説明

原子移動ラジカル重合によって調製されたオニウム塩の基含有ポリマーを含む電着可能コーティング組成物

【課題】狭い分子量分布およびよく定義された特にテイラードポリマー構成を有し、このことは、熱硬化性組成物の増強された架橋密度および分散性を提供すること。
【解決手段】水性媒体中に分散された樹脂製相を含む熱硬化性組成物であって、該樹脂製相が、成分(a)少なくとも1つのラジカル移動可能な基を有する開始剤の存在下で、原子移動ラジカル重合によって調製された、オニウム塩の基を含有する非ゲル化活性水素基含有ポリマーと、(b)(a)の該活性水素基と反応性である少なくとも2つの官能基を有する硬化剤とを含有する、組成物が開示される。熱硬化性組成物の活性水素基含有ポリマー(これは、原子移動ラジカル重合によって調製される)は、このような組成物を提供し得る。本発明の熱硬化性組成物を使用する導電性基板をエレクトロコーティングする方法、およびこの方法によってコーティングされる基板がまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、活性水素含有ポリマーおよびそのための硬化剤から構成される、熱硬化性組成物に関する。このポリマーはオニウム塩の基を含み、そしてこの硬化剤は、このポリマーの活性水素基と反応性である。この活性水素含有ポリマーは、原子移動ラジカル重合によって調製され、そして十分に規定されたポリマー鎖構造、分子量および分子量分布を有する。本発明はまた、導電性基板を電気コーティングする方法、およびこのような方法によって電気コーティングされる基板に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
コーティング塗布方法としての電着は、印加電圧の影響下での、フィルム形成組成物の導電性基板への堆積を包含する。電着は、コーティング産業においてますます重要になってきている。なぜなら、非電気泳動コーティング手段との比較により、電着は、増大した塗装利用能、改善された腐食保護性、および低い環境汚染を示すためである。
【0003】
初めは、電着は、コーティングされる加工品をアノードとして作用させて、実施された。これは、よくアニオン電着と呼ばれた。しかし、1972年に、カチオン電着が市場に導入された。このとき以来、カチオン電着の人気は着実に増大し、そして今日では、はるかに最も頻繁に使用される電着方法である。世界中で、生産される全ての自動車の80%より多くが、カチオン電着によるプライマーコーティングを有する。
【0004】
オニウム塩の基を含む活性水素含有ポリマーを含有する、電着可能なコーティング組成物は公知であり、そして特に、電着可能な自動車OEMプライマーコーティングにおける使用のために、開発されてきた。このような電着可能なコーティング組成物は、典型的に、少なくとも2つの官能基(これらは、活性水素基と反応性である)を有する架橋剤、および活性水素含有ポリマー(これは、オニウム塩の基を含む)を含有する。このような電着可能コーティング組成物において使用されるポリマーは、典型的に、縮合反応によるか、または従来の方法(すなわち、非リビングラジカル重合法)によって調製され、これらの方法は、分子量、分子量分布およびポリマー鎖構造に対する制御をほとんど提供しない。
【0005】
所与のポリマーの多くの物理的特性(例えば、粘度)は、その分子量に直接関係し得る。より高い分子量は、典型的に、例えば、より高いガラス転移温度(Tg)値および粘度に関連する。
【0006】
広い分子量分布(例えば、2.5を超える多分散性指数(PDI))を有するポリマーの物理的特性は、それを構成する様々なポリマー種の個々の物理的特性の平均、およびこれらのポリマー種の間の不確定な相互作用として、特徴付けられ得る。それ自体では、広い分子量分布を有するポリマーの物理的性質は可変であり得、そして制御が困難であり得る。
【0007】
ポリマーのポリマー鎖構造、すなわち構成(architecture)は、そのポリマー骨格(または鎖)に沿ったモノマー残基の配列として、記載され得る。標準的なラジカル重合技術によって調製された、オニウム塩の基を含む活性水素含有ポリマーは、例えば、様々な個々のヒドロキシル基当量およびオニウム塩の基の当量、ならびに様々なポリ
マー鎖構造を有する、ポリマー分子の混合物を含有する。このようなコポリマーにおいては、オニウム塩の基およびヒドロキシル基は、そのポリマー鎖に沿ってランダムに位置する。さらに、官能基の数がポリマー分子間で均等には分配されず、その結果、ポリマー分子のいくらかの画分には、実際には、オニウム塩の基および/またはヒドロキシル基が存在しないことがあり得る。
【0008】
任意の熱硬化性組成物において、三次元架橋ネットワークの形成は、官能基の当量(例えば、ヒドロキシル当量)、ならびにそのネットワークを構成する個々のポリマー分子の構成に、依存する。反応性官能基をほとんどまたは全く有さない(またはそのポリマー鎖に沿ったその位置のために、架橋反応に関与しにくい官能基を有する)ポリマー分子は、この三次元架橋ネットワークの形成にはほとんどまたは全く寄与せず、その結果、得られる硬化フィルムの架橋密度が減少し、最適な物理的性質より低くなる。
【0009】
電着可能コーティング組成物は、水性媒体中に分散された樹脂相から構成される。この樹脂相のポリマー分子は、典型的に、イオン種(例えば、オニウム塩の基)を含み、これによって、水性媒体中でのこのポリマーの分散を容易にする。イオン性基をほとんどまたは全く有さないポリマー画分は、水性媒体中での分散が困難であり、その結果、電着槽の安定性がより乏しくなり、そして得られる電着コーティングの外観がより乏しくなる。
【0010】
安定な電着槽および好都合なコーティング実施特性の組み合わせを提供する、新規かつ改善された電着可能コーティング組成物の継続的な開発が、所望される。特に、オニウム塩の基を含む活性水素含有ポリマーを含有する、熱硬化性組成物の開発が所望され、このポリマーは、十分に規定された分子量および要求に合うポリマー鎖構造、ならびに狭い分子量分布(例えば、2.5未満のPDI値)を有する。このような組成物は、特に電着可能コーティングの塗布において、効率的な分散能および好都合な実施特性の組み合わせを有する。
【0011】
米国特許第5,789,487号および同第5,763,548号、ならびに国際特許出願公開第WO97/18247号は、「原子移動ラジカル重合」(ATRP)と呼ばれるラジカル重合プロセスを記載する。ATRPプロセスは、予測可能な分子量および分子量分布を有するポリマーの形成をもたらす、リビングラジカル重合であると記載されている。これらの公報のATRPプロセスはまた、制御された構造(すなわち、制御可能なトポロジー、組成など)を有する高度に均一な生成物を提供するとも記載されている。これらの特許公報はまた、広範にわたる応用(例えば、塗装および被覆)において有用な、ATRPによって調製されるポリマーを記載する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明に従って、水性媒体中に分散された樹脂製相を含む熱硬化性組成物であって、該樹脂製相が、以下の成分(a)および(b)を含有する熱硬化性組成物が提供される:
(a) 少なくとも1つのラジカル移動可能な基を有する開始剤の存在下で、原子移動ラジカル重合によって調製された、非ゲル化活性水素基含有ポリマーであって、ここで該ポリマーが、以下のポリマー鎖構造のうちの少なくとも1つを含有する、ポリマー:
【0013】
【化5】

ここで、j、k、l、qおよびxは各々、独立して、該ポリマーが少なくとも250の数平均分子量(ポリスチレン標準を使用するゲル透過クロマトグラフィーによって決定されるように)を有するように各構造について選択され;Gは、少なくとも1つのエチレン性不飽和のラジカル重合可能なモノマーの残基であり、該残基は、オニウム塩の基を含有し;Aは、少なくとも1つのエチレン性不飽和のラジカル重合可能なモノマーの残基であり、該残基は、オニウム塩の基を含有せず、そして活性水素基を含有し;そしてMは、少なくとも1つのエチレン性不飽和のラジカル重合可能なモノマーの残基であり、そしてGおよびAとは異なる;ならびに
(b) (a)の該活性水素基と反応性である少なくとも2つの官能基を有する硬化剤。
【0014】
上記熱硬化性組成物を使用して、電気回路におけるカソードとして働く導電性基板をエレクトロコーティングする方法がさらに提供される。これらの方法によってコーティングされる基板もまた、提供される。
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、さらに以下を提供する。
(項目1) 水性媒体中に分散された樹脂製相を含む熱硬化性組成物であって、該樹脂製相が、以下の成分(a)および(b):
(a) 少なくとも1つのラジカル移動可能な基を有する開始剤の存在下で、原子移動ラジカル重合によって調製された、オニウム塩の基を含有する非ゲル化活性水素基含有ポリマーであって、ここで該ポリマーが、以下のポリマー鎖構造のうちの少なくとも1つを含有する、ポリマー:
【化1】

