原稿圧着板開閉装置並びに事務機器
【課題】 1本足状の取付部材を用いたものにおいて、筐体を開いた際に一緒に原稿圧着板が開かないようにし、さらに、取付部材が抜け出ないようにした、原稿圧着板開閉装置を提供する。
【解決手段】 事務機器の装置本体に対して上下方向へ開閉可能に取り付けられる筐体側に設けた取付孔へ上下方向へ移動可能に取り付けられる脚部と、この脚部の上部側にヒンジピンを介して回動可能に取り付けられ原稿圧着板を開閉可能に支持するケース状の支持部材と、この支持部材と前記脚部の間に設けられた弾性手段と、前記支持部材の回動を制御するために前記脚部と前記支持部材の間に設けられたカム機構と、前記脚部と支持部材の間に設けられ、前記筐体が開かれた時に前記原稿圧着板の開成動作に向けての前記支持部材の回動を自動的に防止する回動防止手段とで構成することにより、前記の課題を解決した。
【解決手段】 事務機器の装置本体に対して上下方向へ開閉可能に取り付けられる筐体側に設けた取付孔へ上下方向へ移動可能に取り付けられる脚部と、この脚部の上部側にヒンジピンを介して回動可能に取り付けられ原稿圧着板を開閉可能に支持するケース状の支持部材と、この支持部材と前記脚部の間に設けられた弾性手段と、前記支持部材の回動を制御するために前記脚部と前記支持部材の間に設けられたカム機構と、前記脚部と支持部材の間に設けられ、前記筐体が開かれた時に前記原稿圧着板の開成動作に向けての前記支持部材の回動を自動的に防止する回動防止手段とで構成することにより、前記の課題を解決した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機能とプリンター、ファクシミリ、或はスキャナー等の各機能とを合わせ持つ、所謂複合機と称せられる事務機器に用いて好適な原稿圧着板開閉装置並びにこの原稿圧着板開閉装置を用いた事務機器に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した複合機と称せられる事務機器は、例えば保守、点検、或は修理のために、装置本体と例えばスキャナー部を構成する筐体が上下方向へワニ口形に開閉可能となるように構成されている。そして、筐体には原稿をコンタクトガラス上に圧着させるための原稿圧着板が原稿圧着板開閉装置を介して開閉可能に取り付けられており、この原稿圧着板には自動原稿送り装置(一般にADF(Automatic Document Feeder)と称せられている。)付きのものが広く用いられており、かなりの重量を有している。
【0003】
この原稿圧着板開閉装置は、例えば複写したり読み取ったりする原稿が本のように厚い厚物原稿の場合に対処するために、リフト機能を有するものが用いられており、このリフト機能を発揮させるため構成として、通称1本足ヒンジと称せられる、取付部材を1本足状に構成し、この取付部材に原稿圧着板を支持する支持部材を回動可能に取り付け、さらに支持部材を原稿圧着板の開成方向へ付勢させる弾性手段を作用させたカム機構を設けると共に、前記1本足状の取付部材を筐体(或は装置本体)の後部上面に設けた取付孔へ上下方向へ移動可能に取り付けるようにしたものが知られている。
【0004】
このような構成の原稿圧着板開閉装置を、上述した複合機と称せられる事務機器に用いた場合、保守、点検、及び修理等のために筐体を装置本体に対して開くと重量のある原稿自動送り装置付きの原稿圧着板が一緒に開いてしまい、不安定となって事務機器が倒れてしまう恐れがあった。そこで、この問題点を解決するために、筐体を開く際に、原稿圧着板を閉成方向へ移動させる移動機構を設けたものが公知である。
【特許文献1】特開2008−209626号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような移動機構は、原稿圧着板開閉装置とは別に設けられるために、部品点数が多く構成が複雑となって、製作コストが高くつくことから、もっと構造が簡単で製作コストが高くならない構成で、筐体の開成時に原稿圧着板開閉装置の開成動作を規制し開かないようにし、また、脚部が抜け出てしまわないようにしたものが求められている。
【0006】
この発明の目的は、原稿圧着板開閉装置を1本足状の取付部材としたものにおいて、原稿圧着板開閉装置自体に、筐体を開いた際に一緒に原稿圧着板が開かないようにし、及び又は1本足状の取付部材が抜け出ないようにした、原稿圧着板開閉装置を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、複合機と称せられる事務機器に用いられる原稿圧着板開閉装置であって、この原稿圧着板開閉装置を、前記事務機器の装置本体に対して上下方向へ開閉可能に取り付けられる筐体側に設けた取付孔へ上下方向へ移動可能に取り付けられる取付部材を兼ねるケース状の脚部と、この脚部の上部側にヒンジピンを介して回動可能に取り付けられ原稿圧着板を開閉可能に支持するケース状の支持部材と、この支持部材と前記脚部の間に当該支持部材を前記原稿圧着板の開成方向へ付勢するために設けられた弾性手段と、前記支持部材の回動を制御するために前記脚部と前記支持部材の間に設けられると共に前記弾性手段を作用させたカム機構と、前記脚部と支持部材の間に設けられ、前記筐体が開かれた時に前記原稿圧着板の開成動作に向けての前記支持部材の回動を自動的に防止する回動防止手段とで構成したことを特徴とする。
【0008】
この発明はまた、複合機と称せられる事務機器に用いられる原稿圧着板開閉装置であって、この原稿圧着板開閉装置を、前記事務機器の装置本体に対して上下方向へ開閉可能に取り付けられる筐体側に設けた取付孔へ上下方向へ移動可能に取り付けられる取付部材を兼ねるケース状の脚部と、この脚部の上部側にヒンジピンを介して回動可能に取り付けられ原稿圧着板を開閉可能に支持するケース状の支持部材と、この支持部材と前記脚部の間に当該支持部材を前記原稿圧着板の開成方向へ付勢するために設けられた弾性手段と、前記支持部材の回動を制御するために前記脚部と前記支持部材の間に設けられると共に前記弾性手段を作用させたカム機構と、前記脚部に設けられ、前記筐体が開かれた時に前記脚部の前記取付孔からの抜けを自動的に防止する抜け出し防止手段とで構成したことを特徴とする。
【0009】
この発明はさらに、複合機と称せられる事務機器に用いられる原稿圧着板開閉装置であって、この原稿圧着板開閉装置を、前記事務機器の装置本体に対して上下方向へ開閉可能に取り付けられる筐体側に設けた取付孔へ上下方向へ移動可能に取り付けられる取付部材を兼ねるケース状の脚部と、この脚部の上部側にヒンジピンを介して回動可能に取り付けられ原稿圧着板を開閉可能に支持するケース状の支持部材と、この支持部材と前記脚部の間に当該支持部材を前記原稿圧着板の開成方向へ付勢するために設けられた弾性手段と、前記支持部材の回動を制御するために前記脚部と前記支持部材の間に設けられると共に前記弾性手段を作用させたカム機構と、前記脚部と前記支持部材との間に設けられ、前記筐体が開かれた時に前記原稿圧着板の開成動作に向けての前記支持部材の回動を自動的に防止する回動防止手段と、前記脚部に設けられ、前記筐体が開かれた時に脚部の前記取付孔からの抜けを自動的に防止する抜け出し防止手段と、で構成したことを特徴とする。
