説明

原稿圧着板開閉装置

【課題】昇降部材の先端とリフト部材との当接部位における摩擦力を小さくし、原稿圧着板を閉じたときの隙間の発生を防止し、姿勢調整手段による再調整の必要性を低減する。
【解決手段】 装置本体(2)側に取り付けられる取付部材(4)と、この取付部材(4)にヒンジピン(8)を介して連結された支持部材(5)と、この支持部材(5)に支持ピン(9)を介して連結され原稿圧着板(3)に取り付けられるリフト部材(6)とを備えた原稿圧着板開閉装置である。取付部材(4)とリフト部材(6)との間に、このリフト部材(6)の後端側の高さ位置を調整する姿勢調整手段(23)を設ける。姿勢調整手段(23)は、取付部材(4)に沿って上下移動する昇降部材(26)と昇降部材(26)の上下位置を調整する調整操作部材(24)とを備える。昇降部材(26)の上端部に回転当接部材(27)を回転自在に配置し、この回転当接部材(27)をリフト部材(6)の後端側へ下方から当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、印刷機、スキャナー等に設置されて厚物原稿を圧着するのに用いられるリフト機能付きの原稿圧着板開閉装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の原稿圧着板開閉装置には、例えば図5に示すように、複写機等の装置本体(51)側に取り付けられる取付部材(52)と、この取付部材(52)にヒンジピン(53)を介して上下方向へ回動自在に後端部が連結された支持部材(54)と、この支持部材(54)の前端部に支持ピン(55)を介して上下方向へ回動自在に連結され原稿圧着板(56)に取り付けられるリフト部材(57)とを備えたものがある(特許文献1参照。)。上記の取付部材(52)には上記のヒンジピン(53)の近傍にカム部材(58)が固定してあり、一方、上記のリフト部材(57)には支持ピン(55)を支点に旋回する位置に作動部材(59)が設けてある。そして、上記の支持部材(54)には、上記のカム部材(58)と作動部材(59)との間に付勢バネ(60)が配置してあり、この付勢バネ(60)の弾圧力で上記のリフト部材(57)を支持部材(54)と重なり合う方向へ付勢するようにしてある。
【0003】
上記の従来技術では、装置本体(51)の寸法誤差や組立誤差などにより、上記の原稿圧着板(56)を閉じたときに原稿台(61)との間に隙間ができることがある。そこでこの隙間を調節できるように、上記の取付部材(52)とリフト部材(57)との間に、このリフト部材(57)の後端側の高さ位置を調整できる姿勢調整手段(62)を設けてある。
【0004】
より詳細に説明すると、上記の姿勢調整手段(62)は、調整操作部材(63)と水平移動部材(64)と昇降部材(65)とを備え、この調整操作部材(63)は取付部材(52)の後板(66)に設けた雌ねじ孔(67)に螺合させて、その後端を後板(66)の後方へ突出させてある。上記の水平移動部材(64)は前記の取付部材(52)に、上記の調整操作部材(63)の正逆回転により水平方向に進退動するように組み込んである。また、上記の昇降部材(65)は前記のヒンジピン(53)とカム部材(58)との間で上下移動可能に組み込んであり、この昇降部材(65)の上端部を前記のリフト部材(57)の後端側の下面に当接してある。上記の水平移動部材(64)には、引下げ用斜面(68)と引上げ用斜面(69)とを形成してあり、引下げ用斜面(68)はこの水平移動部材(64)の前進に伴い昇降部材(65)と接触してこの昇降部材(65)を下降させ、引上げ用斜面(69)は水平移動部材(64)の後退に伴い昇降部材(65)と接触してこの昇降部材(65)を上昇させるように、上記の昇降部材(65)と連係してある。
【0005】
【特許文献1】特開2003−280112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の調整操作部材は取付部材の後板から後方へ突出させてあるため、この調整操作部材を操作することで、上記の昇降部材を上下させて、原稿圧着板を閉じたときに原稿台との間に生じる隙間を簡易に調整することができる。しかしながら、この従来技術では原稿圧着板を開閉する際に、リフト部材の下面が上記の昇降部材の先端に当接しながら移動するため、この間に滑り摩擦を生じる。この摩擦力が大きいとリフト部材が円滑に回動できなくなり、特に原稿圧着板を閉じる際に抵抗を受けて、この原稿圧着板を確実に閉じることができなくなる虞がある。また、上記の滑り摩擦により昇降部材の先端やこれに当接するリフト部材の下面が磨耗し易く、この磨耗を生じるとリフト部材の後端側の高さ位置が変化して、原稿圧着板を閉じたときに原稿台との間に隙間を生じる虞がある。このため、このリフト部材の後端側の高さ位置を再調整する必要を生じ、メンテナンスの手間がかかる問題がある。
