説明

原着繊維からなる繊維構造体及びそれを用いた繊維製品

【課題】吸湿性に優れ、清涼感・冷涼感を有し、さらに審美性、鮮明性、染色湿潤堅牢性、耐光堅牢性といった特性にも優れた、原着繊維からなる繊維構造体及びそれを用いた繊維製品を提供する。
【解決手段】原着繊維Aと、共重合ポリエステル原着繊維Bとからなる繊維構造体であって、該共重合ポリエステル原着繊維Bを構成する共重合ポリエステルが、ポリエーテル成分が側鎖に共重合されたポリエステルであり、該原着繊維Aの着色度Laと該共重合ポリエステル原着繊維Bの着色度Lbとの差(Lb−La)が−20〜60の範囲にある原着繊維からなる繊維構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原着繊維からなる繊維構造体及びそれを用いた繊維製品に関するものである。さらに詳細には、繊維になした際に吸湿性、良好な清涼感、冷涼感を発現することができ、しかも審美性、鮮明性、染色湿潤堅牢性、耐光堅牢性といった特性にも優れた、原着繊維からなる繊維構造体及びそれを用いた繊維製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルは多くの優れた特性を有するがゆえに合成繊維、フイルム、その他の成形物として広く用いられている。しかしながら、ポリエステルは、疎水性であるため、例えば繊維として使用した場合に、木綿や麻等の天然繊維に比較して吸水性、吸湿性が著しく劣る欠点があり、吸水性や吸湿性が要求される分野での使用が制限されている。なかでも、布帛が直接肌に接する衣料用途におけるポリエステル繊維の使用は、蒸れ感やべとつき感等の著しい不快感を招来するため極度に制限されているのが実状であり、特に盛夏用衣料用途での使用は実質上皆無に近い。
【0003】
従来、かかる問題を解決するため、ポリエステル繊維に吸水性、吸湿性を付与しようとする試みが多数なされている。例えば、ポリエステル繊維に吸水性(液体状態の水を吸収する性質)を付与する方法として、繊維表面を変性して吸水性を付与する方法と繊維内部まで吸水性を高める方法とがある。前者では原糸改質や後加工によって、繊維表面を親水性の化合物で覆う方法が主に採用されており、この他に放電処理、光グラフト、薬品によるエッチング、親水性化合物の低温プラズマ重合加工等がある。後者の方法としてはポリエステル繊維を多孔質化することによって毛細管現象を利用して吸水性を高めることが行われている。しかしながら、これらの方法は感知蒸泄つまり発汗状態においては相応の効果が認められ、特に多孔質の吸水性ポリエステル繊維においては、抱水率や湿潤知覚限界(湿ったと感じ得る抱水率)を顕著に高める効果が得られると共に速乾性を有するため、汗を多量にかくスポーツ用途等で快適な汗処理機能を発揮できるものの、吸湿性(気相状態の水、即ち水蒸気を吸収する性能)を殆んど有しないためか、人間の感覚にはのぼらずに常に体外に蒸発している不感蒸泄に対しては特別の効果が認められず、蒸れ感や蒸し暑さを解消する効果は少ないので、木綿や麻等の天然繊維のもつ清涼感、冷涼感を呈するのには程遠い。その上、繊維の表面に親水性樹脂の皮膜を形成させる方法では、疎水性繊維の表面のみに親水性皮膜を形成させるものであり、両者の親和性が不良であるため、洗濯耐久性に劣る欠点がある。
【0004】
一方、ポリエステル繊維に吸湿性を付与する方法として、親水性化合物のグラフト重合による後加工方法が提案されている。この方法によれば、例えばポリエチレンテレフタレート繊維にアクリル酸やメタクリル酸を15重量%程度グラフト重合した後でナトリウム塩化処理を施すことによって木綿と同等の吸湿率が得られる。しかしながら、かかるグラフト重合で改質した吸湿性ポリエステル繊維は、確かに木綿並みの平衡吸湿率は有するものの、平衡吸湿率に至るまでの吸湿速度が木綿に比較して著しく小さい。このことも関係してか、着用した際の蒸れ感やべとつき感を解消する効果は少なく、清涼感は得られない。その上、この方法では染色堅牢度が低下したり、風合が硬化する等の欠点があり実用に耐えない。
【0005】
他方、ポリマー自身を吸湿性にしたポリエステルとしては、従来から知られているポリオキシエチレングリコールを共重合したポリエステル以外には注目すべきものがないのが現状である。かかるポリオキシエチレングリコール成分を含むポリエステルは吸湿性向上効果は呈するものの、その向上効果は比較的小さく、そのため多量のポリオキシエチレングリコール成分の使用を必要とし、その結果最終的に得られる変性ポリエステル繊維の物理的性能や耐熱性の低下が著しく、実用的価値は低い。
【0006】
