説明

原子間力顕微鏡を用いた誘電特性測定方法

【課題】液中に浸漬された試料上の局所的な誘電緩和特性などの誘電特性の測定を可能とする。
【解決手段】原子間力顕微鏡のカンチレバー5に形成した金属薄膜5aと導電性の試料3が載置された試料ホルダ2との間に、励振電圧生成部21から、周波数がf0である搬送波電圧を周波数fmの変調波電圧で振幅変調した励振電圧を印加する。周波数f0がカンチレバー5と液体との界面の電気二重層の誘電緩和周波数より高くなると、探針6と試料3との間にはたらく静電気力による振動がカンチレバー5に誘起される。この静電気力は探針−試料間距離依存性をもつため、その特性の周波数分散を調べることにより、試料上の局所的な誘電特性を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子間力顕微鏡を用いて物質の誘電率等の誘電特性を測定する誘電特性測定方法に関し、特に、試料上の局所的な、即ち微小領域における誘電緩和特性の測定に好適な測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物質の動的特性を解析する手法の一つとして従来から行われているのが、誘電緩和スペクトロスコピーによる誘電緩和特性の測定である。一般に知られている誘電緩和スペクトロスコピー法では、小型の液体セル中に一対の対向電極を挿入して、その電極間の電気的なインピーダンスの周波数特性をインピーダンスアナライザを用いて測定し、そのインピーダンス周波数特性から誘電緩和特性を算出する。こうした方法では、バルク液の全体的な誘電緩和特性を求めることは可能であるものの、例えば電極表面に存在する分子や電気二重層などの誘電緩和特性を測定することはできない。
【0003】
ところで、近年、各種疾病・疾患の原因究明や医薬品の開発などを目的として、タンパク質やDNAといった生体分子の生体機能発現メカニズムの解明が各所で盛んに進められている。そのためには、まず生体分子の構造を把握することが必要であり、構造把握のための様々な計測手法が開発されている。原子間力顕微鏡(AFM=Atomic Force Microscope)の分野においても、近年の急速な技術の進展により、超高真空雰囲気中だけでなく液体中や生理学的環境下におけるタンパク質やDNAなどの生体分子の分子スケールでの構造解析が行えるようになってきている。
【0004】
生体分子の生体機能発現メカニズム解析のためには、生体分子の構造把握だけでなく生体分子の様々な物性を併せて計測することが必要不可欠である。例えば、生体分子の活動を調べる上で生体分子における局所的な誘電緩和特性を知ることは重要であるが、従来の原子間力顕微鏡ではそういった要求に応えることはできない。そのため、上述したような誘電緩和スペクトロスコピー法を用いる、即ち、測定対象の試料を液体に溶解した上でその溶液全体のインピーダンスを測定して誘電緩和特性を求めざるをえないのが実状である。
【0005】
これに対し、本願発明者らは、近年、ナノメートルスケールでの構造計測及び物性評価が可能である原子間力顕微鏡を用い、試料上の局所的な誘電緩和特性を測定する研究を進めている。これは、原子間力顕微鏡で一般に用いられるカンチレバーに作用する静電気力に基づいて、試料表面の局所的な誘電的特性を評価するという手法である。具体的には、例えば非特許文献1、2では、液体中で導電性のカンチレバーとそれに対向する導電性基板との間に交流電圧を印加したときにカンチレバーに誘起される振動成分の探針−試料間距離依存性を調べた結果として、交流電圧の周波数が高い場合に、カンチレバー表面と液体との間の界面張力の作用が弱まって静電気力による振動が支配的になり、その静電気力が探針−試料間距離依存性を持つことを明らかにしている。
【0006】
上記現象を図8を用いて説明する。図8は、分析用液体中にカンチレバーが浸漬されている場合における、カンチレバーの導電性表面と分析用液体との界面、つまり固液界面における電気的な等価回路である。図8に示すように、固液界面における等価回路は、界面溶液要素とバルク溶液要素との直列接続回路となる。界面溶液要素とは、電荷移動による抵抗と拡散によるワールブルグインピーダンスとの直列接続回路と、電気二重層容量との並列回路である。他方、バルク溶液要素とは、バルク溶液抵抗とバルク溶液容量との並列回路である。カンチレバーと試料との間に印加される交流電圧の周波数が電気二重層容量の誘電緩和周波数より低い場合には、界面溶液要素に電圧が印加され、界面張力が発生する。一方、上記交流電圧の周波数が電気二重層容量の誘電緩和周波数よりも高い場合には、界面溶液要素に印加される電圧成分は殆ど無視することができ、バルク溶液要素に印加される電圧成分のみを考慮すればよい。そのため、そうした周波数領域では、バルク溶液容量に印加される電圧成分に起因する静電気力、換言すればマックスウェル応力がカンチレバーの変位を支配することになる。
【0007】