ここで、j、k、l、qおよびxは各々、独立して、該ポリマーが少なくとも1,000の数平均分子量および2.5未満の多分散性指数を有するように各構造について選択され;Gは、少なくとも1つのエチレン性不飽和のラジカル重合可能なモノマーの残基であり、該残基は、オニウム塩の基を含有し;Aは、少なくとも1つのエチレン性不飽和のラジカル重合可能なモノマーの残基であり、該残基は、オニウム塩の基を含有せず、そして活性水素基を含有し;そしてMは、少なくとも1つのエチレン性不飽和のラジカル重合可能なモノマーの残基であり、そしてGおよびAとは異なる;ならびに
(b) (a)の該活性水素基と反応性である少なくとも2つの官能基を有する硬化剤、
を含有する、熱硬化性組成物。
(項目2) 前記活性水素基含有ポリマーが、1,000〜30,000の範囲の数平均分子量を有する、項目1に記載の熱硬化性組成物。
(項目3) jおよびlが独立して、少なくとも1かつ50までであり、そしてkが0および200までであり、qが少なくとも1かつ100までであり、そしてxが少なくとも1かつ10までである、項目1に記載の熱硬化性組成物。
(項目4) xが1〜3の範囲内である、項目1に記載の熱硬化性組成物。
(項目5) 前記ポリマーが、1,000〜15,000グラム/当量のオニウム塩の基当量を有する、項目1に記載の熱硬化性組成物。
(項目6) Mが、ビニルモノマー、アリルモノマー、およびオレフィンのうちの少なくとも1つから誘導される残基である、項目1に記載の熱硬化性組成物。
(項目7) Mが、アルキル基中に1〜20個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、ビニル芳香族モノマーおよびオレフィンのうちの少なくとも1つから誘導される、項目1に記載の熱硬化性組成物。
(項目8) Aが、ヒドロキシアルキル基中に1〜4個の炭素原子を含有する(メタ)アクリル酸のヒドロキシ−アルキルエステルのうちの少なくとも1つから誘導される、項目1に記載の熱硬化性組成物。
(項目9) Aが、ヒドロキシ−エチル(メタ)アクリレート、およびヒドロキシ−プロピル(メタ)アクリレートのうちの少なくとも1つから誘導される、項目1に記載の熱硬化性組成物。
(項目10) 前記Gのオニウム塩が、4級アンモニウム塩および3級スルホニウム塩からなるクラスの少なくとも1つから選択される、項目1に記載の熱硬化性組成物。
(項目11) Gが、少なくとも1つのエポキシ基含有のエチレン性不飽和モノマーから誘導され、該モノマーが、重合後にアミン酸塩と後反応している、項目1に記載の熱硬化性組成物。
(項目12) Gが、少なくとも1つのエポキシ基含有モノマーから誘導され、重合後に酸の存在下でスルフィドと後反応している、項目1に記載の熱硬化性組成物。
(項目13) 項目1に記載の熱硬化性組成物であって、前記活性水素基含有ポリマーが、1,000〜30,000の範囲の数平均分子量を有する実質的に直鎖状のポリマーであり、そしてここで、
Gが、重合後にアミン酸塩と後反応した、少なくとも1つのエポキシ基含有モノマーから誘導され;
Aが、アルキル基中に1〜4個の炭素原子を有する少なくとも1つのヒドロキシ−アルキル(メタ)アクリレートから誘導され;そして
Mが、(メタ)アクリレートモノマー、ビニル芳香族モノマー、およびオレフィンのうちの少なくとも1つから誘導される、
熱硬化性組成物。
(項目14) 前記ポリマーが、1,000〜15,000グラム/当量の範囲のオニウム塩の基当量を有する、項目13に記載の熱硬化性組成物。
(項目15) 前記ポリマーが、オニウム塩の基形成前に、1.5未満の多分散性指数を有する、項目13に記載の熱硬化性組成物。
(項目16) 項目1に記載の熱硬化性組成物であって、前記開始剤が、直鎖または分枝鎖の脂肪族化合物、多環式芳香族化合物、複素環式化合物、スルホニル化合物、スルフェニル化合物、カルボン酸のエステル、ポリマー性化合物およびそれらの混合物からなる群から選択され、これらの各々は、少なくとも1つのラジカル移動可能なハロ基を有する、熱硬化性組成物。
(項目17) 項目16に記載の熱硬化性組成物であって、前記開始剤が、ハロメタン、メチレンジハライド、ハロホルム、カーボンテトラハライド、メタンスルホニルハライド、p−トルエンスルホニルハライド、メタンスルフェニルハライド、p−トルエンスルフェニルハライド、1−フェニルエチルハライド、2−ハロプロピオニトリル、2−ハロ−C〜C−カルボン酸のC〜C−アルキルエステル、p−ハロメチルスチレン、モノヘキサキス(α−ハロ−C〜C−アルキル)ベンゼン、およびジエチルハロマロネートのうちの少なくとも1つから選択される、熱硬化性組成物。
(項目18) 項目1に記載の熱硬化性組成物であって、前記活性水素基含有ポリマーが、以下の構造のうちの少なくとも1つを有し:
【化2】

ここで、各構造について、
xは、少なくとも1かつ10までであり;
jおよびlは、各々独立して、1から50までであり、kは、0〜200であり、ただし、(j+k+l)は、0より大きく;そしてq、pおよびzは、少なくとも1であり;
Qは、G、MおよびAのいずれかの少なくとも1つであり、ただし、Qがオレフィンから誘導される場合、隣接モノマー残基は、オレフィンから誘導されず;
φは、前記開始剤の残基であるか、または該開始剤の残基から誘導され、そして前記ラジカル移動可能な基を含有せず;そして
Tは、該開始剤のラジカル移動可能な基であるか、または該開始剤のラジカル移動可能な基から誘導される、
熱硬化性組成物。
(項目19) 前記活性水素基含有ポリマーが、1,000〜30,000の数平均分子量を有し、そして2.5未満の多分散性指数を有する、項目18に記載の熱硬化性組成物。
(項目20) xが1〜3の範囲内で各構造について選択される、項目18に記載の熱硬化性組成物。
(項目21) Tがハライドである、項目18に記載の熱硬化性組成物。
(項目22) 前記開始剤が、クロロホルム、四塩化炭素、p−トルエンスルホニルハライド、1−フェニルエチルハライド、2−ハロプロピオニトリル、2−ハロ−C〜C−カルボン酸のC〜C−アルキルエステル、p−ハロメチルスチレン、モノヘキサキス(α−ハロアルキル)ベンゼンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、項目18に記載の熱硬化性組成物。
(項目23) Tが脱ハロゲン化後反応から誘導される、項目22に記載の熱硬化性組成物。
(項目24) 前記脱ハロゲン化後反応が、前記活性水素基含有ポリマーを、制限ラジカル重合可能エチレン性不飽和化合物と接触させる工程を包含する、項目23に記載の熱硬化性組成物。
(項目25) 前記制限ラジカル重合可能エチレン性不飽和化合物が、1,1−ジメチルエチレン、1,1−ジフェニルエチレン、イソプロペニルアセテート、α−メチルスチレン、1,1−ジアルコキシオレフィン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目24に記載の熱硬化性組成物。
(項目26) 前記活性水素基含有ポリマーが、直鎖ポリマー、分枝ポリマー、超分枝ポリマー、スターポリマー、グラフトポリマーおよびそれらの混合物からなる群から選択される、項目1に記載の熱硬化性組成物。
(項目27) 成分(a)が実質的に直鎖状のポリマーであり;そして(a)の各構造について、jおよびlが独立して少なくとも1かつ50までであり、qが少なくとも1かつ100までであり;xが少なくとも1かつ10までであり;pが少なくとも1かつ200までであり;そしてzが1〜2である、項目18に記載の熱硬化性組成物。
(項目28) 項目1に記載の熱硬化性組成物であって、ここで
成分(a)が25〜99重量%の範囲の量で存在し、そして
成分(b)が1〜75重量%の範囲の量で存在し、
ここで、重量%が(a)および(b)の総重量に基づく、熱硬化性組成物。
(項目29) カソードおよびアノードを備える電気回路において、該カソードとして働く導電性基板をエレクトロコーティングする方法であって、該カソードおよびアノードは水性エレクトロコーティング組成物中に浸漬され、該方法は、該カソードとアノードとの間に電流を通し、該エレクトロコーティング組成物の該基板上への実質的な連続フィルムとしての堆積を引き起こす工程を包含し、該水性エレクトロコーティング組成物は以下(a)および(b):
(a) 少なくとも1つのラジカル移動可能な基を有する開始剤の存在下で、原子移動ラジカル重合によって調製された、オニウム塩の基を含有する非ゲル化活性水素基含有ポリマーであって、ここで該ポリマーが、以下のポリマー鎖構造のうちの少なくとも1つを含有する、ポリマー:
【化3】