ポリオキシエチレングリコール共重合ポリエステルの欠点を改良しようとする別の提案として、ポリエステル重合体主鎖に対してポリオキシエチレングリコール成分を側鎖に有する共重合ポリエステルの製造法が提案されている(特許文献1、特許文献2)。この方法によれば比較的少量のポリオキシエチレングリコール成分の導入によって、繊維になした際に吸湿性、吸水性及び速乾性に優れると共に、熱伝導性と透湿性が良好であり、優れた清涼感、冷涼感を呈する共重合ポリエステルが得られるため有用である。しかしながら、このように優れた機能性を有する一方で、該ポリエステル重合体主鎖に対してポリオキシエチレングリコール成分を側鎖に有する共重合ポリエステルからなる繊維は、場合によっては染色品の染色堅牢度、特に洗濯堅牢度に難点を有することが判明した。例えば、通常のポリエステル繊維と該共重合ポリエステル繊維とを混用して作製した織編物に、ポリエステル繊維の通常の染色加工方法である、分散染料による高温高圧染色法で染色加工を施した場合、淡色や中色では問題は比較的少ないものの濃色に染色した際に染色品のJIS L−0844 A−2法やAATCC II−A法で規定する洗濯堅牢度汚染(以下、染色湿潤堅牢度と称する)が不充分なレベルとなる場合がある。
【0007】
【特許文献1】特公平6−84426号公報
【特許文献2】特公平6−84427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記背景技術に鑑みなされたもので、その目的は、吸湿性に優れ、清涼感・冷涼感を有し、さらに審美性、鮮明性、染色湿潤堅牢性、耐光堅牢性といった特性にも優れた、原着繊維からなる繊維構造体及びそれを用いた繊維製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記目的を達成すべく検討した結果、特定の構造を有するポリエステルで構成された原着繊維と、着色度が一定の要件を満たす他の原着繊維とを組合せることで、上記の多岐にわたる要求特性の全てをバランスよく満足する繊維構造体及び繊維製品を提供できることを見出すに至った。
【0010】
すなわち、本発明は次の通りである。
1.原着繊維Aと、共重合ポリエステル原着繊維Bとからなる繊維構造体であって、該共重合ポリエステル原着繊維Bを構成する共重合ポリエステルが、ポリエーテル成分が側鎖に共重合されたポリエステルであり、該原着繊維Aの着色度Laと該共重合ポリエステル原着繊維Bの着色度Lbとが下記式を満足していることを特徴とする、原着繊維からなる繊維構造体。
−20≦Lb−La≦60
2.共重合ポリエステル原着繊維Bを構成する共重合ポリエステルが、下記一般式(1)で表わされるジオール化合物及び/又は下記一般式(2)で表わされるエポキシ化合物が共重合されたポリエステルである、1記載の原着繊維からなる繊維構造体。
【化1】

(式中、Rは炭化水素基、R’はアルキレン基、n1は重合度を示す正の整数である)
【化2】

(式中、Rは炭化水素基、R’はアルキレン基、n2は重合度を示す正の整数である)
3.ジオール化合物及び/又はエポキシ化合物の共重合量が、共重合ポリエステルに対して10〜40重量%である、2に記載の原着繊維からなる繊維構造体。
4.原着繊維Aが、ポリエステル原着繊維、ナイロン原着繊維、アクリル原着繊維、ポリオレフィン原着繊維、アラミド原着繊維、アセテート原着繊維、レーヨン原着繊維、ビニロン原着繊維およびポリ塩化ビニル原着繊維よりなる群から選ばれた少なくとも一種である、1〜3いずれかに記載の原着繊維からなる繊維構造体。
5.繊維構造体の全重量を基準として、原着繊維Aの割合が95〜15重量%であり、共重合ポリエステル原着繊維Bの割合が5〜85重量%である、1〜4のいずれかに記載の原着繊維からなる繊維構造体。
6.繊維構造体が、原着繊維Aと、共重合ポリエステル原着繊維Bとからなる混繊糸である、1〜5のいずれかに記載の原着繊維からなる繊維構造体。
7.繊維構造体が、原着繊維Aを鞘部に、共重合ポリエステル原着繊維Bを芯部に配した複合糸または加工糸である、1〜6のいずれかに記載の原着繊維からなる繊維構造体。
8.1〜7のいずれかに記載の繊維構造体を用いた繊維製品。
【発明の効果】
【0011】
本発明の繊維製品は、吸湿性、清涼感・冷涼感を発現することができ、しかも審美性、鮮明性、染色湿潤堅牢性、耐光堅牢性といった特性を有する。したがって、上記本発明の繊維構造体を用いた繊維製品は特にスポーツ用途やインナー用途などの衣料用途において極めて有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の繊維構造体は、原着繊維Aと、共重合ポリエステル原着繊維Bとからなる繊維構造体であり、該構造体は糸、織物、編物、不織布などの形態を含むものである。
例えば、上記繊維構造体が糸の場合は、原着繊維Aと共重合ポリエステル繊維Bとからなる、混繊、複合糸、合撚糸、加工糸等が挙げられ、特に、原着繊維Aと共重合ポリエステル繊維Bからなる混繊糸、又は、原着繊維Aと共重合ポリエステル繊維Bからなる複合糸であることが本発明の目的を達成する上で好ましい。なお、原着繊維Aと共重合ポリエステル繊維Bはいずれも短繊維又は長繊維であってもよく、一方が長繊維で他方が短繊維であってもよい。したがって、上記の複合糸は、共重合ポリエステル原着繊維Bの長繊維を、原着繊維Aの長繊維で被覆したカバードヤーン(シングルカバードヤーン、ダブルカバードヤーン)や、共重合ポリエステル繊維Bの長繊維が芯部、原着繊維Aの短繊維が鞘部となるように紡績したコアスパンヤーンであってもよい。また、上記の糸は原着繊維Aと共重合ポリエステル原着繊維Bとを引き揃えて撚り合わせた合撚糸であってもよい。
