低合金鋼製のRPVは内面にステンレス鋼の肉盛りが施され、低合金鋼が、直接、炉水(RPV内に存在する冷却水)と接触することを防いでいる。炉水とは、原子炉内に存在する冷却水である。さらには、炉水の一部を原子炉浄化系のろ過脱塩装置によって浄化し、炉水中に僅かに存在する金属不純物を積極的に除去している。
【0005】
しかし、上述のような腐食対策を講じても、炉水中における極僅かな金属不純物の存在は避けられないため、一部の金属不純物が、金属酸化物として、燃料集合体に含まれる燃料棒の表面に付着する。燃料棒表面に付着した金属不純物(例えば、金属元素)は、燃料棒内の核燃料物質の核分裂で発生する中性子の照射により原子核反応を起こし、コバルト60、コバルト58、クロム51及びマンガン54等の放射性核種になる。これらの放射性核種は、大部分が酸化物の形態で燃料棒表面に付着したままであるが、一部の放射性核種は、取り込まれている酸化物の溶解度に応じて炉水中にイオンとして溶出したり、クラッドと呼ばれる不溶性固体として炉水中に再放出されたりする。炉水中の放射性物質は、原子炉浄化系のろ過脱塩装置によって取り除かれる。しかしながら、除去されなかった放射性物質は炉水とともに再循環系などを循環している間に、BWRプラントを構成する構成部材の炉水と接触する表面に蓄積される。その結果、構成部材表面から放射線が放射され、定検作業時の従事者の放射線被ばくの原因となる。
【0006】
また、燃料棒の被覆管に損傷が発生した場合や、原子力発電所が冷却機能を喪失し、燃料棒被覆管が溶融した場合は、漏洩した核燃料や核分裂生成物が原子炉を構成する部材表面に付着するため、作業員の放射線被ばくの原因となる。
【0007】
原子力プラントの構成部材の表面に付着した放射性物質を除去する除染方法として、化学除染方法が知られている。特開2000−121791号公報に、化学除染方法の一例が記載されている。この化学除染方法は、シュウ酸及びヒドラジンを含む還元除染剤を用いた還元除染工程、還元除染剤に含まれるシュウ酸及びヒドラジンの分解工程、及び過マンガン酸カリウムを含む酸化除染剤を用いて酸化除染工程を含んでいる。
【0008】
原子力プラントの構成部材の表面への放射性核種の付着を抑制して、従業員の被ばくを低減する方法が、特開2006−38483号公報に記載されている。特開2006−38483号公報に記載された原子力プラント構成部材の放射性核種の付着抑制方法では、構成部材の表面に形成されている、放射性核種を含む酸化皮膜を除去するために、構成部材表面に対する化学除染を行い、その後、フェライト皮膜をその構成部材の表面に形成する。この化学除染は、酸化除染工程、還元除染工程及び還元除染液に含まれる薬剤の分解工程を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−121791号公報
【特許文献2】特開2006−38483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
冷却材喪失事故が発生し、非常用炉心冷却系が作動しないで原子炉圧力容器内の炉心に冷却水が注入されない場合には、炉心内の燃料集合体の冷却が不十分となり、燃料集合体内の核燃料物質が溶融して原子炉圧力容器の底部に落下する。核燃料物質が溶融して原子炉圧力容器の底部に落下した原子炉は、廃炉の対象となる。原子炉の廃炉作業を行う場合には、溶融して原子炉圧力容器の底部に落下した核燃料物質を除去する必要がある。
【0011】
本発明の目的は、溶融した核燃料物質を効率良く除去することができる原子炉構成部材の除染方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、無機酸及び有機酸のいずれかの酸を含む除染液を、溶融した核燃料物質が存在する原子炉圧力容器内に供給し、その酸により原子炉圧力容器内の核燃料物質を溶解させ、溶解された核燃料物質を含む除染液に含まれる酸の濃度を低下させ、酸の濃度が低下された除染液を樹脂塔に供給し、除染液に含まれる核燃料物質を樹脂塔内のイオン交換樹脂によって除去し、樹脂塔から排出された除染液に酸を添加して除染液における酸の濃度を増加させ、酸の濃度が増加された除染液を原子炉圧力容器に供給することにある。
【0013】