ここで、j、k、l、qおよびxは各々、独立して、該ポリマーが少なくとも1,000の数平均分子量および2.5未満の多分散性指数を有するように各構造について選択され;Gは、少なくとも1つのエチレン性不飽和のラジカル重合可能なモノマーの残基であり、該残基は、オニウム塩の基を含有し;Aは、少なくとも1つのエチレン性不飽和のラジカル重合可能なモノマーの残基であり、該残基は、オニウム塩の基を含有せず、そして活性水素基を含有し;そしてMは、少なくとも1つのエチレン性不飽和のラジカル重合可能なモノマーの残基であり、そしてGおよびAとは異なる;ならびに
(b) (a)の該活性水素基と反応性である少なくとも2つの官能基を有する硬化剤、
を含有する、方法。
(項目30) 前記活性水素基含有ポリマーが、1,000〜30,000の範囲の数平均分子量を有する、項目29に記載の方法。
(項目31) jおよびlが独立して、少なくとも1かつ50までであり、そしてkが0および200までであり、qが少なくとも1かつ100までであり、そしてxが少なくとも1かつ10までである、項目29に記載の方法。
(項目32) xが1〜3の範囲内である、項目29に記載の方法。
(項目33) 前記ポリマーが、1,000〜15,000グラム/当量のオニウム塩の基当量を有する、項目29に記載の方法。
(項目34) Mが、ビニルモノマー、アリルモノマー、およびオレフィンのうちの少なくとも1つから誘導される残基である、項目29に記載の方法。
(項目35) Mが、アルキル基中に1〜20個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、ビニル芳香族モノマーおよびオレフィンのうちの少なくとも1つから誘導される、項目29に記載の方法。
(項目36) Aが、ヒドロキシアルキル基中に1〜4個の炭素原子を含有する(メタ)アクリル酸のヒドロキシ−アルキルエステルのうちの少なくとも1つから誘導される、項目29に記載の方法。
(項目37) Aが、ヒドロキシ−エチル(メタ)アクリレート、およびヒドロキシ−プロピル(メタ)アクリレートのうちの少なくとも1つから誘導される、項目29に記載の方法。
(項目38) 前記Gのオニウム塩が、4級アンモニウム塩および3級スルホニウム塩の
うちの少なくとも1つである、項目29に記載の方法。
(項目39) Gが、少なくとも1つのエポキシ基含有のエチレン性不飽和モノマーから誘導され、該モノマーが重合後に3級アミン塩と後反応している、項目38に記載の方法。
(項目40) Gが、少なくとも1つのエポキシ基含有モノマーから誘導され、該モノマーが重合後に酸の存在下でスルフィドと後反応している、項目38に記載の方法。
(項目41) 項目29に記載の方法であって、前記活性水素基含有ポリマーが、1,000〜30,000の範囲の数平均分子量を有する実質的に直鎖状のポリマーであり、そしてここで、
Gが、重合後に3級アミン塩と後反応し、4級アンモニウム塩を形成する、少なくとも1つのエポキシ基含有モノマーから誘導され;
Aが、アルキル基中に1〜4個の炭素原子を有する少なくとも1つのヒドロキシ−アルキル(メタ)アクリレートから誘導され;そして
Mが、(メタ)アクリレートモノマー、ビニル芳香族モノマー、およびオレフィンのうちの少なくとも1つから誘導される、方法。
(項目42) 前記ポリマーが、1,000〜15,000グラム/当量の範囲のオニウム塩の基当量を有する、項目41に記載の方法。
(項目43) 前記ポリマーが、オニウム塩の基形成前に、1.5未満の多分散性指数を有する、項目41に記載の方法。
(項目44) 項目29に記載の方法であって、前記開始剤が、直鎖または分枝鎖の脂肪族化合物、多環式芳香族化合物、複素環式化合物、スルホニル化合物、スルフェニル化合物、カルボン酸のエステル、ポリマー性化合物およびそれらの混合物からなる群から選択され、これらの各々は、少なくとも1つのラジカル移動可能なハロ基を有する、方法。
(項目45) 項目44に記載の方法であって、前記開始剤が、ハロメタン、メチレンジハライド、ハロホルム、カーボンテトラハライド、メタンスルホニルハライド、p−トルエンスルホニルハライド、メタンスルフェニルハライド、p−トルエンスルフェニルハライド、1−フェニルエチルハライド、2−ハロプロピオニトリル、2−ハロ−C〜C−カルボン酸のC〜C−アルキルエステル、p−ハロメチルスチレン、モノヘキサキス(α−ハロ−C〜C−アルキル)ベンゼン、およびジエチルハロマロネートのうちの少なくとも1つから選択される、方法。
(項目46) 項目29に記載の方法であって、前記活性水素基含有ポリマーが、以下の構造のうちの少なくとも1つを有し:
【化4】

