説明

原料ヤード移動機の自動払出方法

【課題】 原料ヤードの原料積付け山をリクレーマにより一定量で払出す自動払出し方法を提供する。
【解決手段】 原料ヤード移動機のバケットホイール駆動用電動機の無負荷電流値を基に、旋回反転位置を自動検出後自動払出しを行う方法において、無負荷電流値を一定とせず、1回の払出作業が終わる毎に無負荷電流を測定し、常に無負荷電流値を更新する機能を設けると共に、反転位置と判定するホイル電流値を、測定された無負荷電流値+αとし、αは常時設定できるようにし、反転角度域の中心を直前の反転角度に常に置き換えつつ、払出山の形状に沿った反転位置で旋回反転して自動払出する原料ヤード移動機の自動払出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料ヤードの原料積付け山をリクレーマにより一定量で払出す自動払出し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、原料ヤードに貯留した石炭のようなバラ物をリクレーマによって払出すことは一般に行われている。この原料ヤードにおいて、リクレーマを使用して払出し作業を行う場合には夫々のリクレーマに運転者が乗り操作を行っていた。しかし、原料ヤード等は広大なため、リクレーマに乗り運転することは運転者の移動に時間を要し待ち時間が多くなり、払出しの能力の低下の原因となっている。また、リクレーマの運転操作については、ブーム先端を手動操作により積山の所要位置近辺に移動させ、リクレーマの運転室から運転者が目視で着地の位置を設定しているため、作業が非能率的であることからリクレーマの運転を自動化する方法が行われている。
【0003】
リクレーマは機体を旋回させながら払出を行うもので、リクレーマの運転を自動化する場合、旋回を反転させる位置を自動で検出する方法として、払出ホイルを駆動するモータの負荷電流による方法と、超音波による方法がある。ホイル電流による方法は、特別な検出器を設置する必要がなく、簡便な方法である。このホイル電流による反転位置検出では、無負荷電流値を検知する方法が一般的であるが、ホイル内にバラ物が付着したり、機械的な負荷状況によって無負荷電流値が変化するために、必ずしも安定な動作とはならない。また、この無負荷電流値を検知する方法では、ホイル中のバラ物がほぼ完全に無くなるまで旋回を継続することから、旋回反転位置での荷切れ時間(無駄時間)が多くなり、平均T/Hを低下させる。
【0004】
一方、ホイル電流による反転位置検出での誤作動防止として、反転できる範囲を所定の角度域に限定する方策が一般的に採られている。これらは、払出しの対象山は山崩れなどにより形状が変化することがよく有り、旋回範囲の途中で反転電流以下になり反転してしまうのを防止するものである。また、超音波による方法もあるが、この方法のみでは払出対象山の最初から最後までの全てを網羅することはできない。
【0005】
上述した反転制御の改良として、例えば、特開昭55−74923号公報(特許文献1)に開示されているように、積山の山端、払出しによる積山の形状変化、積山の消失を超音波センサにより測定したセンサと積山の距離から判断し、リクレーマの遠隔自動運転方法が提案されている。また、特開平4−223933号公報(特許文献2)に開示されているように、リクレーマの旋回反転可能範囲角度を両サイドに設定し、その反転可能範囲角度内でバケットホイール駆動用電動機の予め設定した無負荷電流値で旋回反転作用を行い、その旋回反転動作位置角度を記憶し、次からの払出しでは旋回毎に旋回基準角度の値を更新するリクレーマの自動運転における旋回反転制御方法が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開昭55−74923号公報
【特許文献2】特開平4−223933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1は、超音波センサのみによるものであり、払出対象山の最初から最後までを網羅するには角度調整機構を設置する必要があるなどの問題がある。また、特許文献2は、反転可能範囲角度内でバケットホイール駆動用電動機の予め設定した無負荷電流値で旋回反転作用を行い、その旋回反転動作位置角度を記憶し、次からの払出しでは旋回毎に旋回基準角度の値を更新する方法で、旋回基準角度の値を更新する点で優れている。
【0008】