本実施例によれば、原子炉圧力容器内で溶解した核燃料物質を含む除染液に含まれる酸の濃度を低下させた後、この除染液を樹脂塔に供給して除染液に含まれる溶解された核燃料物質を樹脂塔内のイオン交換樹脂によって除去するので、樹脂塔内のイオン交換樹脂の分解を防止して、溶解されて硝酸水溶液に含まれている核燃料物質を、そのイオン交換樹脂で除去することができる。さらに、樹脂塔を通過した、低濃度の酸を含む除染液に除染剤である酸を添加して除染液の酸の濃度を高めて、この除染液を原子炉圧力容器内に供給するので、原子炉圧力容器内で上記した核燃料物質を効率良く溶解することができる。このため、原子炉圧力容器内で効率良く溶解された核燃料物質を、樹脂塔内のイオン交換樹脂の分解を防止して、そのイオン交換樹脂より除去することができる。この結果、原子炉圧力容器内の核燃料物質を効率良く除去することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、酸によるイオン交換樹脂の分解を防止して、原子炉圧力容器内で溶融した核燃料物質を効率良く除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好適な一実施例である原子炉構成部材の除染方法の手順を示すフローチャートである。
【図2】図1に示す原子炉構成部材の除染方法の実施に用いられる除染装置をBWRプラントの再循環系配管に接続した状態を示す説明図である。
【図3】図2に示す除染装置の詳細構成図である。
【図4】図1に示す原子炉構成部材の除染方法で行われる高圧水ジェットを用いた除染を示す説明図である。
【図5】図1に示す原子炉構成部材の除染方法で行われるアーク放電による除染を示す説明図である。
【図6】図5に示すアーク放電による除染が終了した時点での構成部材の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例】
【0017】
本発明の好適な一実施例である原子炉構成部材の除染方法を、図1〜図6を用いて説明する。本実施例の原子炉構成部材の除染方法は、BWRプラントに適用された除染方法である。
【0018】
原子力プラントであるBWRプラントの概略構成を、図2を用いて説明する。
【0019】
原子力発電プラントであるBWRプラントは、図2に示すように、原子炉1、タービン3、復水器4、再循環系、原子炉浄化系及び給水系等を備えている。原子炉1は、炉心13を内蔵する原子炉圧力容器(以下、RPVという)12を有し、RPV12内にジェットポンプ14を設置している。炉心13には多数の燃料集合体(図示せず)が装荷されている。燃料集合体は、核燃料物質で製造された複数の燃料ペレットが充填された複数の燃料棒を含んでいる。再循環系は、ステンレス鋼製の再循環系配管22、及び再循環系配管22に設置された再循環ポンプ21を有する。給水系は、復水器4とRPV12を連絡する給水配管10に、復水ポンプ5、復水浄化装置(例えば、復水脱塩器)6、低圧給水加熱器8、給水ポンプ7及び高圧給水加熱器9を、復水器4からRPV12に向って、この順に設置して構成されている。原子炉浄化系は、再循環系配管22と給水配管10を連絡する浄化系配管20に、浄化系ポンプ24、再生熱交換器25、非再生熱交換器26及び炉水浄化装置27をこの順に設置している。浄化系配管20は、再循環ポンプ21の上流で再循環系配管22に接続される。原子炉1は、原子炉建屋(図示せず)内に配置された原子炉格納容器11内に設置されている。
【0020】
RPV12内の冷却水は、再循環ポンプ21で昇圧され、再循環系配管22を通ってジェットポンプ14内に噴出される。ジェットポンプ14のノズルの周囲に存在する冷却水も、ジェットポンプ14内に吸引されて炉心13に供給される。炉心13に供給された冷却水は燃料棒内の核燃料物質の核分裂で発生する熱によって加熱され、加熱された冷却水の一部が蒸気になる。この蒸気は、RPV12内に設けられた気水分離器(図示せず)及び蒸気乾燥器(図示せず)にて水分が除去された後に、RPV12から主蒸気配管2を通ってタービン3に導かれ、タービン3を回転させる。タービン3に連結された発電機(図示せず)が回転し、電力が発生する。
【0021】
タービン3から排気された蒸気は、復水器4で凝縮されて水になる。この水は、給水として、給水配管10を通りRPV12内に供給される。給水配管10を流れる給水は、復水ポンプ5で昇圧され、復水浄化装置6で不純物が除去され、給水ポンプ7でさらに昇圧される。給水は、低圧給水加熱器8及び高圧給水加熱器9で加熱されてRPV12内に導かれる。抽気配管でタービン3から抽気された抽気蒸気が、低圧給水加熱器8及び高圧給水加熱器9にそれぞれ供給され、給水の加熱源となる。
【0022】
再循環系配管22内を流れる冷却水の一部は、浄化系ポンプ24の駆動によって原子炉浄化系の浄化系配管20内に流入し、再生熱交換器25及び非再生熱交換器26で冷却された後、炉水浄化装置27で浄化される。浄化された冷却水は、再生熱交換器25で加熱されて浄化系配管20及び給水配管10を経てRPV12内に戻される。
【0023】
本実施例で用いられる化学除染装置30の詳細構造を、図3を用いて説明する。除染装置30は、サージタンク31、循環配管35、フィルタ51、加熱器53、分解装置64及び混床樹脂塔62を備えている。
【0024】
