原子間力顕微鏡法及び他の用途用の測定ヘッド
【課題】原子間力顕微鏡、詳細には光束検出システムに対して、重要な新規特徴及び長所を提供する改良であり、部分的に走査プローブ顕微鏡にも適用可能な改良を提供する。
【解決手段】具体的な特徴としては、入射光及び反射光に対する対物レンズの異なる領域の使用、光学ブロックの三次元の動きを可能にする屈曲部、ハウジング及び光学ブロックを複合材料又はセラミックで形成すること、光束が平面に垂直入射しないように構成要素を配置すること、カンチレバーと試料との間及びカンチレバーと収束レンズとの間において、カンチレバーの振動の850Hzを超える共振振動数を与えること、及び、入射光束を5μm以下のスポット、好ましくは3μm以下のスポットに収束させることが含まれる。
【解決手段】具体的な特徴としては、入射光及び反射光に対する対物レンズの異なる領域の使用、光学ブロックの三次元の動きを可能にする屈曲部、ハウジング及び光学ブロックを複合材料又はセラミックで形成すること、光束が平面に垂直入射しないように構成要素を配置すること、カンチレバーと試料との間及びカンチレバーと収束レンズとの間において、カンチレバーの振動の850Hzを超える共振振動数を与えること、及び、入射光束を5μm以下のスポット、好ましくは3μm以下のスポットに収束させることが含まれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査プローブ装置の分野に関する。詳細には、本発明は、カンチレバーの撓みの測定に用いられる原子間力顕微鏡の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
原子間力顕微鏡(AFM)等の走査プローブ装置は、金属、半導体、鉱物、ポリマー及びバイオマテリアル等といった広範な材料のイメージングを行うための、優れた道具であることが証明されている。AFMでは、力が作用すると撓むカンチレバーによって、力が測定される。このカンチレバーの撓みは、検出システムによって、通常は、入射光束をカンチレバー上にスポットとして収束させ、反射光束をセグメント化された検出器に向かわせることにより、感知される。分子の構造及び力学を判定するためにこれらの分子を引き抜く目的で、「フォース・プラー(force puller)」と呼ばれる特殊なAFMが構築されている。最近では、薬品検出装置としても、AFMのようなカンチレバー及びカンチレバーアレイが用いられている。この動作モードでは、カンチレバーの1つ以上の面に、薬品に感度がある層が塗布される。ターゲット分子が検出されると、カンチレバーのナノ機械的特性に影響がでる。即ち、カンチレバーの撓み及び/又は共振振動数が変化する。
【0003】
導入以来、AFM及びカンチレバー式検出装置はますます進化し、より小さな力を測定し、より小さなカンチレバーを用いるようになっている。このことにより、計測器の感度に関する問題が生じている。科学分野の研究者が試料の測定又は操作のために必要とする、より小さいカンチレバー及びより小さい力に対処するために、より高い感度とより小さいスポットサイズとを備える必要がある。近接場走査型光学顕微鏡(NSOM)、走査型イオンコンダクタンス顕微鏡(SICM)、及びその他の様々な走査プローブ顕微鏡で用いられる光学プローブの動きの監視にも、類似の検出技術が用いられている。ナノテクノロジー分野の成長も、ナノメートル規模及びそれ以下に及ぶ広範な各種オブジェクトの位置及び/又は動きの精密測定に十分な動機を与える。
【0004】
次に挙げる米国特許は、本発明に関連するものである。米国特許第5,825,020号「小さい入射光束スポットを生じるための原子間力顕微鏡(Atomic force microscope for generating a small incident beam spot)」、米国特許第#RE034489号「オプションの交換可能流体セルを有する原子間力顕微鏡(Atomic force microscope with optional replaceable fluid cell)」及び米国特許第4,800,274号「高解像度原子間力顕微鏡(High resolution atomic force microscope)」。次に挙げる刊行物は、本発明に関連するものである。(1)ビアニら(Mario B. Viani, et al.),「単一分子の力の分光測定用の微小カンチレバー(Small cantilevers for force spectroscopy of single molecules)」,応用物理学会誌(Journal of Applied Physics),第86巻,第4号,p.2258−2262。(2)シェイファーら(Tilman E. Schaffer, et al.),「微小カンチレバーに対する原子間力顕微鏡の検出感度の特徴付け及び最適化(Characterization and optimization of the detection sensitivity of an atomic force microscope for small cantilevers)」,応用物理学会誌(Journal of Applied Physics),第84巻,第9号,p.4661−4666。(3)シェイファーら(Tilman E. Schaffer, et al.),「微小カンチレバー用の原子間力顕微鏡(An atomic force microscope for small cantilevers)」,SPIE−光工学国際学会(SPIE-The International Society for Optical Engineering),第3009巻,p.48−52。(4)ウォルターズら(D.A. Walters, et al.),「原子間力顕微鏡法用の短いカンチレバー(Short cantilevers for atomic force microscopy)」,科学器具類のレビュー(Review of Scientific Instrumentation),第67巻,第10号,p.3583−3590。(5)シェイファーら(T.E. Schaffer, et al.),「原子間力顕微鏡のカンチレバーを液中で振動させる研究(Studies of vibrating atomic force microscope cantilevers in liquid)」,応用物理学会誌(Journal of Applied Physics),第80巻,第7号,p.3622−3627。(6)ウォルターズら(Deron A. Walters, et al.),「微小カンチレバーを用いた原子間力顕微鏡法(Atomic force microscopy using small cantilevers)」,SPIE−光工学国際学会(SPIE-The International Society for Optical Engineering),第3009巻,p.43−47。上記の特許及び刊行物の全てを参照して本明細書に援用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、カンチレバーの動きを測定するための任意の光学システムに汎用的に適用可能であると共に特にAFMに適用される、反射光束の光学的な追跡及び検出のための改良を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
詳細には、本発明は、既存のAFMヘッドを超える重要な新規特徴及び長所を有する改良されたAFMヘッドを提供する。特に新規な特徴は、入射光及び反射光に対して1つの対物レンズの異なる領域が用いられる新規な光路の使用である。このAFMの第2の新規な特徴は、光学レバー検出システムの、光源と末端の収束レンズとの間の、光源及び収束レンズも含む全光学素子を、非常に小さく剛性の高いパッケージ内に収容した統合型光学ブロックである。別の新規な特徴は、AFMの光源からの光束が、強く発散又は収束された場合を除き、平面に垂直入射しないことである。更なる新規な特徴は、光学ブロックの三次元の動きを可能にする三次元屈曲部(flexure)である。別の新規な特徴は、AFM
の性能に最も影響する2つの機械的経路である、カンチレバーから試料までの機械的経路及びカンチレバーと収束レンズとの間の機械的経路に対して、850Hzを超える共振振動数を可能にすることである。これは、走査器上の試料とカンチレバーとの間の直接的な機械的経路を設けるために、カンチレバーホルダーを圧電走査器の上に直接向かわせるよう動的に割出しすることによって補助される。AFM及びSTM並びに他の走査プローブ顕微鏡を改良する更に別の新規な特徴は、走査プローブ顕微鏡のハウジング、光学ブロック及びその他の構成要素を構成するために複合材料又はセラミックを用いて、所望の高い剛性及び低い熱膨張係数を与えることである。
【0007】
これらの特徴の1つ以上を用いた結果として、従来可能であったよりも小さい収束スポットを有するAFMを達成できる。本発明の特定の実施形態では、カンチレバー上に、少なくとも1つの寸法において5μm以下、好ましくは3μm以下のサイズのスポットを形成するよう入射光束が収束されるAFMの改良が提供される。
【0008】
本発明の改良の多くは、ナノ機械オブジェクトの、又はオブジェクトのナノサイズ要素若しくは構造の、動き又は位置を測定する光学システムに広く適用可能である。
【0009】
本発明の上記及びその他の態様及び長所は、以下の詳細説明及び添付の図面に関してより良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態の光路及び関連要素、並びに、例えば本発明の原子間力顕微鏡の測定ヘッドのハウジングの部分切取り図を示す斜視図である。
【図2A】図1の光路及び関連要素をハウジング外で示す斜視図である。
【図2B】光学測定ヘッドの別の実施形態の模式的な部分拡大図である。
【図2C】光学測定ヘッドの別の実施形態の模式的な部分拡大図である。
【図2D】光学測定ヘッドの別の実施形態の模式的な部分拡大図である。
【図3】図1の構成要素を内包した統合型光学ブロックを横から示す斜視図である。
【図4】光学ブロックの詳細を示すために図3を異なる角度から見た部分切取り図である。
【図5】ハウジングを部分的に切り取って横方向位置決めねじを示す、顕微鏡を上から見た図である。
【図6A】光学ブロック及び屈曲要素の分解斜視図である。
【図6B】本発明で用いられる垂直可動焦点部材のボール接触面を示す平面図である。
【図6C】本発明で用いられる円盤状屈曲部のソケットのボール接触面を示す平面図である。
【図7】AFMのカンチレバーを収容した流体セルの位置を示す、AFMヘッドを下から見た斜視図である。
【図8】AFMハウジングから分離された流体セルを示す、AFMヘッドを下から見た斜視図である。
【図9】流体セルを走査器に直接向かわせる動的割出しを示す、図8の流体セルの底部及びそれと対向する走査器の面を示す斜視図である。
【図10A】カンチレバーと試料との間の機械的経路の簡略図である。
【図10B】カンチレバーと試料との間の機械的経路の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、カンチレバー並びに他のナノ機械装置及び要素の撓みの測定に使用可能な測定ヘッドが提供される。この測定ヘッドの最も一般的な用途は、原子間力顕微鏡の検出ヘッドとしてのものであるが、この測定ヘッドは、装置の動作のためにナノメートル規模の動きが重要となる場合の要素又はオブジェクトである、任意のナノサイズ要素若しくは構造又はナノ機械オブジェクトの動きを精密に測定するために用いることも可能である。更に、この測定ヘッドの主要要素の多くを用いて、ナノメートル規模の任意の対象物の縦及び/又は横の動きを測定するための改良された能力を提供できる。
【0012】
これらの撓みはカンチレバーにかかる力に関係し、力vs距離の曲線を測定するため、イメージング中にフィードバックネットワークによって制御されるべき力を測定するために用いることができ、並びに、磁力顕微鏡測定、ケルビンプローブ顕微鏡測定、非接触型AFM及び、カンチレバーの撓みの測定を要する他の任意の装置を含む従来の原子間力顕微鏡ヘッドに対して既に確立された多くの用法のために、用いることができる。
【0013】
詳細には、本発明は、次に示す改良の1つ以上を提供する。これらの全てはAFMに適用可能であり、幾つかは、より汎用的に光学システムに適用可能であり、別の幾つかは、一般的にAFMやSTM等の走査プローブ顕微鏡に適用可能である。AFMに関して示される改良は次の通りである。
I.入射レーザ光がレンズの中心軸と揃わない。
II.小さく剛性の高い統合型光学ブロックが、光源から末端の収束レンズまでの全光学素子を収容し且つ含む。
III.屈曲部(flexure)により光学ブロックの三次元の動きが可能である。
IV.複合材料又はセラミックが用いられる。
V.収束又は発散の場合を除き、光束が平面に垂直入射しない。
VI.カンチレバーと試料との間及びカンチレバーと収束レンズとの間の重要な機械的経路が、850Hzを超え得る共振振動数を有する。
