説明

原料パルプシートから製品を製造する方法及び装置

【課題】不良部分を確実に検出し除去しながら高い経済性及び生産性でもって製品を製造する。
【解決手段】原料パルプシートから製品を製造する方法は、搬送ロール5によって原料パルプシート3を粉砕機6へ搬送する。粉砕機への搬送中に、原料パルプシート3内の不良部分を検出器10によって検出すると共に、検出された不良部分を除去器20によって原料パルプシート3から除去する。不良部分が除去された原料パルプシート3を粉砕機6に供給して粉砕パルプを生成する。生成された粉砕パルプを用いて製品製造機8において製品を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原料パルプシートから製品を製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、原料パルプシートを粉砕機において粉砕して粉砕パルプを生成し、生成された粉砕パルプから例えば不織布や吸収体マットのような構成部品を生成し、これら構成部品を組み合わせて使い捨ておむつや生理用ナプキンのような製品を製造する方法が知られている。
【0003】
ところが、原料パルプシート中には例えば樹皮片等の異物が混入し又は変色している不良部分が含まれることがあり、この不良部分が例えばトップシートのような肌当接面に残存すると製品の商品価値が低下してしまう。
【0004】
そこで、製品に存在する不良部分を検出し、不良部分を含む製品を不良品として排出する不良品排出システムが公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−79187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように排出された不良品は廃棄されるのが一般的である。しかしながら、不良部分がわずかであっても製品全体が廃棄されるというのは不経済である。
【0007】
この点、原料パルプシートの段階で不良部分を検出し除去すれば、この問題を解決できるかもしれない。ところが、原料パルプシートは粉砕機に向けてかなり高速で搬送される。また、不良部分は原料パルプシートの表面だけでなく内部にも存在する場合があり、原料パルプシートの目付けはかなり高い。このため、原料パルプシート内の不良部分を確実に検出し除去するのは困難であると考え、製品段階で不良部分を検出して製品全体を廃棄しているのが現状である。原料パルプシートの粉砕機への搬送を一時的に停止すれば不良部分を確実に検出し除去できるけれども、このようにすると製品の生産性が著しく低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明の一観点によれば、原料パルプシートから製品を製造する方法であって、
原料パルプシートを粉砕機へ搬送し、
粉砕機への搬送中に原料パルプシート内の不良部分を検出器によって検出すると共に該検出された不良部分を除去器によって原料パルプシートから除去し、
該不良部分が除去された原料パルプシートを粉砕機に供給して粉砕パルプを生成し、
該生成された粉砕パルプを用いて製品を製造する、
各段階を含む方法が提供される。
【0009】
前記課題を解決するために本発明の別の観点によれば、原料パルプシートから製品を製造する装置であって、
原料パルプシートを粉砕して粉砕パルプを生成する粉砕機と、
原料パルプシートを粉砕機に向けて搬送する搬送機と、
粉砕機への搬送中に原料パルプシート内の不良部分を検出する検出器と、
粉砕機への搬送中に該検出された不良部分を原料パルプシートから除去する除去器と、
該生成された粉砕パルプを用いて製品を製造する製造機と、
を具備した装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
不良部分を確実に検出し除去しながら高い経済性及び生産性でもって製品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】製造装置の全体図である。
【図2】ホールソーの部分正面図である。
【図3】移動器の概略斜視図である。
【図4】(A)不良部分の除去作用を説明する図、及び(B)円形領域の平面図である。
【図5】製造装置の別の例を示す図である。
