原盤製造方法、記録媒体製造方法、プログラム、記録媒体
【課題】再生専用のコンテンツデータが記録される記録媒体において、グループ単位で固有の情報を効率的に付与できるようにする。
【解決手段】オーサリングで、被差し替えデータが特定のフォルダ内又はファイル内に配置されるデータとしてファイルシステムに管理されるデータ構造のマスターデータ(カッティングマスタ)を生成する。このマスターデータを用いてプリマスタリング、マスタリングで記録媒体原盤を製造するが、グループ毎に固有の差し替えデータを用意し、被差し替えデータを差し替えデータに差し替えてマスタリング(原盤露光)を行う。そして作成した原盤からスタンパを作成し、スタンパを用いて記録媒体を大量生産する。つまりグループ単位で、差し替えデータを変更していくことで、同じコンテンツの記録媒体としてグループ毎に固有の差し替えデータ(GP1,GP2等)が再生専用データとして記録された記録媒体が製造できるようにする。
【解決手段】オーサリングで、被差し替えデータが特定のフォルダ内又はファイル内に配置されるデータとしてファイルシステムに管理されるデータ構造のマスターデータ(カッティングマスタ)を生成する。このマスターデータを用いてプリマスタリング、マスタリングで記録媒体原盤を製造するが、グループ毎に固有の差し替えデータを用意し、被差し替えデータを差し替えデータに差し替えてマスタリング(原盤露光)を行う。そして作成した原盤からスタンパを作成し、スタンパを用いて記録媒体を大量生産する。つまりグループ単位で、差し替えデータを変更していくことで、同じコンテンツの記録媒体としてグループ毎に固有の差し替えデータ(GP1,GP2等)が再生専用データとして記録された記録媒体が製造できるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク等の製造に適用できる原盤製造方法、記録媒体製造方法、プログラム、及び光ディスク等の記録媒体に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開平2−56750号公報
【特許文献2】特開平10−289486号公報
【背景技術】
【0003】
光ディスクとしてBD(ブルーレイディスク:Blu-ray Disc(登録商標))、DVD(Digital Versatile Disc)、CD(Compact Disc)等が知られている。
これらのBD、DVD、CDの各範疇では、再生専用型の光ディスクとして、BD−ROM(Blu-ray Disc- Read Only Memory)、DVD−ROM(Digital Versatile Disc - Read Only Memory)、CD−ROM(Compact Disc - Read Only Memory)がある。
【0004】
これら再生専用ディスクは、例えばエンボスピット等の物理的に書き換えのできないデータとして、音楽や映像のコンテンツデータが記録される。再生専用ディスクの製造は、まずオーサリングとしてコンテンツデータを含むマスターデータが用意される。そして実際の工場でのマスタリング工程において、コンテンツデータや管理情報を含むマスターデータに基づいた凹凸ピット列が形成されたディスク原盤を作成し、さらにディスク原盤やスタンパを作成する。そしてスタンパを用いて光ディスクを大量生産する。
このように再生専用ディスクは、同一タイトル(同一のコンテンツのディスク)として、全て同じデータが記録されたものが大量生産される。
【0005】
一方、上記特許文献1,2に示されるように、同じデータが記録された状態で大量生産される再生専用ディスクにおいて、ディスク毎にユニークな情報を付与する手法が既に知られている。
代表的なものとしてBCA(Burst Cutting Area)を用いる手法がある。
例えばBDやDVD等の光ディスクでは、ディスク内周側の所定領域に、バーコード状の記録領域としてBCAを設けている。
このBCAは、反射率の異なる領域として放射状のパターンが形成されることで、トラッキングフリーで情報を読み出せる領域とされる。そして特に、大量生産される光ディスクに、ディスク固有の情報、例えばシリアルナンバ等の情報を付加できる領域として用いられている。
即ちBCAは、光ディスクがその製造工程により完成した後、信号領域のさらなる内周(例えば半径21〜22mmの領域)に、ディスク一枚ごとにシリアルナンバーやディスクインフォメーションなどを、BCA記録装置によってオフラインで書き込み、一枚ごとの管理ができるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、再生専用ディスクについて、製造されるグループ単位で固有の情報を付与したいという要望がある。
ここで「グループ」というのは、或る程度まとまった数のディスク群のことをいう。例えば販売仕向地別のグループ、販売者(ディスク製造工場からみれば出荷先)毎のグループ、製造ライン毎のグループ、用途別(レンタル用・販売用等)のグループなどである。
【0007】
しかし、このようなグループ毎に固有の情報を付加した光ディスクを製造しようとする場合、マスタリング毎に異なる情報を記録する必要がある。通常、グループ毎のディスク製造として、マスタリング毎に異なる情報を記録する方法としては、差し替えるデータの大小に関わらずオーサリングからやり直しマスターデータを作成しなおす方法が一般的である。
すると結局、同じタイトルのディスクでありながら、グループ毎のディスクを製造することは、異なるタイトルの光ディスクを製造するのと同等の手間がかかることとなり、製造効率は悪い。
【0008】
このようなことから、BCAを利用してグループ単位の情報を付加することも考えられる。しかしながらBCAは本来、ディスク固有の情報を付加するために用いられるものであるため、グループ単位の情報の記録のための利用には適さない場合がある。
また、BCAには対応できない再生装置の存在もある。
【0009】
そこで本発明では、BCA等、特殊なエリアを用いず、再生専用型の記録媒体の通常の再生専用データとして、グループ単位の情報付加を効率よく実行できる製造方法、プログラム、及び好適な記録媒体を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の原盤製造方法は、コンテンツデータと被差し替えデータとがファイルシステムによって管理されたデータ構造のマスターデータについて、上記ファイルシステムから被差し替えデータを確認し、また差し替えデータを用意する前処理工程と、上記被差し替えデータが上記差し替えデータに差し替えられたマスターデータに基づいて記録媒体原盤の露光を行う露光工程と、上記露光が行われた記録媒体原盤に対して現像を行い露光に応じた凹凸パターンが形成された記録媒体原盤を形成する現像工程とを備える。
この原盤製造方法では、オーサリング段階で作成されたマスターデータの段階において、ファイルシステムによってコンテンツデータと被差し替えデータとが管理されるデータ構造とされていることで、原盤露光の段階でその被差し替えデータを差し替えデータに差し替えることが可能となる。つまりオーサリングのやり直しをせずに、一部のデータが異なる再生専用の記録媒体のための原盤を製造できる。
【0011】
本発明の記録媒体製造方法は、コンテンツデータと被差し替えデータとがファイルシステムによって管理されたデータ構造のマスターデータについて、上記ファイルシステムから被差し替えデータを確認し、また製造される記録媒体のグループ単位で異なる複数の差し替えデータを用意する前処理工程と、上記被差し替えデータが、製造する記録媒体のグループに応じて選択された差し替えデータに差し替えられたマスターデータに基づいて記録媒体原盤の露光を行う露光工程と、上記露光が行われた記録媒体原盤に対して現像を行い露光に応じた凹凸パターンが形成された記録媒体原盤を形成する現像工程と、上記現像工程で形成された記録媒体原盤を用いてスタンパを作成するスタンパ作成工程と、上記スタンパを用いて記録媒体基板を作成し、該記録媒体基板上に記録層を含む層構造を形成することで記録媒体を作成する媒体作成工程とを備える。
この記録媒体製造方法では、オーサリング段階で作成されたマスターデータでは、ファイルシステムによってコンテンツデータと被差し替えデータとが管理されるデータ構造とされている。そこでグループ毎の差し替えデータを用意し、各グループの記録媒体についての原盤露光の段階で、そのマスターデータの被差し替えデータを、該当するグループの差し替えデータに差し替えることができる。つまり各グループの記録媒体の製造毎にオーサリング段階からやり直さなくともよい。
【0012】
本発明のプログラムは、記録媒体原盤の製造に用いるマスターデータとして、コンテンツデータと被差し替えデータとがファイルシステムによって管理されたデータ構造のマスターデータについて、上記ファイルシステムから被差し替えデータを確認するステップと、上記被差し替えデータに代える差し替えデータを用意するステップとを情報処理装置に実行させる。
このプログラムにより、露光工程前の前処理工程(プリマスタリング)においてグループ単位のデータなどである、差し替えデータへの差し替えの用意が可能となる。
【0013】
本発明のプログラムは、被差し替えデータが含まれるマスターデータと、差し替えデータとが供給されて、記録媒体原盤の露光を行う露光装置の制御部の処理を実行させるプログラムとして、マスターデータを変調処理して得られる変調信号に基づいたレーザ光照射で露光を行うとともに、上記変調処理に供するマスターデータにおける上記被差し替えデータを上記差し替えデータに差し替える処理を実行させる制御を、上記制御部に実行させる。
このプログラムにより露光装置での露光段階で、被差し替えデータを差し替えデータに差し替えることが可能となる。
【0014】
本発明の記録媒体は、ファイルシステムにより管理されたデータ構造を有する記録媒体である。そしてコンテンツデータと、特定のフォルダ内又はファイル内のデータ位置に配置された差し替えデータとが記録され、上記差し替えデータは、上記データ構造における、当該記録媒体の製造時において被差し替え用データが配置された上記データ位置に記録される。
この記録媒体では、例えばグループ単位の固有情報が、差し替えデータとして付加されたものであり、大量生産品として同一のタイトルの記録媒体であっても、グループ毎の情報が通常のデータで付加されているものとできる。つまりグループ毎の情報が、コンテンツデータと同様に、ファイルシステムに基づいて読み出せるデータとして記録されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の原盤製造方法、記録媒体製造方法によれば、同一コンテンツを収録した再生専用記録媒体について、グループ単位の固有のデータ等を、差し替えデータとして記録させた記録媒体原盤を、オーサリングからやり直すことなく製造できる。つまりマスタリング毎に違う記録内容の原盤を容易に作成することが可能である。
これによって、グループ毎に異なる情報を記録した同一タイトルの記録媒体の製造効率を大きく向上させることができる。
本発明のプログラムによれば、マスターデータにおける被差し替えデータを差し替えデータに差し替える処理を行うプリマスタリング装置や露光装置を実現できる。
また本発明の記録媒体によれば、BCA等の特殊な態様ではなく、ファイルシステムで管理される通常の再生専用データでグループ固有情報を記録できる。従って再生互換性、汎用性のあるグループ固有情報を持った再生専用の記録媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態のディスク製造の流れの説明図である。
【図2】実施の形態のデータ差し替えの説明図である。
【図3】実施の形態のプリマスタリング装置と露光装置のブロック図である。
【図4】実施の形態のプリマスタリング装置のブロック図である。
【図5】実施の形態の露光装置のブロック図である。
【図6】実施の形態のディスク製造工程のフローチャートである。
【図7】実施の形態のディスク製造工程の説明図である。
【図8】実施の形態のディスク製造工程の説明図である。
【図9】実施の形態のプリマスタリング処理の第1例のフローチャートである。
【図10】実施の形態の露光処理の第1例のフローチャートである。
【図11】実施の形態のプリマスタリング処理の第2例のフローチャートである。
【図12】実施の形態の露光処理の第2例のフローチャートである。
【図13】実施の形態の差し替えデータを記録するフォルダ例の説明図である。
【図14】実施の形態の差し替えデータを記録するファイル例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を次の順序で説明する。
<1.製造工程及びデータ差し替えの概要>
<2.プリマスタリング装置及び露光装置>
<3.ディスク製造工程>
<4.プリマスタリング及び露光処理の第1例>
<5.プリマスタリング及び露光処理の第2例>
<6.差し替えデータを記録するフォルダ・ファイル>
<7.プログラム>
【0018】
<1.製造工程及びデータ差し替えの概要>
実施の形態では、記録媒体として再生専用型の光ディスク、特にはBD−ROM(ブルーレイディスク−ROM)を例に挙げて説明する。
BD(ブルーレイディスク)について簡単に説明しておく。
BDは、ディスクサイズとしては、直径が120mm、ディスク厚は1.2mmとなる。即ちこれらの点では外形的に見ればCD方式のディスクや、DVD方式のディスクと同様となる。
そして記録/再生のためのレーザとして、いわゆる青色レーザ(例えば波長λ=405nm)が用いられ、また光学系が高NA(例えばNA=0.85)とされる。さらには狭トラックピッチ(例えばトラックピッチ=0.32μm)、高線密度(例えば記録線密度0.112μm/bit)を実現する。これらにより、直径12cmのディスクにおいて、ユーザーデータ容量として1層で25GB(Giga Byte)程度を実現している。
また更なる高密度記録により、27GB程度の容量も可能とされる。
また、記録層が複数層とされたいわゆるマルチレイヤーディスクも開発されており、マルチレイヤーディスクの場合、ユーザーデータ容量は、ほぼ層数倍となる。
【0019】
まず、このようなBDの一種である、BD−ROMの製造において、記録するコンテンツを作成するオーサリングシステムを用いた、光ディスクの製造までの流れを図1で簡単に説明する。
【0020】
まず素材製作として、映像素材の撮影、音声素材の録音、編集等が行われる(S1)。
この撮影・編集等で得られたデータは、制作するコンテンツの素材データ(映像素材、音声素材、字幕データ等)として格納される(S2)。
【0021】
各種素材データは、オーサリングスタジオに持ち込まれ、ディスクデータ(コンテンツ)制作に供される。
オーサリングスタジオでは、オーサリング処理のためのプログラムをインストールしたパーソナルコンピュータや所要のハードウエアを用いて、各種素材データを利用したコンテンツ制作を行う。
映像素材、音声素材はビデオエンコード、オーディオエンコードの各処理により、それぞれ所定の形式に圧縮符号化される。また字幕データ等から、メニューデータ、字幕データ等が作成される(S3)。次にコンテンツの構成としてのシナリオやメニュー作成が行われる(S4)。また各種データ編集が行われる(S5)。
【0022】
その後、コンテンツ/ファイルシステム生成(S6)として、コンテンツを構成するストリームデータを形成し、またコンテンツデータを管理するファイルシステムを生成する。
コンテンツデータの生成としては、符号化された映像データや音声データ、メニュ−などを多重化する。この場合、例えばハードディスク内等に格納された画像、音声、字幕などの符号化された素材データをインターリーブし、各種フォーマットファイルと合わせて多重化されたデータを作成する多重化処理が行われる。最終的に作成された多重化データがコンテンツデータとなる。
このようにコンテンツデータを生成するとともに、コンテンツデータ及びその他の各種データを管理するファイルシステムを形成して、ディスクに記録するデータ群を用意する。
最終的にファイルシステムで管理されるコンテンツデータ等を備えたデータ構造のマスターデータ(ディスク製造用のカッティングマスタ)が形成される(S7)。
