説明

原料供給システム、プラント

【課題】リアクターに供給する液体原料中に混入した汚染混入物を該汚染混入物がリアクターに達するまでに検出でき、しかも汚染混入物が混入した原料がリアクターに流入することを防止できる技術の提供。
【解決手段】リアクター11への原料供給用の送液路2に、微生物あるいは微粒子である汚染混入物の検出用の検出器3を設け、さらにこの検出器3が汚染混入物を検出したときに出力する検出信号に基づいて送液路2を閉止する開閉弁4を検出器3よりも下流側に設けた構成の原料供給システム1、これを具備するプラント10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品や食品またはこれらに添加する添加物等を製造するためのプラントにおいて、リアクターに液状の原料を供給する原料供給システム、この原料供給システムを具備するプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
培養用のリアクター(培養槽)を用いて、医薬品や食品またはこれらに添加する添加物等を製造するプラント(いわゆるバイオプラント、培養プラント)にあっては、リアクターに、フィルター滅菌により無菌化した各種原料(液体。培地等)が供給される。そして、このようなプラントでは、運転中に、リアクターからの定期的なサンプリングにより微生物汚染の有無をチェックしている。
なお、培養容器に混入した微生物の検出、検出した微生物の排除を行う技術として特許文献1、サンプルの汚染チェック(サンプル中の微生物の検出、同定)に適した技術として特許文献2記載の技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−229619号公報
【特許文献2】特開2002−243978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のように、リアクターからの定期的なサンプリングにより汚染の有無をチェックする汚染監視方法では、フィルターの破損等が起きた場合には、サンプルの分析による汚染発覚までリアクターの汚染を防ぐ手立てが無かった。つまり、サンプルの分析によって汚染が発覚して初めてフィルターの破損等が判るため、フィルター破損等が起きればリアクターの汚染を防げない。
また、フィルターの破損等によってリアクターに供給する原料が汚染されたとしても、汚染が発覚するまでプラントの運転が無駄に継続されることになる。汚染の有無の判定に時間がかかると、汚染が発覚するまでにリアクターへ無駄に供給される原料の供給量も多くなり、損失が大きくなる。また、リアクター内の汚染によって、その回の培養が無駄になるため、培地費の損失が大きい。
【0005】
本発明は、前記問題に鑑みて、リアクターに供給する原料(液体)中に混入した汚染混入物を該汚染混入物がリアクターに達するまでに検出でき、しかも汚染混入物が混入した原料がリアクターに流入することを防止できる原料供給システム、プラントの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では以下の構成を提供する。
第1発明は、医薬品や食品またはこれらに添加する添加物を製造するためのプラントに設けられ、該プラントのリアクターに液状の原料を供給する原料供給システムであって、原料供給用の送液路に、該送液路を流れる前記原料に混入した微生物あるいは微粒子である汚染混入物を検出する検出器と、開閉弁とが設けられ、前記開閉弁は、前記検出器よりも下流側にて前記送液路に設けられ、前記検出器が前記原料中の前記汚染混入物を検出したときに出力する検出信号の受信によって前記送液路を閉止するようになっていることを特徴とする原料供給システムを提供する。
第2の発明は、前記検出器が、細孔が形成された基材とこの基材の両側に配置された電圧印加用の電極とを具備する検出部を内蔵し、コールター原理にて前記原料中の汚染混入物を検出するものであることを特徴とする第1の発明の原料供給システムを提供する。
第3の発明は、前記検出器は前記検出部を複数内蔵してなることを特徴とする第1又は第2の発明の原料供給システムを提供する。
第4の発明は、前記リアクターが培養槽であり、前記原料が培地であることを特徴とする第1〜3のいずれかの発明の原料供給システムを提供する。
第5の発明は、医薬品や食品またはこれらに添加する添加物を製造するためのプラントであって、リアクターと、このリアクターに液状の原料を供給する第1〜4のいずれかの発明の原料供給システムとを具備することを特徴とするプラントを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、送液路に設けられた検出器によって、リアクターに供給する原料(液体)中に混入した汚染混入物(微生物又は微粒子)を該汚染混入物がリアクターに達するまでに検出できる。しかも、検出器よりも下流側にて前記送液路に設けられた開閉弁が、前記検出器が前記原料中の前記汚染混入物を検出したときに出力する検出信号を受信によって送液路を閉止することで、汚染混入物が混入した原料がリアクターに流入することを防止できる。フィルター破損等によってリアクターに供給する原料が汚染混入物の混入によって汚染されたとしても、この汚染原料がリアクターに流入しないため、リアクター内の汚染を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の原料供給システム、プラントの1実施形態を示す全体図である。