【0007】
本発明の技術的課題は、上記の問題点を解消し、昇降部材の先端とリフト部材との当接部位における摩擦力を小さくして、原稿圧着板を閉じたときの隙間の発生を防止し、姿勢調整手段により調整されたリフト部材後端側の高さ位置を長期に維持して、姿勢調整手段による再調整の必要性を低減できる、原稿圧着板開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題を解決するために、例えば、本発明の実施の形態を示す図1から図4に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち、本発明は原稿圧着板開閉装置に関し、装置本体(2)側に取り付けられる取付部材(4)と、この取付部材(4)にヒンジピン(8)を介して上下方向へ回動自在に後端部が連結された支持部材(5)と、この支持部材(5)の前端部に支持ピン(9)を介して上下方向へ回動自在に連結され原稿圧着板(3)に取り付けられるリフト部材(6)とを備え、上記の支持部材(5)に付勢バネ(17)を配置して、この付勢バネ(17)の弾圧力で上記のリフト部材(6)を支持部材(5)と重なり合う方向へ付勢し、上記の取付部材(4)とリフト部材(6)との間に、このリフト部材(6)の後端側の高さ位置を調整する姿勢調整手段(23)を設けた、原稿圧着板開閉装置であって、上記の姿勢調整手段(23)は、上記の取付部材(4)に沿って上下移動する昇降部材(26)と、この昇降部材(26)の上下位置を調整する調整操作部材(24)とを備え、上記の昇降部材(26)の上端部に回転当接部材(27)を回転自在に配置して、この回転当接部材(27)を前記のリフト部材(6)の後端側へ下方から当接可能に構成したことを特徴とする。
【0009】
上記の調整操作部材を操作することにより、上記の昇降部材が上下に移動し、その上端部に配置した回転当接部材でリフト部材が下方から押圧され、これによりこのリフト部材の後端側の上下位置が調整される。
原稿圧着板を開閉する際にリフト部材が支持部材とともにヒンジピンの周囲を回動すると、このリフト部材の下面が上記の回転当接部材に当接しながらこの回転当接部材上を移動する。この移動の際に回転当接部材が昇降部材の先端部で回転するので、この回転当接部材とリフト部材との間には回転摩擦力が発生する。この回転摩擦力は前記の従来技術で生じた滑り摩擦力に比べて格段に小さいので、上記のリフト部材は円滑に回動して、このリフト部材と回転当接部材との当接部位に生じる磨耗が大幅に低減される。
【0010】
上記の調整操作部材は、上記の昇降部材に直接連係させてもよいが、上記の姿勢調整手段に、水平方向へ移動可能に上記の取付部材へ支持された水平移動部材をさらに設け、上記の調整操作部材はこの水平移動部材を介して上記の昇降部材の上下位置を調整できるように構成してもよい。この場合、上記の調整操作部材は取付部材の水平方向の位置に配置できるので、例えば取付部材の側方に配置することも可能である。しかしながら、上記のリフト部材の高さ位置は、原稿圧着板と原稿台との隙間を無くすように調整されるので、この調整操作部材を取付部材の後方に突出させて配置すると、原稿圧着板を閉じた状態で簡単に調整操作を行うことができ、より好ましい。
【0011】
この場合、上記の水平移動部材と昇降部材とは、例えばギヤ構造やネジ構造などを用いて連係させることも可能であるが、この水平移動部材と昇降部材とが互いに当接する少なくとも一方の部位に、傾斜面などの押上用カム面を形成すると、簡単な構成で水平移動部材の水平移動を昇降部材の上昇移動に変換でき、好ましい。
【0012】
なお、上記の水平移動部材と昇降部材とが当接する部位に、押下用カム面を併せて形成することも可能である。しかしながら、上記のリフト部材は前記の付勢バネの弾圧力で支持部材と重なり合う方向へ付勢されており、このため、上記の昇降部材上端の回転当接部材には、リフト部材による下方への押圧力が加わる。従って、上記の押下用カム面を省略しても、水平移動部材の水平移動に伴って、昇降部材を上記のリフト部材による押圧力で下降させることができる。