ここで、各構造について、
xは、少なくとも1かつ10までであり;
jおよびlは、各々独立して、1から50までであり、kは、0〜200であり、ただし、(j+k+l)は、0より大きく;そしてq、pおよびzは、少なくとも1であり;
Qは、G、MおよびAのいずれかの少なくとも1つであり、ただし、Qがオレフィンから誘導される場合、隣接モノマー残基は、オレフィンから誘導されず;
φは、前記開始剤の残基であるか、または該開始剤の残基から誘導され、そして前記ラジカル移動可能な基を含有せず;そして
Tは、該開始剤のラジカル移動可能な基であるか、または該開始剤のラジカル移動可能
な基から誘導される、方法。
(項目47) 前記活性水素基含有ポリマーが、1,000〜30,000の数平均分子量を有し、そして2.5未満の多分散性指数を有する、項目46に記載の方法。
(項目48) xが1〜3の範囲内で各構造について選択される、項目46に記載の方法。
(項目49) Tがハライドである、項目46に記載の方法。
(項目50) 前記開始剤が、クロロホルム、四塩化炭素、p−トルエンスルホニルハライド、1−フェニルエチルハライド、2−ハロプロピオニトリル、2−ハロ−C〜C−カルボン酸のC〜C−アルキルエステル、p−ハロメチルスチレン、モノヘキサキス(α−ハロアルキル)ベンゼンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、項目49に記載の方法。
(項目51) Tが脱ハロゲン化後反応から誘導される、項目50に記載の方法。
(項目52) 前記脱ハロゲン化後反応が、前記活性水素基含有ポリマーを、制限ラジカル重合可能エチレン性不飽和化合物と接触させる工程を包含する、項目51に記載の方法。
(項目53) 前記制限ラジカル重合可能エチレン性不飽和化合物が、1,1−ジメチルエチレン、1,1−ジフェニルエチレン、イソプロペニルアセテート、α−メチルスチレン、1,1−ジアルコキシオレフィン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目52に記載の方法。
(項目54) 前記活性水素基含有ポリマーが、直鎖ポリマー、分枝ポリマー、超分枝ポリマー、スターポリマー、グラフトポリマーおよびそれらの混合物からなる群から選択される、項目29に記載の方法。
(項目55) 成分(a)が実質的に直鎖状のポリマーであり;そして(a)の各構造について、jおよびlが独立して少なくとも1かつ50までであり、qが少なくとも1かつ100までであり;xが少なくとも1かつ10までであり;pが少なくとも1かつ200までであり;そしてzが1〜2である、項目29に記載の方法。
(項目56) 項目29に記載の方法であって、ここで
成分(a)が25〜99重量%の範囲の量で存在し、そして
成分(b)が1〜75重量%の範囲の量で存在し、
ここで、重量%が(a)および(b)の総重量に基づく、方法。
【0015】
操作例以外において、または他に指示しない場合、発明の詳細な説明および特許請求の範囲において使用される、成分の量を表現する全ての数、反応条件などは、用語「約」によって、全ての場合において改変されるものとして理解されるべきである。本明細書中に使用される、用語「ポリマー」は、オリゴマーならびにホモ重合体(すなわち、単一のモノマー種から作製されるポリマー)とコポリマー(すなわち、2以上のモノマー種から作製されるポリマー)の両方をいうことを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
上記のように、本発明の熱硬化性組成物に使用される、オニウム塩基を含む活性水素基含有ポリマーは、少なくとも1つのラジカル移動可能基を有する開始剤の存在下で、原子移動ラジカル重合(ATRP)によって調製される非ゲル化ポリマーである。
【0017】
ATRP法は、「リビング重合(living polymerization)」(すなわち、最小の連鎖移動および最小の連鎖停止で増える、鎖成長重合)として記載される。ATRPによって調製されるポリマーの分子量は、反応物の化学量論(すなわち、モノマー(単数または複数)および開始剤(単数または複数)の初期濃度)によって制御され得る。さらに、ATRPはまた、例えば、狭い分子量分布(すなわち、2.5未満のPDI値)およびうまく定義されたポリマー鎖構造(例えば、ブロックコポリマーおよび交
互コポリマー)を包含する特徴を有する、ポリマーを提供する。
【0018】
ATRPプロセスは、一般に、以下の工程を包含するとして説明され得る:開始系の存在下で、1つ以上のラジカル重合可能モノマーを重合する工程;ポリマーを形成する工程;および形成されたポリマーを必要に応じて単離する工程。開始系は、以下を含む:ラジカル移動可能原子または基を有する開始剤;遷移金属化合物(すなわち、触媒)(これは、上記開始剤を用いる可逆酸化還元サイクルに関与する);およびリガンド(これは、遷移金属化合物と配位する)。ATRPプロセスは、上述の米国特許第5,789,487号および同第5,763,548号ならびに国際特許公開WO97/18247にさらに詳細に記載される。
【0019】
「非ゲル化」により意味されるのは、ポリマーが実質的に架橋を含まず、そして適切な溶媒に溶解された場合に、固有粘度を有することである。ポリマーの固有粘度は、その分子量の指標である。他方、ゲル化ポリマーは、本質的に無限大の分子量を有するため、測定するのに高すぎる固有粘度を有する。
【0020】
本発明の活性水素基含有ポリマーの調製において、開始剤は、直鎖または分枝の脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物、多環式芳香族化合物、複素環式化合物、スルホニル化合物、スルフェニル化合物、カルボン酸のエステル、ポリマー性化合物およびそれらの混合物からなる群から選択され得、これら各々は、少なくとも1つのラジカル移動可能基(典型的に、ハロ基)を有する。開始剤はまた、官能基(例えば、グリシジル基のようなオキシラニル(oxyranyl)基)で置換され得る。さらなる有用な開始剤およびそれらと会合し得る種々のラジカル移動可能基は、国際特許公開WO97/18247の第42〜45頁に記載される。
【0021】
ラジカル移動可能基を有するポリマー性化合物(オリゴマー化合物を含む)は、開始剤として使用され得、そして本明細書中で「マクロ開始剤(macroinitiator)」として言及される。マクロ開始剤の例としては、カチオン重合によって調製され、そして末端ハライド(例えば、クロリド)を有するポリスチレン、ならびに2−(2−ブロモプロピオノキシ(bromopropionoxy)エチルアクリレートおよび1つ以上のアルキル(メト)アクリレート(例えば、ブチルアクリレート)のポリマー(従来の非リビングラジカル重合によって調製される)が挙げられるが、これらに限定されない。マクロ開始剤は、グラフトポリマー(例えば、グラフト化されたブロックコポリマーおよびくし型(comb)コポリマー)を調製するための、ATRPプロセスにおいて使用され得る。マクロ開始剤のさらなる議論は、国際特許公開WO98/01480の第31〜38頁に見出される。
【0022】
好ましくは、開始剤は、ハロメタン、メチレンジハライド、ハロホルム(haloform)、カーボンテトラハライド、メタンスルホニルハライド、p−トルエンスルホニルハライド、メタンスルフェニルハライド、p−トルエンスルフェニルハライド、1−フェニルエチルハライド、2−ハロプロピオニトリル、2−ハロ−C〜Cカルボン酸のC〜Cアルキルエステル、p−ハロメチルスチレン、モノ−ヘキサキス(α−ハロ−C〜Cアルキル)ベンゼン、ジエチルハロメチルマロネート、およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。特に好ましい開始剤は、ジエチル−2−ブロモ−2−メチルマロネートである。
【0023】
本発明の活性水素基含有ポリマーの調製において使用され得る触媒は、開始剤および成長ポリマー鎖を用いる、酸化還元サイクルに関与し得る任意の遷移金属化合物を含む。遷移金属化合物がポリマー鎖との直接炭素−金属結合を形成しないことが好ましい。本発明において有用である遷移金属触媒は、以下の一般式:
TMn+
によって表され得る。ここで、TMは、遷移金属であり、nは、0〜7の値を有する遷移金属上の形式電荷であり、そしてXは、対イオンまたは共有結合成分である。遷移金属(TM)の例としては、Cu、Au、Ag、Hg、Pd、Pt、Co、Mn、Ru、Mo、Nb、FeおよびZnが挙げられるが、これらに限定されない。Xの例としては、ハロゲン、ヒドロキシ、酸素、C〜C−アルコキシ,シアノ、シアナト(cyanato)、チオシアナト、およびアジドが挙げられるが、これらの限定されない。好ましい遷移金属は、Cu(I)であり、そしてXは、好ましくは、ハロゲン(例えば、クロリド)である。従って、遷移金属触媒の好ましいクラスは、ハロゲン化銅(例えば、Cu(I)Cl)である。遷移金属触媒が少量(例えば、1モル%)の酸化還元結合体(例えば、Cu(II)Cl(Cu(I)Clが使用される場合))を含むこともまた好ましい。本発明の活性水素基含有ポリマーの調製において有用なさらなる触媒は、国際特許公開WO97/18247の第45および46頁に記載される。酸化還元結合体は、国際特許公開WO97/18247の第27〜33頁に記載される。
【0024】
本発明の活性水素基含有ポリマーの調製において使用され得るリガンドは、1つ以上の窒素、酸素、リンおよび/またはイオウ原子(これらは、遷移金属触媒化合物に例えばσおよび/またはπ結合を介して配位され得る)を有する化合物が挙げられるが、これらに限定されない。有用なリガンドのクラスとして以下が挙げられるが、これらに限定されない:非置換および置換のピリジンおよびビピリジン;ポルフィリン;クリプタンド;クラウンエーテル;例えば、18−クラウン−6;ポリアミン、例えば、エチレンジアミン;グリコール、例えば、アルキレングリコール、例えば、エチレングリコール;一酸化炭素;ならびに配位モノマー、例えば、スチレン、アクリロニトリルおよびヒドロキシアルキル(メト)アクリレート。リガンドの好ましいクラスは、置換されたビピリジン、例えば、4,4’−ジアルキル−ビピリジルである。本発明の活性水素基含有ポリマーの調製において使用され得るさらなるリガンドは、国際特許公開WO97/18247の第46〜53頁に記載される。
【0025】
本発明の活性水素基含有ポリマーの調製において、開始剤、遷移金属化合物およびリガンドの量ならびに相対比は、ATRPが最も効果的に行われるものである。使用される開始剤の量は、広範に変化し得、そして典型的に反応媒体中に10−4モル/リットル(M)〜3M(例えば、10−3M〜10−1M)の濃度で存在する。活性水素基含有ポリマーの分子量は、開始剤およびモノマー(単数または複数)の相対濃度に直接関連し得、開始剤のモノマーに対するモル比は、ポリマー調製において重要な因子である。開始剤のモノマーに対するモル比は、典型的に、10−4:1から0.5:1(例えば、10−3:1から5×10−2:1)の範囲内である。
【0026】
本発明の活性水素基含有ポリマーの調製において、遷移金属化合物の開始剤に対するモル比は、典型的に、10−4:1から10:1(例えば、0.1:1から5:1)の範囲内である。リガンドの遷移金属化合物に対するモル比は、典型的に、0.1:1から100:1(例えば、0.2:1から10:1)の範囲内である。
【0027】
本発明の熱硬化性組成物において有用である活性水素基含有ポリマーは、溶媒の非存在下で(すなわち、塊状重合プロセスによって)調製され得る。一般に、これらのポリマーは、溶媒(典型的に、水および/または有機溶媒)の存在下で調製される。有用な有機溶媒のクラスとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:エーテル、環式エーテル、C〜C10アルカン、C〜Cシクロアルカン、芳香族炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、アミド、ニトリル、スルホキシド、スルホンおよびそれらの混合物。好ましいクラスの溶媒は、芳香族炭化水素であり、その特に好ましい例には、キシレン、およびSOLVESSO 100(芳香族炭化水素溶媒のブレンド(Exxon Che
mical America入手可能))が挙げられる。超臨界溶媒(例えば、CO、C〜Cアルカンおよびフルオロカーボン)がまた、使用され得る。さらなる溶媒は、国際特許公開WO97/18247の第53〜56頁にさらに詳細に記載される。
【0028】
活性水素基含有ポリマーは、典型的に、25℃〜140℃(例えば、50℃〜100℃)の範囲内の反応温度、ならびに1〜100気圧(典型的に、1気圧)の範囲内の圧力で調製される。原子移動ラジカル重合は、典型的に、24時間未満(例えば、1時間と8時間との間)で完了する。
【0029】
活性水素基含有ポリマーは、典型的に、ポリマーの全重量を基準にして、少なくとも50重量%、好ましくは、少なくとも65重量%の固体を有する(1gのサンプルを、110℃のオーブンに60分間入れることによって測定)。
【0030】
本発明の熱硬化性組成物において使用する前に、ATRP遷移金属触媒およびその関連のリガンドは、典型的に、活性水素基含有ポリマーから分離または除去される。ATRP触媒の除去は、公知の方法(例えば、触媒結合剤の、ポリマー、溶媒および触媒の混合物への添加、続く濾過、を包含する)を用いて達成される。適切な触媒結合剤の例としては、例えば、アルミナ、シリカ、クレイ、またはそれらの組み合わせが挙げられる。ポリマー、溶媒およびATRP触媒の混合物は、触媒結合剤の床(bed)を通過され得る。あるいは、ATRP触媒は、インサイチュで酸化され得、そして活性水素基含有ポリマー中に保持され得る。
【0031】
活性水素基含有ポリマーは、直鎖ポリマー、分枝鎖ポリマー、超分枝鎖ポリマー、スターポリマー、グラフトポリマーおよびそれらの混合物からなる群から選択され得る。ポリマーの形状または全体的構成は、その調製において使用される開始剤およびモノマーの選択によって制御され得る。直鎖活性水素基含有ポリマーは、1または2つのラジカル移動可能基を有する開始剤(例えば、ジエチルハロメチルマロネートおよびα,α’−ジクロロキシレン)を使用することによって調製され得る。分枝活性水素基含有ポリマーは、分枝モノマー(すなわち、ラジカル移動可能基または1より多いエチレン性不飽和ラジカル重合可能基を含むモノマー(例えば、2−(2−ブロモプロピオノキシ)エチルアクリレート、p−クロロメチルスチレンおよびジエチレングリコールビス(メタクリレート)))を使用することによって調製され得る。超分枝鎖活性水素基含有ポリマーは、使用される分枝モノマーの量を増加させることによって調製され得る。
【0032】
活性水素基含有スターポリマーは、3以上のラジカル移動可能基を有する開始剤(例えば、ヘキサキス(ブロモメチル)ベンゼン)を使用することによって調製され得る。当業者に公知のように、スターポリマーは、コア−アームまたはアーム−コア法によって調製され得る。コア−アーム法において、スターポリマーは、多官能性開始剤(例えば、ヘキサキス(ブロモメチル)ベンゼン)の存在下でモノマーを重合させることによって調製される。類似の組成物および構成のポリマー鎖またはアームは、コア−アーム法において、開始剤コアから成長する。
【0033】
アーム−コア法において、このアームは、コアとは別個に調製され、必要に応じて、異なる組成物、構成、分子量およびPDIを有し得る。例えば、アームは、異なるヒドロキシル当量を有し得、あるものは任意のヒドロキシル官能基なしで調製され得る。アームの調製の後に、これらは、コアに接続される。例えば、アームは、グリシジル官能性開始剤を使用して、ATRPによって調製され得る。次いで、これらのアームは、エポキシドと反応性の3個以上の活性水素基(例えば、カルボン酸またはヒドロキシル基)を有するコアに接続され得る。コアは、クエン酸のような分子であっても良く、またはATRPによって調製され、例えば、カルボン酸、チオールまたはヒドロキシル基のような末端反応性
水素含有基を有するコア−アームスターポリマーであっても良い。コアの反応性水素基は、グリシジル官能性開始剤の残基と、または例えば、アームの骨格に沿ったエポキシ官能基と反応し得る。
【0034】
ATRPアームコアスターポリマーにおけるコアとして使用され得るATRP法によって調製されるコアの例は、以下のように記載される。第1段階において、6モルのメチルメタクリレートが、1モルの1,3,5−トリス(ブロモメチル)ベンゼンの存在下で重合される。第2段階において、3モルの2−ヒドロキシエチルメタクリレートが反応混合物に供給される。2−ヒドロキシエチルメタクリレートの末端残基を有するコアが単離され、次いで、第3段階において、環状無水物(例えば、無水コハク酸)と反応する。最終段階において、異なるまたな同一の組成を有する3個のエポキシ官能性ポリマーアーム(このうち少なくとも1つが、ATRPによって調製される)が、コアのカルボン酸基とアームのエポキシ官能基との間の反応によって、カルボン酸末端コアに連結される。
【0035】
グラフトポリマーの形態の活性水素基含有ポリマーは、本明細書中で前述されたように、マクロ開始剤を使用して調製され得る。グラフト、分枝、超分枝およびスターポリマーは、国際特許公報WO97/18247の頁79〜91にさらに詳細に記載される。
【0036】
本発明に有用な活性水素基含有ポリマーの多分散性指数(PDI)は、オニウム塩の基形成前で、典型的に、2.5未満であり、好ましくは1.8未満であり、より好ましくは、1.5未満である。本明細書中および特許請求の範囲で使用されるように、「多分散性指数」は、以下の等式により決定される:(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))。単分散(monodisperse)ポリマーは、1.0のPDIを有する。さらに、本明細書で使用されるように、MnおよびMwは、ポリエチレン標準を使用するゲルパーミエーションクロマトグラフィーから決定される。
【0037】
一般的に、ポリマー鎖構造I〜Xは、ともにまたは別個に、活性水素基含有ポリマーのポリマー鎖または骨格、構成を含む1つ以上の構造を表す。一般的なポリマー鎖構造I〜Xの添え字j、kおよびlは、それぞれ、残基のG、MおよびAブロックに存在する残基の平均数を表す。添え字xは、M、AおよびGブロックのセグメント(すなわち、x−セグメント)の数を表す。添え字j、kおよびlはそれぞれ、各x−セグメントについて同じであっても異なっていても良い。
【0038】
より詳細には、構造VII〜Xは、以下のいずれかを含むポリマー鎖セグメント構造を表し得る:(1)MおよびA;MおよびG;AおよびM;ならびにGおよびMそれぞれの交互ブロックから誘導される残基の交互ブロック;または、(2)MのブロックおよびAのブロック;MのブロックおよびGのブロック;AのブロックおよびMのブロック;ならびにGのブロックおよびMのブロックそれぞれから誘導される残基のジブロック。構造VII〜Xが、残基の交互ブロックを含むポリマー鎖セグメント構造を表す場合、これらの構造の下付文字qは、各x−セグメントに含まれる交互ブロックの平均数を表す。あるいは、構造VII〜Xが、残基のジブロックを含むポリマー鎖セグメント構造を表す場合、これらの構造についての下付文字qは、各x−セグメントに含まれるジブロックの平均数を表す。上で議論したように、下付文字j、k、およびlおよびqについての値は、各セグメントについて同じであっても異なっていても良い。
【0039】
以下は、一般的なポリマー鎖構造I〜Xによって示される種々のポリマー構成を示すために提示される。
【0040】
xが1であり、jが2であり、kが4であり、そしてlが3である場合、このポリマー鎖構造は、以下である:
−G−G−M−M−M−M−A−A−A−;
xが1であり、jが1であり、kが3であり、そしてlが1である場合、このポリマー鎖構造は、以下である:
−G−M−M−M−A−;
xが1であり、jが1であり、kが1であり、そしてlが3であり、qが4である場合、このポリマー鎖構造は、以下である:
−M−G−M−G−M−G−M−G−A−A−A−;そして
xが4であり、jが0〜3であり、kが0〜3であり、そしてlが0〜3である場合、このポリマー鎖構造は、以下のポリマー鎖構造を有する、G、MおよびA残基のグラジエントブロックを示し得る:
−G−G−G−M−M−A−G−G−M−M−M−A−G−M−M−M−A−A−M−M−M−A−A−A−。
【0041】
グラジエントコポリマーは、ATRP法によって2つ以上のモノマーから調製され得、ポリマー骨格に沿って、次第に、そして対称的かつ予測可能な様式で変化する構成を有するように一般的に記載される。グラジエントコポリマーは、ATRP法により、(a)重合過程の間、反応媒体に供給されるモノマー比を変えることによって、(b)異なる重合速度を有するモノマーを含むモノマー供給を使用して、または(c)(a)および(b)の組み合わせで調製され得る。グラジエントコポリマーは、国際特許公報WO97/18247の頁72〜78にさらに詳細に記載される。
【0042】
一般的なポリマー鎖構造I〜Xについてさらに関連して、Mは、オニウム塩基を有さない1つ以上のタイプの残基を表し、GおよびAとは異なり、kは、x−セグメント内のM残基のブロック(M−ブロック)当たりに存在するM残基の平均合計数を表す。一般構造I〜Xの−(M)−部分は、(1)単一のタイプのM残基のホモブロック、(2)2つのタイプのM残基の交互ブロック、(3)2以上のタイプのM残基のポリブロック、または(4)2以上のタイプのM残基のグラジエントブロックを表す。
【0043】
また、一般的なポリマー鎖構造I〜Xに関連して、Gは、オニウム塩基を有する1つ以上のタイプの残基を表し、jは、G残基のブロック(Gブロック)当たりに存在するG残基の合計数の平均を表す。従って、ポリマー鎖構造I〜Xの−(G)−部分は、上で提供される−(M)−部分と同じ様式で記載され得る。
【0044】
同様に、一般的なポリマー鎖構造I〜Xに関連して、Aは、活性水素基(通常ヒドロキシル)を含む1つ以上のタイプの残基を表し、lは、A残基のブロック(Aブロック)当たりに存在するA残基の合計数の平均を表す。従って、ポリマー鎖構造I〜Xの−(A)−部分は、上で提供される−(M)−部分と同じ様式で記載され得る。
【0045】
一般的なポリマー鎖構造I〜Xの残基Mは、少なくとも1つのエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーから誘導される。本明細書中および特許請求の範囲に使用される場合、「エチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマー」などの用語は、ビニルモノマー、アリルモノマー、オレフィンおよび他のラジカル重合可能なエチレン性不飽和モノマーを含むことを意味する。
【0046】
Mが誘導され得るビニルモノマーのクラスには、(メト)アクリレート、ビニル芳香族モノマー、ビニルハライドおよびカルボン酸のビニルエステルが挙げられるがこれらには限定されない。本明細書中および特許請求の範囲に使用される場合、「(メト)アクリレート」などの用語は、メタクリレートおよびアクリレートの両方を意味する。好ましくは、残基Mは、アルキル基において1〜20の炭素原子を有するアルキル(メト)アクリレート、ビニル芳香族モノマーおよびオレフィンの少なくとも1つから誘導される。残基M
が誘導され得る、アルキル基において1〜20の炭素原子を有するアルキル(メト)アクリレートの具体例には、以下が挙げられるが、これには限定されない:メチル(メト)アクリレート、エチル(メト)アクリレート、イソプロピル(メト)アクリレート、ブチル(メト)アクリレート、tert−ブチル(メト)アクリレート、2−エチルへキシル(メト)アクリレート、ラウリル(メト)アクリレート、イソボルニル(isobornyl)(メト)アクリレート、イソブチル(メト)アクリレート、シクロへキシル(メト)アクリレート、および3,3,5−トリメチルシクロへキシル(メト)アクリレート。
【0047】
残基Mはまた、1個より多い(メト)アクリレート基を有するモノマー(例えば、無水(メト)アクリル酸およびジエチレングリコールビス((メト)アクリレート))から選択され得る。残基Mはまた、分枝モノマーとして働き得る、ラジカル移動可能基を含むアルキル(メト)アクリレート(例えば、2−(2−ブロモプロピオノキシ)エチルアクリレート)から選択され得る。
【0048】
Mが誘導され得るビニル芳香族性モノマーの具体的な例には、以下が挙げられるが、これには限定されない:スチレン、p−クロロメチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレンおよびジビニルナフタレン。
【0049】
Mが誘導され得るビニルハライドには以下が挙げられるが、これには限定されない:ビニルクロリドおよびビニリデンフルオリド。Mが誘導され得るカルボン酸のビニルエステルには、以下が挙げられるが、これには限定されない:ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート、ビニル3,4−ジメトキシベンゾエートなど。
【0050】
本明細書中および特許請求の範囲に使用される場合、「オレフィン」などの用語は、石油留分を分解することによって得られるような、1つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪族炭化水素を意味する。Mが誘導され得るオレフィンの具体例には以下が挙げられるが、これには限定されない:プロピレン、1−ブテン、1,3−ブタジエン、イソブチレンおよびジイソブチレン。
【0051】
本明細書中および特許請求の範囲に使用される場合、「アリルモノマー(単数または複数)」は、置換および/または非置換のアリル官能基を含むモノマー、すなわち、以下の一般式XIによって示される1つ以上のラジカルを意味する:
XI
C=C(R)−CH
ここで、Rは、水素、ハロゲンまたはC〜Cのアルキル基である。最も一般的には、Rは、水素またはメチルであり、結果として一般式XIは、非置換(メト)アリルラジカルを表す。(メト)アリルモノマーの例には、以下が挙げられるが、これには限定されない:(メト)アリルアルコール;(メト)アリルエーテル(例えば、メチル(メト)アリルエーテル);カルボン酸の(メト)アリルエステル(例えば、(メト)アリルアセテート)。
【0052】
Mが誘導され得る、他のエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーには、以下が挙げられるが、これには限定されない:環状無水物(例えば、無水マレイン酸、無水1−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸および無水イタコン酸;不飽和であるがα,β−エチレン性不飽和を有さない、酸のエステル(例えば、ウンデシレン酸のメチルエステル);およびエチレン性不飽和二塩基酸のジエステル(例えば、ジエチルマレアート)。
【0053】
上の構造の(M)によって示された残基のブロックは、1つのタイプのモノマーまたは2つ以上のモノマーの混合物から誘導され得る。このような混合物は、ランダム配列である、モノマー残基のブロックであり得るか、またはこれらは、交互残基であり得る。
【0054】
残基Aは、ヒドロキシ−アルキル基に1〜4個の炭素原子を含む、アクリル酸のヒドロキシ−アルキルエステル、およびヒドロキシ−アルキル基に1〜4個の炭素原子を含む、メタクリル酸のヒドロキシ−アルキルエステルのうちの少なくとも1つから誘導され得る。好ましくは、Aは、ヒドロキシ−エチル(メト)アクリレートおよびヒドロキシ−プロピル(メト)アクリレートのうちの少なくとも1つから誘導される。
【0055】
残基Aはまた、エチレン性不飽和酸官能性モノマーおよび好ましくは少なくとも5個の炭素原子を含むエポキシ化合物を反応させることから調製されるβ−ヒドロキシエステルから誘導され得る。適切なエチレン性不飽和酸官能性モノマーの例は、(メト)アクリル酸である。適切なエポキシ化合物の例は、グリシジルエステルおよびエーテルである。好ましいグリシジルエーテルは、8〜50個の炭素原子を含むものであり、例えば、グリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテルおよびフェニルグリシジルエーテルである。適切なグリシジルエステルの例は、グリシジルネオペンタノエートおよびグリシジルネオデカノエートであり、Shell Chemical CompanyからCARDURA
E.として市販されている。
【0056】
上の構造の(A)によって示された残基のブロックは、1つのタイプのモノマーまたは2つ以上のモノマーの混合物から誘導され得る。このような混合物は、ランダム配列である、モノマー残基のブロックであり得るか、またはこれらは、交互残基であり得る。
【0057】
残基Gは、オニウム塩基またはオニウム塩基に転換され得る基を含む少なくとも1つのモノマー(好ましくは、エポキシ官能基含有モノマー)から誘導され、これは、重合の後に、アミン酸塩と後反応して4級アンモニウム塩を形成し得るか、あるいは酸の存在下でスルフィドと後反応して三元の(ternary)スルホニウム塩を形成し得る。本発明のポリマーにおける使用に適切なエポキシ官能性モノマーの例には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロへキシルメチル(メト)アクリレート、2−(3,4−エポキシシクロへキシルエチル)(メト)アクリレート、およびアリルグリシジルエーテルが挙げられる。4級アンモニウム塩基を含む、活性水素基含有ポリマーを調製する際の使用に適切なアミン酸塩の例は、米国特許第3,975,346号10欄43行〜13欄12行;および米国特許3,962,165号7欄24行〜9欄53行に記載されるものであり、これらは共に本明細書中で参考として援用される。三元のスルホニウム塩を含む、活性水素基含有ポリマーを調製する際の使用に適切なスルフィドおよび酸の例は、米国特許4,038,166号13欄57行〜14欄11行に記載されるものであり、これは本明細書中で参考として援用される。
【0058】
上の構造の(G)によって示された残基のブロックは、1つのタイプのモノマーまたは2つ以上のモノマーの混合物から誘導され得る。このような混合物は、ランダム配列である、モノマー残基のブロックであり得るか、またはこれらは、交互残基であり得る。
【0059】
好ましくは、このポリマーは、以下の構造のうちの少なくとも1つを含む:
【0060】
【化6】