開閉弁47、循環ポンプ48、弁49、弁56、加熱器53、弁57、サージタンク31、循環ポンプ32、弁33及び開閉弁34が、上流よりこの順に循環配管35に設けられている。弁49をバイパスして循環配管35に接続される配管71に、弁50及びフィルタ51が設置される。両端が循環配管35に接続されて弁56をバイパスする配管61に、冷却器58、混床樹脂塔62及び弁63が設置される。混床樹脂塔62は、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が混在して存在する樹脂層を内部に設けている。
【0025】
弁65及び分解装置64が設置される配管69が弁57をバイパスして循環配管35に接続される。分解装置64は、内部に、例えば、ルテニウムを活性炭の表面に添着した活性炭触媒を充填している。サージタンク31が弁57と循環ポンプ32の間で循環配管35に設置される。弁36及びエゼクタ37が設けられる配管70が、弁33と循環ポンプ32の間で循環配管35に接続され、さらに、サージタンク31に接続されている。
【0026】
除染剤を供給する除染剤供給管41がエゼクタ37に接続されている。流量調節弁40が除染剤供給管41に設けられる。流量調節弁40が除染剤供給管41は、除染剤供給装置を構成している。イオン濃度計38がサージタンク31と循環ポンプ32の間の循環配管35に設けられる。イオン濃度計38は制御装置39に接続される。
【0027】
流量調節弁45が設けられた希釈水供給管46が、開閉弁47の上流で循環配管35に接続される。希釈水供給管46は希釈水供給装置を構成している。イオン濃度計43が希釈水供給管46と循環配管35の接続点と循環ポンプ48の間の循環配管35に設けられる。イオン濃度計43は制御装置60に接続される。制御装置39及び制御装置60は1つの制御装置にまとめてもよい。
【0028】
酸化剤である過酸化水素を充填している薬液タンク46が、注入ポンプ44及び弁54を有する配管75によって、分解装置64よりも上流で配管69に接続される。
【0029】
冷却材喪失事故が発生し、非常用炉心冷却系が作動しないでRPV12内の炉心13に冷却水が注入されない場合には、炉心13内の燃料集合体の冷却が不十分となり、燃料集合体内の核燃料物質が溶融してRPV12の底部に落下する。また、溶融しなかった核燃料物質は、RPV12内の冷却水中を拡散し、RPV12内に残存する炉内構造物等の表面に付着する。
【0030】
このような状態になっている原子炉の構成部材の除染について説明する。
【0031】
RPVの配管及び貫通部を閉止する(ステップS1)。RPV12内に除染液を供給する以外の配管、及び貫通部(例えば、地震または炉心溶融で破壊された部分)を封鎖する。その後、除染装置をRPVに接続する(ステップS2)。原子炉建屋またはタービン建屋内に除染装置30を設置し、運転が停止されているBWRプラントのRPV12内に除染液を供給するために、除染装置30の循環配管35の両端が再循環系配管22に接続される。この循環配管35を再循環系配管22に接続する作業を具体的説明する。例えば、再循環系配管22に接続されている浄化系配管20に設置されているバルブ23のボンネットを開放して浄化系ポンプ24側を封鎖する。除染装置30の循環配管35の一端(開閉弁47側の一端)をバルブ23のフランジに接続する。これにより、循環配管35の一端が再循環系ポンプ21の上流で再循環系配管22に接続される。他方、再循環ポンプ21の下流側で再循環系配管22に接続されたドレン配管または計装配管などの枝管を切り離し、その切り離された枝管に、除染装置30の循環配管35の他端(開閉弁34側の一端)を接続する。再循環系配管22に設けられた弁(図示せず)を閉じる。循環配管35の両端を再循環系配管22に接続して再循環系配管22に設けられた弁を閉じることによって、循環配管35、再循環系配管22、RPV12、再循環系配管22及び循環配管35を連絡する閉ループが形成される。
【0032】
放射性核種、炉内構造物、及び一部の溶融した核燃料物質は、RPV12の底部に存在するため、RPV12の底部の放射線量は高くなる。このため、作業員の作業時には、放射性核種、炉内構造物、及び核燃料物質を同時に除染液で溶解する必要がある。
【0033】