【0013】
上記の昇降部材は、前記のヒンジピンとカム部材との間で上下移動可能に配置することも可能である。しかしながら、この昇降部材をヒンジピンよりも後方に配置すると、支持部材と干渉することなく昇降部材を厚肉に形成することができ、この昇降部材に上記の回転当接部材を容易に且つ確りと支持させることができるので、好ましい。またこの場合、リフト部材の回動の支点となる支持ピンから上記の回転当接部材までの距離が長くなるので、昇降部材の軽い上昇力でリフト部材を持ち上げることができる利点もある。
【0014】
上記の昇降部材は、板金など、金属材料等で形成することも可能であり、また複数の素材を組み合わせて形成することも可能である。しかしながら、この昇降部材を合成樹脂で形成した場合には、比較的複雑な形状であっても容易に成型することができるので、安価に実施でき、好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
【0016】
(1) 原稿圧着板を開閉する際に、上記のリフト部材と姿勢調整手段の回転当接部材との間に滑り摩擦力が生じるのを防止して、リフト部材等を円滑に回動させることができる。この結果、原稿圧着板を適正な閉じ位置へ正確に閉じて、原稿台との間に生じる隙間の発生を確実に防止することができる。
【0017】
(2) リフト部材と回転当接部材との当接部位に生じる磨耗が、前記の従来技術に比べて大幅に低減されるので、姿勢調整手段により調整されたリフト部材後端側の高さ位置を長期に亙って維持することができ、姿勢調整手段による再調整の必要性を低減してメンテナンスを簡略にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1から図4は本発明の原稿圧着板開閉装置の実施形態を示し、図1は原稿圧着板を閉じた状態を示す原稿圧着板開閉装置の断面図、図2は原稿が厚い場合の使用例を示す原稿圧着板開閉装置の断面図、図3は姿勢調整手段を組み込んだ取付部材の一部破断斜視図、図4は回転当接部材の作動を示し、図4(a)はリフト部材の高さ位置の調整を説明する回転当接部材近傍の拡大断面図、図4(b)はリフト部材の開閉作動を説明する回転当接部材近傍の拡大断面図である。
【0019】
図1に示すように、この原稿圧着板開閉装置(1)は、複写機などの装置本体(2)と、この装置本体(2)に対し上下方向へ回動自在に開閉される原稿圧着板(3)との間に装着される。
【0020】
即ち、この原稿圧着板開閉装置(1)は取付部材(4)と支持部材(5)とリフト部材(6)とを備え、この取付部材(4)が上記の装置本体(2)にビス(7)などで固定される。上記の支持部材(5)は、後端部がこの取付部材(4)にヒンジピン(8)を介して上下方向へ回動自在に枢支連結される。そしてこの支持部材(5)の前端部に上記のリフト部材(6)が支持ピン(9)を介して上下方向へ回動自在に枢支連結され、このリフト部材(6)に上記の原稿圧着板(3)の後端部がビスなどで取り付けられる。
【0021】
上記の取付部材(4)にはヒンジピン(8)の前方で下方位置にストッパーピン(10)がヒンジピン(8)と平行に支持してあり、このストッパーピン(10)の周囲にカム部材(11)が固定してある。
一方、上記のリフト部材(6)の前端部には作動部材(12)が固定してあり、この作動部材(12)に横長孔(13)と縦長孔(14)とが形成してある。上記の支持ピン(9)は、互いに平行な第1支持ピン(9a)と第2支持ピン(9b)とからなり、この第1支持ピン(9a)が上記の横長孔(13)内に、第2支持ピン(9b)が上記の縦長孔(14)内にそれぞれ挿通してある。
【0022】
上記の支持部材(5)には、耐摩耗性に優れるポリアセタール系樹脂やポリアミド系樹脂等で有底筒状に成形されたカムフォロア(15)とバネ受(16)とが、互いに開口部を対面させて前後方向へ摺動自在に嵌め込んである。このカムフォロア(15)とバネ受(16)と間に付勢バネ(17)が介装してあり、この付勢バネ(17)の弾圧力で上記のカムフォロア(15)は前記のカム部材(11)に向けて押圧され、バネ受(16)は前記の作動部材(12)に向けて押圧される。
【0023】