構造I〜XおよびXII〜XXXIのそれぞれについて、j、kおよびlは、それぞれのポリマー構造の残基のブロックに存在する残基の平均数を示す。典型的には、jおよびlは、それぞれ独立して、少なくとも1の値を有し、kは、0〜200である。また、jおよびlは、それぞれ独立して、それぞれの一般的なポリマー構造について、典型的には50未満、好ましくは30未満の値を有する。j、kおよびlの値は、それぞれ、列挙された値を含めて、これらの値の任意の組み合わせの間で変動し得る。さらに、j、kおよびlの合計は、x−セグメント内で少なくとも1であり、jは、少なくとも1つのx−セグメント内で少なくとも1であり、そしてlは、少なくとも1つのx−セグメント内で少なくとも1である。
【0061】
構造XII〜XXXIのそれぞれにおいて存在する場合、Qは、G、MおよびAの任意のうちの少なくとも1つであり、これは、構造I〜Xについて上に記載したとおりであるが、但し、Qがオレフィンから誘導される場合、隣接モノマー残基は、オレフィンから誘導されない。残基(Q)のブロックは、1つのタイプのモノマーまたは2つ以上のモノマーの混合物から誘導され得る。このような混合物は、ランダム配列である、モノマー残基のブロックであり得るか、またはこれらは、交互残基であり得る。(Q)を含む構造XII〜XXXIのそれぞれについて、下付文字pは、少なくとも1の値を有する。典型的には、pは、100未満の値を有し、好ましくは50未満の値を有する。pの値は、列挙された値を含めて、これらの値の任意の組み合わせの間で変動し得る。
【0062】
構造XXIV〜XXXIのそれぞれについて、下付文字qは、少なくとも1の値を有する。下付文字qがポリマー鎖構造セグメント内の交互モノマーブロックの平均数を表す場合、qは、1〜100の値を有する。あるいは、下付文字qがポリマー鎖構造セグメント内のモノマージブロックの平均数を表す場合、qは、1〜5の値を有する。qについての値は、列挙された値を含めて、これらの値の任意の組み合わせの間で変動し得る。
【0063】
構造XII〜XXXIの下付文字xは、典型的には、少なくとも1の値を有する。また、下付文字xは、典型的には10未満の値を有し、好ましくは5未満、より好ましくは3未満の値を有する。下付文字xの値は、列挙された値を含めて、これらの値の任意の組み合わせの間で変動し得る。さらに、構造XII〜XXXIの1つより多くがポリマー分子内に存在する場合、xは、j、kおよびlが有し得るように、各構造について異なる値を有し得、グラジエントコポリマーのような、種々のポリマー構造が可能である。
【0064】
構造XII〜XXXIの各々について、記号φは、ポリマーのATRP調製物において使用される開始剤の残基であるか、またはその残基から誘導され、そして開始剤のラジカル移動可能基を含有しない。例えば、活性水素基含有ポリマーは、ベンジルブロマイドの存在下で開始される場合、記号φ(より具体的には、φ−)は、ベンジル残基:
【0065】
【化7】