【0010】
以上いずれの場合にも、前記支持部材の回動防止手段は、前記筐体の開成時における傾動時に揺動して、自動的に前記支持部材或は脚部と係合する、第1揺動部材を有するように構成することが好ましい。
【0011】
また、前記脚部の抜け出し防止手段は、前記筐体の開成時における傾動時に揺動して自動的に前記取付孔に設けた係合部と係合する第2揺動部材を有するように構成することが好ましい。
【0012】
さらに、本発明においては、前記第1揺動部材と第2揺動部材を自動的に揺動させるに当り、前記第1揺動部材及び又は前記第2揺動部材の回動支点を超えた側に当接して、前記脚部の傾動時に前記第1揺動部材及び又は前記第2揺動部材を回動させる押圧部材を設けることもできる。
【0013】
そして、本発明は、上記原稿圧着板開閉装置を用いた事務機器として捉えることもできる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係る原稿圧着板開閉装置及び事務機器によれば、複合機と称せられる複写機などの事務機器の装置本体に対して、他の例えばスキャナーなどの機能を持つ筐体を上下方向へ開閉可能に取り付け、この筐体に対して原稿自動送り装置付きの重量のある原稿圧着板を、同じく上下方向へ開閉可能に取り付けたものにおいて、装置本体側の内部機構を保守、点検、修理等をする際に、筐体を開いても、支持部材の回動防止手段によって原稿圧着板が開いてしまったり、或は脚部の抜け出し防止手段によって原稿圧着板が筐体より外れてしまったりすることがないので、安全に保守、修理、点検作業を行うことができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1乃至図2において、指示記号Aで模式的に示したものは、通称複合機と称される事務機器である。この事務機器Aは、装置本体Bとこの装置本体Bの上面にヒンジ装置Cを介してワニ口形に上下方向へ開閉可能となるように取り付けられた例えばスキャナー部から成る筐体Dと、この筐体Dの上面に原稿圧着板開閉装置Eを介して同じくワニ口形に上下方向へ開閉可能となるように取り付けられた、自動原稿送り装置付きの原稿圧着板Fとで構成されている。
【0017】
尚、図面では装置本体Bと例えばスキャナーの機能を有するスキャナー部から成る筐体Dから成る事務機器Aとして示してあるが、装置本体Bに組み合わせる機器としては、他にもプリンター部、及びファクシミリ部等があり、装置本体Bはスキャナー部以外にこれらのプリンター部やファクシミリ部から成る筐体Dと組み合わせても良い。
【0018】
ヒンジ装置Cの構成はとくに限定されず、通常の蝶番と称せられるヒンジを始め、各種の公知構成のヒンジ装置を用いることができ、好ましくは筐体Dを所定の開成角度以上に開かないようにするストッパーと、筐体Dが急激に閉じないようにする弾性手段を有するものが好ましい。
【0019】
本発明に係る原稿圧着板開閉装置Eは、図示してないが、通常適宜間隔を空けて、同一構成のもの、或は他の構成のものと組み合わせた一対用いられる。以下の説明ではそのうちの1個のものについて、その構成を説明する。
【0020】
図3乃至図10において、指示記号1で示したものは取付部材を兼ねる脚部であり、この脚部1は、筐体Dの後部上面に上下方向に設けた平面略矩形状の取付孔2に対し、上下方向へ移動可能に挿入して固定されている。
【0021】
脚部1は、横断面略矩形状を呈したケース状のもので、底板1aと、この底板1aの両側より立ち上げた両側板1b、1bと、この両側板1b、1bの上部に形成された固定カム部1cとで構成された、例えばPOMのような合成樹脂の成型品であるが、このものに限定されない。プレス加工品であっても良い。この脚部1の固定カム部1cのカム部両側板1d、1dには、ヒンジピン3を介して、支持部材4がその両側板4a、4aを回動可能に軸支させている。
【0022】
この支持部材4は、両側板4a、4aをその両側部より垂下させた上板4bと、この上板4bの一端部より垂下させた閉塞板4cとから成る例えばSUSのような金属板をプレス加工して作ったケース状のもので、両側板4a、4aの下端側には、これを内側に折り曲げて抱持部4d、4dが設けられると共に、この抱持部4d、4dより若干上方に位置して、両側板4a、4aの一部を切り取って外側へ折り曲げることによって作った取付板4e、4eが設けられている。閉塞板4cは、両側板4a、4aの端部を内側へ折り曲げた補強部4f、4fにより内側から押圧力が加わっても外側へ開いてしまうのを防止されている。尚、この支持部材4は合成樹脂の成型品としても良い。
【0023】
支持部材4の両側板4a、4aと上板4bとで囲まれたケース状の部分に摺動可能に収装されているのは、一端閉塞の筒状を呈したカムスライダー5であり、このカムスライダー5は、その下部両側を抱持部4d、4dで抱えられることにより、支持部材4の下側へ落下してしまわないように工夫されている。
【0024】
尚、この支持部材4は、これをPOMのような合成樹脂の成型品とすることもでき、この場合には、抱持部4d、4dの部分をつなげて、全体として、角筒状のものとすることができる。
【0025】
カムスライダー5と支持部材4の閉塞板4cとの間には、例えばコンプレッションスプリングのような弾性手段6が弾設され、カムスライダー5のカム部5aを固定カム部1cのカム部1j側へ摺動付勢させている。カムスライダー5と固定カム部1cは、カム機構Jを構成し、弾性手段6により互いのカム部5aと1jを圧接させている。
【0026】
筐体Dを保守、点検、及び修理等の際にワニ口形に上下方向へ開いて傾倒させた場合、原稿圧着板開閉装置Eが一緒に開いてしまわないようにする支持部材4の回動防止手段Gは、支持部材4の両側板4a、4aに第1支持ピン7によって揺動可能に吊設された第1揺動部材9と、この第1揺動部材9によって、筐体Dの開成時に係合される第1係合部材10とで構成されており、第1係合部材10は、脚部1の両側板1b、1bの内側に固定ピン11によって、水平方向に取り付けられている。第1揺動部材9と第1係合部材10は、共にSUSのような金属板をプレス加工によって折り曲げて作ったもので、それぞれ左右一対のプレート部9a、9a・10a、10aを連結板9b、10bによって連結平面略コの字形状とU字形状とを呈するように形成されている。第1揺動部材9の各プレート部9a、9aの下端部側には、それぞれ係止部9cが設けられ、第1係合部材10の連結板10bが同時に係合部を構成している。第1係合部材10は、その一端部を脚部1内部に形成させた段部1eと係合させることにより、連結板10bの側が下側へ垂れ下がってしまうことを防止されている。さらに、固定カム部1cのカム部両側板1d、1dには、第1支持ピン7を逃がすための円弧状のガイド長孔1f、1fが設けられている。尚、第1係合部材10は、脚部1に一体的に設けられていても良い。