図1に示すように、原稿圧着板(3)を全閉した状態では、上記のカムフォロア(15)に設けた凸部(18)が、上記のカム部材(11)のカム面(19)の最大径部に当接しており、支持部材(5)は閉じ方向へ回動付勢される。一方、上記のバネ受(16)に形成した作動部材(12)との当接面(20)は、上記の付勢バネ(17)の弾圧力でこの作動部材(12)を介して上記のリフト部材(6)を支持部材(5)と重なり合う方向へ回動するように形成してある。これにより、このリフト部材(6)を取り付けた上記の原稿圧着板(3)は閉じ姿勢に保持される。
【0024】
上記のカム部材(11)のカム面(19)は、上記のカムフォロア(15)の凸部(18)が開き方向へ移動すると、前記のストッパーピン(10)へ徐々に近づくカム形状に形成してある。このため、上記の原稿圧着板(3)を開いていくと、支持部材(5)には付勢バネ(17)の弾圧力で開き方向の回動力(ヒンジトルク)が生じる。この結果、原稿圧着板(3)は、このヒンジトルクと自重による閉じ方向の回転力とがバランスする所定の開き角度で、安定よく停止して保持される。
【0025】
図2に示すように、装置本体(2)の原稿台(21)上に厚物原稿(22)が載置された場合は、支持部材(5)を開き姿勢にした状態で、原稿圧着板(3)の手前側を押し下げると、上記の作動部材(12)が付勢バネ(17)の弾圧力に抗してバネ受(16)を押し込み、リフト部材(6)が支持部材(5)から離れる方向へ、即ち、閉じ方向へ回動する。これにより原稿圧着板(3)は、その後端側が持ち上げられて厚物原稿(22)の上部とほぼ平行な姿勢になり、この厚物原稿(22)全体を原稿台(21)上へ均等な力で圧着することができる。
【0026】
なお、上記のリフト部材(6)が付勢バネ(17)の弾圧力に抗して支持部材(5)から離れる方向へ回動する際、上記の作動部材(12)は前記の横長孔(13)が第1支持ピン(9a)に沿って後方へ移動するとともに、縦長孔(14)が第2支持ピン(9b)に沿って上昇する。これによりこの作動部材(12)は楕円軌道を描きながら回動し、厚物原稿(22)が原稿圧着板(3)に水平方向へ引き摺られることを可及的に抑制することができる。
【0027】
図1に示すように、上記の取付部材(4)とリフト部材(6)との間には、このリフト部材(6)の後端側の高さ位置を調整できる姿勢調整手段(23)が設けてある。この姿勢調整手段(23)は、調整操作部材(24)と水平移動部材(25)と昇降部材(26)と回転当接部材(27)とから構成してある。
【0028】
図3に示すように、上記の水平移動部材(25)は前記の取付部材(4)に固定されたカム部材(11)の後部上面で、前後方向へ移動可能に支持されている。この水平移動部材(25)の上面には後下がりの傾斜面からなる第1カム面(28a)が形成してあり、下面には嵌合溝(29)が凹設してある。なお、上記の第1カム面(28a)の水平方向に対する傾斜角度は、好ましくは30〜45度、例えば約40に形成されるが、特定の傾斜角度に限定されるものではない。なお、この傾斜角度を変更することで、調整操作部材(24)による調整量、即ち水平移動部材(25)の水平移動量に対し、昇降部材(26)の昇降量を変えることができ、この角度を大きくすると昇降量が増し、角度を小さくすると昇降量が小さくなる。
【0029】
上記の調整操作部材(24)は、ネジ本体(30)の前端に円板状の径大部(31)を備えており、この径大部(31)が上記の水平移動部材(25)の嵌合溝(29)内に回転自在に挿入される。上記のネジ本体(30)は取付部材(4)の後壁(32)に形成した雌ねじ孔(33)に螺合してあり、この調整操作部材(24)を螺進させることで、上記の径大部(31)を介して水平移動部材(25)が前後方向に進退移動する。
【0030】
上記の昇降部材(26)は、下部が上記の後壁(32)とカム部材(11)の後端との間で上下移動可能に前後方向から拘束されており、上部は前記のヒンジピン(8)よりも後方に配置してある。この昇降部材(26)の中央部下面には、上記の水平移動部材(25)の第1カム面(28a)と同じ傾斜角度の第2カム面(28b)が形成してあり、この第2カム面(28b)が上記の第1カム面(28a)に当接してある。
【0031】
上記の回転当接部材(27)は、左右に長いローラー状に形成され、両端が上記の昇降部材(26)の上端部に回転自在に支持されている。この回転当接部材(27)はヒンジピン(8)よりも後方で且つ上方に配置されており、前記のリフト部材(6)の後端側に下方から当接してこれを支持できるようにしてある。なお、上記の水平移動部材(25)と昇降部材(26)と回転当接部材(27)とは、いずれもポリオキシメチレン樹脂(POM)やポリアミド樹脂のような耐磨耗性に優れ安価に成形できる合成樹脂で形成してある。