【0013】
本発明の繊維構造体が織編物の場合は、例えば原着繊維Aと共重合ポリエステル原着繊維Bとを、交織した織物や、交編した編物を例示できる。また、上記繊維構造体が不織布の場合は、例えば原着繊維Aと共重合ポリエステル原着繊維Bとからなる、湿式不織布、乾式不織布等を例示できる。なお、織編物や不織布は、前記した混繊糸、複合糸、合撚糸、加工糸等からなるものであってもよい。
【0014】
本発明において原着繊維Aとしては、ポリマー融液やポリマー溶液に着色剤を混合してなる紡糸原液から溶融紡糸、乾式紡糸、湿式紡糸、乾湿式紡糸などの紡糸方法によって製造された着色繊維であれば特に制限する必要はなく、合成繊維、半合成繊維、再生繊維のいずれであってもよい。このような原着繊維の基体繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、アラミド繊維、アセテート繊維、レーヨン繊維、ビニロン繊維、ポリ塩化ビニル繊維などを好ましく挙げることができ、なかでもポリエステル繊維が好ましい。なお本発明において、原着繊維Aは、後述する共重合ポリエステル原着繊維Bと同種の原着繊維、すなわちポリエーテル成分が側鎖に共重合されたポリエステルで構成された共重合ポリエステル原着繊維は含まない。
【0015】
上記原着繊維Aに使用される着色剤としては、カーボンブラック、酸化チタン、弁柄、群青等の無機系顔料、フタロシアニン系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、ジオキサジン系、ペリレン系、ペリノン系等の有機系顔料が挙げられる。なかでも、ポリエステル繊維製造時の高温重合工程や高温溶融紡糸工程に耐えうる耐熱性と、自動車内装材の耐光堅牢度規格に適う耐光性とを兼備している着色剤が特に好ましく使用される。なお、目的とする発色を得るためには、これらの着色剤を適宜選定し、単独または複数をブレンドして使用すればよい。
【0016】
上記の原着繊維Aを製造する方法としては、例えばポリエステル原着繊維の場合、着色剤はポリエステルの重合段階から紡糸されるまでの任意の過程で添加すればよいが、設備の汚染、制御等取扱性から重合終了後に添加するのが好ましい。つまり、添加方法としては、マスターバッチ方式、リキッドカラー方式等が挙げられるが、溶融紡糸時の安定性、着色剤の取扱性等より、マスターバッチ方式が好ましい。
【0017】
さらに、マスターバッチ方式で繊維を得る場合、着色剤を添加する時期については、原料ペレットの段階で計量混合し、溶融紡糸する段階、別々に溶融させたポリマーを計量混合し紡糸する段階等があるが、いずれの方法で行っても差し支えない。
【0018】
上記のポリエステル原着繊維には着色剤が、通常0.2〜5.0重量%程度含有されている。着色剤の含有量があまりに少ないと十分な発色性が得られず、逆にあまりに多いと最早発色性の著しい向上は見られず、かえって溶融紡糸を円滑に行い難くなる傾向がある。
【0019】
本発明の原着繊維Aは長繊維であっても、短繊維であってもよく、繊度は任意でよい。繊維の断面形状は円形であっても異形であってもよく、また中空繊維であっても中実繊維であってもよい。
なお、本発明の原着繊維Aには、他に添加剤として、艶消し剤、着色防止剤、酸化防止剤、難燃剤等、本発明の効果を損なわない範囲で各種の添加剤が添加されていてもよい。
【0020】
一方、本発明において共重合ポリエステル原着繊維Bを構成するポリエステルは、ポリエステルは、テレフタル酸を主たる二官能性カルボン酸成分とし、少なくとも1種のグリコール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールから選ばれる少なくとも1種のアルキレングリコールをグリコール成分とするポリエステルを主たる対象とする。
【0021】
また、テレフタル酸成分の一部を他の二官能性カルボン酸成分で置換えたポリエステルであってもよく、及び/又はグリコール成分の一部を主成分以外の上記グリコール若しくは他のジオール成分で置換えたポリエステルであってもよい。
【0022】
ここで使用されるテレフタル酸以外の二官能性カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の如き芳香族、脂肪族、脂環族の二官能性カルボン酸をあげることができる。
【0023】
また、上記グリコール以外のジオール化合物としては、例えばシクロヘキサン―1,4―ジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSの如き脂肪族、脂環族、芳香族ジオール化合物等をあげることができる。
【0024】
更に、ポリエステルが実質的に線状である範囲でトリメリット酸、ピロメリット酸の如きポリカルボン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールの如きポリオールを使用することができる。
【0025】