である。
【0066】
記号φはまた、開始剤の残基から誘導され得る。例えば、活性水素基含有ポリマーが、エピクロロヒドリンを使用して開始される場合、記号φ、より具体的にはφ−は、2,3−エポキシ−プロピル残基:
【0067】
【化8】

である。次いで、この2,3−エポキシ−プロピル残基は、例えば、2,3−ジヒドロキシプロピル残基に変換され得る。開始剤残基の誘導または変換は、好ましくは、ポリマー骨格に沿った任意のエポキシド官能基の損失が最小である場合(例えば、エポキシ官能基を有する残基のブロックの取り込みの前)、ATRPプロセスの地点で行われる。
【0068】
構造XII〜XXXIにおいて、下付文字zは、φに結合する活性水素基含有ポリマー鎖の数と等しい。下付文字zは少なくとも1であり、そして広範な値を有し得る。くし型(comb)ポリマーまたはグラフトポリマーの場合、φは、いくつかのラジカル移動可
能なペンダント基を有するマクロ開始剤(macroinitiator)であり、zは、10を越す値、例えば、50、100または1000を有し得る。典型的に、zは、10未満であり、好ましくは、6未満、そしてより好ましくは、5未満である。本発明の好ましい実施態様において、zは1または2である。
【0069】
構造XII〜XXXIの記号Tは、開始剤のラジカル移動可能基であるか、またはこれから誘導される。例えば、活性水素基含有ポリマーがジエチル−2−ブロモ−2−メチルマロネートの存在下で調製される場合、Tはラジカル移動可能ブロモ基であり得る。
【0070】
ラジカル移動可能基は必要に応じて、(a)除去されるか、または(b)別の部分に化学的に変換され得る。(a)または(b)のいずれかにおいて、記号Tは、本明細書中で、開始剤のラジカル移動可能基から誘導されるべきだと考えられる。ラジカル移動可能基は、求核性化合物(例えば、アルカリ金属アルコキシレート)との置換によって除去され得る。しかし、本発明において、ラジカル移動可能基が除去されるか、または化学的に変換される方法がまた、ポリマーの任意のエポキシ官能基に対して比較的穏やかであることが所望される。多くの求核置換反応および加水分解反応により、ポリマーからエポキシ官能基が損失し得、これにより、オニウム塩の基を形成する酸の存在下で、アミノ酸またはスルフィドとの後反応に対する利用可能部位が減少することになる。
【0071】
本発明の好ましい実施態様において、ラジカル移動可能基がハロゲンである場合、このハロゲンは穏やかな脱ハロゲン化反応により除去され得、この反応はポリマーのエポキシ官能基を減らさない。この反応は典型的に、ポリマーが形成した後、少なくともATRP触媒の存在下で、後反応として実施される。好ましくは、脱ハロゲン化後反応は、ATRP触媒およびその関連するリガンドの両方の存在下で行われる。
【0072】
穏やかな脱ハロゲン化反応は、本発明のハロゲン末端活性水素基含有ポリマーを、1つ以上のエチレン性不飽和化合物と接触させることによって行われる。エチレン性不飽和化合物は、原子移動ラジカル重合が行われる条件下のスペクトルの少なくとも一部分で容易にラジカル重合し得ず、本明細書中以下で、「制限ラジカル重合可能エチレン性不飽和化合物」(LRPEU化合物)と称される。本明細書中で使用される「ハロゲン末端」および類似の用語は、例えば、分枝ポリマー、くし型ポリマーおよびスターポリマーにおいて存在する、ペンダントハロゲンもまた含むことを意味する。
【0073】
いずれの理論にも縛られることを意図しないが、手近な証拠に基づいて、ハロゲン末端活性水素基含有ポリマーと1つ以上のLRPEU化合物との間の反応は、(1)末端ハロゲン基の除去、および(2)少なくとも1つの炭素−炭素二重結合の付加(ここで、末端炭素−ハロゲン結合は切れる)を生じると考えられる。脱ハロゲン化反応は典型的に、0℃〜200℃の範囲の温度(例えば、0℃〜160℃)、0.1〜100気圧の範囲の圧力(例えば、0.1〜50気圧)で行われる。この反応はまた、典型的には、24時間未満(例えば、1時間と8時間との間)で行われる。LRPEU化合物は、化学量論量より少ない量で添加され得るが、好ましくは、活性水素基含有ポリマー中に存在する末端ハロゲンのモルに対して少なくとも化学量論量で添加される。化学量論量より過剰が添加される場合、LRPEU化合物は、典型的に、5モル%を超えない量(例えば、1〜3モル%)、末端ハロゲンの全モルより過剰量で存在する。
【0074】
穏やかな条件下で、本発明の組成物の活性水素基含有ポリマーを脱ハロゲン化するのに有用な、制限ラジカル重合可能エチレン性不飽和化合物には、以下の一般式で表される化合物が挙げられる:
【0075】
【化9】