しかしながら、本願発明者の検討によれば、カンチレバーと試料との間に例えば正弦波状の交流電圧を印加し、その交流電圧の周波数で以てカンチレバーを直接的に振動させる励振方法では、カンチレバーの共振周波数よりも高い周波数領域における検出信号の減衰が著しい。そのため、そうした信号から周波数シフトや変位に関する情報を抽出するのは困難である。カンチレバーの共振周波数はカンチレバーのサイズや材質などに依存するが、一般的には100〜200kHz程度である。そのため、上記励振方法では、こうした周波数よりも高い周波数領域において振動成分の探針−試料間距離依存性を調べることができず、そうした情報に基づいた誘電緩和特性の測定も行えない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】梅田、ほか5名、「静電気力励振を用いた液中FM-AFM観察」、第57回応用物理学関係連合講演会講演予稿集、2010年3月、社団法人応用物理学会
【非特許文献2】梅田、ほか5名、「固液界面における局所電荷分布計測へ向けた静電気力の探針−試料間距離依存性に関する研究」、第71回応用物理学会学術講演会講演予稿集、2010年9月、社団法人応用物理学会
【非特許文献3】ヨコヤマ(Hiroshi Yokoyama)、ほか1名、「イメージング・ハイ・フリクエンシー・ダイエレクトリック・ディスパージョン・オブ・サーフェシズ・アンド・シン・フィルムズ・バイ・ヘテロダイン・フォース−デテクテッド・スキャンニング・マックスウェル−ストレス・マイクロスコピー(Imaging high frequency dielectric dispersion of surfaces and thin films by heterodyne force-detected scanning Maxwell-stress microscopy)」、コロイズ・アンド・サーフェシズ・エー:フィジコケミカル・アンド・エンジニアリング・アスペクツ(Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects)、Vol.93、1994年、p.359-373
【非特許文献4】ウィトパル(V. Wittpahl)、ほか3名、「クゥオンタティブ・ハイ・フリクエンシー−エレクトリック・フォース・マイクロスコープ・テスティング・オブ・モノリシック・マイクロウェイブ・インテグレイテッド・サーキッツ・アット・20 GHz (Quantitative high frequency-electric force microscope testing of monolithic microwave integrated circuits at 20 GHz)」、マイクロエレクトロニクス・リライアビリティ(Microelectronics Reliability)、Vol.39、1999年、p.951-956
【非特許文献5】ギーシブル(F. Giessibl)、「アドバンシズ・イン・アトミック・フォース・マイクロスコピー(Advances in atomic force microscopy)」、レビュー・オブ・モダン・フィジックス(Review of Modern Physics)、Vol.75、2003年、p.949-983
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、カンチレバーの共振周波数を超えた高い周波数領域におけるカンチレバーの振動の検出を可能とし、それによって探針−試料間に作用する交流静電気力の探針−試料間距離依存性を測定することで、幅広い周波数範囲に亘る試料上の局所的な誘電緩和特性などの誘電特性を測定することを可能とした誘電特性測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述したように、液体中でカンチレバーを交流的に励振したときにカンチレバーに作用する力には主として静電気力と界面張力効果とがあるが、振動の周波数が高い領域ではカンチレバーに作用する力は静電気力が支配的になる。静電気力は印加される電圧の2乗に比例することから、静電気力を検出する静電気力顕微鏡(EFM)などでは、周波数の異なる2つの交流電圧を探針−試料間に印加し、その2つの交流電圧の周波数差でもって探針を励振する手法(非特許文献3)や、振幅変調した高周波電圧を探針−試料間に印加し、その変調信号の周波数で探針を励振する手法(非特許文献4)が知られている。
【0011】
これら従来の手法はいずれも大気中での励振であって液体中のような界面張力効果の影響が殆どない環境下ではあるものの、本願発明者は、このような場合に静電気力が印加電圧の2乗に比例する点に着目し、液体中でのカンチレバーの励振に振幅変調した高周波交流電圧や2つの異なる周波数の交流電圧を利用することに想到した。また、実験及びシミュレーション計算により、探針−試料間に振幅変調した高周波交流電圧を印加したとき、搬送波電圧の周波数を或る程度以上高くしておけば、カンチレバーに作用する静電気力と探針−試料間距離との関係が強い搬送波周波数依存性を有することを見いだした。カンチレバーに作用する静電気力は、試料表面及びカンチレバー表面に形成された電気二重層容量及びバルク溶液容量の誘電特性に影響を受ける。そのため、カンチレバーに印加する振幅変調交流電圧の搬送波周波数を変えることにより、それらの誘電的分散関係に関する情報を得ることができる。