かかるポリエステルは任意の方法によって合成される。例えばポリエチレンテレフタレートについて説明すれば、通常テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルの如きテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか又はテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させるかしてテレフタル酸のグリコールエステルおよび/又はその低重合体を生成させる第一段階の反応と、第一段階の反応生成物を減圧下加熱して所望の重合度になるまで重縮合反応させる第二段階の反応によって製造される。
【0026】
本発明においては、共重合ポリエステル原着繊維Bを構成するポリエステルが、前記基体ポリエステルの側鎖にポリエーテル成分が共重合されているポリエステルであること、また、後述するように、原着繊維Aの着色度Laと共重合ポリエステル原着繊維Bの着色度Lbが特定の関係を満足していることが肝要である。これにより、吸湿性、清涼感・冷涼感、審美性、鮮明性、染色湿潤堅牢性、耐光堅牢性の全てにバランスよく優れた繊維構造体及び繊維製品を提供することができる。
【0027】
まず、共重合ポリエステル原着繊維Bを構成する、ポリエーテル成分が共重合されているポリエステルについて詳細に説明する。ポリエーテル成分としてはポリオキシアルキレン成分が好ましく、たとえば上記基体ポリエステルに、下記一般式(1)で表わされるジオール化合物及び/又は下記一般式(2)で表わされるエポキシ化合物が共重合された共重合ポリエステルを好ましい具体例としてあげることができる。
【0028】
本発明に用いる本発明においては上記基体ポリエステルに、下記一般式(1)で表わされるジオール化合物及び/又は下記一般式(2)で表わされるエポキシ化合物が共重合される。
【化3】

【化4】

【0029】
これらの式中、R、Rは炭化水素基を示し、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアルキルアリール基が好ましい。R’、R’はアルキレン基であり、炭素原子数2〜4のアルキレン基が好ましい。具体的にはエチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基が例示される。また、2種以上の混合、例えばエチレン基とプロピレン基、若しくはエチレン基とテトラメチレン基とを持ったランダム共重合体やブロック共重合体であってもよい。n、nは重合度を示す正の整数であり、30〜140の範囲であるのが好ましい。重合度が30未満では、充分な吸湿性、透湿性や木綿、麻等の天然繊維が有する清涼感、冷涼感が呈されず、本発明の目的が達成されない。また、重合度が140を越えて大きくなると最早共重合が困難になり、充分な吸湿性、透湿性や清涼感、冷涼感が呈されなくなる。なかでも40〜100の範囲において特に優れた吸湿性、透湿性が発現すると共に清涼感、冷涼感が特に顕著に奏されるので好ましい。RとR、R’とR’、n1とn2とは相互に同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
かかる化合物の好ましい具体例としては、上記式(1)で示されるジオール化合物としてポリオキシエチレングリコールメチル1,2−ジヒドロキシプロピルエーテル、ポリオキシエチレングリコールフェニル1,2−ジヒドロキシプロピルエーテル、ポリオキシエチレングリコールイソプロピル1,2−ジヒドロキシプロピルエーテル、ポリオキシエチレングリコールn−ブチル1,2−ジヒドロキシプロピルエーテル、ポリオキシエチレングリコールオクチルフェニル1,2−ジヒドロキシプロピルエーテル、ポリオキシエチレングリコールノニルフェニル1,2−ジヒドロキシプロピルエーテル、ポリオキシエチレングリコールセチル1,2−ジヒドロキシプロピルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールメチル1,2−ジヒドロキシプロピルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールフェニル1,2−ジヒドロキシプロピルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールn−ブチル1,2−ジヒドロキシプロピルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールオクチルフェニル1,2−ジヒドロキシプロピルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールノニルフェルニ1,2−ジヒドロキシプロピルエーテル、ポリオキシテトラメチレングリコールメチル1,2−ジヒドロキシプロピルエーテル、ポリオキシエチルグリコール/ポリオキシプロピレングリコール共重合体のメチル1,2−ジヒドロキシプロピルエーテル等をあげることができ、これらのなかでもポリオキシエチレングリコール誘導体が特に好ましい。上記ジオール化合物は1種を単独で使用しても、また2種以上を併用してもよい。
【0031】