【0027】
筐体Dが保守、点検、及び修理等のために開かれて傾倒した際に、原稿圧着板開閉装置Eの脚部1が自然に取付孔2より抜け出てしまわないように防止する抜け出し防止手段Hは、脚部1の両側板1b、1bの下方に、第2支持ピン12によって揺動可能に支持された第2揺動部材13と取付孔2の下端部側一側に形成させた係合凹部2aとからなり、第2揺動部材13は、SUSのような金属プレートをプレス加工することによって構成した一対のプレート部13a、13aを連結板13bで連結した略コの字形状のもので、プレート部13a、13aは、脚部1の閉塞板1gに設けた挿通孔1hを介して、外側へ突出する構成となっている。この第2揺動部材13は、第2支持ピン12によって重心をずらせて取り付けられることにより、通常時は係止部13c、13cを脚部1内へ引っ込ませている。
【0028】
したがって、本発明に係る原稿圧着板開閉装置Eは、前記支持部材4の取付板4e、4eを原稿圧着板Fの後端部側に取り付け、その脚部1を筐体Dの後部上面に設けた取付孔2へ挿入させると事務機器Aに対する組み付けが完了する。
【0029】
図11に示したように、原稿圧着板Fを筐体Dに対して閉じた状態から原稿圧着板Fを開くと、カムスライダー5のカム部5aの傾斜部5bが凸状を呈した固定カム部1cのカム部1jの表面を滑りつつ、弾性手段6によって、原稿圧着板Fを開く方向へスライド付勢されることから、原稿圧着板Fは、その本来の重量を感じさせることなく、開かれることになる。
【0030】
開かれた原稿圧着板Fは、略30°〜40°の開成角度において、原稿圧着板Fの重量が、弾性手段6の弾力と、図示していないもう一方の原稿圧着板開閉装置の弾性手段の弾力を合わせたものとバランスするので、原稿圧着板Fより手を離しても、自然落下することなく、また自動的に開いてしまうことなく停止保持される。
【0031】
したがって、通常の複写或いは読み取り時は、この開成角度において行われ、原稿を図示してないコンタクトガラス上へ載置して、原稿圧着板Fを閉じると、弾性手段6が圧縮される際の弾力に抗して閉じることになるので、原稿圧着板Fが急速に落下することはない。
【0032】
原稿圧着板Fが所定の開成角度5°位まで閉じられると、固定カム部1cが、カムスライダー5のカム部5aの平坦部5cに達することと、弾性手段6の作用線がヒンジピン3の軸芯部より下方に位置することになることから、自動的に閉じられ、この閉成状態において安定的に停止保持され、手を離しても原稿圧着板Fの浮き現象は生じないように工夫されている。
【0033】
原稿圧着板Fの最大開成角度は、第1支持ピン7がガイド長孔1f、1fの上端部に達することによって規制され、実施例では隆起部1kに当接する約70°であるが、この全開成角度に至る前に、図12に示したように、カムスライダー5の傾斜部5bが固定カム部1cの上側の傾斜部1iと当接することにより、ブレーキ作用が働き、停止しても自然に閉成方向へ閉じてしまうことなく安定停止するので、図示してないコンタクトガラスを外して筐体D内部の保守点検作業を容易とするものである。
【0034】
以上の原稿圧着板Fの開閉操作時においては、図11と図12に示したように、第1揺動部材9は第1支持ピン7を介して上下方向へ移動するが、その係止部9cは第1係合部材10の連結板10bと係合することなく、支持部材4の回動を許容する。
【0035】
次に、図13に示したように、原稿が本のように厚い厚物原稿の場合には、この厚物原稿Iを図示してない筐体Dの図示してないコンタクトガラス上へ載置して原稿圧着板Fを閉じると、当該原稿圧着板Fが厚物原稿Iの端部に当接する。この状態からさらに原稿圧着板Fを閉じる方向へ力を加えると、原稿圧着板開閉装置Eの脚部1が取付孔2より上方へ抜け出ることにより、原稿圧着板Fの回転を許容するので、原稿圧着板は図13に示したように回転して厚物原稿Iの上面を水平に覆うことにより、露光を外部へ漏らすことを可及的に防止して露光漏れにより生ずる複写ミスを防止することができるものである。
【0036】
以上の厚物原稿Iの複写時や読み取り時において、脚部1が取付孔2内を上下方向へ移動しても、第2揺動部材13の係止部13cは、脚部1に設けた挿通孔1hより外へ突出することがないので、脚部1の上下方向の移動に支障は生じない。
【0037】
厚物原稿Iの複写が終わり、原稿圧着板Fを開成方向に開けて、厚物原稿Iを図示してないコンタクトガラス上より取り去ると、原稿圧着板Fの重量により、脚部1は取付孔2内へ収納されて元の状態に戻ることになる。
【0038】
次に、筐体Dを装置本体Bに対して開いて装置本体Bの内部の保守、点検、及び修理等を行う場合の支持部材4の回動防止手段Gと抜け出し防止手段Hの機能について説明する。筐体Dを図2に示したように装置本体Bに対してワニ口形に開くと、原稿圧着板開閉装置Eは筐体Dと共に同一方向へ傾斜する。するとまず、回動防止手段Gを構成する第1揺動部材9が脚部1の傾斜方向と逆の方向へ揺動することにより、第1揺動部材9の係止部9cが、図14に示したように、第1係合部材10の連結板9bと係合することにより、支持部材4の回動が阻止されるので、原稿圧着板Fが自然に開いてしまうことが防止される。
【0039】
次に、脚部1の抜け出し防止手段Hにおいて、脚部1が筐体Dの開成操作に伴い、図14に示したように傾斜すると、第2揺動部材13が第2支持ピン12を介して揺動し、その係止部13cを取付孔2側へ突出させるので、この取付孔2に設けた係合凹部2aと係止部13cが係合することにより、脚部1の取付孔2からの抜け出しを阻止することができるものである。
【0040】
したがって、筐体Dを装置本体Bの保守、点検、及び修理等のために開いても、重量のある原稿圧着板Fが開いてしまうことを阻止できるので、装置本体Bが不安定となってしまうことがなく、装置本体Bの保守、点検、及び修理等を安全に行うことができるものである。
【0041】
筐体Dを元の状態に戻すと、回動防止手段Gと抜け出し防止手段Hの各第1揺動部材9と第2揺動部材13が自動的に元位置に戻るので、原稿圧着板開閉装置Eの機能に支障が生ずることなく、原稿圧着板Fの開閉操作を行うことができるものである。
【実施例2】
【0042】