【0012】
本発明は上記のような従来にない着想と実験等により得られた知見に基づいてなされたものであり、その第1の態様は、カンチレバーの先端に設けられた探針を液体中に浸漬された導電性の試料の表面に近接させ、該カンチレバーをその共振周波数で振動させたときに前記探針と前記試料との間に働く相互作用を検出するダイナミックモード原子間力顕微鏡を用い、前記試料の誘電特性を測定する測定方法であって、
前記カンチレバーにあって前記探針が位置する面又はその背面の少なくともいずれかに形成された導電体部と、間に液体を挟んで前記導電体部に対向する前記試料との間に、前記カンチレバーの共振周波数よりも高い周波数の搬送波をそれよりも低い周波数の変調波で振幅変調して生成した交流電圧を印加することによって、前記カンチレバーを静電気力により変調周波数で以て振動させ、
その振動成分に基づいて、探針−試料間に作用する静電気力と探針−試料間距離との関係の搬送波周波数依存性を求め、その周波数と静電気力との関係から試料の誘電特性に関する情報を得ることを特徴としている。
【0013】
また本発明の第2の態様は上記第1の態様と同様に、カンチレバーの先端に設けられた探針を液体中に浸漬された導電性の試料の表面に近接させ、該カンチレバーをその共振周波数で振動させたときに前記探針と前記試料との間に働く相互作用を検出するダイナミックモード原子間力顕微鏡を用い、前記試料の誘電特性を測定する測定方法であって、
前記カンチレバーにあって前記探針が位置する面又はその背面の少なくともいずれかに形成された導電体部と、間に液体を挟んで前記導電体部に対向する前記試料との間に、前記カンチレバーの共振周波数よりも高い第1周波数の交流電圧とそれよりも所定周波数だけ高い又は低い第2周波数の交流電圧とを加算して生成した励振電圧を印加することによって、前記カンチレバーを静電気力により前記第1周波数と第2周波数との差の周波数で以て振動させ、
その振動成分に基づいて、探針−試料間に作用する静電気力と探針−試料間距離との関係について第1周波数・第2周波数の差を一定に保ちつつ第1周波数又は第2周波数への依存性を求め、その周波数と静電気力との関係から試料の誘電特性に関する情報を得ることを特徴としている。
【0014】
なお、本発明に係る誘電特性測定方法では、導電性の試料が載置された導電性基板と上記導電体部との間に励振電圧を印加することで、試料と導電体部との間に励振電圧を印加することができる。
【0015】
また本発明に係る誘電特性測定方法では、振幅変調された搬送波電圧である励振電圧の印加に応じて振動する、又は、周波数の異なる2つの交流電圧が加算された励振電圧の印加に応じて振動するカンチレバーの変位を検出し、その変位の振幅及び/又は位相から静電気力の探針−試料間距離依存性を求めるようにすることができる。この場合、カンチレバーの変位検出方法は特に問わないが、例えば、カンチレバーの背面にレーザ光を照射し、その反射光を受光面が複数に分割された光検出器で検出して到達光の位置を割り出す光てこ方式を利用すればよい。
【0016】
本発明の第1の態様に係る誘電特性測定方法では、カンチレバーの共振周波数よりも高い周波数の搬送波をそれよりも低い周波数の変調波で振幅変調して生成した励振電圧をカンチレバー(探針)と試料との間に印加する。この印加電圧の周波数、つまり搬送波の周波数を変化させたとき、該周波数が界面の電気二重層の誘電緩和周波数より高くなると、界面溶液要素の分圧比と比べてバルク溶液要素の分圧比が大きくなり、界面張力効果による力は小さくなっていく。一方、カンチレバーに作用する静電気力は電圧の2乗に比例するため、変調波の周波数成分の静電気力が発生し、カンチレバーの振動が誘起される。これにより、静電気力は界面張力効果による力に比べて支配的となる。搬送波の周波数は変調波の周波数(つまりはカンチレバーの共振周波数)と無関係に設定することができ、カンチレバーに作用する静電気力は印加電圧の2乗に比例するため、搬送波の周波数をカンチレバーの共振周波数よりもかなり高い周波数とした場合でも振動検出に十分な振動振幅を得ることができる。
【0017】
一方、本発明の第2の態様に係る誘電特性測定方法では、カンチレバーの共振周波数よりも高い第1周波数の交流電圧とそれよりも所定周波数だけ高い又は低い第2周波数の交流電圧とを加算して生成した励振電圧をカンチレバー(探針)と試料との間に印加する。この場合には、第1周波数と第2周波数との差の周波数成分の静電気力が発生し、カンチレバーの振動が誘起される。例えば、周波数差を一定に保ちつつ第1周波数及び第2周波数を変化させたとき、それら周波数が界面の電気二重層の誘電緩和周波数より高くなると、界面溶液要素の分圧比と比べてバルク溶液要素の分圧比が大きくなり、界面張力効果による力は小さくなってゆき、カンチレバーに作用する力は静電気力が支配的になる。第1、第2周波数はカンチレバーの共振周波数と無関係に設定することができ、カンチレバーに作用する静電気力は印加電圧の2乗に比例するため、この第2の態様でも第1の態様と同様に、第1、第2周波数をカンチレバーの共振周波数よりもかなり高い周波数とした場合でも振動検出に十分な振動振幅を得ることができる。