【図2】図1の原料供給システムの検出器の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施した原料供給システム、プラントについて、図面を参照して説明する。
図1中、符号10は、前記原料供給システム1が設けられたプラントである。
このプラント10は、医薬品や食品またはこれらに添加する添加物を製造するための設備であり、図1に示すように、リアクター11(培養槽)と、このリアクター11に供給する原料13(液体。以下、液体原料ともいう)を貯留するタンク12及び該タンク12から前記リアクター11に前記液体原料13を送液して供給するための送液路2を有する前記原料供給システム1とを具備する。
【0010】
原料供給システム1がリアクター11に供給する前記液体原料13はここでは培養に用いる培地(液体培地)である。但し、液体原料13としてはこれに限定されず、例えば前記培地を希釈するための希釈液などであっても良い。
【0011】
前記原料供給システム1の原料送液用の送液路2には、該送液路2を流れる前記原料13中の汚染混入物(微生物又は微粒子)を検出する検出器3と、開閉弁4とが設けられている。前記送液路2は、複数本の配管を用いて検出器3と開閉弁4とを縦続(直列)に接続した構成になっている。
前記検出器3及び前記開閉弁4は前記送液路2の途中に介在配置されている。但し、前記開閉弁4は、前記検出器3よりも下流側に前記検出器3から離隔させて設けられている。
なお、開閉弁4の設置位置は、送液路2の下流端であっても良い。
【0012】
前記送液路2は、前記タンク12と検出器3とを接続する第1配管21と、検出器3と開閉弁4とを接続する第2配管22と、開閉弁4とリアクター11とを接続する第3配管23とを具備する。
前記検出器3は具体的には第1配管21と第2配管22との間に介在配置されている。前記開閉弁4は第2配管22と第3配管23との間に介在配置されている。
【0013】
第1配管21から前記検出器3に流入した原料13は、前記検出器3の内部の流路(内部流路31)を通って検出器3から第2配管22へ流出するようになっている。検出器3は、その内部流路31を流れる液体原料13中に混入した汚染混入物を検出する検出装置32を具備する。この検出装置32は、前記液体原料13中の汚染混入物を検出したときに検出信号を出力し開閉弁4へ入力する。
前記内部流路31は送液路2の一部である。検出器3は送液路2を流れる原料13中に混入した汚染混入物を検出できる。つまり、この検出器3は、送液路2による液体原料13の送液を中断することなく、液体原料13中の汚染混入物を検出できる。
【0014】
図2は、検出器3の一例を示す。
図2に示すように、この検出器3は、第1配管21と第2配管22との間に介在されたケース状の検出室33を具備している。第1配管21と第2配管22とは前記検出室33を介して互いに接続されており、前記検出室33の内部が前記内部流路31とされている。第1配管21と第2配管22とは互いに同等の流路断面積に形成されているが、前記検出室33は送液路2の途中を前記第1配管21及び前記第2配管22に比べて拡張した構成になっており、前記内部流路31の流路断面積が第1配管21及び第2配管22に比べて大きくなっている。
【0015】
また、図示例の検出器3の検出装置32は、コールター原理によって前記液体原料13中の汚染混入物14を検出するものであり、細孔34aが形成された板状の基材34とこの基材34の両側にそれぞれ複数配置された電圧印加用の電極35a、35bとで構成された検出部ユニット36と、この検出部ユニット36の前記電極35a、35b間の抵抗値が予め設定しておいた閾値を超えたときに検出信号を出力する検出信号出力部37とを具備している。
【0016】
図示例の検出部ユニット36の基材34には多数の細孔34aが形成されている。この基材34は、多数の細孔34aが形成された一枚の板材、あるいは、1又は複数個の板状部材(基材)を複数並べて集合させて一枚の板状に構成したものであり、前記検出室33内に設けられて前記内部流路31を上流側流路部31aと下流側流路部31bとに区画する。各細孔34aは、上流側流路部31aと下流側流路部31bとを連通させ、上流側流路部31a内の液体原料13を下流側流路部31bへ流入させるための連通路として機能する。
【0017】
前記電極35a、35bは、陽極35a、陰極35bの一方(図示例では陰極35b)が上流側流路部31aに複数設けられ、他方(図示例では陽極35a)が下流側流路部31bに複数設けられる。電極35a、36bは、陽極35a及び陰極35bの対を、基材34の細孔34a毎に対応して設置しても良いが、陽極35a及び陰極35bの対の設置数が細孔34aの数よりも少なくても良い。
【0018】
検出部ユニット36は、前記細孔34aと、この細孔34aを介して両側(上流側と下流側)に配置されている陽極35a及び陰極35bの対とが、コールター原理によって前記液体原料13中の汚染混入物14を検出するためのひとつの検出部36aを構成する。この検出部ユニット36は、いわば、細孔34aの数に対応する数の検出部36aを具備する構成になっている。換言すれば、検出部ユニット36は複数の検出部36aを並べて集合配置した構成になっている。
【0019】
前記細孔34aの内径は、5〜50μmであり、液体原料13中の微生物の検出のためには内径が10〜30μmであることがより好ましい。
【0020】
検出器3の検出室33内側の流路断面積は、検出部ユニット36の各検出部36aの細孔34aの断面積の合計である。検出器3の検出室33内側の流路断面積と、検出室33の両側の第1及び第2配管21、22の流路断面積とを同等に揃えるには、検出器3の検出部ユニット36の各検出部36aの細孔34aの断面積の合計が、第1及び第2配管21、22の流路断面積と同等であるようにする。