図15と図16は、回動防止手段と抜け出し防止手段の他の実施例を示す。図面によれば、この第2実施例に示した回動防止手段Kと抜け出し防止手段Lは、脚部15内に第1揺動部材16と第2揺動部材17を、当該脚部15の傾斜に伴って移動することにより揺動させる押圧部材18を設けた点で、先の第1実施例の回動防止手段Gと抜け出し防止手段Hと相違するのみで、他の構成は同じであるので、説明を省略する。また、指示記号の同じものは同じ部材を表している。
【0043】
図面によれば、脚部15内部には、両側板15a、15a(一方のみ表示)に設けたレール部15b、15bの間に移動可能に支持された例えば金属製丸棒から成る押圧部材18で、脚部15の傾動に伴いレール部15b、15b(一方のみ表示)を当該脚部15の傾斜方向へ移動して、第1揺動部材16と第2揺動部材17を強制的に揺動させるもので、より確実に第1揺動部材16と第2揺動部材17を揺動させて支持部材4の回動と、脚部15の抜け出しを阻止することができる利点がある。
【0044】
尚、押圧部材18は、第2揺動部材17の傾斜端面17a上に乗っているが、必ずしもこのように実施する必要はない。
【0045】
また、押圧部材18で第1揺動部材16と第2揺動部材17のいずれか一方のみを押圧するように構成することは任意である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上詳細に説明したように、複数の機能を持つ複合機と称せられる事務機器において、各機能に応じた各筐体を装置本体に対して開閉可能としたものに用いて好適な原稿圧着板開閉装置である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る原稿圧着板開閉装置を用いた事務機器を模式的に示す説明図である。
【図2】図1に示した事務機器の動作を説明する説明図である。
【図3】本発明に係る原稿圧着板開閉装置の斜視図である。
【図4】図3に示した原稿圧着板開閉装置の正面図である。
【図5】図3に示した原稿圧着板開閉装置の右側面図である。
【図6】図3に示した原稿圧着板開閉装置の左側面図である。
【図7】図3に示した原稿圧着板開閉装置の平面図である。
【図8】図3に示した原稿圧着板開閉装置の底面図である。
【図9】本発明に係る原稿圧着板開閉装置を事務機器へ組み込んだ状態における縦断面図である。
【図10】本発明に係る原稿圧着板開閉装置のカム機構を説明するための説明図である。
【図11】本発明に係る原稿圧着板開閉装置の動作を説明するための説明図である。
【図12】本発明に係る原稿圧着板開閉装置の動作を説明するための説明図である。
【図13】本発明に係る原稿圧着板開閉装置の動作を説明するための説明図である。
【図14】本発明に係る原稿圧着板開閉装置の回動防止手段と抜け出し防止手段の動作を説明する説明図である。
【図15】本発明に係る原稿圧着板開閉装置の回動防止手段と抜け出し防止手段の他の実施例を示す説明図である。
【図16】図15に示した回動防止手段を抜け出し防止手段の動作を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0048】
A 事務機器
B 装置本体
D 筐体
E 原稿圧着板開閉装置
F 原稿圧着板
G、K 回動防止手段
H、L 抜け出し防止手段
J カム機構
1、15 脚部
2 取付孔
3 ヒンジピン
4 支持部材
6 弾性手段
9、16 第1揺動部材
13、17 第2揺動部材
18 押圧部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機能とプリンター、ファクシミリ、或はスキャナー等の各機能とを合わせ持つ、所謂複合機と称せられる事務機器に用いて好適な原稿圧着板開閉装置並びにこの原稿圧着板開閉装置を用いた事務機器に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した複合機と称せられる事務機器は、例えば保守、点検、或は修理のために、装置本体と例えばスキャナー部を構成する筐体が上下方向へワニ口形に開閉可能となるように構成されている。そして、筐体には原稿をコンタクトガラス上に圧着させるための原稿圧着板が原稿圧着板開閉装置を介して開閉可能に取り付けられており、この原稿圧着板には自動原稿送り装置(一般にADF(Automatic Document Feeder)と称せられている。)付きのものが広く用いられており、かなりの重量を有している。
【0003】
この原稿圧着板開閉装置は、例えば複写したり読み取ったりする原稿が本のように厚い厚物原稿の場合に対処するために、リフト機能を有するものが用いられており、このリフト機能を発揮させるため構成として、通称1本足ヒンジと称せられる、取付部材を1本足状に構成し、この取付部材に原稿圧着板を支持する支持部材を回動可能に取り付け、さらに支持部材を原稿圧着板の開成方向へ付勢させる弾性手段を作用させたカム機構を設けると共に、前記1本足状の取付部材を筐体(或は装置本体)の後部上面に設けた取付孔へ上下方向へ移動可能に取り付けるようにしたものが知られている。
【0004】
このような構成の原稿圧着板開閉装置を、上述した複合機と称せられる事務機器に用いた場合、保守、点検、及び修理等のために筐体を装置本体に対して開くと重量のある原稿自動送り装置付きの原稿圧着板が一緒に開いてしまい、不安定となって事務機器が倒れてしまう恐れがあった。そこで、この問題点を解決するために、筐体を開く際に、原稿圧着板を閉成方向へ移動させる移動機構を設けたものが公知である。
【特許文献1】特開2008−209626号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような移動機構は、原稿圧着板開閉装置とは別に設けられるために、部品点数が多く構成が複雑となって、製作コストが高くつくことから、もっと構造が簡単で製作コストが高くならない構成で、筐体の開成時に原稿圧着板開閉装置の開成動作を規制し開かないようにし、また、脚部が抜け出てしまわないようにしたものが求められている。
【0006】
この発明の目的は、原稿圧着板開閉装置を1本足状の取付部材としたものにおいて、原稿圧着板開閉装置自体に、筐体を開いた際に一緒に原稿圧着板が開かないようにし、及び又は1本足状の取付部材が抜け出ないようにした、原稿圧着板開閉装置を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、複合機と称せられる事務機器に用いられる原稿圧着板開閉装置であって、この原稿圧着板開閉装置を、前記事務機器の装置本体に対して上下方向へ開閉可能に取り付けられる筐体側に設けた取付孔へ上下方向へ移動可能に取り付けられる取付部材を兼ねるケース状の脚部と、この脚部の上部側にヒンジピンを介して回動可能に取り付けられ原稿圧着板を開閉可能に支持するケース状の支持部材と、この支持部材と前記脚部の間に当該支持部材を前記原稿圧着板の開成方向へ付勢するために設けられた弾性手段と、前記支持部材の回動を制御するために前記脚部と前記支持部材の間に設けられると共に前記弾性手段を作用させたカム機構と、前記脚部と支持部材の間に設けられ、前記筐体が開かれた時に前記原稿圧着板の開成動作に向けての前記支持部材の回動を自動的に防止する回動防止手段とで構成したことを特徴とする。
