説明

原料乾燥のための方法および装置

本発明は植物および動物由来の原料を乾燥させるための技術分野に関する。乾燥方法は、その元の品質特性を変質させない温度まで原料を加熱すること、一定の期間真空を維持しかつ大気圧に到達するまで真空がリリースされるインパルス的急速真空化を含む。原料は乾燥チャンバ内で加熱され、かつ最高300℃の温度の乾燥した空気または熱媒剤を用いて真空がリリースされる。乾燥装置は、高速応答バルブを有するパイプラインによりレシーバタンク、熱交換器(コンデンサ)および復水タンクに接続する密封扉を有する、2つの乾燥チャンバを含む。装置は同様に、真空ポンプを含み、かつ、独立した断熱チャンバ内に設置され、かつ各々の乾燥チャンバの入口にバルブを有する空気供給断熱ダクトによって接続される、熱媒剤を加熱しかつ供給する装置を含む。容器は各々のチャンバ内に回転可能なように取り付けられ、かつ回転軸に沿って設置される管部を備え、管部の表面または容器の端部面には熱媒剤の供給のために穴が開口されており、かつ対応する容器の反対側の壁面は網でできている。本発明は乾燥時間を短縮し、かつ乾燥の質を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空を用いて野菜および動物由来の原料を乾燥させる技術に関し、具体的には食品(野菜、果物、薬草、肉、魚、水産物など)を乾燥させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在用いられている食品を乾燥させる方法(特許RF No.2018245, M. class.5A 23 L 3/52参照のこと)は、生原料を大気圧より高い圧力下で液化炭酸ガスにより処理し、生原料を大気圧にリリースして発泡させかつ膨張させ、かつ温度上昇および/または減圧によって水分を除去することを含む。その処理においては、液化炭酸ガスでの生原料の処理が、18〜120kHzの振動数の機械的超音波振動の場で実施され、そして水分除去することが、850kHzを下回らない振動数の電磁的高周波振動の場で実施される。
【0003】
乾燥に関する公知の方法の不都合点は、液化炭酸ガスを廃棄するために高度のメンテナンスが必要となることを含み、同様に、振動は人間の健康に有害なために、高周波振動の使用により、作業員に追加的な保護対策を講じることが必要となることである。
【0004】
同様に、原料を積み重ね、その後目的の水分まで赤外線をインパルスモードの「加熱−冷却」で放射することにより、乾燥が実施される、高い水分を含む野菜および動物由来の原料の改善された乾燥方法(特許RF No.2048245, M. class.F26D3/30参照のこと)が存在する。赤外線放射は、2〜10ミクロンの範囲内のフラックス密度4.5〜8.5kW/m2で、乾燥臨界点温度の0.8〜0.9に等しい温度に到達するように実施され、かつ冷却が乾燥臨界点温度の0.4〜0.6に等しい原料温度に到達するように実施される。
【0005】
この乾燥方法の不都合点は、高いエネルギーコスト、原料の品質に悪影響を与えかつ乾燥時間を増加させる乾燥プロセスの長期間化を含む。
【0006】
また、乾燥チャンバ、チャンバ内で互いの上に各々重ねるように設置される産物トレイ、乾燥媒剤の出し入れのための装置、圧力シールド、乾燥媒剤用の攪拌器、中間スペクトル領域の赤外線放射装置を含む、野菜食品のための放射乾燥機が同様に存在する。処理される食品は、直接と、反射された赤外線および対流による上昇空気により加熱される。加熱方法は処理される産物の種類によって特定される。外気は乾燥チャンバの底を通って、側部の細長い穴および底部の開口部経由で入る。空気加熱は、全体的には放射装置により、部分的には空気ダクトディフレクターおよび空気ダクトにより行われる。産物が加熱されている間に、その水分は蒸発し、空気の流れの中に拡散し、かつ開口されたチャンバカバーを通って空気の流れに沿って排出される。乾燥プロセスが完了すると同時に、乾燥機のスイッチが切られ、上部カバーが開けられ、乾燥された産物の入ったトレイおよび破片の入った底部トレイが乾燥チャンバから取り外される(特許RF No.2034489 M.class A 23 B 7/02, F 26 B 3/30参照のこと)。