カッティングマスタは、例えばパーソナルコンピュータ内のハードディスク等に格納される。
そのカッティングマスタは、ディスク製造のために工場に送られることになる。
【0023】
ディスク製造工場では、プリマスタリング(S8)として、データの暗号化や署名データの付加を行った状態のマスターデータ(露光用のマスタリングデータ)を生成する。
なお、以下では区別のため、プリマスタリングで処理する段階のマスターデータを「カッティングマスタ」、プリマスタリング処理されたマスターデータを「マスタリングデータ」と呼ぶ。
【0024】
プリマスタリング処理を終えたマスタリングデータは、マスタリング工程(S9)に供される。マスタリング工程では、露光、現像によりディスク原盤を製造し、またディスク原盤を用いてスタンパを作成する。
まず露光として、ディスク原盤に対して、マスタリングデータを変調した信号に基づいたレーザ照射を行う。そして現像処理で、露光部分と非露光部分が凹凸パターン(ピット列)とされたディスク原盤を完成させる。その後、ディスク原盤の凹凸パターンが転写されたスタンパを作成する。
【0025】
最後にリプリケーション(S10)として、スタンパを用いたディスク基板の制作や、ディスク基板上への所定の層構造形成を行い、完成品として光ディスク(BD−ROM)を得る。
【0026】
このようなディスク製造の流れにおいて、本実施の形態では、同一のコンテンツデータを記録した同一タイトルの光ディスクでありながら、グループ単位で異なる固有の情報を付加した光ディスクを製造する手法を提供する。
ここでいう「グループ」とは、或る程度まとまった数のディスク群であり、先に述べたように、例えば販売仕向地別のグループ、販売者毎のグループ、製造ライン毎のグループ、用途別のグループなどである。
例えば製造した光ディスクを、複数の販売者に納品する場合に、各販売者のそれぞれに納品する光ディスクは、同じコンテンツデータを収録した光ディスクでありながら、各販売者毎に固有の情報が付加されているものとなるようにする。
【0027】
図2で模式的に説明する。
図2(a)に示すように、カッティングマスタは共通コンテンツデータと、差し替えエリアがファイルシステムによって管理されているデータ構造を備える。
「共通コンテンツ」とは、グループの別に限らず同一の内容のコンテンツデータという意味である。
「差し替えエリア」とは、カッティングマスタ上で被差し替えデータが配されている部分を示している。必ずしも物理的に連続した領域でなくても良いが、あくまで被差し替えデータが記録されているとしてファイルシステムで管理されているデータ位置を示すものである。
上述のオーサリング工程で製作されるカッティングマスタは、このようなデータ構造のデータとされる。従来のカッティングマスタでは、差し替えエリアが存在しないが、本実施の形態の場合、差し替えエリアとして被差し替えデータが配置されたデータ位置が存在し、かつ、そのデータ位置が、ファイルシステムによって管理される。なお、被差し替えデータとは、具体的にはダミーデータなどであればよい。
【0028】
このようなカッティングマスタが供給されるプリマスタリング工程では、各グループ毎に固有のデータとして、図2(b)に示すグループデータGPD(GPD1,GPD2,GPD3・・・)を用意する。
グループデータGPDとしては、テキストデータ、グループID等のコードデータ、制御データ、画像データその他、グループデータを付加する目的に応じて各種のデータが考えられる。
【0029】
例えばグループGP1として、特定の販売者に提供する光ディスクの製造を行う場合、プリマスタリング段階、もしくは露光段階で、差し替えエリアに配置された被差し替えデータを、グループデータGPD1に置き換える。グループデータGPD1に置き換えられた状態のマスタリングデータに基づいてディスク原盤のマスタリング(露光、現像)を行い、さらに該ディスク原盤からスタンパを作成する。
そのスタンパを用いて大量生産された多数の光ディスクは、図2(c)のグループGP1の光ディスクとなる。これは、共通コンテンツとグループデータGPD1がファイルシステムによって管理されたデータ構造を有するものとなっている。つまり通常に再生装置に装填した際には、コンテンツデータとグループデータGPD1の双方が、ファイルシステムに基づいて読み出せる状態である。
【0030】
またグループGP2として、他の特定の販売者に提供する光ディスクの製造を行う場合、プリマスタリング段階、もしくは露光段階で、差し替えエリアに配置された被差し替えデータを、グループデータGPD2に置き換える。グループデータGPD2に置き換えられた状態のマスタリングデータに基づいてディスク原盤のマスタリング(露光、現像)を行い、さらに該ディスク原盤からスタンパを作成する。
そのスタンパを用いて大量生産された多数の光ディスクは、図2(d)のグループGP2の光ディスクとなる。つまり共通コンテンツとグループデータGPD2がファイルシステムによって管理されたデータ構造を有し、再生装置に装填した際には、コンテンツデータとグループデータGPD2の双方がファイルシステムに基づいて読み出せる。
【0031】
またグループGP3として、さらに他の特定の販売者に提供する光ディスクの製造を行う場合、プリマスタリング段階、もしくは露光段階で、差し替えエリアに配置された被差し替えデータを、グループデータGPD3に置き換える。そしてディスク原盤のマスタリング(露光、現像)を行い、さらに該ディスク原盤からスタンパを作成する。
そのスタンパを用いて大量生産された多数の光ディスクは、図2(e)のグループGP3の光ディスクとなる。つまり共通コンテンツとグループデータGPD3がファイルシステムによって管理されたデータ構造を有し、再生装置に装填した際には、コンテンツデータとグループデータGPD3の双方がファイルシステムに基づいて読み出せる。
【0032】
従来は、光ディスク製造において、その内容の一部をマスタリング毎に違う内容にするには、マスターデータの作成、つまりオーサリングからやり直す必要があった。
ここでファイルシステムを持つBDやDVD等の光ディスクでは、差し替えエリアを設定してファイルシステムの管理下に置く。すると、カッティング(露光)を行う都度その差し替えエリアのデータ内容を入れ替えることが可能となる。これにより、マスタリング毎に違う記録内容のディスク原盤、つまりグループ毎に異なるグループデータGPDを記録したディスク原盤を容易に作成できる。しかも、ファイルシステムで管理される通常のデータであるため、製造される光ディスクは、物理的・論理的にも通常の光ディスクと全く同じであるので、再生互換性等の心配がない。
グループデータGPDはファイルデータとすることで、光ディスクから容易に読み出すことが可能である。
【0033】
<2.プリマスタリング装置及び露光装置>
実施の形態の製造方法に用いられるプリマスタリング装置及び露光装置(カッティング装置)について説明する。
図3は、プリマスタリング装置10と露光装置20を示している。
プリマスタリング装置10には、オーサリングで作成されたカッティングマスタが供給される。
プリマスタリング装置10は、カッティングマスタに対して所定の暗号化処理や署名データ付加等を行って露光用のマスターデータ(マスタリングデータMSD)を生成し、露光装置20に供給する。また、グループデータGPD(GPD1,GPD2,GPD3・・・)を生成し、そのグループデータGPDや、差し替えエリアを示すエリア情報ARIFO等を露光装置20に供給する。
【0034】
なお、グループデータGPDやエリア情報ARIFO等を露光装置20に供給するのは、後述する第1例としてのプリマスタリング処理及び露光処理を採用する場合である。第1例は露光装置20側でデータ差し替えを行うためである。
第2例ではプリマスタリング装置10側でデータ差し替えを行う例であるため、既に差し替えがなされたマスタリングデータMSDを露光装置20に供給することになる。
【0035】
露光装置20では、マスタリングデータMSDに基づいてディスク原盤にレーザ照射を行い、マスタリングデータMSDに応じた露光パターンを形成する。その露光パターンが現像処理で凹凸パターンとされディスク原盤100が製造される
【0036】
図4にプリマスタリング装置10の構成例のブロック図を示す。
プリマスタリング装置10は、例えば専用のプリマスタリング処理演算を行う装置だけでなく、汎用のコンピュータ装置などでも実現可能である。
プリマスタリング装置10は、記憶部31、演算部32、データ入出力部33、ユーザインターフェース部34を備える。もちろんこれ以外の構成要素があってもよい。
【0037】
データ入出力部33は、他の装置との間のデータの送受信を行う。例えばオーサリングで作成されたカッティングマスタは、オーサリングシステムとの通信、或いはカッティングデータを記録した記録メディアの再生装置との通信等により、データ入出力部33から入力される。
またプリマスタリング装置で処理されたマスタリングデータMSDは、データ入出力部33から露光装置20に送信される。
【0038】
記憶部31は、固体メモリ、ハードディスク等で形成される記憶領域を有し、入力されたカッティングマスタの格納、プリマスタリング処理過程のデータ、マスタリングデータMSDの格納、グループデータGPDの格納などに用いられる。
演算部32は、カッティングマスタに対するプリマスタリング処理として、暗号化や署名データの設定等の処理を行う。さらに本例の場合、演算部32は、カッティングマスタのファイルシステムの解析、差し替えエリアの確認、グループデータGPDの設定などの処理も行う。
ユーザインターフェース部34は、プリマスタリング処理のオペレータとのインターフェースであり、キーボード、マウス等の入力装置やモニタディスプレイ等の出力装置を備える。
【0039】
このプリマスタリング装置10では、ユーザインターフェース部34からのオペレータの指示に基づいて、演算部32がプリマスタリング処理としての各種演算を実行する。そして生成したマスタリングデータMSDやグループデータGPD等を記憶部31に格納し、所定のタイミングで露光装置20に対して送信する。
【0040】
続いて図5で露光装置20の構成例を説明する。
露光装置20は、コントローラ40、レーザドライバ41、レーザ駆動パルス発生部42、変調部43、スピンドルモータ44、スライダ45、露光ヘッド46、スピンドルサーボ/ドライバ47、スライドドライバ48、センサ49、ターンテーブル50を備える。また露光装置20は、記憶部51、書込/読出制御部52を備える。
【0041】
記憶部51には、プリマスタリング装置10から供給されたマスタリングデータMSDを格納するマスタリングデータ記憶部51bが用意される。
また、後述する第1例としての処理を採用する場合は、記憶部51には、プリマスタリング装置10から供給されたグループデータGPDを格納するグループデータテーブル記憶部51aとしての領域も用意される。
また、後述する第1例としての処理を採用する場合は、プリマスタリング装置10からのエリア情報ARIFOはコントローラ40に供給される。コントローラ40は、エリア情報ARIFOを受け取ることにより、マスタリングデータとしてのデータストリーム内で、被差し替えデータが配置されている領域(データ位置)を把握することができる。
なお、後述する第2例としての処理を採用する場合は、記憶部51では、マスタリングデータ記憶部51bでマスタリングデータMSDを記憶すればよく、グループデータテーブル記憶部51aとしての領域は必要ない。但しその場合、マスタリングデータ記憶部51bでは、グループ毎に異なる複数のマスタリングデータを記憶する場合がある。
【0042】
書込/読出制御部52は、記憶部51へのデータの書き込み、及び読み出しを実行する。即ち書込/読出制御部52は、プリマスタリング装置10から供給されるマスタリングデータMSDやグループデータGPD等の記憶部51への書込を実行する。また書込/読出制御部52は、原盤露光の際には、コントローラ40の指示に応じて、記憶部51からマスタリングデータMSDやグループデータGPDの読み出しを行い、変調部43に供給する。
【0043】
露光ヘッド46内には、露光用のレーザ光源及び必要な光学系が搭載される。レーザ光源は、レーザドライバ41からの駆動信号に基づいて発光を行う。
【0044】
変調部43は、書込/読出制御部52によって記憶部51から読み出されたマスタリングデータMSDやグループデータGPDについて、所定の変調処理を施した変調信号を出力する。ピット列を露光するROMディスクのカッティングを行う場合は、レーザ光源のON/OFFの変調動作を行うための変調信号を生成することになる。
例えば変調部43は、光ディスクに記録するデータ、即ちコンテンツデータ、ファイルシステム自体のデータ、グループデータGPD等を含むデータストリームについてのRLL(1−7)変調信号を出力する。
その変調信号はレーザ駆動パルス発生部42でレーザ駆動パルスに変換される。
【0045】
レーザ駆動パルス発生部42は、レーザ駆動パルスをレーザドライバ41に供給する。
レーザドライバ41は、レーザ駆動パルスに基づいて、露光ヘッド46内の露光用のレーザ光源に駆動信号を供給する。
これにより露光用のレーザ光源からの記録レーザ光は、ピット列に応じた変調光となり、ディスク原盤100にはピット列に相当する露光パターンが形成されることになる。
【0046】
ディスク原盤100は、ターンテーブル50に載置され、スピンドルモータ44によって回転駆動される。
スピンドルモータ44は、スピンドルサーボ/ドライバ47によって回転速度が制御されながら回転駆動される。これによってディスク原盤100は例えば一定線速度又は一定角速度で回転される。
スライダ45は、スライドドライバ48によって駆動され、ディスク原盤100が積載されたターンテーブル50及びスピンドル機構を含む基台全体を移動させる。即ち、スピンドルモータ44で回転されている状態のディスク原盤100は、スライダ45で半径方向に移動されながら露光ヘッド46からのレーザ光によって露光されていくことで、露光されるピット列によるトラックがスパイラル状に形成されていくことになる。
スライダ45による移動位置、即ちディスク原盤100の露光位置(ディスク半径位置:スライダ半径位置)はセンサ49によって検出される。センサ49による位置検出情報はコントローラ40に供給される。
【0047】
コントローラ40は、この露光装置20の全体を制御する。即ち、書込/読出制御部52によるマスタリングデータMSDやグループデータGPD等の読み出し、レーザ駆動パルス発生部42でのパルス生成パラメータの制御、レーザドライバ41に対してのレーザパワー設定、スピンドルサーボ/ドライバ47によるスピンドル回転動作制御、スライドドライバ48によるスライダ45の移動動作の制御等を行う。
【0048】
<3.ディスク製造工程>
図1で説明したディスク製造工場で実行されるディスク製造工程、即ちプリマスタリング(S8)、マスタリング(S9)、リプリケーション(S10)を図6に詳しく示し、図7,図8を参照しながら説明していく。
【0049】
まず図6のステップF100として、プリマスタリングが行われる。上述のようにプリマスタリング装置10が、カッティングマスタに対してプリマスタリング処理を行う。詳しくはプリマスタリング処理の第1例、第2例として後述する。
【0050】
このステップF100のプリマスタリング処理後、マスタリングデータMSDが露光装置20に転送される。そしてステップF101〜F103としてマスタリング(S9)が行われる。まずステップF101で、露光装置20で原盤に対する露光が行われる。
例えば図7(a)に示すように、無機レジスト等のレジストが塗布されたディスク原盤100に対して、露光ヘッド46からマスタリングデータMSDに応じて変調されたレーザ光を照射し、ピットパターンに応じた露光を行う。これにより図7(b)に示すように、露光部分Rが形成される。
なお露光処理の詳細についても第1例、第2例として後述する。
【0051】
次にステップF102として原盤形成が行われる。
例えば図7(b)に示した露光されたディスク原盤100に対して現像を行い、図7(c)のように露光部分が凹状となったディスク原盤100を作製する。凹部が完成後の光ディスクにおけるピットに相当することとなる。