例えば、第1配管21及び第2配管22の内径が1cmのとき、内径20μmの細孔34aを有する検出部36aを25万個並べて構成した検出部ユニット36を検出室33内に設けることで、検出室33に第1及び第2配管21、22と同等の流路断面積を得ることができる。
【0021】
検出装置32は、図示略の電源によって電極35a、36b間に電圧を印加しておき、送液路2を流れる液体原料13中の汚染混入物14が細孔34aを通過したときに生じる抵抗値(電極35a、35b間の抵抗値)の増大によって、この抵抗値が予め設定しておいた閾値を超えたときに検出信号出力部37が検出信号を出力する。すなわち、検出装置32は、電極35a、35b間の抵抗値が閾値を超えたときに、汚染混入物15が検出されたものと判定して検出信号を出力する。
なお、液体原料13は電解質水溶液を採用する。
【0022】
前記開閉弁4は、送液路2を開閉する弁本体41と、この弁本体41を駆動する駆動部42と、検出信号出力部37から出力された検出信号を受信したときに前記駆動部42に駆動指令を出力する制御部43とを具備する。
なお、検出信号出力部37から開閉弁4への検出信号の伝送は、検出信号出力部37と開閉弁4とを接続する信号線5による電気信号による伝送、あるいは無線のいずれで行っても構わない。
【0023】
原料供給システム1によって液体原料13をリアクター11に供給するときには、開閉弁4は送液路2を開放する。タンク12内の液体原料13は圧送装置(図示略)によってタンク12から送液路2に送液される。
検出信号出力部37が検出信号を出力し、これを開閉弁4の制御部43が受信すると、駆動部42によって弁本体41が駆動されて自動的に送液路2が閉止され、送液路2からリアクター11への原料供給が停止される。
【0024】
送液路2における検出器3から開閉弁4までの流路長(すなわち第2配管22の配管長)と、送液路2によって送液する液体原料13の流速とは、汚染混入物14が細孔34aを通過してから検出装置32から出力した検出信号に基づいて開閉弁4が送液路2を閉止するまでの時間に対応して、細孔34aを通過した汚染混入物14が開閉弁4に達しないように設定する。
これにより、検出器3の検出装置32にて汚染混入物15が検出されたとき、細孔34aを通過した汚染混入物14が開閉弁4に達するまでに、開閉弁4によって送液路2が閉止され、送液路2からリアクター11への原料供給が停止されるため、汚染混入物14がリアクター11へ供給されることはない。
【0025】
したがって、リアクター11が汚染混入物14によって汚染されてしまうことを確実に防止できる。例えば、送液路2におけるタンク12と検出器3との間、あるいはタンク12に設けられた滅菌用のフィルター15の破損等によって液体原料13に汚染混入物14が混入したとしても、この汚染混入物14が検出器3にて検出されることで、リアクター11の汚染を確実に防ぐことができる。
【符号の説明】
【0026】
1…原料供給システム、2…送液路、21…第1配管、22…第2配管、23…第3配管、3…検出器、31…内部流路、32…検出装置、33…検出室、34…基材、34a…細孔、35a、35b…電極、36…検出部ユニット、37…検出信号出力部、4…開閉弁、41…弁本体、42…駆動部、43…制御部、10…プラント、11…リアクター、12…タンク、13…液体原料、14…汚染混入物、15…フィルター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品や食品またはこれらに添加する添加物を製造するためのプラントに設けられ、該プラントのリアクターに液状の原料を供給する原料供給システムであって、
原料供給用の送液路に、該送液路を流れる前記原料に混入した微生物あるいは微粒子である汚染混入物を検出する検出器と、開閉弁とが設けられ、
前記開閉弁は、前記検出器よりも下流側にて前記送液路に設けられ、前記検出器が前記原料中の前記汚染混入物を検出したときに出力する検出信号の受信によって前記送液路を閉止するようになっていることを特徴とする原料供給システム。
【請求項2】
前記検出器が、細孔が形成された基材とこの基材の両側に配置された電圧印加用の電極とを具備する検出部を内蔵し、コールター原理にて前記原料中の汚染混入物を検出するものであることを特徴とする請求項1記載の原料供給システム。
【請求項3】
前記検出器は前記検出部を複数内蔵してなることを特徴とする請求項1又は2記載の原料供給システム。
【請求項4】
前記リアクターが培養槽であり、前記原料が培地であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の原料供給システム。
【請求項5】
医薬品や食品またはこれらに添加する添加物を製造するためのプラントであって、リアクターと、このリアクターに液状の原料を供給する請求項1〜4のいずれかに記載の原料供給システムとを具備することを特徴とするプラント。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−207124(P2010−207124A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55165(P2009−55165)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】