【0018】
また後で詳述するように、本願発明者らの実験によれば、上記のようにカンチレバーを励振させた状態で探針−試料間距離を変化させると、カンチレバーに作用する静電気力は変化し、さらにその静電気力と探針−試料間距離との関係は搬送波周波数(又は第1周波数や第2周波数)に依存する。つまり、静電気力と探針−試料間距離との関係は周波数分散を示す。したがって、この周波数依存性に基づいて誘電緩和特性等の誘電特性を求めることができる。
【0019】
上記の本発明に係る誘電特性測定方法によれば、高周波数領域において界面張力の影響を抑え、液体中であっても試料と探針との間に作用する静電気力を検出し、これに基づいて試料の誘電特性を得ることができる。ただ、本願発明者の検討によると、探針を試料表面の極近傍にまで接近させた場合、バルク溶液容量が大きくなるため、電気二重層の中のヘルムホルツ層における静電容量が相対的に小さくなって、インピーダンスの上では後者が支配的になる。交流電圧印加によって探針に誘起される静電気力はバルク溶液容量に依存するため、ヘルムホルツ層のインピーダンスが相対的に増加することで、印加された交流電圧成分の大部分がヘルムホルツ層に印加されてしまうことになると、探針先端に静電気力が誘起されなくなり、検出される静電気力の局所性が低下するということが判明した。そこで、試料上の局所的な静電気力をより高い感度で測定したい場合には、カンチレバーを自励発振させ、カンチレバーに働く静電気力の作用によって自励発振の周波数がシフトする量を検出する周波数変調(FM)検出法を組み合わせるとよい。
【0020】
即ち、本発明に係る原子間力顕微鏡を用いた誘電特性測定方法においては、カンチレバーの導電体部と試料との間に励振電圧を印加するとともに、さらに該カンチレバーをその共振周波数で自励発振させ、該カンチレバーに作用する静電気力による共振周波数の周波数シフトを検出し、その周波数シフトにおける前記励振電圧に対する振動成分から探針−試料間に作用する静電気力の探針−試料間距離依存性を求めるようにしてもよい。カンチレバーをその共振周波数で自励発振させるためには既存の方法、例えば光熱励振法などを用いればよい。また、周波数シフトを検出する方法も既存の方法、例えば位相同期ループ回路(PLL)による周波数検出方法などを用いればよい。
【0021】
上記のFM検出法を組み合わせた誘電特性測定方法では、励振電圧における変調周波数(又は2周波の差周波数)がカンチレバーの共振周波数に一致していない場合でも、検出信号は共振周波数の変調として捉えられるために高い感度ゲインが得られる。また、上述した直接検出法では、カンチレバーに働く静電気力によって振動が誘起され、その振動振幅の大きさはカンチレバーの振動中心位置における静電気力によって決定されるのに対し、FM検出法を用いた場合には、カンチレバーは機械的に加振されており、カンチレバーに働く静電気力によって共振周波数シフトが誘起され、その共振周波数シフトの大きさはカンチレバーがカンチレバー振動周期のうち試料表面に最も近接したときの位置における静電気力によってほぼ決定される(非特許文献5参照)。カンチレバーが試料表面に近接するに伴って、カンチレバーや探針全体に働く静電気力よりも探針先端に働く静電気力が著しく大きくなるため、FM検出法では上述した直接検出法と比べて探針先端に働く静電気力を選択的に検出することができ、試料の誘電特性をより局所的に測定することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る原子間力顕微鏡を用いた誘電特性測定方法によれば、従来は困難であった、液体中に浸漬された状態である試料の局所的な誘電緩和特性などの誘電特性を測定することが可能となる。また、特にこの誘電特性測定方法はナノメートルスケールでの構造計測が可能な原子間力顕微鏡を用いているため、試料表面の高分解能構造観察と2次元的な誘電特性測定とを並行して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る誘電特性測定方法を実施するための一実施例である原子間力顕微鏡のカンチレバー励振部の概略構成図。
【図2】本実施例の原子間力顕微鏡の要部の概略構成図。
【図3】図1の構成において搬送波周波数を変化させたときの探針−試料間に作用する規格化交流静電気力と探針−試料間距離との関係を実測した結果を示す図であり、(a)は純水中、(b)は1-ヘプタノール中に置かれた試料の実測例。
【図4】図3(b)の結果に基づく規格化交流静電気力の周波数依存性を示す図。
【図5】本発明に係る誘電特性測定方法を実施するための別の実施例である原子間力顕微鏡の要部の構成図。
【図6】図5に示した原子間力顕微鏡を用いて測定した探針−試料間距離と周波数シフト振動の振幅との関係の実測例を示す図。
