説明

原稿読取装置及びその原稿読取装置を備える画像形成装置

【課題】キャリッジの固定を容易に解除することができる一方、キャリッジ固定の解除なしに電源を入れることができないように構成された原稿読取装置、及びその原稿読取装置を備える画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置に用いられる、移動式の光学ユニットを用いて原稿情報を読み取る原稿読取装置であって、該原稿読取装置は、光学ユニットと、前記光学ユニットを搭載するキャリッジと、摺動することにより前記キャリッジを固定及び固定解除することができるキャリッジ保持部材と、前記キャリッジ保持部材に取り付けられ、前記キャリッジ固定時に画像形成装置の電源スイッチを覆うカバー部材と、を有することを特徴とする原稿読取装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に用いられる、移動式の光学ユニットを用いて原稿の画像を読み取る原稿読取装置において、画像形成装置の移動又は運搬時に光学ユニットを保持する保持機構を有する原稿読取装置、及びその原稿読取装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式による画像形成装置に搭載される、あるいは単独で用いられる原稿読取装置として、原稿を走査して原稿情報を光学的に読み取る移動式の光学ユニットを用いたものが広く知られている。
このような光学ユニットは、必要に応じてキャリッジに搭載され、移動しながら原稿に光照射を行ってその反射光を受ける光源ユニットと、光源ユニットに対して所定の速度で移動しながら反射光を以降の光学系に導くミラーユニットとから構成されるのが一般的である。光学ユニットは構成部品の配置精度が高いが、可動部分であるために移動負荷が小さくなるように製造される。従って、装置保護を図るため、原稿読取装置の製造後からユーザー側の設置箇所までの運搬や搬送に際しては、光学ユニットを筐体内で動かないように固定することが多い。
【0003】
特許文献1には、保持アーム、回転アーム及びリフティング検知ロッドからなる、光学ユニットの固定手段、を有し、筐体の最下部など所定位置が設置面から離れると、保持アームが上昇することにより光学ユニットを固定し、前記所定位置が設置面に接触すると、保持アームが下降して前記固定手段が前記固定を解除する原稿読取装置、が開示されている。
【0004】
特許文献2には、キャリッジ固定部材を筐体に形成された貫通穴を介して筐体外部から挿通し、キャリッジに形成された被係合部と係合することにより、原稿載置台を取り外すことなく筐体外面からの操作により筐体内に設けた移動光学ユニットの固定及び固定解除を行うことができる原稿読取装置、が開示されている。
【0005】
特許文献3には、所定位置にねじ穴が形成された読取ユニットと、前記ねじ穴と同軸な第1の貫通穴が形成されたフレームと、前記ねじ穴及び前記第1の貫通穴と同軸な第2の貫通穴が形成されたステイと、フレームとステイの間に嵌合される弾性部材と、大径の取手部と小径のねじ部を備える保持部材と、を備え、保持部材を前記ねじ穴に締結することにより、ドライバ等の工具を使用することなく読取ユニットを固定及び固定解除することができる原稿読取装置、が開示されている。
【0006】
しかしながら、上記いずれの先行技術においても、光学ユニットの固定を解除し忘れていても装置の電源を入れることが可能である。キャリッジ又は光学ユニットは、電源を入れるとホームポジションと言われる読み取り及び原稿サイズの検知を行うのに最適な位置に移動する。固定を解除し忘れた状態で電源を入れてしまうと、キャリッジが駆動し、キャリッジを駆動させるためのモーターの脱調やワイヤ等のキャリッジ駆動手段の脱落等の不具合が生じる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−235810号公報
【特許文献2】特開平7−234455号公報
【特許文献3】特開平7−240821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、キャリッジの固定を容易に解除することができる一方、キャリッジ固定の解除なしに電源を入れることができないように構成された原稿読取装置、及びその原稿読取装置を備える画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、画像形成装置に用いられる、移動式の光学ユニットを用いて原稿情報を読み取る原稿読取装置であって、該原稿読取装置は、光学ユニットと、前記光学ユニットを搭載するキャリッジと、摺動することにより前記キャリッジを固定及び固定解除することができるキャリッジ保持部材と、前記キャリッジ保持部材に取り付けられ、前記キャリッジ固定時に画像形成装置の電源スイッチを覆うカバー部材と、を有することを特徴とする原稿読取装置に関する。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記キャリッジ保持部材を摺動させるためのレバー部材を有し、前記レバー部材が、前記キャリッジ固定解除時には画像形成装置の外装部材の形状に沿うように形成されていることを特徴とする請求項1記載の原稿読取装置に関する。