そこで、除染を実施する(ステップS3)。まず、弁34,33,57,56,49及び47をそれぞれ開き、他の弁を閉じた状態で、流量調節弁45を開いて希釈水供給管46から循環配管35内に水を供給する。そして、循環ポンプ32及び48を駆動する。希釈水供給管46から循環配管35内に供給された水が、循環配管35、サージタンク31及び再循環系1及び再循環系配管22内に満たされる。この水はRPV12内にも供給される。循環ポンプ32及び48の駆動により、循環配管35内の水は、再循環系配管22、ジェットポンプ14、RPV12内の炉心13の下方に存在する下部プレナム81、炉心13、RPV12と炉心13の間に形成された環状のダウンカマ82、再循環系配管22及び循環配管35の順に循環する。加熱器53により循環配管35等を循環する水を90℃まで加熱する。この加熱により、RPV12内の水もやがて90℃になる。再循環ポンプ21が正常に機能する場合には、再循環ポンプ21を駆動し、RPV12のダウンカマ82内の水を再循環ポンプ21に昇圧して再循環系配管22、ジェットポンプ14、炉心13及びダウンカマ82と循環させることにより、RPV12内の水を再循環ポンプ21の駆動により発生するジュール熱により加熱することができる。このため、RPV12内の水の温度上昇に要する時間を短縮することができる。
【0034】
循環している水が所定温度まで上昇したとき、弁63を開いて弁56を閉じる。これらの弁の開閉操作により、循環配管35に戻されて循環ポンプ48で昇圧された水は、配管61に設けられた冷却器58によって冷却されて例えば60℃まで低下され、混床樹脂塔62に供給される。混床樹脂塔62から排出された水は加熱器53により加熱され、その水の温度が90℃まで上昇する。この90℃の水が、循環配管35を通してRPV12内に供給される。冷却器58で水を冷却して温度を60℃に低下させた後に、この水を混床樹脂塔62に供給するので、混床樹脂塔62内のイオン交換樹脂の熱による分解を防止することができる。
【0035】
流量調節弁40を開き、無機酸である硝酸を除染剤供給管41からエゼクタ37及び配管70を通してサージタンク31内に供給される。サージタンク31内で、除染液である硝酸水溶液が生成される。この硝酸水溶液は、循環ポンプ32の駆動により、循環配管35、再循環系配管22、及びジェットポンプ14を経て下部プレナム81に達する。その後、硝酸水溶液は、炉心13を上昇してダウンカマ82に到達し、ダウンカマ82を下降して再循環系配管22及び浄化系配管2を通って循環配管35に戻される。
【0036】
硝酸水溶液により、炉内構造物等に付着した放射性核種、及びRPV12底部に溶融して落下した核燃料物質を溶解して除去するためには、硝酸水溶液の硝酸濃度を高くしなければならない。再循環系配管22に供給される硝酸水溶液に含まれる硝酸の濃度は、以下のようにして調節される。イオン濃度計38が再循環系配管22に供給される硝酸水溶液に含まれる硝酸イオンの濃度(硝酸の濃度)を測定し、測定された硝酸イオン濃度が制御装置39に入力される。制御装置39は、イオン濃度計38から入力された硝酸イオン濃度が第1設定硝酸イオン濃度(例えば、6.0mol/L)よりも低いときには、流量調節弁40の開度を増大させて除染剤供給管41からサージタンク31に供給する硝酸の量を増加させる。制御装置39のイオン濃度計38から入力された硝酸イオン濃度に基づいた流量調節弁40の開度の増大により、再循環系配管22に供給される硝酸水溶液の硝酸イオン濃度が第1設定硝酸イオン濃度まで高められる。
【0037】
イオン濃度計38を、循環配管35と希釈水供給管46の接続点よりも上流で循環配管35に設け、このイオン濃度計38により、この接続点よりも上流で循環配管35に戻された硝酸水溶液に含まれる硝酸イオン濃度を測定しても良い。制御装置39は、イオン濃度計38により測定された、その接続点よりも上流での硝酸水溶液の硝酸イオン濃度に基づいて、流量調節弁40の開度を制御し、除染剤供給管41からサージタンク31に供給する硝酸の量を調節する。このように添加する硝酸の量を調節することにより、サージタンク31と循環ポンプ32の間で循環配管35内を流れる硝酸水溶液の硝酸イオン濃度をイオン濃度計38で測定した場合に比較して、RPV12内の硝酸水溶液の硝酸濃度を短時間に第1設定硝酸イオン濃度まで高めることができる。この結果、RPV12内の放射性核種及び核燃料物質の溶解が終了するまでに要する時間を短縮することができる。
【0038】
硝酸イオン濃度が第1設定硝酸イオン濃度になった硝酸水溶液(除染液)により、RPV12内で、炉内構造物等に付着した放射性核種、及びRPV12底部に溶融して落下した核燃料物質が溶解される。溶解した放射性核種及び核燃料物質を含む硝酸水溶液が、ダウンカマ82、再循環系配管22及び浄化系配管2を通って循環配管35に戻される。
【0039】
除染液の希釈及び除染剤の添加を繰り返し行う(ステップS4)。循環配管35に戻された硝酸水溶液が混床樹脂塔62に供給され、硝酸水溶液に含まれる溶解した放射性核種及び核燃料物質が、混床樹脂塔62内の陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂によって除去される。
【0040】