次にステップF103でスタンパを作成する。
例えばディスク原盤100を用いたニッケル電鋳処理により、ディスク原盤100の凹凸が転写されたスタンパ101を作製する(図7(d))。スタンパ101の凹凸パターンではピット相当部分が凸形状となっている。
【0052】
続いてステップF104,F105,F106でスタンパ101を用いたディスク製造(リプリケーションS10)が行われる。
まずステップF104でスタンパ101を用いたディスク基板製造を行う。
図8(a)のようにスタンパ101を基板成形用の金型に配置させる。この金型は、下キャビティ120と上キャビティ121から成り、下キャビティ120に、ピット列を転写するためのスタンパ101が配置される。
【0053】
このような金型を用いて例えばポリカーボネート樹脂の射出成形で基板1を成形するが、成形される基板1は図8(b)のようになる。
即ちポリカーボネート樹脂による基板1は、その中心はセンターホール2とされるとともに、情報読出面側は、金型内のスタンパ101に形成された凹凸パターン101aが転写されたピットパターン3となる。
【0054】
続いてステップF105で、このように形成された基板1に対して成膜が行われる。
まずスパッタにより、スタンパ101から転写されたピットパターン上に、反射膜4の成膜が行われる。即ち図8(c)に示すように、ピットパターン3が形成された信号読出面側に例えばAg合金の反射膜4を形成する。
さらに、例えば紫外線硬化型樹脂のスピンコートにより、図8(d)のようにカバー層5を形成する。
なお、カバー層5の表面にさらにハードコート処理を施す場合もある。
また、ここでは記録層が1つの1層ディスクの場合を示しているが、2層以上の多層の場合は、さらに各記録層の形成工程が加わる。
【0055】
以上のように成膜工程を経たら、その後ステップF106でレーベル面側の印刷を行い、光ディスクが完成される。
以上の工程で、光ディスクが形成される。特にステップF104以降は、大量生産工程となる。
本実施の形態の場合、ステップF100のプリマスタリング処理、及びステップF101の露光処理が、以下で説明する第1例又は第2例のようにされることで、上記のように製造された再生専用型の光ディスクには、図2(c)(d)(e)に示したように、グループデータGPDが記録されている状態となっている。
即ち上記の工程で製造された光ディスクは、ファイルシステムにより、再生専用のコンテンツデータと、特定のフォルダ内又はファイル内のデータ位置に配置される被差し替えデータとが管理されるデータ構造を有し、被差し替えデータが再生専用の差し替えデータ(グループデータGPD)に差し替えられて記録されている。
【0056】
<4.プリマスタリング及び露光処理の第1例>
図9,図10でプリマスタリング処理及び露光処理の第1例を説明する。
第1例の場合、図6のステップF100のプリマスタリング処理として図9の処理が行われる。この図9はプリマスタリング装置10の演算部32がプログラムに基づいて実行する処理となる。
【0057】
演算部32は、ステップF201としてカッティングマスタにおけるファイルシステムの解析を行う。即ちオーサリングを経て供給され、記憶部31に取り込んだカッティングマスタにおいて、ファイルシステムを確認し、データ構造、内容を把握する。
そして演算部32はステップF202でマスタリングデータMSDを生成する。この場合、カッティングマスタの所定のデータの暗号化処理や署名データの付加などの処理を行ってマスタリングデータMSDを生成する。マスタリングデータMSDは記憶部31に格納する。
【0058】
次に演算部32は、ステップF203で、先に解析したファイルシステムから差し替えエリアを確認する。図2(a)で述べたように、カッティングマスタは、ファイルシステムによって差し替えエリアが管理される状態に、オーサリング段階で形成されている。
演算部32は、差し替えエリアのデータ位置や差し替えデータサイズを確認することになる。
次に演算部32は、ステップF204でグループデータテーブルを生成して用意する。
グループデータテーブルは、各グループGP1,GP2・・・毎に、グループデータGPD1,GPD2・・・を設定したテーブルである。このようなグループデータテーブルを用意し、記憶部51に格納する。
具体的な各グループデータGPDの内容は、オペレータの入力に基づいて生成しても良いし、予め各種のグループデータ内容を記憶部51等に格納しておき、今回製造する光ディスクにおいて必要なグループに対応する各グループデータGPDを、オペレータの入力等に基づいて選択するものでもよい。
【0059】
以上の処理を終えたら、演算部32は、ステップF205で、記憶部51に格納されたマスタリングデータMSD、グループデータテーブルを、露光装置2に出力する。さらに演算部32は、ステップF203で確認した差し替えエリアの情報(マスタリングデータMSDのデータストリーム上での差し替えエリアの位置等)をエリア情報ARIFOとして露光装置20に供給する。
図5で説明したように、マスタリングデータMSD及びグループデータテーブルは、露光装置20において記憶部51(マスタリングデータ記憶部51b、グループデータテーブル記憶部51a)に格納される。またエリア情報ARIFOはコントローラ40に供給される。
【0060】
その後、露光装置20側で図6のステップF101の露光処理が行われる。図10に露光装置20で実行する露光処理を示している。この図10は露光装置20のコントローラ40がプログラムに基づいて実行する処理である。
まずステップF251でコントローラ40はグループ設定を行う。これは、これから実行するマスタリングで、どのグループのディスク原盤を作成するかを設定する処理である。実際には、オペレータの入力に応じてグループ選択を行えばよい。オペレータの入力は露光装置20において図5に示していないユーザインターフェース部から行う。或いはプリマスタリング装置10と露光装置20がシステム接続されていれば、プリマスタリング装置10のユーザインターフェース部34から露光装置20への指示入力を行うことを可能とすることもできる。
【0061】
コントローラ40は、このステップF251で特定のグループを選択設定し、グループデータテーブルのうちで、今回使用するグループデータを決定することとなる。例えば今回、グループGP1の光ディスクの製造のためのマスタリングを行うのであれば、グループGP1を選択し、グループデータテーブルにおいてグループGP1に対応づけられたグループデータGPD1を、使用するグループデータとする。
【0062】
続いてコントローラ40はステップF252で露光開始制御を行う。
コントローラ40は書込/読出制御部52にマスタリングデータMSDの読み出しを指示し、さらに変調部41、レーザ駆動パルス発生部42、レーザドライバ41、露光ヘッド46の動作を開始させる。またスピンドルサーボ/ドライバ47、スライドドライバ48に指示し、ディスク原盤の回転駆動を実行させる。
これにより、マスタリングデータMSDに基づいたディスク原盤100に対する露光が開始される。
【0063】
露光開始後は、コントローラ40はステップF253で、マスタリングデータMSDのデータ位置が差し替えエリアに達したか否かを監視している。例えば現在変調部43に転送しているマスタリングデータMSDのデータ位置(マスタリングデータMSDのデータストリーム上のアドレス)が、エリア情報ARIFOから把握される差し替えエリアのデータ位置に達したかを、書込/読出制御部52との通信により監視する。
【0064】
そして差し替えエリアに到達するタイミングで、コントローラ40はステップF253からF254に進み、書込/読出制御部52にグループデータの読み出しを指示する。即ちステップF251で決定した、例えばグループデータGPD1を記憶部51から読み出させ、変調部43に転送させる。
結果としてこのステップF254の時点から、グループデータGPDが変調され、変調信号に基づいたレーザ露光が行われることとなる。
【0065】
コントローラ40はステップF255でグループデータGPDの読み出し及び変調部43への転送の完了タイミングを監視している。そして読出完了のタイミングで、ステップF256に進み、マスタリングデータMSDによる露光を再開させる。即ち書込/読出制御部52に対して、マスタリングデータMSDの読み出し及び変調部43への転送を指示する。この場合、マスタリングデータMSDにおける被差し替えデータに続くデータからが、変調部43に転送されていくこととなる。
【0066】
即ちステップF253〜F256の処理は、マスタリングデータMSDのストリームデータを記憶部51から読み出して変調部43に転送させているときに、マスタリングデータMSDにおける被差し替えデータが転送されることとなる期間に、グループデータを読み出させて変調部43に転送させる。これにより、変調部43からみれば、被差し替えデータがグループデータGPDに差し替えられたマスタリングデータが供給されるものとなる。従って、一連のマスタリングデータストリームに基づく露光過程で、マスタリングデータMSD内の被差し替えデータ部分が、グループデータGPDに差し替えられた状態のピット列の露光が行われることとなる。
【0067】
コントローラ40はその後ステップF257でマスタリングデータMSDの露光完了を監視し、露光完了タイミングでステップF258で各部による露光動作を終了させる。
なお、この図10の例は、差し替えエリアがマスタリングデータMSDのストリーム上で連続した1つのデータ位置範囲の場合と仮定している。もし、差し替えエリアが、ストリーム上で離れた位置に複数存在する場合は、ステップF253〜F256の処理が複数開行われるようにすればよい。
【0068】
露光処理が以上のように実行され、その後、図6のステップF102,F103が行われる。ステップF102で作成されるディスク原盤、及びステップF103で作成されるスタンパは、マスタリングデータMSDにおける被差し替えデータが、例えばグループデータGPD1に差し替えられた状態のピット列が形成されていることとなる。
その後、図6のステップF104〜F106で光ディスクが製造されるが、当然その光ディスクは、グループデータGPD1が記録された図2(c)のようなデータ構造の光ディスクとなる。即ちファイルシステムにより、再生専用のコンテンツデータと、グループデータGPD1が管理される光ディスクである。
【0069】
以上の第1例の製造方法によれば、同一コンテンツを収録した再生専用ディスクについて、グループ毎に固有のグループデータGPDを記録させたディスク原盤100を、プリマスタリングやオーサリングをやり直すことなく製造できる。
例えばグループGP1の光ディスクを生産する場合、上記図10のステップF251でグループデータGPD1を選択して1つのディスク原盤100を作成する。すると、そのディスク原盤100を元にして、グループGP1の光ディスクを大量生産できる。
またグループGP2の光ディスクを生産する場合、上記図10のステップF251でグループデータGPD2を選択して1つのディスク原盤100を作成する。すると、そのディスク原盤100を元にして、グループGP2の光ディスクを大量生産できる。
このように、各グループとしてのディスク製造工程は、グループ毎にマスタリング以降を行えばよい。従って、オーサリングによるマスターデータ生成や、プリマスタリング処理をやり直す必要はなく、多数のグループの光ディスクを製造する場合の製造効率は著しく向上する。
即ち、グループ毎に異なる情報を記録した同一タイトルの記録媒体の製造効率を大きく向上させることができる。
【0070】
またグループ毎に個別にマスタリングデータを作成する訳ではないため、マスタリングデータを格納するための記憶容量(例えばプリマスタリング装置10の記憶部31の記憶容量)の負担も少ない。特にBDの場合、マスタリングデータは大容量データであることから、グループ毎にマスタリングデータを格納しなくてもよいことは有用である。
【0071】
また製造されるディスクは、BCA等の特殊な態様ではなく、ファイルシステムで管理される通常の再生専用データでグループデータGPDが記録されている。従って再生互換性、汎用性のあるグループ固有情報を持った再生専用ディスクを提供できる。
【0072】
<5.プリマスタリング及び露光処理の第2例>
図11,図12でプリマスタリング処理及び露光処理の第2例を説明する。
第2例の場合、図6のステップF100のプリマスタリング処理として図11の処理が行われる。この図11はプリマスタリング装置10の演算部32がプログラムに基づいて実行する処理となる。
【0073】
演算部32は、ステップF301としてカッティングマスタにおけるファイルシステムの解析を行う。即ちオーサリングを経て供給され、記憶部31に取り込んだカッティングマスタにおいて、ファイルシステムを確認し、データ構造、内容を把握する。
そして演算部32はステップF302で、ファイルシステムから差し替えエリアを確認する。即ち差し替えエリアのデータ位置や差し替えデータサイズを確認する。
【0074】
次に演算部32は、ステップF303で各グループに対応するグループデータを生成して用意する。即ち各グループGP1,GP2・・・毎に、グループデータGPD1,GPD2・・・を設定し、記憶部51に格納する。
【0075】
以降、各グループ毎のマスタリングデータMSDを生成していく。
まずステップF304で演算部32は変数n=1とし、ステップF305でグループGP(n)用のマスタリングデータMSDを生成する。従ってまずグループGP1用のマスタリングデータMSD1を生成することとなる。このマスタリングデータMSD1は、カッティングマスタの所定のデータの暗号化処理や署名データの付加などの処理を行うとともに、ファイルシステムで管理されている差し替えエリアのデータをグループデータGPD1に置き換えたものとされる。
グループGP1用のマスタリングデータMSD1を生成したら、演算部32はステップF306で、そのマスタリングデータMSD1を記憶部31に格納する。
【0076】
ステップF307でn≧グループ数でない場合、つまりまだ全てのグループに対応したマスタリングデータMSDを生成していない段階では、ステップF308で変数nをインクリメントしながらステップF305,F306の処理を繰り返す。
従って、以上の処理で引き続きグループGP2,GP3・・・用のマスタリングデータMSD2,MSD3・・・が生成され、記憶部31に格納されていくこととなる。
ステップF307でn≧グループ数となったら、全てのグループに対応するマスタリングデータMSD1〜MSD(n)が生成されたとしてプリマスタリング処理を終了する。
【0077】
プリマスタリング装置10では、以上のようにプリマスタリング処理が行われる。即ちグループ毎に、それぞれ異なるグループデータGPDが配置されたマスタリングデータMSDが生成される。
【0078】
その後、露光装置20側で図6のステップF101の露光処理が行われる。図12に露光装置20で実行する露光処理を示している。この図12は露光装置20のコントローラ40がプログラムに基づいて実行する処理である。
まずステップF351でコントローラ40はグループ設定を行う。即ち、これから実行するマスタリングで、どのグループのディスク原盤か作成するかを設定する。
【0079】
コントローラ40は、このステップF351では、特定のグループを選択設定したら、プリマスタリング装置10に対して、当該選択したグループに応じたマスタリングデータMSDを要求する。プリマスタリング装置10は、要求に応じたマスタリングデータMSDを露光装置20に送信する。
露光装置20はステップF352で、送信されてきたマスタリングデータMSDを記憶部51マスタリングデータ記憶部51bに記憶する。
例えばグループGP1用のディスク原盤100を作成する場合、コントローラ40はプリマスタリング装置10にグループGP1についてのマスタリングデータMSD1を要求する。そしてそれに応じて転送されてきたマスタリングデータMSD1を記憶部51に格納することとなる。
なお、この第2例としての処理の場合、プリマスタリング装置10から露光装置20に対してグループデータGPDや差し替えエリアのエリア情報ARIFO等の供給は不要である。露光装置20に供給されるマスタリングデータMSDは、既に被差し替えデータ(例えばダミーデータ)がグループデータGPDに差し替えられたものだからである。