【図7】本発明に係る誘電特性測定方法を実施するためのさらに別の実施例である原子間力顕微鏡のカンチレバー励振部の概略構成図。
【図8】液体に浸漬された状態のカンチレバーの導電性表面と液体との界面付近の等価回路図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る誘電特性測定方法の一実施形態について、添付図面を参照して説明する。図2はこの誘電特性測定方法に用いられる原子間力顕微鏡の一実施例の要部の概略構成図、図1はその原子間力顕微鏡におけるカンチレバー励振部の概略構成図である。
【0025】
図2に示すように、観察対象である試料3は略円筒形状であるスキャナ1の上に載置された試料ホルダ2の上に保持される。試料ホルダ2は金属等の導電体からなり、試料3自体も導電性を有する。スキャナ1は、試料3を互いに直交するX、Yの2軸方向に走査するXYスキャナとX軸及びY軸に対し直交するZ軸方向に微動させるZスキャナとを含み、それぞれ水平位置制御部33、垂直位置制御部32から印加される電圧によって変位を生じる圧電素子を駆動源としている。試料3の上方には先端に探針6を備えるカンチレバー5が配置され、このカンチレバー5はカンチレバーホルダ7を介して台座部4に固定されている。液中測定を行うために、この台座部4の一部は下面が平坦なガラス製の透明体4aとなっている。試料ホルダ2と台座部4との間の空隙は分析用液体8で満たされ、試料3はこの分析用液体8中に浸漬されている。分析用液体8の上面は台座部4(透明体4a)の下面に完全に密着しており、探針6が試料3の表面を走査する際にも分析用液体8の液面の揺らぎは生じない。
【0026】
カンチレバー5のZ軸方向の変位を検出するために、台座部4の上方には、レーザ光源11、ミラー12、13、及び光検出器14を含む光学的変位検出部10が設けられている。光学的変位検出部10においては、レーザ光源11から出射したレーザ光をミラー12で略垂直に反射させ、台座部4の透明体4aを通してカンチレバー5の背面先端付近に照射する。カンチレバー5はシリコン又は窒化シリコンなどから成るが、その前面(試料3との対向面)及び背面には金(Au)、アルミニウム(Al)、等の金属薄膜5aが蒸着等により形成されている。それにより、カンチレバー5の背面は鏡面となっており、上方から照射されたレーザ光は高い効率で反射し、再び透明体4aを通って台座部4の上方に抜ける。そして、このカンチレバー5による反射光はミラー13を介して光検出器14に導入される。光検出器14はカンチレバー5の変位方向(Z軸方向)に複数(通常2つ)に分割された受光面を有するか、或いは、Z軸方向及びY軸方向に4分割された受光面を有する。カンチレバー5が上下に変位すると複数の受光面に入射する光量の割合が変化するから、その複数の受光光量に応じた検出信号を演算処理することで、カンチレバー5のZ軸方向の変位量を算出することができる。この光検出器14による検出信号は増幅されて振幅位相検出部30に入力され、そこで得られたカンチレバー5の変位の振幅・位相に関する情報がデータ処理部31に与えられる。
【0027】
導電性の試料ホルダ2は直流成分遮断用のコンデンサ25を介して励振電圧生成部21に接続され、一端がカンチレバー5の前面及び背面の金属薄膜5aと電気的に接続された導電性のリード部20の他端は本顕微鏡の接地電位(GND)に接続されている。励振電圧生成部21は、搬送波発生部22、変調波発生部23、振幅変調部24を含む。搬送波発生部22はカンチレバー5の共振周波数よりも高い所定の周波数範囲の中の周波数f0の正弦波電圧を発生するものである。一方、変調波発生部23は搬送波よりも低い周波数でカンチレバー5を励振させたい周波数fmの正弦波電圧を発生するものである。振幅変調部24は、搬送波の振幅を変調波波形に応じて変調する。したがって、振幅変調部24の出力、つまり試料ホルダ2に印加される励振電圧は周波数がf0でその包絡線は変調波波形に一致している。これにより、カンチレバー5前面の金属薄膜5aと、分析用液体8を間に挟んで対面する導電性の試料3との間に、励振電圧が印加される。なお、コンデンサ25は、励振電圧生成部21で生成される励振電圧が切り替えられるときに生じる大きな直流電圧を遮断するためのものである。
【0028】
また、励振電圧生成部21、垂直位置制御部32、水平位置制御部33は、主制御部34により制御され、該主制御部34には測定のために必要な条件やパラメータなどを設定するための操作部35や測定結果を表示するための表示部36なども接続されている。
【0029】
ここで、上記励振電圧がカンチレバー5前面の金属薄膜5aと試料3との間(以下「探針−試料間」と記す)に印加された場合における、カンチレバー5に作用する静電気力について説明する。
いま、或る電圧Vが探針−試料間に印加されたときに、探針−試料間の静電気力Fesfは次の(1)式となる。ここで、Ctsは探針−試料間の静電容量、zは探針−試料間距離である。
【数1】

探針−試料間に、直流電圧VDCと振幅変調信号(搬送波の角周波数ω0、変調波の角周波数ωm)とを印加する場合、印加電圧Vmodは次の(2)式で表される。