【0032】
次に、上記の姿勢調整手段の作動について説明する。
上記の調整操作部材(24)を回転させて上記の水平移動部材(25)を後退させると、その上面の第1カム面(28a)で上記の昇降部材(26)の第2カム面(28b)が押圧される。この昇降部材(26)は前記の後壁(32)とカム部材(11)とで前後から拘束されているので、上記の押圧により、第2カム面(28b)が第1カム面(28a)上を摺動して昇降部材(26)が上方へ移動する。即ち、この第1カム面(28a)と第2カム面(28b)は、水平移動部材(25)の水平移動で昇降部材(26)を押し上げる押上用カム面(28)を構成している。
【0033】
上記の昇降部材(26)の上昇により、図4(a)の仮想線に示すように、上記の回転当接部材(27)が持ち上がってリフト部材(6)の後端側の下面を押し上げる。このとき、回転当接部材(27)はリフト部材(6)の回動中心となる支持ピン(9)からヒンジピン(8)よりも離れた位置に配置されているので、昇降部材(26)の軽い上昇力でリフト部材(6)を持ち上げることができる。
【0034】
逆に、上記の調整操作部材(24)を逆方向へ回転させて上記の水平移動部材(25)を前進させると、第1カム面(28a)が第2カム面(28b)から離隔しようとする。上記のリフト部材(6)は前記の付勢バネ(17)の弾圧力で支持部材(5)と重なり合う方向へ付勢されているので、上記の回転当接部材(27)はこのリフト部材(6)の後端側で下方へ押圧されている。このため、上記の第1カム面(28a)が第2カム面(28b)から離隔しようとすると、回転当接部材(27)とともに昇降部材(26)が下降し、リフト部材(6)の後端側の高さ位置が下がる。
そして、上記のリフト部材(6)の上下移動により、原稿圧着板(3)を閉じたときに原稿台(21)との間に隙間が生じないように、この原稿圧着板(3)の姿勢が調整される。
【0035】
上記の原稿圧着板(3)を開閉する際に、上記のリフト部材(6)が支持部材(5)とともにヒンジピン(8)の周囲を回動すると、上記の回転当接部材(27)はこのヒンジピン(8)よりも後方でリフト部材(6)の後端側を支持しているため、このリフト部材(6)の後端側が、図4(b)に示すように、回転当接部材(27)に当接しながら移動していく。このとき、回転当接部材(27)は昇降部材(26)の上端で自由に回転するので、この回転当接部材(27)とリフト部材(6)の下面との間には滑り摩擦が発生せず、リフト部材(6)等を介して原稿圧着板(3)を円滑に開閉移動することができる。しかも、このリフト部材(6)の下面と上記の回転当接部材(27)との当接部は磨耗の発生が防止されるので、この姿勢調整手段(23)による再調整の頻度が大幅に低減され、メンテナンスを簡略にすることができる。
【0036】
なお、上記の実施形態で説明した原稿圧着板開閉装置は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、各部材の材質や形状、構造などをこれらの実施形態のものに限定するものではなく、さらには装置本体や原稿圧着板の形状、構造、種類なども上記の実施形態のものに限定されないものであって、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0037】
例えば上記の実施形態では、水平移動部材に形成した第1カム面と、昇降部材に形成した第2カム面とで押上用カム面を構成したが、この押上用カム面は水平移動部材の進退移動を昇降部材の上下移動に変換できればよく、片側のみにカム面を形成したり、このカム面を凹曲面で形成したりしてもよい。また、上記の実施形態では押上用カム面を後下がりの傾斜面に形成して、水平移動部材の後退により昇降部材を上昇させたが、このカム面を前下がりの傾斜面に形成して、水平移動部材の前進により昇降部材を上昇させるように構成してもよい。さらに、水平移動部材と昇降部材との連係は、カム面以外で構成することも可能である。
【0038】