しかし、無負荷電流値で反転する方法では、ホイル中のバラ物がほぼ完全に無くなるまで旋回を継続させることから、旋回反転位置での荷切れ時間が多くなり、平均T/Hを低下させる。また、自動運転率という観点で見ると、これらの方法では通常の山の場合はよいとしても、後述する集炭山の場合は十分でないと言う問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述したような問題を解消するために、発明者らは鋭意開発を進めた結果、無負荷電流値を1回の払出作業が終わる毎に測定し、常に無負荷電流値を更新する機能を設け、反転位置と判定するホイル電流値を、測定された無負荷電流値+αとし、反転角度域の中心を直前の反転角度に常に置き換えて、払出し山の形状に沿った反転位置で旋回反転して自動払出を行なう。また、集炭山の場合は、距離測定用センサで喰付点(凸部)を検出し、喰付から払出しまでを自動で行なう原料ヤード移動機の自動払出方法を提供する。
【0010】
その発明の要旨とするところは、
(1)原料ヤード移動機のバケットホイ−ル駆動用電動機の無負荷電流値を基に、旋回反転位置を自動検出後自動払出しを行う方法において、無負荷電流値を一定とせず、1回の払出作業が終わる毎に無負荷電流を測定し、常に無負荷電流値を更新する機能を設けると共に、反転位置と判定するホイル電流値を、測定された無負荷電流値+αとし、αは常時設定できるようにし、反転角度域の中心を直前の反転角度に常に置き換えつつ、払出山の形状に沿った反転位置で旋回反転して自動払出することを特徴とする原料ヤード移動機の自動払出方法。
(2)前記(1)に記載の自動払出し方法において、距離測定用センサを用いて喰付き点を検出して自動払出することを特徴とする原料ヤード移動機の自動払出方法にある。
【発明の効果】
【0011】
以上述べたように、本発明によって、払出での荷切れ時間が短くなり、払出効率が良くなる。また、集炭山のような不定形の山を払出す場合、最初にリクレーマのホイルを当てる位置が予め判らないために、従来はオペレータの手動介入を必要としていたが、必要なくなるため、自動運転率の向上を図ることができ、極めて優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について図面に従って詳細に説明する。
図1は、リクレーマ本体の全体概念図である。この図に示すように、リクレーマ1はレール2上を所要の駆動装置によって走行し得るようになっており、リクレーマの走行フレーム3上には旋回フレーム4が旋回可能に設置されている。旋回フレーム4上にはブーム5が設けられ、このブーム5の先端には、バラ物を掻取り払出すためのバケットホイール6が回転自在に装着されている。また、バケットホイール6によって掻取り払出されたバラ物は、ブーム5上に設置してあるブームコンベア7からシュート8、フィーダ9を経て地上コンベア10に供給されるように構成されている。なお、符号11は距離測定用センサーを示す。
【0013】
図2は、原料ヤードの原料積付け山形状を示す説明図である。図2(a)はスタッカーで原料ヤードの原料が積付された最初の状態を示す積付山12の概略図であり、積付けされた山の高さは通常10〜20mの高さを有することから、払出しを行なう時には、何段かに段を分けて山の上段から下段に渡って払出しを行なう。図2(b)は初期山13と呼ばれる点線内の部分を払出す状況を説明する図である。この積付がされた最初の状態での初期山13を払出する場合、機体の支点14から払出す位置によって段々旋回角度θを広く変化させて行く状態を示している。
【0014】
図2(c)は通常山15を払出する場合で、この場合には払出す位置の変化によっても旋回角度θは変わらない状態を示している。図2(d)は最終山16を払出す場合で、この場合には払出す位置の変化によって、図2(b)とは逆に旋回角度θは狭い方向に変化する状態を示している。図(e)は集炭山17を示す。集炭山はホイールによって掻取り払出されたバラ物の残りをブルドーザで掻き集められた山で、この集炭山は、上述したような山の形状が定まっていない。従って、払出す位置の変化に応じて旋回角度は、広くなったり狭くなったり両方の変化をすることになる。なお、符号18は喰付点を示す。
【0015】