【0007】
放射乾燥機の不都合点は、乾燥プロセスの長さ、原料の部分的または局所的な焦げに対する保証の欠如、産物の水分が完全に水蒸気に変換されてしまうための高い特定のエネルギー消費、および空気−水蒸気の混合物を捕捉できないことを含む。
【0008】
同様に、耐圧扉を有する2つの乾燥チャンバ、レシーバ、熱交換器(およびコンデンサ)、エアロックチャンバ、真空および空気ポンプを含み、さらに各々の乾燥チャンバ内には送風装置およびヒーターを有する、野菜原料乾燥装置(特許RF No.2302740, M class F26 B3/00参照のこと)も用いられている。各々の乾燥チャンバは、パイプラインにより、熱交換器(コンデンサ)の1つと真空ポンプが接続するレシーバとが、乾燥チャンバとレシーバを接続するパイプラインに接続され、バルブにより空気ポンプの放出側が接続され、追加的に熱交換器(コンデンサ)の吸入側がレシーバに接続され、熱交換器(コンデンサ)の放出側が、バルブおよびパイプラインにより、エアロックチャンバに接続される。
【0009】
野菜原料乾燥装置の不都合点は、部分的にしか除湿されていない加熱媒剤により水分除去プロセスを実施しているため、乾燥プロセスの効果が不十分であることを含む。
【0010】
その技術的特性上、本発明提案に最も近い方法(最も近い類似物)は、野菜原料乾燥方法(特許RF No. 2238490, M. classF26B5/04参照のこと)であり、乾燥チャンバの密閉空間内で、元の品質特性を変質させない温度まで野菜原料を加熱すること、大気から遮断された乾燥チャンバ内で全乾燥プロセスの期間中の連続的な加熱と共に、レシーバ、高速応答バルブおよびパイプラインによる真空処理に野菜原料を曝す急速な真空処理と、が連続する処理を少なくとも2回繰り返すことを含み、そこでは、残留真空下での原料の加熱プロセスおよび曝露の間に、乾燥チャンバの密閉空間内で、圧力がその温度での平衡蒸気圧に等しい圧力に到達するように、原料を変質させない温度まで加熱するプロセスが実施される。
【0011】
最も近い類似方法を実行するための装置は、野菜原料乾燥のための装置(特許RF No.2232955, M class. F 26 B 5/04参照のこと)である。最も近い類似物として選択された装置は、耐圧扉を有する2つの乾燥チャンバ、乾燥媒剤の出入用の装置、空気ダクト、高速応答バルブを有するパイプラインにより接続されたレシーバを含み、レシーバの体積が、産物で充填された後の乾燥チャンバの空き容量に等しい。それは、熱交換器(コンデンサ)、加熱媒剤を加熱する装置、熱交換器を冷却する冷却機、真空ポンプおよびレシーバから液体を収集するためのエアロックチャンバ、乾燥チャンバおよび熱交換器を備える。熱交換器、冷却機、真空ポンプおよびエアロックチャンバは、相互に接続され、かつ、付属バルブを有するパイプラインにより、レシーバおよび乾燥チャンバに接続する。
【0012】
しかしながら、この方法およびこれを実行するための装置においては、乾燥に供される原料から排出されて部分的に飽和した水蒸気を含む真空下の密封されたチャンバ内で、原料の加熱が実施され、平衡蒸気圧に近い水蒸気圧によりこのプロセスが進行されるために、水分除去の量が少ない結果となる。その結果、乾燥時間が増加し、かつ乾燥した原料の品質が低下する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】密封扉を有する2個の乾燥チャンバを有して、野菜および動物由来の原料、魚および水産物の原料を乾燥させるための乾燥装置の図である。