上記の実施形態では調整操作部材を取付部材の後壁から後方に突出させたが、この調整操作部材は上記の水平移動部材を介して昇降部材を上下移動できればよく、取付部材の側方など他の方向に突出させることも可能である。また、上記の回転当接部材は球状など、ローラー状以外に形成してもよく、ベアリングを用いることも可能である。さらにこの回転当接部材をヒンジピンの前方に配置することも可能であり、この回転当接部材や他の部材を強度の高い金属材料などで形成してもよいことは、いうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の原稿圧着板開閉装置は、昇降部材の先端とリフト部材との当接部位における摩擦力を小さくして、原稿圧着板を閉じたときの隙間の発生を防止し、姿勢調整手段により調整されたリフト部材後端側の高さ位置を長期に維持して、姿勢調整手段による再調整の必要性を低減できるので、特に厚物原稿なども取り扱う複写機や印刷機、スキャナーのほか、各種の画像形成装置などに好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、原稿圧着板を閉じた状態を示す原稿圧着板開閉装置の断面図である。
【図2】第1実施形態の、原稿が厚い場合の使用例を示す原稿圧着板開閉装置の断面図である。
【図3】第1実施形態の、姿勢調整手段を組み込んだ取付部材の一部破断斜視図である。
【図4】第1実施形態の回転当接部材の作動を示し、図4(a)はリフト部材の高さ位置の調整を説明する回転当接部材近傍の拡大断面図、図4(b)はリフト部材の開閉作動を説明する回転当接部材近傍の拡大断面図である。
【図5】従来技術を示す、図1相当図である。
【符号の説明】
【0041】
1…原稿圧着板開閉装置
2…装置本体
3…原稿圧着板
4…取付部材
5…支持部材
6…リフト部材
8…ヒンジピン
9…支持ピン
17…付勢バネ
23…姿勢調整手段
24…調整操作部材
25…水平移動部材
26…昇降部材
27…回転当接部材
28…押上用カム面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体(2)側に取り付けられる取付部材(4)と、この取付部材(4)にヒンジピン(8)を介して上下方向へ回動自在に後端部が連結された支持部材(5)と、この支持部材(5)の前端部に支持ピン(9)を介して上下方向へ回動自在に連結され原稿圧着板(3)に取り付けられるリフト部材(6)とを備え、
上記の支持部材(5)に付勢バネ(17)を配置して、この付勢バネ(17)の弾圧力で上記のリフト部材(6)を支持部材(5)と重なり合う方向へ付勢し、
上記の取付部材(4)とリフト部材(6)との間に、このリフト部材(6)の後端側の高さ位置を調整する姿勢調整手段(23)を設けた、原稿圧着板開閉装置であって、
上記の姿勢調整手段(23)は、上記の取付部材(4)に沿って上下移動する昇降部材(26)と、この昇降部材(26)の上下位置を調整する調整操作部材(24)とを備え、
上記の昇降部材(26)の上端部に回転当接部材(27)を回転自在に配置して、この回転当接部材(27)を前記のリフト部材(6)の後端側へ下方から当接可能に構成したことを特徴とする、原稿圧着板開閉装置。
【請求項2】
上記の姿勢調整手段(23)は、水平方向へ移動可能に上記の取付部材(4)へ支持された水平移動部材(25)をさらに備え、上記の調整操作部材(24)はこの水平移動部材(25)を介して上記の昇降部材(26)の上下位置を調整可能に構成した、請求項1に記載の原稿圧着板開閉装置。
【請求項3】
上記の水平移動部材(25)と昇降部材(26)とが互いに当接する少なくとも一方の部位に、水平移動部材(25)の水平移動で昇降部材(26)を押し上げる押上用カム面(28)を形成した、請求項2に記載の原稿圧着板開閉装置。
【請求項4】
上記の昇降部材(26)を、上記のヒンジピン(8)よりも後方に配置した、請求項1から3のいずれか1項に記載の原稿圧着板開閉装置。
【請求項5】
上記の昇降部材(26)を合成樹脂で形成した、請求項1から4のいずれか1項に記載の原稿圧着板開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−30301(P2006−30301A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205073(P2004−205073)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(592264101)下西技研工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】