高濃度の酸を含む除染液が混床樹脂塔62に供給された場合には、混床樹脂塔62内のイオン交換樹脂が高濃度の酸によって分解され、RPV12内で溶解した放射性核種及び核燃料物質をそのイオン交換樹脂で吸着除去できなくなる。そこで、イオン交換樹脂の分解を抑制するために、除染液が混床樹脂塔62に供給される前に、除染液に水を添加して除染液に含まれる除染剤である酸(例えば、硝酸)を希釈する必要がある。
【0041】
本実施例では、RPV12から戻された硝酸水溶液の硝酸イオン濃度が、イオン濃度計43で測定される。イオン濃度計43で測定された硝酸イオン濃度が制御装置60に入力される。制御装置60は、イオン濃度計43から入力された硝酸イオン濃度が第2設定硝酸イオン濃度よりも高いときには、流量調節弁45の開度を増大させて希釈水供給管46から循環配管35に供給する希釈水(純水)の量を増加させる。希釈水の添加により、硝酸水溶液の硝酸イオン濃度を、混床樹脂塔62内のイオン交換樹脂が硝酸による分解を防止できる第2設定硝酸イオン濃度(例えば、0.1mol/L)以下に低下される。第2設定硝酸イオン濃度は前述の第1設定硝酸イオン濃度よりも低い値である。
【0042】
硝酸イオン濃度が第2設定硝酸イオン濃度以下に低下された硝酸水溶液が混床樹脂塔62に供給され、その硝酸水溶液に含まれる溶解した放射性核種及び核燃料物質が混床樹脂塔62内のイオン交換樹脂に吸着されて除去される。希釈水の添加により硝酸イオン濃度を低下させた硝酸水溶液を混床樹脂塔62に供給する際にも、この硝酸水溶液は、冷却器58によって温度が60℃に低下された後に、混床樹脂塔62に供給される。混床樹脂塔62から排出された硝酸水溶液は、加熱器53により90℃まで加熱され、そして、サージタンク31内で硝酸イオン濃度が前述したように高められた後、循環配管35等によりRPV12内に供給される。
【0043】
制御装置60を削除し、制御装置60が行う、イオン濃度計43で測定した硝酸イオン濃度に基づいて流量調節弁45の開度の制御を、制御装置39で行ってもよい。
【0044】
放射性核種及び核燃料物質が除去されて硝酸イオン濃度が低い硝酸水溶液が、循環配管35を通ってサージタンク31に導かれる。RPV12内での放射性核種及び核燃料物質の溶解性を高めるために、除染剤である硝酸が、サージタンク31内で、硝酸イオン濃度が低濃度である硝酸水溶液に添加される。この硝酸の添加は、前述したように、制御装置39が流量調節弁40の開度を増加させることによって行われる。すなわち、イオン濃度計38で測定された硝酸イオン濃度を入力した制御装置39は、硝酸イオン濃度の測定値が第1設定硝酸イオン濃度よりも低いときに、流量調節弁40の開度を増大させて除染剤供給管41からサージタンク31に供給する硝酸の量を増加させる。制御装置39によって流量調節弁40の開度が増大されることにより、再循環系配管22に供給される硝酸水溶液の硝酸イオン濃度が第1設定硝酸イオン濃度まで高められる。
【0045】
硝酸イオン濃度が第1設定硝酸イオン濃度まで高められた硝酸水溶液がRPV12内に供給され、この硝酸水溶液により、溶融してRPV12内の底部に落下している核燃料物質、及び炉内構造物に付着している放射性核種及び核燃料物質が溶解されて除去される。
【0046】
前述のRPV12から循環配管35に戻された硝酸水溶液の希釈による硝酸イオン濃度の低下、及び硝酸(除染剤)の添加による硝酸水溶液の硝酸イオン濃度の増加は、RPV12内の核燃料物質の溶解のために硝酸水溶液を、循環配管35およびRPV12の間で所定の経路を通して循環している間、繰り返し行われる。硝酸水溶液が循環している間、硝酸水溶液に含まれる溶解した放射性核種及び核燃料物質は、混床樹脂塔62内のイオン交換樹脂によって吸着除去される。
【0047】
しかしながら、混床樹脂塔62内のイオン交換樹脂は、やがて、放射性核種及び核燃料物質の吸着除去能力が低下して寿命になる。このため、除染装置30は、複数の混床樹脂塔62を並列に循環配管35に接続し、複数の混床樹脂塔62の一部を、硝酸水溶液を供給しない待機状態にしている。残りの複数の混床樹脂塔62内のイオン交換樹脂によって、硝酸水溶液に含まれる溶解した放射性核種及び核燃料物質の吸着除去が行われる。例えば、或る1基の混床樹脂塔62において放射性核種及び核燃料物質の吸着除去能力が低下した場合には、待機状態にある1基の混床樹脂塔62に対応する弁63を開いてこの混床樹脂塔62に硝酸水溶液を供給する。そして、吸着除去能力が低下した混床樹脂塔62に対する弁63を閉じ、この混床樹脂塔62への硝酸水溶液の供給を停止する。図示されていないが、弁63は、各混床樹脂塔62の上流及び下流で配管61にそれぞれ設けられている。硝酸水溶液の供給が停止された混床樹脂塔62において、吸着除去能力が低下した陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が新しい陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂と交換され、待機状態に入る。以上に述べたように、各混床樹脂塔62内のイオン交換樹脂が交換されるので、RPV12内の放射性核種及び核燃料物質の溶解を継続して行うことができる。