【図2】a)は、図1における、一例の代替可能なデザインの回転容器を含む乾燥チャンバの図であり、b)は、図1における、異なる一例の代替可能なデザインの回転容器を含む乾燥チャンバの図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の目的は、最も近い類似物が有する、乾燥に供される原料を水蒸気飽和温度を超える温度まで加熱することに起因する不都合点なしで用いることができ、乾燥プロセスの改良および産物の品質の改善につながる、水分除去プロセスの強化に必要な方法および装置を明らかにすることである。
【0015】
この問題を解決するために、本方法は、乾燥チャンバの密閉空間内で、元の品質特性を変質させない温度まで野菜原料を加熱すること、レシーバ、高速応答バルブおよびパイプラインによる急速な真空処理、真空処理に原料を曝すこと、処理サイクル終了時に真空をリリースして大気圧にすること、乾燥チャンバ内での原料加熱および真空リリースが温度300℃の乾燥した空気またはガスの熱伝導媒剤により実施されること、を含む、連続する処理を少なくとも2回繰り返す。
【0016】
使用済みの空気またはガスの熱伝導媒剤のための排出ライン中で乾燥中の原料内の酸化反応を回避するために、反応性のないガスを熱媒剤として用いることができる。使用済みの空気またはガスの熱伝導媒剤のための排出ラインの中では、より低い露点温度で、将来の利用にそなえてエッセンスを含む油および生物学的に価値のある成分を得ることができる。
【0017】
方法を用いるために、野菜および動物由来の原料、魚および水産物の原料を乾燥させるための、密封扉を有する2つの乾燥チャンバを有する装置は、高速応答バルブを有するパイプラインにより、熱交換器(コンデンサ)、エアロックチャンバ(復水タンク)、真空ポンプ、熱媒剤加熱装置に接続される。本発明に従って、断熱材を有する熱媒剤加熱装置が独立したチャンバ内に設置され、かつ高速応答バルブを有する断熱された送風ダクトにより、各々の乾燥チャンバの入口に接続される。その乾燥チャンバの内部には回転軸に沿った管部を有して回転能力をもった容器が設置され、管の表面または容器の端部表面には熱媒剤を供給するために穴が開口されていて、かつ、容器の反対側の壁面は網状になっている。
【0018】
温度T=300℃になるまで空気またはガスの熱媒剤により原料を加熱すると、加熱時間が短縮され、真空−インパルスモードで、インパルス的に真空処理および加熱される原料を真空に曝すことで、強力な水分蒸発がおこるために、50℃を超える温度差の冷却がおこり、そのことで乾燥に供される原料の品質特性がそのままに保たれるので、原料の変質を起こさない温度で原料の急速高温加熱が実施され、原料の過熱が回避される。
【0019】
乾燥した熱媒剤により真空をリリースして大気圧にすることを実施することにより、原料の乾燥時間が短縮される。
【0020】
上記方法の特徴の組み合わせのほかに装置の特徴の組み合わせで、原料乾燥のための技術および装置の開発を行うことができて、そのことで大幅に乾燥時間が短縮し、かつ乾燥させた原料の品質が向上し、かつエッセンスを含む油および生物学的に価値のある成分を得ることができる。
【0021】
請求項記載の方法を実現するための、野菜および動物由来の原料、魚および水産物の原料を乾燥させるための装置が図示され(図1)、かつ乾燥チャンバの容器の代替可能なデザインが図示される(図2a、2b)。
【0022】