【0008】
この発明はまた、複合機と称せられる事務機器に用いられる原稿圧着板開閉装置であって、この原稿圧着板開閉装置を、前記事務機器の装置本体に対して上下方向へ開閉可能に取り付けられる筐体側に設けた取付孔へ上下方向へ移動可能に取り付けられる取付部材を兼ねるケース状の脚部と、この脚部の上部側にヒンジピンを介して回動可能に取り付けられ原稿圧着板を開閉可能に支持するケース状の支持部材と、この支持部材と前記脚部の間に当該支持部材を前記原稿圧着板の開成方向へ付勢するために設けられた弾性手段と、前記支持部材の回動を制御するために前記脚部と前記支持部材の間に設けられると共に前記弾性手段を作用させたカム機構と、前記脚部に設けられ、前記筐体が開かれた時に前記脚部の前記取付孔からの抜けを自動的に防止する抜け出し防止手段とで構成したことを特徴とする。
【0009】
この発明はさらに、複合機と称せられる事務機器に用いられる原稿圧着板開閉装置であって、この原稿圧着板開閉装置を、前記事務機器の装置本体に対して上下方向へ開閉可能に取り付けられる筐体側に設けた取付孔へ上下方向へ移動可能に取り付けられる取付部材を兼ねるケース状の脚部と、この脚部の上部側にヒンジピンを介して回動可能に取り付けられ原稿圧着板を開閉可能に支持するケース状の支持部材と、この支持部材と前記脚部の間に当該支持部材を前記原稿圧着板の開成方向へ付勢するために設けられた弾性手段と、前記支持部材の回動を制御するために前記脚部と前記支持部材の間に設けられると共に前記弾性手段を作用させたカム機構と、前記脚部と前記支持部材との間に設けられ、前記筐体が開かれた時に前記原稿圧着板の開成動作に向けての前記支持部材の回動を自動的に防止する回動防止手段と、前記脚部に設けられ、前記筐体が開かれた時に脚部の前記取付孔からの抜けを自動的に防止する抜け出し防止手段と、で構成したことを特徴とする。
【0010】
以上いずれの場合にも、前記支持部材の回動防止手段は、前記筐体の開成時における傾動時に揺動して、自動的に前記支持部材或は脚部と係合する、第1揺動部材を有するように構成することが好ましい。
【0011】
また、前記脚部の抜け出し防止手段は、前記筐体の開成時における傾動時に揺動して自動的に前記取付孔に設けた係合部と係合する第2揺動部材を有するように構成することが好ましい。
【0012】
さらに、本発明においては、前記第1揺動部材と第2揺動部材を自動的に揺動させるに当り、前記第1揺動部材及び又は前記第2揺動部材の回動支点を超えた側に当接して、前記脚部の傾動時に前記第1揺動部材及び又は前記第2揺動部材を回動させる押圧部材を設けることもできる。
【0013】
そして、本発明は、上記原稿圧着板開閉装置を用いた事務機器として捉えることもできる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係る原稿圧着板開閉装置及び事務機器によれば、複合機と称せられる複写機などの事務機器の装置本体に対して、他の例えばスキャナーなどの機能を持つ筐体を上下方向へ開閉可能に取り付け、この筐体に対して原稿自動送り装置付きの重量のある原稿圧着板を、同じく上下方向へ開閉可能に取り付けたものにおいて、装置本体側の内部機構を保守、点検、修理等をする際に、筐体を開いても、支持部材の回動防止手段によって原稿圧着板が開いてしまったり、或は脚部の抜け出し防止手段によって原稿圧着板が筐体より外れてしまったりすることがないので、安全に保守、修理、点検作業を行うことができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1乃至図2において、指示記号Aで模式的に示したものは、通称複合機と称される事務機器である。この事務機器Aは、装置本体Bとこの装置本体Bの上面にヒンジ装置Cを介してワニ口形に上下方向へ開閉可能となるように取り付けられた例えばスキャナー部から成る筐体Dと、この筐体Dの上面に原稿圧着板開閉装置Eを介して同じくワニ口形に上下方向へ開閉可能となるように取り付けられた、自動原稿送り装置付きの原稿圧着板Fとで構成されている。
【0017】
尚、図面では装置本体Bと例えばスキャナーの機能を有するスキャナー部から成る筐体Dから成る事務機器Aとして示してあるが、装置本体Bに組み合わせる機器としては、他にもプリンター部、及びファクシミリ部等があり、装置本体Bはスキャナー部以外にこれらのプリンター部やファクシミリ部から成る筐体Dと組み合わせても良い。
【0018】
ヒンジ装置Cの構成はとくに限定されず、通常の蝶番と称せられるヒンジを始め、各種の公知構成のヒンジ装置を用いることができ、好ましくは筐体Dを所定の開成角度以上に開かないようにするストッパーと、筐体Dが急激に閉じないようにする弾性手段を有するものが好ましい。
【0019】
本発明に係る原稿圧着板開閉装置Eは、図示してないが、通常適宜間隔を空けて、同一構成のもの、或は他の構成のものと組み合わせた一対用いられる。以下の説明ではそのうちの1個のものについて、その構成を説明する。
【0020】
図3乃至図10において、指示記号1で示したものは取付部材を兼ねる脚部であり、この脚部1は、筐体Dの後部上面に上下方向に設けた平面略矩形状の取付孔2に対し、上下方向へ移動可能に挿入して固定されている。
【0021】
脚部1は、横断面略矩形状を呈したケース状のもので、底板1aと、この底板1aの両側より立ち上げた両側板1b、1bと、この両側板1b、1bの上部に形成された固定カム部1cとで構成された、例えばPOMのような合成樹脂の成型品であるが、このものに限定されない。プレス加工品であっても良い。この脚部1の固定カム部1cのカム部両側板1d、1dには、ヒンジピン3を介して、支持部材4がその両側板4a、4aを回動可能に軸支させている。
【0022】
この支持部材4は、両側板4a、4aをその両側部より垂下させた上板4bと、この上板4bの一端部より垂下させた閉塞板4cとから成る例えばSUSのような金属板をプレス加工して作ったケース状のもので、両側板4a、4aの下端側には、これを内側に折り曲げて抱持部4d、4dが設けられると共に、この抱持部4d、4dより若干上方に位置して、両側板4a、4aの一部を切り取って外側へ折り曲げることによって作った取付板4e、4eが設けられている。閉塞板4cは、両側板4a、4aの端部を内側へ折り曲げた補強部4f、4fにより内側から押圧力が加わっても外側へ開いてしまうのを防止されている。尚、この支持部材4は合成樹脂の成型品としても良い。