VII.入射光束が3ミクロン以下のスポットを形成する。
本発明は、他の幾つかの革新的な点を含み、それらについては以下において適宜説明する。
【0014】
I.入射レーザ光がレンズの中心軸と揃わない
微小カンチレバーAFM測定ヘッドの重要課題の1つは、入射光束と反射光束との分離である。この理由は、微小カンチレバーAFMは、カンチレバー上に収束光の微小スポットを形成するために、開口数(NA)が高い光学(系)を必要とするという問題があるからである。開口数が高い光学系とは、一般的に、焦点距離が短いレンズがカンチレバーに非常に近接して配置されることを意味する。これにより、カンチレバーから反射された光束が検出器に向かって通過するスペースがほとんどない。上述の米国特許第5,825,020号は、入射光束と出射光束とを分離するための1つの方法を提供している。入射光束は偏光され、収束レンズを通り、カンチレバーから反射され戻って同じ収束レンズを通り、次に、反射光束は1/4波長板によって分離経路に向けられる。
【0015】
以下に述べるように、本発明は、1/4波長板を必要とせずに、これとは異なる独自の方法でこの問題を解決する。図1及び図2は、本発明によるAFMのハウジング12に収容された光学系10を示している。光源16からの光束14はコリメータレンズ18を通る。光源は、レーザダイオード、ヘリウムネオンレーザ、光ファイバに接続されたレーザ若しくはレーザダイオード、垂直共振器型面発光レーザ、高輝度ダイオード若しくは発光ダイオード、又は光束を生じる他の光源であってよい。固体光源の場合には、理想的には、光源は、30um以下の規模の非常に小さい発光領域を有するべきである。
【0016】
コリメータレンズ18から出た光束は、対物レンズ22の半分を通る入射光束20として続き、対物レンズ22は入射光束20をカンチレバー24上に収束させる。図示されるように、光学系10は、空気中、他の気体中又は真空中で動作するよう使用可能である。米国特許第B1Re34,489号のものと同様のガラス製カンチレバーホルダーを用いて、検出システムが、流体に浸されたカンチレバーの動きを測定できるようにすることも可能である。カンチレバー24から出た反射光束26は対物レンズ22の他方の半分を通り、検出器へと向かう。対物レンズ22と検出器との間には、後で簡単に説明する他の光学構成要素も存在する。このように、本発明は、入射光束と出射光束とを分離するための非常に簡単且つ簡潔な方法に備えている。入射光束20は、レンズの中心軸から外れて対物レンズ22に当たるので、光束は、レンズの光軸に対して非ゼロの角度でレンズから出る。この好ましい実施形態にように、カンチレバーが光軸に対して垂直に保持されれば、カンチレバーから反射された出射光束26も、光軸に対して同様の角度をなす。これらの2つの非ゼロの角度は、共に、分離されるべき入射光束と出射光束との間に空隙を設ける。好ましい実施形態では、入射光束20と反射光束26とは実質的に重ならない。入射光束20がレンズ22の中心軸からかなり離れて配置される場合には、レンズから出てカンチレバーに向かう光束は、かなり急角度で横方向移動する。このことは、AFMにおいて、試料から反射又は拡散されたいかなる迷光も、検出器に当たる可能性が低い経路に沿うよう向けられるという別の長所を有する。この迷光は、AFM測定において光学干渉を生じることがあり、それについては後で更に説明する。
【0017】
図2Aに示されるように、好ましい実施形態では、対物レンズ22上の入射光束20の位置は、入射光束20と出射光束26とが重ならないように選択される。本発明の範囲に含まれる多くの類似の実施形態がある。例えば図2Bでは、反射光束26がレンズを通って戻らないように、対物レンズ22が概ね半分に切断される。図2Cに示される別の実施形態(好ましい実施形態ではない)では、入射光束と出射光束とが僅かに重なるように構成される。この実施形態は、NAが高い光束を提供してより小さな収束スポットを生じ得ると共に/或いは、より小さな対物レンズの使用を可能にし得るものである。図2Dには、第4の別の実施形態が示されている。この実施形態では、入射光束がレンズの中心軸と概ね揃うように構成される。しかし、この場合には、入射光束の経路上に、入射光束を部分的に遮断するビームスプリッタ又はミラーが配置される。すると、ビームスプリッタ又はミラーによって、反射光束の一部が検出器へと向けられる。勿論、この概念には、類似の結果を生じることが可能な、本発明の範囲内の多くの変形がある。
【0018】
図2Aの好ましい実施形態に戻ると、対物レンズ22から出た出射光束26は、小ミラー28で反射され、光学干渉シールド30を通過し、次に光学円柱レンズ32を通過し、検出器34に当たる。光学干渉シールド30は、カンチレバー24から反射された一次光束26を通し且つ他の光を遮断するよう配置される。シールド30は非反射性であり且つ迷光の拡散及び/又は反射を最小限にするために吸収性であるのが理想的である。迷光は、環境光及び検出器からの光、並びに、光学面及び/又は機械的なハウジング構成要素の表面から拡散又は反射された光束を含む複数の源に起因し得る。干渉シールドはこの迷光を遮断し、力vs距離曲線中に波として現れる干渉効果を低減する。小ミラー28は、光束を方向転換させるために全反射が用いられる小プリズムであってもよい。カンチレバーの曲がりに反応した光束の移動に対して垂直な軸における光束のサイズを収束又は別様で抑制するために、オプションで光学円柱レンズが用いられる。
【0019】
II.統合型光学ブロック
図3は、統合型光学ブロック40内に保持された図1の構成要素を示している。光学ブロックは、光源と末端の収束レンズとの間の、光源及び収束レンズも含む全光学素子を収容している。これらの構成要素を単一の統合型ブロック内に設けることにより、封入された光学素子の配置を最適化し、適切な位置に任意に固定することができる。この構成では、この測定ヘッドの性能に寄与する重要な光学要素が互いに対して固定されたままにできるので、光学的な性能がユーザの調整に影響されない。米国特許第5,825,020号等の従来技術の微小カンチレバーAFM測定ヘッドは、少なくとも1つのレンズを光路上の1つ以上の他のレンズに対して平行移動させることにより、収束スポットをAFMカンチレバー上に配置する。例えば、米国特許第5,825,020号の図7について考える。この図では、ねじ72を調節することにより、レンズ62が末端の収束レンズ60に対して移動して、収束スポットを平行移動させる。同様に、図9のねじ184及び186は、光源を、他の多くの光学素子に対して平行移動させる。この構成では、コリメートされたレーザ光が収束レンズの異なる部分を通って横方向移動し、最適ではない角度でレンズに当たることがあるので、光学性能が低下する。これは、ユーザがレーザスポットの位置を調節すると、レーザスポットのサイズが変化するという結果を生じる。
【0020】
本発明の統合型光学ブロック40では、収束スポットをカンチレバーに向けて操作すると全ての重要な光学素子が一緒に動くので、従来技術を超える改良が提供される。(この三次元屈曲部である操作機構については次節で説明する。)従って、この技術により、測定ヘッドが、測定ヘッドの全調節範囲にわたって小さい焦点を維持することができる。オプションとして、この光学ブロックに、温度変化に対して安定した屈折率を有する気体を充填して密封してもよい。これにより、周囲の空気の温度変化による光束の歪みが防止される。
【0021】
好ましい実施形態では、統合型光学ブロック40には、接着剤で本体44に取り付けられたブリッジ部品42がある。このブリッジ及び本体は、2つの構成要素を共に固定する任意の方法で取り付けられてもよい。ブリッジ42及びベース44は、単一片から加工又は形成されてもよい。次節で説明する、光束をカンチレバーに向けて操作可能にする革新的な三次元屈曲部を組み合わせるための接点が、ブリッジ42によって設けられる。好ましい実施形態では、光源16は、ブリッジ部品42の下に取り付けられる。統合型光学ブロックの更なる詳細は、第III節及び第IV節で説明する。
【0022】
III.屈曲部が光学ブロックの三次元の動きを可能にする
光学ブロック40は、新規な三次元円盤状屈曲部52でハウジング12に取り付けられている。この屈曲部は、収束スポットをカンチレバーや他のナノ機械オブジェクト上へと操作するために、光学ブロックを光源の中心軸上の点回りの二つの軸上で回動させるように設計されている。この三次元屈曲部によって、光学ブロックが光源の軸に沿って一次元に独立して平行移動するのも可能となる。これにより、焦点調節、即ち、収束スポットの高さをカンチレバー又は他のナノ機械オブジェクトの平面に揃えることができる。
【0023】
好ましい実施形態では、円盤状屈曲部は鋼鉄で作られているが、アルミニウム、銅、ベリリウム銅若しくはチタン等の他の金属、又は十分な剛性を有する他の材料で作ることも可能である。細目ねじの形態の垂直可動焦点部材54は、ステンレス鋼又は他の精密ボール58及び力を中心に保つためのねじ山付きソケット60を介して屈曲部52の中心を押圧する。この好ましい実施形態では、円盤状屈曲部52は平たい円形板の形態である。別の実施形態では、ばね定数を低減することによって屈曲運動方向への移動を増加させるために、円盤状屈曲部は切抜き部を有してもよい。屈曲部は必ずしも円形でなくてもよいが、平面内運動に対しての剛性は平面外運動と比べてかなり高い剛性を有するべきである。
【0024】
ねじ山付きソケット60は、光学ブロック40の上に固定された対応するねじ山付きナット62にねじ込まれることにより、円盤状屈曲部を光学ブロック40の中心に固定する。好ましい実施形態では、円盤状屈曲部52は、ナット62から側方遠位に、その周囲に沿った複数の位置64において、ねじ等の固定具を用いてハウジング12に固定される。或いは、円盤状屈曲部52の周囲は、例えば溶接、留め金具による適切な位置への保持、接着剤又は他の類似の手段等といった他の様々な方法で固定されてもよい。ボール58を、垂直可動焦点部材54及び円盤状屈曲部52のソケット60の向かい合う面の間に受容させることにより、光学ブロック40の垂直方向への上下移動及びハウジング12に対する回動を可能にしつつ、光学ブロック40の横方向の平行移動が防止される。
【0025】
光学ブロック40の焦点微調整垂直移動を可能にするために、焦点微調整レバー56は、そこから延びる垂直可動焦点部材54に接続されている。ハウジング12には細長い横方向のスロット66(図1も参照)が形成されており、焦点微調整レバー56はスロット66を通って延出している。
【0026】
図6A及び図6Bを参照すると、ボール58との滑らかな転がり接触のために、焦点部材54及び円盤状屈曲部52のソケット60の向かい合う面の一方又は両方に、それぞれ68及び70のサファイアコーティングを施してもよい。
【0027】
周囲がハウジング12に固定された円盤状屈曲部52の中心に、滑らかに転がるボール58によって接続された、垂直可動焦点微調整部材54の上述の構成は、円盤状屈曲部52を垂直に偏向するためにレバー56を回転させる際の光学ブロック40の横方向の動きを回避しつつ、回動を可能にするので、レーザ光束20をカンチレバー24又は複数のカンチレバーのうち選択された1つと揃えるために横方向に移動させることができる。
【0028】
図4及び図5をより詳細に参照すると、レバー56は、光学ブロック40全体を、カンチレバーホルダー72の溝76内にある固定ねじ74によってカンチレバーホルダー72に固く取り付けられたハウジング12に対して移動させるので、焦点微調整機構として作用する。カンチレバーホルダーの他方の側にある類似の溝(図示せず)は、ハウジング12に取り付けられた2つのボール(図示せず)に接触している。これは、カンチレバーホルダー72を保持してカンチレバー24をハウジング12に対して固定するための半ば動的な装着部を構成する。レバー56が光学ブロック40をハウジング12に対して移動させるので、これにより光学ブロック40がカンチレバー24に対して移動し、焦点微調整機構を提供する。従来のAFMは、しばしば、焦点調整を行うと、寄生性の横方向の動きによりスポットも移動され、焦点調整の間に収束スポットがカンチレバーからずれるという問題を有する。本発明の、レバー56及び革新的な三次元屈曲部によって可能となる焦点微調整の動きは、光学系の焦点の動きを単一の平行移動軸に実質的に制限できるようにするので、他の従来のAFMの焦点微調整の動きよりも優れている。これにより、ユーザは、光のスポットを長さ5μm程度で非常に小さいカンチレバー上に保持しつつAFM測定ヘッドの焦点を調整できる。
【0029】