乾燥装置(図1)は、密封扉24を有する2個の乾燥チャンバ2、異なるデザインの回転容器3(図2aおよび図2b参照)、ヒーター5および送風装置4を含む熱媒剤加熱(および熱媒剤供給)装置1、使用済みの熱媒剤乾燥用のコンデンサ6、7、復水タンク9、高速応答バルブ8、11が取り付けられて乾燥チャンバを熱媒剤加熱装置に接続する空気ダクト25および真空発生機(レシーバ18および真空ポンプ17を伴いレシーバ内で必要な真空を発生する)に直列に高速応答バルブ12、16が取り付けられたパイプラインと、乾燥チャンバから取り出された種々の種類の生物学的に価値のある成分を集めるためのコンデンサ13、14および復水タンク15、を含む。乾燥チャンバ、熱媒剤加熱装置および乾燥チャンバの送風ダクトは断熱材により被覆され、かつ保護ハウジングを有する。制御パネル19は乾燥装置でプロセス制御を実行する。
【0023】
乾燥チャンバ2(図2参照)は、断熱材を有するチャンバ本体および回転軸に沿う管部20を有する回転容器3を含む。容器の有効断面は仕切りで3つの部分に分割され、かつ容器内部の縦方向の帯状部は原料をよりよく混合する。熱媒剤に流動を与えるために、以下の2つの異なる容器デザインが提案される。
− 熱媒剤を供給するために穴が開口された管部20および、熱媒剤を排出するため容器本体の網状の横方向表面22(図2a)、
− 熱媒剤を供給するために容器本体3に穴が開口された端部表面21および、熱媒剤を排出するための網状の端部表面23(中央管部の入口は閉鎖されている)、
このようなデザインにより、熱媒剤を原料に吹きつけ、かつ原料の異なる層を混合することが容易になり、従って使用済みの熱媒剤をよりよく排出することが容易になる。
【0024】
原料乾燥のための請求項に記載の方法は、2つの乾燥チャンバのうちの1つの乾燥チャンバの実施例によって下記のごとく説明される。
【0025】
レシーバ18内および乾燥チャンバ2に通じる真空供給ライン内の残留圧力が0.1〜1.3kPaに達すると同時に、真空ポンプ17が遮断され、高速応答バルブ16が閉じられ、かつ乾燥チャンバがバルブ12でレシーバから切り離される。
【0026】
乾燥プロセスに供される原料は、容器3内に均一に供給され、かつ移動台車により乾燥チャンバ2に配置されて、乾燥チャンバ内に固定され、乾燥チャンバの扉が気密を保つように閉じられ、容器3の回転駆動部26のスイッチが入れられる。300℃に加熱された空気またはガス熱媒剤は、バルブ8および空気ダクト25により、回転容器に供給され、裏返されかつ混合される原料が、高い伝熱係数および水分除去強度を有する熱媒剤が均一に吹き付けることによって、原料の変質がおこらない温度まで加熱される。
【0027】
原料が高温熱媒剤により加熱されている間、高速応答バルブが開き、かつ使用済みの熱媒剤が乾燥チャンバからコンデンサ6、7に入り、除湿され、かつ送風装置4によりヒーター5に再度供給され、かつ生成された凝縮液はタンク9に入る。コンデンサを熱媒剤循環部と直列に配置することで、加熱された熱媒剤を大気に排出することが回避される。熱媒剤加熱装置に供給された、除湿された熱媒剤の温度は40〜85℃である。低い相対湿度を有する熱媒剤は、乾燥チャンバ内で乾燥に供される原料からの水分の蒸気をより強力に吸収する。コンデンサが無いと、熱媒剤はすぐに水蒸気により飽和してしまい、乾燥プロセスの能率が低下する。
【0028】
原料の変質をおこさないことが要求される最大温度に到達すると同時に、空気またはガスの熱媒剤を乾燥チャンバに供給することおよび乾燥チャンバから排出することが停止し、バルブ8、11が閉じられる。
【0029】
高温対流での乾燥処理の後、高速応答バルブ12により、真空供給ラインに接続することにより、乾燥チャンバ内のインパルス的な圧抜きが実施される。乾燥チャンバ内では、供給パイプラインの内部断面およびレシーバ容積に応じて、原料のインパルス的な真空乾燥プロセスが15秒間実施される。その後、原料は、10分間まで、真空処理に曝される。インパルス的な真空処理および真空曝露処理は追加の加熱なしで実施され、かつ乾燥チャンバの断熱により、乾燥チャンバ内の原料温度の低下が回避される。
【0030】