また、上記式(2)で示されるエポキシ化合物の好ましい具体例としては、ポリオキシエチレングリコールメチルグリシジエーテル、ポリオキシエチレングリコールフェニルグリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコールイソプロピルグリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコールn−ブチルグリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコールオクチルフェニルグリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコールノニルフェニルグリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコールセチルグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールメチルグリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコールフェニルグリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコールn−ブチルグリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコールオクチルフェニルグリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコールノニルフェニルグリシジルエーテル、ポリオキシテトラメチレングリコールメチルグリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコール/ポリオキシプロピレングリコール共重合体のメチルグリシジルエーテル等をあげることができる。これらのなかでもポリオキシエチレングリコール誘導体が特に好ましい。上記エポキシ化合物は1種を単独で使用しても、また2種以上を併用してもよい。
【0032】
上記のジオール化合物及び/又はエポキシ化合物を前記基体ポリエステルに共重合するには、前述したポリエステルの合成が完了するまでの任意の段階、例えば第1段階の反応開始前、反応中、反応終了後、第2段階の反応中等の任意の段階で添加し、添加後重縮合反応を完結すればよい。この際その使用量は、あまりに少ないと最終的に得られるポリエステル成形物の吸湿性、清涼感、冷涼感の性能が不充分になり、逆にあまりに多いともはや著しい吸湿性、清涼感、冷涼感性能の向上が見られず、かえって最終的に得られる成形物の物理的性質、例えば繊維の強伸度等が悪化するだけでなく、耐熱性や耐光性も低下するため、共重合ポリエステルに対して10〜40重量%の範囲であることが必要であり、好ましくは15〜30重量%の範囲である。
【0033】
本発明の共重合ポリエステルを製造するにあたって、安定剤として従来公知のヒンダードフェノール系酸化防止剤やヒンダードアミン系光安定剤を添加することは、共重合ポリエステル原着繊維Bの使用時における熱劣化、酸化劣化、光劣化等を抑制する効果があるだけでなく、溶融紡糸時のポリマーの固有粘度の低下をも抑制する効果があるのでむしろ好ましいことである。
【0034】
このようにして得られた共重合ポリエステルを原着繊維Bにするには、格別の方法を採る必要はなく、通常のポリエステル繊維の溶融紡糸方法および前述のマスターバッチ方式、リキッドカラー方式等によるポリエステル原着繊維の製造方法が任意に適用される。たとえば、共重合ポリエステルと原着マスターチップまたはリキッドカラーを溶融混合して紡糸口金から吐出して巻き取った後、必要に応じて延伸や熱処理を施す方法などによって製造される。紡出される原着弾性繊維は中空部を有しない中実繊維であっても、中空部を有する中空繊維であってもよい。また、紡出される弾性繊維の横断面における外形や中空部の形状は円形であっても異形であってもよい。
なお、本発明の共重合ポリエステル原着繊維Bには、必要に応じて任意の添加剤、たとえば着色防止剤、耐熱剤、難燃剤、艶消剤、無機微粒子等が含まれていてもよい。
【0035】
更に、先に述べたように、本発明の繊維構造体を構成する、上記の原着繊維Aの着色度Laと共重合ポリエステル原着繊維Bの着色度Lbは下記式の関係を満足する必要がある。ここで、LaおよびLbはそれぞれCIE測色系で測色したL値であり、数値が小さいほど濃色に着色していることを示す。
−20≦Lb−La≦60
【0036】
本発明においては、上記関係式を満足させるための方法としては、両繊維のそれぞれに含まれる着色剤の種類や量を適宜調節することにより可能である。(Lb−La)の値が上記式で規定する範囲を外れると最終的に得られる繊維製品の「着色品における染色湿潤堅牢度などの染色堅牢度および耐光堅牢度に相当する評価項目」が不良になる。このような評価項目はJIS L−0844 A−2法やAATCC II−A法もしくはJIS L 0842−88(紫外線カーボンアーク灯法)などの方法によって評価することができる。また、Lb−Laの値が60を超えると最終的に得られる繊維構造体又は繊維製品を伸張した際にいらつきが生じ、審美性、鮮明性が悪化する。本発明においては、(Lb−La)が−15〜45であることが好ましく、−10〜30であることがより好ましい。