図3及び図5は、横方向位置決めねじ36及び37の両方が見える顕微鏡の図である。これらの位置決めねじは、光学ブロック40を押圧し、(例えば米国特許第5,825,020号24の図2に示されているカンチレバーチップ上の)複数のカンチレバーのうち選択されたカンチレバーに対して相対移動させ、レーザスポットを所望のカンチレバー上に位置決めする。屈曲部52が位置決めねじ36及び37をしっかりと押圧するように、屈曲部52に予め荷重を加えることもできる。このようにして、屈曲部52は、光学ブロック40をカンチレバー24に対して三次元に移動させて、入射レーザ光20をカンチレバー24上に位置決めし且つ収束させることができる。この構成は、ほとんどのAFMで用いられているレーザ操作システムより優れている。ほとんどのAFMは、直交する2つの方向にレーザ光を操作する二軸動的傾斜台を用いている。このような装置は、例えば、ニューポート・コーポレーション(Newport Corporation)、メレス−グリオット(Melles-Griot)及び他の多くの会社から入手可能である。これらの二軸傾斜台は、例えば長さが50μmを超えるより大きなカンチレバーを有するAFMに対しては良好に機能するに十分な分解能を有する。残念ながら、特に長さが10μm未満の非常に短いカンチレバーに対しては、これらを手動調整に用いるのはより困難になる。一般的な動的傾斜台は、収束スポットの動きを、調節アクチュエータの動きと比べて拡大するレバーアームを有する。この拡大(2倍以上であることが多い)により、ユーザは調節ねじを、収束したレーザ光を移動させたい量よりも更に小さく動かすことが必要である。本発明は、2つのレーザ調節ねじ36及び37が統合型光学ブロック40の底部に非常に近接して配置された、改良された光束操作装置を提供する。この構成は2つの長所を有する。第1に、傾斜台を非常に小型に保ちつつ傾斜台のレバーの拡大が低減される(好ましい実施形態ではおよそ1.25)。第2に、レーザスポットの位置を制御する機械的経路が実質的に短縮される。即ち、レーザスポットの横方向の位置は、カンチレバーの僅か数ミリメートル上に取り付けられたねじによって決定される。図4を参照すると、この機械的経路の長さは、実際にはねじ36(及び図示されていない37)の端部の直径及びカンチレバーホルダー72の厚さのみによって制限される。
【0030】
対物レンズ22はねじ山付きスリーブ81に装着され、ねじ山付きスリーブ81は、光学ブロック40に接着されたレンズ装着部83にねじ込まれる。ねじ山付きスリーブ81をレンズ装着部83にねじ込むことにより、カンチレバー24上の焦点を荒調整することができる。
【0031】
図3に示されるように、コリメータレンズ18(図2の切取り図に示す)に対する光源16の調節を可能にする、比較的厚いレーザ位置決め屈曲部46も存在する。光源16はこのレーザ位置決め屈曲部46に装着され、適切な位置にねじ48で固定されるか又は接着剤で取り付けられる。対物レンズ22と協働してカンチレバー24上に適切なスポットを生じる、良好にコリメートされた光束、あるいは発散光又は収束光を生じる目的で、レーザ位置決め屈曲部46を本体44に対して屈曲させ、光源16とコリメータレンズ18との距離を変えるために、別のねじ50が用いられる。次に、この良好にコリメートされた光束は対物レンズ22を通過する。好ましい実施形態では、この第2の屈曲部は、光源によって生じる熱の放熱板として作用するように熱伝導性が高い材料で作られる。
【0032】
別の実施形態では第2の屈曲部はなくてもよい。別の一実施形態では、コリメータ及び光源を、それらを非常にコリメートされた出射光束を形成するための最適な位置に位置決め可能にする組立て治具内に配列してから、これらの構成要素を適切な位置に接着してもよい。
【0033】
IV.複合材料又はセラミックの使用
上述した部品及び統合型光学ブロック10、11は、カーボン複合材料で形成される。この材料の長所は剛性が高いことであり、剛性は密度で割り算した弾性係数の平方根で求められる。また、この材料は熱膨張係数が非常に低い。これらの特質はどちらも走査プローブ顕微鏡に非常に望ましい。これらの長所の一方又は両方を有する別の複合材料も、走査プローブ顕微鏡に有用であろう。従って、本発明の一実施形態は、AFMやSTM等の走査プローブ顕微鏡のハウジング、光学ブロック、走査器、及び他の構成要素を作成するための複合材料の使用である。
【0034】
適切な複合材料としては、強度が高い樹脂、グラスファイバー、グラファイト、カーボン、ホウ素、石英等のモジュラスが高い繊維、及び、優れた高温耐性、耐炎性及び電気特性を特徴とするアラミド(aramid)繊維(即ち芳香族ポリアミド繊維)から作られる複合材料が挙げられるが、これらに限定されない。適切な複合材料は5GPa〜300GPaの引張弾性係数によって特徴づけられ、これは使用中に十分に高い熱安定性を示す。特定の実施形態では、複合材料は10GPa以上の弾性係数を有する。更に好ましい実施形態では弾性係数は40GPa以上であり、更に好ましい実施形態では弾性係数は100GPa以上である。最も繊維強度が高い複合材料はカーボン繊維によって達成される。カーボン繊維は、エポキシの素地又は好ましくはグラファイトの素地に埋め込まれてもよい。連続した繊維の配向は任意の空間軸に沿わせることが可能であるが、少なくとも1つの面において半等方性の設計が好ましい。幾つかの複合材料は、軸ごとに異なる熱膨張係数を有する。このような材料を用いる場合には、熱膨張係数が低い軸が、カンチレバーと試料との間の機械的経路の最も長い軸に沿って配向されるように材料を位置決めするのが好ましい。
【0035】
好ましい実施形態では、本願発明者は、熱分解グラファイトの素地に埋め込まれたカーボン繊維で構成された強度が高いカーボン−カーボン複合材料を用いた。カーボン−カーボン複合材料の弾性係数は非常に高く、通常は、三次元「繊維フェルト」(ランダム配向された繊維)で作られた複合材料では15〜20GPa、単方向繊維シートで作られたものでは150〜200GPaの範囲である。弾性係数対密度の比が高いこの材料の選択は、後述するように機械的経路の共振振動数を850Hz以上に高める能力に対して大きな影響を及ぼす。更に、非常に低密度のカーボン−カーボン複合材料も幾つか入手可能である。例えば、エアロスペース・コンポジット・プロダクツ(Aerospace Composite Products)の「Etan」材料は、1.3g/cm3の密度を有し、これは密度が約2.7g/cm3のアルミニウムのほぼ半分である。本発明の光学ブロックは三次元屈曲部の下方に懸架されているので、屈曲部の固有振動数は光学ブロックの質量によって異なる。従って、本願発明者は、非常に低密度の材料から光学ブロックを作ることにより、金属製のブロックで可能なよりも屈曲部の固有振動数を遙かに高くすることを達成できた。複合材料の密度は5g/cm3未満であるのが好ましく、2.0g/cm3未満であるのがより好ましく、1.5g/cm3未満であるのが最も好ましい。
【0036】
複合材料の単位体積に対する繊維の体積含有量は約20〜70%であり、50%を超えるのが好ましい。単位体積当たりの繊維含有量が高い(50%〜70%の範囲が好ましい)と、固い材料が良好に埋め込まれた緻密な材料が得られ、粒子強度(grain-strength)の限界が高くなるという長所がある。
【0037】
カーボン複合材料は、非常に好ましい熱膨張係数も有する。ほとんどの走査プローブ顕微鏡は、「熱によるずれ」の問題を有する。即ち、プローブと試料との間又はプローブと検出システムとの間の機械的経路が、温度の変化と共に変化する。カンチレバーと試料との間の機械的経路が温度と共に長さを変えると、この変化は、試料の表面の位置の変化として現れ、試料に対して行われる任意の測定がゆがめられる。これは、温度変化に伴う、機械的経路に用いられる材料の熱膨張又は収縮の問題である。ほとんどのAFMは、アルミニウムやステンレス鋼等といった10-5/℃程度の熱膨張係数を有する金属で作られる。熱膨張係数が低くなるよう設計された合金であるInvarTMで作られたAFMもある。残念ながらこの材料は高価であり、加工が困難であると共に、ニッケル等のコーティングを追加して保護しない場合は時間が経つと錆びる。この従来技術のAFMの問題は、カーボン繊維複合材料等の複合材料を用いることによって克服される。組成及び繊維の軸の配向によって、カーボン複合材料は正又は負の熱膨張係数を有することが可能である。これにより、非常にゼロに近い熱膨張係数を与えるよう組成を調整することができる。好ましい実施形態では5×10-6℃未満、最も好ましくは10-6℃未満の熱膨張係数を有するカーボン−カーボン複合材料を用いることができ、これはアルミニウムや鋼鉄のほぼ10倍良好である。
【0038】
好ましい実施形態のカーボン−カーボン複合材料は、例えば収束スポットの位置決めに用いられる細目ねじ等の、測定ヘッドに用いられる様々な調節ねじを保持するために、直接孔をあけてねじ切りすることが可能である。本願発明者は、カーボン−カーボン複合材料に、1インチ当たり200個のねじ山というピッチを有する雌ねじを加工した。カーボン−カーボン複合材料は、幾分自己固定性且つ自己潤滑性の特性も有する。これは具体的には、まず調節ねじが回されると、そこにかなり強い摩擦力が生じ、ねじがその位置に保持されるという意味である。一旦運動が開始されると、ねじはかなり滑らかに高精度で調節可能である。しかし、ねじが放置されると、カーボン−カーボン複合材料は再び緩和し、ねじ山を締めつけて、調節ねじをその位置にしっかりと保持する。
【0039】
複合材料の使用は、AFMの他の多くの構成要素にも好ましい。例えば、図9の走査器ハウジング79も複合材料で作られてもよく、そうすることで安定性及びノイズ除去率が高くなる。
【0040】
セラミック等の剛性が高く熱膨張係数が低いその他の材料も、走査顕微鏡ヘッドに有用な材料であろう。従って、繊維構造の繊維は、炭化ケイ素及び/又は窒化ケイ素等の非酸化物(non-oxidic)のセラミック繊維で、或いは、ケイ素、ホウ素、炭素及び窒素を含む繊維系で構成されてもよい。
【0041】
図示されているハウジングは2つの部品で構成されているが、ハウジングは、製造の容易さ及び他の考慮事項に応じて、1つの部品又は接着剤若しくは固定具で共に固定された多くの部品で構成されてもよい。統合型光学ブロックの位置決めには、他の様々な三次元微小位置決め器を用いてもよい。
【0042】
V.光束が平面に垂直入射しない
本発明の光学システムの新規特徴は、光源16からの光束14、20、26が、対物レンズ22とカンチレバー24との間に流体セルがある場合のように強く発散又は収束された場合を除き、平面に垂直入射しないことである。光路の最後に位置する検出器34でさえも、反射光束26に対する垂直から角度がずれている。光源16がレーザ又はレーザに類似した光源である場合には、これによって、光源16の性能に対して有害なフィードバック効果を有する光学キャビティができるのが回避される。
【0043】
VI.重要な機械的経路が850Hzを超える共振振動数を有する
この顕微鏡の別の新規特徴は、カンチレバーと試料との間及びカンチレバーと検出システムとの間の機械的経路の共振振動数が850Hzを超えることである。図10Aは、カンチレバー(又は他の走査プローブ)100と試料102との間の一般的な機械的経路の簡略図を示している。機械的経路は、図10Aに模式的に示されている1つ以上の構造単位104で構成される。この構造は任意の形状を有してよいが、カンチレバーと試料との間の距離の変化を生じる動きの通常モードを1つ以上有する。これらの動きのモードが音響又は振動エネルギーの外部ソースによって励起される場合には、カンチレバー及び試料は相互に相対移動する。カンチレバーは試料の構造又は他の特性を追跡することが意図されるので、カンチレバーと試料との間の望ましくない動きは望ましい信号に直接重ねられ、実際のカンチレバーの動きの測定を乱す又は劣化させる干渉ノイズとして作用する。
【0044】
走査プローブ顕微鏡には第2の重要な機械的経路がある。即ち、カンチレバー(又は他のプローブ)と検出システムとの間の経路である。この機械的経路は図10Bの簡略図に示されている。この図では、この重要な機械的経路は、カンチレバー又は他のプローブ100とプローブ100の位置又は動きの測定に用いられる検出システム108との間に配置された構造106で構成される。本発明の測定ヘッドの場合には、これは光束の収束スポット、カンチレバーの間の経路である。カンチレバーと光束との相対的な傾斜を生じる任意の振動モードも、測定信号に直接重なり、カンチレバーの動きの測定に同様の乱れ又は劣化を生じる。
【0045】
一般的に、これらの機械的経路の共振振動数が高いほど、装置が外部の振動の影響を受けにくくなる。この構造の共振よりも振動数が遙かに低い外部ノイズ源の場合には、ノイズは(fs/fn)2の比率で減衰する。例えば、200Hzの機械的振動干渉源を想定する
。機械的経路の固有振動数が800Hzの場合には、この干渉の減衰は(800/200)2=16である。しかし、重要な機械的経路の共振振動数が800Hzから1200Hzに押し上げられると、減衰比は(1200/200)2=36になる。更に、この構造の共振振動数を10,000Hzにできるとすれば、減衰係数は2500にもなる。この概念は、トンプソンら(James Thompson et al)による「走査プローブ顕微鏡設計の品質評価(Assessing the Quality of scanning probe microscope designs)」(「ナノテクノロジー(Nanotechnology)」12(2001)394−397)で更に詳細に説明されている。この刊行物は、AFM測定システムの共振振動数及び「振動除去率」の測定の実験的な方法についても概説している。この刊行物の技術は本発明の一部ではないが、この分析技術及び測定技術の幾つかを、本発明の測定ヘッドの性能改善を確認するために用いた。