原料が真空に曝されている間、および後続するインパルス的な圧力リリースの間、バルブ12が開かれ、乾燥チャンバからの空気またはガスの熱媒剤が、真空供給ラインにより、コンデンサ13、14に入り、水分および生物学的に価値のある成分が取り出される。コンデンサ13、14に異なる冷却媒剤を用いることにより、乾燥に供される原料から取り出された価値のある成分を、その凝縮温度に応じて、分離することができる。バルブ8、11が開いている間には、除湿し、加熱された空気またはガスの熱媒剤により、乾燥チャンバ内で圧力リリースが実施される。
【0031】
熱媒剤加熱装置を乾燥チャンバの外に設置することにより、真空中ではなく大気圧で原料を加熱することができ、それにより全体の乾燥プロセスを速めることができる。
【0032】
乾燥プロセス制御は、乾燥チャンバに流入する熱媒剤温度(Tf.t.)、乾燥チャンバから排出される使用済み熱媒剤温度(Tw.m.)および真空供給ライン内の乾燥チャンバ出口の蒸気−空気混合温度(Tv.a.m.)に従って実行される。
【0033】
加熱−真空乾燥処理サイクルは、乾燥に供される原料内が要求された最終湿度に到達するまで、数回繰り返される。
【0034】
乾燥プロセスが完了すると同時に、乾燥チャンバは減圧され、乾燥された原料の入った容器3が取り出され、台車10の上に置かれる。乾燥に供される新たな1回分の原料で充填された次の容器が乾燥チャンバに取り付けられる。
【0035】
第2乾燥チャンバは、すなわち、第1乾燥チャンバ内で原料の加熱が行われている間に、もう一つの乾燥チャンバ内で真空−インパルス的乾燥プロセスが行われるような、プロセス処理の時間的転換を含んだ同様な方法で機能する。
【0036】
熱媒剤加熱装置を乾燥チャンバの外に設置するという本提案のデザインコンセプトにより、2つの乾燥チャンバの処理のために1つの熱媒剤加熱装置を用いること、および高効率な乾燥プロセスを作り出すことが可能になり、乾燥チャンバのデザインを簡素化し、より安価にし、かつ電力消費を低減することが可能になる。
【0037】
野菜、動物由来、および魚の原料を乾燥するための装置を用いた乾燥プロセスの実用的な実施例
【0038】
1.ニンジンの乾燥
【0039】
元の水分Wが80%のニンジンが乾燥に供される。処理開始前に、乾燥チャンバおよび装置全体の予熱を空気またはガスの熱媒剤により実施される。
【0040】
真空ポンプは、乾燥チャンバに接続するレシーバおよびパイプライン内に使用圧力Pw.=0.1〜1.3kPaを発生する。
【0041】
前処理(洗浄、消毒、切断、および水加熱)をしたニンジンの合計300kgを、移動台車上に置かれた乾燥チャンバの容器に積載する。ニンジンの層は、容器の長さ方向、幅方向および高さ方向に均一である。ニンジンの積載が終了した後、容器は、ガイドにより乾燥チャンバ本体内に移動され、容器回転ユニットおよび空気ダクトに合うように位置が調節される。乾燥チャンバの扉が閉められ、空気またはガスの熱媒剤の加熱装置の運転が開始され、原料が、連続的に混合されながら、空気の熱媒剤により加熱される。乾燥プロセスを強化し、かつ加熱速度を上げるために、供給する熱媒剤の温度であるTf.m.を300℃にプリセットする。高温の熱媒剤をニンジンの層を通して吹きつけつつ、加熱プロセスをTw.m.(使用済み熱媒剤温度)が95℃になるまで約10分間実施する。ニンジンの加熱に要する時間は、Tf.m.、前処理したニンジンを容器に詰め込む程度、ニンジンの元の水分量および最終的な水分量、ニンジンの真空−インパルス的乾燥処理後の温度、および再循環される空気またはガスの熱媒剤の温度によって決まる。ニンジンが水分8%まで乾燥するのに要する時間は、ニンジンの層を通る使用済み熱媒剤の温度(Tw.m.)および真空供給ライン内の空気−水蒸気の温度(Tv.a.m.)を制御した状況で、総計1〜1.2時間であった。この温度は、乾燥プロセス中のニンジン加熱温度に近い。