【数2】

したがって、探針−試料間に電圧Vmodを印加したときの探針−試料間の静電気力FAMesfは次の(3)式となる。
【数3】

(3)式に示すように、静電気力FAMesfは、直流成分を始めとする様々な周波数の成分を含むが、その1つとして変調波の角周波数ωmの成分が存在することが分かる。即ち、静電気力FAMesfによってカンチレバー5は変調波の角周波数ωmの成分を以て振動するから、例えばロックインアンプなどによりこの特定の周波数成分を検出することにより、角周波数ωm成分のみの静電気力を抽出することが可能である。
【0030】
上述したように分析用液体8中で金属薄膜5aと試料3との間に励振電圧が印加されたとき、カンチレバー5に作用する静電気力はωm成分を含むが、実際に金属薄膜5aに印加される電圧の角周波数はω0の近傍である。この角周波数ω0は図8に示した等価回路において電気二重層容量の誘電緩和周波数よりも高いため、界面溶液要素に印加される電圧成分は無視することができ、変調角周波数ωmに拘わらずバルク溶液要素に印加される電圧成分に起因する静電気力が支配的となる。本発明に係る誘電特性測定方法では、バルク溶液要素に印加される電圧成分に起因する静電気力が支配的になるような搬送波の周波数範囲でカンチレバー5は励振される。
【0031】
図2に示した構成の原子間力顕微鏡を用い、白金板を試料3とし、変調波周波数fmを2kHzに固定して搬送波周波数f0をカンチレバー5の共振周波数以上の範囲で変化させることにより、探針−試料間に作用する静電気力の探針−試料間距離依存性を実測により評価した。具体的には、水平位置制御部33により試料3上の測定位置(X−Y位置)を固定し、垂直位置制御部32によりスキャナ1を駆動して、探針−試料間距離を徐々に且つ段階的に変化させる。そして、搬送波周波数が或る1つに固定された状態で探針−試料間距離を所定範囲で走査しながら、各探針−試料間距離におけるカンチレバー5の変位の振幅・位相を光学的変位検出部10及び振幅位相検出部30により検出する。そして、データ処理部31においてその検出信号に基づいて静電気力を計算する。搬送波周波数を変化させる毎にこれを繰り返すことにより、図3に示したような、搬送波周波数をパラメータとした静電気力と探針−試料間距離との関係が求まる。もちろん、探針−試料間距離が固定された状態で搬送波周波数を徐々に変化させながら、カンチレバー5の変位を検出してもよい。図3(a)は純水(20℃)中、(b)は1-ヘプタノール(Heptanol)(3℃)中での実測結果である。
【0032】
図3(a)の結果を見ると、0.1MHz〜1.0MHzの周波数範囲では搬送波周波数f0によって探針−試料間距離依存性に明確な差異があり周波数分散がみられるのに対し、それ以上の周波数範囲においては探針−試料間距離依存性に差異が殆どないことが分かる。0.1MHz〜1.0MHzの周波数範囲における周波数分散は、振動に対する支配的な要素がバルク溶液要素の中のバルク溶液抵抗からバルク溶液容量に移ったことを示すものである。一方、1.0MHzを超える周波数範囲において周波数分散がみられないのは、この周波数範囲ではバルク溶液要素及び電気二重層容量に誘電緩和などの現象が生じないことを意味している。なお、図中の太い点線は、電気二重層の分圧効果を考慮し、探針及びカンチレバーに作用する静電気力を計算することで求めた理論曲線である。実測で得られた関係は理論曲線と極めてよい一致を示しており、この実測が理論に適合していることが明らかである。
【0033】
一方、図3(b)の結果を見ると、0.1MHz〜10MHzの周波数範囲では探針−試料間距離依存性に差異が殆どないのに対し、30MHz以上の周波数範囲において探針−試料間距離依存性に明確な差異があり周波数分散がみられることが分かる。0℃における1-ヘプタノールの誘電緩和周波数は約42.5MHzであるから、30MHz以上の周波数範囲での周波数分散は1-ヘプタノールの誘電緩和現象に起因し、誘電緩和周波数より高い周波数領域ではバルク溶液容量が小さくなり、探針が近接したときでも、ヘルムホルツ容量に印加される交流電圧成分が減り探針先端に大きな静電気力が働いた結果であると推測できる。
【0034】
図3(b)の実験結果の中で試料最近傍における規格化交流静電気力を搬送波周波数に対してプロットし直したのが図4である。この図4を見れば、10MHz以上の周波数範囲で静電気力の変化が確実に捉えられていることが分かる。この静電気力は探針6の先端とそれに対向する試料3上の特定の位置との間に作用する静電気力であり、該試料3上の特定位置の局所的な誘電特性を反映している。したがって、上述したように搬送波周波数を変化させたときの静電気力と探針−試料間距離との関係を原子間力顕微鏡により測定するという方法によって、数十MHz以上の周波数領域における誘電緩和現象をも明瞭に把握できることが確認できる。
【0035】