図3は、ブームの先端部を拡大した図である。この図に示すように、ブーム先端には距離測定用センサ11が取り付けられている。距離測定用センサ11はブームの先端に取り付けられており、集炭山などを払出す場合において払出のための準備作業時にバケットホイール6と積山との距離を測定し、最もバケットホイール6に近い場所を検出する。ここて検出された点である、図2(e)に示す喰付点18から払出を開始する。
【0016】
図4は、ホイール電流制御による反転動作を説明する図である。自動運転開始前に予め旋回範囲の基準角度として、右旋回時の基準旋回角度(a)と左旋回時の基準角度(b)とを設定する。この角度設定はオペレータが手動で行ってもよいが、払出す対象の山の位置情報から計算された角度を設定してもよい。この基準旋回角度を基準としてブームコンベアの旋回反転可能範囲を設定する。図4に示すように、c、c´、d、d´がこれに該当する。ブームコンベアは、この図の例で言うと、a−d´〜b+cの範囲内で旋回し、かつ、a−d´〜a+dおよびb−c´〜b+cの範囲内でのみ反転作動を行なう。なお、c、c´、d、d´は同一の値でも異なる値でもよい。さらに、上記角度範囲内において、実際の反転位置を検出する方法として基準となるバケットホイール駆動用電動機の負荷電流値を設定する。
【0017】
自動払出制御中は、現在の旋回位置角度と現在のバケットホイール駆動用電動機の電流値を常に監視し、旋回位置が例えば左旋回中に旋回反転可能範囲内にあり、さらに、電動機の負荷電流値が基準電流値以下となった時、左旋回動作を停止し原料山への噛込み動作とほぼ同時に右旋回へ反転動作を行なう。以後、右旋回動作で払出しを行い、上記と同様に右旋回時の反転動作を行い、左旋回で払出しを行う。
【0018】
ここで、反転の基準負荷電流値には、従来はバケットホイール駆動用電動機の容量で決定される無負荷電流値を採用していた。しかし、ホイールへのバラ物の付着や駆動機械系の経時変化により空荷の状態でホイールを回転させた時の電流値はこの無負荷電流値より大きくなることがある。その場合、旋回反転可能範囲角度内で空荷になったとしても基準負荷電流値を下回ることがなくなるため、反転せずに荷切れした状態で旋回を継続することになる。
【0019】
これを防ぐために、1回の払出し作業が終わる毎に、払出しを行わない状態でホイールを一定時間回転させ、その時の電流値を測定し、常に無負荷電流値を更新する機能を備えると共に、基準電流値をこの測定された無負荷電流値+αとし、αは常時設定できる機能を設けた。これによりホイールが空荷状態であることを常に正確に検出できると共に、完全に空荷になる前に反転動作を行なわせることで荷切れ時間を短縮できるようにした。この時、多少の荷が反転位置に残ることになるが、これより下の段を払出す際に残った荷も同時に払出されるため、問題にならない。また、最下段はリクレーマで取り残した下地をブルドーザで集める作業を行なうため、これも問題にならない。
【0020】
また、通常山のように旋回範囲がほぼ固定された場合は問題ないが、それ以外の場合は旋回範囲が変わるため、山形状に合わせて旋回の基準角度を変えていかないと、やはり反転位置での荷切れが発生する可能性がある。そこで、反転動作を行なう都度その時の旋回角度を記憶し、次の反転動作の基準角度に置き換える機能を設けた。ここで、この角度の置き換えは右旋回から左旋回への反転と、左旋回から右旋回への反転とを区別し、各々個別に行なう必要がある。さらに、図4に示したように、旋回反転可能範囲を基準角度のプラスマイナス両側に設けることで、旋回角度が大きくなる場合にも小さくなる場合にも対応することが可能となる。
【0021】
このように、無負荷電流値を一定とせず、1回の払出作業が終わる毎に無負荷電流を測定し、常に無負荷電流値を更新する機能を設けると共に、反転位置と判定するホイル電流値を、測定された無負荷電流値+αとし、αは常時設定できるようにする。また、反転角度域の中心を直前の反転角度に常に置き換えつつ、旋回反転可能範囲を基準角度のプラスマイナス両側に設定することで、実際の山形状に沿った反転角度で旋回反転して自動払出するものである。
【0022】
図5は、本発明に係る特異な山形状での自動払出しの説明図である。図5(a)は集炭山の説明図である。リクレーマで払出し切れない下地の部分19をブルドーザで集めて形成した小さな山が集炭山である。集炭山の位置はある程度決めているものの、オペレータが任意の位置に形成する。また、山の形状はその時々で異なる。従って、リクレーマの喰付位置の位置決めができないために、従来は自動での払出しはできなかった。図5(b)は集炭山を自動で払出す方法の説明図である。上述した、ある程度決められた値を入力することで、リクレーマを所定の位置へ自動的に移動させる。その後、距離測定用センサ11で山とバケットホイールとの距離を測定しながら、ブームを旋回させる。