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の原稿読取装置を備えていることを特徴とする画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、光学ユニットと、前記光学ユニットを搭載するキャリッジと、摺動することにより前記キャリッジを固定及び固定解除することができるキャリッジ保持部材と、前記キャリッジ保持部材に取り付けられ、前記キャリッジ固定時に画像形成装置の電源スイッチを覆うカバー部材と、を有する原稿読取装置であることから、キャリッジ固定の解除をし忘れても、カバー部材が電源を覆っているため電源を入れることができないため、固定解除なしにキャリッジが駆動することを防ぐことができ、これにより、キャリッジを駆動させるためのモーターの脱調やワイヤ等のキャリッジ駆動手段の脱落等の不具合を防ぐことができる原稿読取装置を提供することができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、前記キャリッジ保持部材を摺動させるためのレバー部材を有していることから、道具を用いずにユーザーが容易に固定及び固定解除することができ、且つ固定部材の保管に気を使う必要がない原稿読取装置を提供することができる。
また、前記レバー部材が、前記キャリッジ固定解除時には画像形成装置の外装部材の形状に沿うように形成されていることから、固定解除後に不用意に固定されることがない原稿読取装置を提供することができる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、上記効果を有する画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る画像形成装置の斜視図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の部分断面図である。
【図3】原稿読取装置の側面を拡大して示す斜視図である。
【図4】キャリッジ固定時のキャリッジ保持部材を表す図である。
【図5】キャリッジ固定解除時のキャリッジ保持部材を表す図である。
【図6】キャリッジ固定時の電源スイッチ部を表す図である。
【図7】キャリッジ固定解除時の電源スイッチ部を表す図である。
【図8】レバー部材を表す図である。
【図9】レバー部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る原稿読取装置及びこの原稿読取装置を備える画像形成装置について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る画像形成装置の斜視図である。
画像形成装置(100)は、原稿読取装置(1)、画像形成部(7)、定着装置(図示せず)、排紙空間(8)、電源スイッチ(9)を有する。原稿読取装置(1)によって得られた原稿画像の静電潜像が、画像形成部(7)の感光体ドラムに形成される。この静電潜像がトナーによって可視化された後、定着装置によって紙に定着され、その紙は排紙空間(8)に排出される。
【0018】
図2は、本発明に係る画像形成装置の部分断面図である。
原稿読取装置(1)は、光学ユニット(2)、及び光学ユニット(2)を搭載するキャリッジ(3)を有している。原稿情報の読み取りの際に、キャリッジ(3)は、キャリッジ駆動手段(図示せず)により、画像形成装置左右方向に移動する。
原稿読取装置(1)は、上面に透明なガラス等からなる原稿台(15)を有している。光学ユニット(2)内に配された光源(16)により原稿台に載置された原稿に光を照射する。図2の矢印で示すように、原稿からの反射光は、第1反射ミラー(11)によって第2反射ミラー(12)に導かれ、その反射光は第3反射ミラー(13)によって、反射光を集光するスルーレンズ(図示せず)に導かれ、スルーレンズによって結像される光学像は、CCD(図示せず)によって電気信号に変換される。
【0019】
図3は、原稿読取装置の側面を拡大して示す斜視図である。
原稿読取装置(1)は、キャリッジ(3)の移動を固定あるいは固定解除するキャリッジ保持部材(4)と、キャリッジ保持部材(4)に取り付けられ電源スイッチをカバーするカバー部材(5)と、キャリッジ保持部材(4)の後側に取り付けられキャリッジ保持部材(4)を画像形成装置前後方向にスライド(摺動)可能とするレバー部材(6)と、を備えている。
キャリッジ(3)は、図3においては、原稿読取装置(1)の内側にあり、キャリッジ(3)が備えるキャリッジ(3)の鈎部(31)のみが、原稿読取装置(1)の側面に形成された穴から露出している状態となっている。鈎部(31)は、その露出先端側が画像形成装置後方側に鈎状(フック状)に曲がった形状をなしている。
画像形成装置の移動又は運搬時には、キャリッジ(3)は、キャリッジ保持部材(4)によってキャリッジ(3)の鈎部(31)が固定され、画像形成装置左右方向に動かないように固定される。
キャリッジ保持部材(4)は、原稿読取装置(1)の側面に沿って画像形成装置前後方向に延びる細長い板状部材であって、その前端部近傍には開口部(41)が形成されている。キャリッジ保持部材(4)は、原稿読取装置(1)の側面から突出する上下二対の爪部(14)により保持され、画像形成装置の前後方向にのみ摺動可能となっている。