一般式XXXIIにおいて、RおよびRは、同一であるかまたは異なる有機基、例えば、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基;アリール基;アルコキシ基;エステル基;アルキル硫黄基;アシルオキシ基;および窒素含有アルキル基であり得、ここで、RおよびR基のうち少なくとも一方は有機基であり、一方、他方は有機基または水素であり得る。例えば、RまたはRの一方がアルキル基である場合、他方はアルキル、アリール、アシルオキシ、アルコキシ、アレーン、硫黄含有アルキル基、または窒素含有アルキル基および/もしくは窒素含有アリール基であり得る。R基は同一であるか、または水素もしくは低級アルキルから選択される異なる基であり得、活性水素基含有ポリマーの末端ハロゲンとLRPEU化合物との間の反応が阻止されないように選択される。また、R基はRおよび/またはR基に結合され、環式化合物を形成し得る。
【0076】
LRPEU化合物はハロゲン基を含有しないことが好ましい、適切なLRPEU化合物の例には、1,1−ジメチルエチレン、1,1−ジフェニルエチレン、イソプロペニルアセテート、α−メチルスチレン、1,1−ジアルコキシオレフィンおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる例には、イタコン酸ジメチルおよびジイソブテン(2,4,4−トリメチル−1−ペンタン)が挙げられる。
【0077】
例示の目的のために、ハロゲン末端活性水素基含有ポリマーとLRPEU化合物(例えば、α−メチルスチレン)との間の反応は、以下の一般スキーム1で要約される。
【0078】
【化10】

一般スキーム1において、P−Xは、ハロゲン末端活性水素基含有ポリマーを表す。
【0079】
活性水素基含有ポリマーは、典型的に、少なくとも1000g/当量、好ましくは、少なくとも1500g/当量のオニウム塩の基の当量を有する。このポリマーのオニウム塩の基の当量はまた、典型的に、15,000g/当量、好ましくは、10,000g/当量、およびより好ましくは、6,000g/当量である。活性水素基含有ポリマーのオニウム塩の基の当量は、これらの値(記載の値を含む)の任意の組み合わせの間の範囲であり得る。本明細書中で使用されるように、オニウム塩の基の当量は、ASTM D−4370に従って検出される。
【0080】
Aが、水酸基含有モノマーの残基を表す場合、このポリマーは、典型的には、少なくとも50、好ましくは、少なくとも100、そしてより好ましくは、少なくとも300の水
酸基値を有する。水酸基値はまた、典型的に500未満、好ましくは、400未満、そしてより好ましくは、350未満である。水酸基値は、これらの値(記載の値を含む)の任意の組み合わせの間の範囲であり得る。
【0081】
活性水素基含有ポリマーの数平均分子量(M)は、典型的に、少なくとも250、そして好ましくは、少なくとも1000である。このポリマーはまた、典型的に、30,000未満、好ましくは、25,000未満、そしてより好ましくは、20,000未満のMを有する。活性水素基含有ポリマーのMは、これらの値(記載の値を含む)の任意の組み合わせの間の範囲であり得る。他に示さなければ、発明の詳細な説明および特許請求の範囲において記載される全分子量は、ポリスチレン標準を使用するゲル透過クロマトグラフィーによって検出される。
【0082】
得られるカチオン性の塩基を含有する活性水素基含有ポリマーは、任意の数のポリマー構造および構成を有し得、これらには、直鎖ポリマー、分枝鎖ポリマー、超分枝鎖ポリマー、スターポリマー、グラジエントポリマー、およびグラフトポリマーが挙げられる。1以上のこれらのポリマー構造の混合物は、本発明の熱硬化組成物において有用であり得る。好ましくは、オニウム塩の基を含有する水素基含有ポリマーは、直鎖ポリマーであり、ここで、下付文字zは、1または2である。
【0083】
構造XII〜XXXIは、ポリマー自体を表し得るか、あるいは、この構造の各々は、ポリマーの末端セグメントを含み得ることを理解すべきである。例えば、zが1である場合、構造XII〜XXXIは、直鎖ポリマーを表し得、これは1つのラジカル移動可能基を有する開始剤を使用するATRPによって調製される。zが2である場合、構造XII〜XXXIのうち任意の2つは、2つのラジカル移動可能基を有する開始剤の残基から伸長する、直鎖「レッグ(leg)」を表し得る。あるいは、zが2である場合、構造XII〜XXXIの任意の2個はそれぞれ、2つより多いのラジカル移動可能基を有する開始剤を使用して、ATRPによって調製される、スターポリマーの「アーム」を表し得る。
【0084】
オニウム塩の基を含む活性水素基含有ポリマーは、本発明の熱硬化性組成物において、樹脂結合剤(すなわち、フィルム形成ポリマー)または添加剤として、別個の樹脂結合剤(これは、原子移動ラジカル重合または従来の重合方法によって調製され得る)と組み合わせて存在し得る。添加剤(例えば、反応希釈剤)として使用される場合、本明細書中に記載されるような活性水素基含有ポリマーは、典型的に、多量の官能基および対応して少ない当量を有する。しかし、他の適用に対して、この添加剤は、少ない官能基(これは、単官能基であり得る)、および対応して高い当量を有するを有し得る。このオニウム塩の基を含む活性水素基含有ポリマーは、典型的に、本発明の熱硬化性組成物中に、熱硬化性組成物の樹脂固体分の全重量に基づいて、少なくとも0.5重量%の量(添加剤として使用される場合)、少なくとも25重量%の量(樹脂結合剤として使用される場合)で存在する。活性水素基含有ポリマーはまた、典型的に熱硬化性組成物中に、熱硬化性組成物の樹脂固体分の全重量に基づいて、95重量%未満の量、より好ましくは80重量%未満の量で存在する。活性水素基含有ポリマーは、本発明の熱硬化性組成物中に、これらの値(記載の値を含む)の任意の組み合せの間の範囲の量で存在し得る。
【0085】
本発明の熱硬化性組成物は、さらに、上記のポリマー(a)の活性水素基と反応性である少なくとも2個の官能基を有する硬化剤(b)を含む。
【0086】
本発明の熱硬化性組成物における使用のための適切な硬化剤の例には、ポリイソシアネートおよびアミノプラスト硬化剤が挙げられる。本発明の熱硬化性組成物における使用のための好ましい硬化剤(特に、カチオン性電着用)は、ブロックされた有機ポリイソシアネートである。このポリイソシアネートは、米国特許第3,984,299号(第1欄第
1行〜第68行、第2欄および第3欄第1行〜第15行)に記載されるように十分にブロックされ得るか、または米国特許第3,947,338号の第2欄第65行〜第68行、第3欄、および第4欄第1行〜第30行に記載されるように部分的にブロックされ、そしてポリマー骨格と反応し得る(これらは、本明細書中で参考として援用される)。「ブロックした」とは、得られるブロックされたイソシアネート基が、室温で活性水素に対して安定であるが、通常90℃〜200℃の間の高温でフィルム形成ポリマーにおいて活性水素と反応するように化合物と、イソシアネート基が反応したことを意味する。
【0087】
適切なポリイソシアネートは、芳香族および脂肪族ポリイソシアネート(環脂肪族ポリイソシアネート)を含み、代表的な例には、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、2,4−または2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)(それらの混合物を含む)、p−フェニレンジイソシアネート、テトラメチレンおよびヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソイソホロンジイソシアネート、フェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートおよびポリメチレンポリフェニルイソシアネートの混合物が挙げられる。トリイソシアネートのような高級ポリイソシアネートが使用され得る。例には、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネートが挙げられる。ネオペンチルグリコールおよびトリメチロールプロパンのようなポリオール、ならびにポリカプロラクトンジオールおよびトリオール(1より大きいNCO/OH当量比を有する)のような重合性ポリオールを有するイソシアネート()−プレポリマーがまた、使用され得る。
【0088】
このポリイソシアネート硬化剤は、典型的に、少なくとも1重量%、好ましくは、少なくとも15重量%、そしてより好ましくは、少なくとも25重量%の量で、活性水素基含有ポリマー(a)とともに使用される。また、このポリイソシアネート硬化剤は、典型的に、(a)および(b)の樹脂固体分の全重量に基づいて、50重量%未満、および好ましくは40重量%未満の量で、活性水素基含有ポリマーをとともに使用される。このポリイソシアネート硬化剤は、本発明の熱硬化性組成物中に、これらの値(記載の値を含む)の任意の組み合せの間の範囲の量で存在し得る。
【0089】
本発明の熱硬化性組成物は、水性分散物の形態で存在する。用語「分散物」とは、2相の透明、半透明または不透明の樹脂系(ここで、樹脂は分散層にあり、そして水は連続層にある)であると考えられる。この樹脂層の平均粒径は、一般的に1.0ミクロン未満、および通常0.5ミクロン未満、好ましくは0.15ミクロン未満である。
【0090】
水性媒体中の樹脂相の濃度は、水性分散物の全重量に基づいて、少なくとも1重量%そして通常約2〜約60重量%である。本発明の組成物が、樹脂濃縮物の形態である場合、この樹脂濃縮物は、一般的に、水性分散物の重量に基づいて、約20〜約60重量%の樹脂固体含量を有する。
【0091】
本発明の熱硬化性組成物は、典型的に、通常、以下の2成分として供給される電着槽(electrodeposition bath)の形態である:(1)クリア樹脂供給物(一般的に、オニウム塩の基を含有する活性水素含有ポリマーを含む)(すなわち、メインフィルム形成ポリマー、硬化剤、および任意の追加の水性分散可能な非色素性成分);ならびに(2)顔料ペースト剤(一般的に、1以上の顔料、水分散可能な粉砕樹脂(メインフィルム形成ポリマーと同じか、または異なり得る)、および必要に応じて、湿潤助剤(wetting aid)または分散助剤(dispersing aid)のような添加剤。電着槽成分(1)および(2)は、水性媒体(水および通常、合着溶媒を含む)中で分散される。あるいは、この電着槽は、1つのパッケージ中にメインフィルム形成ポリマー、硬化剤、顔料ペースト剤、および任意の添加剤を含む1成分系として供給され得る。この1成分系は、上記のように水性媒体中で分散される。
【0092】
本発明の電着槽は、通常、電着槽の全重量に基づいて約5〜25重量%の範囲内で樹脂固体含量を有する。
【0093】
上述のように、水に加えて、水性媒体は合着溶媒を含有し得る。有用な合着溶媒には、炭化水素、アルコール、エステル、エーテルおよびケトンが挙げられる。好ましい合着溶媒には、アルコール、ポリオールおよびケトンが挙げられる。具体的な合着溶媒には、イソプロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、イソホロン、2−メトキシペンタノン、エチレングリコールおよびプロピレングリコール、ならびにエチレングリコールまたはプロピレングリコールのモノエチルエーテル、モノブチルエーテルおよびモノヘキシルエーテルが挙げられる。合着溶媒の量は、使用される場合には、水性媒体の総重量に基づいて、一般には、約0.01重量%と25重量%との間であり、好ましくは、約0.05重量%〜約5重量%である。
【0094】
上記のように、色素性組成物および、所望ならば、様々な添加剤(例えば、界面活性剤、湿潤剤または触媒)が、この分散物中に含有され得る。この色素性組成物は、色素(例えば、酸化鉄、クロム酸ストロンチウム、カーボンブラック、炭塵、二酸化チタン、タルク、硫酸バリウム)ならびに有色色素(例えば、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローなど)を含有する、従来の種類のものであり得る。この分散物の色素含量は、通常、色素対樹脂の比で表現される。本発明の実施においては、色素が利用される場合、この色素対樹脂の比は通常、約0.02〜1:1の範囲内である。上記の他の添加剤は、通常、樹脂固形分の重量に基づいて、約0.01重量%〜3重量%の量でこの分散物中に存在する。
【0095】
本発明の熱硬化性組成物は、様々な導電性基板(特に、未処理鋼鉄、亜鉛めっき鋼鉄、アルミニウム、銅、マグネシウムなどの金属および導電性炭素コーティング物質など)に、電着によって塗布され得る。電着のために印加される電圧は、変動し得、そして例えば、1ボルト程度の低さから数千ボルト程度の高さまでであり得るが、典型的には、50ボルトと500ボルトとの間であり得る。電流密度は、通常、1平方フィート当たり0.5アンペアと5アンペアとの間であり、そして電着の間に減少する傾向にあり、このことは、絶縁フィルムの形成を示す。
【0096】
コーティングが電着によって塗布された後に、通常は約90℃〜約260℃などの上昇温度において、約1分〜約40分間焼き付けることによって、硬化される。
【0097】
本発明は、以下の実施例においてより詳細に説明され、これらの実施例は、例示のみであることを意図される。なぜなら、そこにおける多数の改変および変更が当業者に明らかであるからである。他に記載しない限り、全ての部およびパーセントは重量による。
【0098】
(合成実施例A〜C)
合成実施例A〜Cは、本発明による電着コーティング組成物において有用な、原子移動ラジカル重合によって調製されるスルホニウム塩の基を含むポリマーの調製を、連続して記載する。合成実施例Aにおいては、以下のモノマーの略号を使用する:グリシジルメタクリレート(GMA);イソブチルメタクリレート(IBMA);および2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)。
【0099】
(実施例A)
トリブロック前駆体ポリマーを、表Aに列挙する成分から調製した。この実施例の前駆体ポリマーを、実施例Bに記載のように、スルホニウム塩の基を含むポリマーに転換した。この実施例のトリブロック前駆体ポリマーを、以下のように図式的にまとめる:
【0100】
【表1】