【0037】
本発明の繊維構造体中の原着繊維A及び共重合ポリエステル原着繊維Bとの含有量は後者があまりに少なすぎると快適機能が不充分となり、逆に多すぎると耐熱性、耐光(候)性、耐薬品性などが悪化する傾向がある。そのため、繊維構造体の全重量を基準として、原着繊維Aの割合は好ましくは95〜15重量%であり、より好ましくは80〜30重量%であり、一方、共重合ポリエステル原着繊維Bの割合は好ましくは5〜85重量%、より好ましくは20〜70重量%である。なお、本発明の繊維構造物には、本発明の効果を阻害しない範囲、具体的には繊維構造体全重量を基準として好ましくは20重量%未満、より好ましくは10重量%未満、上記の原着繊維A及び共重合ポリエステル原着繊維B以外の繊維の繊維が含まれていてもよい。
【0038】
本発明の繊維構造体の1形態である混繊糸は、原着繊維Aと共重合ポリエステル原着繊維Bとを公知方法により混繊することができ、その際、インターレースノズルを用いた空気混繊が好ましく例示できる。
【0039】
また、原着繊維Aの糸条の走行中に、共重合ポリエステル原着繊維Bからなる糸条を走行させておき、原着繊維Aからなる糸条をオーバーフィードさせながら上記糸条に供給した後で両者を複合させる方法、原着繊維Aの伸度を共重合ポリエステル原着繊維Bの伸度よりも大きく設計し両者を混繊する方法、原着繊維Aの熱収縮率を共重合ポリエステル原着繊維Bの熱収縮率よりも小さく設計し両者を混繊した後これを熱処理する方法などにより、原着繊維Aが鞘部に、共重合ポリエステル原着繊維Bが芯部に配された複合糸を得ることができる。
【0040】
さらに、原着繊維Aと共重合ポリエステル原着繊維Bとを交織、交編する場合や、両原着繊維からなる乾式不織布、湿式不織布を製造する場合も、公知の方法を採用することができる。
【0041】
以上に説明した糸、織編物、不織布といった繊維構造体からは、同様に、吸湿性、清涼感・冷涼感、審美性、鮮明性、染色湿潤堅牢性、耐光堅牢性に優れた繊維製品を得ることができる。例えば、かかる繊維製品の具体例としては、次のようなものを挙げることができる。
【0042】
(1)衣料用途
ファッション用途としてシャツ、ブラウス、パンツ、ブルゾン、コート、和装品など、インナー・レッグ用途として肌着、ブラジャー、ガードル、ボディーファー、キャミソール、ショーツ、パンティーストッキング、ストッキング、靴下、ハイソックス、ショートソックスなど、スポーツ用途として競技用のゲームシャツやゲームパンツ(テニス、バスケット、卓球、バレーボール、陸上、ゴルフ、サッカー、ラグビーなど)、スェットスーツ、ウィンドブレーカー、アスレチックウェア、トレーニングウェア、ショーツ、水着、プールサイドウェア、アンダーウェア、タイツ、スパッツ、レオタード、レッグ衣料、ウェットスーツ、ドライスーツなど、寝衣用途、ユニフォーム用途、学生服用途、帽子、ショールなどの衣料付帯品、裏地、カップ、パッドなどの衣料資材、スポーツシューズなど
(2)インテリア・寝具用途
カーテン(ドレープカーテン、レースカーテン、シャワーカーテン、ロールカーテン、ブラインドなど)、カーペット、テーブルクロス、椅子張り、間仕切り、壁紙、寝装品(掛けふとん、敷き布団、布団用側地、布団用詰め物、毛布、毛布用側地、タオルケット、シーツなど)、スリッパ、マットなど
(3)自動車内装材用途
カーシート、カーマット、天井材、トリムなど
(4)産業資材用途
テント類(レジャー用、イベント用など)
【実施例】
【0043】
以下、実施例および比較例をあげて本発明を具体的に説明する、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の部および%はそれぞれ重量部および重量%を示す。
【0044】
(1)洗濯に対する染色堅牢度
AATCC II−A法により測定し、耐光堅牢度はJIS L 0842−88(紫外線カーボンアーク灯法)に従って行った。
(2)鮮明性(着色度LaおよびLb)
マクベス・カラーアイ(Macbeth COLOR―EYE)モデルM―2020PLを使用し、JISZ 8729−1980に規定された、国際照明委員会(CIE)推奨のL*a*b*系色表示により表される明度Lを測定した。LaおよびLbは数値が小さいほど濃色に着色していることを示した。
(3)審美性
100%伸長時のいらつきの程度を視感判定したものである(○:良、△:可、×:悪)。
(4)吸湿率
試料を所定の条件に調節した恒温恒湿室中に24時間調湿し、絶乾試料の重量と調湿試料の重量から次式により吸湿率を求めた。
吸湿率(%)=(調湿試料の重量−絶乾試料の重量)×100/絶乾試料の重量
(5)清涼感・冷涼感
繊維(延伸糸)を目付100g/mメリヤス編物とし、これを20℃、65%RH雰囲気下に一昼夜保持した後、手で触れたときに感じられる清涼感・冷涼感を官能検査で評価した。
【0045】
[参考例1〜3]
(共重合ポリエステル原着繊維Bの製造)