【0080】
マスタリングデータMSDを受け取ったら、コントローラ40はステップF353で露光開始制御を行う。
コントローラ40は書込/読出制御部52にマスタリングデータMSDの読み出しを指示し、さらに変調部41、レーザ駆動パルス発生部42、レーザドライバ41、露光ヘッド46の動作を開始させる。またスピンドルサーボ/ドライバ47、スライドドライバ48に指示し、ディスク原盤の回転駆動を実行させる。
これにより、マスタリングデータMSDに基づいたディスク原盤100に対する露光が開始される。
【0081】
露光開始後は、コントローラ40はステップF354で、マスタリングデータMSDに基づく露光完了を監視し、露光完了タイミングでステップF355で各部による露光動作を終了させる。
【0082】
露光処理が以上のように実行され、その後、図6のステップF102,F103が行われる。ステップF102で作成されるディスク原盤、及びステップF103で作成されるスタンパは、カッティングマスタに加えられていた被差し替えデータが、グループデータGPDに差し替えられた状態のピット列が形成されていることとなる。
その後、図6のステップF104〜F106で光ディスクが製造されるが、当然その光ディスクは、グループデータGPDが記録された、例えば図2(c)のようなデータ構造の光ディスクとなる。即ちファイルシステムにより、再生専用のコンテンツデータと、グループデータGPDが管理される光ディスクである。
【0083】
以上の第2例の製造方法によっても、上述の第1例と同じく、同一コンテンツを収録した再生専用ディスクについて、グループ毎に固有のグループデータGPDを記録させたディスク原盤100を、プリマスタリングやオーサリングをやり直すことなく製造できる。
各グループとしてのディスク製造工程は、グループ毎にマスタリング以降を行えばよいため、オーサリングによるマスターデータ生成や、プリマスタリング処理をやり直す必要はなく、多数のグループの光ディスクを製造する場合の製造効率は著しく向上する。
即ち、グループ毎に異なる情報を記録した同一タイトルの記録媒体の製造効率を大きく向上させることができる。
【0084】
なお第2例の場合は、プリマスタリング処理で、グループ毎に個別にマスタリングデータを作成するため、例えばプリマスタリング装置10の記憶部31に比較的大きな容量が必要になるということはある。
但し、その一方で、露光装置20側では、通常に受け取ったマスタリングデータMSDに基づく露光を行えば良いため、露光装置20側の処理負担は発生しない。換言すれば従前の露光装置をそのまま用いて露光工程を実行できるという設備負担上の利点が生ずる。
【0085】
またこの第2例を採用する場合も、製造されるディスクは、BCA等の特殊な態様ではなく、ファイルシステムで管理される通常の再生専用データでグループデータGPDが記録されている。従って再生互換性、汎用性のあるグループ固有情報を持った再生専用ディスクを提供できる。
【0086】
なお、変形例として、プリマスタリング装置10で作成した複数のグループに対応した複数のマスタリングデータMSDを、露光装置20側に全て予め転送しておくようにしても良い。そして露光装置20側で、原盤作成時に1つのマスタリングデータMSDを選択して露光を行うといった手法も考えられる。
【0087】
<6.差し替えデータを記録するフォルダ・ファイル>
ここで、図2で説明した差し替えエリアの具体例を例示しておく。
カッティングマスタからマスタリングデータMSD、さらには最終的に生産される光ディスクに引き継がれるデータ構造の例を図13に示す。図13はBD方式に準拠したディレクトリ構造である。
【0088】
ルート(root)下に、BDMVフォルダ、CERTIFICATEフォルダが配置される。さらにGPINFOフォルダ90が配置される。
BDMVフォルダは、ブルーレイディスクにおけるコンテンツやその管理情報、付加情報を配置するフォルダである。図示のように、BDMVフォルダ内には、“index.bdmv”、“MovieObject.bdmv”、“PLAYLIST”、“CLIPINF”、“STREAM”、“AUXDATA”、“META”、“BDJO”、“JAR”、“BACKUP”という各フォルダ又はファイルが配置される。
例えば“PLAYLIST”内には“00000.mpls”“00001.mpls”“00002.mpls”等のプレイリストファイルが配置される。これは、コンテンツデータの再生を指定するための情報が記録されたファイルである。
“CLIPINF”内には“01000.clpi”“02000.clpi”“03000.clpi”等のクリップ情報ファイルが配置される。これは、ストリームファイルを管理するための管理情報が記録されたファイルである。
“STREAM”内には“01000.m2ts”“02000.m2ts”“03000.m2ts”等のストリームファイルが配置される。これは、ストリームデータが記録されたファイルである。
【0089】
このようなデータ構造において、例えばルート直下のGPINFOフォルダ90を、図2(a)でいう差し替えエリアとする。
即ち、オーサリングで作成するカッティングマスタの段階では、このGPINFOフォルダ90内に、GPINFOファイル91を設け、例えばダミーデータを配置しておく。
【0090】
上記第1例、第2例として示した露光の際には、このGPINFOファイル91のデータがグループデータGPDに置き換えられたものとされる。
そして最終生産品である光ディスクは、この図13のディレクトリ構造をファイルシステムにおいて管理している。従ってファイルシステムに基づいてGPINFOフォルダ90内のGPINFOファイル91として、グループデータGPDが読み出されることとなる。
【0091】
次に図14は、ファイルの一部が差し替えエリアとされる例を示している。
この図14は、例えば上記図13のディレクトリ構造でBDMVフォルダ内に配置される“index.bdmv”ファイルの構造例を示している。
この“index.bdmv”ファイルは、タイプインジケータ、バージョンナンバ、インデックス情報等が記述される。
ここで、例えば128ビット(16バイト)の領域として“GPinfo”領域91を設定する。この16バイトの“GPinfo”領域91を図2(a)でいう差し替えエリアとする。
即ち、オーサリングで作成するカッティングマスタの段階では、この“index.bdmv”ファイル内の“GPinfo”領域91に、差し替えデータとして例えばダミーデータを配置しておく。そして上記第1例、第2例として示した露光の際には、この“GPinfo”領域91内のデータがグループデータGPDに置き換えられたものとされる。
最終生産品である光ディスクは、図13のディレクトリ構造をファイルシステムにおいて管理しているため、ファイルシステムに基づいて“index.bdmv”ファイルを読み出せば、“GPinfo”領域91に記録されたグループデータGPDが読み出されることとなる。
【0092】
なお、以上の各例はあくまでも一例に過ぎない。ブルーレイディスクのディレクトリ構造に準拠した場合でも、上記例以外のフォルダ又はファイル内に、差し替えエリアを用意し、グループデータGPDを配置することは当然想定される。
また、本発明はBD方式の光ディスク以外にも、DVD−ROM、CD−ROM等、ファイルシステムを持つ光ディスクに適用できる。従ってDVD方式でのディレクトリ構造におけるファイルやフォルダ内に差し替えエリアを設定することも当然考えられる。
また、本発明は光ディスクだけでなく、光カードなど他の種の記録媒体であってファイルシステムを持つデータ構造が採用された記録媒体にも適用できる。
【0093】
<7.プログラム>
実施の形態のプログラムは、プリマスタリング装置10や露光装置20の処理を実行させるプログラムである。
【0094】
即ち実施の形態のプログラムの1つは、上記第1例としての図9で示した処理をプリマスタリング装置10の演算部32に実行させるプログラムである。
該プログラムは、ディスク原盤100の製造に用いるマスターデータとして、コンテンツデータと被差し替えデータとがファイルシステムによって管理されたデータ構造のマスターデータ(カッティングマスタ)について、ファイルシステムから被差し替えデータを確認するステップと、被差し替えデータに代える差し替えデータを用意するステップを情報処理装置(演算部32)に実行させる。
【0095】
また、実施の形態のプログラムとして、上記第1例の図10で示した処理を露光装置20のコントローラ40に実行させるプログラムがある。
該プログラムは、被差し替えデータが含まれるマスターデータ(マスタリングデータMSD)と、差し替えデータ(グループデータGPD)とが供給されて、ディスク原盤100の露光を行う露光装置20の制御部(コントローラ40)の処理を実行させるプログラムである。そしてマスターデータを変調処理して得られる変調信号に基づいたレーザ光照射で露光を行うとともに、その変調処理に供するマスターデータにおける被差し替えデータを差し替えデータに差し替える処理を実行させる制御を、制御部に実行させる。
【0096】
また、実施の形態のプログラムとして、上記第2例の図11で示した処理をプリマスタリング装置10の演算部32に実行させるプログラムがある。
該プログラムは、ディスク原盤100の製造に用いるマスターデータとして、コンテンツデータと被差し替えデータとがファイルシステムによって管理されたデータ構造のマスターデータ(カッティングマスタ)について、ファイルシステムから被差し替えデータを確認するステップと、被差し替えデータに代える差し替えデータ(グループデータGPD)を用意するステップを情報処理装置(演算部32)に実行させる。さらに、被差し替えデータを差し替えデータに差し替えたマスターデータ(マスタリングデータMSD)を生成するステップを情報処理装置(演算部32)に実行させる。
【0097】
このようなプログラムにより、例えばパーソナルコンピュータを用いたプリマスタリング装置10の実現が可能となる。また露光装置20のコントローラ40の実現が容易となる。
【0098】
このようなプログラムは、パーソナルコンピュータ等の機器に内蔵されている記録媒体としてのHDDや、CPUを有するマイクロコンピュータ内のROMやフラッシュメモリ等に予め記録しておくことができる。
あるいはまた、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、MO(Magnet optical)ディスク、DVD、ブルーレイディスク、磁気ディスク、半導体メモリ、メモリカードなどのリムーバブル記録媒体に、一時的あるいは永続的に格納(記録)しておくことができる。このようなリムーバブル記録媒体は、いわゆるパッケージソフトウェアとして提供することができる。
また、プログラムは、リムーバブル記録媒体からパーソナルコンピュータ等にインストールする他、ダウンロードサイトから、LAN(Local Area Network)、インターネットなどのネットワークを介してダウンロードすることもできる。
【符号の説明】
【0099】
1 ディスク基板、2 センターホール、3 ピットパターン、4 反射膜、5 カバー層、10 プリマスタリング装置、20 露光装置、31 記憶部、32 演算部、40 コントローラ、43 変調部、46 露光ヘッド、51 記憶部、52 書込/読出制御部、100 ディスク原盤、101 スタンパ
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク等の製造に適用できる原盤製造方法、記録媒体製造方法、プログラム、及び光ディスク等の記録媒体に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開平2−56750号公報
【特許文献2】特開平10−289486号公報
【背景技術】
【0003】
光ディスクとしてBD(ブルーレイディスク:Blu-ray Disc(登録商標))、DVD(Digital Versatile Disc)、CD(Compact Disc)等が知られている。
これらのBD、DVD、CDの各範疇では、再生専用型の光ディスクとして、BD−ROM(Blu-ray Disc- Read Only Memory)、DVD−ROM(Digital Versatile Disc - Read Only Memory)、CD−ROM(Compact Disc - Read Only Memory)がある。
【0004】
これら再生専用ディスクは、例えばエンボスピット等の物理的に書き換えのできないデータとして、音楽や映像のコンテンツデータが記録される。再生専用ディスクの製造は、まずオーサリングとしてコンテンツデータを含むマスターデータが用意される。そして実際の工場でのマスタリング工程において、コンテンツデータや管理情報を含むマスターデータに基づいた凹凸ピット列が形成されたディスク原盤を作成し、さらにディスク原盤やスタンパを作成する。そしてスタンパを用いて光ディスクを大量生産する。
このように再生専用ディスクは、同一タイトル(同一のコンテンツのディスク)として、全て同じデータが記録されたものが大量生産される。
【0005】
一方、上記特許文献1,2に示されるように、同じデータが記録された状態で大量生産される再生専用ディスクにおいて、ディスク毎にユニークな情報を付与する手法が既に知られている。
代表的なものとしてBCA(Burst Cutting Area)を用いる手法がある。
例えばBDやDVD等の光ディスクでは、ディスク内周側の所定領域に、バーコード状の記録領域としてBCAを設けている。
このBCAは、反射率の異なる領域として放射状のパターンが形成されることで、トラッキングフリーで情報を読み出せる領域とされる。そして特に、大量生産される光ディスクに、ディスク固有の情報、例えばシリアルナンバ等の情報を付加できる領域として用いられている。
即ちBCAは、光ディスクがその製造工程により完成した後、信号領域のさらなる内周(例えば半径21〜22mmの領域)に、ディスク一枚ごとにシリアルナンバーやディスクインフォメーションなどを、BCA記録装置によってオフラインで書き込み、一枚ごとの管理ができるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、再生専用ディスクについて、製造されるグループ単位で固有の情報を付与したいという要望がある。
ここで「グループ」というのは、或る程度まとまった数のディスク群のことをいう。例えば販売仕向地別のグループ、販売者(ディスク製造工場からみれば出荷先)毎のグループ、製造ライン毎のグループ、用途別(レンタル用・販売用等)のグループなどである。
【0007】
しかし、このようなグループ毎に固有の情報を付加した光ディスクを製造しようとする場合、マスタリング毎に異なる情報を記録する必要がある。通常、グループ毎のディスク製造として、マスタリング毎に異なる情報を記録する方法としては、差し替えるデータの大小に関わらずオーサリングからやり直しマスターデータを作成しなおす方法が一般的である。
すると結局、同じタイトルのディスクでありながら、グループ毎のディスクを製造することは、異なるタイトルの光ディスクを製造するのと同等の手間がかかることとなり、製造効率は悪い。
【0008】
このようなことから、BCAを利用してグループ単位の情報を付加することも考えられる。しかしながらBCAは本来、ディスク固有の情報を付加するために用いられるものであるため、グループ単位の情報の記録のための利用には適さない場合がある。
また、BCAには対応できない再生装置の存在もある。
【0009】
そこで本発明では、BCA等、特殊なエリアを用いず、再生専用型の記録媒体の通常の再生専用データとして、グループ単位の情報付加を効率よく実行できる製造方法、プログラム、及び好適な記録媒体を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の原盤製造方法は、コンテンツデータと被差し替えデータとがファイルシステムによって管理されたデータ構造のマスターデータについて、上記ファイルシステムから被差し替えデータを確認し、また差し替えデータを用意する前処理工程と、上記被差し替えデータが上記差し替えデータに差し替えられたマスターデータに基づいて記録媒体原盤の露光を行う露光工程と、上記露光が行われた記録媒体原盤に対して現像を行い露光に応じた凹凸パターンが形成された記録媒体原盤を形成する現像工程とを備える。