【図6】製造装置の更に別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は原料パルプシートから製品を製造する装置1を示している。ここで、原料パルプシートは木材、非木材、古紙、合成繊維などのパルプをシート状に成型して乾燥したものである。
【0013】
図1に示される製造装置1では、原料パルプシートはロール2の形で用意される。ロール2から巻き解かれた原料パルプシート3は複数の案内ロール4によって案内されつつ、一対の搬送ロール5によって粉砕機6まで搬送される。
【0014】
粉砕機6の上流、すなわちロール2と粉砕機6との間には、原料パルプシート3内の不良部分を検出するための検出器10が設けられる。検出器10は、原料パルプシート3の一側に配置された光源11と、原料パルプシート3の他側に配置されたカメラ12とを具備する。光源11から原料パルプシート3に光が照射され、このとき原料パルプシート3の他側で得られる透過光がカメラ12で取得される。なお、複数台のカメラ12を原料パルプシート3の幅方向に並べて設けることもできる。
【0015】
また、検出器10の下流、すなわち検出器10と粉砕機6との間には、検出器10によって検出された不良部分を原料パルプシート3から除去するための除去器20が設けられる。除去器20は、原料パルプシート3から不良部分を切り取るために原料パルプシート3の一側に設けられた切り取り器21と、切り取り器21をx,y,z方向に移動させる移動器22と、原料パルプシート3から切り取られた不良部分を引き取るために原料パルプシート3の他側に設けられた引き取り器23と、原料パルプシート3の搬送距離を検出するための距離検出器24とを具備する。なお、x,y,zは除去器20周りにおける原料パルプシート3の搬送方向、幅方向、厚さ方向をそれぞれ表している。図1に示される例では、x,y方向はほぼ水平であり、z方向はほぼ鉛直である。
【0016】
切り取り器21は回転刃物と、回転刃物を回転駆動する駆動機とを具備する。この回転刃物は例えば図2に示されるようなホールソー21hから構成される。ホールソー21hの直径は除去すべき不良部分の大きさに応じて設定される。なお、回転刃物をコンパス式の回転カッタから構成してもよい。
【0017】
移動器22は図3に示されるように、x方向に延びるx方向移動器22xと、y方向に延びるy方向移動器22yと、z方向に延びるz方向移動器22zとを具備する。x方向移動器22xはy方向移動器22yを担持すると共にx方向に移動させ、y方向移動器22yはz方向移動器22zを担持すると共にy方向に移動させ、z方向移動器22zは切り取り器21を担持すると共にz方向に移動させる。このようにして、切り取り器21ないしホールソー21hは三次元的に移動可能になっている。
【0018】
引き取り器23は例えばy方向移動器22yに連結され、したがって切り取り器21と共にx方向に移動可能になっている。ホールソー21hのほぼ真下に位置する引き取り器23の頂面には吸引スリット23sが開口されており、この吸引スリット23sに負圧が適用される。すなわち、図1に示される例では、引き取り器23は除去された不良部分を吸引作用でもって引き取る。
【0019】
また、引き取り器23の頂面のうち吸引スリット23sの上流側及び下流側には平坦領域23fが形成される。原料パルプシート3はこれら平坦領域23f上を移動し、したがって平坦領域23fに支持されつつ搬送される。
【0020】
再び図1を参照すると、距離検出器24は例えば搬送ローラ5に組み込まれたロータリエンコーダを具備する。ロータリエンコーダ24は搬送ローラ5の回転量に応じた出力パルスを発生する。この搬送ローラ5の回転量は原料パルプシート3の搬送距離ないし不良部分の移動距離を表している。
【0021】
カメラ12及びロータリエンコーダ24からの出力はコンピュータ30の入力側に入力され、コンピュータ30の出力側は切り取り器21及び移動器22に接続される。
【0022】
コンピュータ30では、カメラ12で取得された透過光に基づいて原料パルプシート3内の不良部分が検出される。すなわち、カメラ12で取得された透過光の強度があらかじめ定められたしきい値と比較され、透過光強度がしきい値よりも小さい部分が不良部分であると判断され、それ以外は不良部分でないと判断される。このようにすると、原料パルプシート3の両面及び内部に存在し得る不良部分を同時にかつ容易に検出することができる。
【0023】
なお、原料パルプシート3内に含まれ得る白色のパルプ塊や、目付けが著しく不均一の領域を、上述の検出器10を用いて検出することもできる。