【0023】
支持部材4の両側板4a、4aと上板4bとで囲まれたケース状の部分に摺動可能に収装されているのは、一端閉塞の筒状を呈したカムスライダー5であり、このカムスライダー5は、その下部両側を抱持部4d、4dで抱えられることにより、支持部材4の下側へ落下してしまわないように工夫されている。
【0024】
尚、この支持部材4は、これをPOMのような合成樹脂の成型品とすることもでき、この場合には、抱持部4d、4dの部分をつなげて、全体として、角筒状のものとすることができる。
【0025】
カムスライダー5と支持部材4の閉塞板4cとの間には、例えばコンプレッションスプリングのような弾性手段6が弾設され、カムスライダー5のカム部5aを固定カム部1cのカム部1j側へ摺動付勢させている。カムスライダー5と固定カム部1cは、カム機構Jを構成し、弾性手段6により互いのカム部5aと1jを圧接させている。
【0026】
筐体Dを保守、点検、及び修理等の際にワニ口形に上下方向へ開いて傾倒させた場合、原稿圧着板開閉装置Eが一緒に開いてしまわないようにする支持部材4の回動防止手段Gは、支持部材4の両側板4a、4aに第1支持ピン7によって揺動可能に吊設された第1揺動部材9と、この第1揺動部材9によって、筐体Dの開成時に係合される第1係合部材10とで構成されており、第1係合部材10は、脚部1の両側板1b、1bの内側に固定ピン11によって、水平方向に取り付けられている。第1揺動部材9と第1係合部材10は、共にSUSのような金属板をプレス加工によって折り曲げて作ったもので、それぞれ左右一対のプレート部9a、9a・10a、10aを連結板9b、10bによって連結平面略コの字形状とU字形状とを呈するように形成されている。第1揺動部材9の各プレート部9a、9aの下端部側には、それぞれ係止部9cが設けられ、第1係合部材10の連結板10bが同時に係合部を構成している。第1係合部材10は、その一端部を脚部1内部に形成させた段部1eと係合させることにより、連結板10bの側が下側へ垂れ下がってしまうことを防止されている。さらに、固定カム部1cのカム部両側板1d、1dには、第1支持ピン7を逃がすための円弧状のガイド長孔1f、1fが設けられている。尚、第1係合部材10は、脚部1に一体的に設けられていても良い。
【0027】
筐体Dが保守、点検、及び修理等のために開かれて傾倒した際に、原稿圧着板開閉装置Eの脚部1が自然に取付孔2より抜け出てしまわないように防止する抜け出し防止手段Hは、脚部1の両側板1b、1bの下方に、第2支持ピン12によって揺動可能に支持された第2揺動部材13と取付孔2の下端部側一側に形成させた係合凹部2aとからなり、第2揺動部材13は、SUSのような金属プレートをプレス加工することによって構成した一対のプレート部13a、13aを連結板13bで連結した略コの字形状のもので、プレート部13a、13aは、脚部1の閉塞板1gに設けた挿通孔1hを介して、外側へ突出する構成となっている。この第2揺動部材13は、第2支持ピン12によって重心をずらせて取り付けられることにより、通常時は係止部13c、13cを脚部1内へ引っ込ませている。
【0028】
したがって、本発明に係る原稿圧着板開閉装置Eは、前記支持部材4の取付板4e、4eを原稿圧着板Fの後端部側に取り付け、その脚部1を筐体Dの後部上面に設けた取付孔2へ挿入させると事務機器Aに対する組み付けが完了する。
【0029】
図11に示したように、原稿圧着板Fを筐体Dに対して閉じた状態から原稿圧着板Fを開くと、カムスライダー5のカム部5aの傾斜部5bが凸状を呈した固定カム部1cのカム部1jの表面を滑りつつ、弾性手段6によって、原稿圧着板Fを開く方向へスライド付勢されることから、原稿圧着板Fは、その本来の重量を感じさせることなく、開かれることになる。
【0030】
開かれた原稿圧着板Fは、略30°〜40°の開成角度において、原稿圧着板Fの重量が、弾性手段6の弾力と、図示していないもう一方の原稿圧着板開閉装置の弾性手段の弾力を合わせたものとバランスするので、原稿圧着板Fより手を離しても、自然落下することなく、また自動的に開いてしまうことなく停止保持される。
【0031】
したがって、通常の複写或いは読み取り時は、この開成角度において行われ、原稿を図示してないコンタクトガラス上へ載置して、原稿圧着板Fを閉じると、弾性手段6が圧縮される際の弾力に抗して閉じることになるので、原稿圧着板Fが急速に落下することはない。
【0032】
原稿圧着板Fが所定の開成角度5°位まで閉じられると、固定カム部1cが、カムスライダー5のカム部5aの平坦部5cに達することと、弾性手段6の作用線がヒンジピン3の軸芯部より下方に位置することになることから、自動的に閉じられ、この閉成状態において安定的に停止保持され、手を離しても原稿圧着板Fの浮き現象は生じないように工夫されている。
【0033】
原稿圧着板Fの最大開成角度は、第1支持ピン7がガイド長孔1f、1fの上端部に達することによって規制され、実施例では隆起部1kに当接する約70°であるが、この全開成角度に至る前に、図12に示したように、カムスライダー5の傾斜部5bが固定カム部1cの上側の傾斜部1iと当接することにより、ブレーキ作用が働き、停止しても自然に閉成方向へ閉じてしまうことなく安定停止するので、図示してないコンタクトガラスを外して筐体D内部の保守点検作業を容易とするものである。
【0034】
以上の原稿圧着板Fの開閉操作時においては、図11と図12に示したように、第1揺動部材9は第1支持ピン7を介して上下方向へ移動するが、その係止部9cは第1係合部材10の連結板10bと係合することなく、支持部材4の回動を許容する。
【0035】
次に、図13に示したように、原稿が本のように厚い厚物原稿の場合には、この厚物原稿Iを図示してない筐体Dの図示してないコンタクトガラス上へ載置して原稿圧着板Fを閉じると、当該原稿圧着板Fが厚物原稿Iの端部に当接する。この状態からさらに原稿圧着板Fを閉じる方向へ力を加えると、原稿圧着板開閉装置Eの脚部1が取付孔2より上方へ抜け出ることにより、原稿圧着板Fの回転を許容するので、原稿圧着板は図13に示したように回転して厚物原稿Iの上面を水平に覆うことにより、露光を外部へ漏らすことを可及的に防止して露光漏れにより生ずる複写ミスを防止することができるものである。
【0036】
以上の厚物原稿Iの複写時や読み取り時において、脚部1が取付孔2内を上下方向へ移動しても、第2揺動部材13の係止部13cは、脚部1に設けた挿通孔1hより外へ突出することがないので、脚部1の上下方向の移動に支障は生じない。
【0037】
厚物原稿Iの複写が終わり、原稿圧着板Fを開成方向に開けて、厚物原稿Iを図示してないコンタクトガラス上より取り去ると、原稿圧着板Fの重量により、脚部1は取付孔2内へ収納されて元の状態に戻ることになる。