上記実施例では、金属薄膜5aと試料3(実際には試料ホルダ2)との間に、励振電圧生成部21から、搬送波を変調波により振幅変調することで生成した励振電圧を印加し、その変調波の周波数で以てカンチレバー5を振動させるようにしていたが、異なる2つの周波数の交流電圧を加算した励振電圧を印加し、その周波数の差で以て、つまり2つの周波数のうなり成分によってカンチレバー5を振動させるようにしてもよい。
【0036】
図7は、図1に示した実施例において励振電圧生成部の構成を変更した別の実施例の構成図である。励振電圧生成部210において、第1波発生部220はカンチレバー5の共振周波数よりも高い所定の角周波数ω0の正弦波電圧を発生し、第2波発生部230は角周波数ω0に対してカンチレバー5を励振させたい角周波数ωmだけ高い(又は低い)角周波数ω0+ωm(又はω0−ωm)の正弦波電圧を発生する。加算部240は、上記2周波の正弦波電圧を加算して出力する。
【0037】
いま、探針−試料間に、直流電圧VDC、角周波数ω0である第1交流電圧、及び角周波数ω0+ωmである第2交流電圧を印加する場合、印加電圧Vmodは次の(4)式で表される。
【数4】

したがって、探針−試料間に電圧Vmodを印加したときの探針−試料間の静電気力Fbeatesfは次の(5)式となる。
【数5】

【0038】
(3)式と同様に、(5)式に示される静電気力Fbeatesfは、直流成分を始めとする様々な周波数の成分を含むが、その1つとして第1交流電圧の角周波数と第2交流電圧の角周波数との差ωmの成分が存在することが分かる。即ち、静電気力Fbeatesfによってカンチレバー5は角周波数差ωmの成分を以て振動するから、例えばロックインアンプなどによりこの特定の周波数成分を検出することによって、角周波数ωm成分のみの静電気力を抽出することが可能である。したがって、このようなカンチレバー励振方法を用いた場合も、2周波の差周波数を変化させたときの静電気力と探針−試料間距離との関係を原子間力顕微鏡により測定するという方法によって、数十MHz以上の周波数領域における誘電緩和現象を把握することが可能である。
【0039】
ところで、本願発明者の検討によれば、探針6を試料3の極近傍にきわめて接近させた場合に、電気二重層の中のヘルムホルツ層の静電容量が支配的になり、バルク溶液容量が支配的である場合に比べて静電気力の局所性が乏しくなることが分かった。そこで、静電気力の局所性を向上させるために、上述した振幅変調した交流電圧(又は2周波の交流電圧を加算した交流電圧)である励振電圧をカンチレバー5と試料3との間に印加する励振方法に、さらに既知のFM検出法を組み合わせるようにしてもよい。
【0040】
図5は、FM検出法を併用した場合における誘電特性測定方法を実施するための原子間力顕微鏡の一実施例の要部の構成図である。図2に示した実施例の構成と同一又は相当する構成要素には同じ符号を付してある。
【0041】
この実施例による原子間力顕微鏡は、カンチレバー5をその共振周波数付近で自励発振させるために、光熱励振駆動部41、該駆動部41により駆動される励振用レーザ光源42、及びミラー43を備える。光検出器14の手前には、励振用レーザの波長の光を遮断する光学フィルタ44が配置されている。また、光検出器14による検出信号は例えばPLLなどにより構成されるFM検出部40に入力され、FM検出部40は探針−試料間に働く静電気力に起因して変化するカンチレバー5の共振周波数のシフト量を検出する。このシフト量における、変調周波数(又は2周波の差)成分の周波数シフト振動の振幅及び位相は振幅位相検出部30によって検出され、その検出結果がデータ処理部31に入力される。また、カンチレバー5は、FM検出部40から出力される、カンチレバー5の変位信号と同じ周波数で一定の位相だけシフトした励振信号によって励振される。図5に示した実施例では、励振信号は光熱励振駆動部41において励振用レーザ光源42の駆動電流信号に変換され、そのパワーが変調されることによってカンチレバー5の振動が誘起される。
【0042】
この構成では、変調波周波数fm(又は2周波ω0、ω0+ωmの差周波数ωm)そのものはカンチレバー5の共振周波数と一致していなくても、共振周波数のFM変調成分として検出されることになる。図6は、図5に示した構成においてカンチレバー5の共振周波数シフトにおける変調波周波数成分の周波数シフト振動の振幅と探針−試料間距離との関係を実測した図である。また、同図には、ヘルムホルツ層容量(=0.1F/m2)による分圧効果を考慮に入れて計算を行った理論曲線も示している。図6で分かるように実測は理論曲線によく一致しており、上記のようにFM検出を併用した場合でも、探針−試料間にはたらく静電気力の探針−試料間距離依存性が得られることが確認できる。したがって、この手法を用いてもFM検出法を併用しない直接検出法と同様に、試料の誘電特性の測定が可能である。
【0043】
なお、本発明は周波数変調検出方式のAFMのみならず、振幅検出方式、位相検出方式等のダイナミックモードAFM全般に広く用いることが可能である。
【0044】
また、上記実施例は本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜、変形、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