【0024】
原料パルプシート3内の不良部分が検出されると、ホールソー21hが移動器22によって不良部分まで移動される。この場合、不良部分のx方向位置及びy方向位置はそれぞれ、ロータリエンコーダ24の出力及びカメラ12からの出力に基づいて特定される。
【0025】
次いで、ホールソー21hが回転駆動されつつz方向に下降される。その結果、図4(A),4(B)に示されるように、原料パルプシート3から不良部分Dを含む円形領域Cがホールソー21hによって切り取られる。切り取られた円形領域Cは吸引スリット23s内に吸引される。
【0026】
この場合、ホールソー21hは搬送される原料パルプシート3、とりわけ不良部分Dに同期して移動されながら、不良部分Dが除去される。すなわち、不良部分Dの除去中に、ホールソー21hは不良部分Dとほぼ同速度でx方向ないし搬送方向に移動される。その結果、原料パルプシート3を停止させることなく、特に原料パルプシート3を減速させることなく、不良部分Dが除去される。したがって、不良部分の検出及び除去によって原料パルプシート3の処理能力が低下されることがない。
【0027】
また、引き取り器23も不良部分Dに同期して移動される。その結果、図4(A)に示されるように、ホールソー21hが不良部分Dないし円形領域Cを切り取るときに、不良部分D周りの原料パルプシート3が引き取り器23の平坦領域23fによって支持される。したがって、不良部分Dないし円形領域Cを安定にかつ容易に切り取ることが可能となる。
【0028】
不良部分Dが除去されると、ホールソー21hが上昇されて原料パルプシート3から離脱され、次いで当初位置に戻される。
【0029】
再び図1を参照すると、このようにして不良部分Dが除去された原料パルプシートは次いで粉砕機6に供給される。図1に示される例では粉砕機6はハンマーミルを具備する。粉砕機6では原料パルプシート2がハンマーミルによって粉砕され、粉砕パルプないしフラッフパルプが生成される。粉砕パルプは次いで搬送用ファン7によって製品製造機8に搬送される。
【0030】
製品製造機8では粉砕パルプを用いて製品が製造される。ここで、製品には、ワイプやクリーニングシートなどに用いられる不織布、生理用ナプキンや使い捨てオムツのような吸収性物品、紙などが含まれる。製品が吸収性物品の場合、フラッフパルプマットのような吸収性物品の構成要素も製品製造機8で製造される。
【0031】
この場合、不良部分は原料パルプシート3から除去されているので、粉砕パルプには不良部分がほとんど含まれておらず、したがって製品にも不良部分がほとんど含まれていない。その結果、不良部分を含むことを理由として廃棄される製品がほとんどなくなるので、製品の製造コストが大幅に低下される。
【0032】
また、ハンマーミルを用いて生成された粉砕パルプから直接的にフラッフパルプマットを製造する場合、フラッフパルプマットの目付けを均一にするには原料パルプシート3を連続的に粉砕機6に供給する必要がある。本発明による実施例では、原料パルプシート3が停止されることなく粉砕機6に供給されるので、フラッフパルプマットの目付けを均一にすることができる。
【0033】
これまで述べてきた本発明による実施例では、原料パルプシート3はロール2から巻き解かれた連続ウエブの形で粉砕機6に供給される。しかしながら、図5に示されるように、互いに分離された四角形状の原料パルプシート3aの積層体2aを用意し、この積層体2aから原料パルプシート3aをコンベア5aでもって順次供給するようにしてもよい。この場合、コンベア5aは原料パルプシート3aの両側縁を挟んで搬送する。また、ロータリエンコーダ24はコンベア5aのローラに組み込まれる。
【0034】
なお、図5に示される例では、原料パルプシート5aは互いに離間して搬送される。この場合、粉砕パルプを一時的に蓄えるリザーバを粉砕機6と製品製造機8との間に設けることによってフラッフパルプマットの目付けを均一にできる。しかしながら、リザーバを有しない直結方式では、先行の原料パルプシート5aの後端と後続の原料パルプシート5aの先端とが互いに接するようにしてもよい。
【0035】
あるいは、不織布又は紙を製造する場合には、図6に示されるように、粉砕機6がパルパ6aを具備することもできる。この場合、パルパ6aで生成された粉砕パルプはスラリの形で製品製造機8に供給される。
【0036】