【0038】
次に、筐体Dを装置本体Bに対して開いて装置本体Bの内部の保守、点検、及び修理等を行う場合の支持部材4の回動防止手段Gと抜け出し防止手段Hの機能について説明する。筐体Dを図2に示したように装置本体Bに対してワニ口形に開くと、原稿圧着板開閉装置Eは筐体Dと共に同一方向へ傾斜する。するとまず、回動防止手段Gを構成する第1揺動部材9が脚部1の傾斜方向と逆の方向へ揺動することにより、第1揺動部材9の係止部9cが、図14に示したように、第1係合部材10の連結板9bと係合することにより、支持部材4の回動が阻止されるので、原稿圧着板Fが自然に開いてしまうことが防止される。
【0039】
次に、脚部1の抜け出し防止手段Hにおいて、脚部1が筐体Dの開成操作に伴い、図14に示したように傾斜すると、第2揺動部材13が第2支持ピン12を介して揺動し、その係止部13cを取付孔2側へ突出させるので、この取付孔2に設けた係合凹部2aと係止部13cが係合することにより、脚部1の取付孔2からの抜け出しを阻止することができるものである。
【0040】
したがって、筐体Dを装置本体Bの保守、点検、及び修理等のために開いても、重量のある原稿圧着板Fが開いてしまうことを阻止できるので、装置本体Bが不安定となってしまうことがなく、装置本体Bの保守、点検、及び修理等を安全に行うことができるものである。
【0041】
筐体Dを元の状態に戻すと、回動防止手段Gと抜け出し防止手段Hの各第1揺動部材9と第2揺動部材13が自動的に元位置に戻るので、原稿圧着板開閉装置Eの機能に支障が生ずることなく、原稿圧着板Fの開閉操作を行うことができるものである。
【実施例2】
【0042】
図15と図16は、回動防止手段と抜け出し防止手段の他の実施例を示す。図面によれば、この第2実施例に示した回動防止手段Kと抜け出し防止手段Lは、脚部15内に第1揺動部材16と第2揺動部材17を、当該脚部15の傾斜に伴って移動することにより揺動させる押圧部材18を設けた点で、先の第1実施例の回動防止手段Gと抜け出し防止手段Hと相違するのみで、他の構成は同じであるので、説明を省略する。また、指示記号の同じものは同じ部材を表している。
【0043】
図面によれば、脚部15内部には、両側板15a、15a(一方のみ表示)に設けたレール部15b、15bの間に移動可能に支持された例えば金属製丸棒から成る押圧部材18で、脚部15の傾動に伴いレール部15b、15b(一方のみ表示)を当該脚部15の傾斜方向へ移動して、第1揺動部材16と第2揺動部材17を強制的に揺動させるもので、より確実に第1揺動部材16と第2揺動部材17を揺動させて支持部材4の回動と、脚部15の抜け出しを阻止することができる利点がある。
【0044】
尚、押圧部材18は、第2揺動部材17の傾斜端面17a上に乗っているが、必ずしもこのように実施する必要はない。
【0045】
また、押圧部材18で第1揺動部材16と第2揺動部材17のいずれか一方のみを押圧するように構成することは任意である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上詳細に説明したように、複数の機能を持つ複合機と称せられる事務機器において、各機能に応じた各筐体を装置本体に対して開閉可能としたものに用いて好適な原稿圧着板開閉装置である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る原稿圧着板開閉装置を用いた事務機器を模式的に示す説明図である。
【図2】図1に示した事務機器の動作を説明する説明図である。
【図3】本発明に係る原稿圧着板開閉装置の斜視図である。
【図4】図3に示した原稿圧着板開閉装置の正面図である。
【図5】図3に示した原稿圧着板開閉装置の右側面図である。
【図6】図3に示した原稿圧着板開閉装置の左側面図である。
【図7】図3に示した原稿圧着板開閉装置の平面図である。
【図8】図3に示した原稿圧着板開閉装置の底面図である。
【図9】本発明に係る原稿圧着板開閉装置を事務機器へ組み込んだ状態における縦断面図である。
【図10】本発明に係る原稿圧着板開閉装置のカム機構を説明するための説明図である。
【図11】本発明に係る原稿圧着板開閉装置の動作を説明するための説明図である。
【図12】本発明に係る原稿圧着板開閉装置の動作を説明するための説明図である。
【図13】本発明に係る原稿圧着板開閉装置の動作を説明するための説明図である。
【図14】本発明に係る原稿圧着板開閉装置の回動防止手段と抜け出し防止手段の動作を説明する説明図である。
【図15】本発明に係る原稿圧着板開閉装置の回動防止手段と抜け出し防止手段の他の実施例を示す説明図である。
【図16】図15に示した回動防止手段を抜け出し防止手段の動作を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0048】
A 事務機器
B 装置本体
D 筐体
E 原稿圧着板開閉装置
F 原稿圧着板
G、K 回動防止手段
H、L 抜け出し防止手段
J カム機構
1、15 脚部
2 取付孔
3 ヒンジピン
4 支持部材
6 弾性手段
9、16 第1揺動部材
13、17 第2揺動部材
18 押圧部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合機と称せられる事務機器に用いられる原稿圧着板開閉装置であって、前記事務機器の装置本体に対して上下方向へ開閉可能に取り付けられる筐体側に設けた取付孔へ上下方向へ移動可能に取り付けられる取付部材を兼ねるケース状の脚部と、この脚部の上部側にヒンジピンを介して回動可能に取り付けられ原稿圧着板を開閉可能に支持するケース状の支持部材と、この支持部材と前記脚部の間に当該支持部材を前記原稿圧着板の開成方向へ付勢するために設けられた弾性手段と、前記支持部材の回動を制御するために前記脚部と前記支持部材の間に設けられると共に前記弾性手段を作用させたカム機構と、前記脚部と支持部材の間に設けられ、前記筐体が開かれた時に前記原稿圧着板の開成動作に向けての前記支持部材の回動を自動的に防止する回動防止手段とで構成したことを特徴とする、原稿圧着板開閉装置。
【請求項2】
複合機と称せられる事務機器に用いられる原稿圧着板開閉装置であって、前記事務機器の装置本体に対して上下方向へ開閉可能に取り付けられる筐体側に設けた取付孔へ上下方向へ移動可能に取り付けられる取付部材を兼ねるケース状の脚部と、この脚部の上部側にヒンジピンを介して回動可能に取り付けられ原稿圧着板を開閉可能に支持するケース状の支持部材と、この支持部材と前記脚部の間に当該支持部材を前記原稿圧着板の開成方向へ付勢するために設けられた弾性手段と、前記支持部材の回動を制御するために前記脚部と前記支持部材の間に設けられると共に前記弾性手段を作用させたカム機構と、前記脚部に設けられ、前記筐体が開かれた時に前記脚部の前記取付孔からの抜けを自動的に防止する抜け出し防止手段とで構成したことを特徴とする、原稿圧着板開閉装置。