【0046】
本発明は、10図に示されている機械的経路の一方又は両方について、これらの重要な機械的経路の、従来のAFMより高い共振振動数、特に、850Hzを超える共振振動数を達成する。第1に、材料の選択が主要な長所である。振動の通常モードの固有振動数は、しばしば構造の幾何形状の複雑な関数であるが、通常は、(E/ρ)1/2の項に単純に依
存する。式中、Eは材料の弾性係数であり、ρは密度である。ほとんどのAFMは、アルミニウム、ステンレス鋼、Invar及びチタン等の金属から構成される。驚くことに、これらの材料の全ては、約2.6×107m2/s2という非常に類似したE/ρ値を有する。例えば、一般的なカーボン−カーボン複合材料が100GPaの弾性係数及び1800kg/m3の密度を有し得ることを考慮されたい。上述したカーボン繊維複合材料は、5.5×107m2/s2のE/ρ値を有する。従って、全く同一の構造では、カーボン繊維複合材料で作られたAFMヘッドの固有振動数は、一般的に用いられている金属材料よりも2倍以上良好になり得る。
【0047】
本願発明者は、このカーボン複合材料を用いて、850Hzを超える固有振動数を有するAFM測定ヘッドを構築した。デジタル・インストルメンツ/ヴィーコ・メトロロジー(Digital Instruments/Veeco Metrology)によって製造された「マルチモードAFM(MultiMode AFM)」ヘッドの適切な位置に装着されるよう構築された一実施形態は、標準的なマルチモードAFMヘッドのおよそ800Hzと比べて、約1200Hzの機械的共振を有する。機械的経路の固有振動数は、経路の構成要素の寸法と対応する。即ち、小さな寸法を有する構造ほど、大きな固有振動数を有する(同一の金属の場合)。このことを念頭に置き、本願発明者は、マルチモードAFM用のAFMヘッドのバージョンよりも遙かに小さい別の測定ヘッドを作成した。例えば、本発明の一実施形態は、およそ23kHzの第1の機械的共振を有するカーボン複合材料で作られた。
【0048】
上述したトンプソンの論文の方法を用いて、及び/又は、測定ヘッドの設計に用いたSolidEdgeTMコンピュータモデル上のDesignSpaceTM有限要素解析ソフトウェアを用いて、共振振動数の測定を確認した。
【0049】
本発明は、機械的経路の共振振動数の改善に有用なその他の多くの改良を実施する。図7〜図9を参照すると、好ましい実施形態では、カンチレバーホルダー72は、走査器78の上に直接向かうよう動的に割出しされる。本実施形態では、カンチレバーホルダー72には流体セル80が組み込まれており、カンチレバー24は流体セル80の中に配置されている。図9に示されるように、走査器78の表面上に3つの鋼鉄ベアリングボール82、84及び86が固定されており、それぞれ、カンチレバーホルダー72の対向する面上の穴88、溝90及び平面部92に対して割出しされている。その結果、米国特許第B1Re34,389号の図9又は米国特許第5,825,020号の図9のような直接型動的取付部が得られる。しかしこれは、引用した従来の設計とは異なる。従来の設計では、このような動的取付部を介して走査器に外殻が接続されており、カンチレバーホルダーは、このような動的取付部と共に、又は、取付部の中心付近のスロットに向けられた3つの溝及びそれと組み合わされる部品上の3つのボールのような他の動的取付部と共に、取付部の外殻に取り付けられていた。新設計では、カンチレバーホルダー72が走査器78に直接向かうよう動的に割出しされるように、走査器とカンチレバーとの間の1つの動的取付部が取り除かれている。
【0050】
この構成は、走査器上の試料とカンチレバーとの間のより直接的な機械的経路を与え、顕微鏡を振動から切り離すのに有用な、より高い共振振動数を与える。本発明の一実施形態によれば、このようにして、試料に対する及び収束スポットに対するカンチレバーの振動の、850Hzを超える実効共振振動数を有する第1の原子間力顕微鏡が提供される。
【0051】
この、より直接的な経路は、試料の異なる領域に接近させるために試料に対してカンチレバーホルダーを平行移動させる、オプションの着脱自在なx−y移動器を組み込むために用いられる。本発明の更に改良された実施形態では、この移動器は、走査器アセンブリ上に直接構成されてもよく、この場合には動的取付部は不要である。
【0052】
VII.入射光束が5ミクロン以下のスポットを形成する
好ましい実施形態では、単素子非球面対物レンズ22が用いられる。例えば、本願発明者は、ジェルテック(Geltech)によって製造された2.72mmの焦点距離を有する非球面レンズを用いた。各種のこのようなレンズが入手可能であり、特定の性能目標を満たすよう非球面レンズを特注で設計及び製造してもよい。この非球面レンズは、小型のパッケージ内での高い開口数と回折限界性能とを可能にする。これは、小型且つ軽量であると共に熱ドリフトに影響されにくい。これは、回折限界性能を達成するために、AFMによく用いられる他のレンズに存在する光学収差を解消又は実質的に低減している。多素子対物レンズ系を用いることも可能である。球面レンズを用いると、レンズの動作領域をレンズ表面のより小さな領域に制限するためのアパチャーをレンズの正面に追加することにより、収差を更に低減することができる。上記の改良の1つ以上を用いると、入射光束20を、5μm以下、好ましくは3μm以下の幅に収束させて、例えば3μmの幅と10μmの長さとを有するようにすることが可能なAFMを構成できる。これらの光スポットの寸法は、収束した光束のRMSスポット半径を決定するための解析ツールを提供するZemax(TM)という光学設計プログラムを用いて決定され最適化された。上記に挙げた幅は、「FFT PSF断面」と呼ばれる解析関数から得られたものであり、これは、幾何学的効果及び回折効果の両方を含む収束したレーザ光に対する点広がり関数を計算する解析である。上記の幅は、光の振幅が最大振幅の10%の点における全幅である。ここで用いたジェルテックのレンズはDVDプレーヤー用に設計されたものである。DVDプレーヤーのレンズと焦点との間の空隙及びプラスチックの光学特性は、このAFMヘッドのレンズと焦点との間の空隙及び空気又は流体の光学特性と似ているので、このレンズはAFMヘッドという非常に異なる用途で丁度許容可能に機能した。特注の非球面対物レンズを用いれば、向上した性能が得られよう。このような特注の対物レンズは、Zemaxや他の光学設計プログラムを用いて設計できよう。本発明では、このヘッドは、骨の蛋白質の力vs伸展曲線(extension curves)を測定するための力分光計として用いられた。寸法が幅3μm×長さ15μm、t共振振動数が100kHz、水中でのQ≒1.3、ばね定数20pN/nmのカンチレバーでは、60kHzの帯域幅でばね定数0.06N/mのカンチレバーで、3pN rms程度の力のノイズが得られた。3pNほどの小さい力の事象も測定できた。
【0053】
更なる実施形態
本発明の更なる実施形態では、対物レンズ22をレーザ位置決め屈曲部46と類似の屈曲部に取り付け、ねじ50と類似のねじで焦点を調節することも可能である。
【0054】
対物レンズ22は、光学ブロック40内に接着されるレンズ取付部83にねじ込まれるねじ山付きスリーブ81に取り付けられるものとして説明された。上述したように、これで焦点が荒調整される。ここで取り付けられる屈曲部52でも、オプションとして同様の焦点の荒調整を提供することが可能である。
【0055】
本発明の更に別の実施形態では、光学ブロックではなくカンチレバーが移動される。問題となるのは、収束スポットとカンチレバーとの調整可能な相対移動である。
【0056】
従って、本願の範囲を、上述した本発明の特定の実施形態に限定することは意図されない。当業者が本発明の開示から容易に認識するように、本明細書に記載された実施形態で用いられた手段と実質的に同じ機能を発揮する又は実質的に同じ結果を達成する既存の又は今後開発される手段を、本発明に従って用いてよい。従って、本発明はそのような手段を範囲に含むことが意図される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査プローブ装置の分野に関する。詳細には、本発明は、カンチレバーの撓みの測定に用いられる原子間力顕微鏡の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
原子間力顕微鏡(AFM)等の走査プローブ装置は、金属、半導体、鉱物、ポリマー及びバイオマテリアル等といった広範な材料のイメージングを行うための、優れた道具であることが証明されている。AFMでは、力が作用すると撓むカンチレバーによって、力が測定される。このカンチレバーの撓みは、検出システムによって、通常は、入射光束をカンチレバー上にスポットとして収束させ、反射光束をセグメント化された検出器に向かわせることにより、感知される。分子の構造及び力学を判定するためにこれらの分子を引き抜く目的で、「フォース・プラー(force puller)」と呼ばれる特殊なAFMが構築されている。最近では、薬品検出装置としても、AFMのようなカンチレバー及びカンチレバーアレイが用いられている。この動作モードでは、カンチレバーの1つ以上の面に、薬品に感度がある層が塗布される。ターゲット分子が検出されると、カンチレバーのナノ機械的特性に影響がでる。即ち、カンチレバーの撓み及び/又は共振振動数が変化する。
【0003】
導入以来、AFM及びカンチレバー式検出装置はますます進化し、より小さな力を測定し、より小さなカンチレバーを用いるようになっている。このことにより、計測器の感度に関する問題が生じている。科学分野の研究者が試料の測定又は操作のために必要とする、より小さいカンチレバー及びより小さい力に対処するために、より高い感度とより小さいスポットサイズとを備える必要がある。近接場走査型光学顕微鏡(NSOM)、走査型イオンコンダクタンス顕微鏡(SICM)、及びその他の様々な走査プローブ顕微鏡で用いられる光学プローブの動きの監視にも、類似の検出技術が用いられている。ナノテクノロジー分野の成長も、ナノメートル規模及びそれ以下に及ぶ広範な各種オブジェクトの位置及び/又は動きの精密測定に十分な動機を与える。
【0004】
次に挙げる米国特許は、本発明に関連するものである。米国特許第5,825,020号「小さい入射光束スポットを生じるための原子間力顕微鏡(Atomic force microscope for generating a small incident beam spot)」、米国特許第#RE034489号「オプションの交換可能流体セルを有する原子間力顕微鏡(Atomic force microscope with optional replaceable fluid cell)」及び米国特許第4,800,274号「高解像度原子間力顕微鏡(High resolution atomic force microscope)」。次に挙げる刊行物は、本発明に関連するものである。(1)ビアニら(Mario B. Viani, et al.),「単一分子の力の分光測定用の微小カンチレバー(Small cantilevers for force spectroscopy of single molecules)」,応用物理学会誌(Journal of Applied Physics),第86巻,第4号,p.2258−2262。(2)シェイファーら(Tilman E. Schaffer, et al.),「微小カンチレバーに対する原子間力顕微鏡の検出感度の特徴付け及び最適化(Characterization and optimization of the detection sensitivity of an atomic force microscope for small cantilevers)」,応用物理学会誌(Journal of Applied Physics),第84巻,第9号,p.4661−4666。(3)シェイファーら(Tilman E. Schaffer, et al.),「微小カンチレバー用の原子間力顕微鏡(An atomic force microscope for small cantilevers)」,SPIE−光工学国際学会(SPIE-The International Society for Optical Engineering),第3009巻,p.48−52。(4)ウォルターズら(D.A. Walters, et al.),「原子間力顕微鏡法用の短いカンチレバー(Short cantilevers for atomic force microscopy)」,科学器具類のレビュー(Review of Scientific Instrumentation),第67巻,第10号,p.3583−3590。(5)シェイファーら(T.E. Schaffer, et al.),「原子間力顕微鏡のカンチレバーを液中で振動させる研究(Studies of vibrating atomic force microscope cantilevers in liquid)」,応用物理学会誌(Journal of Applied Physics),第80巻,第7号,p.3622−3627。(6)ウォルターズら(Deron A. Walters, et al.),「微小カンチレバーを用いた原子間力顕微鏡法(Atomic force microscopy using small cantilevers)」,SPIE−光工学国際学会(SPIE-The International Society for Optical Engineering),第3009巻,p.43−47。上記の特許及び刊行物の全てを参照して本明細書に援用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、カンチレバーの動きを測定するための任意の光学システムに汎用的に適用可能であると共に特にAFMに適用される、反射光束の光学的な追跡及び検出のための改良を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