【0048】
図示されていないが、第1放射線検出器がRPV12の底部の外側に設置され、さらに、第2放射線検出器が開閉弁47より上流で循環配管35に設置されている。第1放射線検出器で測定したRPV12の底部の放射線線量及び第2放射線検出器で測定した、RPV12から循環配管35に戻された硝酸水溶液の放射線線量が、それぞれ、設定線量以下に低下したとき、RPV12内の放射性核種及び核燃料物質が溶解されたと判断して、RPV12内の核燃料物質等の溶解を終了する。第1放射線検出器及び第2放射線検出器で測定したそれぞれの放射線線量が設定線量以下になるまで、RPV12内の放射性核種及び核燃料物質の溶解が継続して行われる。
【0049】
なお、本実施例では、除染装置30を再循環系配管22に接続しているが、除染装置30は、RPV12に接続されている配管であれば再循環系配管22以外の配管に接続してもよい。例えば、給水配管10、炉浄化系配管20、残留熱除去系の配管、及び隔離時冷却系の配管に、除染装置30の循環配管35を接続してもよい。また、RPV12に接続されている配管が全て破損している場合には、RPV12の蓋を取り外して仮設の2本の配管を上方よりRPV12内に伸ばし、これらの配管に、除染装置30の循環配管35の両端を接続してもよい。
【0050】
RPV12内の放射性核種及び核燃料物質の溶解が終了した後、RPV12内の硝酸水溶液が、RPV12の底部に接続されたドレン配管を通してRPV12の外へ排出される。
【0051】
その後、RPV内の狭隘部について汚染検査を実施する(ステップS5)。RPV12内の狭隘部に面する構造部材の表面には、除染液である硝酸水溶液が接触していない、または、硝酸水溶液が接触した場合でも硝酸イオン濃度が低い硝酸水溶液が接触した可能性がある。このため、狭隘部に面する構造部材の表面に付着している放射性核種及び核燃料物質が十分に除去されず、以下の汚染検査を実施する。
【0052】
原子炉格納容器11の蓋及びRPV12の蓋を取り外して、原子炉建屋内の運転床(図示せず)に置いたマニピュレータに取り付けた放射線検出器を、RPV12内の狭隘部に挿入し、この放射線検出器により狭隘部の放射線を検出する。放射線検出器から出力される放射線検出信号に基づいて、硝酸水溶液が供給されにくい狭隘部の放射線量を算出し、狭隘部における放射性核種及び核燃料物質による汚染の度合いを確認する。この狭隘部における汚染検査に基づいて狭隘部の放射線量が設定放射線量以下の場合には、RPV12内の除染が終了する(ステップS8)。
【0053】
放射線検出器による狭隘部の検査において求められたRPV12の狭隘部の放射線量が設定放射線量よりも大きいとき、その狭隘部が放射性核種及び核燃料物質によって、まだ、汚染されていると判断され、散水による除染が行われる(ステップS6)。散水による除染は、清浄水を除染対象部位に散水し、水により放射性核種及び核燃料物質を洗い流す除染方法である。この散水による除染方法の一例を、図4を用いて説明する。散水ノズル67を内部に収納して散水ノズル67を取り付けたカバー71を、マニピュレータ(図示せず)を用いて狭隘部における原子炉の構成部材72の表面に押し付ける。高圧水が散水ノズル67に接続された高圧ホース68により散水ノズル67に供給され、この高圧水がカバー71内において散水ノズル67から構成部材72の表面に向かって噴射される。散水ノズル67から噴射された高圧水によって、構成部材72の表面に付着している放射性核種及び核燃料物質を除去することができる。カバー71を狭隘部内で移動させながら構成部材72の表面に押し付け、散水ノズル67から高圧水を噴射させることによって、狭隘部の構成部材72の表面から放射性核種及び核燃料物質を順次除去することができる。このとき、構成部材72の表面から除去された放射性核種及び核燃料物質は、散水ノズル67から噴射された水とともに、カバー71内から回収される。
【0054】
該当する狭隘部における構成部材72への散水除染が終了した後、ステップS5で行った汚染検査をその狭隘部の構成部材72に対して再度実施する。この再汚染検査によって、その構成部材72の放射線量が設定放射線量以下である場合には、RPV12内の除染が狭隘部も含めて終了する(ステップS8)。
【0055】