【0023】
その結果、図5(c)のような結果が得られる。図5(c)の横軸は旋回角度、縦軸は測定距離である。このうち、距離の最も小さなところが、山とバケットホイールとが最も近い場所であると考えられるので、この点を喰付点18(図2)とする。なお、喰付点とは、最初に、山にブームを接触させる位置のことである。また、旋回範囲の基準角度は予め予想される範囲をオペレータが設定しても構わないが、図5(c)に示すように、距離測定結果が喰付点での距離から所定の範囲内にある旋回角度範囲を基準角度としてもよい。これ以降の旋回反転動作は上記したバケットホイール駆動用電動機の電流値を利用した方法で行なう。
【0024】
図6は、本発明の効果を説明する図である。グラフの横軸は時間、縦軸は払出効率であり、払出しを行っている最中の払出効率の推移を示す。払出効率が急激に落ちているところで反転動作をしており、反転動作と反転動作の間はどちらか一方向に旋回動作をしている。反転動作時間が長いと、空荷で運転している時間が長くなり、平均払出効率が悪くなる。この図は、本発明におけるαの値を変更した場合の反転動作時間を示している。αを0アンペアとした場合と4アンペアとした場合とで反転動作時間が約20秒短縮されていることが判る。図示はしていないが、図6のような試験を何度も行い、その時の平均払出効率を比較したところ、αを0アンペアとした場合と4アンペアとした場合とでは、10%程度の改善効果が得られることも判った。
【0025】
このように、無負荷電流測定機能と反転電流設定機能を備えたことで、空荷での運転時間が短くなり、その結果、払出効率が良くなり、荷役時間の短縮を図ることが可能となった。また、距離測定用センサを用いることにより、不定形山の払出の場合に、従来に比較して極めて優れた自動運転率を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】リクレーマ本体の全体概念図である。
【図2】原料ヤードの原料積付け山形状を示す説明図である。
【図3】ブームの先端部を拡大した図である。
【図4】バケットホイール電流制御による反転動作を説明する図である。
【図5】本発明に係る特異な山形状での自動払出しの説明図である。
【図6】本発明の効果を説明する図である。
【符号の説明】
【0027】
1 リクレーマ
2 レール
3 走行フレーム
4 旋回フレーム
5 ブーム
6 バケットホイール
7 ブームコンベア
8 シュート
9 フィーダ
10 地上コンベア
11 距離測定用センサ
12 積付山
13 初期山
14 機体の支点
15 通常山
16 最終山
17 集炭山
18 喰付点
19 下地の部分

特許出願人 新日本製鐵株式会社 他1名
代理人 弁理士 椎 名 彊 他1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ヤード移動機のバケットホイ−ル駆動用電動機の無負荷電流値を基に、旋回反転位置を自動検出後自動払出しを行う方法において、無負荷電流値を一定とせず、1回の払出作業が終わる毎に無負荷電流を測定し、常に無負荷電流値を更新する機能を設けると共に、反転位置と判定するホイル電流値を、測定された無負荷電流値+αとし、αは常時設定できるようにし、反転角度域の中心を直前の反転角度に常に置き換えつつ、払出山の形状に沿った反転位置で旋回反転して自動払出することを特徴とする原料ヤード移動機の自動払出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の自動払出し方法において、距離測定用センサを用いて喰付き点を検出して自動払出することを特徴とする原料ヤード移動機の自動払出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−8617(P2007−8617A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188701(P2005−188701)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000005924)株式会社三井三池製作所 (43)