【請求項3】
複合機と称せられる事務機器に用いられる原稿圧着板開閉装置であって、前記事務機器の装置本体に対して上下方向へ開閉可能に取り付けられる筐体側に設けた取付孔へ上下方向へ移動可能に取り付けられる取付部材を兼ねるケース状の脚部と、この脚部の上部側にヒンジピンを介して回動可能に取り付けられ原稿圧着板を開閉可能に支持するケース状の支持部材と、この支持部材と前記脚部の間に当該支持部材を前記原稿圧着板の開成方向へ付勢するために設けられた弾性手段と、前記支持部材の回動を制御するために前記脚部と前記支持部材の間に設けられると共に前記弾性手段を作用させたカム機構と、前記脚部と前記支持部材との間に設けられ、前記筐体が開かれた時に前記原稿圧着板の開成動作に向けての前記支持部材の回動を自動的に防止する回動防止手段と、前記脚部に設けられ、前記筐体が開かれた時に脚部の前記取付孔からの抜けを自動的に防止する抜け出し防止手段と、で構成したことを特徴とする、原稿圧着板開閉装置。
【請求項4】
前記支持部材の回動防止手段は、前記筐体の開成時における傾動時に揺動して、自動的に前記支持部材或は脚部と係合する、第1揺動部材を有することを特徴とする、請求項1又は2のいずれか1項に記載の、原稿圧着板開閉装置。
【請求項5】
前記脚部の抜け出し防止手段は、前記筐体の開成時における傾動時に揺動して自動的に前記取付孔に設けた係合部と係合する第2揺動部材を有することを特徴とする、請求項2又は3のいずれか1項に記載の、原稿圧着板開閉装置。
【請求項6】
前記第1揺動部材と第2揺動部材を自動的に揺動させるに当り、前記第1揺動部材及び又は前記第2揺動部材の回動支点を超えた側に当接して前記脚部の傾動時に、前記第1揺動部材及び又は前記第2揺動部材を回動させる押圧部材を設けたことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の、原稿圧着板開閉装置。
【請求項7】
請求項1乃至6に記載の原稿圧着板開閉装置を有することを特徴とする、事務機器。
【請求項1】
複合機と称せられる事務機器に用いられる原稿圧着板開閉装置であって、前記事務機器の装置本体に対して上下方向へ開閉可能に取り付けられる筐体側に設けた取付孔へ上下方向へ移動可能に取り付けられる取付部材を兼ねるケース状の脚部と、この脚部の上部側にヒンジピンを介して回動可能に取り付けられ原稿圧着板を開閉可能に支持するケース状の支持部材と、この支持部材と前記脚部の間に当該支持部材を前記原稿圧着板の開成方向へ付勢するために設けられた弾性手段と、前記支持部材の回動を制御するために前記脚部と前記支持部材の間に設けられると共に前記弾性手段を作用させたカム機構と、前記脚部と支持部材の間に設けられ、前記筐体が開かれた時に前記原稿圧着板の開成動作に向けての前記支持部材の回動を自動的に防止する回動防止手段とで構成したことを特徴とする、原稿圧着板開閉装置。
【請求項2】
複合機と称せられる事務機器に用いられる原稿圧着板開閉装置であって、前記事務機器の装置本体に対して上下方向へ開閉可能に取り付けられる筐体側に設けた取付孔へ上下方向へ移動可能に取り付けられる取付部材を兼ねるケース状の脚部と、この脚部の上部側にヒンジピンを介して回動可能に取り付けられ原稿圧着板を開閉可能に支持するケース状の支持部材と、この支持部材と前記脚部の間に当該支持部材を前記原稿圧着板の開成方向へ付勢するために設けられた弾性手段と、前記支持部材の回動を制御するために前記脚部と前記支持部材の間に設けられると共に前記弾性手段を作用させたカム機構と、前記脚部に設けられ、前記筐体が開かれた時に前記脚部の前記取付孔からの抜けを自動的に防止する抜け出し防止手段とで構成したことを特徴とする、原稿圧着板開閉装置。
【請求項3】
複合機と称せられる事務機器に用いられる原稿圧着板開閉装置であって、前記事務機器の装置本体に対して上下方向へ開閉可能に取り付けられる筐体側に設けた取付孔へ上下方向へ移動可能に取り付けられる取付部材を兼ねるケース状の脚部と、この脚部の上部側にヒンジピンを介して回動可能に取り付けられ原稿圧着板を開閉可能に支持するケース状の支持部材と、この支持部材と前記脚部の間に当該支持部材を前記原稿圧着板の開成方向へ付勢するために設けられた弾性手段と、前記支持部材の回動を制御するために前記脚部と前記支持部材の間に設けられると共に前記弾性手段を作用させたカム機構と、前記脚部と前記支持部材との間に設けられ、前記筐体が開かれた時に前記原稿圧着板の開成動作に向けての前記支持部材の回動を自動的に防止する回動防止手段と、前記脚部に設けられ、前記筐体が開かれた時に脚部の前記取付孔からの抜けを自動的に防止する抜け出し防止手段と、で構成したことを特徴とする、原稿圧着板開閉装置。
【請求項4】
前記支持部材の回動防止手段は、前記筐体の開成時における傾動時に揺動して、自動的に前記支持部材或は脚部と係合する、第1揺動部材を有することを特徴とする、請求項1又は2のいずれか1項に記載の、原稿圧着板開閉装置。
【請求項5】
前記脚部の抜け出し防止手段は、前記筐体の開成時における傾動時に揺動して自動的に前記取付孔に設けた係合部と係合する第2揺動部材を有することを特徴とする、請求項2又は3のいずれか1項に記載の、原稿圧着板開閉装置。
【請求項6】
前記第1揺動部材と第2揺動部材を自動的に揺動させるに当り、前記第1揺動部材及び又は前記第2揺動部材の回動支点を超えた側に当接して前記脚部の傾動時に、前記第1揺動部材及び又は前記第2揺動部材を回動させる押圧部材を設けたことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の、原稿圧着板開閉装置。
【請求項7】
請求項1乃至6に記載の原稿圧着板開閉装置を有することを特徴とする、事務機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−139542(P2010−139542A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313081(P2008−313081)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000124085)加藤電機株式会社 (117)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000124085)加藤電機株式会社 (117)
【Fターム(参考)】
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