この原盤製造方法では、オーサリング段階で作成されたマスターデータの段階において、ファイルシステムによってコンテンツデータと被差し替えデータとが管理されるデータ構造とされていることで、原盤露光の段階でその被差し替えデータを差し替えデータに差し替えることが可能となる。つまりオーサリングのやり直しをせずに、一部のデータが異なる再生専用の記録媒体のための原盤を製造できる。
【0011】
本発明の記録媒体製造方法は、コンテンツデータと被差し替えデータとがファイルシステムによって管理されたデータ構造のマスターデータについて、上記ファイルシステムから被差し替えデータを確認し、また製造される記録媒体のグループ単位で異なる複数の差し替えデータを用意する前処理工程と、上記被差し替えデータが、製造する記録媒体のグループに応じて選択された差し替えデータに差し替えられたマスターデータに基づいて記録媒体原盤の露光を行う露光工程と、上記露光が行われた記録媒体原盤に対して現像を行い露光に応じた凹凸パターンが形成された記録媒体原盤を形成する現像工程と、上記現像工程で形成された記録媒体原盤を用いてスタンパを作成するスタンパ作成工程と、上記スタンパを用いて記録媒体基板を作成し、該記録媒体基板上に記録層を含む層構造を形成することで記録媒体を作成する媒体作成工程とを備える。
この記録媒体製造方法では、オーサリング段階で作成されたマスターデータでは、ファイルシステムによってコンテンツデータと被差し替えデータとが管理されるデータ構造とされている。そこでグループ毎の差し替えデータを用意し、各グループの記録媒体についての原盤露光の段階で、そのマスターデータの被差し替えデータを、該当するグループの差し替えデータに差し替えることができる。つまり各グループの記録媒体の製造毎にオーサリング段階からやり直さなくともよい。
【0012】
本発明のプログラムは、記録媒体原盤の製造に用いるマスターデータとして、コンテンツデータと被差し替えデータとがファイルシステムによって管理されたデータ構造のマスターデータについて、上記ファイルシステムから被差し替えデータを確認するステップと、上記被差し替えデータに代える差し替えデータを用意するステップとを情報処理装置に実行させる。
このプログラムにより、露光工程前の前処理工程(プリマスタリング)においてグループ単位のデータなどである、差し替えデータへの差し替えの用意が可能となる。
【0013】
本発明のプログラムは、被差し替えデータが含まれるマスターデータと、差し替えデータとが供給されて、記録媒体原盤の露光を行う露光装置の制御部の処理を実行させるプログラムとして、マスターデータを変調処理して得られる変調信号に基づいたレーザ光照射で露光を行うとともに、上記変調処理に供するマスターデータにおける上記被差し替えデータを上記差し替えデータに差し替える処理を実行させる制御を、上記制御部に実行させる。
このプログラムにより露光装置での露光段階で、被差し替えデータを差し替えデータに差し替えることが可能となる。
【0014】
本発明の記録媒体は、ファイルシステムにより管理されたデータ構造を有する記録媒体である。そしてコンテンツデータと、特定のフォルダ内又はファイル内のデータ位置に配置された差し替えデータとが記録され、上記差し替えデータは、上記データ構造における、当該記録媒体の製造時において被差し替え用データが配置された上記データ位置に記録される。
この記録媒体では、例えばグループ単位の固有情報が、差し替えデータとして付加されたものであり、大量生産品として同一のタイトルの記録媒体であっても、グループ毎の情報が通常のデータで付加されているものとできる。つまりグループ毎の情報が、コンテンツデータと同様に、ファイルシステムに基づいて読み出せるデータとして記録されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の原盤製造方法、記録媒体製造方法によれば、同一コンテンツを収録した再生専用記録媒体について、グループ単位の固有のデータ等を、差し替えデータとして記録させた記録媒体原盤を、オーサリングからやり直すことなく製造できる。つまりマスタリング毎に違う記録内容の原盤を容易に作成することが可能である。
これによって、グループ毎に異なる情報を記録した同一タイトルの記録媒体の製造効率を大きく向上させることができる。
本発明のプログラムによれば、マスターデータにおける被差し替えデータを差し替えデータに差し替える処理を行うプリマスタリング装置や露光装置を実現できる。
また本発明の記録媒体によれば、BCA等の特殊な態様ではなく、ファイルシステムで管理される通常の再生専用データでグループ固有情報を記録できる。従って再生互換性、汎用性のあるグループ固有情報を持った再生専用の記録媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態のディスク製造の流れの説明図である。
【図2】実施の形態のデータ差し替えの説明図である。
【図3】実施の形態のプリマスタリング装置と露光装置のブロック図である。
【図4】実施の形態のプリマスタリング装置のブロック図である。
【図5】実施の形態の露光装置のブロック図である。
【図6】実施の形態のディスク製造工程のフローチャートである。
【図7】実施の形態のディスク製造工程の説明図である。
【図8】実施の形態のディスク製造工程の説明図である。
【図9】実施の形態のプリマスタリング処理の第1例のフローチャートである。
【図10】実施の形態の露光処理の第1例のフローチャートである。
【図11】実施の形態のプリマスタリング処理の第2例のフローチャートである。
【図12】実施の形態の露光処理の第2例のフローチャートである。
【図13】実施の形態の差し替えデータを記録するフォルダ例の説明図である。
【図14】実施の形態の差し替えデータを記録するファイル例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を次の順序で説明する。
<1.製造工程及びデータ差し替えの概要>
<2.プリマスタリング装置及び露光装置>
<3.ディスク製造工程>
<4.プリマスタリング及び露光処理の第1例>
<5.プリマスタリング及び露光処理の第2例>
<6.差し替えデータを記録するフォルダ・ファイル>
<7.プログラム>
【0018】
<1.製造工程及びデータ差し替えの概要>
実施の形態では、記録媒体として再生専用型の光ディスク、特にはBD−ROM(ブルーレイディスク−ROM)を例に挙げて説明する。
BD(ブルーレイディスク)について簡単に説明しておく。
BDは、ディスクサイズとしては、直径が120mm、ディスク厚は1.2mmとなる。即ちこれらの点では外形的に見ればCD方式のディスクや、DVD方式のディスクと同様となる。
そして記録/再生のためのレーザとして、いわゆる青色レーザ(例えば波長λ=405nm)が用いられ、また光学系が高NA(例えばNA=0.85)とされる。さらには狭トラックピッチ(例えばトラックピッチ=0.32μm)、高線密度(例えば記録線密度0.112μm/bit)を実現する。これらにより、直径12cmのディスクにおいて、ユーザーデータ容量として1層で25GB(Giga Byte)程度を実現している。
また更なる高密度記録により、27GB程度の容量も可能とされる。
また、記録層が複数層とされたいわゆるマルチレイヤーディスクも開発されており、マルチレイヤーディスクの場合、ユーザーデータ容量は、ほぼ層数倍となる。
【0019】
まず、このようなBDの一種である、BD−ROMの製造において、記録するコンテンツを作成するオーサリングシステムを用いた、光ディスクの製造までの流れを図1で簡単に説明する。
【0020】
まず素材製作として、映像素材の撮影、音声素材の録音、編集等が行われる(S1)。
この撮影・編集等で得られたデータは、制作するコンテンツの素材データ(映像素材、音声素材、字幕データ等)として格納される(S2)。
【0021】
各種素材データは、オーサリングスタジオに持ち込まれ、ディスクデータ(コンテンツ)制作に供される。
オーサリングスタジオでは、オーサリング処理のためのプログラムをインストールしたパーソナルコンピュータや所要のハードウエアを用いて、各種素材データを利用したコンテンツ制作を行う。
映像素材、音声素材はビデオエンコード、オーディオエンコードの各処理により、それぞれ所定の形式に圧縮符号化される。また字幕データ等から、メニューデータ、字幕データ等が作成される(S3)。次にコンテンツの構成としてのシナリオやメニュー作成が行われる(S4)。また各種データ編集が行われる(S5)。
【0022】
その後、コンテンツ/ファイルシステム生成(S6)として、コンテンツを構成するストリームデータを形成し、またコンテンツデータを管理するファイルシステムを生成する。
コンテンツデータの生成としては、符号化された映像データや音声データ、メニュ−などを多重化する。この場合、例えばハードディスク内等に格納された画像、音声、字幕などの符号化された素材データをインターリーブし、各種フォーマットファイルと合わせて多重化されたデータを作成する多重化処理が行われる。最終的に作成された多重化データがコンテンツデータとなる。
このようにコンテンツデータを生成するとともに、コンテンツデータ及びその他の各種データを管理するファイルシステムを形成して、ディスクに記録するデータ群を用意する。
最終的にファイルシステムで管理されるコンテンツデータ等を備えたデータ構造のマスターデータ(ディスク製造用のカッティングマスタ)が形成される(S7)。
カッティングマスタは、例えばパーソナルコンピュータ内のハードディスク等に格納される。
そのカッティングマスタは、ディスク製造のために工場に送られることになる。
【0023】
ディスク製造工場では、プリマスタリング(S8)として、データの暗号化や署名データの付加を行った状態のマスターデータ(露光用のマスタリングデータ)を生成する。
なお、以下では区別のため、プリマスタリングで処理する段階のマスターデータを「カッティングマスタ」、プリマスタリング処理されたマスターデータを「マスタリングデータ」と呼ぶ。
【0024】
プリマスタリング処理を終えたマスタリングデータは、マスタリング工程(S9)に供される。マスタリング工程では、露光、現像によりディスク原盤を製造し、またディスク原盤を用いてスタンパを作成する。
まず露光として、ディスク原盤に対して、マスタリングデータを変調した信号に基づいたレーザ照射を行う。そして現像処理で、露光部分と非露光部分が凹凸パターン(ピット列)とされたディスク原盤を完成させる。その後、ディスク原盤の凹凸パターンが転写されたスタンパを作成する。
【0025】
最後にリプリケーション(S10)として、スタンパを用いたディスク基板の制作や、ディスク基板上への所定の層構造形成を行い、完成品として光ディスク(BD−ROM)を得る。
【0026】
このようなディスク製造の流れにおいて、本実施の形態では、同一のコンテンツデータを記録した同一タイトルの光ディスクでありながら、グループ単位で異なる固有の情報を付加した光ディスクを製造する手法を提供する。
ここでいう「グループ」とは、或る程度まとまった数のディスク群であり、先に述べたように、例えば販売仕向地別のグループ、販売者毎のグループ、製造ライン毎のグループ、用途別のグループなどである。
例えば製造した光ディスクを、複数の販売者に納品する場合に、各販売者のそれぞれに納品する光ディスクは、同じコンテンツデータを収録した光ディスクでありながら、各販売者毎に固有の情報が付加されているものとなるようにする。
【0027】
図2で模式的に説明する。
図2(a)に示すように、カッティングマスタは共通コンテンツデータと、差し替えエリアがファイルシステムによって管理されているデータ構造を備える。
「共通コンテンツ」とは、グループの別に限らず同一の内容のコンテンツデータという意味である。
「差し替えエリア」とは、カッティングマスタ上で被差し替えデータが配されている部分を示している。必ずしも物理的に連続した領域でなくても良いが、あくまで被差し替えデータが記録されているとしてファイルシステムで管理されているデータ位置を示すものである。
上述のオーサリング工程で製作されるカッティングマスタは、このようなデータ構造のデータとされる。従来のカッティングマスタでは、差し替えエリアが存在しないが、本実施の形態の場合、差し替えエリアとして被差し替えデータが配置されたデータ位置が存在し、かつ、そのデータ位置が、ファイルシステムによって管理される。なお、被差し替えデータとは、具体的にはダミーデータなどであればよい。
【0028】
このようなカッティングマスタが供給されるプリマスタリング工程では、各グループ毎に固有のデータとして、図2(b)に示すグループデータGPD(GPD1,GPD2,GPD3・・・)を用意する。
グループデータGPDとしては、テキストデータ、グループID等のコードデータ、制御データ、画像データその他、グループデータを付加する目的に応じて各種のデータが考えられる。
【0029】
例えばグループGP1として、特定の販売者に提供する光ディスクの製造を行う場合、プリマスタリング段階、もしくは露光段階で、差し替えエリアに配置された被差し替えデータを、グループデータGPD1に置き換える。グループデータGPD1に置き換えられた状態のマスタリングデータに基づいてディスク原盤のマスタリング(露光、現像)を行い、さらに該ディスク原盤からスタンパを作成する。
そのスタンパを用いて大量生産された多数の光ディスクは、図2(c)のグループGP1の光ディスクとなる。これは、共通コンテンツとグループデータGPD1がファイルシステムによって管理されたデータ構造を有するものとなっている。つまり通常に再生装置に装填した際には、コンテンツデータとグループデータGPD1の双方が、ファイルシステムに基づいて読み出せる状態である。
【0030】
またグループGP2として、他の特定の販売者に提供する光ディスクの製造を行う場合、プリマスタリング段階、もしくは露光段階で、差し替えエリアに配置された被差し替えデータを、グループデータGPD2に置き換える。グループデータGPD2に置き換えられた状態のマスタリングデータに基づいてディスク原盤のマスタリング(露光、現像)を行い、さらに該ディスク原盤からスタンパを作成する。
そのスタンパを用いて大量生産された多数の光ディスクは、図2(d)のグループGP2の光ディスクとなる。つまり共通コンテンツとグループデータGPD2がファイルシステムによって管理されたデータ構造を有し、再生装置に装填した際には、コンテンツデータとグループデータGPD2の双方がファイルシステムに基づいて読み出せる。
【0031】
またグループGP3として、さらに他の特定の販売者に提供する光ディスクの製造を行う場合、プリマスタリング段階、もしくは露光段階で、差し替えエリアに配置された被差し替えデータを、グループデータGPD3に置き換える。そしてディスク原盤のマスタリング(露光、現像)を行い、さらに該ディスク原盤からスタンパを作成する。
そのスタンパを用いて大量生産された多数の光ディスクは、図2(e)のグループGP3の光ディスクとなる。つまり共通コンテンツとグループデータGPD3がファイルシステムによって管理されたデータ構造を有し、再生装置に装填した際には、コンテンツデータとグループデータGPD3の双方がファイルシステムに基づいて読み出せる。
【0032】
従来は、光ディスク製造において、その内容の一部をマスタリング毎に違う内容にするには、マスターデータの作成、つまりオーサリングからやり直す必要があった。
ここでファイルシステムを持つBDやDVD等の光ディスクでは、差し替えエリアを設定してファイルシステムの管理下に置く。すると、カッティング(露光)を行う都度その差し替えエリアのデータ内容を入れ替えることが可能となる。これにより、マスタリング毎に違う記録内容のディスク原盤、つまりグループ毎に異なるグループデータGPDを記録したディスク原盤を容易に作成できる。しかも、ファイルシステムで管理される通常のデータであるため、製造される光ディスクは、物理的・論理的にも通常の光ディスクと全く同じであるので、再生互換性等の心配がない。