また、図6に示されるように、切り取り器21が不良部分を切り取るときに生じた切屑を例えば吸引作用でもって除去する切屑除去器25を設けることもできる。この切屑除去器25は例えば切り取り器21に固定され、したがって切り取り器21と共に移動可能になっている。
【0037】
更に、これまで述べてきた本発明による各実施例では、検出器10及び除去器20は1つずつ設けられる。しかしながら、複数の検出器10及び除去器20を設けることもできる。このようにすると、不良部分を確実に検出し除去することができる。
【0038】
複数の検出器10を設ける場合、これら検出器10は例えば原料パルプシート3の搬送方向に直列に配置することができる。また、或る検出器10において原料パルプシート10の一側から光が照射されて他側で透過光が取得され、別の検出器10において原料パルプシート10の他側から光が照射されて一側で透過光が取得されるようにしてもよい。あるいは、光源11の光強度もしくは検出しようとする不良部分の寸法が検出器10ごとに異なるようにしてもよい。いずれにしても、このようにすると、不良部分を更に確実に検出することができる。
【0039】
更に、これまで述べてきた本発明による各実施例では、除去器20はホールソー21hを具備し、原料パルプシートから不良部分を切り取るようにしている。しかしながら、除去器20がダイカッターを具備し、原料パルプシートから不良部分を打ち抜くようにすることもできる。しかしながら、原料パルプシートの目付けは例えば680g/mであってかなり高いので、不良部分を確実に打ち抜くためには除去器20がかなり重くなる。このため、除去器20を不良部分に同期して移動させるのが困難となる。これに対し、ホールソー21hではこのような問題が生じない。
【0040】
なお、これまで述べてきた各実施例を互いに組み合わせることもできる。すなわち、例えば図1又は図2の例において切屑除去器25を設けることもできる。
【符号の説明】
【0041】
1 装置
3 原料パルプシート
5 搬送ロール
6 粉砕機
8 製品製造機
10 検出器
20 除去器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料パルプシートから製品を製造する方法であって、
原料パルプシートを粉砕機へ搬送し、
粉砕機への搬送中に原料パルプシート内の不良部分を検出器によって検出すると共に該検出された不良部分を除去器によって原料パルプシートから除去し、
該不良部分が除去された原料パルプシートを粉砕機に供給して粉砕パルプを生成し、
該生成された粉砕パルプを用いて製品を製造する、
各段階を含む方法。
【請求項2】
前記除去器が回転刃物を具備しており、該回転刃物が前記不良部分を含む円状領域を原料パルプシートから切り取ることによって該不良部分を原料パルプシートから除去する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
搬送される原料パルプシートに同期して前記除去器を移動させながら該除去器によって前記不良部分を除去する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
原料パルプシートの一側から光を照射したときに原料パルプシートの他側で得られる透過像に基づいて前記不良部分を検出する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記製品が不織布、吸収性物品及び紙から選ばれた1つである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
原料パルプシートから製品を製造する装置であって、
原料パルプシートを粉砕して粉砕パルプを生成する粉砕機と、
原料パルプシートを粉砕機に向けて搬送する搬送機と、
粉砕機への搬送中に原料パルプシート内の不良部分を検出する検出器と、
粉砕機への搬送中に該検出された不良部分を原料パルプシートから除去する除去器と、
該生成された粉砕パルプを用いて製品を製造する製造機と、
を具備した装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−47087(P2011−47087A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198241(P2009−198241)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】