【0020】
図4は、キャリッジ固定時のキャリッジ保持部材を表す図である。
図4に示すように、キャリッジ保持部材(4)が画像形成装置前方向に動かされると、キャリッジ(3)の鈎部(31)とキャリッジ保持部材(4)の開口部(41)が係合し、キャリッジ(3)が固定される。
【0021】
図5は、キャリッジ固定解除時のキャリッジ保持部材を表す図である。
図5に示すように、キャリッジ保持部材(4)が画像形成装置後方向に動かされると、キャリッジ(3)の鈎部(31)とキャリッジ保持部材(4)の開口部(41)の係合が解除され、キャリッジ(3)の固定は解除される。
尚、キャリッジ保持部材(4)が画像形成装置後方向に動かされたときにキャリッジ(3)の固定が解除され、画像形成装置前方向に動かされたときにキャリッジ(3)が固定されるようにしてもよい。
【0022】
図3に示すように、キャリッジ保持部材(4)には、下方向に延びるカバー部材(5)が設けられている。
カバー部材(5)は電源スイッチ(9)をカバーするためのものであって、電源スイッチ(9)を覆うことができる位置及び大きさに設けられている。カバー部材(5)は、キャリッジ保持部材(4)に一体に設けられているため、キャリッジ保持部材(4)の摺動に伴って画像形成装置前後方向に移動する。
レバー部材(6)はキャリッジ保持部材(4)を摺動させるためのものであり、キャリッジ保持部材(4)の後端部に連結されている。作業者がレバー部材(6)に対して画像形成装置前後方向に力を加えることで、キャリッジ保持部材(4)が画像形成装置前後方向に摺動する。
【0023】
図6は、キャリッジ固定時の電源スイッチ部を表す図であり、図7は、キャリッジ固定解除時の電源スイッチ部を表す図である。
図6に示すように、カバー部材(5)は、キャリッジ(3)固定時(図4参照)には、画像形成装置の電源スイッチ(9)を覆うような位置に配され、電源スイッチをオンすることができないようにする役割を果たす。一方、図7に示すように、キャリッジ(3)固定解除時(図5参照)には、カバー部材(5)は装置の電源スイッチ(9)を覆わない位置に配され、電源スイッチをオンすることができるようになる。
【0024】
図8は、レバー部材(6)を表す図であり、図9は、レバー部材(6)の断面図である。
レバー部材(6)は、画像形成装置の外装部材角部(A)の湾曲に沿うように湾曲した形状を有しており、先端には弾性を有するストッパー(61)を備えている。レバー部材(6)を画像形成装置前方向に摺動させようとすると、ストッパー(61)が外装部材の内方突出部(B)に引っかかることにより、固定解除後にユーザーの誤操作によって誤ってキャリッジ(3)が固定されてしまうことを防ぐことができる。
画像形成装置を移動又は運搬する際には、ストッパー(61)を矢印(C)の方向に押し込むとストッパー(61)が外装部材の内方突出部(B)に引っかかることなく、レバー部材(6)を画像形成装置前方向に摺動させることが可能となり、これにより、キャリッジ(3)を固定することができる。
また、レバー部材(6)が、画像形成装置の外装部材に沿う形状に形成されていることにより、固定解除後にユーザーの誤操作によって誤ってキャリッジ(3)が固定されてしまうことを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、電子写真方式のプリンタ、複写機、ファクシミリ等の、現像ユニットを備えた画像形成装置に対して好適に利用される。
【符号の説明】
【0026】
1 原稿読取装置
2 光学ユニット
3 キャリッジ
31 キャリッジ鈎部
4 キャリッジ保持部材
41 キャリッジ保持部材開口部
5 カバー部材
6 レバー部材
61 ストッパー
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置に用いられる、移動式の光学ユニットを用いて原稿情報を読み取る原稿読取装置であって、
該原稿読取装置は、
光学ユニットと、
前記光学ユニットを搭載するキャリッジと、
摺動することにより前記キャリッジを固定及び固定解除することができるキャリッジ保持部材と、
前記キャリッジ保持部材に取り付けられ、前記キャリッジ固定時に画像形成装置の電源スイッチを覆うカバー部材と、
を有することを特徴とする原稿読取装置。
【請求項2】
前記キャリッジ保持部材を摺動させるためのレバー部材を有し、前記レバー部材が、前記キャリッジ固定解除時には画像形成装置の外装部材の形状に沿うように形成されていることを特徴とする請求項1記載の原稿読取装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の原稿読取装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−178743(P2012−178743A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40913(P2011−40913)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】