詳細には、本発明は、既存のAFMヘッドを超える重要な新規特徴及び長所を有する改良されたAFMヘッドを提供する。特に新規な特徴は、入射光及び反射光に対して1つの対物レンズの異なる領域が用いられる新規な光路の使用である。このAFMの第2の新規な特徴は、光学レバー検出システムの、光源と末端の収束レンズとの間の、光源及び収束レンズも含む全光学素子を、非常に小さく剛性の高いパッケージ内に収容した統合型光学ブロックである。別の新規な特徴は、AFMの光源からの光束が、強く発散又は収束された場合を除き、平面に垂直入射しないことである。更なる新規な特徴は、光学ブロックの三次元の動きを可能にする三次元屈曲部(flexure)である。別の新規な特徴は、AFM
の性能に最も影響する2つの機械的経路である、カンチレバーから試料までの機械的経路及びカンチレバーと収束レンズとの間の機械的経路に対して、850Hzを超える共振振動数を可能にすることである。これは、走査器上の試料とカンチレバーとの間の直接的な機械的経路を設けるために、カンチレバーホルダーを圧電走査器の上に直接向かわせるよう動的に割出しすることによって補助される。AFM及びSTM並びに他の走査プローブ顕微鏡を改良する更に別の新規な特徴は、走査プローブ顕微鏡のハウジング、光学ブロック及びその他の構成要素を構成するために複合材料又はセラミックを用いて、所望の高い剛性及び低い熱膨張係数を与えることである。
【0007】
これらの特徴の1つ以上を用いた結果として、従来可能であったよりも小さい収束スポットを有するAFMを達成できる。本発明の特定の実施形態では、カンチレバー上に、少なくとも1つの寸法において5μm以下、好ましくは3μm以下のサイズのスポットを形成するよう入射光束が収束されるAFMの改良が提供される。
【0008】
本発明の改良の多くは、ナノ機械オブジェクトの、又はオブジェクトのナノサイズ要素若しくは構造の、動き又は位置を測定する光学システムに広く適用可能である。
【0009】
本発明の上記及びその他の態様及び長所は、以下の詳細説明及び添付の図面に関してより良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態の光路及び関連要素、並びに、例えば本発明の原子間力顕微鏡の測定ヘッドのハウジングの部分切取り図を示す斜視図である。
【図2A】図1の光路及び関連要素をハウジング外で示す斜視図である。
【図2B】光学測定ヘッドの別の実施形態の模式的な部分拡大図である。
【図2C】光学測定ヘッドの別の実施形態の模式的な部分拡大図である。
【図2D】光学測定ヘッドの別の実施形態の模式的な部分拡大図である。
【図3】図1の構成要素を内包した統合型光学ブロックを横から示す斜視図である。
【図4】光学ブロックの詳細を示すために図3を異なる角度から見た部分切取り図である。
【図5】ハウジングを部分的に切り取って横方向位置決めねじを示す、顕微鏡を上から見た図である。
【図6A】光学ブロック及び屈曲要素の分解斜視図である。
【図6B】本発明で用いられる垂直可動焦点部材のボール接触面を示す平面図である。
【図6C】本発明で用いられる円盤状屈曲部のソケットのボール接触面を示す平面図である。
【図7】AFMのカンチレバーを収容した流体セルの位置を示す、AFMヘッドを下から見た斜視図である。
【図8】AFMハウジングから分離された流体セルを示す、AFMヘッドを下から見た斜視図である。
【図9】流体セルを走査器に直接向かわせる動的割出しを示す、図8の流体セルの底部及びそれと対向する走査器の面を示す斜視図である。
【図10A】カンチレバーと試料との間の機械的経路の簡略図である。
【図10B】カンチレバーと試料との間の機械的経路の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、カンチレバー並びに他のナノ機械装置及び要素の撓みの測定に使用可能な測定ヘッドが提供される。この測定ヘッドの最も一般的な用途は、原子間力顕微鏡の検出ヘッドとしてのものであるが、この測定ヘッドは、装置の動作のためにナノメートル規模の動きが重要となる場合の要素又はオブジェクトである、任意のナノサイズ要素若しくは構造又はナノ機械オブジェクトの動きを精密に測定するために用いることも可能である。更に、この測定ヘッドの主要要素の多くを用いて、ナノメートル規模の任意の対象物の縦及び/又は横の動きを測定するための改良された能力を提供できる。
【0012】
これらの撓みはカンチレバーにかかる力に関係し、力vs距離の曲線を測定するため、イメージング中にフィードバックネットワークによって制御されるべき力を測定するために用いることができ、並びに、磁力顕微鏡測定、ケルビンプローブ顕微鏡測定、非接触型AFM及び、カンチレバーの撓みの測定を要する他の任意の装置を含む従来の原子間力顕微鏡ヘッドに対して既に確立された多くの用法のために、用いることができる。
【0013】
詳細には、本発明は、次に示す改良の1つ以上を提供する。これらの全てはAFMに適用可能であり、幾つかは、より汎用的に光学システムに適用可能であり、別の幾つかは、一般的にAFMやSTM等の走査プローブ顕微鏡に適用可能である。AFMに関して示される改良は次の通りである。
I.入射レーザ光がレンズの中心軸と揃わない。
II.小さく剛性の高い統合型光学ブロックが、光源から末端の収束レンズまでの全光学素子を収容し且つ含む。
III.屈曲部(flexure)により光学ブロックの三次元の動きが可能である。
IV.複合材料又はセラミックが用いられる。
V.収束又は発散の場合を除き、光束が平面に垂直入射しない。
VI.カンチレバーと試料との間及びカンチレバーと収束レンズとの間の重要な機械的経路が、850Hzを超え得る共振振動数を有する。
VII.入射光束が3ミクロン以下のスポットを形成する。
本発明は、他の幾つかの革新的な点を含み、それらについては以下において適宜説明する。
【0014】
I.入射レーザ光がレンズの中心軸と揃わない
微小カンチレバーAFM測定ヘッドの重要課題の1つは、入射光束と反射光束との分離である。この理由は、微小カンチレバーAFMは、カンチレバー上に収束光の微小スポットを形成するために、開口数(NA)が高い光学(系)を必要とするという問題があるからである。開口数が高い光学系とは、一般的に、焦点距離が短いレンズがカンチレバーに非常に近接して配置されることを意味する。これにより、カンチレバーから反射された光束が検出器に向かって通過するスペースがほとんどない。上述の米国特許第5,825,020号は、入射光束と出射光束とを分離するための1つの方法を提供している。入射光束は偏光され、収束レンズを通り、カンチレバーから反射され戻って同じ収束レンズを通り、次に、反射光束は1/4波長板によって分離経路に向けられる。
【0015】
以下に述べるように、本発明は、1/4波長板を必要とせずに、これとは異なる独自の方法でこの問題を解決する。図1及び図2は、本発明によるAFMのハウジング12に収容された光学系10を示している。光源16からの光束14はコリメータレンズ18を通る。光源は、レーザダイオード、ヘリウムネオンレーザ、光ファイバに接続されたレーザ若しくはレーザダイオード、垂直共振器型面発光レーザ、高輝度ダイオード若しくは発光ダイオード、又は光束を生じる他の光源であってよい。固体光源の場合には、理想的には、光源は、30um以下の規模の非常に小さい発光領域を有するべきである。
【0016】
コリメータレンズ18から出た光束は、対物レンズ22の半分を通る入射光束20として続き、対物レンズ22は入射光束20をカンチレバー24上に収束させる。図示されるように、光学系10は、空気中、他の気体中又は真空中で動作するよう使用可能である。米国特許第B1Re34,489号のものと同様のガラス製カンチレバーホルダーを用いて、検出システムが、流体に浸されたカンチレバーの動きを測定できるようにすることも可能である。カンチレバー24から出た反射光束26は対物レンズ22の他方の半分を通り、検出器へと向かう。対物レンズ22と検出器との間には、後で簡単に説明する他の光学構成要素も存在する。このように、本発明は、入射光束と出射光束とを分離するための非常に簡単且つ簡潔な方法に備えている。入射光束20は、レンズの中心軸から外れて対物レンズ22に当たるので、光束は、レンズの光軸に対して非ゼロの角度でレンズから出る。この好ましい実施形態にように、カンチレバーが光軸に対して垂直に保持されれば、カンチレバーから反射された出射光束26も、光軸に対して同様の角度をなす。これらの2つの非ゼロの角度は、共に、分離されるべき入射光束と出射光束との間に空隙を設ける。好ましい実施形態では、入射光束20と反射光束26とは実質的に重ならない。入射光束20がレンズ22の中心軸からかなり離れて配置される場合には、レンズから出てカンチレバーに向かう光束は、かなり急角度で横方向移動する。このことは、AFMにおいて、試料から反射又は拡散されたいかなる迷光も、検出器に当たる可能性が低い経路に沿うよう向けられるという別の長所を有する。この迷光は、AFM測定において光学干渉を生じることがあり、それについては後で更に説明する。
【0017】
図2Aに示されるように、好ましい実施形態では、対物レンズ22上の入射光束20の位置は、入射光束20と出射光束26とが重ならないように選択される。本発明の範囲に含まれる多くの類似の実施形態がある。例えば図2Bでは、反射光束26がレンズを通って戻らないように、対物レンズ22が概ね半分に切断される。図2Cに示される別の実施形態(好ましい実施形態ではない)では、入射光束と出射光束とが僅かに重なるように構成される。この実施形態は、NAが高い光束を提供してより小さな収束スポットを生じ得ると共に/或いは、より小さな対物レンズの使用を可能にし得るものである。図2Dには、第4の別の実施形態が示されている。この実施形態では、入射光束がレンズの中心軸と概ね揃うように構成される。しかし、この場合には、入射光束の経路上に、入射光束を部分的に遮断するビームスプリッタ又はミラーが配置される。すると、ビームスプリッタ又はミラーによって、反射光束の一部が検出器へと向けられる。勿論、この概念には、類似の結果を生じることが可能な、本発明の範囲内の多くの変形がある。
【0018】
図2Aの好ましい実施形態に戻ると、対物レンズ22から出た出射光束26は、小ミラー28で反射され、光学干渉シールド30を通過し、次に光学円柱レンズ32を通過し、検出器34に当たる。光学干渉シールド30は、カンチレバー24から反射された一次光束26を通し且つ他の光を遮断するよう配置される。シールド30は非反射性であり且つ迷光の拡散及び/又は反射を最小限にするために吸収性であるのが理想的である。迷光は、環境光及び検出器からの光、並びに、光学面及び/又は機械的なハウジング構成要素の表面から拡散又は反射された光束を含む複数の源に起因し得る。干渉シールドはこの迷光を遮断し、力vs距離曲線中に波として現れる干渉効果を低減する。小ミラー28は、光束を方向転換させるために全反射が用いられる小プリズムであってもよい。カンチレバーの曲がりに反応した光束の移動に対して垂直な軸における光束のサイズを収束又は別様で抑制するために、オプションで光学円柱レンズが用いられる。
【0019】
II.統合型光学ブロック