グループデータGPDはファイルデータとすることで、光ディスクから容易に読み出すことが可能である。
【0033】
<2.プリマスタリング装置及び露光装置>
実施の形態の製造方法に用いられるプリマスタリング装置及び露光装置(カッティング装置)について説明する。
図3は、プリマスタリング装置10と露光装置20を示している。
プリマスタリング装置10には、オーサリングで作成されたカッティングマスタが供給される。
プリマスタリング装置10は、カッティングマスタに対して所定の暗号化処理や署名データ付加等を行って露光用のマスターデータ(マスタリングデータMSD)を生成し、露光装置20に供給する。また、グループデータGPD(GPD1,GPD2,GPD3・・・)を生成し、そのグループデータGPDや、差し替えエリアを示すエリア情報ARIFO等を露光装置20に供給する。
【0034】
なお、グループデータGPDやエリア情報ARIFO等を露光装置20に供給するのは、後述する第1例としてのプリマスタリング処理及び露光処理を採用する場合である。第1例は露光装置20側でデータ差し替えを行うためである。
第2例ではプリマスタリング装置10側でデータ差し替えを行う例であるため、既に差し替えがなされたマスタリングデータMSDを露光装置20に供給することになる。
【0035】
露光装置20では、マスタリングデータMSDに基づいてディスク原盤にレーザ照射を行い、マスタリングデータMSDに応じた露光パターンを形成する。その露光パターンが現像処理で凹凸パターンとされディスク原盤100が製造される
【0036】
図4にプリマスタリング装置10の構成例のブロック図を示す。
プリマスタリング装置10は、例えば専用のプリマスタリング処理演算を行う装置だけでなく、汎用のコンピュータ装置などでも実現可能である。
プリマスタリング装置10は、記憶部31、演算部32、データ入出力部33、ユーザインターフェース部34を備える。もちろんこれ以外の構成要素があってもよい。
【0037】
データ入出力部33は、他の装置との間のデータの送受信を行う。例えばオーサリングで作成されたカッティングマスタは、オーサリングシステムとの通信、或いはカッティングデータを記録した記録メディアの再生装置との通信等により、データ入出力部33から入力される。
またプリマスタリング装置で処理されたマスタリングデータMSDは、データ入出力部33から露光装置20に送信される。
【0038】
記憶部31は、固体メモリ、ハードディスク等で形成される記憶領域を有し、入力されたカッティングマスタの格納、プリマスタリング処理過程のデータ、マスタリングデータMSDの格納、グループデータGPDの格納などに用いられる。
演算部32は、カッティングマスタに対するプリマスタリング処理として、暗号化や署名データの設定等の処理を行う。さらに本例の場合、演算部32は、カッティングマスタのファイルシステムの解析、差し替えエリアの確認、グループデータGPDの設定などの処理も行う。
ユーザインターフェース部34は、プリマスタリング処理のオペレータとのインターフェースであり、キーボード、マウス等の入力装置やモニタディスプレイ等の出力装置を備える。
【0039】
このプリマスタリング装置10では、ユーザインターフェース部34からのオペレータの指示に基づいて、演算部32がプリマスタリング処理としての各種演算を実行する。そして生成したマスタリングデータMSDやグループデータGPD等を記憶部31に格納し、所定のタイミングで露光装置20に対して送信する。
【0040】
続いて図5で露光装置20の構成例を説明する。
露光装置20は、コントローラ40、レーザドライバ41、レーザ駆動パルス発生部42、変調部43、スピンドルモータ44、スライダ45、露光ヘッド46、スピンドルサーボ/ドライバ47、スライドドライバ48、センサ49、ターンテーブル50を備える。また露光装置20は、記憶部51、書込/読出制御部52を備える。
【0041】
記憶部51には、プリマスタリング装置10から供給されたマスタリングデータMSDを格納するマスタリングデータ記憶部51bが用意される。
また、後述する第1例としての処理を採用する場合は、記憶部51には、プリマスタリング装置10から供給されたグループデータGPDを格納するグループデータテーブル記憶部51aとしての領域も用意される。
また、後述する第1例としての処理を採用する場合は、プリマスタリング装置10からのエリア情報ARIFOはコントローラ40に供給される。コントローラ40は、エリア情報ARIFOを受け取ることにより、マスタリングデータとしてのデータストリーム内で、被差し替えデータが配置されている領域(データ位置)を把握することができる。
なお、後述する第2例としての処理を採用する場合は、記憶部51では、マスタリングデータ記憶部51bでマスタリングデータMSDを記憶すればよく、グループデータテーブル記憶部51aとしての領域は必要ない。但しその場合、マスタリングデータ記憶部51bでは、グループ毎に異なる複数のマスタリングデータを記憶する場合がある。
【0042】
書込/読出制御部52は、記憶部51へのデータの書き込み、及び読み出しを実行する。即ち書込/読出制御部52は、プリマスタリング装置10から供給されるマスタリングデータMSDやグループデータGPD等の記憶部51への書込を実行する。また書込/読出制御部52は、原盤露光の際には、コントローラ40の指示に応じて、記憶部51からマスタリングデータMSDやグループデータGPDの読み出しを行い、変調部43に供給する。
【0043】
露光ヘッド46内には、露光用のレーザ光源及び必要な光学系が搭載される。レーザ光源は、レーザドライバ41からの駆動信号に基づいて発光を行う。
【0044】
変調部43は、書込/読出制御部52によって記憶部51から読み出されたマスタリングデータMSDやグループデータGPDについて、所定の変調処理を施した変調信号を出力する。ピット列を露光するROMディスクのカッティングを行う場合は、レーザ光源のON/OFFの変調動作を行うための変調信号を生成することになる。
例えば変調部43は、光ディスクに記録するデータ、即ちコンテンツデータ、ファイルシステム自体のデータ、グループデータGPD等を含むデータストリームについてのRLL(1−7)変調信号を出力する。
その変調信号はレーザ駆動パルス発生部42でレーザ駆動パルスに変換される。
【0045】
レーザ駆動パルス発生部42は、レーザ駆動パルスをレーザドライバ41に供給する。
レーザドライバ41は、レーザ駆動パルスに基づいて、露光ヘッド46内の露光用のレーザ光源に駆動信号を供給する。
これにより露光用のレーザ光源からの記録レーザ光は、ピット列に応じた変調光となり、ディスク原盤100にはピット列に相当する露光パターンが形成されることになる。
【0046】
ディスク原盤100は、ターンテーブル50に載置され、スピンドルモータ44によって回転駆動される。
スピンドルモータ44は、スピンドルサーボ/ドライバ47によって回転速度が制御されながら回転駆動される。これによってディスク原盤100は例えば一定線速度又は一定角速度で回転される。
スライダ45は、スライドドライバ48によって駆動され、ディスク原盤100が積載されたターンテーブル50及びスピンドル機構を含む基台全体を移動させる。即ち、スピンドルモータ44で回転されている状態のディスク原盤100は、スライダ45で半径方向に移動されながら露光ヘッド46からのレーザ光によって露光されていくことで、露光されるピット列によるトラックがスパイラル状に形成されていくことになる。
スライダ45による移動位置、即ちディスク原盤100の露光位置(ディスク半径位置:スライダ半径位置)はセンサ49によって検出される。センサ49による位置検出情報はコントローラ40に供給される。
【0047】
コントローラ40は、この露光装置20の全体を制御する。即ち、書込/読出制御部52によるマスタリングデータMSDやグループデータGPD等の読み出し、レーザ駆動パルス発生部42でのパルス生成パラメータの制御、レーザドライバ41に対してのレーザパワー設定、スピンドルサーボ/ドライバ47によるスピンドル回転動作制御、スライドドライバ48によるスライダ45の移動動作の制御等を行う。
【0048】
<3.ディスク製造工程>
図1で説明したディスク製造工場で実行されるディスク製造工程、即ちプリマスタリング(S8)、マスタリング(S9)、リプリケーション(S10)を図6に詳しく示し、図7,図8を参照しながら説明していく。
【0049】
まず図6のステップF100として、プリマスタリングが行われる。上述のようにプリマスタリング装置10が、カッティングマスタに対してプリマスタリング処理を行う。詳しくはプリマスタリング処理の第1例、第2例として後述する。
【0050】
このステップF100のプリマスタリング処理後、マスタリングデータMSDが露光装置20に転送される。そしてステップF101〜F103としてマスタリング(S9)が行われる。まずステップF101で、露光装置20で原盤に対する露光が行われる。
例えば図7(a)に示すように、無機レジスト等のレジストが塗布されたディスク原盤100に対して、露光ヘッド46からマスタリングデータMSDに応じて変調されたレーザ光を照射し、ピットパターンに応じた露光を行う。これにより図7(b)に示すように、露光部分Rが形成される。
なお露光処理の詳細についても第1例、第2例として後述する。
【0051】
次にステップF102として原盤形成が行われる。
例えば図7(b)に示した露光されたディスク原盤100に対して現像を行い、図7(c)のように露光部分が凹状となったディスク原盤100を作製する。凹部が完成後の光ディスクにおけるピットに相当することとなる。
次にステップF103でスタンパを作成する。
例えばディスク原盤100を用いたニッケル電鋳処理により、ディスク原盤100の凹凸が転写されたスタンパ101を作製する(図7(d))。スタンパ101の凹凸パターンではピット相当部分が凸形状となっている。
【0052】
続いてステップF104,F105,F106でスタンパ101を用いたディスク製造(リプリケーションS10)が行われる。
まずステップF104でスタンパ101を用いたディスク基板製造を行う。
図8(a)のようにスタンパ101を基板成形用の金型に配置させる。この金型は、下キャビティ120と上キャビティ121から成り、下キャビティ120に、ピット列を転写するためのスタンパ101が配置される。
【0053】
このような金型を用いて例えばポリカーボネート樹脂の射出成形で基板1を成形するが、成形される基板1は図8(b)のようになる。
即ちポリカーボネート樹脂による基板1は、その中心はセンターホール2とされるとともに、情報読出面側は、金型内のスタンパ101に形成された凹凸パターン101aが転写されたピットパターン3となる。
【0054】
続いてステップF105で、このように形成された基板1に対して成膜が行われる。
まずスパッタにより、スタンパ101から転写されたピットパターン上に、反射膜4の成膜が行われる。即ち図8(c)に示すように、ピットパターン3が形成された信号読出面側に例えばAg合金の反射膜4を形成する。
さらに、例えば紫外線硬化型樹脂のスピンコートにより、図8(d)のようにカバー層5を形成する。
なお、カバー層5の表面にさらにハードコート処理を施す場合もある。
また、ここでは記録層が1つの1層ディスクの場合を示しているが、2層以上の多層の場合は、さらに各記録層の形成工程が加わる。
【0055】
以上のように成膜工程を経たら、その後ステップF106でレーベル面側の印刷を行い、光ディスクが完成される。
以上の工程で、光ディスクが形成される。特にステップF104以降は、大量生産工程となる。
本実施の形態の場合、ステップF100のプリマスタリング処理、及びステップF101の露光処理が、以下で説明する第1例又は第2例のようにされることで、上記のように製造された再生専用型の光ディスクには、図2(c)(d)(e)に示したように、グループデータGPDが記録されている状態となっている。
即ち上記の工程で製造された光ディスクは、ファイルシステムにより、再生専用のコンテンツデータと、特定のフォルダ内又はファイル内のデータ位置に配置される被差し替えデータとが管理されるデータ構造を有し、被差し替えデータが再生専用の差し替えデータ(グループデータGPD)に差し替えられて記録されている。
【0056】
<4.プリマスタリング及び露光処理の第1例>
図9,図10でプリマスタリング処理及び露光処理の第1例を説明する。
第1例の場合、図6のステップF100のプリマスタリング処理として図9の処理が行われる。この図9はプリマスタリング装置10の演算部32がプログラムに基づいて実行する処理となる。
【0057】
演算部32は、ステップF201としてカッティングマスタにおけるファイルシステムの解析を行う。即ちオーサリングを経て供給され、記憶部31に取り込んだカッティングマスタにおいて、ファイルシステムを確認し、データ構造、内容を把握する。
そして演算部32はステップF202でマスタリングデータMSDを生成する。この場合、カッティングマスタの所定のデータの暗号化処理や署名データの付加などの処理を行ってマスタリングデータMSDを生成する。マスタリングデータMSDは記憶部31に格納する。
【0058】
次に演算部32は、ステップF203で、先に解析したファイルシステムから差し替えエリアを確認する。図2(a)で述べたように、カッティングマスタは、ファイルシステムによって差し替えエリアが管理される状態に、オーサリング段階で形成されている。
演算部32は、差し替えエリアのデータ位置や差し替えデータサイズを確認することになる。
次に演算部32は、ステップF204でグループデータテーブルを生成して用意する。
グループデータテーブルは、各グループGP1,GP2・・・毎に、グループデータGPD1,GPD2・・・を設定したテーブルである。このようなグループデータテーブルを用意し、記憶部51に格納する。
具体的な各グループデータGPDの内容は、オペレータの入力に基づいて生成しても良いし、予め各種のグループデータ内容を記憶部51等に格納しておき、今回製造する光ディスクにおいて必要なグループに対応する各グループデータGPDを、オペレータの入力等に基づいて選択するものでもよい。
【0059】
以上の処理を終えたら、演算部32は、ステップF205で、記憶部51に格納されたマスタリングデータMSD、グループデータテーブルを、露光装置2に出力する。さらに演算部32は、ステップF203で確認した差し替えエリアの情報(マスタリングデータMSDのデータストリーム上での差し替えエリアの位置等)をエリア情報ARIFOとして露光装置20に供給する。
図5で説明したように、マスタリングデータMSD及びグループデータテーブルは、露光装置20において記憶部51(マスタリングデータ記憶部51b、グループデータテーブル記憶部51a)に格納される。またエリア情報ARIFOはコントローラ40に供給される。
【0060】
その後、露光装置20側で図6のステップF101の露光処理が行われる。図10に露光装置20で実行する露光処理を示している。この図10は露光装置20のコントローラ40がプログラムに基づいて実行する処理である。
まずステップF251でコントローラ40はグループ設定を行う。これは、これから実行するマスタリングで、どのグループのディスク原盤を作成するかを設定する処理である。実際には、オペレータの入力に応じてグループ選択を行えばよい。オペレータの入力は露光装置20において図5に示していないユーザインターフェース部から行う。或いはプリマスタリング装置10と露光装置20がシステム接続されていれば、プリマスタリング装置10のユーザインターフェース部34から露光装置20への指示入力を行うことを可能とすることもできる。
【0061】
コントローラ40は、このステップF251で特定のグループを選択設定し、グループデータテーブルのうちで、今回使用するグループデータを決定することとなる。例えば今回、グループGP1の光ディスクの製造のためのマスタリングを行うのであれば、グループGP1を選択し、グループデータテーブルにおいてグループGP1に対応づけられたグループデータGPD1を、使用するグループデータとする。