テレフタル酸ジメチル100部、エチレングリコール60部、酢酸カルシウム1水塩0.06部(テレフタル酸ジメチルに対して0.066モル%)及び整色剤として酢酸コバルト4水塩0.009部(テレフタル酸ジメチルに対して0.007モル%)をエステル交換缶に仕込み、窒素ガス雰囲気下4時間かけて140℃から220℃まで昇温して生成するメタノールを系外に留去しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応終了後、安定剤としてリン酸トリメチル0.058部(テレフタル酸ジメチルに対して0.080モル%)を加えた。次いで10分後に三酸化アンチモン0.04部(テレフタル酸ジメチルに対して0.027モル%)を添加し、同時に過剰のエチレングリコールを追出しながら240℃まで昇温した後重合缶に移した。
【0046】
重合缶に平均の分子量が2000(m=43)のポリオキシエチレングリコールメチル1,2−ジヒドロキシプロピルエーテル25部(共重合ボリエステルに対して19.2%)を添加した後、1時間かけて760mmHgから1mmHgまで減圧し、同時に1時間30分かけて240℃から280℃まで昇温した。1mmHg以下の減圧下、重合温度280℃で更に2時間重合した時点で酸化防止剤としてイルガノックス1010(チバガイギー社製)0.8部を真空添加し、その後更に30分間重合した。得られた共重合ポリエステルを常法に従ってチップ化した。
【0047】
このチップとフタロシアニンブルー顔料を用いた液状着色剤とを用いて紡糸を行った。液状着色剤としては、アジピン酸をジカルボン酸成分とし、ジエチレングリコールをジオール成分とする、室温で液状のポリエステル90部とフタロシアニンブルー顔料10部とからなり、20℃における粘度が1000ポイズである青色液状着色剤を使用した。溶融温度285℃で溶融された共重合ポリエステル19部に対して上記青色着色剤1部を添加し、孔径0.3mmの円形紡糸孔を24個穿設した紡糸口金を使用して285℃で溶融紡糸し、次いで得られた未延伸糸を、最終的に得られる延伸糸の伸度が30%になるような延伸倍率にて84℃の加熱ローラーと160℃のスリットヒーターを使って延伸熱処理して84デシテックス/24フィラメントの青色原着繊維からなる延伸糸(以下青色原着糸と称する)を得た。
【0048】
得られた延伸糸の20℃65%での吸湿率は2.0%、RH30℃90%RHでの吸湿率は4.5%、前記二つの条件での吸湿率の差が2.5%であり、着色度Lbは23.6、沸水収縮率は25%であった。(参考例1)
【0049】
液状着色剤の添加量を変える以外は上記参考例1と同様に行って、84デシテックス/24フィラメントで、20℃65%での吸湿率1.8%、RH30℃90%RHでの吸湿率4.8%、前記二つの条件での吸湿率の差は3.0%であり、着色度Lbは37.1、沸水収縮率は24%である共重合ポリエステル青色原着糸(参考例2)および84デシテックス/24フィラメントで、20℃65%での吸湿率1.9%、RH30℃90%RHでの吸湿率5.0%、前記二つの条件での吸湿率の差が3.1%であり、着色度Lbは82.6、沸水収縮率は25%である共重合ポリエステル青色原着糸(参考例3)を得た。
【0050】
[参考例4〜6]
(ポリエチレンテレフタレート原着繊維Aの製造)
ベースポリマーとして極限粘度IV値0.64、二酸化チタン含有量0.07%のポリエチレンテレフタレートを用いて、青色のマスターチップ(フタロシアニンブルー顔料20重量%)を用いて紡糸し、ブレンド比率は、ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)19部に対し、マスターチップ1部を添加し、溶融前に混合器に入れブレンドした後、紡糸温度285℃、紡糸速度1050m/分で捲き取り、次いで80℃の加熱ローラーと180℃のスリットヒーターを使って3.6倍に延伸熱処理して84デシテックス/24フィラメントで、着色度Laが18.0、沸水収縮率が8.0%である青色原着糸を得た(参考例4)。
【0051】
青色マスターバッチの添加量を変える以外は上記参考例4と同様に行って、84デシテックス/24フィラメントで、着色度Laが26.2、沸水収縮率が8.1%である青色原着糸(参考例5)および84デシテックス/24フィラメントで、着色度Laが54.3、沸水収縮率が8.2%である青色原着糸(参考例6)を得た。
【0052】
[実施例1〜7および比較例1〜2]
上記参考例1〜3で作製した共重合ポリエステル原着繊維Bと上記参考例4〜6で作製したポリエチレンテレフタレート原着糸A(PET原着繊維と略称)との2種類の繊維を用いて常法に従い、混繊割合1対1の混繊糸を作成した。水準数としては、共重合ポリエステル原着繊維Bの3水準と、PET原着糸Aの3水準すべての組合せについて実施した(3×3=9水準)。
【0053】
得られた混繊糸から常法に従って平織物を作成し、得られた平織物について20℃65%での吸湿率A、RH30℃90%RHでの吸湿率B、前記二つの条件での吸湿率の差を測定した。また、これらの平織物の洗濯に対する染色堅牢度および耐光堅牢度並びに審美性を評価した。
【0054】