【符号の説明】
【0045】
1…スキャナ
2…試料ホルダ
3…試料
4…台座部
4a…透明体
5…カンチレバー
5a…金属薄膜
6…探針
7…カンチレバーホルダ
8…分析用液体
10…光学的変位検出部
11…レーザ光源
12、13…ミラー
14…光検出器
20…リード部
21、210…励振電圧生成部
22…搬送波発生部
23…変調波発生部
24…振幅変調部
25…コンデンサ
220…第1波発生部
230…第2波発生部
240…加算部
30…振幅位相検出部
31…データ処理部
32…垂直位置制御部
33…水平位置制御部
34…主制御部
35…操作部
36…表示部
40…FM検出部
41…光熱励振駆動部
42…励振用レーザ光源
43…ミラー
44…光学フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンチレバーの先端に設けられた探針を液体中に浸漬された導電性の試料の表面に近接させ、該カンチレバーをその共振周波数で振動させたときに前記探針と前記試料との間に働く相互作用を検出するダイナミックモード原子間力顕微鏡を用い、前記試料の誘電特性を測定する測定方法であって、
前記カンチレバーにあって前記探針が位置する面又はその背面の少なくともいずれかに形成された導電体部と、間に液体を挟んで前記導電体部に対向する前記試料との間に、前記カンチレバーの共振周波数よりも高い周波数の搬送波をそれよりも低い周波数の変調波で振幅変調して生成した交流電圧を印加することによって、前記カンチレバーを静電気力により変調周波数で以て振動させ、
その振動成分に基づいて、探針−試料間に作用する静電気力と探針−試料間距離との関係の搬送波周波数依存性を求め、その周波数と静電気力との関係から試料の誘電特性に関する情報を得ることを特徴とする誘電特性測定方法。
【請求項2】
カンチレバーの先端に設けられた探針を液体中に浸漬された導電性の試料の表面に近接させ、該カンチレバーをその共振周波数で振動させたときに前記探針と前記試料との間に働く相互作用を検出するダイナミックモード原子間力顕微鏡を用い、前記試料の誘電特性を測定する測定方法であって、
前記カンチレバーにあって前記探針が位置する面又はその背面の少なくともいずれかに形成された導電体部と、間に液体を挟んで前記導電体部に対向する前記試料との間に、前記カンチレバーの共振周波数よりも高い第1周波数の交流電圧とそれよりも所定周波数だけ高い又は低い第2周波数の交流電圧とを加算して生成した励振電圧を印加することによって、前記カンチレバーを静電気力により前記第1周波数と第2周波数との差の周波数で以て振動させ、
その振動成分に基づいて、探針−試料間に作用する静電気力と探針−試料間距離との関係について第1周波数と第2周波数との差を一定に保ちつつ第1周波数又は第2周波数への依存性を求め、その周波数と静電気力との関係から試料の誘電特性に関する情報を得ることを特徴とする誘電特性測定方法。
【請求項3】
請求項1に記載の原子間力顕微鏡を用いた誘電特性測定方法であって、
振幅変調された搬送波電圧である励振電圧の印加に応じて振動するカンチレバーの変位を検出し、その変位の振幅及び/又は位相から静電気力の探針−試料間距離依存性を求めることを特徴とする誘電特性測定方法。
【請求項4】
請求項2に記載の原子間力顕微鏡を用いた誘電特性測定方法であって、
第1周波数の交流電圧と第2周波数の交流電圧とが加算された励振電圧の印加に応じて振動するカンチレバーの変位を検出し、その変位の振幅及び/又は位相から静電気力の探針−試料間距離依存性を求めることを特徴とする誘電特性測定方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の原子間力顕微鏡を用いた誘電特性測定方法であって、
カンチレバーの導電体部と試料との間に励振電圧を印加するとともに、さらに該カンチレバーをその共振周波数で自励発振させ、該カンチレバーに作用する静電気力による共振周波数の周波数シフトを検出し、その周波数シフトにおける前記励振電圧に対する振動成分から探針−試料間に作用する静電気力の探針−試料間距離依存性を求めることを特徴とする誘電特性測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−53878(P2013−53878A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190981(P2011−190981)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 『2011年春季第58回応用物理学関係連合講演会[講演予稿集]』、第06−315ページ、平成23年3月9日、社団法人応用物理学会発行 『2011年秋季第72回応用物理学会学術講演会[講演予稿集]』、第06−331ページ、平成23年8月16日、公益社団法人応用物理学会発行
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)