(a)臭化銅(II)はフレークの形態であり、そしてAldrich Chemical Companyから得た。
(b)銅粉末は、25ミクロンの平均粒子サイズ、1グラム/cmの密度を有し、そしてOMG Americasから購入した。
【0101】
充填物1を、モータ駆動ステンレス鋼撹拌ブレード、水冷式冷却器、ならびに温度フィードバック制御デバイスを介して接続した加熱マントルおよび温度計を備える、2リットルの4つ口フラスコ中で、70℃まで加熱し、そして70℃で2時間維持した。このフラスコの内容物を90℃まで加熱して、充填物2を15分間かけて添加し、次いで90℃で3時間維持した。このフラスコの内容物を70℃まで冷却した後に、充填物3を15分間かけて添加し、次いで70℃で2時間維持した。このフラスコの内容物を室温まで冷却し、濾過した。
【0102】
このトリブロックポリマーは、総重量に基づいて65重量%の固形分(0.2gのサンプルから110℃/1時間で決定した)、および2300g/当量のエポキシ当量(過塩素酸での滴定により決定した)を有した。このトリブロックポリマーを、ゲル浸透クロマトグラフィー(ポリスチレン標準を使用)により分析し、12,090の数平均分子量(Mn)、16,926の重量平均分子量(Mw)、および1.4の多分散性指数(PDI=Mw/Mn)を有することがわかった。
【0103】
(実施例B)
表Bにまとめるように、実施例Aの前駆体ポリマーを転換してスルホニウム塩の基を含むポリマーとし、これにウレタン架橋剤および触媒を添加した。
【0104】
【表2】

(c)2−ブトキシエタノールでキャップされた、トリメチロールプロパン/イソホロンジイソシアネート付加体であって、2−ブトキシエタノール、メチルイソブチルケトンおよびフェニル2−ヒドロキシプロピルエーテルの総重量に基づいて、65重量%の%固体を有する。
【0105】
充填物1を、モータ駆動ステンレス鋼撹拌ブレード、水冷式還流冷却器、Dean−Starkトラップ、ならびに温度フィードバック制御デバイスを介して接続された加熱マントルおよび温度計を備える、1リットルの丸底フラスコ中で、110℃まで加熱した。温度を110℃に維持しながら、充填物2をゆっくりと添加し、この間に、198グラムの留出物が、Dean−Starkトラップを介して回収された。このフラスコの内容物を95℃まで冷却し、そして充填物3を添加した。このフラスコの内容物を85℃まで冷却し、そして85℃で3.5時間維持した。3.5時間の維持の完了時に、実施例Aの前駆体ポリマーがスルホニウム塩の基を含むポリマーに転換されたことが、酸価測定(滴定剤として水酸化ナトリウムを使用)およびスルホニウムのミリ当量の測定(滴定剤として過塩素酸を使用)に基づいて、決定された。充填物5をこのフラスコに添加し、次いで85℃で20分間、撹拌を続けた。
【0106】
(実施例C)
実施例Bの、スルホニウム塩の基を含むポリマーとウレタン架橋剤との混合物を、表Cにまとめるように、脱イオン水中に分散させた。
【0107】
【表3】

充填物1を、適切な容器に室温で添加し、そしてステンレス鋼インペラーで強く撹拌した。充填物2(85℃の温度の間で)を、撹拌を続けながらゆっくりと、この容器に添加した。このフラスコの内容物を、強い撹拌のもとで60分間撹拌し、その後、さらなる脱イオン水を、この分散物の固形分を総重量に基づいて33.1重量%(0.5gのサンプルから110℃/1時間で決定)に調節するに十分な量で、添加した。
【0108】
(電着可能コーティング組成物の例)
実施例Cの分散物を、総重量に基づいて10重量%の固形分を有する電着可能コーティング組成物を形成するに十分な量の脱イオン水と、混合した。このコーティング組成物は、4.3のpHおよび216μMhoの伝導率を有した。
【0109】
このコーティング組成物を、適切な非伝導性容器に移し、この中に、直流(DC)整流器に電気的に接触したステンレス鋼アノードを配置した。撹拌を続けながら、この電着可能コーティング組成物を、水浴中で27℃から42℃の温度まで加熱した。冷間圧延鋼パネル(リン酸亜鉛およびクロムシールにより前処理された)を、DC整流器のカソードと電気的に接触させて配置し、この加熱したコーティング組成物中に浸漬した。75〜200ボルトのDC印加で、60〜90秒間にわたり、この電着可能コーティング組成物を、浸漬したパネル上にコーティングした。このコーティングしたパネルをコーティング組成物から取り出し、脱イオン水ですすいで、177℃の電気オーブン中に20分間入れた。このコーティングしたパネルをこのオーブンから取り出し、そして50ミクロンの硬化フィルム厚みを有するものを、さらに評価した。
【0110】
50ミクロン厚の硬化コーティングは、平滑で連続的な、欠陥のない表面を有することが観察された。この硬化コーティング表面を、アセトンをしみ込ませた布タオルで100往復手動でこすった後に、損傷を示さなかったことにより、この硬化コーティングは非常に良好なアセトン耐性を有することがわかった。
【0111】
本発明を、その特定の実施態様の具体的な詳細を参照して記載した。このような詳細が、添付の特許請求の範囲に含まれる限りを除き、そして特許請求の範囲に含まれる程度までを除き、本発明の範囲の限定であるとみなされることは、意図されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の、熱硬化性組成物。

【公開番号】特開2008−163343(P2008−163343A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9884(P2008−9884)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【分割の表示】特願2000−567637(P2000−567637)の分割
【原出願日】平成11年8月30日(1999.8.30)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】