散水除染を実施しても、構成部材72の一部で放射線量が設定放射線量を超える箇所が存在する場合には、電気の通電による除染が行われる(ステップS7)。構成部材72の、散水除染の実施後においても放射線量が設定放射線量を超えている部分は、放射性核種が固着している部分、または溶融した核燃料物質が凝固している部分である。このような放射性核種及び核燃料物質を構成部材72の表面から除去するために、電気の通電による除染、例えば、アーク放電による除染が行われる。
【0056】
図5は、アーク放電を用いた除染方法の一例を示している。このアーク放電を用いた除染には、放電電極78及び放電電源79を有するアーク放電装置77が用いられる。放電電極78が放電電源79に接続されている。マニピュレータ(図示せず)を用いて放電電極78を、狭隘部を形成する構成部材74の、放射性核種及び核燃料物質80が固着している部分に対向させてこの部分の近くに配置する。放電電源79はRPV12にも接続される。RPV12と構成部材72は、構造上、電気的に接続されている。放電電源73によって放電電極78と構成部材72の間に電圧を印加する。この電圧の印加により、放電電極78と構成部材72の表面に固着した放射性核種及び核燃料物質80の間でアークが放電される。
【0057】
アーク放電により、構成部材72の、アーク放電が発生した部分が、アーク熱により、高温になる。このため、核燃料物質80等が固着している部分の構成部材72が溶解し、構成部材72の溶解した部分とともにこの部分に固着していた核燃料物質80等をも構成部材72から除去することができる。ここで、構成部材72に固着している、融点の高い核燃料物質80の一部も溶解するが、アーク放電により温度上昇する過程では、核燃料物質8に比べ融点の低い構成部材72が先に溶解するため、前述したように、固着していた核燃料物質80等も除去される。
【0058】
アーク放電による除染が終了すると、図6に示すように、構成部材72の表面の一部が核燃料物質80等とともに除去される。構成部材72の、核燃料物質80等が固着している部分へのアーク放電による除染が終了した後、ステップS5で行った汚染検査がその狭隘部の構成部材72に対して再度実施される。この再汚染検査によって、その構成部材72の放射線量が設定放射線量以下である場合には、RPV12内の除染が狭隘部も含めて終了する(ステップS8)。
【0059】
RPV12内の核燃料物質等の溶解の終了後にRPV12内に残っている、溶解した核燃料物質を含む硝酸水溶液は、RPV12及び循環配管35内を循環する。この状態で、循環配管35内に戻された硝酸水溶液は、希釈水供給管46から供給される希釈水を混入して硝酸イオン濃度を低下させた後、混床樹脂塔62に供給される。硝酸水溶液に含まれる核燃料物質及び硝酸イオンが混床樹脂塔62内のイオン交換樹脂によって除去される。混床樹脂塔62から排出された硝酸イオン濃度が低下した硝酸イオン水溶液は、加熱器53で加熱されずに、RPV12内に戻される。流量調節弁40が全閉状態になっているため、RPV12内に戻される硝酸水溶液に除染剤である硝酸が添加されない。このため、混床樹脂塔62により核燃料物質等が除去されて硝酸イオン濃度が低下した硝酸イオン水溶液がRPV12に戻され、硝酸イオン水溶液内の核燃料物質の濃度及び硝酸イオン濃度が基準値以下になるまで、硝酸イオン水溶液がRPV12と再循環配管35の間で循環される。
【0060】
本実施例によれば、RPV12内で放射性核種及び核燃料物質を硝酸水溶液で溶解させ、溶解した放射性核種及び核燃料物質を含む硝酸水溶液に希釈水を添加してこの硝酸水溶液の硝酸イオン濃度を低下させているので、混床樹脂塔62内のイオン交換樹脂の分解を防止して、溶解されて硝酸水溶液に含まれている放射性核種及び核燃料物質を、そのイオン交換樹脂で除去することができる。さらに、混床樹脂塔62を通過した、低濃度の硝酸イオンを含む硝酸水溶液に除染剤である硝酸を添加して硝酸水溶液の硝酸イオン濃度を高めるので、この硝酸水溶液を用いてRPV12内で放射性核種及び核燃料物質を効率良く溶解することができる。このため、RPV12内で効率良く溶解された放射性核種及び核燃料物質を、混床樹脂塔62内のイオン交換樹脂の分解を防止して、硝酸水溶液に含まれている放射性核種及び核燃料物質を、そのイオン交換樹脂を用いてより長い時間に亘って除去することができる。この結果、RPV12内の放射性核種及び核燃料物質を効率良く除去することができる。特に、溶融してRPV12内で底部に落下した核燃料物質を効率良く溶解することができ、イオン交換樹脂を用いて効率良く除去することができる。
【0061】
RPV12内の放射性核種及び核燃料物質の溶解には、除染剤として、硝酸以外に、無機酸である硫酸または塩酸など、または有機酸であるシュウ酸またはギ酸などを用いてもよい。除染液として、硫酸水溶液、塩酸水溶液、シュウ酸水溶液またはギ酸水溶液を用いてもよい。
【0062】