【0042】
ニンジンの第1インパルス的真空処理プロセスは、温度TO.T=95℃で時間τ=約8秒の間に実施される。
【0043】
真空処理の第1サイクルの間およびニンジンが真空に曝されていた間に、最高許容温度(Tm.p.)は58℃から15℃に低下する。
【0044】
ニンジンの加熱のために後続するサイクル中では、真空乾燥処理中の水分蒸発による温度降下15〜20℃を含んで、温度Tw.mは105、115℃であり、かつ真空供給ライン内温度Tv.a.m.は約52℃であった。最後の真空処理サイクル中にも水分の除去が継続しており、温度の差(Tv.a.m.−Tv.a.m.2−5)をニンジンの乾燥度の客観的指標として利用することができる。真空−インパルス的乾燥プロセスのサイクルを重ねる(5サイクルまで)間に、ニンジン中の水分が減少することで、ニンジンの温度が上昇し、それにより、その結果として温度の差(Tv.a.m.−Tv.a.m.2−5)が減少する。乾燥プロセスの終わりまでに、温度のバラツキは最小となり、かつ5サイクル終了後には、バラツキは4〜5℃になり、水分含有量に関するGOST 7588−71規格の必要条件を満足する。乾燥されたニンジンは元の色、味および香りを維持していた。
【0045】
乾燥プロセスの後、乾燥ニンジンは包装ユニットに搬送される。
【0046】
2.肉の乾燥
【0047】
処理開始前に、乾燥チャンバおよび装置全体を空気またはガスの熱媒剤により予熱される。真空ポンプは、乾燥チャンバに接続するレシーバおよびパイプライン内に、使用圧力Pw.=0.1〜1.3kPaを発生する。
【0048】
乾燥プロセスの前に、肉を、30分間、香辛料(黒コショウ、月桂樹の葉など)を加えてとろ火で煮込み、その後、約40〜50mmの肉片に切断する。前処理をした200kgの肉を乾燥チャンバの容器に入れ、移動台車上に固定する。肉の層は、容器の長さ方向、幅方向および高さ方向に均一である。肉の容器への積載が終了した後、容器がガイドにより乾燥チャンバ本体内に移動され、容器回転ユニットおよび空気ダクトに固定される。乾燥チャンバの扉が閉められ、空気またはガスの熱媒剤の加熱装置の運転が開始され、原料が、連続的に混合されながら、温度Tf.m.=300℃になるまで、空気の熱媒剤により加熱される。肉の層を通して高温の熱媒剤を吹きつけつつ、加熱プロセスが、Tw.m.=98℃になるまで約12分間実施される。肉の水分W=35〜40%を、肉の水分8〜10%とする乾燥プロセスに要する時間は、総計30〜40分であった。肉の第1インパルス的真空処理プロセスは、温度Tw.m.=98℃で時間τ=約12〜15秒の間に実施される。
【0049】
真空処理および肉を真空に曝すの第1サイクルの間に、最高許容温度(Tm.p.)が58℃から18℃に低下する。
【0050】
肉を加熱するために、後続するサイクルの間、真空乾燥中の水分蒸発による温度降下18℃を含んで、温度Tw.m=115、120℃であり、かつ真空供給ライン内の温度は、Tv.a.m.=約50〜22℃である。
【0051】
肉の水分含有量W=8〜10%となるまで、総計5〜6回の真空−インパルス的サイクルが実施される。乾燥産物としての乾燥肉は、長期間保存することができ、かつ調理時にその味を維持している。
【0052】
3.魚の乾燥
【0053】
本発明で提案された装置内により魚(鮭)の乾燥プロセスが実施された。乾燥プロセスの前に、魚をピクルス溶液(塩、香辛料)中に保存し、厚さ1.5〜2cmの薄片に切断し、その後、200kgの量を乾燥チャンバの容器に入れた。乾燥チャンバの扉が閉められ、空気またはガスの熱媒剤の加熱装置の運転が開始され、産物が、連続的に混合されながら、温度Tf.m.=300℃まで空気の熱媒剤により加熱される。魚の層を通して高温の熱媒剤が吹きつけられながら、加熱プロセスが、Tw.m.=92℃になるまで、約15分間実施される。魚の水分W=60%が魚の水分=9〜10%となる乾燥プロセスに要する時間は総計40〜60分であった。魚の第1インパルス的真空処理プロセスが温度Tw.m.=92℃で時間τ=約12〜15秒の間に実施される。真空処理および魚を真空に曝す第1サイクルの間に、最高許容温度(Tm.p.)が59℃から29℃に低下する。魚を加熱するために、後続のサイクルの間、真空乾燥中の水分蒸発による温度降下17℃を含んで、温度Tw.m=100、115、120℃であり、かつ真空供給ライン内温度Tv.a.m.=約55〜18℃であった。