図3は、統合型光学ブロック40内に保持された図1の構成要素を示している。光学ブロックは、光源と末端の収束レンズとの間の、光源及び収束レンズも含む全光学素子を収容している。これらの構成要素を単一の統合型ブロック内に設けることにより、封入された光学素子の配置を最適化し、適切な位置に任意に固定することができる。この構成では、この測定ヘッドの性能に寄与する重要な光学要素が互いに対して固定されたままにできるので、光学的な性能がユーザの調整に影響されない。米国特許第5,825,020号等の従来技術の微小カンチレバーAFM測定ヘッドは、少なくとも1つのレンズを光路上の1つ以上の他のレンズに対して平行移動させることにより、収束スポットをAFMカンチレバー上に配置する。例えば、米国特許第5,825,020号の図7について考える。この図では、ねじ72を調節することにより、レンズ62が末端の収束レンズ60に対して移動して、収束スポットを平行移動させる。同様に、図9のねじ184及び186は、光源を、他の多くの光学素子に対して平行移動させる。この構成では、コリメートされたレーザ光が収束レンズの異なる部分を通って横方向移動し、最適ではない角度でレンズに当たることがあるので、光学性能が低下する。これは、ユーザがレーザスポットの位置を調節すると、レーザスポットのサイズが変化するという結果を生じる。
【0020】
本発明の統合型光学ブロック40では、収束スポットをカンチレバーに向けて操作すると全ての重要な光学素子が一緒に動くので、従来技術を超える改良が提供される。(この三次元屈曲部である操作機構については次節で説明する。)従って、この技術により、測定ヘッドが、測定ヘッドの全調節範囲にわたって小さい焦点を維持することができる。オプションとして、この光学ブロックに、温度変化に対して安定した屈折率を有する気体を充填して密封してもよい。これにより、周囲の空気の温度変化による光束の歪みが防止される。
【0021】
好ましい実施形態では、統合型光学ブロック40には、接着剤で本体44に取り付けられたブリッジ部品42がある。このブリッジ及び本体は、2つの構成要素を共に固定する任意の方法で取り付けられてもよい。ブリッジ42及びベース44は、単一片から加工又は形成されてもよい。次節で説明する、光束をカンチレバーに向けて操作可能にする革新的な三次元屈曲部を組み合わせるための接点が、ブリッジ42によって設けられる。好ましい実施形態では、光源16は、ブリッジ部品42の下に取り付けられる。統合型光学ブロックの更なる詳細は、第III節及び第IV節で説明する。
【0022】
III.屈曲部が光学ブロックの三次元の動きを可能にする
光学ブロック40は、新規な三次元円盤状屈曲部52でハウジング12に取り付けられている。この屈曲部は、収束スポットをカンチレバーや他のナノ機械オブジェクト上へと操作するために、光学ブロックを光源の中心軸上の点回りの二つの軸上で回動させるように設計されている。この三次元屈曲部によって、光学ブロックが光源の軸に沿って一次元に独立して平行移動するのも可能となる。これにより、焦点調節、即ち、収束スポットの高さをカンチレバー又は他のナノ機械オブジェクトの平面に揃えることができる。
【0023】
好ましい実施形態では、円盤状屈曲部は鋼鉄で作られているが、アルミニウム、銅、ベリリウム銅若しくはチタン等の他の金属、又は十分な剛性を有する他の材料で作ることも可能である。細目ねじの形態の垂直可動焦点部材54は、ステンレス鋼又は他の精密ボール58及び力を中心に保つためのねじ山付きソケット60を介して屈曲部52の中心を押圧する。この好ましい実施形態では、円盤状屈曲部52は平たい円形板の形態である。別の実施形態では、ばね定数を低減することによって屈曲運動方向への移動を増加させるために、円盤状屈曲部は切抜き部を有してもよい。屈曲部は必ずしも円形でなくてもよいが、平面内運動に対しての剛性は平面外運動と比べてかなり高い剛性を有するべきである。
【0024】
ねじ山付きソケット60は、光学ブロック40の上に固定された対応するねじ山付きナット62にねじ込まれることにより、円盤状屈曲部を光学ブロック40の中心に固定する。好ましい実施形態では、円盤状屈曲部52は、ナット62から側方遠位に、その周囲に沿った複数の位置64において、ねじ等の固定具を用いてハウジング12に固定される。或いは、円盤状屈曲部52の周囲は、例えば溶接、留め金具による適切な位置への保持、接着剤又は他の類似の手段等といった他の様々な方法で固定されてもよい。ボール58を、垂直可動焦点部材54及び円盤状屈曲部52のソケット60の向かい合う面の間に受容させることにより、光学ブロック40の垂直方向への上下移動及びハウジング12に対する回動を可能にしつつ、光学ブロック40の横方向の平行移動が防止される。
【0025】
光学ブロック40の焦点微調整垂直移動を可能にするために、焦点微調整レバー56は、そこから延びる垂直可動焦点部材54に接続されている。ハウジング12には細長い横方向のスロット66(図1も参照)が形成されており、焦点微調整レバー56はスロット66を通って延出している。
【0026】
図6A及び図6Bを参照すると、ボール58との滑らかな転がり接触のために、焦点部材54及び円盤状屈曲部52のソケット60の向かい合う面の一方又は両方に、それぞれ68及び70のサファイアコーティングを施してもよい。
【0027】
周囲がハウジング12に固定された円盤状屈曲部52の中心に、滑らかに転がるボール58によって接続された、垂直可動焦点微調整部材54の上述の構成は、円盤状屈曲部52を垂直に偏向するためにレバー56を回転させる際の光学ブロック40の横方向の動きを回避しつつ、回動を可能にするので、レーザ光束20をカンチレバー24又は複数のカンチレバーのうち選択された1つと揃えるために横方向に移動させることができる。
【0028】
図4及び図5をより詳細に参照すると、レバー56は、光学ブロック40全体を、カンチレバーホルダー72の溝76内にある固定ねじ74によってカンチレバーホルダー72に固く取り付けられたハウジング12に対して移動させるので、焦点微調整機構として作用する。カンチレバーホルダーの他方の側にある類似の溝(図示せず)は、ハウジング12に取り付けられた2つのボール(図示せず)に接触している。これは、カンチレバーホルダー72を保持してカンチレバー24をハウジング12に対して固定するための半ば動的な装着部を構成する。レバー56が光学ブロック40をハウジング12に対して移動させるので、これにより光学ブロック40がカンチレバー24に対して移動し、焦点微調整機構を提供する。従来のAFMは、しばしば、焦点調整を行うと、寄生性の横方向の動きによりスポットも移動され、焦点調整の間に収束スポットがカンチレバーからずれるという問題を有する。本発明の、レバー56及び革新的な三次元屈曲部によって可能となる焦点微調整の動きは、光学系の焦点の動きを単一の平行移動軸に実質的に制限できるようにするので、他の従来のAFMの焦点微調整の動きよりも優れている。これにより、ユーザは、光のスポットを長さ5μm程度で非常に小さいカンチレバー上に保持しつつAFM測定ヘッドの焦点を調整できる。
【0029】
図3及び図5は、横方向位置決めねじ36及び37の両方が見える顕微鏡の図である。これらの位置決めねじは、光学ブロック40を押圧し、(例えば米国特許第5,825,020号24の図2に示されているカンチレバーチップ上の)複数のカンチレバーのうち選択されたカンチレバーに対して相対移動させ、レーザスポットを所望のカンチレバー上に位置決めする。屈曲部52が位置決めねじ36及び37をしっかりと押圧するように、屈曲部52に予め荷重を加えることもできる。このようにして、屈曲部52は、光学ブロック40をカンチレバー24に対して三次元に移動させて、入射レーザ光20をカンチレバー24上に位置決めし且つ収束させることができる。この構成は、ほとんどのAFMで用いられているレーザ操作システムより優れている。ほとんどのAFMは、直交する2つの方向にレーザ光を操作する二軸動的傾斜台を用いている。このような装置は、例えば、ニューポート・コーポレーション(Newport Corporation)、メレス−グリオット(Melles-Griot)及び他の多くの会社から入手可能である。これらの二軸傾斜台は、例えば長さが50μmを超えるより大きなカンチレバーを有するAFMに対しては良好に機能するに十分な分解能を有する。残念ながら、特に長さが10μm未満の非常に短いカンチレバーに対しては、これらを手動調整に用いるのはより困難になる。一般的な動的傾斜台は、収束スポットの動きを、調節アクチュエータの動きと比べて拡大するレバーアームを有する。この拡大(2倍以上であることが多い)により、ユーザは調節ねじを、収束したレーザ光を移動させたい量よりも更に小さく動かすことが必要である。本発明は、2つのレーザ調節ねじ36及び37が統合型光学ブロック40の底部に非常に近接して配置された、改良された光束操作装置を提供する。この構成は2つの長所を有する。第1に、傾斜台を非常に小型に保ちつつ傾斜台のレバーの拡大が低減される(好ましい実施形態ではおよそ1.25)。第2に、レーザスポットの位置を制御する機械的経路が実質的に短縮される。即ち、レーザスポットの横方向の位置は、カンチレバーの僅か数ミリメートル上に取り付けられたねじによって決定される。図4を参照すると、この機械的経路の長さは、実際にはねじ36(及び図示されていない37)の端部の直径及びカンチレバーホルダー72の厚さのみによって制限される。
【0030】
対物レンズ22はねじ山付きスリーブ81に装着され、ねじ山付きスリーブ81は、光学ブロック40に接着されたレンズ装着部83にねじ込まれる。ねじ山付きスリーブ81をレンズ装着部83にねじ込むことにより、カンチレバー24上の焦点を荒調整することができる。
【0031】
図3に示されるように、コリメータレンズ18(図2の切取り図に示す)に対する光源16の調節を可能にする、比較的厚いレーザ位置決め屈曲部46も存在する。光源16はこのレーザ位置決め屈曲部46に装着され、適切な位置にねじ48で固定されるか又は接着剤で取り付けられる。対物レンズ22と協働してカンチレバー24上に適切なスポットを生じる、良好にコリメートされた光束、あるいは発散光又は収束光を生じる目的で、レーザ位置決め屈曲部46を本体44に対して屈曲させ、光源16とコリメータレンズ18との距離を変えるために、別のねじ50が用いられる。次に、この良好にコリメートされた光束は対物レンズ22を通過する。好ましい実施形態では、この第2の屈曲部は、光源によって生じる熱の放熱板として作用するように熱伝導性が高い材料で作られる。
【0032】
別の実施形態では第2の屈曲部はなくてもよい。別の一実施形態では、コリメータ及び光源を、それらを非常にコリメートされた出射光束を形成するための最適な位置に位置決め可能にする組立て治具内に配列してから、これらの構成要素を適切な位置に接着してもよい。
【0033】
IV.複合材料又はセラミックの使用
上述した部品及び統合型光学ブロック10、11は、カーボン複合材料で形成される。この材料の長所は剛性が高いことであり、剛性は密度で割り算した弾性係数の平方根で求められる。また、この材料は熱膨張係数が非常に低い。これらの特質はどちらも走査プローブ顕微鏡に非常に望ましい。これらの長所の一方又は両方を有する別の複合材料も、走査プローブ顕微鏡に有用であろう。従って、本発明の一実施形態は、AFMやSTM等の走査プローブ顕微鏡のハウジング、光学ブロック、走査器、及び他の構成要素を作成するための複合材料の使用である。
【0034】
適切な複合材料としては、強度が高い樹脂、グラスファイバー、グラファイト、カーボン、ホウ素、石英等のモジュラスが高い繊維、及び、優れた高温耐性、耐炎性及び電気特性を特徴とするアラミド(aramid)繊維(即ち芳香族ポリアミド繊維)から作られる複合材料が挙げられるが、これらに限定されない。適切な複合材料は5GPa〜300GPaの引張弾性係数によって特徴づけられ、これは使用中に十分に高い熱安定性を示す。特定の実施形態では、複合材料は10GPa以上の弾性係数を有する。更に好ましい実施形態では弾性係数は40GPa以上であり、更に好ましい実施形態では弾性係数は100GPa以上である。最も繊維強度が高い複合材料はカーボン繊維によって達成される。カーボン繊維は、エポキシの素地又は好ましくはグラファイトの素地に埋め込まれてもよい。連続した繊維の配向は任意の空間軸に沿わせることが可能であるが、少なくとも1つの面において半等方性の設計が好ましい。幾つかの複合材料は、軸ごとに異なる熱膨張係数を有する。このような材料を用いる場合には、熱膨張係数が低い軸が、カンチレバーと試料との間の機械的経路の最も長い軸に沿って配向されるように材料を位置決めするのが好ましい。
【0035】
好ましい実施形態では、本願発明者は、熱分解グラファイトの素地に埋め込まれたカーボン繊維で構成された強度が高いカーボン−カーボン複合材料を用いた。カーボン−カーボン複合材料の弾性係数は非常に高く、通常は、三次元「繊維フェルト」(ランダム配向された繊維)で作られた複合材料では15〜20GPa、単方向繊維シートで作られたものでは150〜200GPaの範囲である。弾性係数対密度の比が高いこの材料の選択は、後述するように機械的経路の共振振動数を850Hz以上に高める能力に対して大きな影響を及ぼす。更に、非常に低密度のカーボン−カーボン複合材料も幾つか入手可能である。例えば、エアロスペース・コンポジット・プロダクツ(Aerospace Composite Products)の「Etan」材料は、1.3g/cm3の密度を有し、これは密度が約2.7g/cm3のアルミニウムのほぼ半分である。本発明の光学ブロックは三次元屈曲部の下方に懸架されているので、屈曲部の固有振動数は光学ブロックの質量によって異なる。従って、本願発明者は、非常に低密度の材料から光学ブロックを作ることにより、金属製のブロックで可能なよりも屈曲部の固有振動数を遙かに高くすることを達成できた。複合材料の密度は5g/cm3未満であるのが好ましく、2.0g/cm3未満であるのがより好ましく、1.5g/cm3未満であるのが最も好ましい。