本実施例は散水による除染をRPV12内の狭隘部を形成する構成部材72に対して実施するので、除染液である硝酸水溶液が到達しにくい狭隘部内の構成部材72に付着している放射性核種及び核燃料物質を容易に除去することができる。
【0063】
さらに、本実施例では、アーク放電による除染を実施するので、構成部材72の表面に固着している放射性核種及び核燃料物質を容易に除去することができる。
【0064】
除染剤として有機酸(例えば、シュウ酸またはギ酸)を用いた場合におけるRPV12内の放射性核種及び核燃料物質の除去について説明する。除染剤である有機酸を含む有機酸水溶液(除染液)を用いたRPV12内の放射性核種及び核燃料物質の除去においても、図3に示す除染装置30が用いられ、図1に示すステップS1〜S5の各工程が実施され、ステップS5による汚染検査の結果によってはステップS6〜S7の各工程が実施される。
【0065】
ステップS3及びS4の除染工程において、この有機酸を除染剤供給管41からエゼクタ37及び配管70を通してサージタンク31内に供給し、サージタンク31内で生成される有機酸水溶液をRPV12内に導いて、RPV12内の放射性核種及び核燃料物質を、硝酸水溶液と同様に、有機酸水溶液を用いて溶解する。有機酸水溶液を用いる除染においても、硝酸水溶液を用いた場合と同様に、ステップS4において、希釈水の添加により有機酸濃度が低減した有機酸水溶液の混床樹脂塔62への供給、及び混床樹脂塔62から排出された有機酸水溶液への有機酸の添加による有機酸濃度の増加が行われる。
【0066】
ステップS4の除染が終了したとき(またはステップS8における除染が完了する直前で)、弁65及び54を開いて、弁57の開度を所定開度まで低減する。この状態で、混床樹脂塔62から排出された有機酸水溶液が配管69を経て分解装置64に導かれる。注入ポンプ44を駆動し、薬液タンク46内の酸化剤である過酸化水素を配管75及び69を通して分解装置64に供給される。有機酸水溶液に含まれる有機酸(例えば、シュウ酸またはギ酸)が、分解装置64内で活性炭触媒及び過酸化水素の作用により分解される。
【0067】
硝酸、硫酸及び塩酸等の無機酸を含む無機酸水溶液を用いてRPV12内の放射性核種及び核燃料物質の溶解を行った場合には、それらの溶解終了後に、無機酸水溶液は分解装置64に供給されない。核燃料物質等の溶解後における、無機酸水溶液に含まれる無機酸濃度の低減は、前述した水酸水溶液に含まれる硝酸イオン濃度の低減と同様に、混床樹脂塔62を用いて行われる。
【符号の説明】
【0068】
1…原子炉、3…タービン、10…給水配管、12…原子炉圧力容器、20…浄化系配管、30…除染装置、31…サージタンク、32,48…循環ポンプ、35…循環配管、37…エゼクタ、39,60…制御装置、40,45…流量調節弁、41…除染剤供給管、46…希釈水供給管、46…薬液タンク、53…加熱器、62…混床樹脂塔、67…散水ノズル、71…カバー、77…アーク放電装置、78…放電電極、79…放電電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機酸及び有機酸のいずれかの酸を含む除染液を、溶融した核燃料物質が存在する原子炉圧力容器内に供給し、前記酸により前記原子炉圧力容器内の前記核燃料物質を溶解させ、溶解された前記核燃料物質を含む前記除染液に含まれる前記酸の濃度を低下させ、前記酸の濃度が低下された前記除染液を樹脂塔に供給し、前記除染液に含まれる前記核燃料物質を前記樹脂塔内のイオン交換樹脂によって除去し、前記樹脂塔から排出された前記除染液に前記酸を添加して前記除染液における前記酸の濃度を増加させ、前記酸の濃度が増加された前記除染液を前記原子炉圧力容器に供給することを特徴とする原子炉構成部材の除染方法。
【請求項2】
前記酸を含む除染液を用いて前記原子炉圧力容器内の前記核燃料物質を溶解して除去した後、前記原子炉圧力容器内の狭隘部における原子炉構成部材の表面に付着した放射性核種及び核燃料物質をノズルから噴射される水流により除去する請求項1に記載の原子炉構成部材の除染方法。
【請求項3】
前記酸を含む除染液を用いて前記原子炉圧力容器内の前記核燃料物質を溶解して除去した後、前記原子炉圧力容器内の原子炉構成部材の表面に固着した放射性核種及び核燃料物質を電気放電により除去する請求項1に記載の原子炉構成部材の除染方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−76620(P2013−76620A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216179(P2011−216179)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)