結果は表1に示す通りである。実施例の平織物が高吸放湿性を示すとともに、審美性に優れ、染色堅牢度、耐光堅牢度が実用に充分耐えるものであったのに対し、比較例では吸放湿性は満足できるものであったが、審美性と洗濯に対する染色堅牢度および耐光堅牢度が不良であった。
【0055】
【表1】

【0056】
[実施例8]
実施例1〜3で得られた平織物を用いて、被験者のサイズに合わせてブラウスをそれぞれ作製した。いずれのブラウスも審美性に優れたものであった。また、着用快適性、耐久性の評価を行ったところ、いずれも、ムレ感、ベトツキが少なく非常に快適であり、かつ洗濯時の色落ちや汚染もなく耐久性も良好であった。
【0057】
[実施例9]
上記参考例1で作製した共重合ポリエステル原着繊維Bと上記参考例4で作製したPET原着繊維Aとの2種類の繊維を用いて、共重合ポリエステル原着繊維Bを2つのローラ間で走行させ、該走行中の糸条にPET原着繊維Aをオーバーフィード率1.2倍でフィードローラを介して供給し、さらに空気混繊して、PET原着繊維Aを鞘部、共重合ポリエステル原着繊維Bを芯部(複合割合1対1)とする複合糸を作成した。
【0058】
得られた複合糸を用いて実施例1と同様にして平織物を作成した。この平織物の20℃65%での吸湿率Aは2.8%、RH30℃90%RHでの吸湿率Bは1.2%、前記二つの条件での吸湿率の差は1.6%であった。また、この平織物の洗濯に対する染色堅牢度は5、耐光堅牢度は5、審美性は○であり、いずれも実施例1〜7より優れていた。
さらに、この平織物を用いて作成したブラウスはムレ感、ベトツキが極めて少なく、洗濯時の色落ちや汚染もなく耐久性も極めて良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の原着繊維からなる繊維構造体は、高い吸湿性を有するだけでなく審美性と染色湿潤堅牢性や耐光堅牢性にも優れているため、該繊維構造体を用いた繊維製品は特にスポーツ用途やインナー用途などの衣料用途において従来にない快適機能やファッション性を発揮できる。また、衣料用途のみならず、室内の環境湿度などを低く保つ効果にも優れるため、インテリア・寝具用途や自動車内装材用途、テントなどの産業資材用途においても極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原着繊維Aと、共重合ポリエステル原着繊維Bとからなる繊維構造体であって、該共重合ポリエステル原着繊維Bを構成する共重合ポリエステルが、ポリエーテル成分が側鎖に共重合されたポリエステルであり、該原着繊維Aの着色度Laと該共重合ポリエステル原着繊維Bの着色度Lbとが下記式を満足していることを特徴とする、原着繊維からなる繊維構造体。
−20≦Lb−La≦60
【請求項2】
共重合ポリエステル原着繊維Bを構成する共重合ポリエステルが、下記一般式(1)で表わされるジオール化合物及び/又は下記一般式(2)で表わされるエポキシ化合物が共重合されたポリエステルである、請求項1記載の原着繊維からなる繊維構造体。
【化1】

(式中、Rは炭化水素基、R’はアルキレン基、n1は重合度を示す正の整数である)
【化2】

(式中、Rは炭化水素基、R’はアルキレン基、n2は重合度を示す正の整数である)
【請求項3】
ジオール化合物及び/又はエポキシ化合物の共重合量が、共重合ポリエステルに対して10〜40重量%である、請求項2に記載の原着繊維からなる繊維構造体。
【請求項4】
原着繊維Aが、ポリエステル原着繊維、ナイロン原着繊維、アクリル原着繊維、ポリオレフィン原着繊維、アラミド原着繊維、アセテート原着繊維、レーヨン原着繊維、ビニロン原着繊維およびポリ塩化ビニル原着繊維よりなる群から選ばれた少なくとも一種である、請求項1〜3いずれか1項に記載の原着繊維からなる繊維構造体。
【請求項5】
繊維構造体の全重量を基準として、原着繊維Aの割合が95〜15重量%であり、共重合ポリエステル原着繊維Bの割合が5〜85重量%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の原着繊維からなる繊維構造体。
【請求項6】
繊維構造体が、原着繊維Aと、共重合ポリエステル原着繊維Bとからなる混繊糸である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の原着繊維からなる繊維構造体。
【請求項7】
繊維構造体が、原着繊維Aを鞘部に、共重合ポリエステル原着繊維Bを芯部に配した複合糸または加工糸である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の原着繊維からなる繊維構造体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の繊維構造体を用いた繊維製品。

【公開番号】特開2007−126799(P2007−126799A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323361(P2005−323361)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】