【0036】
複合材料の単位体積に対する繊維の体積含有量は約20〜70%であり、50%を超えるのが好ましい。単位体積当たりの繊維含有量が高い(50%〜70%の範囲が好ましい)と、固い材料が良好に埋め込まれた緻密な材料が得られ、粒子強度(grain-strength)の限界が高くなるという長所がある。
【0037】
カーボン複合材料は、非常に好ましい熱膨張係数も有する。ほとんどの走査プローブ顕微鏡は、「熱によるずれ」の問題を有する。即ち、プローブと試料との間又はプローブと検出システムとの間の機械的経路が、温度の変化と共に変化する。カンチレバーと試料との間の機械的経路が温度と共に長さを変えると、この変化は、試料の表面の位置の変化として現れ、試料に対して行われる任意の測定がゆがめられる。これは、温度変化に伴う、機械的経路に用いられる材料の熱膨張又は収縮の問題である。ほとんどのAFMは、アルミニウムやステンレス鋼等といった10-5/℃程度の熱膨張係数を有する金属で作られる。熱膨張係数が低くなるよう設計された合金であるInvarTMで作られたAFMもある。残念ながらこの材料は高価であり、加工が困難であると共に、ニッケル等のコーティングを追加して保護しない場合は時間が経つと錆びる。この従来技術のAFMの問題は、カーボン繊維複合材料等の複合材料を用いることによって克服される。組成及び繊維の軸の配向によって、カーボン複合材料は正又は負の熱膨張係数を有することが可能である。これにより、非常にゼロに近い熱膨張係数を与えるよう組成を調整することができる。好ましい実施形態では5×10-6℃未満、最も好ましくは10-6℃未満の熱膨張係数を有するカーボン−カーボン複合材料を用いることができ、これはアルミニウムや鋼鉄のほぼ10倍良好である。
【0038】
好ましい実施形態のカーボン−カーボン複合材料は、例えば収束スポットの位置決めに用いられる細目ねじ等の、測定ヘッドに用いられる様々な調節ねじを保持するために、直接孔をあけてねじ切りすることが可能である。本願発明者は、カーボン−カーボン複合材料に、1インチ当たり200個のねじ山というピッチを有する雌ねじを加工した。カーボン−カーボン複合材料は、幾分自己固定性且つ自己潤滑性の特性も有する。これは具体的には、まず調節ねじが回されると、そこにかなり強い摩擦力が生じ、ねじがその位置に保持されるという意味である。一旦運動が開始されると、ねじはかなり滑らかに高精度で調節可能である。しかし、ねじが放置されると、カーボン−カーボン複合材料は再び緩和し、ねじ山を締めつけて、調節ねじをその位置にしっかりと保持する。
【0039】
複合材料の使用は、AFMの他の多くの構成要素にも好ましい。例えば、図9の走査器ハウジング79も複合材料で作られてもよく、そうすることで安定性及びノイズ除去率が高くなる。
【0040】
セラミック等の剛性が高く熱膨張係数が低いその他の材料も、走査顕微鏡ヘッドに有用な材料であろう。従って、繊維構造の繊維は、炭化ケイ素及び/又は窒化ケイ素等の非酸化物(non-oxidic)のセラミック繊維で、或いは、ケイ素、ホウ素、炭素及び窒素を含む繊維系で構成されてもよい。
【0041】
図示されているハウジングは2つの部品で構成されているが、ハウジングは、製造の容易さ及び他の考慮事項に応じて、1つの部品又は接着剤若しくは固定具で共に固定された多くの部品で構成されてもよい。統合型光学ブロックの位置決めには、他の様々な三次元微小位置決め器を用いてもよい。
【0042】
V.光束が平面に垂直入射しない
本発明の光学システムの新規特徴は、光源16からの光束14、20、26が、対物レンズ22とカンチレバー24との間に流体セルがある場合のように強く発散又は収束された場合を除き、平面に垂直入射しないことである。光路の最後に位置する検出器34でさえも、反射光束26に対する垂直から角度がずれている。光源16がレーザ又はレーザに類似した光源である場合には、これによって、光源16の性能に対して有害なフィードバック効果を有する光学キャビティができるのが回避される。
【0043】
VI.重要な機械的経路が850Hzを超える共振振動数を有する
この顕微鏡の別の新規特徴は、カンチレバーと試料との間及びカンチレバーと検出システムとの間の機械的経路の共振振動数が850Hzを超えることである。図10Aは、カンチレバー(又は他の走査プローブ)100と試料102との間の一般的な機械的経路の簡略図を示している。機械的経路は、図10Aに模式的に示されている1つ以上の構造単位104で構成される。この構造は任意の形状を有してよいが、カンチレバーと試料との間の距離の変化を生じる動きの通常モードを1つ以上有する。これらの動きのモードが音響又は振動エネルギーの外部ソースによって励起される場合には、カンチレバー及び試料は相互に相対移動する。カンチレバーは試料の構造又は他の特性を追跡することが意図されるので、カンチレバーと試料との間の望ましくない動きは望ましい信号に直接重ねられ、実際のカンチレバーの動きの測定を乱す又は劣化させる干渉ノイズとして作用する。
【0044】
走査プローブ顕微鏡には第2の重要な機械的経路がある。即ち、カンチレバー(又は他のプローブ)と検出システムとの間の経路である。この機械的経路は図10Bの簡略図に示されている。この図では、この重要な機械的経路は、カンチレバー又は他のプローブ100とプローブ100の位置又は動きの測定に用いられる検出システム108との間に配置された構造106で構成される。本発明の測定ヘッドの場合には、これは光束の収束スポット、カンチレバーの間の経路である。カンチレバーと光束との相対的な傾斜を生じる任意の振動モードも、測定信号に直接重なり、カンチレバーの動きの測定に同様の乱れ又は劣化を生じる。
【0045】
一般的に、これらの機械的経路の共振振動数が高いほど、装置が外部の振動の影響を受けにくくなる。この構造の共振よりも振動数が遙かに低い外部ノイズ源の場合には、ノイズは(fs/fn)2の比率で減衰する。例えば、200Hzの機械的振動干渉源を想定する
。機械的経路の固有振動数が800Hzの場合には、この干渉の減衰は(800/200)2=16である。しかし、重要な機械的経路の共振振動数が800Hzから1200Hzに押し上げられると、減衰比は(1200/200)2=36になる。更に、この構造の共振振動数を10,000Hzにできるとすれば、減衰係数は2500にもなる。この概念は、トンプソンら(James Thompson et al)による「走査プローブ顕微鏡設計の品質評価(Assessing the Quality of scanning probe microscope designs)」(「ナノテクノロジー(Nanotechnology)」12(2001)394−397)で更に詳細に説明されている。この刊行物は、AFM測定システムの共振振動数及び「振動除去率」の測定の実験的な方法についても概説している。この刊行物の技術は本発明の一部ではないが、この分析技術及び測定技術の幾つかを、本発明の測定ヘッドの性能改善を確認するために用いた。
【0046】
本発明は、10図に示されている機械的経路の一方又は両方について、これらの重要な機械的経路の、従来のAFMより高い共振振動数、特に、850Hzを超える共振振動数を達成する。第1に、材料の選択が主要な長所である。振動の通常モードの固有振動数は、しばしば構造の幾何形状の複雑な関数であるが、通常は、(E/ρ)1/2の項に単純に依
存する。式中、Eは材料の弾性係数であり、ρは密度である。ほとんどのAFMは、アルミニウム、ステンレス鋼、Invar及びチタン等の金属から構成される。驚くことに、これらの材料の全ては、約2.6×107m2/s2という非常に類似したE/ρ値を有する。例えば、一般的なカーボン−カーボン複合材料が100GPaの弾性係数及び1800kg/m3の密度を有し得ることを考慮されたい。上述したカーボン繊維複合材料は、5.5×107m2/s2のE/ρ値を有する。従って、全く同一の構造では、カーボン繊維複合材料で作られたAFMヘッドの固有振動数は、一般的に用いられている金属材料よりも2倍以上良好になり得る。
【0047】
本願発明者は、このカーボン複合材料を用いて、850Hzを超える固有振動数を有するAFM測定ヘッドを構築した。デジタル・インストルメンツ/ヴィーコ・メトロロジー(Digital Instruments/Veeco Metrology)によって製造された「マルチモードAFM(MultiMode AFM)」ヘッドの適切な位置に装着されるよう構築された一実施形態は、標準的なマルチモードAFMヘッドのおよそ800Hzと比べて、約1200Hzの機械的共振を有する。機械的経路の固有振動数は、経路の構成要素の寸法と対応する。即ち、小さな寸法を有する構造ほど、大きな固有振動数を有する(同一の金属の場合)。このことを念頭に置き、本願発明者は、マルチモードAFM用のAFMヘッドのバージョンよりも遙かに小さい別の測定ヘッドを作成した。例えば、本発明の一実施形態は、およそ23kHzの第1の機械的共振を有するカーボン複合材料で作られた。
【0048】
上述したトンプソンの論文の方法を用いて、及び/又は、測定ヘッドの設計に用いたSolidEdgeTMコンピュータモデル上のDesignSpaceTM有限要素解析ソフトウェアを用いて、共振振動数の測定を確認した。
【0049】
本発明は、機械的経路の共振振動数の改善に有用なその他の多くの改良を実施する。図7〜図9を参照すると、好ましい実施形態では、カンチレバーホルダー72は、走査器78の上に直接向かうよう動的に割出しされる。本実施形態では、カンチレバーホルダー72には流体セル80が組み込まれており、カンチレバー24は流体セル80の中に配置されている。図9に示されるように、走査器78の表面上に3つの鋼鉄ベアリングボール82、84及び86が固定されており、それぞれ、カンチレバーホルダー72の対向する面上の穴88、溝90及び平面部92に対して割出しされている。その結果、米国特許第B1Re34,389号の図9又は米国特許第5,825,020号の図9のような直接型動的取付部が得られる。しかしこれは、引用した従来の設計とは異なる。従来の設計では、このような動的取付部を介して走査器に外殻が接続されており、カンチレバーホルダーは、このような動的取付部と共に、又は、取付部の中心付近のスロットに向けられた3つの溝及びそれと組み合わされる部品上の3つのボールのような他の動的取付部と共に、取付部の外殻に取り付けられていた。新設計では、カンチレバーホルダー72が走査器78に直接向かうよう動的に割出しされるように、走査器とカンチレバーとの間の1つの動的取付部が取り除かれている。
【0050】
この構成は、走査器上の試料とカンチレバーとの間のより直接的な機械的経路を与え、顕微鏡を振動から切り離すのに有用な、より高い共振振動数を与える。本発明の一実施形態によれば、このようにして、試料に対する及び収束スポットに対するカンチレバーの振動の、850Hzを超える実効共振振動数を有する第1の原子間力顕微鏡が提供される。
【0051】
この、より直接的な経路は、試料の異なる領域に接近させるために試料に対してカンチレバーホルダーを平行移動させる、オプションの着脱自在なx−y移動器を組み込むために用いられる。本発明の更に改良された実施形態では、この移動器は、走査器アセンブリ上に直接構成されてもよく、この場合には動的取付部は不要である。
【0052】
VII.入射光束が5ミクロン以下のスポットを形成する
好ましい実施形態では、単素子非球面対物レンズ22が用いられる。例えば、本願発明者は、ジェルテック(Geltech)によって製造された2.72mmの焦点距離を有する非球面レンズを用いた。各種のこのようなレンズが入手可能であり、特定の性能目標を満たすよう非球面レンズを特注で設計及び製造してもよい。この非球面レンズは、小型のパッケージ内での高い開口数と回折限界性能とを可能にする。これは、小型且つ軽量であると共に熱ドリフトに影響されにくい。これは、回折限界性能を達成するために、AFMによく用いられる他のレンズに存在する光学収差を解消又は実質的に低減している。多素子対物レンズ系を用いることも可能である。球面レンズを用いると、レンズの動作領域をレンズ表面のより小さな領域に制限するためのアパチャーをレンズの正面に追加することにより、収差を更に低減することができる。上記の改良の1つ以上を用いると、入射光束20を、5μm以下、好ましくは3μm以下の幅に収束させて、例えば3μmの幅と10μmの長さとを有するようにすることが可能なAFMを構成できる。これらの光スポットの寸法は、収束した光束のRMSスポット半径を決定するための解析ツールを提供するZemax(TM)という光学設計プログラムを用いて決定され最適化された。上記に挙げた幅は、「FFT PSF断面」と呼ばれる解析関数から得られたものであり、これは、幾何学的効果及び回折効果の両方を含む収束したレーザ光に対する点広がり関数を計算する解析である。上記の幅は、光の振幅が最大振幅の10%の点における全幅である。ここで用いたジェルテックのレンズはDVDプレーヤー用に設計されたものである。DVDプレーヤーのレンズと焦点との間の空隙及びプラスチックの光学特性は、このAFMヘッドのレンズと焦点との間の空隙及び空気又は流体の光学特性と似ているので、このレンズはAFMヘッドという非常に異なる用途で丁度許容可能に機能した。特注の非球面対物レンズを用いれば、向上した性能が得られよう。このような特注の対物レンズは、Zemaxや他の光学設計プログラムを用いて設計できよう。本発明では、このヘッドは、骨の蛋白質の力vs伸展曲線(extension curves)を測定するための力分光計として用いられた。寸法が幅3μm×長さ15μm、t共振振動数が100kHz、水中でのQ≒1.3、ばね定数20pN/nmのカンチレバーでは、60kHzの帯域幅でばね定数0.06N/mのカンチレバーで、3pN rms程度の力のノイズが得られた。3pNほどの小さい力の事象も測定できた。