【0062】
続いてコントローラ40はステップF252で露光開始制御を行う。
コントローラ40は書込/読出制御部52にマスタリングデータMSDの読み出しを指示し、さらに変調部41、レーザ駆動パルス発生部42、レーザドライバ41、露光ヘッド46の動作を開始させる。またスピンドルサーボ/ドライバ47、スライドドライバ48に指示し、ディスク原盤の回転駆動を実行させる。
これにより、マスタリングデータMSDに基づいたディスク原盤100に対する露光が開始される。
【0063】
露光開始後は、コントローラ40はステップF253で、マスタリングデータMSDのデータ位置が差し替えエリアに達したか否かを監視している。例えば現在変調部43に転送しているマスタリングデータMSDのデータ位置(マスタリングデータMSDのデータストリーム上のアドレス)が、エリア情報ARIFOから把握される差し替えエリアのデータ位置に達したかを、書込/読出制御部52との通信により監視する。
【0064】
そして差し替えエリアに到達するタイミングで、コントローラ40はステップF253からF254に進み、書込/読出制御部52にグループデータの読み出しを指示する。即ちステップF251で決定した、例えばグループデータGPD1を記憶部51から読み出させ、変調部43に転送させる。
結果としてこのステップF254の時点から、グループデータGPDが変調され、変調信号に基づいたレーザ露光が行われることとなる。
【0065】
コントローラ40はステップF255でグループデータGPDの読み出し及び変調部43への転送の完了タイミングを監視している。そして読出完了のタイミングで、ステップF256に進み、マスタリングデータMSDによる露光を再開させる。即ち書込/読出制御部52に対して、マスタリングデータMSDの読み出し及び変調部43への転送を指示する。この場合、マスタリングデータMSDにおける被差し替えデータに続くデータからが、変調部43に転送されていくこととなる。
【0066】
即ちステップF253〜F256の処理は、マスタリングデータMSDのストリームデータを記憶部51から読み出して変調部43に転送させているときに、マスタリングデータMSDにおける被差し替えデータが転送されることとなる期間に、グループデータを読み出させて変調部43に転送させる。これにより、変調部43からみれば、被差し替えデータがグループデータGPDに差し替えられたマスタリングデータが供給されるものとなる。従って、一連のマスタリングデータストリームに基づく露光過程で、マスタリングデータMSD内の被差し替えデータ部分が、グループデータGPDに差し替えられた状態のピット列の露光が行われることとなる。
【0067】
コントローラ40はその後ステップF257でマスタリングデータMSDの露光完了を監視し、露光完了タイミングでステップF258で各部による露光動作を終了させる。
なお、この図10の例は、差し替えエリアがマスタリングデータMSDのストリーム上で連続した1つのデータ位置範囲の場合と仮定している。もし、差し替えエリアが、ストリーム上で離れた位置に複数存在する場合は、ステップF253〜F256の処理が複数開行われるようにすればよい。
【0068】
露光処理が以上のように実行され、その後、図6のステップF102,F103が行われる。ステップF102で作成されるディスク原盤、及びステップF103で作成されるスタンパは、マスタリングデータMSDにおける被差し替えデータが、例えばグループデータGPD1に差し替えられた状態のピット列が形成されていることとなる。
その後、図6のステップF104〜F106で光ディスクが製造されるが、当然その光ディスクは、グループデータGPD1が記録された図2(c)のようなデータ構造の光ディスクとなる。即ちファイルシステムにより、再生専用のコンテンツデータと、グループデータGPD1が管理される光ディスクである。
【0069】
以上の第1例の製造方法によれば、同一コンテンツを収録した再生専用ディスクについて、グループ毎に固有のグループデータGPDを記録させたディスク原盤100を、プリマスタリングやオーサリングをやり直すことなく製造できる。
例えばグループGP1の光ディスクを生産する場合、上記図10のステップF251でグループデータGPD1を選択して1つのディスク原盤100を作成する。すると、そのディスク原盤100を元にして、グループGP1の光ディスクを大量生産できる。
またグループGP2の光ディスクを生産する場合、上記図10のステップF251でグループデータGPD2を選択して1つのディスク原盤100を作成する。すると、そのディスク原盤100を元にして、グループGP2の光ディスクを大量生産できる。
このように、各グループとしてのディスク製造工程は、グループ毎にマスタリング以降を行えばよい。従って、オーサリングによるマスターデータ生成や、プリマスタリング処理をやり直す必要はなく、多数のグループの光ディスクを製造する場合の製造効率は著しく向上する。
即ち、グループ毎に異なる情報を記録した同一タイトルの記録媒体の製造効率を大きく向上させることができる。
【0070】
またグループ毎に個別にマスタリングデータを作成する訳ではないため、マスタリングデータを格納するための記憶容量(例えばプリマスタリング装置10の記憶部31の記憶容量)の負担も少ない。特にBDの場合、マスタリングデータは大容量データであることから、グループ毎にマスタリングデータを格納しなくてもよいことは有用である。
【0071】
また製造されるディスクは、BCA等の特殊な態様ではなく、ファイルシステムで管理される通常の再生専用データでグループデータGPDが記録されている。従って再生互換性、汎用性のあるグループ固有情報を持った再生専用ディスクを提供できる。
【0072】
<5.プリマスタリング及び露光処理の第2例>
図11,図12でプリマスタリング処理及び露光処理の第2例を説明する。
第2例の場合、図6のステップF100のプリマスタリング処理として図11の処理が行われる。この図11はプリマスタリング装置10の演算部32がプログラムに基づいて実行する処理となる。
【0073】
演算部32は、ステップF301としてカッティングマスタにおけるファイルシステムの解析を行う。即ちオーサリングを経て供給され、記憶部31に取り込んだカッティングマスタにおいて、ファイルシステムを確認し、データ構造、内容を把握する。
そして演算部32はステップF302で、ファイルシステムから差し替えエリアを確認する。即ち差し替えエリアのデータ位置や差し替えデータサイズを確認する。
【0074】
次に演算部32は、ステップF303で各グループに対応するグループデータを生成して用意する。即ち各グループGP1,GP2・・・毎に、グループデータGPD1,GPD2・・・を設定し、記憶部51に格納する。
【0075】
以降、各グループ毎のマスタリングデータMSDを生成していく。
まずステップF304で演算部32は変数n=1とし、ステップF305でグループGP(n)用のマスタリングデータMSDを生成する。従ってまずグループGP1用のマスタリングデータMSD1を生成することとなる。このマスタリングデータMSD1は、カッティングマスタの所定のデータの暗号化処理や署名データの付加などの処理を行うとともに、ファイルシステムで管理されている差し替えエリアのデータをグループデータGPD1に置き換えたものとされる。
グループGP1用のマスタリングデータMSD1を生成したら、演算部32はステップF306で、そのマスタリングデータMSD1を記憶部31に格納する。
【0076】
ステップF307でn≧グループ数でない場合、つまりまだ全てのグループに対応したマスタリングデータMSDを生成していない段階では、ステップF308で変数nをインクリメントしながらステップF305,F306の処理を繰り返す。
従って、以上の処理で引き続きグループGP2,GP3・・・用のマスタリングデータMSD2,MSD3・・・が生成され、記憶部31に格納されていくこととなる。
ステップF307でn≧グループ数となったら、全てのグループに対応するマスタリングデータMSD1〜MSD(n)が生成されたとしてプリマスタリング処理を終了する。
【0077】
プリマスタリング装置10では、以上のようにプリマスタリング処理が行われる。即ちグループ毎に、それぞれ異なるグループデータGPDが配置されたマスタリングデータMSDが生成される。
【0078】
その後、露光装置20側で図6のステップF101の露光処理が行われる。図12に露光装置20で実行する露光処理を示している。この図12は露光装置20のコントローラ40がプログラムに基づいて実行する処理である。
まずステップF351でコントローラ40はグループ設定を行う。即ち、これから実行するマスタリングで、どのグループのディスク原盤か作成するかを設定する。
【0079】
コントローラ40は、このステップF351では、特定のグループを選択設定したら、プリマスタリング装置10に対して、当該選択したグループに応じたマスタリングデータMSDを要求する。プリマスタリング装置10は、要求に応じたマスタリングデータMSDを露光装置20に送信する。
露光装置20はステップF352で、送信されてきたマスタリングデータMSDを記憶部51マスタリングデータ記憶部51bに記憶する。
例えばグループGP1用のディスク原盤100を作成する場合、コントローラ40はプリマスタリング装置10にグループGP1についてのマスタリングデータMSD1を要求する。そしてそれに応じて転送されてきたマスタリングデータMSD1を記憶部51に格納することとなる。
なお、この第2例としての処理の場合、プリマスタリング装置10から露光装置20に対してグループデータGPDや差し替えエリアのエリア情報ARIFO等の供給は不要である。露光装置20に供給されるマスタリングデータMSDは、既に被差し替えデータ(例えばダミーデータ)がグループデータGPDに差し替えられたものだからである。
【0080】
マスタリングデータMSDを受け取ったら、コントローラ40はステップF353で露光開始制御を行う。
コントローラ40は書込/読出制御部52にマスタリングデータMSDの読み出しを指示し、さらに変調部41、レーザ駆動パルス発生部42、レーザドライバ41、露光ヘッド46の動作を開始させる。またスピンドルサーボ/ドライバ47、スライドドライバ48に指示し、ディスク原盤の回転駆動を実行させる。
これにより、マスタリングデータMSDに基づいたディスク原盤100に対する露光が開始される。
【0081】
露光開始後は、コントローラ40はステップF354で、マスタリングデータMSDに基づく露光完了を監視し、露光完了タイミングでステップF355で各部による露光動作を終了させる。
【0082】
露光処理が以上のように実行され、その後、図6のステップF102,F103が行われる。ステップF102で作成されるディスク原盤、及びステップF103で作成されるスタンパは、カッティングマスタに加えられていた被差し替えデータが、グループデータGPDに差し替えられた状態のピット列が形成されていることとなる。
その後、図6のステップF104〜F106で光ディスクが製造されるが、当然その光ディスクは、グループデータGPDが記録された、例えば図2(c)のようなデータ構造の光ディスクとなる。即ちファイルシステムにより、再生専用のコンテンツデータと、グループデータGPDが管理される光ディスクである。
【0083】
以上の第2例の製造方法によっても、上述の第1例と同じく、同一コンテンツを収録した再生専用ディスクについて、グループ毎に固有のグループデータGPDを記録させたディスク原盤100を、プリマスタリングやオーサリングをやり直すことなく製造できる。
各グループとしてのディスク製造工程は、グループ毎にマスタリング以降を行えばよいため、オーサリングによるマスターデータ生成や、プリマスタリング処理をやり直す必要はなく、多数のグループの光ディスクを製造する場合の製造効率は著しく向上する。
即ち、グループ毎に異なる情報を記録した同一タイトルの記録媒体の製造効率を大きく向上させることができる。
【0084】
なお第2例の場合は、プリマスタリング処理で、グループ毎に個別にマスタリングデータを作成するため、例えばプリマスタリング装置10の記憶部31に比較的大きな容量が必要になるということはある。
但し、その一方で、露光装置20側では、通常に受け取ったマスタリングデータMSDに基づく露光を行えば良いため、露光装置20側の処理負担は発生しない。換言すれば従前の露光装置をそのまま用いて露光工程を実行できるという設備負担上の利点が生ずる。
【0085】
またこの第2例を採用する場合も、製造されるディスクは、BCA等の特殊な態様ではなく、ファイルシステムで管理される通常の再生専用データでグループデータGPDが記録されている。従って再生互換性、汎用性のあるグループ固有情報を持った再生専用ディスクを提供できる。
【0086】
なお、変形例として、プリマスタリング装置10で作成した複数のグループに対応した複数のマスタリングデータMSDを、露光装置20側に全て予め転送しておくようにしても良い。そして露光装置20側で、原盤作成時に1つのマスタリングデータMSDを選択して露光を行うといった手法も考えられる。
【0087】
<6.差し替えデータを記録するフォルダ・ファイル>
ここで、図2で説明した差し替えエリアの具体例を例示しておく。
カッティングマスタからマスタリングデータMSD、さらには最終的に生産される光ディスクに引き継がれるデータ構造の例を図13に示す。図13はBD方式に準拠したディレクトリ構造である。
【0088】
ルート(root)下に、BDMVフォルダ、CERTIFICATEフォルダが配置される。さらにGPINFOフォルダ90が配置される。
BDMVフォルダは、ブルーレイディスクにおけるコンテンツやその管理情報、付加情報を配置するフォルダである。図示のように、BDMVフォルダ内には、“index.bdmv”、“MovieObject.bdmv”、“PLAYLIST”、“CLIPINF”、“STREAM”、“AUXDATA”、“META”、“BDJO”、“JAR”、“BACKUP”という各フォルダ又はファイルが配置される。
例えば“PLAYLIST”内には“00000.mpls”“00001.mpls”“00002.mpls”等のプレイリストファイルが配置される。これは、コンテンツデータの再生を指定するための情報が記録されたファイルである。
“CLIPINF”内には“01000.clpi”“02000.clpi”“03000.clpi”等のクリップ情報ファイルが配置される。これは、ストリームファイルを管理するための管理情報が記録されたファイルである。
“STREAM”内には“01000.m2ts”“02000.m2ts”“03000.m2ts”等のストリームファイルが配置される。これは、ストリームデータが記録されたファイルである。
【0089】
このようなデータ構造において、例えばルート直下のGPINFOフォルダ90を、図2(a)でいう差し替えエリアとする。
即ち、オーサリングで作成するカッティングマスタの段階では、このGPINFOフォルダ90内に、GPINFOファイル91を設け、例えばダミーデータを配置しておく。
【0090】
上記第1例、第2例として示した露光の際には、このGPINFOファイル91のデータがグループデータGPDに置き換えられたものとされる。
そして最終生産品である光ディスクは、この図13のディレクトリ構造をファイルシステムにおいて管理している。従ってファイルシステムに基づいてGPINFOフォルダ90内のGPINFOファイル91として、グループデータGPDが読み出されることとなる。
【0091】
次に図14は、ファイルの一部が差し替えエリアとされる例を示している。
この図14は、例えば上記図13のディレクトリ構造でBDMVフォルダ内に配置される“index.bdmv”ファイルの構造例を示している。
この“index.bdmv”ファイルは、タイプインジケータ、バージョンナンバ、インデックス情報等が記述される。
ここで、例えば128ビット(16バイト)の領域として“GPinfo”領域91を設定する。この16バイトの“GPinfo”領域91を図2(a)でいう差し替えエリアとする。