【0054】
魚の水分含有量W=9〜10%となるまで、総計7〜8回の真空−インパルス的サイクルが実施される。
【0055】
乾燥した魚は、長期間保存することができ、かついつでも食べることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜、動物由来の原料、魚および水産物の原料を乾燥させる方法であって、
乾燥チャンバの密閉空間内で、
元の品質特性を変質させない温度まで原料を加熱すること、
レシーバ、高速応答バルブおよびパイプラインによる急速な真空処理、
原料を真空処理に曝すこと、
を含み、
処理サイクル終了時に真空をリリースして大気圧にすることを実施し、
乾燥チャンバ内での原料加熱および真空リリースが、300℃までの温度の乾燥した空気またはガスの熱媒剤により実施される、
という連続する処理を少なくとも2回繰り返す
野菜、動物由来の原料、魚および水産物の原料を乾燥させる方法。
【請求項2】
乾燥に供される原料内での酸化反応を回避する反応性のないガスを、ガス熱媒剤として用いる、請求項1に記載の原料を乾燥させる方法。
【請求項3】
使用済みの空気またはガスの熱媒剤の排出ライン内および真空供給ライン内で、エッセンスを含む油および生物学的に価値のある成分を、露点より低い温度により得ることができる、請求項1に記載の原料を乾燥させる方法。
【請求項4】
野菜、動物由来の原料、魚および水産物の原料を乾燥させる装置であって、
高速応答バルブを有するパイプラインにより、レシーバ、熱交換器(コンデンサ)、復水タンク、真空ポンプ、熱媒剤加熱装置、に接続し、耐圧(密封された)扉を有する、2つの乾燥チャンバを含み、
熱媒剤加熱装置が、断熱材を有する独立したチャンバ内に設置され、高速応答バルブを有する断熱された送風ダクトにより各々の乾燥チャンバの入口に接続され、乾燥チャンバの内部には回転軸に沿った管部を有して回転能力をもった容器が設置され、
管部のどちらかの表面に熱媒剤を供給するために穴が開口されており、かつ容器本体の横方向の表面が熱媒剤を排出するために網状になっているか、または容器本体の端部表面に熱媒剤を供給するために穴が開口されており、かつ容器の反対側の壁面が熱媒剤を排出するために網状になっている、
野菜、動物由来の原料、魚および水産物の原料を乾燥させる装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−528293(P2012−528293A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512996(P2012−512996)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【国際出願番号】PCT/RU2010/000242
【国際公開番号】WO2010/138021
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(511154319)ザクルイトエ・アクツィオネルノエ・オブスチェストヴォ“ツイン・トレーディング・カンパニー” (8)
【氏名又は名称原語表記】ZAKRYTOE AKCIONERNOE OBSCHESTVO ‘TWIN TRADING COMPANY’
【Fターム(参考)】