【0053】
更なる実施形態
本発明の更なる実施形態では、対物レンズ22をレーザ位置決め屈曲部46と類似の屈曲部に取り付け、ねじ50と類似のねじで焦点を調節することも可能である。
【0054】
対物レンズ22は、光学ブロック40内に接着されるレンズ取付部83にねじ込まれるねじ山付きスリーブ81に取り付けられるものとして説明された。上述したように、これで焦点が荒調整される。ここで取り付けられる屈曲部52でも、オプションとして同様の焦点の荒調整を提供することが可能である。
【0055】
本発明の更に別の実施形態では、光学ブロックではなくカンチレバーが移動される。問題となるのは、収束スポットとカンチレバーとの調整可能な相対移動である。
【0056】
従って、本願の範囲を、上述した本発明の特定の実施形態に限定することは意図されない。当業者が本発明の開示から容易に認識するように、本明細書に記載された実施形態で用いられた手段と実質的に同じ機能を発揮する又は実質的に同じ結果を達成する既存の又は今後開発される手段を、本発明に従って用いてよい。従って、本発明はそのような手段を範囲に含むことが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
試料上に配置可能なカンチレバーと、
光束がレンズによって前記カンチレバー上のスポットとして収束された、前記カンチレバーの撓みを測定するための光学系と、
を含む原子間力顕微鏡であって、
前記カンチレバーと前記試料との間又は前記カンチレバーと前記収束レンズとの間の機械的経路の共振振動数が約850Hzを超えるように前記機械的経路が構成された材料を有する、
原子間力顕微鏡。
【請求項2】
前記カンチレバーに対して前記試料を支持する走査器と、
前記走査器に直接向かうよう動的に割出しされる、前記ハウジングに接続されたカンチレバーホルダーと、
を更に含む、請求項1に記載の原子間力顕微鏡。
【請求項3】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が5kHzを超える、請求項1に記載の原子間力顕微鏡。
【請求項4】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が10kHzを超える、請求項1に記載の原子間力顕微鏡。
【請求項5】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が20kHzを超える、請求項1に記載の原子間力顕微鏡。
【請求項6】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が2kHzを超える、請求項1に記載の原子間力顕微鏡。
【請求項7】
ハウジングと、光源からの光束を入射光束としてカンチレバーの表面に向かわせると共に前記カンチレバーから反射光束として光検出器に向かわせるための光学系とを有する原子間力顕微鏡の操作方法において、
前記カンチレバー用のカンチレバーホルダーと、前記カンチレバーに対して試料を支持する走査器とを設け、
前記カンチレバーホルダーを前記走査器に動的に直接取り付け、
前記カンチレバーと試料との間の機械的経路及び/又は前記カンチレバーと検出システムとの間の機械的経路の振動の共振振動数が約850Hzを超えるように、構成する材料を選択する、
工程を含む、改良がなされた方法。
【請求項8】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が2kHzを超える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が5kHzを超える、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が10kHzを超える、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が20kHzを超える、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
ナノ機械オブジェクトの又はオブジェクトのナノサイズ要素の動き又は位置を測定するために測定ヘッドを操作する方法において、
検出システムと前記ナノ機械オブジェクトの又はオブジェクトのナノサイズ要素との間の機械的経路を、前記機械的経路の振動の共振振動数が850Hzを超えるよう構成する、
工程を含む改良がなされた方法。
【請求項13】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が2kHzを超える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が5kHzを超える、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が10kHzを超える、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が20kHzを超える、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
ナノ機械オブジェクト又はオブジェクトのナノサイズ要素と試料との間の相互作用を測定するために測定ヘッドを操作する方法において、
前記試料と前記ナノ機械オブジェクトとの間の機械的経路を、前記機械的経路の振動の共振振動数が850Hzを超えるよう構成する、
工程を含む改良がなされた方法。
【請求項18】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が2kHzを超える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が5kHzを超える、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が10kHzを超える、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が20kHzを超える、請求項17に記載の方法。
【請求項1】
ハウジングと、
試料上に配置可能なカンチレバーと、
光束がレンズによって前記カンチレバー上のスポットとして収束された、前記カンチレバーの撓みを測定するための光学系と、
を含む原子間力顕微鏡であって、
前記カンチレバーと前記試料との間又は前記カンチレバーと前記収束レンズとの間の機械的経路の共振振動数が約850Hzを超えるように前記機械的経路が構成された材料を有する、
原子間力顕微鏡。
【請求項2】
前記カンチレバーに対して前記試料を支持する走査器と、
前記走査器に直接向かうよう動的に割出しされる、前記ハウジングに接続されたカンチレバーホルダーと、
を更に含む、請求項1に記載の原子間力顕微鏡。
【請求項3】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が5kHzを超える、請求項1に記載の原子間力顕微鏡。
【請求項4】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が10kHzを超える、請求項1に記載の原子間力顕微鏡。
【請求項5】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が20kHzを超える、請求項1に記載の原子間力顕微鏡。
【請求項6】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が2kHzを超える、請求項1に記載の原子間力顕微鏡。
【請求項7】
ハウジングと、光源からの光束を入射光束としてカンチレバーの表面に向かわせると共に前記カンチレバーから反射光束として光検出器に向かわせるための光学系とを有する原子間力顕微鏡の操作方法において、
前記カンチレバー用のカンチレバーホルダーと、前記カンチレバーに対して試料を支持する走査器とを設け、
前記カンチレバーホルダーを前記走査器に動的に直接取り付け、
前記カンチレバーと試料との間の機械的経路及び/又は前記カンチレバーと検出システムとの間の機械的経路の振動の共振振動数が約850Hzを超えるように、構成する材料を選択する、
工程を含む、改良がなされた方法。
【請求項8】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が2kHzを超える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が5kHzを超える、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が10kHzを超える、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が20kHzを超える、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
ナノ機械オブジェクトの又はオブジェクトのナノサイズ要素の動き又は位置を測定するために測定ヘッドを操作する方法において、
検出システムと前記ナノ機械オブジェクトの又はオブジェクトのナノサイズ要素との間の機械的経路を、前記機械的経路の振動の共振振動数が850Hzを超えるよう構成する、
工程を含む改良がなされた方法。
【請求項13】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が2kHzを超える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が5kHzを超える、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が10kHzを超える、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が20kHzを超える、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
ナノ機械オブジェクト又はオブジェクトのナノサイズ要素と試料との間の相互作用を測定するために測定ヘッドを操作する方法において、
前記試料と前記ナノ機械オブジェクトとの間の機械的経路を、前記機械的経路の振動の共振振動数が850Hzを超えるよう構成する、
工程を含む改良がなされた方法。
【請求項18】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が2kHzを超える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が5kHzを超える、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が10kHzを超える、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記機械的経路の少なくとも一方の前記共振振動数が20kHzを超える、請求項17に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【公開番号】特開2009−69168(P2009−69168A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2403(P2009−2403)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【分割の表示】特願2003−514563(P2003−514563)の分割
【原出願日】平成14年7月17日(2002.7.17)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【分割の表示】特願2003−514563(P2003−514563)の分割
【原出願日】平成14年7月17日(2002.7.17)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
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