即ち、オーサリングで作成するカッティングマスタの段階では、この“index.bdmv”ファイル内の“GPinfo”領域91に、差し替えデータとして例えばダミーデータを配置しておく。そして上記第1例、第2例として示した露光の際には、この“GPinfo”領域91内のデータがグループデータGPDに置き換えられたものとされる。
最終生産品である光ディスクは、図13のディレクトリ構造をファイルシステムにおいて管理しているため、ファイルシステムに基づいて“index.bdmv”ファイルを読み出せば、“GPinfo”領域91に記録されたグループデータGPDが読み出されることとなる。
【0092】
なお、以上の各例はあくまでも一例に過ぎない。ブルーレイディスクのディレクトリ構造に準拠した場合でも、上記例以外のフォルダ又はファイル内に、差し替えエリアを用意し、グループデータGPDを配置することは当然想定される。
また、本発明はBD方式の光ディスク以外にも、DVD−ROM、CD−ROM等、ファイルシステムを持つ光ディスクに適用できる。従ってDVD方式でのディレクトリ構造におけるファイルやフォルダ内に差し替えエリアを設定することも当然考えられる。
また、本発明は光ディスクだけでなく、光カードなど他の種の記録媒体であってファイルシステムを持つデータ構造が採用された記録媒体にも適用できる。
【0093】
<7.プログラム>
実施の形態のプログラムは、プリマスタリング装置10や露光装置20の処理を実行させるプログラムである。
【0094】
即ち実施の形態のプログラムの1つは、上記第1例としての図9で示した処理をプリマスタリング装置10の演算部32に実行させるプログラムである。
該プログラムは、ディスク原盤100の製造に用いるマスターデータとして、コンテンツデータと被差し替えデータとがファイルシステムによって管理されたデータ構造のマスターデータ(カッティングマスタ)について、ファイルシステムから被差し替えデータを確認するステップと、被差し替えデータに代える差し替えデータを用意するステップを情報処理装置(演算部32)に実行させる。
【0095】
また、実施の形態のプログラムとして、上記第1例の図10で示した処理を露光装置20のコントローラ40に実行させるプログラムがある。
該プログラムは、被差し替えデータが含まれるマスターデータ(マスタリングデータMSD)と、差し替えデータ(グループデータGPD)とが供給されて、ディスク原盤100の露光を行う露光装置20の制御部(コントローラ40)の処理を実行させるプログラムである。そしてマスターデータを変調処理して得られる変調信号に基づいたレーザ光照射で露光を行うとともに、その変調処理に供するマスターデータにおける被差し替えデータを差し替えデータに差し替える処理を実行させる制御を、制御部に実行させる。
【0096】
また、実施の形態のプログラムとして、上記第2例の図11で示した処理をプリマスタリング装置10の演算部32に実行させるプログラムがある。
該プログラムは、ディスク原盤100の製造に用いるマスターデータとして、コンテンツデータと被差し替えデータとがファイルシステムによって管理されたデータ構造のマスターデータ(カッティングマスタ)について、ファイルシステムから被差し替えデータを確認するステップと、被差し替えデータに代える差し替えデータ(グループデータGPD)を用意するステップを情報処理装置(演算部32)に実行させる。さらに、被差し替えデータを差し替えデータに差し替えたマスターデータ(マスタリングデータMSD)を生成するステップを情報処理装置(演算部32)に実行させる。
【0097】
このようなプログラムにより、例えばパーソナルコンピュータを用いたプリマスタリング装置10の実現が可能となる。また露光装置20のコントローラ40の実現が容易となる。
【0098】
このようなプログラムは、パーソナルコンピュータ等の機器に内蔵されている記録媒体としてのHDDや、CPUを有するマイクロコンピュータ内のROMやフラッシュメモリ等に予め記録しておくことができる。
あるいはまた、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、MO(Magnet optical)ディスク、DVD、ブルーレイディスク、磁気ディスク、半導体メモリ、メモリカードなどのリムーバブル記録媒体に、一時的あるいは永続的に格納(記録)しておくことができる。このようなリムーバブル記録媒体は、いわゆるパッケージソフトウェアとして提供することができる。
また、プログラムは、リムーバブル記録媒体からパーソナルコンピュータ等にインストールする他、ダウンロードサイトから、LAN(Local Area Network)、インターネットなどのネットワークを介してダウンロードすることもできる。
【符号の説明】
【0099】
1 ディスク基板、2 センターホール、3 ピットパターン、4 反射膜、5 カバー層、10 プリマスタリング装置、20 露光装置、31 記憶部、32 演算部、40 コントローラ、43 変調部、46 露光ヘッド、51 記憶部、52 書込/読出制御部、100 ディスク原盤、101 スタンパ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテンツデータと被差し替えデータとがファイルシステムによって管理されたデータ構造のマスターデータについて、上記ファイルシステムから被差し替えデータを確認し、また差し替えデータを用意する前処理工程と、
上記被差し替えデータが上記差し替えデータに差し替えられたマスターデータに基づいて記録媒体原盤の露光を行う露光工程と、
上記露光が行われた記録媒体原盤に対して現像を行い露光に応じた凹凸パターンが形成された記録媒体原盤を形成する現像工程と、
を備えた原盤製造方法。
【請求項2】
上記露光工程では、上記被差し替えデータが含まれるマスターデータと、差し替えデータとが供給され、マスターデータを変調処理して得られる変調信号に基づいたレーザ光照射で露光を行うとともに、上記変調処理に供するマスターデータにおける上記被差し替えデータを上記差し替えデータに差し替える処理が行われる請求項1に記載の原盤製造方法。
【請求項3】
上記前処理工程では、上記被差し替えデータを上記差し替えデータに差し替えたマスターデータを生成し、
上記露光工程では、上記差し替えが行われたマスターデータを変調処理して得られる変調信号に基づいたレーザ照射で露光を行う請求項1に記載の原盤製造方法。
【請求項4】
上記前処理工程に供するマスターデータを生成する工程として、コンテンツデータと被差し替えデータとがファイルシステムによって管理されたデータ構造のマスターデータを生成するオーサリング工程を、さらに備えた請求項1に記載の原盤製造方法。
【請求項5】
上記オーサリング工程では、上記被差し替えデータが特定のフォルダ内又はファイル内に配置されるデータとして上記ファイルシステムに管理されるデータ構造のマスターデータを生成する請求項4に記載の原盤製造方法。
【請求項6】
コンテンツデータと被差し替えデータとがファイルシステムによって管理されたデータ構造のマスターデータについて、上記ファイルシステムから被差し替えデータを確認し、また製造される記録媒体のグループ単位で異なる複数の差し替えデータを用意する前処理工程と、
上記被差し替えデータが、製造する記録媒体のグループに応じて選択された差し替えデータに差し替えられたマスターデータに基づいて記録媒体原盤の露光を行う露光工程と、
上記露光が行われた記録媒体原盤に対して現像を行い露光に応じた凹凸パターンが形成された記録媒体原盤を形成する現像工程と、
上記現像工程で形成された記録媒体原盤を用いてスタンパを作成するスタンパ作成工程と、
上記スタンパを用いて記録媒体基板を作成し、該記録媒体基板上に記録層を含む層構造を形成することで記録媒体を作成する媒体作成工程と、
を備えた記録媒体製造方法。
【請求項7】
記録媒体原盤の製造に用いるマスターデータとして、コンテンツデータと被差し替えデータとがファイルシステムによって管理されたデータ構造のマスターデータについて、上記ファイルシステムから被差し替えデータを確認するステップと、
上記被差し替えデータに代える差し替えデータを用意するステップと、
を情報処理装置に実行させるプログラム。
【請求項8】
さらに、上記被差し替えデータを上記差し替えデータに差し替えたマスターデータを生成するステップを情報処理装置に実行させる請求項7に記載のプログラム
【請求項9】
被差し替えデータが含まれるマスターデータと、差し替えデータとが供給されて、記録媒体原盤の露光を行う露光装置の制御部の処理を実行させるプログラムとして、
マスターデータを変調処理して得られる変調信号に基づいたレーザ光照射で露光を行うとともに、上記変調処理に供するマスターデータにおける上記被差し替えデータを上記差し替えデータに差し替える処理を実行させる制御を、上記制御部に実行させるプログラム。
【請求項10】
ファイルシステムにより管理されたデータ構造を有する記録媒体であって、
コンテンツデータと、特定のフォルダ内又はファイル内のデータ位置に配置された差し替えデータとが記録され、
上記差し替えデータは、上記データ構造における、当該記録媒体の製造時において被差し替え用データが配置された上記データ位置に記録される記録媒体。
【請求項11】
上記差し替えデータは、製造される記録媒体のグループ単位で固有の情報を示すデータである請求項10に記載の記録媒体。
【請求項12】
コンテンツデータと被差し替えデータとがファイルシステムによって管理されたデータ構造のマスターデータについて、上記ファイルシステムから被差し替えデータを確認し、また製造される記録媒体のグループ単位で異なる複数の差し替えデータを用意する前処理工程と、
上記被差し替えデータが、製造する記録媒体のグループに応じて選択された差し替えデータに差し替えられたマスターデータに基づいて記録媒体原盤の露光を行う露光工程と、
上記露光が行われた記録媒体原盤に対して現像を行い露光に応じた凹凸パターンが形成された記録媒体原盤を形成する現像工程と、
上記現像工程で形成された記録媒体原盤を用いてスタンパを作成するスタンパ作成工程と、
上記スタンパを用いて記録媒体基板を作成し、該記録媒体基板上に記録層を含む層構造を形成することで記録媒体を作成する媒体作成工程と、
を経て製造されたことで、再生専用の上記差し替えデータが記録された請求項11に記載の記録媒体。
【請求項1】
コンテンツデータと被差し替えデータとがファイルシステムによって管理されたデータ構造のマスターデータについて、上記ファイルシステムから被差し替えデータを確認し、また差し替えデータを用意する前処理工程と、
上記被差し替えデータが上記差し替えデータに差し替えられたマスターデータに基づいて記録媒体原盤の露光を行う露光工程と、
上記露光が行われた記録媒体原盤に対して現像を行い露光に応じた凹凸パターンが形成された記録媒体原盤を形成する現像工程と、
を備えた原盤製造方法。
【請求項2】
上記露光工程では、上記被差し替えデータが含まれるマスターデータと、差し替えデータとが供給され、マスターデータを変調処理して得られる変調信号に基づいたレーザ光照射で露光を行うとともに、上記変調処理に供するマスターデータにおける上記被差し替えデータを上記差し替えデータに差し替える処理が行われる請求項1に記載の原盤製造方法。
【請求項3】
上記前処理工程では、上記被差し替えデータを上記差し替えデータに差し替えたマスターデータを生成し、
上記露光工程では、上記差し替えが行われたマスターデータを変調処理して得られる変調信号に基づいたレーザ照射で露光を行う請求項1に記載の原盤製造方法。
【請求項4】
上記前処理工程に供するマスターデータを生成する工程として、コンテンツデータと被差し替えデータとがファイルシステムによって管理されたデータ構造のマスターデータを生成するオーサリング工程を、さらに備えた請求項1に記載の原盤製造方法。
【請求項5】
上記オーサリング工程では、上記被差し替えデータが特定のフォルダ内又はファイル内に配置されるデータとして上記ファイルシステムに管理されるデータ構造のマスターデータを生成する請求項4に記載の原盤製造方法。
【請求項6】
コンテンツデータと被差し替えデータとがファイルシステムによって管理されたデータ構造のマスターデータについて、上記ファイルシステムから被差し替えデータを確認し、また製造される記録媒体のグループ単位で異なる複数の差し替えデータを用意する前処理工程と、
上記被差し替えデータが、製造する記録媒体のグループに応じて選択された差し替えデータに差し替えられたマスターデータに基づいて記録媒体原盤の露光を行う露光工程と、
上記露光が行われた記録媒体原盤に対して現像を行い露光に応じた凹凸パターンが形成された記録媒体原盤を形成する現像工程と、
上記現像工程で形成された記録媒体原盤を用いてスタンパを作成するスタンパ作成工程と、
上記スタンパを用いて記録媒体基板を作成し、該記録媒体基板上に記録層を含む層構造を形成することで記録媒体を作成する媒体作成工程と、
を備えた記録媒体製造方法。
【請求項7】
記録媒体原盤の製造に用いるマスターデータとして、コンテンツデータと被差し替えデータとがファイルシステムによって管理されたデータ構造のマスターデータについて、上記ファイルシステムから被差し替えデータを確認するステップと、
上記被差し替えデータに代える差し替えデータを用意するステップと、
を情報処理装置に実行させるプログラム。
【請求項8】
さらに、上記被差し替えデータを上記差し替えデータに差し替えたマスターデータを生成するステップを情報処理装置に実行させる請求項7に記載のプログラム
【請求項9】
被差し替えデータが含まれるマスターデータと、差し替えデータとが供給されて、記録媒体原盤の露光を行う露光装置の制御部の処理を実行させるプログラムとして、
マスターデータを変調処理して得られる変調信号に基づいたレーザ光照射で露光を行うとともに、上記変調処理に供するマスターデータにおける上記被差し替えデータを上記差し替えデータに差し替える処理を実行させる制御を、上記制御部に実行させるプログラム。
【請求項10】
ファイルシステムにより管理されたデータ構造を有する記録媒体であって、
コンテンツデータと、特定のフォルダ内又はファイル内のデータ位置に配置された差し替えデータとが記録され、
上記差し替えデータは、上記データ構造における、当該記録媒体の製造時において被差し替え用データが配置された上記データ位置に記録される記録媒体。
【請求項11】
上記差し替えデータは、製造される記録媒体のグループ単位で固有の情報を示すデータである請求項10に記載の記録媒体。
【請求項12】
コンテンツデータと被差し替えデータとがファイルシステムによって管理されたデータ構造のマスターデータについて、上記ファイルシステムから被差し替えデータを確認し、また製造される記録媒体のグループ単位で異なる複数の差し替えデータを用意する前処理工程と、
上記被差し替えデータが、製造する記録媒体のグループに応じて選択された差し替えデータに差し替えられたマスターデータに基づいて記録媒体原盤の露光を行う露光工程と、
上記露光が行われた記録媒体原盤に対して現像を行い露光に応じた凹凸パターンが形成された記録媒体原盤を形成する現像工程と、
上記現像工程で形成された記録媒体原盤を用いてスタンパを作成するスタンパ作成工程と、
上記スタンパを用いて記録媒体基板を作成し、該記録媒体基板上に記録層を含む層構造を形成することで記録媒体を作成する媒体作成工程と、
を経て製造されたことで、再生専用の上記差し替えデータが記録された請求項11に記載の記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−108976(P2012−108976A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256453(P2010−256453)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(594064529)株式会社ソニーDADC (88)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(594064529)株式会社ソニーDADC (88)
【Fターム(参考)】
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